社
会
系
教
科教
育
学会
『社
会
系教
科
教
育
学
研
究』
第
3号1991
(pp.
43-48)
消 費 者 教 育 に 関 す る
一
社会
科
公
民的分
野
を通
して
−
一 考 察
A Study of
Consumer Education
―
Through the Field of Citizen in Social Studies
一
1
研究の
動機
・目的
今日の
経済社会はか
つて経験
した
ことがないほど急
速に変化
している
。これは経済社会に限った
ことでは
な
くあらゆる面に言えることであ
り
,その
多様
化,複
雑
化に
ついても同様である
。経済
活動の主体
と
しての
消費者はその影響
をいち早くかつよ
り多く受けること
になる
。それ
だけに消費者の主体性が要求さ。
れるが,
その
急速な変化に
対応
しきれ
ず新たな消費者問題が生
じてきている
。昭和40
年代埼玉
県の消費生活セ
ンター
に寄せ
られ
た主要な相談は
,食品の
安全哇
や欠陥商
品
な
どの
品質に関わ
るもの
であったが
,現在では
商品の
契約
・解約
,商品の販売方法
,訪問販売に関するもの
が
中心にな
っているという
。さらにこれ
らの相
談は社
会人に限ることなく
,社会的にみ
ても不完全な中
・高
生が増加
してきていることは見
逃せない
。この傾
向は
埼
玉県のみに限
らず全
国的なもの
と考え
られ
る
。また
,
消
費者教育は生涯
にわたる生活と密接に関連する部分
を扱
うもの
である
。ここに消費者教
育を実施する重要
性が
ある
。埼玉
県の
場合他地域
に先駆けて消
費者教育
を取り上げてきているが
,教師間には消費者教育実施
の
急務性
を感
じているとは言いがたい面も見られる
。
平成元年の
「新学習指導要領
」では
,中学校社会科公
民的分野の
「消費者の保護
」において,その
内容の
取
り扱いで
「現代社会における取引の
多様や契約の重要
性
を取
り上げ
,消費者と
して主体的に判断
し行動する
ことが大切であることを考えさせるよう留意するこ
と
。」と明記され
,今後学校教育において本格
的に消
費者教
育が推進
され
ることになる
。
しか
し,現状か
ら
考
えて実際には教師ひと
りひ
とりが模
索し
,実践
を積
み
重ね
ることか
ら始めなければならないだ
ろう
。
本研究では
,その
一試案と
して公民的分野における
消費者教
育関連
項目と学習内容
,生徒の実態把握
とそ
の
変容
,
「新
しい消
費者」
(経済行為の
主体と
しての
基礎的な消
費者の
知識
を身に
付
け
,
主体
的に
責任
を持
っ
て意思決定を行
いうる能
力をもった消費者
(1
)
)
の
育成
を目的と
した学習指導案を検討す
る。
新
井
宏
昌
(埼
玉
県本
庄市
立
本
庄南
中学
校)
2
公
民的分野における消費者教
育関連項目
さいたま消費者教育フォ
ーラム’88
の基調講演の中
で津止登喜江氏は
「学校
における消費者教育について
一言で言
えば,経済
,社
会の仕組み
を知
り,本当に
自
分でよく考え
,判断して商品やサ
ビース
を適切に選ん
で
上手に活用す
る,そ
してそれ
ぞれ個性的に生活を営
める能力
,安定
した生活ができるという実
力をつけさ
せ
名
ことではないか
(中略
)そ
して,要は消費者教育
というのは生涯教育の視
点か
ら人間と
しての
あ
り方と
いうか
,生き方というか,それの
一環
としての
消費者
教育であるべきだ
(2
」
)
と述べている。また,日本消
費者教育学会会長の今井光映氏は
,消費者教育の
本質
は
「買いもの上手
」の水準を超えて
「普遍的な人間開
発
」
「人間らしい自己実現をめざす一般教育」
(3
)
で
あるべきだと強調している
