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血管内皮細胞による血管運動調節機構

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総 説 名古 屋市 立 大学 看 護 学 部 紀 要 第10巻2011

血管 内皮細胞 によ る血管運動調節機構

山 本

要 約 血 管 内 皮 細 胞 に よ る血 管 運 動 調 節 で は 、 内 皮 細 胞 か ら放 出 さ れ た 液 性 物 質 がpharmacomechanical  coupling に よ っ て 血 管 平 滑 筋 の 収 縮 に 影 響 す る機 構 が ま ず 発 見 さ れ た が 、 内 皮 細 胞 の 膜 電 位 変 化 に よ り平 滑 筋 の 膜 電 位 が 変 化 し、 そ れ がelectromechanical  couplingに よ り収 縮 ・弛 緩 を 引 き起 こ す 機 構 も存 在 す る。 ア ゴ ニ ス ト刺 激 に よ っ て 内 皮 細 胞 内Ca2+濃 度 が 増 加 す る とCa2+活 性 化K+チ ャ ネ ル が 素 早 く、Ca2+活 性 化 非 選 択 性 陽 イ オ ン チ ャ ネ ル が 徐 々 に 開 き、 前 者 に よ り ま ず 膜 の 過 分 極 が 、 後 者 に よ り遅 発 性 の 膜 の 脱 分 極 が 生 じ る。 こ の 内 皮 細 胞 の 膜 電 位 変 化 が 平 滑 筋 一 内 皮 細 胞 間 ギ ャ ッ プ 結 合 を 通 っ て 平 滑 筋 に 伝 わ る 。 平 滑 筋 の 電 位 依 存 性Ca2+チ ャ ネ ル は 過 分 極 に よ っ て 閉 じ、 脱 分 極 に よ っ て 開 く の で 、 こ れ に よ っ て 平 滑 筋 の 細 胞 内Ca2+濃 度 が 変 化 し、 収 縮 が 制 御 さ れ る。 こ の 膜 電 位 に よ る血 管 運 動 調 節 は 薄 い 平 滑 筋 層 を 持 つ 細 動 脈 で 特 に 有 効 で 、 そ の 部 で 決 定 さ れ る 末 梢 血 管 抵 抗 の 調 節 に 重 要 と考 え ら れ る。 キ ー ワ ー ド:EDHF、 ギ ャ ッ プ 結 合 、 血 管 平 滑 筋 、 膜 電 位 、 膜 電 流 名古屋市立大学看護学部生理学研究室 は じ め に Furchgottら1)が1980年 に 内 皮 細 胞 由 来 弛 緩 因 子(en-dothelium-derived  relaxing  factor,EDRF)の 存 在 を 報 告 して 以 来 、 そ れ ま で 単 な る血 管 の 内 張 細 胞 と 見 ら れ て き た 血 管 内 皮 細 胞 が 実 際 は 血 管 運 動 調 節 、 つ ま り血 管 平 滑 筋 の 収 縮 調 節 に 大 き く 関 わ っ て い る こ と が 次 々 に 解 明 さ れ て き た 。 内 皮 細 胞 の 平 滑 筋 に 対 す る作 用 は 大 き く 二 つ に 分 類 さ れ る。 一 つ は 内 皮 細 胞 か ら刺 激 に よ っ て 放 出 さ れ る物 質 が 平 滑 筋 ま で 拡 散 して 作 用 す る 液 性 物 質 に よ る調 節 で 、 そ の 物 質 の 平 滑 筋 細 胞 へ の 作 用 は 平 滑 筋 細 胞 の 膜 電 位 変 化 を 介 さ な い(pharmacomechanical  cou-pling)。 