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報告:コラボレーションルームを活用した反転型授業の試み

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101 - MEMOIRS OF SHONAN INSTITIUTE OF TECHNOLOGY Vol. 51, No. 1, 2017

報告:コラボレーションルームを活用した

反転型授業の試み

木枝 暢夫

*

Flip teaching in classrooms specially designed for active learning

Nobuo KIEDA

Abstract:

An attempt on flip teaching in specially designed classrooms is reported. By properly using the electronic whiteboard and the learning management system (Moodle), the students were encouraged to learn in their free time. The results of class evaluation questionnaire showed quite high scores compared to the average of other classes. The effectiveness of the flip teaching therefore was confirmed.

KEY WORDS : Active learning, Flip teaching, Moodle, Electronic whiteboards 要旨:

アクティブラーニング用に特別に設計された教室:コラボレーションルームを活用した,反転型授業の実践とそ の成果について報告する。電子黒板機能とLearning Management System (Moodle)を適切に利用することで, 学生の授業外学修を促し,充実した反転型の授業を比較的容易におこなうことができた。授業評価アンケートの結 果では,平均的な授業と比べて満足度や身に付いた力の選択率などがかなり高く,このようなスタイルの授業が効 果的であることが明らかになった。一方で,授業方法に馴染めない学生が早期にドロップアウトする傾向も認めら れ,その対策が今後の課題といえる。 キーワード:アクティブラーニング,反転学修,Moodle,電子黒板

1.はじめに

湘南工科大学では,平成25 年度から大規模な教育 改革に取り組み,その中で,すべての授業で何らか の形のアクティブラーニングを取り入れる,という 目標を掲げた。これを達成するために,平成26 年 2 月から本格的な教員研修を実施するとともに,アク ティブラーニングに適した教室整備や,LMS など ICT 技術を活用した教育支援の環境づくりを進めて いる。その流れの中で著者は,自分が担当する2 つ の総合工学科目の授業,「自然エネルギーと資源」お よび「美術工芸の素材と技術」を,平成26 年度から 反転型のグループワークを中心とする内容に変え, 新設したアクティブラーニング用教室:コラボレー ションルームの機能を実践的に活用するための授業 を実践してきた。本稿では,それらの授業の概要を 紹介するとともに,その成果を授業評価アンケート の結果に基づいて検証する。

2.授業の概要

2.1 自然エネルギーと資源 平成26 年度はコラボレーションルーム(通常のア イランド型教室),平成27 年度からはコラボレーシ ョンルームⅡ(8 基の電子黒板型プロジェクタと一人 用天板付き可動椅子を備えた教室)1)を利用して授業 をおこなった。毎回,次の授業でテーマとして取り 上げる内容に関連する課題を出し,それに対するレ ポートを授業の3日前までにMoodleから提出させた。 課題の例を表1 に示す。このレポートの内容に基づ いて,授業ごとにグループ分けをおこなった。グル ープメンバーは原則として毎回シャッフルし,テー *湘南工科大学 工学部 人間環境学科 教授

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湘南工科大学紀要 第51 巻 第1号 - 102 - マによって同じものを調べた者同士を組ませたり, 違うものを調べた者を混ぜたり,様々な相手と色々 なパターンのグループワークができるよう配慮した。 表1 「自然エネルギーと資源」予習課題の例 授業の進行は,概ね以下のようにおこなった。 ・グループごとに着席。レポートの返却。 ・当日授業の進め方の説明。 ・必要に応じてアイスブレイク。 ・グループでの話し合い。 ・各グループからの発表,質疑。 ・全体的な補足説明とまとめ。 ・次回の課題についての説明。 グループワークは,平成26 年度は模造紙と付箋を 使用する形式でおこなったが,平成27 年度以降は電 子黒板機能を活用した。電子黒板上のメモや作成資 料は授業終了後にPDF ファイルとしてサーバーに保 存し,それをすぐにMoodle にアップするようにした。 併せて,授業中に使用した説明資料や参考資料など も,すべてMoodle に上げた。また,毎回の授業の後 には,Moodle 上の振り返りシートに,各自の気づき や次回に向けての改善計画などについての振り返り を記入させた。平成27 年度授業の様子を図1に示す。 図1 コラボレーションルームⅡでの授業風景 2.2 美術工芸の素材と技術 授業の進め方は,「自然エネルギーと資源」とほぼ 同様である。ただ,取り上げる内容が個人の感性に 関わるものなので,グループで話し合い何らかの結 論を出すというディスカッションより,それぞれが 調べたことや感じたことを紹介するプレゼンテーシ ョンの要素を強くした。そのため,授業の初期はペ アワークを中心とし,メンバーを適宜組み替えなが らショートプレゼンテーションに慣れさせるように した。また,コラボレーションルームⅡのマルチプ ロジェクタ環境は非常に有用性の高いもので,教室 に備え付けのタブレット端末を利用し,各人が調べ てきた工芸品の画像を各グループでプロジェクタに 映写しながら説明したり,最後のまとめの際にはそ れらを教室全体で共有したりするなどにより,授業 の一体感を高めることができた。