。この
ことから消費者教
育は全教育活動を通
じて行
う必要があるが
,ここでは
特に
関連の
深い社会科公民的分野での消費者教
育の体
系を考察
した
い。
消費者教育には消費生活に関するあらゆ
る事柄が関
わ
っており,その体系化
・構造化は
難
しく今後の課題
である
。体系化されれ
ば,全体構
造の
中でどの部分
を
実践
しているのか明らかになり
,実践が構造的に展
開でき,より効果的な結果をもたらすことができ
る。
体
系化
を考えるにあた
り,アメリカ大統領委員会の
『
消費者教
育ガイ
ドライン』
(4
)
・岐阜県
「消費者教育
の理論と実践
(5
」
)
・宮坂広作
『消費者教育の創造』
(6
)
を参考に
,消費者
との
「繋が
り」
(消費者行動の直接
の基盤とな
っているもの
)と
「広が
り」
(消費者行動
に交互作用
を及ぼすもの)に分類
し
,消費者教
育関連
項
目と
して
,A消費生活
B消費者問題と消費者運動
C消費者の権利と責務
D消費者行政
E消費者と経
済
F消費者と環境
・資源の
6項目を設定
し
,それ
ぞれ
の視
点について検討する
。
な
お,図
1は
A−
Fの全体構造図で
ある。
A 消 費 生 活 … わ れ わ れ の 消 費 生 活 は多 方 面 に わ た っ て さ ま ざ ま な 関 わ り を 持 って い る。 契 約 の 概 念 , 福 I I 。 祉, 労 働 , 貯 蓄, 保 険 な ど につ い て 理 解 さ せ る 。 B 消 費 者 問 題 と 消 費 者 運 動 … 消 費 者 問 題 は 決 し て 自 分 か ら遠 い問 題 で は な く, 身 近 に あ る こ と を 自 覚 さ せ る と と も に consumerism の普 及 に よ り 消 費 者 運 動 が 地 域 の 住民 運 動 と し て 広 が り , 最 近 の 傾 向 と し て は物 価 や 商 品 の安 全 哇 の み で は な く, サ ー ビ スや 健 康 , 高 齢 者 問 題, 環 境 問 題, 国 際 問 題 な ど 広 範 囲 に わ た って い る こ とを 理 解 さ せ るo C 消 費 者 の 権 利 と責 務 …1962 年 ケ ネ デ ィ大 統 領 は教 書 の な か で, ①安 全 を 求 め る 権 利, ② 正 確 な 商 品 知 識 を 知 ら さ れ る権 利 , ③ 商 品 を 選 ぶ 権 利 , ④ 消 費 者 の意 見 を 聞 い て も ら う 権 利 を 消 費 者 の権 利 と した が, こ の考 え は世 界 各 国 に 影 響 を及 ぼ し た。 宇 野 政 雄 氏 は こ の 4 つ の消 費 者 の権 利 に は4 つ の責 務 が 存 在 す る こ とを 指 摘 して い る 。 す な わ ち , 消 費 者 は自 衛 せ ねば な ら な い こ と, 商 品 や サ ー ビ ス の選 択 眼 や 情 報 へ の正 し い 見 方 を 持 つ よ う に 自 己 学 習 す る こ と, 消 費 者 と し て 合 理 的 意 思 決 定 を し て い く こ と , 自 分 が し っ か り と し た生 活 態 度 を 持 つ と 同 時 に 他 人 が 被害 を 被 る と 予 想 さ れ る場 合 に は 自 分 に は 関 係 な い こ と と し な い で 売 手 側 の 態 度 を 改 め さ せ る よ う な 市 民 ( 公 共 的 市 民public citizen) で あ る こ と と い う の で あ る。 こ の よ う に 消 費 者 と し て の 権 利 意 識 , 行 動 力 さ ら に 理 解 力 , 判 断 力 を身 に 付 け る こ と が賢 い 消 費 者 で あ る こ と を 理 解 さ せ る 。 