放 出 さ れ る 物 質 と して は 狭 義 のEDRFす な わ ち 一 酸 化 窒 素(NO)の 他、 プ ロ ス タ サ イ ク リ ン(PGI2)、 エ ン ドセ リ ン な ど が 挙 げ ら れ る。 あ と一 つ は 膜 電 位 変 化 が 一 義 的 で あ る電 気 的 調 節 で 、 ま ず 内 皮 細 胞 が 刺 激 に よ っ て 膜 電 位 変 化 を 起 こ し、 そ れ が 平 滑 筋 一 内 皮 細 胞 間 ギ ャ ッ プ 結 合 を 通 つ て 電 気 緊 張 的 に 平 滑 筋 細 胞 に 伝 播 し、 平 滑 筋 の 膜 電 位 が 受 動 的 に 変 化 す る も の で あ る2)。 こ の 膜 電 位 変 化 に よ り平 滑 筋 細 胞 が 持 つ 電 位 依 存 性Ca2+チ ャ ネ ル の 活 性 が 影 響 さ れ て 平 滑 筋 が 収 縮 あ る い は 弛 緩 す る (electromechanical  coupling)。 こ の 総 説 で は こ れ ら血 管 内 皮 細 胞 に よ る血 管 運 動 調 節 の う ち 、 膜 電 位 変 化 を 介 し た も の を 中 心 に 概 説 す る。 血 管 壁 の構 造 動 静 脈 は外 膜 ・中膜 ・内膜 の3層 か ら構 成 され る。 外 膜 は膠 原 線 維(コ ラ ー ゲ ン)、 弾 性 線 維(エ ラ ス チ ン) か ら な る 層 で あ り、 自律 神 経 終 末 や 栄 養 血 管(vasa  vasorum)は こ こ に存 在 す る。 中膜 は平 滑 筋 層 で あ り、 長 径 が100μm程 度 で 細 長 い ス ピ ン ドル形 の 平 滑 筋 細 胞 が ネ ジの よ うな 螺旋 状 に配 列 して一 つ の層 を作 り、 太 い 血 管 ほ どそ の層 が幾 重 に も重 な って い る。 内 膜 は一 層 の 血 管 内 皮 細 胞 よ りな り、 中 膜 との 間 に は内 弾 性 板(in-ternal elastic lamina)が 介 在 す る。 局 所 血 流 調 節 ・血 圧 調 節 に最 も重 要 な抵 抗 血 管 で あ る細 動 脈 は毛 細 血 管 の 直前 に位 置 し、 平 滑筋 層 は1∼2層 と薄 く、 内 弾性 板 は未 発 達 で あ る。 毛 細 血 管 は一 層 の血 管 内皮 細 胞 の 周 囲 に ペ リサ イ トが接 着 し、 そ の周 りを基 底 膜 が 包 む単 層 構 造 を と り、 平 滑 筋 を欠 くため に能 動 的 な収縮 ・拡 張 は しな い。 こ こで は主 に動 脈 ・細 動 脈 に つ い て 述 べ る。 組 織 ・器 官 の全 体 的 あ るい は部 分 的 な運 動 が起 き る場 合 、 そ れ を構 成 す る小 さな平 滑筋 細 胞 が 同 期 して収 縮 ・ 弛緩 す る必 要 が あ る。 一 般 に平 滑 筋組 織 で は、 平 滑 筋細 胞 同士 が ギ ャ ップ結 合 で電 気 的 に連 絡 して お り、 多数 の 平 滑 筋 細 胞 の興 奮 ・収 縮 が 同 期 して 発生 す る。 ギ ャ ップ 結 合 とは 隣接 す る細 胞 の近 接 す る細 胞 膜部 分 に 存在 す る チ ャネ ル で、 そ れ を 介 して2つ の細 胞 の細 胞 質 が 交通 し

