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マクロ経済学 7
財政政策
慶田 昌之
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マクロ経済政策
ここまで新古典派マクロ経済モデルとケインズ派マクロ経済 モデルの2つを概観した。
この章では財政政策について、次の章では金融政策について みる。
これらの政策について、2つのモデルがどのような結論を導 き出すかをみることで、これらのモデルについて理解を深め ることが目的である。
マクロ経済政策
現代経済において、マクロ経済政策としては、財政政策と金 融政策がある。
財政政策とは、財政支出をコントロールすることによってマ クロ経済に影響を与える政策をいう。
金融政策とは、マネーサプライをコントロールすることに よってマクロ経済に影響を与える政策をいう。
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マクロ経済政策
マクロ経済政策の目的のひとつとして、経済の安定化があげ られる。
景気が停滞しているときは景気回復を促進し、景気が過熱し 過ぎているときは景気を緩やかに戻すことが、マクロ経済政 策に期待される効果である。
景気とはなんだろうか?
これまでみた2つのマクロ経済モデルの中では、生産量Y が景気の指標と考えられる。
Y が大きいときは好景気の状態。 Y が小さいときは不景気の状態。
マクロ経済政策
まず、結論を先取りしてまとめておく。
新古典派マクロ経済モデルにおいて、財政政策と金融政策 は効果をもたない。
ケインズ派マクロ経済モデルにおいて、財政政策と金融政策 はマクロ経済政策としての効果をもつ。
この結論がどのような理由によって導き出されるかを理解す ることが重要である。
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ケインズ派における財政政策
まず先にケインズ派マクロ経済モデルにおける財政政策につ いて考える。
ケインズ派マクロ経済モデルのなかで、物価水準 P を一定 として財市場の均衡式と貨幣市場の均衡式の2つに注目して 分析する。
このような分析をIS-LM 分析という。
IS-LM 分析
IS-LM 分析において内生変数は、生産量 Y と名目利子率 i である。
I(i − ¯π) + ¯G = S(Y − ¯T ) M¯
P¯ = L(Y, i)
外生変数は、財政支出 G¯、税収 T¯、マネーサプライM¯、物 価水準 P¯、物価上昇率 π¯である。
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IS 曲線
財市場の均衡式を考える。
I(i − ¯π) + ¯G = S(Y − ¯T )
この式を Y − i平面に表すことを考える。
IS 曲線
いま、Y が上昇したとすると、Y ↑=⇒ S ↑なので、右辺が 大きくなる。
この式の等号を成立させるためには、左辺も大きくならなけ ればならない。
ここで、i ↑=⇒ I ↓ より、左辺が大きくなるためには、iは 減少しなければならない。
つまり、Y が増大すると、財市場を均衡させるためにはiが 減少することを意味する。
Y − i平面上で、財市場の均衡式は右下がりの曲線になるこ
とが分かる。これをIS曲線と呼ぶ。
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LM 曲線
次に貨幣市場の均衡式を考える。 M¯
P¯ = L(Y, i)
この式を Y − i平面に表すことを考える。
LM 曲線
この式の左辺は外生変数のみで成り立っているので、一定で ある。
生産量 Y が上昇すると実質貨幣需要が増大するので、 Y ↑=⇒ L ↑である。
名目利子率i が上昇すると、貨幣よりも債券をもつことの魅 力が増すので、i ↑=⇒ L ↓ である。
したがって、Y が上昇したとき、貨幣市場を均衡させるため には、i が上昇しなければならない。
Y − i平面において、貨幣市場の均衡式は右上がりの曲線と
なる。これをLM 曲線と呼ぶ。
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IS-LM 分析
IS-LM 分析
Y − i 平面上において、IS曲線とLM 曲線の交点において生 産量 Y と名目利子率 iが決定する。
ケインズ派マクロ経済モデルでは失業が発生している。 かりに、失業を完全になくなるような水準で労働量 N が決 定したとき(これは新古典派の労働市場の均衡と同じ N で ある) の生産量を完全雇用水準の生産量とよび、Y˜ で表すこ とにする。
ケインズ派マクロ経済モデルでは、失業のために必ず労働市 場が均衡している場合よりも少ない労働量 N に決まるため に、完全雇用水準の生産量 Y˜ よりも少ない生産量Y が実現 する。
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ケインズ派における財政政策
財政政策は財政支出をコントロールして、マクロ経済に影響 を与える政策である。
IS-LM 分析において、財政支出 G¯ は外生変数である。 ここで、政府が財政支出 G¯ を変化させたとしよう。 このようなときに何が起こるかを考える。
ケインズ派における財政政策
財政支出 G¯ が影響を与えるのは財市場の均衡式のみである。 I(i − ¯π) + ¯G = S(Y − ¯T )
G¯ が上昇したときに、財市場の均衡を表すIS 曲線がどのよ うに変化するかを考える。
