• 検索結果がありません。

和歌山県サンゴ調査2010報告書 環境生活総務課 自然環境室|和歌山県ホームページ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "和歌山県サンゴ調査2010報告書 環境生活総務課 自然環境室|和歌山県ホームページ"

Copied!
102
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

平成22年度和歌山県サンゴ分布状況調査

報告書

テーブル状サンゴの大群落(田辺市沖島)

平成22年(2010)年12月

株式会社 串本海中公園センター

(2)

調 査 要 領

委託者 和歌山県

受託者 株式会社 串本海中公園センター

調査名 平成22年度和歌山県サンゴ分布状況調査

目的 サンゴやその他の海洋生物の分布現況の把握

対象海域 和歌山県みなべ町(千里浜)∼串本町(田並田の崎)

調査方法 マンタ法やスキューバを使用した直接観察

現地調査実施日 平成22年6月16日∼10月14日

調査および執筆担当者

計画・調整・調査( サンゴ類等) ・最終評価 串本海中公園センター 学芸員 野村恵一

マンタ調査 学芸員 宇井晋介

調査(マンタ調査・魚類) 研究員 小寺昌彦

調査(マンタ調査・大型底生無脊椎動物類) 研究員 吉田

調査(マンタ調査・海藻類) 研究員 中村公一

(3)

はじめに

紀伊半島南部の海岸線は、断崖、リアス式海岸、海食洞、海岸段丘、奇岩群などの変化 に富んだ特色ある自然海岸地形を有し、三重県紀北町海山地区から和歌山県串本町田並地 区に至る海岸は吉野熊野国立公園に、串本町田並地区から白浜町白良浜に至る海岸は熊野 灘海岸県立自然公園に、白浜町白良浜からみなべ町千里浜に至る海岸は田辺南部白浜海岸 県立自然公園にそれぞれ指定されている。

紀伊半島南部の沿岸海域は、黒潮の強い影響を受けてより温暖な環境が形成され、本州 では特異的に熱帯性生物が豊富に見られる。その代表が造礁サンゴ(以下単にサンゴと呼 ぶ)で、特に紀伊半島突端に位置する串本町浅海域ではサンゴの種多様性とバイオマスは 高く、最も卓越した底生動物群集として出現し、サンゴ礁域と同様に浅海生態系の根幹を なす重要な役割を担っていると考えられている。串本におけるサンゴを中心としたこのよ うな生態系は世界最北のサンゴの海として高く評価され、1970年に吉野熊野国立公園内に 海中公園地区が指定され、また、2005年にラムサール条約湿地が登録されている。

近年、吉野熊野国立公園内においては環境省により浅海海域の生物分布調査が実施され、 沿岸海域の自然資質の現況が明らかになっているが、それ以西の熊野枯木灘海岸県立自然 公園ならびにに田辺南部白浜海岸県立自然公園においてはこのような調査は乏しく、1989 年に和歌山県全域を対象に串本海中公園センターによって実施されたサンゴ調査(藻場も 同時に調査)以外では広範囲を対象とした調査は見当たらない。また、串本町内では、 1990年代初頭から継続する高水温現象により、サンゴなどの熱帯性生物が分布を広げる反 面、大型藻類などの温帯性生物が減少するといった生物相の変化が生じており、これは紀 伊半島南部の広域においても普遍的な現象であることが予想される。さらに、サンゴが増 加する一方で、サンゴを食するオニヒトデの増殖も串本のみならず紀伊半島南西岸の広い 範囲から情報が寄せられている。

このような背景を踏まえ、紀伊半島南西岸のサンゴ分布等の現況を把握する目的で、串 本町田並田の崎からみなべ町千里浜にかけて、すなわち、熊野枯木灘海岸県立自然公園な らびにに田辺南部白浜海岸県立自然公園を対象に、2010年6月∼10月かけて調査を実施した。 本報告書はこの調査結果を取りまとめたものである。

末尾に、本報告書を作成するに当たり、情報の提供ならびに協力を賜った以下の諸機関、 諸氏に感謝申し上げる。環境省近畿地方環境事務所、和歌山東漁協、和歌山南漁協、紀州 日高漁協みなべ支所、ミスオーシャンダイビングショップ(白浜町)、ダイビングショップ サンマリン(みなべ町)、玉井済夫、酒井卓雄。

(4)

目 次

調査要領. . . 1

はじめに. . . 2

目次. . . 3

調査方法. . . 4

結果と評価 1. 概況調査 1- 1. サンゴの分布概況. . . 10

1- 2. サンゴの量的変化. . . 27

1- 3. オニヒトデの分布. . . 44

1- 4. 大型藻類(藻場)の分布と変化. . . 47

1- 5. 概況調査のまとめ. . . 63

2. 詳細調査 2- 1. 環境・景観的特徴. . . 65

2- 2. 生物的特徴 2- 2- 1. サンゴ. . . 71

2- 2- 2. 海藻類. . . 88

2- 2- 3. サンゴを除く大型底生無脊椎動物類. . . 98

2- 2- 4. 魚類. . . 112

2- 2- 5. 総合評価. . . 129

3.総括. . . 131

写真 1. 概況調査 1- 1. 概況調査における海中の状況. . . 137

1- 2. 概況調査における陸上景観の状況. . . 138

2. 詳細調査地点の海中状況. . . 140

(5)

調査方法

紀伊半島南西岸のサンゴを主体とする浅海海産生物の分布現況を把握する目的で、熊野 枯木灘県立自然公園ならびに熊野灘海岸県立自然公園を含む串本町田並田の崎から白浜町 白良浜にかけての海岸(図1)を対象に調査を実施した。調査は、対象域内のサンゴ等の生 物分布概況を把握するための概況調査と、生物の詳細な分布を把握するための詳細調査の 2つを実施した。以下に、これらの調査方法を述べる。

図1.調査対象域

A 概況調査

マンタ法を用いて、調査対象域内の海岸線に沿ったサンゴの大まかな被度や組成の分布 概況を把握した。また、サンゴとともに大型海藻類やその他の特徴的な生物の分布も把握 した。なお、マンタ法とは、海岸線に沿ってゆっくりと航行する船の船尾から曳航板を垂 らし、観察者はその板につかまり(図2)、水面もしくは水深2m程度潜行して水深10m以浅 の海底面の生物分布を観察し、船上の記録者に声や指信号(図3)によってその情報を伝達 する調査手法である。船上の記録者は、2万5千分の1の地形図に周囲の景色を重ねて位置を 目測で特定し、地図上に生物の分布情報を記録した。

和歌山県南部

みなべ町

田辺市 白浜町

すさみ町

串本町

太地町 那智勝浦町

新宮市

枯木灘 熊野灘

潮岬 10 km

調査

対象域

(6)

図2. マンタ法による調査作業図

図3. マンタ法調査における指信号の解説

(7)

B 詳細調査

調査対象域内の中で、概況調査や報道、ダイビングショップ、漁師からの聞き取りによ り、生物の分布特性の資質が高いと思われた海域の中から、以下の7地点を選出した(図4、 5)。各地点名と地点選出理由を以下に記す。