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て い る。 ギ ャ ップ結 合 チ ャネ ル の構 造 は次 の様 に な って い る。 細 胞 膜 に あ る膜 貫 通 型 蛋 白 で あ る コネ キ シ ンが6 個 環 状 に結 合 して コネ ク ソ ン と呼 ば れ る構 造 を と り、 そ の 中央 部 に お お よ そ1000ド ル トン以 下 の物 質 が通 るチ ャ ネ ル が形 成 され る。 この コネ ク ソ ンが ギ ャ ップ結 合 ヘ ミ チ ャネ ル(チ ャネ ル の片 割 れ)で あ り、 隣接 す る細 胞 の ヘ ミチ ャネ ル 同士 が ドッキ ン グ して1個 の ギ ャ ップ結 合 チ ャネ ル を形 成 して い る。 ギ ャ ップ結 合 は一 般 に集 合 し て存 在 し、 そ の部 分 を プ ラー ク と呼 ぶ。 プ ラー クの大 き さは そ こ に含 ま れ る ギ ャ ップ結 合 チ ャネ ル の数 と比 例 し、 細 胞 同士 の電 気 的結 合 の 強 さ(電 気抵 抗 の低 さ)を 表 し て い る。 血 管 に お い て も、 そ の 径 を効 果 的 に変 化 させ るた め に は 中膜 内 の多 数 の平 滑 筋 細胞 の運 動 が 同 期 す る必 要 が あ る。 血 管 平 滑筋 細 胞 同士 間 は ギ ャ ップ結 合 で電 気 的 に結 合 し て お り、 そ の 中 を電 流 が流 れ る こ とに よ り興 奮 が伝 播 す るが、 ギ ャ ップ結 合 の密 度 は そ れ ほ ど高 くな く、細 胞 間 の電 気 抵 抗 は比 較 的高 い2)。一 方 内 皮 細 胞 同 士 は豊 富 な ギ ャ ップ結 合 で連 絡 して細 胞 間 の電 気 抵 抗 は低 く、 電 気 的 に は 内皮 細 胞 層 が一 つ の 合胞 体 を形 成 して い る と言 え る程 で あ る2)。以 上 は平 滑 筋 細 胞 同 士 、 内 皮 細 胞 同士 と い う同種 細 胞 間 の結 合 で あ るが、 平 滑 筋 細 胞 と内皮 細 胞 とい う異 種 細 胞 間 の電 気 的結 合 も存 在 す る こ とが知 られ て い る。 平 滑筋 と内皮 細 胞 の 間 に あ る内 弾性 板 に は 穴 が 空 い て お り、 そ の穴 に主 に 内皮 細 胞 側 か ら突 起 が 出 て平 滑 筋 と接 触 し、 数 は少 な い が そ こに ギ ャ ップ結 合 が存 在 す る3)。 こ れ を 平 滑 筋 − 内 皮 細 胞 間 ギ ャ ッ プ 結 合 (myoendothelial gap junctions)と 呼 ぶ。 これ に よ っ て、 中膜 最 内層 の平 滑筋 と内皮 細 胞 が電 気 的 に結 合 して お り、 互 い に影 響 し合 う状 況 に な って い る2)。 血 管 の神 経 支 配 古 典 的 に は血 管 の 自律 神 経 支配 は交 感 神 経 に よ る収 縮 性 の一 重 支配 と され て きた。 しか しい くつ か の血 管床 で 血 管 拡 張性 の神 経 ペ プ チ ドで あ るカ ル シ トニ ン遺 伝 子 関 連 ペ プ チ ド(CGRP)4)や 、 一 酸 化 窒 素(NO)5)を 伝 達 物 質 とす る非 ア ド レナ リ ン非 コ リ ン性(NANC)神 経 が 存 在 す る こ とが知 られ る様 に な った。 これ らの神 経 は血 管 の外 膜 に止 ま り、 中膜 平 滑 筋 の外 膜 寄 りに位 置 す る平 滑 筋 層 に、 よ り大 きな影 響 を与 え る。 これ は 内皮 細 胞 の 影 響 が 内膜 寄 りの平 滑筋 に、 よ り強 く影 響 す るの と対 照 的 で あ る。 た だ し、 細 い血 管 の場 合 は両 者 の影 響 が 中膜 全 体 に及 ぶ と考 え られ る。NANC神 経 が 循 環 器 系 の 中 枢 性 制 御 に どの よ うに 関 わ って るか に つ い て は未 知 の部 分 が大 きい。 実 験 的 に 内皮 細 胞 を 刺 激 す る場 合 、 ア セ チ ル コ リ ン (ACh)投 与 が よ く使 わ れ る。 生 体 内 で 内 皮 細 胞 に神 経 由 来 のAChが 実 際 に作 用 す るか と言 え ば、 た とえ コ リ ン作 動 性 神 経 が外 膜 に存 在 して も、 そ こか ら放 出 され る AChが 内膜 ま で 到 達 して 作 用 す る と は考 え に くい 。 血 液 は コ リンエ ス テ ラー ゼ 活性 が 高 い の で、 血 中 に放 出 さ れ たAChは 速 や か に分 解 さ れ そ の 濃 度 は 一 般 に 非 常 に 低 い。 内皮 細 胞 の生 理 的 刺 激物 質 に つ い て は後 ほ ど議 論 す る。

