2011年度 学類4年生向け授業 代数学II
ガロア理論問題解答
1 復習ー環 , イデアル , 剰余環
問題 1. d = ch S とおく. Im ιS は整域 S の部分環ゆえ整域. それと同型な Z/(d) もそ う. 定理 1.1 の系から d = 0 または素数.
問題 2. どんな環 S の部分環も Im ιS を部分環として含むから, Im ιS が S の最小の部 分環. 従って, 環S が素環 ⇔ ιS が全射⇔ ιS が同型. これより示すべき結果が従う. 問題 3. P は Im ιK = {n 1 ∈ K | n ∈ Z} の商体{ab−1 ∈ K | a, b ∈ Im ιK, b ̸= 0} に 一致. ϕ : K → K を環射とする. 仮定より ϕ(1) = 1. ϕ は加法を保つから ϕ(n 1) = n 1. よって ϕ(a) = a, ∀a ∈ Im ιK. ϕ は乗法を保つから, P の各元 ab−1 対し, ϕ(ab−1) =
ϕ(a) ϕ(b−1) = ϕ(a) ϕ(b)−1 = ab−1.
2 K 代数
問題 4. i ∈ C ゆえ i の C 上最小多項式は X − i. よって i は C 上1次. i /∈ R ゆえ i を根にもつ1次多項式 ∈ R[X] は存在しない. 加えて X2 + 1 ∈ Q[X]が i を根にもつか ら, これが i の Q 上, また R 上最小多項式. よって i はQ 上, また R 上2次.
問題 5. (1) 勝手な多項式 f (X) = c0Xn+ c1Xn−1+ · · · + cn ∈ K[X] に対し λa(f (X)) = c0an+ c1an−1+ · · · + cn
= c0ϕ(X)n+ c1ϕ(X)n−1+ · · · + cn
= ϕ(c0Xn+ c1Xn−1+ · · · + cn) = ϕ(f (X)). (2) ϕ(X) = λa(X) = a.
問題 6. (1) 一般に環射ϕ : R → S がイデアルI ( R を零化すれば(そのためには, I の 生成元を零化すれば十分), 各剰余類 x + I 上 ϕ が一定値をとるから, x = x + I 7→ ϕ(x) がwell-defined に写像 R/I → S を定め, これが環射になることが見て取れる.
本問において, λa(f ) = f (a) = 0 より, 上の一般論が適用できる.
(2) f (X) = c0Xn+ c1Xn−1+ · · · + cn とする.
f (a) = c0an+ c1an−1+ · · · + cn
= c0ϕ(X)n+ c1ϕ(X)n−1+ · · · + cn
= ϕ(c0Xn+ c1Xn−1+ · · · + cn)
= ϕ(f mod (f )) = ϕ(0) = 0
より a ∈ Sol(f; S). 残りは, K[X]/(f ) の各元がK に係数を持つ X の多項式の形に表さ れることに注意すれば, 前問 (1) と同様にできる.
(3) 前問 (2) と同様.
問題 7. (i) Sol(X4− 1; C) = {±1, ±i}. 命題 2.4 から求めるべき集合はつぎの4つの Q 代数射からなる(ここに ck ∈ Q).
λ1 : c0X3+ c1X2 + c2X + c3 7→ c0+ c1+ c2+ c3 λ−1 : c0X3+ c1X2 + c2X + c3 7→ −c0+ c1− c2+ c3
λi : c0X3+ c1X2 + c2X + c3 7→ −c1+ c3− i(c0− c2) λ−i : c0X3+ c1X2 + c2X + c3 7→ −c1+ c3+ i(c0− c2)
(ii) 問 題 4 で 見 た よ う に, i の Q 上 最 小 多 項 式 は X2 + 1. 従 っ て, Q 代 数 同 型 λi : Q[X]/(X2+ 1) −→ Q[i], X 7→ i≃ を得る. この同型を通し Q[i] を Q[X]/(X2 + 1) と同 一視し命題 2.4 を適用する. Sol(X2+ 1; C) = {±i} より, 求めるべき集合はつぎの2つ のQ 代数射からなる(ここに a, b ∈ Q).
