平 成 28 年 度
三原市の農業振興施策に関する
建 議 書
平成27年10月27日
三 原 市 農 業 委 員 会
三原市の農業振興施策に関する建議
我が国の農業・農村を取り巻く環境は,農産物価格の低迷,生産資材の高 騰,高齢化による担い手不足の深刻化,集落機能の低下,耕作放棄地の増加 , さらにTPP交渉における大筋合意により農業分野においての先行きは不透明 で混迷を免れない状況にあります。
このような中,平成 25 年 12 月に政府の「農林水産業地域の活力創造 プラン」が取りまとめられ,農業・農村全体の所得を今後10 年間で倍増させ ることを目指した農政改革が平成 26年度を実行元年として展開される一方, 農業委員会の組織・構成のあり方が見直された農業委員会法の改正が衆議 院・参議院で可決され平成28年 4月からの法施行の予定となっております。 こうした状況の中で,平成 26 年度からスタートした農地中間管理事業推進 にあたっては,市と農業委員会の密接な連携のもと役割を明確にした取り組 みが求められております。
本市を取り巻く農業の現状は,担い手の減少と高齢化,耕作放棄地の増 加,有害鳥獣や近年の異常気象による被害の拡大など,課題が山積していま すが本市においても,農業委員の選挙制から任命制への一本化が行われ定 数が半数になることが予測される中で,三原市農業が衰退することなく,農業 の多面的機能と存在価値が損なわれないような体制整備を行うことが肝要で あると考えます。
本市では集落法人の経営基盤を強化するため,法人の合併や米に変わる 栽培品目の導入などを推進するため,平成 26 年度に,三原市農業振興ビ ジョンの新たな実施計画を策定され,数値目標や支援策を盛り込まれました が新たな計画を実現するためには,農業関係者が誇りを持ち,努力を続けるこ とは第一義ですが,行政の強力な施策展開が不可欠です。
三原市農業委員会としましても,農業者の代表として,その役割と責任の 重さを十分認識し,多様な課題に対しての解決に向け,積極的に取り組んでい ます。そこで,現況における重要課題を別記のとおり取りまとめましたので,市当 局におかれましては,平成28年度予算編成において格別の配慮の上,建議項 目の具体化について特段のお取り計らいを賜りたく,農業委員会等に関する 法律第6条第3項の規定に基づき,ここに建議いたします。
平成27年10月27日
三原市長 天 満 祥 典 様
三原市農業委員会
会 長 井 長 哲
Ⅰ 担い手の育成・確保について
市内の農業地帯は,過疎,高齢化そして後継者不足が加速してお り,食料自給率の向上はおろか,荒廃農地の増加による地域の環境 悪化や農業,農地を維持することが困難となっています。特に中山間 地においては,集落機能の維持すら危ぶまれる状況にあります。
これらの問題を解決するためには,新規就農者への支援や担い手, 後継者,集落営農組織,企業の参入など多様な担い手の育成や強 化等が求められています。三原市農業振興ビジョンの実施はもとより, 地域の実情を加味した柔軟な対策が必要となります。
1)様々な規模・形態の地域担い手の育成
各集落の現状や農業従事者の規模,形態などを把握整理し,その 地域や事業規模,形態に合ったきめ細かな担い手を育成する必要が あります。また,小規模農家に対しても,市の助成制度を創設し,大き く育てていくことが重要と考えます。
2)次世代の担い手の育成
① 現在,市内には認定農業者・集落法人が74件育成されていま すが,その担い手においても高齢化や後継者不足が進み,廃業 や減少による荒廃農地の増加が危惧されます。次から次へとバ トンが渡せる将来を見据えた担い手の育成が必要と思います ② 新規に独立・自営就農した農業従事者(新規就農育成研修事
業修了者)に対し,今後の経営規模・経営形態等を勘案した単 独市費を上積みした青年就農給付金の拡充を求めます。
③ 農業は,家族の理解と協力が不可欠であり,特に女性の参画 が必要であり,その感性と発信力・技術力が活かされる所得の 配分等家族経営協定の推進と相まって女性グループの設立・ 運営について検討していただきたい。