血管内皮細胞が放出する液性因子

内 皮 細 胞 は種 々 の 血 管 作 動 物 質 を 放 出 して 血 管 運 動 を 調 節 し て い る6)。 放 出 さ れ る 物 質 は 、EDRFsす な わ ち 内 皮 由 来 血 管 拡 張 物 質 と して はNO、PGI2な ど が あ り7)、 EDCFsす な わ ち 内 皮 由 来 血 管 収 縮 物 質 と し て は エ ン ド セ リ ン-1、 ト ロ ン ボ キ サ ンA2、 プ ロ ス タ グ ラ ン デ ィ ン H2な ど が あ る8)。 こ れ ら の 物 質 はpharmacomechanical couplingに よ っ て 平 滑 筋 細 胞 の 収 縮 ・弛 緩 を 引 き 起 こ す 。 例 え ばAChは 内 皮 細 胞 の 細 胞 内 セ カ ン ド メ ッ セ ン ジ ャ ー で あ る 細 胞 内Ca2+濃 度 を 増 加 さ せ 、 そ れ に よ っ てEDRFsが 放 出 さ れ て 血 管 が 弛 緩 す る 。 こ れ ら の 物 質 の 中 に は 平 滑 筋 細 胞 の 膜 電 位 を 変 化 さ せ る も の も あ る が 、 そ の 作 用 に 膜 電 位 変 化 は必 須 で な く、 副 次 的 効 果 と み な さ れ る。 血 管 平 滑 筋 の膜 電 位 を介 した調 節 AChを 投 与 す る と 血 管 平 滑 筋 が 過 分 極 し て 弛 緩 す る 。 こ の 反 応 は 内 皮 細 胞 を 除 去 す る こ と に よ っ て 消 失 す る の で 内 皮 依 存 性 現 象 で あ る 。NOやPGI2の 産 生 を 抑 制 して も 過 分 極 反 応 が 起 き る こ と か ら、 こ の 現 象 はNOやPGI2 と は 別 の 未 知 物 質 が 内 皮 細 胞 か ら放 出 さ れ 、 そ れ が 平 滑 筋 に 作 用 して 過 分 極 を 生 じ さ せ て い る と考 え ら れ 、 こ の 未 知 物 質 はChenら9)に よ り 内 皮 細 胞 由 来 過 分 極 因 子 (endothelium-derived hyperpolarizing factor,EDHF) と 命 名 さ れ た 。 以 来 、EDHFの 候 補 と し てcytochrome P450に よ る ア ラ キ ド ン酸 誘 導 体 、 内 因 性 カ ン ナ ビ ノ イ ド、K+、H2O2な ど い ろ い ろ な 物 質 が 挙 げ ら れ た が 、 い ず れ も 内 皮 細 胞 依 存 性 過 分 極 反 応 の 性 質 を 完 全 に は説 明 で き て い な い 。 例 え ばK+やH2O2は 平 滑 筋 細 胞 の イ オ ン チ ャ ネ ル 活 性 を 変 化 さ せ て 過 分 極 を 起 こ す の で 広 義 のE DHFの 範 疇 に 入 る 。 た だ 、K+やH2O2が 起 こ す 過 分 極 反 応 はChenら9)が 初 め て 報 告 し た 過 分 極 反 応 と 異 な っ て お り、K+やH2O2だ け で は"EDHF現 象"を 完 全 に は 説 明 で き な い 。 ア ゴ ニ ス ト刺 激 に よ り平 滑 筋 細 胞 だ け で な く内 皮 細 胞 も過 分 極 反 応 を 呈 す る。 内 皮 細 胞 と平 滑 筋 細 胞 は ギ ャ ッ