λi : a + b i 7→ a + b i (これは包含Q[i] ֒→ C) λ−i : a + b i 7→ a − b i (これは複素共役)
(iii) 直接確かめられる一般的事実として, πk : S1× S2 → Sk, k = 1, 2 をK 代数射影と するとき, ϕ 7→ (π1◦ ϕ, π2◦ ϕ)が全単射
AlgK(R, S1 × S2)−→ Alg≃ K(R, S1) × AlgK(R, S2)
を与える. この全単射において, (σ1, σ2) ∈ AlgK(R, S1) × AlgK(R, S2) には, K 代数射 R → S1× S2, x 7→ (σ1(x), σ2(x)) が対応する. この K 代数射も (σ1, σ2) で表すことに
する.
上の一般的事実と (ii) の結果から, 求めるべき集合は4つの Q 代数射 (包含, 包含), (包含, 複素共役), (複素共役, 包含), (複素共役, 複素共役) からなる.
問題 8. S = K[a] を1元生成 K 代数とすると, λa : K[X] → S は K 代数全射. a が K 上超越的であればこれは同型. 代数的であれば K 代数同型K[X]/(pa)
−→ S≃ を引き起
こす.
3 体拡大
問題 9. 体拡大 L/K に対し, 同値L = K ⇔ 1 がLのK 基底 ⇔ [L : K] = 1 を 得る. 本問で, M を L/K の中間体とすると, [L : M ] [M : K] = [L : K] =素数 より, [L : M ] = 1 同値に L = M , または [M : K] = 1 同値にM = K.
問題 10. 最後の不等式は因数定理からただちに従う.
因数定理の証明(n に関する帰納法). 一般に, f を一次式 X − c で割った余り = f (c) だから, a1 が根 (f (a1) = 0)ゆえ, f = (X − a1) h を満たす h ∈ L[X] がただ1つ存在. 仮定「相異なる根」から, h は n − 1 個の相異なる根 a2, . . . , an をもつ. これに帰納法の 仮定を適用すればよい.
問題 11. K[X]/(pa)(≃ K(a)) が体ゆえ pa は既約. 定義からモニックかつ a を根にも つ. 逆に, (K の拡大体に限らず) K 代数における K 上代数的元a に対し, a を根にも つモニック既約多項式∈ K[X] が存在すれば, それは(pa を割るが規約性から)pa に一 致する.
問題 12. (a) ⇔ (c) : 定理3.2 から a が K 上超越的ならば [K(a) : K] = ∞, 代数的な らば [K(a) : K] < ∞. これよりこの同値が従う.
(a) ⇒ (b) : 勝 手 な 元 b ∈ K(a) に 対 し, K(b) ⊂ K(a) か ら [K(b) : K] ≤ [K(a) : K] < ∞. (a) ⇒ (c) を bに適用し, bは K 上代数的.
(b) ⇒ (c) : 自明.
問題 13. 明らかに, L/K の中間体は L の部分 K 代数. 逆に L の部分 K 代数 M が L/K の中間体であることを示すため, 各元 0 ̸= a ∈ M の逆元 a
−1
∈ L が M に含ま れることを見る. a が生成する部分 K 代数 K[a] は M に含まれるが, 定理3.2(2) から K(a) = K[a] だから, a−1 ∈ K(a) = K[a] ⊂ M.
問題 14. (1)明らかに, M1, M2 を含むL/K の中間体は集合 M1M2 を含まなければな らない. あと M1M2 が L/K の中間体であることを示せばよい. M1M2 は K を含み, 和と積に関して閉じているから, L の部分 K 代数, (前問から)等しく L/K の中間体.
(2) まず [M1 : K] と[M2 : K] が互いに素と仮定しない. K ベクトル空間 M1 の生成系 はM2 ベクトル空間 M1M2 の生成系であるから, [M1M2 : M2] ≤ [M1 : K]. よって定 理3.1 から
[M1M2 : K] = [M1M2 : M2] [M2 : K] ≤ [M1 : K] [M2 : K].