①白浜町権現崎:サンゴ群生地として知られる。

②白浜町四双島:サンゴ群生地として知られる。

③田辺市天神崎:エダミドリイシ(稀種)の群生が知られる。

④田辺市沖島:サンゴ群生地として知られる。

⑤みなべ町ショウガセ:オオカワリギンチャク(稀種)の最大の群生地として知られる。

⑥みなべ町目津崎:概況調査で新たなサンゴ群生地として確認される。

⑦白浜町高森:サンゴ群生地として知られる。

図4.詳細調査地点:①権現崎、②四双島、③天神崎、④沖島、

⑤ショウガセ、⑥目津崎、⑦高森 白浜町

田辺市 みなべ町

千里

南部

芳養

元町

新庄

瀬戸

湯崎

富田 鴨居

2 km

(8)
(9)

調査は図4と5に示した各調査地点に船で赴き、船上から 100m の長さの側線を基本的 に岸と垂直になるように海底面に直線状に敷設し、スキューバを用いて環境、景観、生物 群集、生物群集撹乱の4項目について調査を実施した。各項目の調査方法を以下に記す。

①環境調査

環境は地形及び物理環境(水温、水平透視度)について調査し、地形は測線下の底質と 水深を 5m 間隔で記録した。水平透明度は目視で行い、水温と水深はダイブコンピュータ 等の計器により実測した。

②景観調査

船上からの陸域とスキューバ潜水による水中について写真撮影を行い記録を行った。

③生物群集調査

調査対象生物群はサンゴ類、サンゴ類を除く大型底生無脊椎動物類、海藻類、魚類の4項 目とした。資料収集は、基本的に海岸線と垂直に直線状に100mの測線を海底に敷設し、スキ ューバを用いた目視観察によって行った。各生物群の調査方法は以下のとおりである。

ア)サンゴ類

ライントランゼクト法により調査を実施した。ライントランゼクト法とは、側線下にあ るサンゴの長さを群体別・種別に記録し、組成・量を把握する手法である。また、測線周 辺に出現したサンゴの種名を目視記録するとともに、周囲に特徴的な群落が観察された場 合にはその概況も記録した。

イ)海藻類

ラインポイント法を用いて実施した。ラインポイント法とは、100mの測線下に20m間隔で 調査点を6ヶ所を設け、この点を中心とした半径3mの範囲を調査区とし(図6)、調査区内に 出現した生物の種別の量を目視記録する方法である。海藻類の定量においては、種別の被 度を目視記録し、被度10%未満に1ポイント、10∼19%に2ポイント、20∼49%に3ポイント、 50%以上に4ポイントを与えて集計した。なお、対象藻類は原則として肉眼でみられるもの とし、微小なものは除外した。

ウ)サンゴを除く大型底生無脊椎動物

ラインポイント法を用い、個体性動物、群体性刺胞動物を記録集計した。なお、個体性 動物に関しては、出現個体数が1∼9個体に1ポイント、10∼19個体に2ポイント、20個体以 上に3ポイントを与えて記録集計した。また、群体性の刺胞動物については、被度1%未満

(10)

のものに1ポイント、1∼4%のものに2ポイント、5%以上のものに3ポイントを与えた。対 象となる生物は、目視観察できる大型の底生無脊椎動物とし、石の下や岩の割れ目の奥な どに隠れて見えないものや微少なものは対象外とした。

0 20 40 60 80 100 ( m)

調査区(半径3m)

図6. ラインポイント法における調査区の設定

エ)魚類

敷設した100m測線を用い、幅10m(ラインの左右5m)、長さ20mを1調査区として設定し、 合計5つの調査区内に出現した種ごとの個体数に、以下に示すポイントを与えて記録・集計 した。1個体:1ポイント、2∼10個体:10ポイント、11∼50個体:30ポイント、51個体以上

:50ポイント。

④生物群集の撹乱

生物群集調査時に、生物群集への目立った撹乱の有無について目視観察をし、記録した。

なお、詳細調査の評価にあたっては、環境省が今回調査と同様の手法で吉野熊野国立公 園内ならびにその隣接海域において、2009年に実施した調査「平成21年度吉野熊野国立公 園海域景観資質(サンゴ)調査報告書」から、串本町内の熊野枯木灘県立自然公園内の4点

(錆浦、名近崎、双島、安指)の結果も引用比較した。

(11)

結果と評価

1.概況調査

マンタ法によって調査を実施した日時と範囲を表1に示す。

マンタ法において、サンゴ、オニヒトデならびに大型藻類の分布概況について把握が行 えたが、他の生物については特筆すべきものは観察されなかった。以下に、上記の種もし くは生物群の調査結果について項を分けて記す。

1−1.サンゴの分布概況

サンゴについては、生きたサンゴの被度と大まかな組成、死んだサンゴ被度やその状況 を観察した。観察はマンタ法によって連続的に実施したが、観察者から船上の記録者への 情報連絡は数分間隔で行った。また、連絡は被度階級や組成が変化した場合には必ず行っ た。以下に海域別のサンゴの分布概況を述べる。また、図7にサンゴの分布概況を示す。図 7には基本的に観察者から情報連絡があった地点に被度階級記号をプロットした。記号の全 くない場所は、視界不良や波浪により観察できなかった海域である。なお、概況調査で情 報が欠落した海域の一部には、詳細調査における情報を補填し、本文や図7に反映した。

1−1−1.みなべ町(千里∼堺)沿岸:図7- 1、7- 2

目津崎周辺ならびに堺・森の鼻地先前はサンゴの生育は比較的良好で、サンゴの多い場 所での被度は20%に達した。全体的にエンタクミドリイシの出現が目立ったが、クシハダ ミドリイシの混生も認められた。当該海域に生息するエンタクミドリイシとクシハダミド リイシは、直径が共に50c m以下であり、この10年ほどの間に定着し成長した若い個体群で

表1.概況調査の日時と範囲

開始 終了

6月16日 10:20∼16:00 みなべ町千里 白浜町鴨居

6月17日 9:40∼15:30 白浜町富田 白浜町志原

6月21日 9:30∼13:40 白浜町笠浦 すさみ港 風雨が激しなったため午後の作業を中断 6月25日 9:30∼16:00 すさみ港 すさみ町江住

7月22日 9:30∼16:00 すさみ町江住 串本町田並

田辺湾内濁水の影響で通過、白浜町四双島西岸、 千畳敷∼三段壁は波浪のため通過

範囲 時間

調査日 備考

(12)

あるとみなされた。

1−1−2.田辺市天神崎、沖島沿岸:図7- 2

調査域全体においてサンゴの生育は比較的良好であった。特に沖島の北東岸∼南西岸に かけてはクシハダミドリイシやエンタクミドリイシ群体を中心に被度が著しく高く(70% 以上)、美しいサンゴ景観が形成されていた。また、沖島北岸の岸近くではニホンミドリイ シの群落も観察された。また、これらのミドリイシ類群体はどれも大型で、大きなもので は直径200c mを越えており、かなり古くから生育している個体群であると思われた。

天神崎周辺はエンタクミドリイシの出現が目立ったが、部分的にクシハダミドリイシも 混生し、元島前では被度50%ほどの高密度群落が観察された。ただし、天神崎南西岸∼南 東岸にかけては死んだエンタクミドリイシが目立った。当該海域ではオニヒトデの疑似食 痕が散見されたため、サンゴの斃死はオニヒトデの食害の可能性が持たれる。当該海域に 生息するエンタクミドリイシとクシハダミドリイシは、直径が共に100c m以下であり、沖島 のものに比べると一回り以上小さいが、みなべ沿岸の個体群に比べると一回りどほ大きく、 みなべ沿岸よりも数年早く定着したやや若い個体群であると思われた。