3.授業の評価

このようにあたらしいスタイルの授業を導入する ことが学生たちにどのように受け止められているか を検証するために,授業評価アンケートの結果につ いて考察する。本学ではすべての教員が各学期に少 なくとも1 科目の担当授業でアンケートを実施する。 調査は指定日の授業開始から15 分程度の時間をとっ て実施され,調査票は記名式のマークシートで,配 布と回収はすべて事務職員がおこなう。調査の項目 は平成26 年度から大幅に変更されたため,同じ授業 でそれ以前の結果と比較することは難しい。そのた め,ここでは「自然エネルギーと資源」の授業に対 する平成26 年度と 27 年度の結果を,アンケート対 象となったすべての講義科目の結果と比較してみる。

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報告:コラボレーションルームを活用した反転型授業の試み(木枝) - 103 - まず,授業方法と内容に関する10 の設問の評価結 果を表2 に示す。表中の数値は 10 点満点で表された 評価点で,ほとんどすべての項目で,この授業のス コアが平均を上回っていることがわかる。特に,「学 生の主体的な学びを促す工夫」や「学生の反応を確 かめながら授業進行」のように,一般にアクティブ ラーニングが優れているべき項目で,その差が大き い。一方で,平成26 年度の「授業内容とシラバスの 整合性」が平均以下の点数になっているが。これは シラバスの公表後に授業方法を大きく変更したため であり,27 年度には改善されている。 表2 授業評価アンケートの各設問に対する評価 点を「自然エネルギーと資源」と他の授業の平均と で比較した結果 次に,ディプロマポリシーに示された6 つの汎用 的能力の指標と対応する力が授業で身に付いたと感 じるかどうかを尋ねる設問の,回答結果を表3 に示 す。多くの項目で選択率が平均を上回り,特に「他 者との対話や協働作業をおこなう力」は,アクティ ブラーニング型授業ならではの高い値である。また, 平成26 年度と 27 年度を比較すると改善されている 項目が多く,これは教員のスキルが上がるとともに1 年目の反省に基づく改善をおこなったことと,さら に充実した設備を備えたコラボレーションルームⅡ を利用できるようになったことの両方による効果と 考えられる。 一方で,「学んだ知識や技能を役立てる力」は,選 択率が平均を下回っている。この傾向は,同じ教室 を使用している他の授業でも認められているもので, 演習形式で問題を解いたり,実際にプログラムを入 力して動かしてみたりするなど,授業で学んだこと を具体的に活用する機会が無いと,この項目につい ての成長実感が得られにくいためではないかと想像 している。 表3 身についたり伸びたと感じる力の選択率 (%)の比較 最後に,授業外学修時間についての設問の回答結果 を表4 に示す。この問では,各授業に対して 1 週間 にどれぐらいの授業外学修をしたかを,学生が自己 申告する。平均では「まったくなし」が25~30%で, ボリュームゾーンは30 分程度,すなわち何もしない 訳ではない,という回答になっている。一方,この 授業ではほとんどの学生が毎週かなりの時間の授業 外学修をおこなっていることがわかる。予習課題と 振り返りを義務付けていることから当然の結果とも いえるが,実際に毎回の課題を確認しての印象では, 授業が進むにつれてその質と量はいずれも改善され ていて,この授業に慣れた学生は学修習慣が着実に 身に付くとともに,授業内容に対する関心も高まっ ているものと思われる。 表4 各授業週当たりの授業外学修時間の比較