一方, また定理3.1 から [Mi : K] | [M1M2 : K], i = 1, 2.
さて「互いに素」を仮定すると,この最後の結果から, [M1 : K] [M2 : K] | [M1M2 : K]. 最後の不等式とあわせて求めるべき等式を得る.
問 題 15. Q(
√3
2, ω) = Q(√32) Q(ω) に 注 意. 3.2 節 の 最 初 の 例 か ら [Q(
√3
2) : Q] = 3. ω /∈ Q であり, X2+ X + 1 ∈ Q[X] が ω を根にもつから, この2次式が ω の Q 上最小 多項式で [Q(ω) : Q] = 2. 前問(2) から [Q(√32, ω) : Q] = 3 · 2 = 6.
問題 16. K を有限体とすると, K に係数を持つ多項式
∏
a∈K(X − a) + 1 は K 内に根 をもたない.
問題 17. L/K が代数拡大であることを見ればよい. L/K, L/L がともに代数拡大だか ら定理3.3A の系2から従う.
問 題 18. Q(√32, ω) = Q(√32,√32 ω,√32 ω2) を 示 せ ば よ い. 左 辺 は 2 元
√3
2, ω を 含 む よ う な, 右 辺 は 3 元
√3
2,√32 ω,√32 ω2 を 含 む よ う な, Q/Q の 最 小 の 中 間 体.
√3
2, ω = √32 ω/√32 が右辺に含まれるから, 求めるべき等式において包含 ⊂ が成り立ち,
√3
2,√32 ω,√32 ω2 が左辺に含まれるから⊃ が成り立つ.
問題 19. (1) 易しい. (2) これは (1) を用いると, f = Xn, g = Xm の場合に示せばよ く, その場合易しい. (3) これは (1), (2) を用いて容易に示せる.
問題 20. K を完全体, L/K を代数拡大とする. 問題17 から K = L. 後に命題Cで見 るように, 一般に代数拡大 L/M/K において L/K が分離的ならば L/M もそう (実際, a ∈ L の M 上最小多項式は, 同 K 上最小多項式を M [X] において割るから, 後者が分 離的ならば前者もそう). これをK/L/K に適用して L = K/L は分離拡大.
問題 21. Fr(1) = 1, Fr(xy) = Fr(x) Fr(y)は見易い. 0 < i < pの場合, 2項係数 (pi) は p を割るから, K において (pi) 1 = 0. これより Fr(x + y) = Fr(x) + Fr(y). 以上より Fr は環射. K は Fp を素体として含むから, 問題3から示すべき結果が従う.
問題 22. L = Q(
√3
2, ω) とおく. 問題15 で見たように L/Q は6次(ゼロ標数ゆえ)分
離拡大. 定理3.6 から #AlgQ(L, Q) = 6. 元 √32, ω に関し, 先に求めた最小多項式から, これらの Q 上共役元の集合は, それぞれ
X = {√32, √32 ω, √32 ω2}, Y = {ω, ω2} で 与 え ら れ る. σ ∈ AlgQ(L, Q) に 対 し, σ(
√3
2) ∈ X, σ(ω) ∈ Y で あ る か ら, ペ ア (σ(√32), σ(ω)) の 値はせいぜい6通り. し かし, 最初の等式からその6通りすべてが実 現される. こうしてAlgQ(L, Q) は σ00 := 包含 と次により与えられる6つのQ 代数射 L → Q からなる.
σ01 : √32 7→ √32, ω 7→ ω2 σ10 : √32 7→ √32 ω, ω 7→ ω σ20 : √32 7→ √32 ω2, ω 7→ ω σ11 : √32 7→ √32 ω, ω 7→ ω2 σ21 : √32 7→ √32 ω2, ω 7→ ω2
例えば元 a :=
√3
2 + ω ∈ L を考えると, σij(a) は (i, j) ごとに異なることが直接確かめ られ, 従ってこれらが a の6つの Q 上共役元を与えるから, 6 ≤ [Q(a) : Q]. この最後の 拡大次数は [L : Q] = 6 を超えないから, [Q(a) : Q] = [L : Q], L = Q(a).