1−1−3.白浜町瀬戸周辺沿岸:図7- 3

四双島南西岸ではニホンミドリイシやエンタクミドリイシ群体を主とする被度70%以上 の高密度群落が観察された。ミドリイシ類群体はどれも大型で大きなものでは直径200c mを 越えており、老成した個体群であるとみなされた。また、権現崎北岸でクシハダミドリイ シを、南岸ではエンタクミドリイシをそれぞれ主体としたやや被度の高い群落が観察され たが、直径200c mを越えるような大型の老成群体は見られず、直径100c m前後のものが主体 をなしていることから、比較的若い個体群であると見なされた。

1−1−4.白浜町鴨居周辺沿岸:図7- 4

全海域を通じて被度は1%未満で、サンゴの生育は不良であった。鴨居港600m沖には高森 と呼ばれる東西1500mほど続く細長い暗礁(最浅部で水深7m)があり、その上面にはかつて 高密度に密生していたテーブル状サンゴの斃死群体が死屍累々と続き、生きたサンゴはほ とんど認められなかった。なお、鴨居西岸の八十磯前では、ハナヤサイサンゴの出現が目 についた。

1−1−5.白浜町富田周辺沿岸:図7- 5

西谷地先前の湾内において、やや大型のクシハダミドリイシとエンタクミドリイシの密 度の高い群落が観察された。また、袋湾口ならびに袋湾内においてもやや被度の高いサン

(13)

ったところ、以下の17種のサンゴが確認された。クシハダミドリイシ、ニホンミドリイシ、 エンタクミドリイシ、ハナガササンゴ、フタマタハマサンゴ、コブハマサンゴ、シコロサ ンゴ、キッカサンゴ、フカトゲキクメイシ、キクメイシ、ゴカクキクメイシ、オオカメノ コキクメイシ、パリカメノコキクメイシ(優占)、タカクキクメイシ、トゲルリサンゴ、ナ ガレハナサンゴ、オオスリバチサンゴ(最大直径約2m)。短時間のスノーケリングでは正確 なサンゴ相の把握は困難であるが、それにも関わらずこのようなたくさんのサンゴが認め られたことは、当該海域のサンゴの多様性の高さが窺われる。

1−1−6.白浜町椿周辺沿岸:図7- 6

見草崎西岸前では大型のニホンミドリイシとエンタクミドリイシの高密度な群落が観察 されていたが、大量に繁殖したオニヒトデによって大きく食害を受けていた。特に見草崎 北西岸では、被度70%ほどのニホンミドリイシ・エンタクミドリイシ混成群落の大方が食 害されていた。見草湾以北では、被度の高いサンゴ群落は観察されなかったが、椿湾北岸 で直径約2mの大型のコブハマサンゴが観察された。

1−1−7.白浜町日置周辺沿岸(笠甫∼伊古木):図7- 7、図7- 8

被度の高いサンゴ群落は観察されなかったが、笠甫浦∼志原ならびに伊古木海域では、 被度10∼30%のテーブル状サンゴ(おそらくエンタクミドリイシ)の完全斃死群落が散見 された。群落の状況から死後5年前後と考えられ、斃死原因はオニヒトデもしくは2005年の 低水温現象と推察された。なお、笠甫湾の西隣に位置する小湾では直径約2mの大型のコブ ハマサンゴが観察された。また、ここでは1989年の調査においてエダミドリイシ群落が観 察されているが、今回の調査ではこれは発見できなかった。

1−1−8.すさみ港周辺沿岸:図7- 8

被度の高いサンゴ群落は観察されなかった。

1−1−9.すさみ町道の駅周辺沿岸:図7- 9 被度の高いサンゴ群落は観察されなかった。

1−1−10.すさみ町江住周辺沿岸:図7- 10

被度の高いサンゴ群落は観察されなかったが、江須崎以東の海域では被度10- 50%のテー ブル状サンゴ(おそらくエンタクミドリイシ)の完全斃死群落が散見された。これまでの 海域と同様に、群落の状況から死後5年前後と考えられ、斃死原因はオニヒトデもしくは 2005年の低水温現象と推察された。また、江須崎東岸中央付近にあった県下最大のサンゴ 群体であるコブハマサンゴ(目測での最大長径約8m、高さ約5m)の完全斃死も認められた。

(14)

本群体の斃死原因も、周囲のテーブル状サンゴと同様に、オニヒトデもしくは2005年の低 水温現象と推察された。

1−1−11.串本町和深周辺沿岸:図7- 11

安指∼田子にかけての海域でクシハダミドリイシを主体とする被度50%以上の高密度な サンゴ群落が観察された。また、安指地先前では高密度なスギノキミドリイシ群落ととも に、大型のコブハマサンゴ群(長径5m、3m、3m)も観察されたが、このコブハマサンゴ群 は群体の半分以上で斃死が認められた。また、大浦では群体全体が完全に生きた大型のコ ブハマサンゴ(長径約3. 5m)が観察された。さらに、大浦∼安指に至る海域では多くのテ ーブル状サンゴの斃死が認められた。この斃死原因は当該海域で2004年より増殖を続けて いるオニヒトデの食害であるとみなされた。

1−1−12.串本町江田周辺沿岸:図7- 12

田子∼田の崎にかけての海域は比較的サンゴの被度は高いが、特に田子地先前と双島北 東岸ではクシハダミドリイシの高密度な群落が観察された。また、田子地先の東岸ではス ギノキミドリイシの高密度群落も認められた。なお、従来、当該海域は現在以上の被度の 高い海域であったが、2004年のオニヒトデ大量発生以降、被度の減少が続き、現在のサン ゴ分布は、オニヒトデ駆除によって保全されたものである。

まとめ

図7を基に、各地点の被度階級を階級別・海域別に集計して表2に示した。また、被度階 級に便宜的に被度値を与え、海域別の平均被度を算出した(表2)。

海域によって海岸線の長さや地点数に大きな差があるので一概に比較できないが、サン ゴの被度が高い海域は、平均被度が20%を越えた田辺、串本(和深)、串本(江田)の3海 域で、逆に被度が低いのは平均被度が1%に届かなかった白浜(鴨居)、白浜(日置)、すさ み(すさみ港)、すさみ(道の駅)、すさみ(江住)の5海域で、すさみ町沿岸は全ての海域 において低被度であった。平均被度の高い海域では、場所によって高密度(被度50%以 上)な美しいサンゴ景観が創出され、そのような場所としては田辺市元島前、田辺市沖島 北東∼南西岸、白浜町四双島南西岸、串本町安指∼田子沿岸(双島北東岸を含む)、串本町 田の崎南東岸が挙げられる。市町村別の平均被度を見ると(表2)、田辺市と串本町は被度 が高いが、白浜町とすさみ町は低い。

サンゴは熱帯性の動物群集であり、高い水温環境を好む。そのため、一般的には水温の 勾配に即した分布、すなわち水温の高い南域は被度が高くて水温の低い北域は被度が低い といった被度勾配が想定される。しかしながら、実際には上述の結果からも分かるように、

(15)

