発達心理学における成人期(1)-「親」はどう捉えられてきたか-
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第46巻 第2号. 平成 8 年 2 月. l i i i t lo f Hokka i do Un i ty of Educa Journa on(Sect onIC) Vo ver s ‐46 ‐2 , No. Februar y ,1996. 発達心理学における成人期 (1) - - 「親」 は どう 捉 えられて きた か. 一 戸. 田. ま. --. り. 発達心理学での 「親」 の位置づけ L 説明変数としての親行動 発達心理学の歴史は, 古く18世紀にさかのぼることができる. 発達心理学的知見と見なせる最初の報告 l i( ) に よる わ が 子の 行動 発達 の 記 録 と さ れ て い る (村 田, 1987; 1774 ) やTi は, Pes t 1787 a oz z edeman ( 1882 Mus ) ). そ の 後19世紀 の 後半 にな っ て 進 化 論 に 影 響 を 受 け た Pr eye r( sen , HaU ,1974 ,CongerとKagan ) が 発 表 さ れ, 各 1883 ( ) な どが児 童 発 達 につ いて の 著書 を あ らわ した‐ 当 時 は Darwi n の 「種 の 起源」 (1859. 方面に大きな影響を及ぼした. 人間が人間として成長してゆく様子, すなわち子どもの発達を研究すること で, 人間のみならず生物の進化の法則一般について, より詳細な解明をめざそうという気運が高まっていた 時 代 であ っ た と言 え よ う‐ St l l lが 「児 童 研究 運 動」 を提 唱 し, 子 ども の 発 達 につ い て の研 究 は, そ の後19世紀 の 終わ りに G‐ an ey Ha. 主として教育実践の分野において子どもに対する関心が高まると共に, 飛躍的に増加した‐ 特に20世紀前半 のアメリカ合衆国においては, 各州で前期中等教育の義務制化が進んだことなどともあいまって, 各地にさ 9 30年代に行われた 「児童発達運動」 は, 発達心理学の最初の組 まざまな研究組織, 研究機関が作られた‐ 1 ). この 時期には乳児の感情表出が 「快一不快」 の次元から 織的な活動であると言われている (村田, 1 98 7 i dge 1932 徐々 に 分 化 して いく ことを 示 したBr )の研 究, 就 学前 児の 遊 びの 様相 を 発 達 的に 記 述 し たPa ten s( r. 1932 ( )の研究など, 現在でも児童心理学の教科書に取り入れられている知見が, 数多く報告されている‐ 1 93 0年代は同時に, アメリカにおいて行動主義に代わって精神分析理論が隆盛した時代でもあった‐ Han が1909年 に Fr eudを 米 国に招 いた の が き っ か け と な り, アメ リ カ で は新 フ ロイ ト派 を は じめ とす る 多く の精. 神分析学者が生まれ, 精神分析理論に乗っ取った研究も行われるようになった‐ ところでFr eudの人格発達 についての理論は, 周知のように, 心理性的発達理論である. 人間は特定の時期 (例え ば口唇期) にその時 期に呼応した部位 (口唇) を使用することによって, 基本的動因である性エネルギー, すなわちリ ビドーを 満足させることを学習するが, 人格はその学習した様式に決定的な影響を受ける‐ 例え ば乳児は母親から授 乳され, 不快である空腹感から逃れるとともに, 吸うこと自体に快感を覚える. この時期に適切な世話が受 けられず満足に吸う快感が得られないと, 乳児の心に傷が残りその時期の様式に固着 した性格が形成され る, あるいは将来の神経症の一因となるかもしれない. この精神分析的立場は必然的に, 口唇期や虹門期の 子 ども の 世 話 を す る 養 育者 へ の 関心 を も た ら した‐ 授 乳や トイ レッ トト レーニ ン グの 方 法 はも と よ り, 広 く. 養育方法一般にいたるまで, 子どもの行動を形成し発達を規定する原因として, 母親の態度や行動に注 目が 集 ま る よ うに な っ た の で ある‐ 米 国の 家族 研 究 は, フ ロイ トの 理 論を 実 証 しよ う と した こと に始ま る と言 え る-. 親 の 態 度 が 子 ども に 及 ぼす 影 響 につ い て の パ イ オ ニ ア 的研 究 と して, Levy( 1930 )が 挙 げ られる‐ Lew は i 精神 科 医 で あ り, 臨床 的 データ を 元 に, 今 日 でも用 い られて いる 「過 保 護 (ove tec t )」 「無 視 ・ 放 任 r o on pr l (neg )」 な どの 言葉 を用 い て4 つの 極 端 な 養 育類 型 を 分 類 した. これ を さ らに一般 の 養育 態度 に ま で 広 t ec 41.