4 ガロアの基本定理とその応用
問題 23. K 代数射 ϕ : L → L が必ず全射であることを示せばよい. 元a ∈ L を勝手に とると, ϕ(a)はa のK 上共役元になる. 実際 pa(ϕ(a)) = ϕ(pa(a)) = ϕ(0) = 0より, pa
は ϕ(a) を根にもつモニック既約多項式, よって ϕ(a) の最小多項式になる. そこで, L に 含まれる a の K 上共役元すべてからなる集合を X と書くと, ϕ はX から X への写像 に制限される. もとの ϕ が単射だから制限 ϕ|X : X → X もそう. X は有限集合だから ϕ|X は全射になり, 特に a ∈ Im ϕ. こうして ϕ : L → L は全射.
問 題 24. (a) ⇒ (b) : a と b 共 通 の K 上 最 小 多 項 式 を f と す る と, K 代 数 同 型 λa : K[X]/(f )−→ K(a), λ≃ b : K[X]/(f ) −→ K(b)≃ を得る. 合成 λb◦ λ−a1 が (b) にい うK 代数同型を与える.
(b) ⇒ (c) : 本問前の命題により, (b) にいう K 代数同型と包含 K(b) ֒→ K との合成 K(a) ֒→ K は K/K の自己同型に拡張できる. これが (c) にいう自己同型である.
(c) ⇒ (a) : 前問の解答に示してある.
問題 25. 元 a ∈ LのM 上共役元は, K 上共役元だから(L/K 正規の仮定から) Lの元. よって L/M は必ず正規. 問題18 から, Q(
√3
2, ω) は X3− 2 の最小分解体として Q 上 正規. しかし本問直前の例から, 中間体 Q(
√3
2) はQ 上正規でない.
問題 26. 不変体の定義から容易に従う. 問題 27. 命題3.6C と問題25 から従う.
問題 28. まず本問の制限写像は全射である. 実際, τ : M → L(֒→ K) を勝手な K 代数 射とすると, 命題4.1 によりこれは K/K のある自己同型 ρ に拡張できる. 定理4.1 によ り, ρ のL への制限 σ := ρ|L は G に入り, σ|M = τ を満たす.
次に σ1, σ2 ∈ G とするとき,
σ1|M = σ2|M ⇔ σ1(a) = σ2(a), ∀a ∈ M ⇔ σ1−1σ2(a) = a, ∀a ∈ M
⇔ σ1−1σ2 ∈ H ⇔ σ1H = σ2H.
これより, 写像 G/H → AlgK(M, L), σH 7→ σ|M が well-defined かつ単射. 先に示し た制限写像の全射性から全射でもある.
問題 29. 問題 22 解答の記号を用いる. σij はガロア群 G := Gal(Q(√32, ω)/Q) の元す べてを与える. 特に σ00 が単位元. (1 2) 7→ σ01, (1 2 3) 7→ σ10 が3次対称群 S3 から G への群同型を与えることが直接見てとれる. G の非自明な部分群は
位数2のH1 = ⟨σ01⟩, H2 = ⟨σ11⟩, H3 = ⟨σ21⟩と 位数3のN = ⟨σ10⟩ = {σi0 | i = 0, 1, 2} からなる. これらに対応する中間体はそれぞれ
M1 = Q(√32), M2 = Q(√32 ω2), M3 = Q(√32 ω), T = Q(ω).
これらのうち正規部分群は N , Q 上ガロアなる中間体は T . 問題 30. 群の射であること:(σ ◦ τ)|X = σX◦ τX に他ならない.
単 射 で あ る こ と:L は K 代 数 と し て X で 生 成 さ れ る か ら, σ|X = idX, す な わ ち σ(x) = x, ∀x ∈ X であれば σ = idL. これは問題の制限写像の核が自明であることを示 しているから, この群の射は単射である.