④ 担い手に農地を集積するにあたり,大型機械を個人または法人 で保有することは困難で負担も大きいため,現在の農業情勢を 踏まえ,市とJA 等で共同購入し,機械利用組合などの組織を 設立していただきたい。
⑤ 認定農業者や集落営農組織などの担い手がいない集落につ いて,後継者不足による耕作放棄地が増加すると想定されるた め,このような地域に対する対応を検討していただきたい。
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3)担い手や集落を支援できる制度の取り組み
農業は地域との関わりがあって成り立つものであり,大規模農家 だけでは点在狭小農地の管理に困難性があります。また,高齢化し た集落では農地の保全そのものに困難性が生じています。このこと から,地域の農業を周辺から支援できる,農業人材派遣による労働 力の供給確保や大規模農家との調整機能の創設や農地の外周管 理に高齢者を活用した支援団体創設の施策推進を求めます。
4)農業行政に取り組む体制の整備
市が中心となって県や農業関係機関と連携し,地域や農家の指導 にあたられたい。そのためには,農業・農政の専門職を育成するため のシステムづくりをし,長期に亘って展望が拓ける一貫した農業行政 に取り組む体制を求めます。
Ⅱ 有害鳥獣被害対策の強化について
有害鳥獣の猪や鹿等による農産物の被害や,畦畔の崩壊など農 業経営に与える損害は年々増加しています。有害鳥獣による農産物 への被害は,農業収入の減少だけに留まらず,農業者の生産意欲の 減退を招き,耕作放棄地の増加につながり,農業後継者(担い手)の 確保問題など農業施策全般に影響が及んでいます。
市においては,イノシシ防護柵設置補助事業を始め駆除活動等が 行われていますが,その成果を確実なものとするよう,次のことを求 めます。
1)地域ぐるみによる被害対策活動とするため,有害鳥獣駆除対策事 業の補助額の増額や地域で取り組めるよう啓発活動など,積極的 な推進を求めます。
2)狩猟免許の所有者に対する継続的な助成制度の確立と,新規就 農者を対象とした狩猟免許の推進を図り,市域全体で取り組む体 制の確立を求めます。また,捕獲後速やかに処理できる体制作りを 構築していただきたい。
3)有害鳥獣,特に猪・鹿・狸・ヌートリアによる生態被害防止対策に ついての情報提供・指導助言を充実すると共に,これら施策の継 続的な実施を求めます。
また,近年有害鳥獣の種類は多種多様に亘り,地域によっては その被害も深刻になっています。きめ細やかな情報提供や指導助 言をお願いします。
4)有害鳥獣対策の電気柵での事故が社会問題化し,全国で行われ た調査においても約 7000 箇所で安全対策が取られていないと のことでした。市においても引き続き事故を未然に防ぐことを目的 に,継続的な調査や安全講習会などを実施するなど指導の徹底を 図っていただきたい。
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Ⅲ 農業用施設長寿命化について
これまで,国,県及び市単独事業で多くの農業用施設を新設,改 修をされてきました。しかしながら,農業後継者不足や高齢化問題に より日々の管理すらままならない地域も見受けられます。農地は単に 食糧供給の場だけではなく,その多面的諸機能も同時に担っている ことから,将来に亘って安心・安全な農地の保全につながる施策の 推進をお願いします。
1)市域全体に対して計画的に調査等を行ない,農業用施設の延命 化はもとより,農地の流動化を促進し農地の集積につながる観点 から事業の推進を図っていただきたい。
2)高齢者が多い地域もあり,地域の状況を踏まえ,多面的機能支払 交付金事業や農業用施設維持補修事業などの柔軟な運用を図っ ていただきたい。
3)近年の集中豪雨や台風などによる河川の氾濫により農地の被災 を未然に防ぐためにも,河川に堆積している土砂や木々を定期的 に除去していただきたい。
Ⅳ 農業振興地域整備計画の見直しについて