(3) . 一 戸. 田. ま. り. 1939 げ たの がSymonds( )である‐ 彼 は組織 的で大 が か りな調 査 面接 を 行 い, 統 計 的手 法 を用 い た 解析 を行 っ て 当 時の 親の 養 育 態 度 と 子 ども の 性 格 と の 関 連 を 調 べ た. ち な み に 「親 子 関 係 (pa ent-chnd relation‐ r i sh p)」 と いう 言葉 が 用 い られ たの も, こ の 時 が最 初 であ っ た‐ Symondsの知 見 が 雑 誌 や 当 時の 主要 なマスメ ディ ア であ っ たラ ジオ で広く 取 り上 げ られ た こと と, これ に i 続く 数々 の研 究 (例 え ば Sear ) に よ り, 親 の 態度 や 行動 が 子 どもの パ ー ソ ナ リ s ら, 1957;Baumr nd ,1971. ティ を規定する大きな要因であるという観点は, 広く一般的な常識となった. わが国でも当時こうした親子 関係研究は多数行われ (津守・稲毛,19 ), 津守式発達検査などの基礎資料と 959;津守他,1961 58;小嶋,1 なっている. これら個々の研究は決して母親の態度如何で子 どもの行動や性格が決まると主張してはいない のだが, 一般には, 母親の育て方が子どもの性格や知的発達を左右するとの見解が広まっていったと言えよ う‐ さらに, 母性を神聖視し, 女性の役割として母性性のみを強調しがちなわが 国の特徴ともあいま っ て (大日向,199 ), こうした信念体系は老若男女を問わず受け入れられてきたと考えられる. 5 一方, ではなぜ母親, あるいは父親がそのような行動をとるのかについては諸研究においてもほとんど考 慮されておらず, 子どもの発達に比べ非常に静的で, 不変なものと捉えられている. 養育態度研究に限ら by( 19 51 ず, 母性的養育剥奪の影響について述べ, 施設保育等の多大な改善を促 した Bowl ) の報告に して も, 養育者の行動の影響の大きさを指摘しているにも関わらず, 養育者がなぜそのような行動をとり, 結果 と して 望ま しく ない 影響 を 与 えて しま うの か につ いて は指摘 され て い ない‐ ま たひ と りの 親 の ある 養 育 行動. ・態度は継続的に続くのか一過性のものなのかといった養育者側の変化・発達についてはほとんど検討され ていない‐ このように発達心理学において親の行動・態度が問われる場合, そのほとんどすべてが 「子ども にどのような影響を与えているか」 という観点からであり, 親の態度や行動自体の変化は問われてこなかっ た‐ この観点が多少なりとも変化するのは, 19 60年代以降の母子相互作用研究を待たね ばならない‐ 2. 母子相互作用研究から見た親行動. 子 どもがまわりの環境に働きかけるという観点が注目されるようになったのは, 社会的学習理論や自我心 l l )← ピア ジ ェ や そ れ に 続 理学 の 発展, そ して ピ ア ジ ェ の アメ リ カ に お ける再 評価 の 役割 が大 きい (Be ,1977. く諸研究で示された, 積極的に自ら環境に働きかけ発達してゆく子どもの姿は, それまでの生得的に持って いる特性 (初期値) が時間と共に顕在化するだけ, あるいは刺激を受けて反応するだけの子ども像とは異 なったものであった. 加えて乳児や新生児がそれまで考えられていたよりもず っ と有能であるという発見 や, 実験手法の洗練によって, 7 0年代は乳児研究の黄金時代となった. 無力であるとされていた新生児や胎 児の知られ ざる能力の発見は, 人間が初期の時点から持つ優れた学習能力と, 自ら外界に働きかけて発達し てゆく能動性とを改めて認識させることとなった‐ こ の よ うな研 究視 点 の変 化を 受 け, 1 l 974年 に は Lewi s と Rosemb um に よ り “The Effect ofthe infant ts caregiveF on i. が 出 版 され た. この本 を 含 め, 子 ども側 の働 きか けを 重視 した諸研 究 (Mo ss ,1967;Beu ,. 197 1 ) により, 前節で述べた 「子 どもの行動に影響を及ぼす不変で固定的な親の態度・行動」 という考え方 1974 l ) で は乳児 の 性, 覚 醒水 準, 出 生 体重 や 初期 は大きく 転 換せ ざる を えなく な っ た. Lewi sとRosemb um( の行動特徴から未熟児であった場合の睡眠の様相に至るまで, さまざまな特徴が rどのように養育者の行動に 影響を及ぼすかが検討されている‐ l mode l f( i Samer 1975 ) は, 親か ら子 ども への 影響 と, 子 ど t t ) に よる相 乗 的相 互 作用 モ デル ( ansac ona r of. もから親への働きかけの双方が互いに相互作用 しあい, 時間的経過と共に子どもの行動を形成してゆくとす f fは, 子 ども の 例 外 的 (異常) な行 動 は一度 起 こ っ たか らとい っ て続 く も るモ デル である. この 中 で Same o r. のではなく, それに対して例外的 (異常) な養育上の対応をされたときに初めて継続すると述べている‐ ま 42.