虫藻の光合成生産物に栄養依存しているため、光が良く到達する浅い海域を好む。そのた め、遠浅の海岸地形が分布する場所ではサンゴは生育し易く、逆に、急深な海岸では生育 し難い。調査海域の海岸地形を見ると、白浜町鴨居海域ならびにすさみ町沿岸海域におい ては概して海岸は急深である。従って、これらの海域でサンゴの量(被度)が少ないのは、 この海岸地形の制約を受けている可能性が持たれる。

表2. 海域別・被度階級別の地点数組成と被度

注:本表に示した地点とは、図7に示した被度階級別の記号がプロットされている場所を表す。

みなべ 田辺

瀬戸 周辺

鴨居 周辺

富田 周辺

椿 周辺

日置 周辺

すさ 港周辺

道の駅 周辺

江住 周辺

和深 周辺

江田 周辺

千里∼

天神崎 沖島

瀬戸∼ 権現崎

梶原∼ 鴨居

才野∼ 袋湾

見草崎

市江崎

目戸∼ 伊古木

朝来∼ 下地

口和深

∼長井 長井∼

里野

大浦∼ 田子

田子∼ 田並

1 0- 1 0.5 9 3 12 19 11 32 50 32 53 55 11 2 289

2 1- 10 5.0 11 10 7 0 6 5 1 0 2 2 20 17 81

4 10- 50 25.0 5 7 3 0 8 1 0 0 0 0 5 19 48

5 50< 75.0 0 6 2 0 0 0 0 0 0 0 13 9 30

総地点数 25 26 24 19 25 38 51 32 55 57 49 47 448

平均被度(海域別)% 7.4 26.0 11.1 0.5 9.4 1.7 0.6 0.5 0.7 0.7 24.6 26.3 8.9

平均被度(市町村別) % 7.4 26.0 3.9 0.6 25.4

便宜 被度

地点 合計 被度

階級 被度 範囲

(16)

1−2.サンゴの量的変化

今回の調査と同一の手法(マンタ法)で、今から約20年前の1989年に和歌山県県下全域 にわたるサンゴ調査(以降、前回調査と呼ぶ)が串本海中公園センターによって実施され ている。そこで、両調査で共通した海域において被度の変化を比較し、図8に示した。また、 図8を基に、各地点の被度階級を階級別・海域別に集計し、表2の要領で海域別・市町村別 の平均被度を算出した(表3)。以下に海域別にサンゴ被度の変化を述べる。

1−2−1.みなべ町(千里∼堺)沿岸:図8- 1、8- 2

前回調査ではどの地点も被度は1%未満であり、海域平均被度は0. 5%であった。一方、 今回調査では多くの地点で被度の増加が認められ、平均被度は8. 0%で、7. 5%の被度増加 となった。この被度増加は、10年程前から定着し始めた多量の新規加入個体の成長に伴う ものである。加入群体数が多く、また、成長状態の良好な目津崎地先前や森の鼻地先前で は、今後、サンゴが順調に成長を続けることができれば、この5年以内に被度50%を越える 美しいサンゴ景観の形成が期待される。

1−2−2.田辺市天神崎、沖島沿岸:図8- 2

前回調査では天神崎周辺でしか調査が実施されていないが、当該海域でもみなべ海域と 同様に被度の増加が認められ、前回調査における平均被度は0. 8%、今回調査における平均 被度は13. 0%で、12. 2%の被度増加となった。この被度増加は多量の新規加入個体の成長 に伴うものであり、今後、サンゴが順調に成長を続けることができれば、この5年以内に美 しいサンゴ景観が形成されるものと思われる。

なお、前回、沖島は調査が実施されていないが、地元の漁師の聞き取りによれば、田辺 湾では本島周辺にだけ、50年以上前からテーブル状サンゴが群生していたとのことである。 また、今から80年前に実施されたサンゴ調査においても、沖島にテーブル状サンゴ(エン タクミドリイシ)が群生することが記されている(杉山 1937)。

1−2−3.白浜町瀬戸周辺沿岸:図8- 3

前回調査の平均被度は0. 8%、今回調査の平均被度は3. 7%で、2. 9%の被度増加となった。 みなべ海域や田辺海域に比べると被度増加率は高くないが、権現崎周辺のやや被度の高い サンゴ群落は新しく形成されたものであると見なされる。なお、白良浜北岸には、東アジ ア海域の固有種で日本が主分布域であるエダミドリイシ Acr opor a pr ui nos a が群生するこ とが以前より知られていたが、この群落は近年の護岸工事によって消失したことが確認さ れた。天神崎を除いて、前回調査で観察された本種群落の多くが、今回調査で確認されて

(17)

おらず、串本海域のみならず県下の広域で本種は減少傾向にあることが窺える。

四双島では地元の漁師により古くからテーブル状サンゴの群生が確認されており、今回 の調査でも大型の老成したサンゴの群生が確かめられた。しかしながら、当該海域では多 数のオニヒトデとその食害による多量斃死群体が観察され、今後、サンゴ群落の行方が危 惧される。

1−2−4.白浜町鴨居周辺沿岸:図8- 4

前回調査の平均被度は1. 0%、今回調査の平均被度は0. 5%で、0. 5%の被度減少となった。 海域全体を通してどの地点も被度は1%未満で、サンゴの生育は不良であった。鴨居港沖に 位置する暗礁(高森)上には、かつて高密度なテーブル状サンゴを主体とするサンゴ群落 が分布していたが、今回の調査ではほとんど全てのサンゴが斃死しており、その時期は死 んだサンゴ骨格の状態から死後5年ほどであると推察された(詳細調査参照)。

1−2−5.白浜町富田周辺沿岸:図8- 5

前回調査の平均被度は0. 5%、今回調査の平均被度は9. 4%で、8. 9%の大幅な増加となっ た。増加が著しいのが西谷地先と袋湾口で、特にわずか5分程度のスノーケリングで17種も のサンゴが記録された袋湾口のサンゴの種多様性の高さ(1- 1- 5参照)は特筆される。この 種多様性の高い群落は近年、新たに形成されたものであろう。

1−2−6.白浜町椿周辺沿岸:図8- 6

前回調査の平均被度は0. 5%、今回調査の平均被度は1. 7%で、1. 2%の微増となった。増 加は主に見草崎で認められたが、当該海域では近年形成された高密度なテーブルサンゴ群 落の大方がオニヒトデによって食害されており、また、現在、生残しているものもオニヒ トデにより食害を受けている最中なため、近い将来にはサンゴ群落が消失する可能性が持 たれる。

1−2−7.白浜町日置周辺沿岸(目戸∼伊古木):図8- 7、8- 8

前回調査の平均被度は0. 7%、今回調査の平均被度は0. 6%で、0. 1%の微減となった。被 度的には前回と変化がないようにみえるが、志原西岸一帯ではこの20年の間に被度20∼30

%のテーブル状サンゴを主体とするサンゴ群集が形成され、それが今回の調査では完全に 斃死しているのが観察された。骨格の状態から、死後5年ほど経過したものであると推定さ れ、その原因はオニヒトデもしくは2005年に生じた異常な低水温現象と推察される(1- 1- 7参照)。

なお、笠甫湾の西隣に位置する小湾では前回調査でエダミドリイシの群落が観察されて いるが、今回の調査では本種群落は発見できなかった。従って、本種群落は消失した可能

(18)