D 消 費 者 行政 … 昭 和43 年 の消 費 者 保 護 基 本 法 の 制 定 を はじ め, 行 政 機 構 と し て 国 民 生 活 審 議 会 , 消 費 者 保 護 会 議 , 消 費 生 活 セ ン タ ー な ど が設 置 さ れ, 消 費 図 1 消 費 者 教育 関 連 項 目 全 体 構 造 図 広 が り E 広 が り F 者保護 の体 制が整備 されてい ること, そ の役 割を理 解させる。 E 消費者 と経済…個人消 費 は全消 費の6∼ 7割を占 めている といわれてい るが, このこと は個人 が景気 を つくる人 々(円の投票 者) であ ることを意 味して いる。さ らに, global な 見方の育成 に努 め, わ れ われの生活 が日本経済 の みでな く世界経済 にも関連 してい ることを理解 させる。 F 消費者 と環境・資 源… われわれは自然 と共 生し な ければな らず, そのため には生態 系を損 なって はな らない。 それを意識 した消費 行動 は消費 者か ら一歩 進んで市民 にな ることを示唆 してい る。 また他人 へ の配慮 も忘 れて はな らない。 これは生 き方 に繋 って いく部分 といえ る。 われ われは単に経済 シス テムを 理解す るに留 ま らず, ecological な面 や 社 会 的 配 慮 も今後 重要 となることを理 解させ る。以 上 の事 項 を整 理して公民 的分野 における消費者教 育を体系 的 に表 したの が表 1であ る。 表 1 公民的 分野にお ける消費者教育 関連項 目と学習内容 関 連 項 目 学 習 内 容 A 消 費 生 活 家 計 と 消 費 生 活 ・ 貯 蓄 と 保 険 ・ 租 税 ・ 契 約 ・ 労 働 ・ 社 会 保 障 制 度 と 国 民 の 福 祉 ・ 高 齢 化 社 会 B 消 費 者 問 題 と 消 費 者 運 動 消 費 者 問 題 ・ 住民 運 動 ( 消 費 者 運 動 ) ・ 世 論 と マ ス コ ミ ・ 消 費 者 教 育 C 消 費 者 の権 利 と 責 務 基 本 的 人 権 の 尊 重 ( 4 つ の 消 費 者 の 権 利 と 義 務 ) D 消 費 者 行 政 消 費 者 関 連 法 ( 消 費 者 保 護 基 本 法 等 ) ・ 行 政 機 関 ( 経 済 企 画 斤 ・ 国民 生 活 セ ン タ ー ) ・ 地 方 自 治 ( 消 費 生 活 セ ン タ ー ) E 消 費 者 と 経 済 国 民 経 済 −貨 幣 ・ 価 格 決 定 ・ 景気 問 題 ・ 生 産 と 流 通 ・ 企 業 と 金 融 ・ 財 政 ・ 貿 易 ・ 世 界 経 済 ・ 東 西 問 題 ・ 南 北 問 題 F 消 費 者 と 環 境 ・ 資 源 生 活 環 境 ・ 公 害 問 題 ・ 都 市 問 題 ・ 食 糧 問 題 ・ 資 源 問 題
-44-前表 のそれぞ れの関 連項目お よび学習内容 は言 うまで もなく単 独で存在 してい るので はなく,相 互に関連 し あってい る。 それを おさえ た上 で単元を 構成す る必 要 があ る。 3 消 費 者 と して の 生 徒 の 実 態 消 費 者 と し て の 意 識 を 生 徒 が ど の く ら い も っ て い る か を 把 握 す る た め に ア ン ケ ー ト を 実 施 し た 。(7)内 容 は 2で 考 察 し た消 費 者 教 育 関 連 項 目 に従 って 作成 し た。 そ の集 計 結 果 の 概 略 を 述 べ る。 匚消 費 者 生 活 」 で は賢 い 消 費 者 , 通 信 販売 利用 状 況, 無 店 舗 販 売 で の 勧 誘 さ れ た 経 験 , カ ー ド 所 持 状 況 に つ い て 質 問 し た 。 