(4) . 発達心理学における成人期 (1). た子どもの特徴や行動をどう捉えるかという親の認知を重視し, これを研究することの重要性についても述 べ て い る.. このように1970年代以降, 研究を貫くパラ ダイムとしては親子双方の相互的な影響を考える方向へと進展 して きた. しか し依 然 と して 親 を 「不変 の 説 明変 数」 と して 捉 えて い る研 究 は多 い‐ 例 え ば アタ ッ チメ ント. 研究において, 1歳時でのアタッチメ ントの安定性を左右する要因としてそれまでの 母 親 の 反 応 敏 感 性 ) が, これ らでの 母 親 は 「独 i i th ty) が 挙 げ られ て いる (Beuと Ai ( t os sman ら, 1988 nswo r vi sens ,1972;Gr. 立変数」 として, つまり一方的に子 どもに影響を与える要因として扱われている‐ これは相互的な影響を無 視していると言うよりも, 子どもの発達的変化の早さや内容に比べると, 親側がそれ以前に持っていた特徴 は変わりにくく, 安定と考えても研究上差し支えないとされるのかもしれない‐ 確かにこの時期の子どもが 短期間にめざましい発達を遂げるのに対し, 成人である親は目に見えるほ ど変化しない. また, 親側の要因 をある程度 「一定不変」 と仮定しないと, 研究計画が立てにくいという技術的な問題も絡むだろう. しかし 一 部 の アタ ッ チメ ント研 究 な どに 代 表 され る この よ う な 親の 態度 ・行 動 の 捉 え方 は, 従 前の 「子 ども に 一方. 的に影響を与える不変の親行動」 という視点と同じであり, ダイナミ ックに変遷する親子関係を捉えるもの としては不十分と言わざるを得ない. 乳幼児期は生まれてきた人間にとって最も発達の著しい時期である. これに対し, 成人である親の態度, 行動, 認知などの変化はゆるやかである. 親は子どもの発達に合わせ行動を調節してゆき, それに伴って意 識の変化も徐々に進むと考えられる‐ また親の行動自体は子 どもの身体的心理的成長に伴い, 変わることを 余儀 なく され る の が 通 常 で ある‐ 親 行動 は 「一 定」 である, ある い は 「一 定 と考 えて よ い」 との 前 提 は, 子. どもの早い変化に比べてゆっくりなので目立たない, あるいは研究の対象となるスパ ンが短いために一定と 仮定 す る に過 ぎな い こと を 銘 記 す る 必 要 が あ るだ ろ う‐ 「成 人 である 親 自 身も, 親と して 発達 す る」 と いう 視. 点は, これまで述べてきたように理論的には仮定されているものの, 実際の研究に反映されていないことが 多い. 発達心理学がかつては 「児童心理学」「青年心理学」 と呼ばれ, 性的成熟や就業などをもって人間の発 達が完成するかのように考えられていた歴史が, 青年期以降の人間の発達を考慮しない方向に仕向けたので ある‐ そこで次に, そうした中にあってなお, 成人期の発達的変化について検討した心理学および関連領域 の理論と研究について見てゆく.. 成人期の発達理論 青年期以降成人の発達は どのようなプロセスをたどるのか, については, 子どもの発達に関する研究より 少数ではあるが, 様々な研究および理論的検討が行われている. その中で最も知られており, 各方面に影響 i kson の 理論 であろ う. 本 節 ではま ず この Er i kson の漸 成 的発 達 理論の 中 で,.成 人 を 与 えて い る の は E‐H.Er. i ks 期以降の発達, 特に親としての発達がどのように捉えられているかを概観した後, Er on 以降の研究者に よる諸理論について触れる. 1. エリクソンの漸成的発達論 i kson の 発 達 段 階 説 は, Fr 周 知 の よ う にEr eudの心 理 ・性 的発 達 論をも と に しな が ら, 自我 が 発 達す る 社会. 