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プ結 合 で電 気 的 に結 合 して い るの で、 どち らか の細 胞 で 発生 した過 分 極 が も う一 方 の細 胞 に伝 播 して い る こ とは 容 易 に推 察 さ れ る。 単 離 した平 滑 筋 細 胞 にAChを 投 与 して も過 分 極 反 応 は 見 られ な い の で 、AChは 内 皮 細 胞 に作 用 して い る こ とが わ か る。 内皮 細 胞 の過 分 極 が平 滑 筋 一 内皮 細 胞 間 ギ ャ ップ結 合 を通 って電 気 緊 張 的 に平 滑 筋 細 胞 に伝 播 して平 滑 筋 の膜 電 位 が 受 動 的 に変 化 し2)、 平 滑 筋 細 胞 が 持 つ 電 位 依 存 性Ca2+チ ャ ネ ル活 性 が 低 下 して 平 滑 筋 の細 胞 内Ca2+濃 度 が 減 少 し、 筋 が 弛 緩 す る (electromechanical  coupling)と い う の が"EDHF現 象"の 機 序 と して 最 も考 え や す い。 その 場 合 、EDHFと い う物 質 は存 在 しな い こ とに な る。 内皮 細 胞 層 を介 した信 号 の伝 播 前 述 した様 に平 滑 筋 細 胞 間 に あ るギ ャ ップ結 合 の数 は 多 くな く、 平 滑 筋 細 胞 同士 の電 気 抵 抗 は比 較 的 高 い。 一 方 、 内皮 細 胞 間 の電 気 抵 抗 は極 め て低 い。 内皮 細 胞 層 の 一 部 で生 じた膜 電 位 変 化 が抵 抗 の低 い 内皮 細 胞 層 を電 気 緊 張 的 に伝 播 し、 平 滑筋 一 内皮 細 胞 間 ギ ャ ップ結 合 を 介 して広 い範 囲 の平 滑 筋 細 胞 に伝 わ る、 あ るい は平 滑 筋 層 の一 部 で生 じた膜 電 位 変 化 が抵 抗 の 高 い平 滑 筋 層 を伝 わ るの で な く、 一 旦 内皮 細 胞 層 に伝 わ って そ の 中 を経 由 し て広 範 囲 に伝 播 す る こ とは十 分 考 え られ る。 実 際、 血 管 の 一 部 にAChを 投 与 す る と局 所 的 に 内 皮 細 胞 が 過 分 極 し、 そ れ が 内皮 細 胞 層 を伝 播 して周 りの動 脈 全 体 が素 早 く拡 張 す る現 象 が 見 られ る10、11)ことか ら、 ま と ま った長 さの血 管 の運 動 が 同 期 して起 き るに は 内皮 細 胞 層 が重 要 な働 きを して い る こ とが わ か る。 ま た、 過 分 極 反 応 を 阻 害 して お い て 局 所 にAChを 投 与 した 場 合 、 そ の 刺 激 で 増 加 した 細 胞 内Ca2+が ギ ャ ップ 結 合 を 通 っ て ゆ っ く り と内 皮 細 胞 層 を 伝 播 し、 順 次NOやPGI2を 放 出 さ せ て周 りの動 脈 全体 が徐 々 に拡 張 す るの が 観 察 で き る10)。Ca2+ 感 受 性 色 素 を取 り込 ま せ た動 脈 を共 焦 点 顕 微 鏡 で観 察 し な が ら標 本 の 一 部 をAChで 刺 激 す る と、 内 皮 細 胞 層 内 を刺 激 部 位 か ら血 管 に沿 って両 方 向 に比 較 的 ゆ っ くり と 進 むCa waveが 観 られ る12)。この よ う に、 ギ ャ ップ結 合 は 電 流 の み で な く、Ca2+な ど の 細 胞 内 セ カ ン ドメ ッセ ン ジ ャー の通 路 と して も機 能 して い る と考 え られ る。