問題 31. まず, L(ζn)/K(ζn) はガロア拡大. 実際, L(ζn) は K(ζn) 上 L で生成され, L の各元は K 上したがって K(ζn) 上分離的. L の各元の K(ζn) 上共役元は(とくにK 上 共役元ゆえ)すべて L に含まれるから.
最後の事実は, 勝手にσ ∈ Gal(L(ζn)/K(ζn)) を選ぶとき, σ(L) ⊂ L であることを示 している. また M = K(ζn) ∩ L とおくと, L/M はガロア拡大で, ガロア群 Gal(L/M ) はGal(L/K) の部分群として位数が n を割る巡回群. 制限写像
Gal(L(ζn)/K(ζn)) → Gal(L/M), σ 7→ σ|L
が 定 ま る が, 明 ら か に こ れ は 群 の 射. 核 は 自 明 (σ|L = idL と す る と, σ(ζn) = ζn と 合 わせて σ = idL(ζ
n))だから単射. よって, Gal(L(ζn)/K(ζn)) は位数が n を割る巡回群.
ζn∈ K(ζn) と合わせ, L(ζn)/K(ζn) は巡回 n クンマー拡大.
5 クンマー理論と線形無関連性
問題 32. 元 w ∈ W を固定するとき, f ◦ φ(−, w) : V → Z′ は2つの線形射φ(−, w) : V → Z, f : Z → Z′ の 合 成 だ か ら 線 形 射. 同 様 に, 元 v ∈ V を 固 定 す る と き, f ◦ φ(v, −) : W → Z′ は線形射である.
問 題 33. 最 初 の 射 に 関 し て の み 示 す (第 2 の 射 に つ い て も 同 様). φ : K × V → V, φ(x, v) = xv が 双 線 形 で あ る こ と が 確 か め ら れ る か ら, 線 形 射 f : K ⊗ V → V, f (x ⊗ v) = xv が引き起こされる. 写像 g : V → K ⊗ V を g(v) = 1 ⊗ v により定義 すると, これが線形射であることが確かめられる. f とg が互いの逆写像であることを見 る. 容易にf ◦ g(v) = v, ∀v ∈ V . よって f ◦ g = idV. 一方, g ◦ f = idK⊗V を示すのに, g ◦ f が線形射で, ベクトル空間 K ⊗ V が x ⊗ v, x ∈ K, v ∈ V で生成されることから, g ◦ f(x ⊗ v) = x ⊗ v を示せばよい. 実際に計算し, 左辺 = 1 ⊗ xv = 右辺.
問 題 34. φ : V × W → V′ ⊗ W′, φ(v, w) = f (v) ⊗ g(w) が 双 線 形 で あ る こ と が 見 て と れ る. 実 際 例 え ば 第 1 成 分 に 関 し て, φ(av + bu, w) = f (av + bu) ⊗ g(w) = (af (v) + bf (u)) ⊗ g(w) = a(f(v) ⊗ g(w)) + b(f(u) ⊗ g(w)) = aφ(v, w) + bφ(u, w). 従っ て問題にいう線形射f ⊗ g が引き起こされる. 線形射f
′′ : V′ → V′′, g′′ : W′ → W′′ に 対し
(f′⊗ g′) ◦ (f ⊗ g) = f′◦ f ⊗ g′◦ g
が成り立つことが, V ⊗ W の生成元 v ⊗ w, v ∈ V, w ∈ W の行き先を見ることで確かめ られる. また
idV ⊗ idW = idV ⊗W
も確かめられる. さて, f, g ともに同型のとき, f ⊗ g は f
−1
⊗ g−1 を逆写像にもち, 従っ
て同型であることを見る. 上で確かめたことから
(f−1⊗ g−1) ◦ (f ⊗ g) = f−1◦ f ⊗ g−1◦ g = idV ⊗ idW = idV ⊗W.