賢 い 消 費 者 と は, 安 く て良 い 商 品 を買 う, 表 示 を よ く み て 買 う, よ く 考 え て買 う, 安 く 値 切 る, う ま い 話 に乗 らな い の ほ か , 外 見 に と ら わ れ ず 安 全 ・ 目 的 ・ 機 能 の 面 か ら商 品 を 選 ぶ 消 費 者 と い う 回 答 が 見 ら れ た が , わ か ら な い 者 もあ っ た。 通 信 販 売 利 用 状 況 に つ い て は65 % が あ る と 答 え て い る。 ま た 勧 誘 に つ い て も66% が 経 験 を 持 っ て お り , そ の ほ と ん ど が 教 材 で90 % が 断 わ っ て い る が, 残 り の10 % の 中 に は買 わ さ れ た と い う 意 識 を 持 っ て い る者 も い た。 カ ー ド も99 % が テ レ ホ ン カ ー ド を ,70 % が C D ビ デ オ な ど の 会員 カ ー ド を ,36 % が オ レ ン ジ カ ード を 所 持 し て お り,10 % が キ ャ ッ シ ュ カ ード 所 持 と い う 回 答 が あ った 。 匚消 費 者 問 題 と 消 費 者 運 動 」 で は, 近 年 の 消 費 者 問 題 につ い て, 消 費 者 と し て の 被 害 状 況 , そ の対 応 に つ い て 質 問 し た 。 消 費 者 問 題 に つ い て の回 答 は消 費 税 が 32%, そ の ほ か物 価 問 題 ・ 使 い 捨 て ( ご み ) ・ お し つ け 商 法 ・ 誇 大 広 告 な ど が 1 ∼ 3 % で, 53% はわ か ら な い と い う 結 果 だ っ た。 被 害 状 況 に つ い て は68 % の生 徒 が あ る と 答 え て い る。 不 良 品 ・ 食 品 の被 害 が多 く, そ の ほか 広 告 ・ 約 束 と違 う と い う ト ラ ブ ル も あ り , か な り の生 徒 が 被 害 経 験 を 持 って い る。 そ の 被 害 に 対 し, 交 換 ・ 返 品 な ど の あ る 行 動 を 示 し た も の が57 % で , 残 り の43 % は諦 め る な ど 行 動 を 起 こ さ な かっ た。し か し, もし 被 害 を 被 った と き は行 動 を 起 こ す と答 え た 生 徒 は 82% で , 実 際 の場 面 と 仮 定 の場 面 で ギ ャ ッ プ が 生 じ て い る 。 頭 で 考 え て い る こ と と実 際 の 行 動 が合 致 し て い な い と い え る 。 ま た, 言 って だ め だ った と き は仕 方 が な い と考 え て い る生 徒 もお り, 救 済 手 段 を 知 ら な い も の が ほ と ん ど で あ っ た。 こ れ ら の 対 応 は権 利 意 識 の弱 さ か ら く る も のと 思 わ れ る。 そ れ を 裏 付 け て い る の が , 匚消 費 者 の 権 利 と 責 務 」 で あ る 。 こ こ で は消 費 者 の 持 っ て い る 権 利 につ い て 質 問 し た 。 回 答 と し て, 自 由 に買 う権 利 ・ 選 択 で き る 権 利 ・ ( 不 良 品 に つ い て ) 意 見 を 言 う 権利 ・ 商 品 に つ い て 詳 し く 知 る権 利 な ど が 得 ら れ た 。 し か し, わ か ら な い と 回 答 し た生 徒 も40% 近 く もお り, 消 費 者 とし て の 権 利 意 識 の弱 さ が 伺 わ れ た。 