学生意識の質的・量的併合分析から見た地域教育連携力の拡大と変化 -校内外地域生活指導から授業内地域連携指導への発展-
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(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第44号(平成24年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.44(2012):11-17. 学生意識の質的・量的併合分析から見た地域教育連携力の拡大と変化 -校内外地域生活指導から授業内地域連携指導への発展- 栢 野 彰 秀2・玉 井 康 之1・倉賀野 志 郎1 山 瀬 一 史1・八 木 修 一1・小 林 宏 明2・赤 田 裕喜彦2・近 江 道 郎2 西 出 勉3・村 上 知 子3 1 2. 北海道教育大学教職大学院(釧路担当). 前北海道教育大学教職大学院(釧路担当) 3. 前北海道教育大学釧路校. Expansion and Transformation of Recognition to the Student's ''Cooperation of Regional Education Skills'' -Qualitative and Quantitative Analysis by Cluster and Multi-dimensional AnalysisAkihide KAYANO2, Yasuyuki TAMAI1, Shirou KURAGANO1, Kazushi YAMASE1, Syuuichi YAGI1, Hiroaki KOBAYASHI2, Yukihiko AKADA2, Michirou OUMI2, Tsutomu NISHIDE3 and Tomoko MURAKAMI3 1. Advanced Teacher Professional Development Programs, Graduate School of Education, Hokkaido University of Education 2. Former Professor, Graduate School of Education, Hokkaido University of Education 3. Former Professor, Hokkaido University of Education, Kushiro Campus. 要 旨 一般的に地域連携という言葉から想像できる活動は、地域に出て地域の人たちと連携できる活動を念頭に置くことがで きる。しかし、釧路校の学生は多次元尺度分析によれば大まかに地域子ども理解と地域学習連携という2つの観点から地 域教育連携力を捉えていることが分かった。 地域子ども理解に関しては、学生の立場から地域の中での子どもを捉えようとする視点である。学年が上がるにつれて 地域における子どもの認識は、教師と地域の人々との協働によって確保しようとする教師の視点へと、視点が広まり、地 域子ども理解と地域連携が整理されていることが明らかになった。 さらに地域学習連携に関しては、教師から地域への一方向の連携から、地域から学校への学習内容の拡充という逆方向 の連携も捉えられるように、学年が上がるにつれて変容が見られることも明らかになった。このように多次元尺度分析か らは、学校内外における子どもの安全確保、保護者を含めた地域の人々との連携・協力、地域資源の教材化など、学生が 見たり実体験したりした事例を、発展的に地域教育連携力の現象と捉えていることが明らかになった。. 問題の所在. そこで本研究においても先の研究に引き続き、教育. 本研究は、筆者らの一連の最終の研究として位置づけら. フィールド研究で学校現場に出かけた北海道教育大学釧路. 1-6). 。前研究では、北海道教育大学釧路校の学生が第. 校の学生が、第1学年時から第3学年時にかけて、地域教. 1学年時から教育フィールド研究で学校現場に出かけ、第. 育連携力の概念および行動がどのように変動するかをとら. 3学年時の教育実習の直前までに学習指導及び生徒指導、. えることが筆者らの問題意識である。. 教育相談、学校経営、協働遂行に関する概念及び行動がど. 一般的に地域連携という言葉から想像できる活動は、地. のように変化したかを明らかにした。 「教職チェックリス. 域に出て地域の人たちと連携できる活動を念頭に置くこと. ト」に記載された教師として必要と考えられる能力は7つ. ができる。その場合の直接的な活動は、行事や放課後の活. れる. 7). である 。これまでの研究では、7つの能力のうち6つの. 動などである。その行事や放課後の活動では、どちらかと. 能力に関する学生の概念及び行動の変動に限定して明らか. いうと、特別活動・生活指導にかかわるものがイメージし. にしたものである。. やすい。このような内容から徐々に高学年になるにした. - 11 -.