的な文脈を重視するものである. 彼は人生を8つの段階に分け, それぞれに対立する調和傾向. i (synton c. dys i i i kson )‐ これ は乳 児期 に おける 「基 tendenci ) を 配 してい る (Er t es) と 失調 傾 向 ( on ct endenc es ,1982. 本的信頼」 と 「基本的不信」, 青年期の 「自我同一性」 と 「自我同一性混乱」 のように, 相対立し相補的な 2 i i i ) の中か ら徳 (v ) と名 付 けられ た 心 tue つの 特性 と して 表 さ れ, こ れ らの 対立 と 葛 藤, す な わち 危 機 ( cr s s r 43.
(5) . 戸. 田 ま. り. 理・社会的な強さが現れるとされる‐ さて, 青 年期 以 降の 発達 段 階 と して Er i kson は 「親 密 性」 と 「孤 立」 が相 対す る 若 い成 人期, 「生産 性」 と. 「沈滞」 が相対する成人中期 「自我統合」 と 「絶望」 が相 対する円熟期の 3 つ を 挙 げ て い る (Er i kson , , 19 63 )‐ 各段階はそれ以前の段階同様, 規則性を持ち, 非可逆的であるとされる‐ すなわち段階は順序だって おり, ある段階から次の段階に進むには, その段階での葛藤 (危機) を何らかの形で経て, 次の段階での葛 藤 (危機) に直面していかなければならない‐ ひとつの段階の危機の収拾の仕方が次の段階へのステッ プに 影響する. 従って成人前期の 「親密性」 対 「孤立」 という危機を乗り越えて次の段階に進むには, その前の 「自我同一性」 対 「同一性混乱」 における危機を何らかの形で乗り越えていなければならない ‐ 親であることについての直接の言及は, 成人中期に見られる. この段階の対概念は既に述べたように 「生 i i i 産性 (生殖性:generat t )」 対 「沈滞 (停滞, よ どみ:s )」 で あ り, 次世 代を産 み育 て る広 い意 味 t t v agna on y での世 話 ( ) が, 2つ の 対概念 の 間 での 危 機 を経 て 現れ る と さ れて いる‐ 子 ども を持 ち, 子 どもの 世話 を car e. し育てること, あるいはより広く次の世代を育て, 次の世代のための仕事をすることが, 成人中期の発達的 な 関 門 であると 言 えよ う (村 田, 1989 i kson( 1963 )‐ さ らに Er ) は成 熟 した 人 間 は 「『必 要と され る』 こと を. 必要とする」 と述べている‐ 世話されることにより心理・社会的に発達してゆく子どもと, 必要とされ世話 をすることで心理・社会的な発達を遂げる成人中期の親とは, 必然的なパートナー同士であり, どちらかが どちらかを一方的に発達させるのではないという視点 (世代間の相互性) がここに見られる. この互いが互 いの発達の危機となり, さらなる発達を促す相互性という視点はEr i ks on理論に特徴的な点として評価され i kson 理 論 に おいて 親 と は, 自我 同一 性 を 得 て 新 たな パ ー トナ ー との て い る (岡堂, 1981; 柳 沢, 1985 )‐ Er. 親密な関係を築いた者の次の課題であり, 親としての発達は世話を求める子どもの存在によって促されると 考えられる. 2. エリクソン以降の成人発達論 1970年代 以 降, 特 に アメ リ カ に おい て 高 齢化 に 伴 う老 年期 へ の 関心 が 高ま り, 同 時に これま で主 と して研. 究されてきた青年期までと老年期との間を結ぶ 「成人としての期間」 が注目されるようになった. 