さ ら に, 「 消 費 者 行 政 」 で の質 問 , 熊 谷 消 費 生 活 セ ン ター の存 在 で は, 知 っ て い る も の が15 % で あ っ た 。 そ の活 動 内 容 , 役 割 につ い て はさ ら に 知 らな い も のと 予 想 さ れ る。 「 消 費 者 と 経 済 」 で は, そ の関 心 度 を 質 問 し たO 約 半 数 の生 徒 が 関 心 が あ る と 答 え て い る。 「 消 費 者 と環 境 ・ 資 源」 で は, 関 連 性 の有 無 に つ い て 質 問 し た。 92% が 消 費 者 と 環 境 ・ 資 源 問 題 は 何 らか の形 で 関 連 が あ る と 捉 え て い る。 以 上 の こ と か ら生 徒 は経 済 社 会 の 影 響 を 少 な か らず 受 け て い る こ と が わ か る が, 彼 ら が そ れ を 意 識 し て い る と は言 い 難 いO ま た, 消 費 者 と し て の 意識 が 薄 い 生 徒 も多 い と い え る。 4 学習指 導案 先の アンケ ートを もとに学習内 容を決定 し, 授業を 実施し た。 単元名…消費 者問題 目 標…近年 の消費 者問題 は販売 や契 約 に関 する もの が増加して いるが, その原因は経済成長 を背 景 としたカ ード 社会 にお ける消費者 の契 約意 識 の欠 如・生活 態度,売 り手 の利潤追求 偏重 にあ ることを理 解させ,問題 解決の ために如 何 に行動す べきかを主体 的に考えさ せるO 消 費者教育 は日々 の生活 で直接 かつ 具体的 に表 われ てくる もので あるだけ に, 知識理解 の習得の みで は不 十 分である。 そこで学習過 程は主 体的 な判 断力, 社会 生活 に対す る意欲的態度 の育 成 まで目 的とし たアメリ カ新社会科を参 考とし た「人 間中心社 会科」 の新 しい 問 題解決学習 によった。学 習過程 に「人 々 の願い や社 会 的価値規範 の究 明」「合 理的意思決 定」 を導入 する ことは実践的な 社会参加態 度の育成 につなが ると考え られる。 こ のことか ら新 しい問題解決 学習 は消費 者教 育を 行うにあ たって有効な学 習過程 といえる。 その学習過程 は次 のとお りであ る。 ①問 題場 面 の発見 …社会的現 実につい てので きるだけ 正 確で豊富な 事実 的知識を 獲得さ せ, そのよ うな現 象 がなぜ生じ たのか問題を 発見す る。 ②心 情への共感 …その問題 と直接 かかわりそ の渦中 に 巻 き込ま れて いる人 々 が, どのよ うなことを感 じど のような気持 ちになってい るか,そ の心 情を当事者 の立場 に立って くみ取り, できるだ け共 感的に理解 す る。共感 によ って強く動機づ け られ支 えられた社 会的探究 は, 子供 自身 の人 格形成 と直接 的なかか わ りを持 った社会認識を形 成して いく上で も, 極めて
重 要 な 条 件 で あ る。 ③ 原 因 の探 究 … そ の問 題 の 原 因 や背 景 を , 表 面 的 な 現 象 を 越 え て 推 論 し な が ら, さ ら に深 く追究 し てい く。 そ の 際 直 観 的 な ひ ら め き を 大 事 に し な が ら, 具 体 的 な 証 拠 資 料 に よ っ て 論 理 的 に 分 析 し, 検討 し てい く。 ④ 願 い ・ 価 値 の究 明 … そ の 問 題 は ど う あ る べ き か, そ れ に 対 し て 自 分 はど の よ う に対 処 し て い く の か を 考 え さ せ る た め に , 問 題 場 面 の背 後 に あ る 事 実 的 な 因 果 関 係 だ け で な く, そ の 奥 に 内 在 す る さ まざ ま な 立 場 の人 々 の 種 々 の願 い や 価 値 を 明 ら か に す る。 