(3) 栢 野 彰 秀・玉 井 康 之・倉賀野 志 郎・山 瀬 一 史・八 木 修 一 他 がって、総合的な学習や教科授業内容における地域連携活. (1)クラスター分析による解析. 動に広がっていく。このような直接的に目に見える生活指. 各学年の学生が地域教育連携に対してどのような意見や. 導領域から授業開発領域に発想が徐々に広がっていく。こ. 関心を持っているかについては、ソフトウエアによるクラ. のような学生の関心がこのような領域に広がっているとし. スター分析によって自動的に解析され、パターンが似てい. たら、地域との連携に関しても、学生の認識領域の広がり. る文章記述がグループ(クラスター)にまとめられ、 グルー. を踏まえながら、教師教育のプログラムを考えていくこと. プの形成状態が樹形図に出力される8)。樹形図に出力され. が重要になる。 ここでは、 学生の地域教育連携力に関して、. た分類名やその分類に分けられた文章記述に筆者らが解釈. どのような領域に広がっているかをとらえることを課題と. を加えた。. している。 (2)多次元尺度分析による解析 Ⅰ.研究の方法. 各学年の学生が地域教育連携として捉えている現象につ. 1. 「教職チェックリスト」に対する意識調査の実施. いては、ソフトウエアによる多次元尺度構成法によって自. 2009年7月中旬に、北海道教育大学釧路校第1, 2,3学. 動的に解析され、文章間の距離構造が2次元配置の対応. 年全員に対して、次の要領で意識調査を実施した。①「教. 分析図に散布図として出力される9)。出力された散布図か. 職チェックリスト」に記載された257のチェックリスト項. ら、品詞間の係り受け関係に応じて、地域教育連携として. 目全てを熟読させる。②これまでの「教育フィールド研. 捉えている現象が分かる。散布図に抽出された品詞間の係. 究」での実践経験を踏まえて、学生がチェックリスト項目. り受け関係が見られる文章記述に、 筆者らが解釈を加えた。. に即して具体的に行動や子どもへ働きかける場面などが記 述できる項目を少なくとも3項目を選ばせる。③選び出し. Ⅱ.クラスター分析による学生の特徴の分析. たチェックリスト項目それぞれについて、学生がとった行. 1.第1学年における教師の指導力の地域への拡大. 動や働きかけを文章で記述させる。. 第1学年の書き出した文章を解析した樹形図を見ると、. 従って、第1学年は2009年度当初からの約2ヶ月半、第. 同学年の持つ地域教育連携力に対する意見や関心は9つに. 2学年は2008年度の第1学年時一年間に加え2009年度には. 分類されることが分かった。「教師(9)」,「子供(11) 」 ,. 約2ヶ月半、第3学年は主免実習の直前かつ2007年度、. 「休み時間(5) 」 , 「子ども(9) 」 , 「積極的(3)」,「科. 2008年度の2ヶ年間の「教育フィールド研究」の実体験を. 学(19)」, 「ルール(6)」, 「ボランティア(3)」, 「活動(6) 」. 有する学生を対象とした意識調査となる。なお、有効な回. である。括弧内は分類された文章数である。. 答を行った学生数は、第1学年174名、第2学年149名、第. 次に、9つの分類がどのようなまとまりになっているの. 3学年171名、合計494名であった。. か着目した。すると、 「教師,子供」, 「休み時間,子ども」 , 「積極的,科学,ルール,ボランティア,活動」の3つの. 2.意識調査の分析. クラスターに分類されることが分かった。これら3つのク. 全257項目のチェックリストに対して書き出された文章. ラスターに分類された文章記述の傾向を検討するために、. 記述の数は2,559であった。そのうち、 「地域教育連携力」. それぞれのクラスターに分類された文章記述例を表1に示. に書き出された文章記述の数は188であり、各学年の内訳. した。. は第1学年70、第2学年70、第3学年48であった。 意識調査の分析に当たっては、 「地域教育連携力」の チェックリスト項目に書き出された全ての文章記述を各学 年ごとに分類し、これら大量の文章記述の意味内容を計算 機で解析して、各学年の学生が学校経営力に対してどのよ うな意見や関心を持っているか、さらに学校経営の際にど のような行動をとろうと考えているのかに関する知見を見 いだした。計算機で解析するためのソフトウエアは、ジャ ストシステム社製日本語テキストマイニングソフトウエア 「トラスティアR. 2」を用いた。 これらの分析は、第1~3学年までの494名が書き出し た188の自由記述を元にして分析している。この分析は質・ 量を含めて行うクラスター分析及び多次元尺度分析によっ て行った。自由記述の分析であるため、限定的な統計手法 ではないので、より学生の実態を反映しているものといえ る。. - 12 -.