血管内皮細胞の静止膜電位

静 止 膜 電 位 は、 静 止 状 態 で どの イ オ ンチ ャネ ル が い く つ 開 い て い るか で決 定 され るの で、 細 胞 種 が異 な れ ば そ の イ オ ンチ ャネ ル の種 類 や存 在 比 率 が異 な り、 ま た細 胞 内 液 の イ オ ン組 成 も異 な るた め、 静 止 膜 電 位 は異 な った 値 とな る こ とが予 想 され る。 血 管 組 織 に お い て は平 滑筋 細 胞 と内皮 細 胞 とい う異 な った種 類 の細 胞 が ギ ャ ップ結 合 に よ って電 気 的 に結 ば れ て お り、 ギ ャ ップ結 合 チ ャネ ル両 端 で電 気 化 学 勾 配 を有 す るイ オ ンが ギ ャ ップ結 合 を 通 って移 動 し、 あ る動 的 な平 衡 状 態 で 落 ち着 い て い る と 考 え られ る。 この平 衡 状 態 で の両 細 胞 の静 止 膜 電 位 はよ く似 た値 に な る はず で あ るが、 定 常 的 に ギ ャ ップ結 合 を 流 れ るイ オ ン電 流 が ギ ャ ップ結 合 の示 す抵 抗 を通 る こ と に よ り生 じる電 圧 降下 分 だ け異 な って い る はず で あ る。 モ ル モ ッ ト腸 間膜 細 動 脈 で 同 時記 録 した平 滑筋 と内皮 細 胞 の 静 止 膜 電 位 の平 均 値 は平 滑 筋 細 胞 で-55.3mV、 内 皮 細 胞 で-50.9mVで あ った13)ので、 静 止 状 態 で はギ ャ ッ プ結 合 内 を 内皮 細 胞 か ら平 滑筋 細 胞 に 向 か う定 常 電 流 が 流 れ て い る と考 え られ る。 平 滑筋 細 胞 か ら切 り離 した状 態 で の 内皮 細 胞 固有 の静 止 膜 電 位 は どれ ほ どで あ ろ うか。 培 養 ウ シ肺 動 脈 内皮 細 胞 の 静 止 膜 電 位 の 分 布 は-88か ら+5mVに 広 く分 布 し て い るが 、 そ の最 頻 値 は-12∼-18mVに あ り、 か な り 浅 い 静 止 膜 電 位 を持 つ もの が 多 い こ とが 分 か る14)。内皮 細 胞 は 他 の細 胞 に普 遍 的 に見 ら れ る大 コ ン ダ ク タ ンス Ca2+活 性 化K+チ ャ ネ ル(BKCaチ ャネ ル)を 欠 く15)が、 そ の 他 のCa2+活 性 化K+チ ャネ ル を豊 富 に持 つ16)。この た め、 細 胞 の単 離 過程 で細 胞 膜 が傷 害 され た細 胞 に は外 液 か らCa2+が 細 胞 内 に流 入 して これ らCa2+活 性 化K+チ ャ ネ ル を 活性 化 す るた め、 中等 度 に傷 害 され た細 胞 は深 い 膜 電 位 を呈 す る と考 え られ る。 細 胞 膜 傷 害 が 著 しい場 合 は す べ て の イ オ ンに対 す る透 過性 が 高 ま るた め 、膜 電 位 は ゼ ロに近 づ くで あ ろ う。 これ が培 養 ウ シ肺 動 脈 内皮 細 胞 で 見 られ た静 止 膜 電 位 の 幅 広 い分 布14)の原 因 と考 え ら れ る。 平 滑筋 層 か ら分 離 した モ ル モ ッ ト腸 間膜 動 脈 内皮 細 胞 層 で測 定 す る と、 静 止 膜 電 位 の 平 均 は-14.8mVと 報 告 され て い る17)ので、 内皮 細 胞 本 来 の静 止 膜 電 位 は か な り浅 い値 で あ る と思 わ れ るが、 生 体 内 で は平 滑筋 細 胞 に 影 響 され て-50mV程 度(こ の 値 は血 管 床 に よ り異 な る)の 静 止 膜 電 位 を維 持 して い る。 刺 激 に対 す る 内皮 細 胞 の膜 電 位 応 答 内皮 細 胞 のin vitro実 験 で の ア ゴニ ス トと して はACh, ATP,bradykininな どが よ く使 用 さ れ る。 生 体 内 に あ る状 態 、 つ ま り内皮 細 胞 と平 滑筋 の連 絡 が保 た れ た 状 態 に あ る標 本 にAChを 投 与 す る と、 内 皮 細 胞 の 膜 電 位 は 静 止 電 位 か ら十 ∼数 十mV過 分 極 す る。 こ の反 応 を起 こ すACh閾 濃度 は100nM以 下 とか な り低 い17、18、19)。この膜 電 位 応答 は単 純 な一 相 性 の過 分 極 で あ る こ と も多 い が 、 よ り複 雑 な 時 間経 過 を と る場 合 もあ る。 複雑 な 時 間経 過 を と る場 合 は、 使 う血 管床 に よ って も、 ま た 同 じ血 管 床 で も標本 に よ って異 な るが、 一 過 性 の過 分 極 に脱 分 極 が