そ の 中 で 複 数 の 願 い や価 値 が 互 い に矛 盾 し 対 立 し あ う 形 で 存 在 し て い る こ と に気 づ か せ る。 そ し て 自 らが 主 体 的 に 判 断 し, よ り 高 次 で 普 遍 的 な 価 値 を 選 択 で き 学 習 展 開 ( 2 時 間 扱 い ) るようにする。 ⑤合理 的意思決定 …獲得 した質の高い 知識と, 自分が 支 持すべき社会 的価値 とを 闃連づ け統計的 に活 用し な がら, 自分 が直面して いる問題場 面に対 してどの よ うに対処す べきかを決定 してい く。(8) こ の「 新 し い 問 題 解 決 学 習 の理 論 は, 知 的 理 解 の質 的 な深 ま り と 発 展 を 確 実 に保 障 し 得 る も のに な っ て い る と同 時 に , 価 値 的 探 究 や合 理 的 意 思 決 定 の学 習 活 動 を 設 定 す る こ と に よ っ て , 社 会 問 題 に対 し て 理 性 的 な 分 析 力 と 冷 静 な判 断 力 を 持 っ て 主 体 的 に対 処し な が ら, 社 会 生 活 に 意 欲 的 に 参 加 し て い く こ と の で き る市 民 を 育 成 す る 授 業 理 論」(9) で あ る。 学 習 過 程 教 師 の は た ら き かけ 学 習 活 動 ・予 想 さ れ る 反 応 留 意 点 ・ 資 料 導 入 事 例 の 提 − 不 消 費 者 問 題 事 例 ( 消 費者 信用 ク レ ジ ット ・ 特 殊 販 売 相 談 ) を 読 ませ る 。 消 費 者 問 題 事 例 か ら 関 心 を 高 め る 。 アン ケ ー ト から、 身 近 に も不 良品 ・ 広 告 と の 相違 な ど の 被 害 があ っ たこ と を 付 け 加 え る 。 展 問 題 の 発 見 心 情 へ の 共 感 原 因 の 探 究 ( 仮 説) こ の よ う な 消 費 者 問 題 が 現 在 多 く な っ て い るこ と を 話 し 、 問 題 意 識 を 喚起 さ せ る。 もし同じ ような問題 をかかえ た とし たら ど う か 。 ( そ の 気 持 ち は ? ど う行 動 す る ? ) な ぜ こ の よ う な 消 費者 問 題 が 生 じ る の だ ろ う か 。 思 いつ く も の か ら 出 し あ っ て み よ う 。 出 し あぅ た 考 え を 、 売 り手 ・ 買 い 手 ・ 社 会的 な も の に分 類 し て み よ う 。 グ ル ー プ の 意 見 を ま と めて み よ う 。 こ の 予 測 が 正し い か どう かを 調 べ る ため に ど ん な 資料 が必 要 か 。 そ の 資 料 を ど う 手 に 入 れ た ら よ い だ ろ う か 。 な ぜ こ の よ う な 問 題 が 生 じ る の だ ろ う か と い う 疑 問 を も つ 。 実 際 に 自 分 が そ の 立 場 に な っ た とし て 真 剣 に考 え る 。 ・ 困 る 。 い や だ。 ど う し たら い い か わ から な く な る 。 親に 相 談 す る 。etc. グ ル ー プ で 問 題 の 原 因 を 話 し あ い ま と め る。 仮説 設 定 経 済的 豊 かさ に よ る カ ー ド 社 会 を 背 景 に 売 るこ と だ け を 考 え る売 り 手 と計 画性 の な い 生 活 態 度 の 買 い 手 と の 間 に 消 費 者 問 題 が 生 じ て い る 。 ・ 被害 に あ っ た人 の 銛 、 相 談 件 数。 借 金 の 目 的 。 カ ー ド 発 行 枚 数 。 販 売 方 法 の 種 類etc. ・新 聞 一図 書 館 で 。 学 習 過 程 の わか る プ リ ン ト を も と に 全 体を 通 し て グル ー プ を 中 心 に 進 め さ せ る 。 アン ケ ー ト 結 果 の 数 値 を 話 すこ とで 決し て 他 人 事 で な い こ と に 気 づ か せ る。 考え ら れる 原 因 を.自 由 に 予 測 、そ れ を売 り 手 胴 ・ 買 い 手 側 、社会 的 背 景 に 分類 さ せ 、 仮説 を 立 て さ せ る。 仮説 検 証 の ため に 必 要 な 資料 を 考 え さ せ る 。 県 斤 や市 役 所 ・ 消 費 生 活 セ ン ター の 利 用 も 促 す 。 |
-46-開 ( 検 証) 願 い.・ 価 値 の 究 明 ど の よ う な 資料 を人 手 し た だ ろ う か 。 自 分 の たて た予 測 は 正 し い と い え る だろ う か 。予 測 の 修 正 は 必 要 か。 資 料 から 何 が わ か り 何 が 言 え る だ ろ う か 。 こ れ ら の 問 題 を な く す ため に は ど う あ る べ き か 。 自 分 は ど う す べ き か 。 グ ル ー プ で の 活 動 を 主 に 調 べ て き た 内 容 を 発 表 す る 。 友 達 の 発 表 や 資 料 か ら 自 分 の たて た 予 測 を 検 証 し て い く 。 検 証 の 過 程 で 、 資 料 か ら 近 年 見 ら れ る 様 々 な商 法 そ れに 対 す る 消 費 者 保 護 制 度 、 契 約 の 重 要 性 ( 契 約 と は 法 に よ っ て 保 護 さ れ る 約 束 で あ る ) な ど に 気 づ く 。 グ ル ー プ で 意 見 を 出 し あ い ま と め る 。 グ ルー プ ご と の 発 表 を 聞 き 、 自 分 た ち の 資 料 と 比 較 さ せ る 。 事 前 に 用 意 し た 資 料 を 提 示 し 、 仮 説 の 検 証 を 行 わ せ る 。 資 料 : 特 殊 販 売 ( 商 法 ) 一 覧 ・ 消 費者 関 連 法 ・ 表 示 マ ー ク 一 覧 ・ ク ー リ ン グ オ フ ークレ ジ ット カ ー ド 約 款 ・ 消 費 生 活 セ ン タ ー の 仕 事etc9 °) 売 り 手 側 ・ 買 い 手 側 ・ 社 `会 的 背 景 の 側 面 か ら そ の 価 値 を 考 え さ せ る よ う に す る 。 整 理 合 理 的 意 志 決 定 相談 事 例 よ り 作 成 し たい く つ か の 場 面 か ら 自 分 が 迫 遇 し た ら ど う 行 勤 し た い だ ろ うか ま と め る 。 消 費 生 活 セ ン タ ー の 利 用 や 法 律 と の 関 係 、 ク ー リ ン グ オフ の 活 用 な ど を 考 え な が ら 対 応 す る。 学 習 し て の 感 想 、 次 に 調 べ て み た い こ と を まと め る 。 「 心 情 へ の 共 感 」 で 出 さ れ た意 見 と 比 較 し て 学 習 し た こ と が 生 か さ れ て い る か 注 意 す る 。 新 た な 疑 問 が 生 れ た か 確 認 す る 。 5 生 活 の 変 容 ア ン ケ ート か ら生 徒 の実 態 を 考 察 し た よ う に, 生 徒 の消 費 者 意 識 は 低 い と い え た。 消 費 者 問 題 事 例 か ら の 仮 説 設 定 段 階 で は 短 絡 的 に 買 い 手 側 に そ の非 を 求 め る 予 測 が多 く 出 さ れ た。 