農振法は,自然的社会的経済的諸条件を考慮して総合的に農業 の振興を図ることが必要であると認められる地域について農用地区 域が指定されていると思いますが,山林に囲まれた農地や,耕地部 にあるが小面積で点在している農地について,今後 10 年以上にわ たり農業上の利用を確保できない土地については,計画の見直しを 求めます。
Ⅴ 農業・農村の活性化対策について
農村は農業従事者のみならず様々な職業・年齢者が暮らす生活 の場でもあり,地域の活性化の源はそこに暮らす住民の多様な生活 が可能となる社会の実現であることから次のことを求めます。
1)野菜など農産物の価格安定及び消費者への新鮮野菜の供給や 地産地消を推進することを目的に保冷庫等の貯蔵施設の設置を 求めます。また,農産物を安定的に提供できる販売先の開拓や情 報提供をしていただきたい。
2)近年,食への安全がクローズアップされ,食に対する住民の関心 は大きいものがあります。住民が気軽に栽培できる場の提供として 市民農園の拡充やその他の方策について検討していただきたい。 3)米価下落により生産コストの縮減は大きな課題であり,農産物生
産資材の高騰に対する広範な農家支援や,堆肥・有機肥料による 土地づくりのためのシステムを確立していただきたい。
4)農村の生産環境と生活環境は密接な関係にあることから,高齢 者でも永続性のある営農が可能で,さらには地域住民が安心で安 全な生活のできる総合的な生活環境整備(商業・医療・福祉など) の促進を図っていただきたい。
Ⅵ 農業委員会制度・組織改革について
平成25 年の農地法改正や本年度改正の農業委員会等に関する 法律により農業委員会組織や事務が大きな転換期を迎えています。 今後,農業委員の選挙制から任命制への移行や農地利用最適化推 進委員の新設,荒廃農地対策,遊休農地の意向調査,農地一筆ごと の情報提供,そして農地等の利用の最適化(担い手への農地利用の 集積・集約化,耕作放棄地の発生防止・解消,新規参入の促進)の 推進が法定事務として義務付けられ,組織体制の整備は急務と考え 次のことを求めます。
1)農業委員会組織の体制整備と関係事務職員の拡充をしていただ きたい。
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① 今後,ますます事務局員の専門性が必要となるため,人事サイ クルの適正化を図りながら事務局体制の充実
② 法律に基づく事務の遂行に伴う事務局員の拡充
2)新たな処理事務に対応した財政的支援をしていただきたい。
Ⅶ 荒廃農地・遊休農地の解消について
食料自給率の向上を図るためには,優良農地の確保と有効利用 の促進が重要であり,国の「食料・農業・農村基本計画」に基づき荒 廃農地・遊休農地の再生利用に向けた施策が推進されているところ です。
市においても,農業者の高齢化や後継者不足による農家数の減 少や,農産物の価格低迷や有害鳥獣被害などから離農者が増え,荒 廃農地・遊休農地が増加している現実があります。また,圃場整備実 施区域においても発生事例が散見される状況です。
荒廃農地の発生防止は行政と集落・地域が一体となって取り組 むのはもとより,早期発見と早期対応が必要となってきます。早期発 見,早期対応できる体制整備の構築にご尽力をお願いしたい。
Ⅷ 女性農業委員の参画について
農業者の高齢化や農業後継者の不足などを抱える農業において, 地域を活性化していくためには女性の持つ視点からのアプローチが 今後ますます必要となってきます。第2次三原市男女共同参画プラン においては「各種審議会における女性の参画促進」の目標率が3 0%であり,広島県農業会議では農業委員の30%に女性が参画で きるような取り組みが行われています。
平成29年7月の次期改選時においては,農業委員の選挙制から 任命制へと大きく制度が変わろうとしています。
市における具体的な制度設計はこれからではありますが,引き続 き女性委員の任命についてご高配を賜りますようお願いします。
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