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続 く二 相 性 を と る こ とが 多 い20)。過 分 極 が 平 滑 筋 に伝 播 す れ ば平 滑 筋 は 弛緩 し、 脱 分 極 が伝 播 す れ ば収 縮 す る。 内皮 細 胞 の応 答 を もた らす イ オ ンチ ャネ ル機 構 AChな ど の ア ゴ ニ ス トは 内 皮 細 胞 の 細 胞 内Ca2+濃 度 を 増 加 さ せ る こ と に よ り 、 膜 に あ る種 々 のCa2+活 性 化 チ ャ ネ ル を 開 い て 膜 電 位 に 影 響 を 与 え る 。AChに よ る 内 皮 細 胞 の 過 分 極 反 応 を 阻 害 す る に はcharybdotoxin (CTX)とapaminを 同 時 に 加 え る 必 要 が あ る た め 、 こ の 反 応 に はCTX感 受 性 の 中 コ ン ダ ク タ ン スCa2+活 性 化 K+チ ャ ネ ル(IKCa(KCa3.1)channel)とapamin感 受 性 の 小 コ ン ダ ク タ ン スCa2括 性 化K+チ ャ ネ ル(SKCa(KCa 2.3)channel)が 関 与 し て い る と さ れ る19、21、22、23)。しか し ヒ ト腸 間 膜 動 脈24)、 ラ ッ ト大 脳 動 脈25)、 モ ル モ ッ ト腸 間 膜 動 脈17)ではCTXの み で 過 分 極 反 応 な い し そ れ を 起 こ して い るK+電 流 が 抑 制 さ れ る た め 、 こ れ らCa2+活 性 化 K+チ ャ ネ ル の 分 布 は 動 物 種 や 血 管 床 で 異 な っ て い る と 考 え ら れ る。 モ ル モ ッ ト腸 間 膜 動 脈 内 皮 細 胞 に パ ッ チ 電 極 を 適 用 し て 膜 電 位 を 固 定 し、AChに よ っ て 活 性 化 さ れ る 膜 電 流 を 観 察 す る と 、CTXで 完 全 に 抑 制 さ れ る 外 向 き 電 流 が ま ず 惹 起 さ れ 、 そ れ に 重 ね て 徐 々 に 活 性 化 さ れ る 、 0mV付 近 に 逆 転 電 位 を 持 つ 電 流 が 観 察 さ れ る17)。前 者 は CTX感 受 性 のIKCaチ ャ ネ ル に よ る 電 流 、 後 者 はCa2+活 性 化 非 選 択 性 陽 イ オ ン チ ャ ネ ル に よ る電 流 と 考 え ら れ る 。 二 相 性 の 膜 電 位 応 答20)は こ れ ら2種 類 の 電 流 に よ り生 じ て い る可 能 性 が あ る。 内皮 細 胞 に対 す る生 理 的 な刺 激 血 管 平 滑 筋 に対 す る内 皮細 胞 の作 用 を調 べ る実験 に は、 平 滑 筋 に作 用 せ ず 内 皮 細 胞 の み を刺 激 す る物 質 と して AChが 広 く使 わ れ て き た。 た だ 、AChが 生 理 的 に 内皮 細 胞 に作 用 す るの は前 述 した理 由 に よ り考 え に くい。 現 在 注 目 され て い る内皮 細 胞 刺 激 物 質 候 補 はATPで あ る。 ATPは 内 皮 細 胞 のP2Y受 容 体 に作 用 してAChと 同 様 の 過 分 極 反 応 を 引 き起 こ し、 そ の電 位 変 化 は 内皮 細 胞 層 を 長 軸 方 向 に素 早 く伝 播 して血 管 全 体 の拡 張 を もた らす26)。 運 動 を す る とそ の骨 格 筋 を灌 流 す る動 脈 血 や静 脈 血 中 の ATP濃 度 が マ イ ク ロ モ ル オ ー ダ ー まで 増 加 し、 血 管 拡 張 に よ って 筋 の血 流 量 が増 加 す る27)。血 管 外 膜 に存 在 す る交 感 神 経 終 末 か ら は ノ ル ア ドレナ リ ン と同 時 にATP が放 出 され、 そ れ に よ って血 管平 滑 筋 が収 縮 す るが、 運 動 時 に血 中 に増 加 す るATPは この 交 感 神 経 由 来 で な く、 ヘ モ グ ロ ビ ン酸 素 飽 和 度 低 下 が 引 き金 とな り赤 血 球 か ら 放 出 され るATPで あ る27,28)。ヒ トで運 動 時 に交 感 神 経 が 興 奮 す る に も か か わ らず 骨 格 筋 へ の 血 流 が 保 た れ る の は 、 局 所 循 環 血 中 のATPが 内 皮 細 胞 のEDRFs放 出 と 過 分 極 を 起 こ し、 そ れ に よ っ て 血 管 を 拡 張 さ せ て い る か ら と 考 え られ る29)。ATPは 生 理 的pH下 で 負 電 荷 を 持 つ 大 き な 分 子 で あ り 、 そ の 放 出 さ れ る経 路 に つ い て はCFTR(嚢 胞 性 線 維 症 膜 貫 通 調 節 因 子)、maxi-anion channelな ど の 陰 イ オ ン チ ャ ネ ル30、31)やギ ャ ッ プ 結 合 ヘ ミ チ ャ ネ ル32) が 提 唱 さ れ て い る。 お わ り に 血 管 内皮 細 胞 か ら放 出 され る液性 物 質 は中膜 平 滑筋 層 の あ る程 度 内部 ま で は拡 散 し、 作 用 す る はず で あ る。 一 方 ギ ャ ップ結 合 を 介 した膜 電 位 に よ る調 節 は も っぱ ら最 内層 の平 滑 筋 に止 ま るた め、 特 に1∼2層 の平 滑 筋 しか 持 た な い細 動 脈 で有 効 で あ る。 そ の細 動 脈 こそ 末 梢血 管 抵 抗 を決 定 して いる部 位 であ るので、内皮細 胞 によ るギ ャッ プ結 合 を 介 した膜 電 位 に よ る調 節 は、 液性 物 質 に よ る調 節 と共 に末 梢血 管 抵 抗 調 節 に極 め て重 要 な働 きを して い る と考 え られ、 高血 圧 症 な どの病 態 を考 え る上 で も無視 で きな い要 素 で あ ろ う。 今 後 の 内皮 細 胞 研 究 の さ らな る 発 展 が 期待 され る所 以 で あ る。 文 献