(4) 学生意識の質的・量的併合分析から見た地域教育連携力の拡大と変化 表1 各クラスターに分類された第1学年の文章記述例 ◎「教師,子供」のクラスター ・ポイ捨てする子どもに注意した。 ・なかなか子どもたちに注意することが出来ない。子どもたちとの関係が悪くなるのを避けようとしているのだと思わ れる。 ・教育フィールド研究で交通安全運動を先生側から体験したので子どもたちがどんな行動をするのか分かり、今後から は上手に子どもたちに指導できる。 ・教育フィールド研究において、子どもの言葉遣いが気にかかっていましたが、注意できなかったので注意したいです。 ◎「休み時間,子ども」のクラスター ・すべての児童と遊ぶため、一つの集団に固執せずさまざまなものへの働きかけを行っていく。 ・休み時間に一緒に遊ぶことでより子どもたちと親しみ、良い意味で教師と児童生徒の壁をなくす。ずっとやってきた サッカーを教えることが自分の夢なので部活の顧問になり全力で自分の全てを伝える。 ・休み時間に生徒と遊びながらふれあい楽しい雰囲気を作る。 ・休み時間にじゃんけんをしたり、ジャングルジムにのぼって一緒に遊んだ。 ◎「積極的,科学,ルール,ボランティア,活動」のクラスター ・遠足などで博物館や科学館を訪れたり、国語や社会の教科で図書館を使うようにする。 ・色々な施設をめぐり、教科書に書かれた実際のものを見学することにより、子どもたちの興味関心を深められるよう にしたい。 ・総合的な学習の一貫で「釧路探検」の引率をした。あいさつや交通ルールの指導を含め、きちんと補助が行えた。 ・現在、土日がなくなるなどといって部活を持たない教員が増えているが、自分が積極的に持って勉強以外の面もサポー トしたい。 ・実際にボランティアに参加した思っていたものとは違っていてとても面白くまた参加したいと思える内容だった。 ・学校内での活動だけでなく、学校外での活動も取り入れ、子どもたちに地域の人とのつながりを意識してもらう。. 表1より、「教師,子供」のクラスターに分類される文. 性も捉えて地域の中でも指導力を発揮していくことが重要. 章記述からは、教育フィールド研究において配属された学. であると考えている。また教師が積極的に地域の文化施設. 級において、 地域の中で 「ポイ捨てする子どもに注意した」. を利用したり、ボランティア活動を行うことが地域教育. 「交通安全運動を先生側から体験した」 「子どもの言葉遣. 連携力と捉えているといえる。このように1年生であって. いを注意したい」などの言葉から見られるように、学生が. も、地域にまで教師の指導力を発揮することが重要である. 地域において子どもの様子を注意するなど、地域において. ことを意識し始めている。. も、教師として振る舞おうと考えていることが分かる。 「休み時間,子ども」のクラスターに分類される文章記. 2.第2学年における子どもへの配慮事項の留意点の深化. 述からは、 「教師,子供」クラスターとは逆に子どもとの. 第2学年では、同じような活動内容でも、さらに子ども. 良好な関係を築こうと学生が考えていることが分かる。そ. を観察する注意点が広がっている。第2学年の書き出した. れはある意味では、教師という権威は、学校の中では通用. 文章を解析した樹形図を見ると、同学年の持つ地域教育連. するが、学校を離れた教師の指導力は関係性であり、見え. 携力に対する意見や関心は9つに分類されることが分かっ. ないところで信頼関係を築くことが、地域においても教師. た。