現場
からJ.FECでは,食品ロスと畜産経営の二つの問題を同時に 解決するというコンセプトのもと,それまで焼却処分され ていた食品ロスを食品会社から引き取り,それを加工して 液体飼料を製造し,販売する事業を行っています。 実は自治体にある焼却炉のなかで燃やされているごみ のうち,約半分が食品なんですね。当然燃やすことによっ てCO2を排出しますし,しかもそのために税金が投入さ れています。また,現在日本の畜産業はえさのほとんど を輸入穀物に依存しており,とくに豚はコストの6割を えさ代に費やしています。それが年々高騰して高止まり になってしまっているので,小さい農場はどんどん廃業 に追い込まれてしまっています。そこで,廃棄物の処理 費を近隣の自治体よりも低く設定して受け入れ,またで きあがる液体飼料も輸入穀物の半額程度で販売して,食 品会社と農家双方にとってコストダウンとなるしくみの 経済事業を展開しているわけです。
また,液体飼料をつくっておしまいではなく,できあ がった豚肉を契約先のスーパーでブランド豚として販売 する取り組みもサポートしています。現在J.FECの液体 飼料を使ってくださっている15軒の農家はすごく意識が 高く,技術や知識も豊富です。既存のしくみではなく新 しい第1次産業をつくり出したいという意欲のある彼ら が,今いちばん求めているのは販路なんですね。それを
整えるお手伝いをす ることによって,ほ んとうの意味で継続 性の高いしくみをつ くることをめざして います。
液体飼料の最大のメリットはコスト削減です。粉の飼 料と比較すると,乾燥させるためのエネルギーが不要に なるので,約半分のコストで製造できます。以前は水分 を飛ばさないと保存がきかないといわれていたのですが, 乳酸発酵によって保存性が高まることで,夏場でも2週 間は常温のまま置いても腐敗しません。また,液体の廃 棄物も原料になるので,今まで捨てるしかなかった牛乳, ヨーグルトなども活用できるようになっています。 農家にとっては,粉のえさに比べて消化効率がいいの でふん尿の臭気が軽減できます。また,粉塵がないので 豚が肺炎になりづらくなり,その分抗生物質の投与を減 らすことができます。つまり,消費者としても安全性の 高い豚肉を食べることができるメリットがあります。 液体飼料そのものはもともとヨーロッパの技術で, チーズをつくるときに出るホエーや,ウイスキー,ワイ ンのかすを豚のえさにする方法は古くから行われていま した。日本でも,以前は残飯養豚といって残飯をドラム 缶に集めて混ぜたえさを与えていました。戦後,アメリ カがトウモロコシの乾燥飼料をたくさん輸出してきたの で,この40年ぐらいでえさ=粉という認識が広がってし まったのですが,意外と粉のえさは歴史が浅いのですね。 現在では,日本でも急速に液体飼料の普及が進んでいま す。確かに,液体なので遠くに運ぶと運送費がかさみ, タンク設置のために初期投資が必要というデメリットも あります。一方,一度設備を整えればその後は安く安全 に運用できるため,熱心な農家や大規模な農場を中心に, すでに100万頭もの豚が液体飼料で育っています。
食品リサイクルでめざす循環型社会 ~食品ロスに新たな価値を~
〈訪問先〉 株式会社日本フードエコロジーセンター 代表取締役 髙橋 巧一 さん
2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の17の目標のなかで,わたしたちの生活に最も身 近なものの一つが「12 つくる責任 つかう責任(持続可能な消費と生産)」だろう。日本では,まだ食べられるのに 捨てられてしまう食品廃棄物(食品ロス)が,年間632万tにのぼっている。
そのような食品ロスを養豚用の液体飼料に再生することで循環型社会の実現を目指しているのが,株式会社日本 フードエコロジーセンター(J.FEC)だ。環境への配慮と経済活動を両立させる事業の詳細を,髙橋社長に伺った。
現代社会へのとびら❖2017年度3学期号 食品ロスを養豚用の飼料にリサイクルすると,な
ぜ循環型社会の実現につながるのでしょうか?
Q.
飼料と聞いて一般的にイメージする粉の飼料と, 液体飼料との違いは何でしょうか?
Q.