し か し, 意 見 を 出 し あ う 中 で そ の 予 測 が深 ま り , ほか の立 場 か ら の原 因 を 見 出 し 経 済 社 会 全 体 に ま で 視 野 を 広 げ て 考 え る こ と が で き た。 そ し て , 消 費 者 生 活 セ ン タ ー の 存 在 意 義 , 契 約 の 意 味 , さ まざ ま な 商 法 な ど に 気 づ く 中 で , 自 分 も消 費 者 と し て の一 人 で あ る と い う 自 覚 が 持 て た とい え る 。 生 徒 か ら は, 契 約 書 を し っ か り読 む必 要 性,消 費生 活 セ ン タ ー 等 の機 関 の 積 極 的 活 用 , 購 買 目 的 ・ 情 報 の吟 味 な ど か し こい 消 費 者 と な る よ う努 力 し た い と の 意 見 が多 数 出 さ れ たO ま た , カ ー ド に つ い て さ ら に詳 し く知 りた い, ニ ュ ー ス ・ 新 聞 に あ る 消 費 者 問 題 に 注 意 を は らい 詳 し く 学 ん で い き た い と い う 意 見 の ほか , 悪 徳業 者 取 締 り の た め の 法 律 は ど う な のか , 警 察 は ど う 関 わ って い る の か , な ぜ 悪 徳 商 法 が 増 加 し て い る の か と い っ た疑 問 が 出 さ れ た 。 さ ら に, 国 や地 方 公 共 団 体 のあ り方 は 今 の よ う で い い の だ ろ う か , 消 費 者 問 題 は 人 間 の欲 と 密 接 に 関 係 し て い る の で はな い か, お 金 に 対 す る価 値 観 に 問 題 が あ る ので は な い か , 消 費 者 問 題 はだ まさ れ た 人 だ け の問 題 で は な く 国民 全 体 の 問 題 で は な い か と の 捉 え 方 が で き る 生 徒 も 見 ら れ た。 今 回 の学 習 を 通 し, 生 徒 か ら 寄 せ ら れ た 感 想 に 匚テ レ ビ な ど で 伝 え ら れ る 消 費 者 問 題 が こ ん な に 身 近 か な も の だ と は思 わな か っ た 。 」 「 こ の消 費 者 問 題 は す べ て の 人 が 一 生 懸 命 に勉 強 し て , も っ と 知 っ て い く必 要 が あ る 。 」 「 こ こ で 勉 強 し た お 蔭 で い ろ い ろ な こ と が わ か り , し つ こ い 訪 問 販 売 の人 を 断 わる こと がで き た。 訪 問 販 売 の人 達 は私 た ち を 子 供 だ と 思 い チ ャ ン ス と ば か り に攻 撃 し て く る の で , 私 た ち も消 費 者 の 一 人 と し て学 習 し て お く こ と が必 要 だ 。 」 な ど が あ っ た 。 消 費 者 問 題 が今 ま で と違 い身 近 な 問 題 と な り , 学 ぶ こ と の 大 切 さ を 理 解 し , 消 費 者 意 識 も 高 ま っ た と い え る だ ろ う。 6 今後 の課題 授業を 通し消費 者として一定 の意識 の向上が見 られ た。 し かし, 中 にはクレ ジット カ ード は絶対 に持 たな いよ うにしよ うと思 うとい った消極 的 意見 も みら れ, カ ード社 会の長所 の理解 にまでは及ば なかった。消 費 者意識 は向上し たものの社会全 体か ら見 た消費者 の位 置づけが弱 い と思 われる。カ ード の功罪 についてふ れ るこ とも必 要であろ う。 また,国 際化 に伴 う新たな 課 題 として輸入 製品 に対 する問題が生 じてい る。 現在 の