性が持たれるが、透視度が不良であったことが観察に影響したことも否定できない。

1−2−8.すさみ港周辺沿岸:図8- 8

前回・今回の両調査共に平均被度は0. 5%で、被度変化は認められなかった。

1−2−9.すさみ町道の駅周辺沿岸:図8- 9

前回調査の平均被度は0. 8%、今回調査の平均被度は0. 7%で、平均被度値では変化はほ とんど認められなかった。ただし、地点別にみると、口和深南西岸では若干の増加が、見 老津前では若干の減少が認められた。

1−2−10.すさみ町江住周辺沿岸:図8- 10

前回調査の平均被度は2. 0%、今回調査の平均被度は0. 7%で、1. 3%の減少となった。地 点別にみると、見老津港前、西津浦前、江住川河口前で被度の低下が目立った。また、西 津浦前や里野前の江須崎以東の海域では、この20年の間に被度10∼50%のテーブル状サン ゴを主体とするサンゴ群集が所々で形成され、それが今回の調査では完全に斃死している のが観察された。骨格の状態から、死後5年ほど経過したものであると推定され、その原因 はオニヒトデもしくは2005年に生じた異常な低水温現象と推察される。さらに、江須崎東 岸中央付近にあった県下最大のサンゴであるコブハマサンゴ群体も完全斃死していた(1- 1- 10参照)。これも、前回調査以降の出来事であり、斃死原因としてはオニヒトデの可能性 が持たれた。

1−2−11.串本町和深周辺沿岸:図8- 11

前回調査の平均被度は9. 8%、今回調査の平均被度は25. 9%で、16. 1%の増加となった。 被度の増加は全域で認められるが、特に安指港周辺での増加が著しい。また、安指港より 西側では、オニヒトデに食害されたテーブル状サンゴの斃死群体が目立った。

1−2−12.串本町江田周辺沿岸:図8- 12

前回調査の平均被度は18. 2%、今回調査の平均被度は26. 5%で、8. 3%の増加となった。 被度の増加はほぼ全域にわたって認められた。

まとめ

紀伊半島南西岸を①みなべ町(千里∼堺)、②田辺市天神崎・沖島、③白浜町瀬戸周辺、

④白浜町鴨居周辺、⑤白浜町富田周辺、⑥白浜町椿周辺、⑦白浜町日置(目戸∼伊古木)、

⑧すさみ港周辺、⑨すさみ町道の駅周辺、⑩すさみ町見老津周辺、⑪串本町和深周辺、⑫

(19)

串本町江田周辺の12の海域に区分し、それらの海域毎に平均被度値を算出し(表3)、それ に基づいてサンゴ被度分布の変化を図9に示した。海域別にみると、20年前と比較して被度 減少が認められたのは白浜町鴨居周辺と日置周辺、すさみ町道の駅周辺と江住周辺の4海域、 被度増加が認められなかったか、増加率が5%未満のわずかに増加した海域は、白浜町瀬戸 周辺と椿周辺、すさみ港周辺の3海域、被度増加率が5%以上10%未満の大きく増加した海 域はみなべ周辺、白浜町富田周辺、串本町江田周辺の3海域、被度増加率が10%以上の著し く増加した海域は田辺周辺、串本町和深周辺の2海域で、全海域では4. 0%の増加となった。

また、市町村別にみると、20年前と比較して被度減少が認められたのがすさみ町、わず かに増加したのが白浜町、大きく増加したのがみなべ町、著しく増加したのは田辺市と串 本町であった。紀伊半島南西岸では1990年代初頭以降、高水温現象が継続し、熱帯性動物 群集であるサンゴはこの環境変化に応答して増加したことが予想される。しかしながら、 実際に顕著に増加したのは、12海域中で半分以下の5海域に留まり、市町村別でも顕著な増 加は半数に留まった。顕著な増加とならなかった海域は、サンゴに対して何らかの攪乱原 因があったものと考えられ、その主要因としてオニヒトデが挙げられる。また、はっきり とした割合は算出できないが、2005年の突発的な異常低水温現象もサンゴにかなりのダメ ージを与えたものと推察される。

表3- 1.今回調査と1989年調査との海域別サンゴ平均被度比較

調査名 平均

みなべ 田辺 被度

瀬戸 鴨居 富田 椿 日置 すさみ港 道の駅 江住 和深 江田

1989年調査 0.5 0.8 0.8 1.0 0.5 0.5 0.7 0.5 0.8 2.0 9.8 18.2 3.8 2010年調査 8.0 13.0 3.7 0.5 9.4 1.7 0.6 0.5 0.7 0.7 25.9 26.5 7.8 7.5 12.2 2.9 - 0.5 8.9 1.2 - 0.1 0.0 - 0.1 - 1.3 16.1 8.3 4.0

表3- 2. 今回調査と1989年調査との市町村別サンゴ平均被度比較

調査名 紀南

みなべ 田辺 白浜 すさ 串本 全体 1989年調査 0.5 0.8 0.7 1.2 13.9 3.8 2010年調査 8.0 13.0 2.7 0.6 26.0 7.8 7.5 12.2 2.0 - 0.6 12.1 4.0

(20)

10 km

ン 被度 0~1 %

1~10%

10~50%

和歌山県南部

みなべ

田辺

白浜

すさみ

串本

みなべ

田辺

白浜

すさみ

串本

(21)

1−3.オニヒトデの分布

概況調査において、オニヒトデが観察された地点と、直接観察できなかったもののサン ゴ上にオニヒトデによると思われる食痕(疑似食痕:白いパッチ状の模様)が観察された 地点を図7に示した。以下に海域別にこれらの状況を述べる。

1−3−1.みなべ町(千里∼堺)沿岸:図7- 1、7- 2 オニヒトデならびに疑似食痕は観察されなかった。

1−3−2.田辺市天神崎、沖島沿岸:図7- 2

天神崎周辺と沖島西岸で疑似食痕が観察された。前者では疑似食痕が特に目に付き、10 個体のオーダーでオニヒトデが分布している可能性が持たれたが、後者では疑似食痕数は 些少であり、オニヒトデは分布しても数個体程度と思われた。

1−3−3.白浜町瀬戸周辺沿岸:図7- 3

四双島南西岸において多数のオニヒトデと多量の食痕が観察された。当該海域でのオニ ヒトデは異常発生のレベルと判定された。

1−3−4.白浜町鴨居周辺沿岸:図7- 4

オニヒトデは鴨居沖の暗礁(高森)で観察されたが、数は少なく数個体である。高森は 東西1500mにもわたる大きな瀬であり、その上面にはかつてテーブル状サンゴが高密度に群 生していたが、今は生きたサンゴはほとんど見られない。その原因は5年ほど前にオニヒト デが異常発生したためであると推察された。

1−3−5.白浜町富田周辺沿岸:図7- 5

西谷ならびに袋崎前で疑似食痕が観察された。いずれも食痕数が少ないことから、オニ ヒトデの分布個体数は多くはないものと思われた。

1−3−6.白浜町椿周辺沿岸:図7- 6

見草崎を中心にオニヒトデが観察された。見草崎西岸∼南岸にかけては、オニヒトデの 発見個体数が多く、異常発生状態であるとみなされた。また、サンゴの被食率も70%近く と見積もられ、近い将来、当該海域のサンゴ群集は消失する可能性が持たれた。

(22)