「注意(7)」,「マップ(2)」,「子ども(13)」 , 「休み. の指導力を発揮することになるととらえていることの表れ. (4)」,「校区(2)」,「積極(8)」,「運動(23)」 , 「保護. である。そのためには、休み時間および放課後なども遊び. 者(4)」,「地域(7)」である。括弧内は分類された文章. などの関係性が、地域教育連携につながるとしている。. 数である。. 「積極的, 科学, ルール, ボランティア, 活動」 のクラスター. 次に9つの分類はどのようなまとまりになっているのか. に分類される文章記述からは、地域に出て行く学習活動や. 着目した。その結果、 「注意,マップ,子ども」, 「休み, 校区,. 体験活動が、 地域教育連携活動だととらえている。 例えば、. 積極,運動,保護者,地域」の2つのクラスターに分類さ. 総合的な学習や教科などと関連して、積極的に科学館や博. れることが分かった。これら2つのクラスターに分類され. 物館を訪れたり、地域のボランティア活動を行うことが必. た文章記述の傾向を詳細に検討するために、それぞれのク. 要と考えていることが分かる。これらの活動が、地域と連. ラスターに分類された文章記述例を表2に示した。. 携した教育活動になると考えている。. 表2より、「注意,マップ,子ども」のクラスターに分. これらのことから第1学年の学生は、子どもとの間に良. 類される文章記述からは、学校内だけではなく、学校外. 好な関係を保ちながらも、教師と子どもという関係の必要. においても、 「もっと多くの場面において支援配慮すべき. - 13 -.
(5) 栢 野 彰 秀・玉 井 康 之・倉賀野 志 郎・山 瀬 一 史・八 木 修 一 他 表2 各クラスターに分類された第2学年の文章記述例 ◎「注意,マップ,子ども」のクラスター ・授業、給食、校外活動など様々な場面で他の子より多く声かけをしていたように思う。もっと多くの場面の様子を見 て支援配慮すべき点について学びたい。 ・遠足などの校外活動の際、児童と一緒に歩く際に指導する。児童の安全を考え、歩道を歩く、広がって歩かないなど を児童へ指導し、補助する場合は、教師が道路側を歩くようにする。 ・授業以外での児童生徒の様子を観察することにもなる。 ・学校でマップを作成するとき、どこが危険なのか児童の目線で見ることによってより良い物が作成できる。 ・町中で道路横断などをしている児童を見かけたりしたら注意する。 ◎「休み,校区,積極,運動,保護者,地域」のクラスター ・運動会や文化祭において、協力して準備をしたり、競技に一緒に参加する中でコミュニケーションをとることが出来た。 ・野球部であったり、そのほか運動系クラブに参加・指導できる。 ・普段の生活からいかせる資源・教材を探す。花が咲いている(理科や生活)、買い物しながら(社会、生活) ・保護者へ学校では何をやっているのかをしっかり理解してもらうため、学級通信は頻繁に出したい。 ・地区行事に積極的に参加し生かすことができるものはないか探す。 ・校区の交通量やグランド環境、学校行事の意味、学校の歴史などについて環境整備活動などを通して知り、およそ把 握することができた。 ・休み時間に遊ぶことは、子供と仲良くなれる絶好のチャンスなのでたくさん遊ぶようにしている。 ・地域を知ることは、生活だけではなく、教育にもかかわることなので、資料館や行事に参加し、地域を知ることが必要。. 