4.まとめと今後の課題

授業評価アンケートの結果から,反転型アクティ ブラーニングの授業は学生の主体的な学びへの意識 を高め,学修習慣を身につけ汎用能力を伸ばすため に効果的であることが確認された。もちろん,その 効果は,総合工学科目という本来の目的が学びへの 動機づけと汎用的能力の涵養である授業に適用した

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湘南工科大学紀要 第51 巻 第1号 - 104 - ことによって,顕著に表れたものと考えている。学 科の専門科目のように限られた時間の中であるレベ ルの知識と技術を身に付けることを求められる授業 においては,また違った取り組みが試みられるべき かもしれない。けれども,山梨大学の森澤らによる 予習動画を活用した専門科目のアクティブラーニン グ化の実践例2)もあるように,どのような内容と目的 の授業でも,少なくとも従来型の一方向的な講義と 問題演習および試験というやり方より優れた授業方 法は存在すると思われるし,教員としてそれを探す ための努力を怠ってはいけないだろう。 一方で,この報告で紹介した授業の課題として挙 げられるのが,比較的早い時期のドロップアウトで ある。もともと選択科目の場合は途中から欠席がち になり,最終的に単位を落としてしまう学生が少な くないが,この授業ではその時期が早く,全授業回 数の1/3 程度のところであきらめてしまう学生が 20%程度出てしまう。特に高学年の学生にその傾向 が強い。その主な理由は,予習課題と振り返りの提 出が負担になるためと推定していて,根本的には 個々の学生の学修習慣と規範意識のレベルに帰結す ると思われる。なぜなら,高学年で総合工学科目を 履修する学生は一般に修得単位数が平均より少なく, その理由はこれまでも出席不足や課題未提出等で単 位を落としてきたからである。そのような学生には, この授業で課している授業外学修の内容と量は過大 なものであるのだろう。しかしながら,多数の学生 はそれに適応することで授業に満足感と達成感を感 じているのも事実であり,これを安易なレベルで妥 協してしまっては,逆に伸びる学生も伸ばせないと いう結果になりかねない。 この問題への対策として,平成28 年度前学期の「自 然エネルギーと資源」では授業ガイダンスでの説明 をさらに具体的かつ丁寧におこなってみたところ, 履修者が教室定員の42 名を大きく下回る 30 名,し かも1 年生の履修者が数名のみという状況になって しまった。にもかかわらず,中途でのドロップ率や その傾向はほぼ同様であった。つまり,受講すれば 対応できたかもしれない学生達を,厳しいガイダン スで不安にさせて排除してしまったことが考えられ, これでは本末転倒である。そこで後学期の「美術工 芸の素材と技術」では,ガイダンスを改善して学生 をエンカレッジするような説明をおこなったところ, 履修者が定員に達した。そこからドロップアウトを 減らすためのアイデアを,これから実行していきた いと考えている。 もう1つ,最後に強調しておきたいことが,あた らしく工夫された授業を試みる際の,支援環境の重 要さである。ここで紹介した授業の場合,特にコラ ボレーションルームⅡの設備がなかったら,ここま での授業改善はできなかったし,成果も上がらなか っただろう。加えて,Moodle という ICT 支援ツール が学内で定着し3),基本的な使用方法は特に説明しな くてもほぼ全員の学生が知っていたことも大きな助 けになった。こういった施設,設備面での支援に加 えて,平成26 年から 3 年続けて実施している FD 特 別研修の効果も見逃せない。話に聴くだけではなか なか実践できなかったアクティブラーニング授業を, 比較的容易に楽しんでおこなえているのは,この研 修で身に付けたチップスとマインドのお陰である。 この場を借りて,研修プログラムを提供している NPO 法人 NEWVERY と,講師の樋栄ひかる氏に感 謝したい。

参考文献

1)“アクティブラーニングの効果を高める創造空間~ クリエイティブ・スクエア(Creative Square)~湘南 工科大学への導入事例”,共信コミュニケーションズ 株式会社,大学教育と情報,2015 年度 No.2,p.70-71 (2015). 2)“反転授業を組み合わせたアクティブ・ラーニング の取り組み”,森澤正之,大学教育と情報,2015 年 度No.1,p.2-7(2015). 3)“教育・学修支援を目的とした湘南工科大学におけ るLMS の活用~授業における教員利用の現状と課 題~”,本多博彦,木枝暢夫,大学教育と情報,2015 年度No.1,p.30-33(2015).

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