既に20世 紀前半から生涯発達を視野に入れた研究や著作は発表されていたが (例え ば村田 (1989) は,. Buhl er. l (1933 ), Pr ) な どを挙 げて い る), 成 人期 に特 に注 目 した研 究 が盛 ん に な っ た e en (1939 s syJanney ,& Kuh. のは7 0年代以降と考えて良いだろう‐ またこれ以前から行われていた長期的な縦断研究, 例え ば Thomas ら 1962 に よ る ニ ュ ー ヨ ー ク 縦 断 研 究 (Thomas, Chess, & Bi ) )な どの 結 果 が 公表 さ ch r s( , Kagan と Mos ,1968 れ始めたことも, 生涯発達への関心を高めることになった. さらに平均寿命の 伸 びや 価値観の多様化によ り, 青年期の延長が叫ばれるようになったこと, 高齢化が進み老人問題が顕在化して老齢期の人間の心理を 考慮せざるを得なくなったことも, 結果としてそれ以降の段階である成人期や, 人生全般を眺める生涯発達 への関心を高めたと思われる‐ ほとんどの社会・文化において, 大部分の成人は親になり子どもを育てる経験を持つため, 成人発達論の 中に親としての時期についての言及がなされる場合が多い. しかし親であることや親としての発達を中心的 課題として捉えた理論はあまり認められない‐ 各成人発達論の核となっているのは, まず第一に青年期の後 から老年期までをどのような期間に分割するかである. これは青年期以降についての研究が乳幼児や児童, 青年に比べ歴史が浅く, 準拠できるような大きな理論的枠組みが確定していないことによると思われる‐ 発 達段階としてどのような時期を設定し, 何の発達を捉えようとするかは理論全体の方向付けによっ て異な り, さま ざま な成 人発達 論 を 生ん でいる. 一 例 を挙 げれ ば, 時 間に 伴う 生活 構造 の変 化 (Lev i ), nson ,1978. Sheehy 危機の出現とその克服の様相 ( ), 時間的年齢と社会的な意味での時間や年齢規範との関係 ,1974 44.
(6) . 発達心理学における成人期 (1). l d ), 自 我 同 一 性 地 位 の 変 容 ten と Datan,1973), 一 生 を通 じて の 成 人意 識 の獲 得 (Gou (Neugar ,1972 i i nant ), 自 我 構 造 の 変 容 (Loev nger 85 ), 自我 の 防 衛 規 制 の 変 化 (Va l (lesse son , ,1977 ,1988; 岡本, 19 1966 ) な どである‐ しか しいず れ も 人 生の 中 に 「親 である こと」 が どの よ う に 位 置 づ く か を 検 討 す る に 留 ま っ て お り, 「親」 と して の発 達 は主題 と はな っ て い な い‐ ま た これ ら では 「親 と して の 発 達」 の プロセ ス,. あるいはそ の個人差については, ほとん ど述 べ られていない. 唯一 「親であること」 を中心にすえた 1975 Gut tman( )も, 比 較 文 化 的 見 地 か ら 「親 に なる」 とい う 人生 の 移 行 時期 の重 要性 が様々 な文 化 で同 じで 1973 ) は社会 学 的見 r( ある こと を 指摘 した にす ぎず, かつ, 男 性 につ いて しか 言 及 され て い な い‐ Ahamme. 地からはいくつかの家族発達モデルが提起されているのに, 心理学者はこの問題をあまり重視していないと 苦言を呈している. 1970年代後半から80年代に入ると, 特に臨床心理学領域から家族を力動的に捉える見方が提起された‐ こ れらはいずれもなんらかの問題を抱えた個人の心理療法でなく, 家族全体をシステムと見なして治療しよう ) は主な家族発達論として, 家族心理学の中で最初に家族発達モ 19 88 とする立場に立つものである‐ 岡堂 ( に た 則hodes l 1973 ) デル を 提 唱 した Ha ey( , エリ ク ソ ン の 心 理 社 会 的 発 達 論 を 家 族 シ ス テ ム の 発 達 応 用 し t の 6 段 階 を 設 定 した Car が e rと 1977 ) ( , 成人したがまだ結婚 していない段階から夫婦 老年期に至るまで l d i 1980 McGo )の理論な どを挙げ, それらを批判的に展望しながら臨床実践をもとに自らの家族発達論を r ck(. 