点について学びたい」 「遠足などの校外活動の際、児童と. 3.第3学年における教材・教科に広がる地域教育連携力 の拡大 . 一緒に歩く時に指導する」 「補助する場合は、教師が道路 側を歩く」「マップを作成するとき、どこが危険なのか児. 第3学年の書き出した文章を解析した樹形図を見ると、. 童の目線で見る」などの校外活動の留意点をより強く意識. 同学年の持つ地域教育連携力に対する意見や関心は6つに. している。すなわち、同じように校外活動をとらえても、. 分類されることが分かった。「地域(6)」,「教材(11) 」 ,. 遠足などの校外行事の際の安全管理の徹底や通学路の安全. 「自分(3)」, 「積極(4)」, 「活動(5)」, 「子ども(10) 」. マップなどの作成と周知などに関しても、地域の中での子. である。括弧内は分類された文章数である。. どもの目線でとらえることが地域教育連携力には必要であ. 次に、6つの分類がどのようなまとまりになっているの. ると捉えていることが分かる。. か着目した。その結果、 「地域,教材,自分,子供,積極,. 「休み,校区,積極,運動,保護者,地域」のクラスター. 活動」、「子ども」の2つのクラスターに分類されることが. に分類される文章記述からは、保護者を含めた学校のある. 明らかとなった。これら2つのクラスターに分類された文. 地域の教育資源の活用と学校における課外活動への積極的. 章記述の傾向を詳細に検討するために、それぞれのクラス. な参加が地域教育連携力に必要であると捉えていることが. ターに分類された文章記述例を表3に示した。. 分かる。例えば、「運動会・文化祭において、協力して準. 表3より、「地域,教材,自分,子供,積極,活動」の. 備」, 「競技に一緒に参加する中でコミュニケーションをと. クラスターに分類される文章記述からは、教科・授業・教. る」, 「地域行事などに積極的に参加し活かすことができる. 材などに関する地域との関連性に意識が広がっていること. ものはないか探す」など、行事の連携を意識している。. が明らかとなった。教材・教科教育に関しても、子どもの. これらのことから第2学年の学生は、地域教育連携力を. 認識や関心にかかわる理解を深め、学校のある地域の教育. 学校行事や学校外の子どもの安全管理という視点から捉. 資源を活用した授業を行いたいと考えていることが分か. え、それらを達成するためには、 保護者を含めた地域の人々. る。また「子ども」のクラスターに分類される文章記述か. の協力が不可欠であると考えていることが分かる。. らは、3年生になってより留意しなければならない責任感. さらに、地域の教育資源を使うという第1学年時の捉え. として、学校内外における子どもの安全管理とそれに必要. から、第2学年になると自分たちも地域の教育資源に参加. な支援を考えようとしていることが分かる。. しながらそれらを引き出そうという捉えに変容しているこ. これらのことから、第3学年の学生は、1年次の行事・. とも分かる。これらは、遠足の引率や運動会参加、文化祭. 安全がさらに2年生において観点を深め、さらに3年次に. 参加などのこれまでの教育フィールド研究における実体験. おいて、学習教材・授業との関わりで地域にあるものとの. から来る実感であると考えられる。. 関連性を検討していることが分かる。そして、学校内外に. - 14 -.