1−3−7.白浜町日置周辺沿岸:図7- 7、7- 9 オニヒトデ、疑似食痕ともに観察されなかった。

1−3−8.すさみ港周辺沿岸:図7- 8

すさみ港の東隣の小湾でオニヒトデ1個体が観察されたが、他の地点ではオニヒトデ、疑 似食痕ともに観察されなかった。

1−3−9.すさみ町道の駅周辺沿岸:図7- 9

オニヒトデは高浜地先前で1個体のみが観察されたが、疑似食痕は口和深周辺で広く散見 された。

1−3−10.すさみ町江住周辺沿岸:図7- 10

長井地先前でオニヒトデ1個体が観察されたが、他の地点ではオニヒトデ、食痕ともに観 察されなかった。

1−3−11.串本町和深周辺沿岸:図7- 11

赤瀬地先前を中心に、安指∼田子にかけての複数地点でオニヒトデが観察された。また、 同海域のほとんどの地点で疑似食痕も観察された。安指西岸では2004年に突如としてオニ ヒトデの大集団が出現し、サンゴを保全する目的で当該海域を中心に串本町内から6万個体 以上ものオニヒトデが駆除されてきた。安指西岸からすさみ町との境界付近にかけては、 オニヒトデの食害を受け、サンゴ被度は大きく低下した。

1−3−12.串本町江田周辺沿岸:図7- 12

田子地先前ならびに双島沿岸でオニヒトデと疑似食痕が観察された。前項の和深海域と 同様に、当該海域もオニヒトデの発生域であり、食害域が散見された。

まとめ

オニヒトデは前回調査が実施された1989年当時は黒潮の強い影響下にある串本海域を除 いて、県下には分布していなかったと考えられる。また、串本においても観察されること は極めて稀であった。ところが、1990年代後半から琉球列島で大発生が始まり、その発生 域は黒潮流域に伝播し、2004年には高水温現象を背景に串本で初めての現地繁殖集団が発 生した。その後、発生域は紀伊半島を北上し、今回の調査によって田辺市天神崎まで分布 していることが確かめられた。

環境省が実施している国内全域にわたるサンゴ礁調査「モニタリングサイト1000サンゴ

(23)

トデの個体数に応じて、オニヒトデの発生を以下のように定義している。0∼1個体:通常 分布、2∼4個体:多い(要注意)、5∼9個体:準大発生、10個体以上:大発生。環境省の調 査と、今回調査とでは調査手法が異なるが、今回調査結果を環境省調査の発生基準に合わ せると、白浜町の四双島と見草崎、串本町の赤瀬前と田子前は大発生域、天神崎は準大発 生域とみなされる。また、四双島と見草崎はオニヒトデの個体数が多く(個体群はおそら く100のオーダー)て食害が大きく進行しており、サンゴ群落の消失が危惧される。一方、 串本海域では、オニヒトデは多いものの、計画的な駆除によって個体数と食害量が制御さ れ、高密度なサンゴ群落の大方は維持されている。

今回の調査結果とこれまでの観察情報に基づき、串本から田辺に至るオニヒトデの発生 海域において、かつては比較的規模の大きな高密度なサンゴ群生域があったもののオニヒ トデの食害に遭い、現在は極めて低密度のサンゴ分布状態になっている場所が確認された。 それは、白浜町鴨居沖にある大きな暗礁(高森)と串本町安指西岸である。また、すさみ 町沿岸の所々ではサンゴの死滅群落が散見され、その原因は特定されていないが、オニヒ トデの食害の可能性が持たれた。

図10.概念的にみたオニヒトデの分布と食害域 和歌山県南部

みなべ

田辺

白浜

すさみ

串本

10 km

オニヒ 発生域 大発生域

ン 食害死滅域 四双島

見草崎

安指

田子 天神崎

赤瀬 高森

(24)

1−4.大型藻類の分布と変化

今回の調査と同一の手法(マンタ法)で、今から約20年前の1989年にサンゴ調査と併せ て藻場の調査(以降、前回調査と呼ぶ)が実施されている。そこで、両調査で共通した地 点において藻場の変化を比較し図11に示した。また、表4に今回調査と前回調査との藻場出 現地点数の比較を示した。

1−4−1.みなべ町(千里∼堺)沿岸:図11- 1、11- 2

千里地先周辺、目津崎西岸、堺・森の鼻地先前でホンダワラ類の藻場が観察されたが、 カジメ・アラメの藻場は全く観察されなかった。

前回調査では、アラメ・カジメの藻場は9地点で、ホンダワラ類の藻場は6地点で観察さ れている。従って、みなべ海域ではアラメ・カジメの藻場は消失、ホンダワラ類の藻場は かなり減少したものとみなされる。

1−4−2.田辺市天神崎、沖島沿岸:図11- 2

天神崎では1地点でアントクメとホンダワラ類の混成する藻場が観察されたが、他の地点 では全く観察されなかった。沖島では南東岸でホンダワラ類の藻場が観察された。

前回調査では天神崎しか観察されていないが、大方の地点においては顕著な変化は認め られない。

1−4−3.白浜町瀬戸周辺沿岸:図11- 3

番所の鼻北岸の5地点でホンダワラ類の藻場が観察されたが、アラメ・カジメの藻場は観 察されなかった。

前回調査では番所の鼻北岸の2地点でホンダワラ類の藻場が、1地点でホンダワラ類とア ラメ・カジメの混成した藻場が観察されており、当該海域ではこの20年の間にアラメ・カ ジメの藻場が消失した代わりに、ホンダワラ類の藻場が増えたことが窺える。

1−4−4.白浜町鴨居周辺沿岸:図11- 4

鴨居港東岸の2地点でホンダワラ類の藻場が観察されたが、アラメ・カジメの藻場は観察 されなかった。

前回調査では鴨居港東岸の1地点でアラメ・カジメの藻場が観察されされており、ホンダ ワラ類の藻場は観察されていない。従って、当該海域ではこの20年の間にアラメ・カジメ の藻場が消失した代わりに、ホンダワラ類の藻場が増えたことが窺える。

(25)

1−4−5.白浜町富田周辺沿岸:図11- 5

富田周辺の9地点でホンダワラ類の藻場が観察されたが、アラメ・カジメの藻場は観察さ れなかった。

前回調査では富田川西岸の4地点でアラメ・カジメの藻場が観察されているものの、ホン ダワラ類の藻場は観察されていない。従って、当該海域ではこの20年の間にアラメ・カジ メの藻場が消失した代わりに、ホンダワラ類の藻場が大幅に増えたことが窺える。

1−4−6.白浜町椿周辺沿岸:図11- 6

椿湾周辺の2地点でホンダワラ類の藻場が観察されたが、アラメ・カジメの藻場は観察さ れなかった。

前回調査ではアラメ・カジメのみならず、ホンダワラ類の藻場も観察されておらず、当 該海域ではこの20年の間にホンダワラ類の藻場が増えたことが窺える。

1−4−7.白浜町日置(目戸∼伊古木)周辺沿岸:図11- 7、11- 8

志原海岸西岸の1地点でホンダワラ類の藻場が観察されたが、アラメ・カジメの藻場は観 察されなかった。

前回調査ではアラメ・カジメのみならず、ホンダワラ類の藻場も観察されておらず、当 該海域ではこの20年の間にホンダワラ類の藻場がわずかに増えたことが窺える。

1−4−8.すさみ港周辺沿岸:図11- 8

すさみ港東岸の2地点でホンダワラ類の藻場が観察されたが、アラメ・カジメの藻場は観 察されなかった。

前回調査ではアラメ・カジメのみならず、ホンダワラ類の藻場も観察されておらず、当 該海域ではこの20年の間にホンダワラ類の藻場がわずかに増えたことが窺える。

1−4−9.すさみ町道の駅周辺沿岸:図11- 9

道の駅周辺の3地点でホンダワラ類の藻場が観察されたが、アラメ・カジメの藻場は観察 されなかった。

前回調査ではアラメ・カジメのみならず、ホンダワラ類の藻場も観察されておらず、当 該海域ではこの20年の間にホンダワラ類の藻場が増えたことが窺える。

1−4−10.すさみ町見老津周辺沿岸:図11- 10

江須崎南東岸の1地点でホンダワラ類の藻場が観察されたが、アラメ・カジメの藻場は観 察されなかった。

(26)