提唱している‐ 岡堂によれば家族発達の段階として, 新婚期, 育児期, 発展期, 充実期, 向老期, 老年期の 6つが設定でき, 各段階には特定の課題がある. 家族が新しい段階に入っていった時, 新しく出現した次の 課題を克服できない, あるいは変化に適応できない時, 問題が生じるのである. これら家族のライフサイクルを捉えた諸理論は, ある親が現在どの段階にあり, 一般的に言ってどのよう な課題を抱えているかを知るのに役立つ‐ しかし依然として 「ひとりの人間 が親と して」 どう発達するの か, 及びその個人差について多くの情報を与えるものではない. そこで次に親として発達について直接に言 及し得る考えについて概観する‐. 「親 と して の 発 達」 を どう捉 え る か 「親 と して の 資 質 ・機能」 と は何 か. そ れ は どの よ う に 発 達す る の で あろ う か‐ これ は生得 的 なもの な の. か, それとも長い時間をかけて学習されるものなのだろうか‐ いわゆる母性本能説というのは, 女性という 性に生得的に備わった本能が, 子供を産んだ女性すべてにおいて発揮されるというはなはだ楽観的な考えで あるが, 研究においてよりもむしろ, 実母による児童虐待, 養育放棄な どさまざまな社会問題の顕在化に よ っ て 否 定 され る に至 っ て いる. どち らか と 言う と社 会 学 的 なア プ ロ ー チ に よ る 研 究 で は, こ う し た 先 天. 説, 本能説を排除する傾向が強く, 小児科学など臨床医学的ア プローチでは, それでも何か女性にしかない 子育ての心理的特質があるのではないかという含みを持たせる傾向があるように思われる‐ 前者に子どもを 実際に産む立場の女性研究者が多いことは示唆的である‐ 1. 生得的・生物学的立場. -比較行動学の知見から-. 動物においても人間の母子同様, 母親がわが子を助けるために敵の前に出ておとりになったり, 身を犠牲 にする例は多くみられる‐ 母親の愛情は何にも勝り海よりも深いといった定説は, このような動物や人間の 例から導き出されたものであろう. しかし近年の比較行動学では, 子は自分自身と共有する遺伝子を持つ個 i ) とす る 営 み と して, 子 育ての ns 体 で ある の で, そ う した 遺 伝 子 の 生存 可能 性を よ り高 め よ う (Dawk ,1976 i ). 1972年 の Tr 方 略 が注 目 される に 至 っ て い る (根 ヶ 山, 1989 ver s の 論 文 で 提 起 さ れ た 「親 性 投 資 45.
(7) . 一 戸. 田. ま. り. li (parenta tmen t )・ の 概 念 も こう した 考 え方 の 先駆 を成 す も の で nves. , 子 ども の ため にわ が 身 の犠 牲を厭 わ. ない甘く優しい母性本能説とは根本的に異なるものである‐ 親性投資とは, 親が他の子に投資すべき自分の能力を犠牲にして, 当該の子の生存の機会を高めるために 行 う あ らゆ る 投 資 と さ れ る (Tr i ). どの種 に おいて も 多く の 場 合, 親 はた っ た一 人 (1匹) の 子 ど ver s ,i972 も を 育て る わ け ではない. 従 っ て どの よう に 持て る力 を 分散 させ て最 も 効 率 よく しかも たく さん 自 分の , ,. 遺伝子を残すかということが大きな課題となる‐ もし親が次から次へと子どもを作り 産んだ子の世話をし , なければ, 子どもが死んでしまう可能性が大きくなる. またあまり多くの子を作らず 少数の子 どもに多大 , な 投 資 をす る の であれ ば, その 子 ども が うま く 育 た なか っ た場 合 のリ ス ク が 大 きい Pi 1970 )は前者 の ‐ anka(. 