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ケインズ派における財政政策
G¯ が上昇すると、左辺が大きくなる。
いま、Y が一定であるとすると、右辺は変化しないので、財 市場の均衡式が等号で成立するためには、I(i − ¯π) が減少す る必要がある。
前に見たように、i ↑=⇒ I ↓ なのでI が減少するためにはi が上昇する必要がある。
したがって、Gが上昇すると、IS曲線は右上方にシフトする ことがわかる。
逆に、政府が財政支出を減らして、Gが減少すると IS 曲線 は左下方にシフトすることになる。
ケインズ派における財政政策
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ケインズ派における財政政策
G の変化によって、IS曲線がどのように変化するかが分 かった。
この変化によって、内生変数である Y とi の変化をみるこ
とが、IS-LM 分析における財政政策の効果である。
ケインズ派における財政政策
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ケインズ派における財政政策
IS-LM 分析の結果から、次のように分かる。
政府が財政支出G を増加させると、Y は増加し、i も上昇¯ する。
政府が財政支出G を減少させると、Y は減少し、i も低下¯ する。
ケインズ派における財政政策
IS-LM 分析によって財政政策を考えることで、次のようにわ
かる。
景気が低迷しているときは、政府は財政支出を増加させるこ とによって景気を回復させることができる。
景気が過熱しているときは、政府は財政支出を減少させるこ とによって景気を調節することができる。
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新古典派における財政政策
新古典派マクロ経済モデルにおいて、財政支出G¯ の変化は どのような変化をもたらすだろうか?
新古典派のモデルにおいてもG¯ が影響を与えるのは財市場 の均衡式のみである。
また、新古典派マクロ経済モデルでは、労働市場において実 質賃金 W/P と労働量 N が決定しており、そのN にした がって生産量 Y が決定していることに注意する。
新古典派における財政政策
新古典派マクロ経済モデルの財市場の均衡式と貨幣市場の均 衡式から、ケインズ派マクロ経済モデルと同様に、Y − i 平 面上で考えてみる。
財市場の均衡を表すIS 曲線と、貨幣市場の均衡を表すLM 曲線は、ケインズ派の IS-LM 分析のときと同様に書ける。 ここで重要なことは、IS曲線とLM曲線は、労働市場が均衡 している労働量 N の水準によって決定するY の量で交叉し ているという点である。
この Y の水準は、労働市場が均衡しているので完全雇用水 準の生産量Y˜ である。
つまり、新古典派マクロ経済モデルではIS曲線と LM 曲線 は完全雇用水準の生産量で均衡することがわかる。
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新古典派における財政政策
新古典派における財政政策
ここで、財政支出 Gが変化した場合に、財市場の均衡式に 何が起こるだろうか?
I(r) + ¯G = S(Y − ¯T , r)
IS曲線のシフトは、ケインズ派マクロ経済モデルのときと同 様に
G が増加すると、IS 曲線は右にシフトする。¯ G が減少すると、IS 曲線は左にシフトする。¯
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新古典派における財政政策
新古典派マクロ経済モデルにおいて、財市場の均衡式は労働 市場の均衡から決まる生産量を所与として、実質利子率 r が 決定するものであった。
したがって、r は新しいIS 曲線と生産量Y が交わる点で、 実質利子率r が決定する。
IS曲線のシフトする方向から、 G が増加したときには r は上昇¯ G が減少したときには r は低下¯
することが分かる。
新古典派における財政政策
したがって、
G が増加したときは、r は上昇し、I(r) が減少する。¯ G が減少したときは、r は低下し、I(r) が増加する。¯
結果として、財政支出 G¯ の変化は、投資量 I を変化させる のみで、生産量 Y には影響を与えない。
つまり、新古典派マクロ経済モデルによると、財政政策は無 効であるという結論が得られる。
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新古典派における財政政策
貨幣市場の均衡をあらわす LM曲線はどうなるだろうか? 新古典派マクロ経済モデルでは、労働市場の均衡から生産量 Y、財市場の均衡式から実質利子率 r が決まり、最後に貨幣 市場の均衡式を満たすように物価水準P が決定する。 したがって、すでに決定したY とr を満たすように LM 曲 線はLM’ にシフトすることになる。
新古典派における財政政策
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新古典派における財政政策
財政支出 G¯ を政府がコントロールしたとしても、結果とし て民間の投資量 I が変化してしまうので、生産量 Y を政府 が変化させることはできない。
したがって、財政政策は景気の安定化のためには無効である。 これが新古典派マクロ経済モデルの財政政策の結論である。 財政支出 G¯ の増加は、それがなければ民間の主体が投資し ていたであろう財を政府が奪ってしまうという結果をもた らす。
これを政府によるクラウディング・アウトと呼ぶ。