同様に, (f ⊗ g) ◦ (f−1⊗ g−1) = idV′⊗W′.
問題 35. 指示のとおり, 定理5.1 の証明に倣えばよい.
問 題 36. 最 初 の 射 に 関 し て の み 示 す(第 2 の 射 に つ い て も 同 様). φ : V1 × V2× V3 → (V1⊗ V2) ⊗ V3, φ(v1, v2, v3) = (v1⊗ v2) ⊗ v3 が多重線形であることが確かめられるから, 線形射f : V1⊗ V2⊗ V3 → (V1⊗ V2) ⊗ V3, f (v1⊗ v2⊗ v3) = (v1⊗ v2) ⊗ v3 が引き起こ される. 各 Vr の基底{v
(r)
i }i∈Ir を一組ずつ選ぶ. 定理5.1 の証明に倣うと, V1⊗ V2⊗ V3
が{v
(1)
i ⊗ v(2)j ⊗ vk(3)}(i,j,k)∈I1×I2×I3 を基底にもつことがわかる. また命題5.1B を2回 繰り返して用い, (V1⊗ V2) ⊗ V3 が{(v
(1)
i ⊗ vj(2)) ⊗ v(3)k }(i,j,k)∈I1×I2×I3 を基底にもつこ
とがわかる. f (v
(1)
i ⊗ v(2)j ⊗ v(3)k ) = (vi(1)⊗ v(2)j ) ⊗ v(3)k ,つまり f は基底を基底の上に1 対1に写すから線形同型である.
問 題 37. 3 つ の 可 換 図 式 の そ れ ぞ れ か ら, (1) 積 が 結 合 的 で あ る こ と, (2) iA(1) が 単 位 元 で あ り 従 っ て iA が 単 位 元 を 保 つ こ と, (3) 積 が 可 換 で あ る こ と が 従 う. 積 A × A → A, (a, b) 7→ mA(a ⊗ b) は 双 線 形 だ か ら, 分 配 律 が 満 た さ れ る. こ う し て A (仮定から ̸= 0) は(可換)環になる. 第2の可換図式から従うこととして, A における スカラー倍 xa, x ∈ K, a ∈ A は積 iA(x)a に一致する. これと iA の線形性から, iA は 積を保ち, 従って環の射である.
問題 38. 一般に, h が全単射で f = g ◦ h が成り立つとき, f が全射/単射 ⇔ 全射/単 射. いまの場合, C の積の可換性から, ひねり射τA,B (5.1 節の例: これは全単射)を以て µ = µ′◦ τA,B. 上の一般的事実から, µが単射 ⇔ µ′ が単射.
問題 39. K 代数射 µ を表すのに, 関わる K 代数を添え字で表し, またこれを全射とし て, 例えば
µ1,2,3: A1⊗ A2⊗ A3 → A1A2A3
にように表す. C における積の結合律から,この µ1,2,3 は, 問題36で得た同型A1⊗ A2⊗ A3 −→ (A≃ 1⊗ A2) ⊗ A3 と
µ12,3◦ (µ1,2⊗ idA3) : (A1⊗ A2) ⊗ A3 → A1A2⊗ A3 → A1A2A3 との合成に一致する. 問題38 解答の冒頭にある一般的事実から,
A1, A2, A3がK 上線形無関連 ⇔ µ1,2,3 が単射 ⇔ µ12,3◦ (µ1,2⊗ idA3) が単射.
最後の条件 (a) µ12,3◦ (µ1,2⊗ idA3) が単射 が
(b) µ1,2 : A1⊗ A2 → A1A2 が単射(同値に全単射), かつ (c) µ12,3 : A1A2⊗ A3 → A1A2A3 が単射
と同値になることを示せばよい. 一般に線形射 f : V → V
′
とベクトル空間 W ̸= 0 に 対し,
f が単射/全射 ⇔ f ⊗ idW : V ⊗ W → V′⊗ W が単射/全射
が成り立つ(これを確かめよ). このうち ⇒を用い, (b)かつ (c) ⇒ (a) が従う. 逆を示す ため, (a) を仮定すると, µ1,2⊗ idA3 は単射. 上の一般的事実の ⇐ から (b)が従う. 再び
⇒ によりµ1,2⊗ idA3 は全単射だから, 問題38 解答冒頭の一般的事実から (c) が従う. 個数を n に一般化しても同様. その場合の詳細略す.