1 )Furchgott R.F., Zawadzki J.V.: The obliga-tory role of endothelial cells in the relaxation of arterial smooth muscle by acetylcholine, Nature, 288(5789), 373-376, 1980.

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(受 稿   平 成22年10月12日) (受 理   平 成22年12月21日)

(7)

Endothelial

Control

of Vasomotor

Responses

Yoshimichi

Yamamoto

Laboratory of Physiology, Nagoya City University School of Nursing

Abstract

Vascular endothelial cells control the vasomotor responses in two mechanisms. An agonist stimu-lation applied to the endothelium increases the endothelial intracellular concentration of Ca2+, which triggers a release of vasoactive substances such as NO and PGI2 . These substances diffuse to the smooth muscle cells and modulate their mechanical activities by the pharmacomechanical coupling. Increased endothelial intracellular Ca2+ also activates the Ca2+-activated K+ channels quickly and the Ca2+-activated non-selective cation channels gradually evoking endothelial hyperpolarization and depo-larization, respectively. These changes in endothelial membrane potential conduct to the smooth muscle cells via the myoendothelial gap junctions and the contraction of the smooth muscle cells is modulated by the electromechanical coupling. As the electromechanical mechanism is most effective in arterioles which have only one or two layers of smooth muscle cells, this mechanism seems to be crucial in con-trolling the total peripheral resistance that is mainly determined by this portion of vasculature.

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