SDGsの17の目標
日本の食品ロス問題
〈提供 朝日新聞社〉
どの食品ロスをどれだけ受け入れるかということ を,全部あらかじめ計算したうえで決めています。 実は人間と豚は内臓器官の構造がほぼいっしょで, 必要な栄養素も似ているんです。よって,麺,パン, ご飯などの炭水化物を7割,タンパク源になるもの を2割,繊維質を1割集めてくるのが原則です。や はり原料となる食品ロスの種類はバランスよく配合 することが重要です。そのため,決まった量を引き 取ることにご理解いただいた食品会社と契約して いて,たまたまその日にたくさん出てしまったもの を余分に受け入れることはありません。また,人が 一度手をつけた外食産業の食べ残しは一切受け入 れていません。異物がまぎれ込む可能性が高まり ますし,調理ずみだと成分を計算しにくいからです。 液体飼料の水分量についても同じことがいえま す。通常豚は生まれてから6か月で出荷しますが, やはり毎日食べるえさなので,水分量が数%違うだ けでも成熟度に差が生じてしまいます。食品ロスの 投入はなにげなく作業しているように見えるんです が,社員は全員計算機を手元に用意していて,パ ンのときは1.5倍,ご飯のときは1.2倍,野菜のとき はゼロなど,全部計算して水を入れているんです ね。水分量は78%をめざして製造しているのです が,毎日朝礼で数値を発表するなど,とくに注意を 払っています。
今まで環境問題というと,リサイクルやCSR的な活動 はコストアップにつながるので,赤字だけど仕方なくや るというような位置づけが多かったと思います。それで はなかなかSDGsには結びつきませんが,一方で経済事 業でありながら環境をよくしていく仕事も徐々に増えつ つあります。私自身は10歳のときから環境問題に取り組 むことを志していて,その後獣医師免許を取得しながら も経営について学んだりと,環境と経済を両立できるし くみを模索してきました。そのなかで課題を見つけ,食 品ロスと畜産経営が結びついて液体飼料という形になり ました。今後そのような事業をつくり出していくために は,視野を幅広くもっていろいろなこと同士を結びつけ られるようになることが重要だと考えています。 J.FECにくる見学者の方々に「皆さんの家で捨てた食 べ物はどこに行っているか知っていますか?」と聞くと, 皆さん「知らない」と答えます。そこで「これは焼却炉
で燃やしていて,そのためには税金が使われているんで す。しかも私たちのものだけでなく大企業のものも税金 で燃やされているって知っていました?」と聞くとびっ くりされて,ここで初めて自分たちの問題だと認識する わけです。やっぱり自分たちの問題としてとらえたとき に初めて根本的な問題がどこにあるかという考えになる んですね。高校生には,視野を広くもつと同時に,さま ざまな問題を広く自分たちのこととしてとらえられるよ うになってほしいと思います。
現代社会へのとびら❖2017年度3学期号
液体飼料を食べる豚
現場
から液体飼料の品質維持のために,どのよ うな工夫をしていますか?
Q.
SDGs の取り組みを今後さらに浸透させていく ために,高校生へのメッセージをお願いします。
Q.
食品廃棄 物の搬入
❶
・スーパーや百貨店,食品工場など,提 携している会社から保冷車で搬入 ・1日に最大39tの食品ロスを受け入れ
可能(2018年からは49tへ増量)
搬入量の 計量
❷
・スーパーや百貨店は小型の容器,1日に1 ~ 2tも出てくる食品工場は大きな容器 ・バーコードで事業者,日付,種類を管理。トレー
サビリティを確保しつつ配合設計に活用
原料投入
❸ ・ウォータージェットを使って容器を洗う。また,大きなかたまりがあれば切 り分ける
選別作業
❹
・ビニール,手袋などの異物を人の目で チェック
・金属探知機,マグネットフィルターで 小さいホチキスの芯も取れる
破砕
❺ ・破砕機で破砕処理。食品は水分が7~8割を占めるのでジューサーで砕いた ようなドロドロ状態になる
殺菌処理
❻ ・80 ~ 90度の熱で殺菌し,大腸菌やサルモネラ菌など病原性の菌のリスクを軽減する
発酵処理
❼
・菌の繁殖を抑えて保存性を高めるため,乳酸発酵処理をしてpH を4以下に落とす
・発酵時間は8時間程度(堆肥などの乾燥したものは3か月~半年 は必要)
飼料運搬
❽
・カルシウムやアミノ酸を添加して調整し,自社の専用タンクロー リーで契約農家へ運搬
・原則その日に入ってきたものはすべてその日の内に加工し,翌日 までに出荷