(6) 学生意識の質的・量的併合分析から見た地域教育連携力の拡大と変化 表3 各クラスターに分類された第3学年の文章記述例 ◎「地域,教材,自分,子供,積極,活動」のクラスター ・理科で植物や動物、地質を扱うのであれば、北海道に存在するものがあればそれについて触れられるように教材を選ぶ。 ・山花小中学校では、動物園が近くにあるので、それを教材として使う。 ・教科に応じて、子どもたちは何をつかったら理解しやすいか、五感をつかった教材研究をしていきたい。 ・自分の力を子どもに伝授する。 ・子ども達の視点で物事を考え、どのような授業を展開したら良いかを考えた上で身近なものを活用する。 ・地域の中で活動しているもので学習に取り入れられそうなものを探し、連携を図り、授業へのアプローチとして取り 組む。 ・休み時間に積極的に声をかけ、児童とともに遊ぶ。 ・学習以外の場面で、放課後などの時間をクラブ活動などで指導、支援を行う。 ◎「子ども」のクラスター ・教師が児童の安全を最優先にして行動していることを学び自らもその様に行動することができる。 ・学校外で、児童生徒がどのように活動しているのかを地域の人々との連携から把握する。 ・帰りの会では必ず安全についての確認を行い、児童が安全に帰るための支援を行う。. おける子どもの安全管理という視点から捉えながら、子ど. 活用した授業を作り、実施したいと考えるようになり、地. もが教材理解として、地域に出て行くとしたら、安全管理. 域の教育力を利用しようとする視点も見られるようにな. を同時に考えていかなければならないととらえている。目. る。教育内容や教科指導において、地域との関係が見えて. の前に迫った主免実習を前に、学校のある地域の教育資源. くるようになっている。それは、子どもが身近な素材から. を活用した授業を行いたいと考えていることが分かる。. 普遍的なものを認識するという子どもの発達理解が教材感 にも反映していると言える。. 4.地域教育連携力のとらえ方に関する各学年の特徴と認. これらのことから、釧路校の学生の持つ地域教育連携力 の捉え方の特徴は、次の2つにまとめられる。第一に、学. 識の広がり 樹形図に出力された分類名を見ると、各学年とも「子ど. 年が上がるにつれて、子どもとの良好な関係を築こうとす. も」あるいは「子供」と名付けられた分類名がある程度多. る視点から、子どもの安全を教師と地域の人々との協働に. く見られる。これら2つの分類に抽出された文章を見る. よって確保しようとする教師の視点へと深まっていく。第. と、第1学年では、教師と子どもとの良好な関係に加え、. 二に、学年が上がるにつれて、行事・放課後というエリア. 教師として子どもに接するという視点から子どもを見ると. としての地域の領域から教材内容などの子どもの認識発達. いう特徴を有する。その場合の地域教育連携は、行事や遊. の目線に広がっていく。そして教師から地域への一方向の. び時間・放課後などから、子どもの教育指導を学校から地. 連携から、逆向きの地域から学校への向きの支援も連携と. 域に広げていくようになっており、教師と子どもとの関係. 捉えられるように広まっていくと言える。. をとらえ直すものとして、地域での子どもとの関係を認識 している。さらに、地域に広げた観点から見ると、第1学. Ⅲ.多次元尺度分析による地域教育連携力として学生が捉 えている現象の特徴. 年では、教師や子どもが実際に地域に出向いて文化施設を 利用したりボランティア活動をするなどの、教師や子ども. 図1には、地域教育連携力として学生が捉えている現象. と地域との直接的なつながりを地域教育連携力と捉えてい. に関する対応分析図が示されている。. る。. 図1には、地域教育連携力として学生が捉えている現. 第2,3学年になると、さらにその関係を教師の立場で. 象に関する知見を得るために、現象の対象を表す227. 学校内外における子どもの安全管理という教師の視点から. の名詞句のラベルがつけられた点と3つの学年別ラベ. 子どもを見るようになっている。子どもをとらえる関係の. ルがつけられた点が示されている。すなわち、3つの. 領域が地域に広がっただけでなく、より細部の留意点を踏. 学年別ラベルが形作る三角形の重心の位置に相当する. まえて、子どもへの安全指導・地域生活指導という観点に. (0. 00,0. 00)の座標の周辺に位置した名詞句ラベ. 深まっている。さらに、地域における子どもの安全管理の. ルが全学年に共通する地域教育連携力に対する学生の捉え. ためには、保護者を含めた地域の人々の協力が必要と考え. ている現象の特徴となる。. るようになり、保護者を含めた地域の人々からの支援も地. 図1より、3つの学年別ラベルが形作る三角形の中ほど. 域教育連携力と捉えられるようになる。. に示された名詞句ラベルのうち、より重心の位置に近い 「経. さらに第3学年になると、学校のある地域の教育資源を. 験」, 「部活動」, 「地域」, 「子ども」, 「教師」, 「声」, 「自分」 ,. - 15 -.