前回調査ではアラメ・カジメの藻場は観察されていないが、ホンダワラ類の藻場が長井 地先の2地点で観察されている。従って、当該海域ではこの20年の間にホンダワラ類の藻場 が若干減少したことが窺える。

1−4−11.串本町和深周辺沿岸:図11- 11

全地点においてアラメ・カジメのみならず、ホンダワラ類の藻場も観察されなかった。 前回調査においてもアラメ・カジメのみならず、ホンダワラ類の藻場も観察されておらず、 当該海域ではこの20年の間に藻場の変化はみられなかった。

1−4−12.串本町江田周辺沿岸:図11- 12

全地点においてアラメ・カジメのみならず、ホンダワラ類の藻場も観察されなかった。 前回調査ではアラメ・カジメの藻場は観察されていないが、ホンダワラ類の藻場が2地点で 観察されている。従って、当該海域ではこの20年の間にホンダワラ類の藻場が若干減少し たことが窺える。

まとめ

前回調査においては、アラメ・カジメの藻場がみなべ町や白浜町内の15地点で観察され ているが、今回調査では両町内からはまったく観察されなかった。従って、この大型藻類 の藻場は串本町田並∼みなべ町千里に至る紀伊半島南西岸からは消失したものと思われる。

一方、紀伊半島南西岸においてホンダワラ類の藻場が観察されたのは、前回調査では16 地点であったのに対し今回調査では32地点と倍増した。従って、ホンダワラ類の藻場に関 しては増加が認められる。なお、市町村別でみると、ホンダワラ類の藻場はみなべ町と串 本町は減少、白浜町は大幅な増加、すさみ町は増加となる。

(27)

注:本表に示した地点とは、図11に示した海藻類別出現記号がプロットされている場所を表す。 表4.今回調査と1989年調査との海域別藻場出現地点数比較

カジメ類

合計

調査名 みなべ 田辺 地点数

瀬戸 鴨居 富田 椿 日置 すさみ港 道の駅 江住 和深 江田

1989年調査 9 0 1 1 4 0 0 0 0 0 0 0 15

2010年調査 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

- 9 0 - 1 - 1 - 4 0 0 0 0 0 0 0 - 15

ホンダワラ類

合計

調査名 みなべ 田辺 地点数

瀬戸 鴨居 富田 椿 日置 すさみ港 道の駅 江住 和深 江田

1989年調査 9 0 3 0 0 0 0 0 0 2 0 2 16

2010年調査 6 1 5 2 9 2 1 2 3 1 0 0 32

- 3 1 2 2 9 2 1 2 3 - 1 0 - 2 16

(28)

1−5.概況調査のまとめ

概況調査によって串本町田並からみなべ町千里に至る紀伊半島南西海岸線におけるサン ゴとオニヒトデ、ならびに海藻類の現在の概要が明らかになった。また、およそ20年前に 今回と同様の手法で実施された調査結果と比較することにより、海中生物の分布に大きな 変化が起きていることが確認された。これらの結果を要約して以下に記す。

①サンゴの分布

田辺市沖島北東∼南西岸、白浜町四双島南西岸、串本町安指∼田子沿岸(双島北東岸を 含む)、串本町田の崎南東岸の4海域では大型のテーブル状サンゴ(クシハダミドリイシ、 エンタクミドリイシ、ニホンミドリイシ)を主体とする高密度なサンゴ群落が分布し、傑 出した海中景観が認められた。これらのうち、田の崎を除く海域では、20年以上前からサ ンゴの群生が知られていたが、近年になり、サンゴの量はさらに増加したものと思われる。

みなべ町目津崎地先、みなべ町森の鼻地先、田辺市元島前、白浜町権現崎地先、白浜町 西谷地先の4海域では、小型のテーブル状サンゴを主体とするサンゴ群落が観察されたが、 これらのサンゴ群落は近年(ここ10年以内)になり新しく形成された若いサンゴ群集であ り、今後、それらが成長して上記のような傑出したサンゴ群生地となる可能性が持たれる。

被度は著しく高くないが、白浜町袋崎南岸で観察された種多様性の高いサンゴ群集も特 筆され、このサンゴ群集も近年になり形成されたものと思われる。

白浜町鴨居沖にある大きな暗礁(高森)と串本町安指西岸では規模のある高密度なサン ゴ群落が形成されていたが、近年(5年ほど前)になり、そのほとんどがオニヒトデによっ て食害を受け、景観は荒廃した。

②オニヒトデ

20年前には串本海域で偶発的に定着した小型個体がごく希に観察される以外は、和歌山 県下ではまったく分布していなかった。しかしながら、今回調査では串本町田並から田辺 市天神崎に至る紀伊半島南西岸のほぼ全域で観察され、しかも、白浜町の四双島と見草崎、 串本町の赤瀬前と田子前では大発生域、田辺市の天神崎では準大発生域と判定された。こ れらのうち、四双島と見草崎ではオニヒトデの食害が大きく進行しており、サンゴ群落の 消失が危惧される。一方、串本海域ではオニヒトデは多いものの、計画的な駆除によって 個体数と食害量は制御され、高密度なサンゴ群落の大方は維持されている。

(29)

③藻場

20年前にみなべ町や白浜町内の15地点で観察されていたアラメ・カジメの藻場は、今回 調査では両町内からまったく観察されず、この大型藻類の藻場は紀伊半島南西岸からは消 失したものと判断される。

④変化の原因

紀伊半島南西岸では1990年代初頭以降、高水温現象が継続し、この環境変化に応答して、 熱帯性生物群集の増加・繁殖、温帯性生物群集の減少といった生物分布の変化が起きてい る。今回の調査で確認された上述の生物群の分布変化も、高水温現象を背景に生じたもの であると推察される。

サンゴやオニヒトデは熱帯性動物群集であり、近年の高水温現象を背景に紀伊半島の南 西岸に沿って北上・増加したものと考えられる。しかしながら、実際に顕著なサンゴ増加 が認められたのは、みなべ町、田辺市(天神崎)、串本町で、白浜町は微増、すさみ町は微 減であった。顕著なサンゴ増加とならなかった海域は、サンゴに対して何らかの攪乱原因 があったものと考えられ、その主要因としてオニヒトデの食害が挙げられる。

参考文献

串本海中公園センター, 未発表. 和歌山県下全域を対象としたサンゴと藻場の分布調査. 野村恵一, 2004. 紀伊半島のサンゴ群集. 日本のサンゴ礁, 252- 256. 環境省.

野村恵一, 2006. 串本のサンゴ群集( 15) , 総括2:サンゴ相, 被度, 重要群落.マリンパビリオン 35: 26- 27

野村恵一, 2009. 和歌山県串本海域における近年のサンゴ群集変化. 日本のサンゴ礁学会誌, 11: 39- 49.