多産多死の中で子孫を残す方法をr戦略, 後者をK戦略と名 付け, これらの繁殖戦略をとる種の特徴や生育 環境について論じている. 人間は多産な母親であっても魚類のように幾千幾万の卵を産み落とすわけではな い の で, 後 者 に属 す る と 言 える‐ こう した 考 えの底 に ある の は, よ り たく さ んの 遺伝 子 を残 す こと が 親 と し て の 資 質 だ と い う 前 提 で あ ,. る. 確かに種を維持するための方略と して子育てを位置づけるのなら,「親性投資」 という概念は非常に的を 得たものと言える‐ しかし我々人間の養育では, ことに先進諸国では, たくさん産んでたくさん生き残れば そ れ でよい と い う視 点 はあま り優 位 でな い. 特 に 現代 の 日本 では少 なく 産 ん で じっ く り投 資 して 育て る ケ ー ス が一 般 的 である. ま た 子 ども を作 らな いと いう 風 潮 す らある. これ は成 人 に と っ て 子 育て すな わ ち繁 殖 , だ け が人 生の 目 的 で はなく な っ て しま っ た か ら である と 言 える‐. 親性投資をはじめとする比較行動学, 社会生物学的知見を適用する場合, 最も問題となるのは社会的状況 が全く考慮されない点である‐ 自らの遺伝子を残すことが最も重要であるという観点のみから考察されたこ れらの理論では, 現代の人間にとっての大きな問題, すなわち自己の個性化や自己実現について検討する余 地がない‐ ところが少なくとも現代のわが国の母親を考える限り, 子どもを産み育てる, つまり自らの遺伝 子 を残 す こ とと, 自 らの 自 己実現 を はかる こと の 間の ジ レンマ が 最 も 大 きな 問題 のひ とつ と して 存 在 して い. る‐ 社会が複雑化し, 寿命が伸び, 乳児死亡率が激減した結果, 繁殖・子育ては決して唯一の自己実現では なく, 子 育て の た め に か え っ て 社 会 的な デメ リ ッ トをも 被 る 状況 とな っ た の である. 逆 に 言え ば 現 代 の 日 ,. 本は, 子育てを究極の崇高な仕事としながら, 実際には経済的・物質的な繁栄が優先されているのかもしれ ない‐ また子育てを自己実現の対象とした場合, 現代の日本のような寿命の長い社会では子離れしなければ ならない時期がきても親の寿命が尽きず, 結果として子どもの成長を阻み, 自らの遺伝子を残せない可能性 が でて く る‐ 母 親 と成 人 した 息子 (娘) 間の結び付きが強すぎて息子 (娘) の異性関係に障害が出る事 例. は, 心理臨床の場などで多く報告されている (北原, 1988な ど). 2. 生得説と学習説の折衷 -精神分析理論から見た母性発達- 医学や看護学, 臨床心理学分野で多々引用され, 研究の枠組みを提供している精神分析理論は, 母性に関 して本能と学習的側面の 双方を認める立場をとっている. よく知られているように精神分析的発達論では, 口唇期, 虹門期, エディ プス期, 潜在期, 性器期の5つの段階が設定され, 各段階での経験を基礎として自 分自身や他者への感情が発達すると考えられている‐ フロイト自身は女性心理の特徴として受動性, マゾヒ ズム, ナルシシズムを挙げると共に 女性はペニスを持たない故にそれを持つ男性を羨望し ペニスの代償 , , 物として子供, 特に男の子を欲するという論を展開している‐ しかしこれ以上の母性発達についての考察は 行 っ て い ない. フロイ トの 女性 論を 継承 し, 性 愛 か ら母性 へ の心 理 的発 達 過 程 につ いて検 討 したの は Deut 1945 )であ sch(. る‐ 彼女は 「母らしい」 感情は本能から発生し本能的側面が大きいが, 徐々に文化や個人の経験に影響さ 46.