(7) 栢 野 彰 秀・玉 井 康 之・倉賀野 志 郎・山 瀬 一 史・八 木 修 一 他 地域教育連携力を考える場合に、まず教師が地域に出たと きの、権威のない学校外での教育活動を指導できるための 子ども理解と関係性を高めていくことがまず重要であると とらえている。そして地域教育を進める際にまず配慮しな ければならない子どもの安全性を意識している。この安全 性がすべての地域教育力を活かす大前提となる。そして地 域教育活動には、教師だけでなく、安全や教材を含めて地 域住民や保護者の力をいかに活かすかが地域教育連携力と して重要になる。その保護者・地域住民を含めて地域教育 力を教材や教科など、学校内での教育活動・学習活動とし て活かしていくのは、教師の力量である。これら4つの力 量の総体が地域教育連携力と言える。このように釧路校の 学生が地域教育連携力と捉えている現象の広がりをとらえ ることができる。 おわりに 地域教育連携力に関するチェックリスト項目に対して釧 路校の学生が書き出した文章にクラスター分析を加えた結 図1 地域教育連携力と学生が捉えている現象を表す対応. 果、釧路校の学生は大まかに地域子ども理解と地域学習連. 分析図. 携という2つの観点から地域教育連携力を捉えていること が分かった。. 「アンケート」 の8つの名詞句ラベルを抽出する。 そして、. 地域子ども理解と地域学習連携とは、一見異なった捉え. これらの名詞句ラベルが抽出された文章に筆者らが検討を. である。しかし、地域教育連携力を鍵概念として、地域子. 加えると、学生が地域教育連携力として捉えている現象に. ども理解と地域学習連携という捉えが学生の内面で深まっ. ついて、次の①~④の4類型に分類できた。. ており、生活指導に関しても、教材・教科理解に関しても. ① 子ども理解を行う事例を書いている文章。. 相互に関連しているととらえられている。すなわち第1年. ② 学校内外における子どもの安全を確保する事例を書. 次では、学校から地域に出る活動をとらえると、教師とい. いている文章。. う権威がないままに指導しなければならない。そのため、. ③ 保護者を含めた地域の人々との連携・協力を行う事. 子ども理解と子どもとの関係性を良好な関係を築こうとす. 例を書いている文章。. る視点が出発点となる。安全指導・交通指導なども、子ど. ④ 地域資源の教材化を行う事例を書いている文章。. もは教師の指示力が弱くなることへの対応力としての地域. 表4には、文章記述例が示されている。. 教育連携力である。. 表4より、1年次から3年次にかけて学生が見たり実体. 第2年次では、行事・活動を含めて多様な活動で地域に. 験したりした事例を踏まえて、地域教育連携力のとらえ方. 出て行くことによって、子どもの学校教育での様々な活動. が広がっている。. の広がりをとらえている。その場合の指導の留意点も、子. 4つの文章群に分かれている観点からみられるように、. どもの目線からその留意事項をとらえるようになってい. 表4 3つの学年別ラベルの形作る三角形のより重心の位置に近い範囲に分布する 4つの形容詞句ラベルが抽出された文章例 ・どのような声がけをしたらよいか。 「何して遊ぶ?」 「先生も入れて」といって入る。みんなで○○して遊ぼうと提案する。 ・遊ぶときは思いっきり子どものように遊ぶ。遊びに入れてない子は誘うようにしている。うまく輪に入れなかった子 も入ってみるとすごく楽しそうで良かった。 ・遊びを通して子どもの様子を知り、子どもとともに楽しく遊ぶ。 ・遊ぶときは思いっきり子どものように遊ぶ。遊びに入れてない子は誘うようにしている。うまく輪に入れなかった子 も入ってみるとすごく楽しそうで良かった。 ・いろいろな児童と遊べる外遊びなどおにごっこなどで遊ぶ。 ・授業、給食、校外活動など様々な場面で他の子より多く声かけをしていたように思う。もっと多くの場面の様子を見 て支援配慮すべき点について学びたい。. - 16 -.