問題 40. f = σ1⊗ · · · ⊗ σr とおく. この f はもとよりK 線形射だから,これが K 代数
射であることを示すには,あと(乗法)単位元と積を保つことを見ればよい. A1⊗ · · · ⊗ Ar
の単位元は1⊗· · ·⊗1である. これはf によりσ1(1)⊗· · ·⊗σr(1) = 1⊗· · ·⊗1,すなわち A′1⊗· · ·⊗A′rの単位元に写る. f (αβ) = f (α)f (β)を示すのに, (α, β) 7→ f(αβ), (α, β) 7→ f (α)f (β) がともに双線形であることから, α = a1⊗ · · · ⊗ ar, β = b1⊗ · · · ⊗ br として
よい. この場合,
f (αβ) = f (a1b1⊗ · · · ⊗ arbr) = σ1(a1b1) ⊗ · · · ⊗ σr(arbr)
= σ1(a1)σ1(b1) ⊗ · · · ⊗ σr(ar)σr(br)
= (σ1(a1) ⊗ · · · ⊗ σr(ar))(σ1(b1) ⊗ · · · ⊗ σr(br)) = f (α)f (β).
各σi が同型の場合, 問題33 の解答と同様にして, f が σ
−1
1 ⊗ · · · ⊗ σr−1 を逆写像にもつ
同型であることが従う.
問題 41. ρ は同型であるとすでにわかっているから, 与えられ対応が ρ の右逆であるこ と, すなわち各 1 ≤ i ≤ r に対し σ1⊗ · · · ⊗ σr の Li への制限(σ1⊗ · · · ⊗ σr)|Li が σi
に等しいことを見れば十分だが, これは易しい. テンソル積による表示で Li の元 x は, i 番目の因子に x が現れる1 ⊗ · · · ⊗ x ⊗ · · · ⊗ 1 ∈ L1⊗ · · · ⊗ Li⊗ · · · ⊗ Lr となることに
注意すればよい.
問題 42. (1) Γ が巡回群の場合. 一般に, アーベル群 Γ からアーベル群A への群射全体 が点ごとの演算に関してなす群を Hom(Γ, A) と書こう. Γ が位数 m の有限巡回群の場
合, Γ の生成元 g を勝手に選ぶと,各ϕ ∈ Hom(Γ, A) に対しϕ(g) ∈ A はmトーション, すなわち ϕ(g) ∈mA. さらに ϕ 7→ ϕ(g) が群の同型
Hom(Γ, A)−→≃ mA
を与えることが確かめられる. いまの場合, m := #Γ は n を割り, 従って ζm∈ K (例え ばζ
nn/m ∈ K は1の原始 m 乗根) だから, m(K×) は ζm が生成する位数 m の巡回群. 従って
X(Γ) = Hom(Γ, K×) ≃m(K×) = ⟨ζm⟩ ≃ Γ.
(2) 一般の場合. まず一般に, アーベル群の直積 Γ = Γ1× · · · × Γr に対し, 各 Γi への
制限が与える
Hom(Γ, A) →
r
∏
i=1
Hom(Γi, A), ϕ 7→ (ϕ|Γ1, . . . , ϕ|Γ1)
が群の同型であることが確かめられる. さていまの場合, 有限生成アーベル群の基本定理 から Γ はある巡回部分群たち Γ1, . . . , Γr たちの直積 Γ1× · · · × Γr に等しい. 従って
X(Γ) ≃
r
∏
i=1
X(Γi).
各Γi の位数は必然的にn を割るから, (1) の場合の結果から X(Γ) ≃
r
∏
i=1
Γi = Γ.