野村恵一, 2010. サンゴ類. 平成21年度吉野熊野国立公園海域景観資質(サンゴ)調査報告書, 17- 43. 環境省近畿地方環境事務所.

野村恵一・福田照雄, 2000. 串本のサンゴ群集 ( 1) 、串本のサンゴ群集の特異性.マリンパビリ オン, 29: 62- 63.

野村恵一・御前 洋・小寺昌彦, 2005. 串本海域のオニヒトデ調査. 平成16年度管理方針検討調 査(串本海中公園地区海中生物等生息状況調査)報告書:25- 35. 環境省自然保護局.

杉山敏郎, 1937. 本邦沿岸産現棲造礁珊瑚に就いて.東北大学理学部地質学古生物学教室研究邦 文報告, 26, 1- 60.

(30)

2.詳細調査

2−1.環境と景観的特徴

2- 1- 1.地点別の特徴

各調査地点の調査日時、物理的環境(水温、水平透視度)、位置を表5に、水深と底質を 表6に示す。以下に、地点別の環境と景観的特徴を述べる。

表5.各調査地点の調査日、環境、位置

①権現崎( 図4- 5、表5- 6、写真2- 1)

白浜町権現崎北東岸地先前に調査地点を設定。地点への最短アクセスは瀬戸漁港から船 で約5分である。また、近接の海岸までは権現崎遊歩道北側入口から徒歩5分である。権現 崎は県下有数の観光地である白良浜に隣接し、周囲の海岸の開発は著しいが、権現崎は植 生が豊かで人工物は見られず、また、周囲は遊歩道となっており、本遊歩道から白浜の代 表的な景勝地である円月島や白良浜を眺めることができる。調査地点の北東側には瀬戸漁 港の防波堤が伸び、その奥は瀬戸漁港となる。陸域の景観は概して良好であるが、人工景 観の要素の比率がやや高い。

調査域の水深範囲は2. 0∼9. 5m,平均5. 1m、底質は基本的に岩で、遠浅であるが起伏に 富む。透視度は良好である。浅所の岩礁上には小型のクシハダミドリイシを中心とした多 様性の高いサンゴ群集が認められ、これらとともにヌメリトサカが海中の景観を形成して いる。大型藻類は生育しないが、植生は比較的豊かで、魚類の多様性も高い。密度の高い サンゴ景観は疎らに分布し、現時点での海中景観の評価は高くはないが、今後、サンゴの 成長とともに景観の向上が大いに期待できる。

①権現崎

②四双島

③天神崎

④沖島

⑤ショガセ

⑥目津崎

⑦- 1 高森東

⑦- 2 高森西

調査日 調査時間 透視度(m)水温(℃) 基点 北緯 基点 東経

9月22日 13: 45 15:00 15 28∼29 33° 41′ 09. 5″ 135° 20′ 25. 7″

9月22日 10: 30 11:45 15 28 33° 41′ 28. 4″ 135° 19′ 32. 8″

9月30日 9:55 11:00 5 27 33° 43′ 34. 3″ 135° 21′ 7.7″

33° 43′ 8.3″ 135° 19′ 28. 0″

9月30日 11: 30 12:50 15

9月29日 10: 25 11:10 15 27 33° 43′ 27. 3″ 135° 18′ 29. 0″

27

9月29日 13: 20 14:25 12 27 33° 45′ 43. 9″ 135° 17′ 43. 2″

10月14日 10: 00 11:00 15 33° 38′ 37. 0″ 135° 21′ 43. 5″

33° 38′ 52. 4″ 135° 21′ 15. 3″

10月14日 11: 30 13:00 15

(31)

②四双島( 図4- 5、表5- 6、写真2- 2)

四双島は白浜町番所の鼻の西方約600m沖に位置、最短アクセスは瀬戸漁港から船で約10 分である。四双島は南北方向に細長い小島で、南北の長さは約500mである。調査地点は島 の西岸中央の大きな入り江の南側に設定。

四双島は高さが低く樹木の生育は見られず、島の陸上部の景観的価値は乏しい。また、 島にそびえ立つ灯台は四双島のランドマークになっている。ただし、陸域(白浜町)の遠 望は秀逸である。

調査域の水深範囲は0. 5∼9. 0m,平均5. 5m、底質は岩で、遠浅でなだらかに傾斜する。 透視度は良好である。水深5m前後のやや浅い岩礁上にはニホンミドリイシを中心に大型の テーブル状サンゴが群生し、美しい海中景観が認められる。一方、オニヒトデが大量発生 しており、食害部が目立った。

③天神崎( 図4- 5、表5- 6、写真2- 3)

天神崎丸山に隣接する入り江内中央部に調査地点を設定。地点への最短アクセスは隣接 する田辺港から船で約5分である。また、地点近くの岸までは遊歩道から徒歩で来られる。 天神崎は都市部(田辺市)に隣接するものの、独特な平磯の海岸地形を有し、海岸に大き く突出した丸山は付近のランドマークとなっている。また、背後の山もナショナルトラス ト運動によってよく保全されており、陸域の景観度は高い。

調査域の水深範囲は4. 8∼11. 7m,平均8. 0m、傾斜はなだらかであるがやや深い。透視 度は5mしかなく、地点中で最低であったが、これは降雨の濁水の影響を受けたためである。 底質は基本的に砂質なため、生物の多様性も全般的に低く、景観的価値もあまり見出せな かった。ただし、入り江西岸の岩礁上には多様性の高いサンゴ群集が認められ、特に、日 本を中心とした東アジア海域の特産種で、国内では衰退傾向にあるエダミドリイシの比較 的規模の大きな群落が観察された。

④沖島( 図4- 5、表5- 6、写真2- 4)

沖島は天神崎の西南西約2. 5km沖合に位置し、最短アクセスは田辺港から船で約10分であ る。沖島は大小の離礁群からなり、南北方向に長く、同方向の長さは約500mである。調査 地点は島の西岸中央付近に設定。沖島も四双島と同様に高さが低く樹木の生育は見られず、 島の陸上部の景観的価値は乏しい。また、島にそびえ立つ灯台は沖島のランドマークにな っている。ただし、陸域(田辺湾)の遠望は秀逸である。

調査域の水深範囲は3. 9∼17. 1m,平均10. 0mとやや深く、底質は基本的に岩である。海 底はゆるやかに傾斜し、透視度は良好である。水深5∼10mの間のやや浅い岩礁上には大型 のテーブル状サンゴが群生し、特に美しい海中景観が認められた。当該海域のサンゴ群落 は西崎サンゴと呼ばれる。

参照

関連したドキュメント

【現状と課題】

東京都環境影響評価審議会 会長 柳 憲一郎..

○水環境課長

東京都船舶調査(H19 推計):東京都環境局委託 平成 19 年度船舶排ガス対策効果の解析調査報告書 いであ(株) (平成 20 年3月).. OPRF 調査(H12

(千kWh) 導入率(%) 発電量. (千kWh)

施設名 所在地 指定管理者名 指定期間 総合評価 評価内容. 東京都檜原都民の森 檜原村

私大病院で勤務していたものが,和田村の集成材メーカーに移ってい

23区・島しょ地域の届出 環境局 自然環境部 水環境課 河川規制担当 03-5388-3494..