(8) 学生意識の質的・量的併合分析から見た地域教育連携力の拡大と変化 る。このような行事等ではとりわけ保護者・地域住民の理. 識構造の連関-能動的観察・学級活動からの学校経. 解と協力も必要で、それらとの連携力も地域教育連携力と. 営認識の深化に関する質的・量的併合分析-」,『北. してとらえている。. 海道教育大学紀要(教育科学編)』,Vol.62,No.2,pp.119134,2011.. 第3年次では、 学校の中にとらえる教材・教科の視点で、 地域との連携力を捉えている。それは、 子どもの発達認識・. 6)栢野彰秀,玉井康之,近江道郎,西出勉,倉賀野志郎,山. 理解の現実的素材を考えると、教科・教材の中からも、地. 瀬一史,村上知子,八木修一,赤田裕喜彦,小林宏明:. 域教育との関連性を意識しなければならないということに. 「教育フィールド研究を経た学生の共同体験と協働. 発展している。. 性認識の発展」,『北海道教育大学教職大学院研究紀 要』,Vol.2,pp.-,2012.. いわゆる学生の立場から子どもを捉えようとする視点か ら、学年が上がるにつれて子どもの認識と置かれた立場か. 7) 「教職チェックリスト」に関する詳細は筆者らの前報 2)を参照されたい。. ら、教師と地域の人々との協働によって確保しようとする 教師の視点へと、学生の有する視点が広まり、かつ深まっ. 8)クラスター分析の分析手順や出力された樹形図の解釈 の詳細などは、筆者らの前報2)を参照されたい。. て子ども理解と地域連携が整理されていることが明らかに なった。さらに地域連携に関しては、教師から地域への一. 9)多次元尺度分析の分析手順や出力された散布図の解釈. 方向の連携から、地域から学校への学習支援等のコーディ ネート支援、つまりこれまでとは逆方向の連携も捉えられ るように、学年が上がるにつれて変容が見られることも明 らかになった。このように多次元尺度分析からは、学校内 外における子どもの安全確保、保護者を含めた地域の人々 との連携・協力、地域資源の教材化など、学生が見たり実 体験したりした事例を、発展的に地域教育連携力の現象と 捉えていることが明らかになった。 註 1)栢野彰秀,玉井康之,赤田裕喜彦,西出勉,近江道郎,倉 賀野志郎,山瀬一史,村上知子,小林宏明:「 「学習指導 力」 に関する学生意識の質的検討-釧路校 「教育フィー ルド研究」の実践を通じた学生の認識の発展-」,『北 海道教育大学紀要(教育科学編)』,Vol.61,No.2,pp.922,2011. 2)栢野彰秀,玉井康之,赤田裕喜彦,西出勉,近江道郎,倉 賀野志郎,山瀬一史,村上知子,小林宏明:「釧路校学部 学生から見た「教職チェックリスト」の特徴-クラス ター分析による「学習指導力」の学年別認識-」,『北 海道教育大学紀要(教育科学編)』,Vol.61,No.2,pp.2331,2011. 3)栢野彰秀,玉井康之,赤田裕喜彦,西出勉,近江道郎,倉 賀野志郎,山瀬一史,村上知子,小林宏明:「学生の生 徒指導認識の拡大と生徒指導力の向上-直接指導か ら日常的な接触活動への概念の拡大に関する質的・ 量的併合分析-」,『北海道教育大学紀要(教育科学 編)』,Vol.62,No.1,pp.23-38,2011. 4)栢野彰秀,玉井康之,近江道郎,西出勉,倉賀野志郎,山 瀬一史,村上知子,赤田裕喜彦,小林宏明,八木修一:「学 生の教育相談認識の拡大と教育相談力の向上-特別な 児童から全ての児童へと概念の拡大に関する質的・量 的併合分析-」,『釧路論集』,Vol.43,pp.21-331,2011. 5)栢野彰秀,玉井康之,近江道郎,西出勉,倉賀野志郎,山 瀬一史,村上知子,八木修一,赤田裕喜彦,小林宏明:「学 生の子ども・学級認識とボトムアップの学校経営の認. - 17 -. の詳細などは、筆者らの前報1)を参照されたい。.
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