(8) . 発達心理学における成人期 (1). schの い う 「母 ら しさ」 は, ナ れ, 次 第 に力 強 く 複 雑 な感 情 である 母 性愛 と して 結 晶す る と述 べ て いる. Deur ル シ シ ズ ム とマ ゾヒ ズム の 調和 と して 定義 さ れ た 「女 ら しさ」 の 中か ら, 「愛 され たい」 とい う ナル シ シ ズ ム. 的願望が形を変えたものとされている‐ また母性衝動は性衝動に含まれているが, 母性衝動が満たされれば 性衝動は冬眠状態に留まると考えている‐ 発達に関しては, 母性は乳幼児期から思春期にかけて顕在的な形 としては表れないものの生理的衝動的な段階の中に存在しており, やがて自らの母親への同一視をもとにわ が子への母性を形成するとされている. この母親との同一視がうまくいかない場合, あるいは母親に過度に 同一視した結果, わが子への同一視 が拒否 される場合は, 身体症状な ど諸々の症状が表れるのである. Deu t s chの母性論は, 女性自身の過去の母子関係によって母性の発達が影響を受けるとの視点を示している が, 例えば母性の根源や母親が子供との結合を維持したいと感じるのは本能的とされており, 生得的メカニ ズ ム に規 定 さ れる ことを 暗に 主 張 して いる‐ 小 此 木 ( 1980 ) はこう した フ ロイ トや ドイ ッ チ ュ の 考 え方 は,. 母性心理を子 どもとの相互作用の中で考える枠組みを欠いていると述べている‐ またペニス羨望を基礎とす る理論の組み立て方には, 最近の女性学はもとより, 精神分析派の中からも早くから強い批判が出されて い る (Thompson,1942; Horney,1967;村 山, 1987). と ころ でフ ロイ ト理 論 の 中 で最 も 重 視 された の はエ ディ プス 期 の 父母 と の 間の 葛藤 であ り, 決 して 乳 児期. ではなかった. また母親に向かう子どもの感情と平行して, 父親へ向かう感情が常に重視されていた. 乳児 期 に お ける 母 親 の 役 割 を 今 日の よ う に重 視 しだ したの は, 主 と してメ ラ ニ ー ・ ク ライ ン に 始 ま る 対 象 関 係. 論, 及びその流れを受けさらに比較行動学の影響を受けたボウルビィ をは じめとする愛着理論家たちであ i 1960 t( t )は 「親 と 幼 児 の 関係 に 関す る 理 論の 半 分 は幼 る. 実 際, 英 国 対象 関係 論 の 代 表 的存 在 である Wi nn co. 児に関するものだが, …・(中略) …・あとの半分は母親の育児に関する理論, つまり世話をする幼児の中 で特有な成長をとげる欲求を満たしてやる母親の質とその文化に関する理論である‐ 」 と述べている. 彼に よれ ば, 女性は妊娠すると関心が自分の身体に向き, 自己感覚の一部を赤ん坊に移す‐ こうして母親はわが 子に同一化するために, 赤ん坊であるわが子の欲求について, 非常に敏感な感覚を持つ よ うにな る. また 1981 l i dge( Dav i l br )はウ ィ ニ コ ッ トの 情 緒発 達 理論 の 解説の 中 で, 母親 の 私 的 な体 験, す なわ ち 自 ら s と Wa. が幼児であり世話されたという無意識的な記憶が, 後の養育の質に大きく影響することを述べている‐ 精神分析理論と比較行動学双方の流れを組むアタ ッチメ ント理論では, 子ども が養育者に対してしっかり と した 情 緒 的な 辞 (アタ ッ チメ ン ト) を 形成 す る こ と が 発 達 上 きわ め て 重 要 である と考 える‐ この 見 解 は現 ) が, 養 育者 が 実 の母 親 である必 要 はな い (Rut te 在 ほ ぼ 支持 されて い る (例 え ば藤 永 ほ か, 1987 r ,1972; 1978な ど)‐ アタ ッ チメ ン ト研 究 に おいて はそ の 後, 前 述 した よ う に 「どの よ うな養 育 が どの よ う な 質 の ア タ ッ チメ ントを 導く か」 と い う, 相 互作用 的視 点 を 落 しが ちな方 向に 進 み, さ ら に 「子 ど も の 不 安 定 な ア タ ッ チメ ントを 導く 養育者 (主 に 母親) は, どの よ う な特徴 を 持つ か」 とい う 問題 に 向 か っ た (Gr o s sman. ら,1988など). 親自身の特徴に目を向けた点は評価できるが, 基本的に精神分析に立脚し, 幼少時に受けた 養育が成人後の性格や行動パターンを大きく左右するとの前提に立っているためか, 子 どもとの日々の相互 作用の中で親の態度や行動が形成されてゆくという観点は乏しく, もっ ぱら親自身の受けた養育の影響につ いての分析 が 中 心 で ある‐ たと え ば. Grossman. ら (1988) は幼 児 を 持 つ 母 親 に構 造化 面 接. (adul t. i t tachmenti a nt erv ew) を 行 い, 不 安 定 な アタ ッ チメ ントを 示 す 幼児 の母 親 は, 自分 の被養 育体験 につ い て 理. 想化していたり, 抑圧していると報告した‐ このような養育の 「世代間伝達」 は特に児童虐待関連の研究で 指摘されることが多い‐ 虐待されて育った者が, 長 じて再び自分の子を虐待するようになるとの考え方であ る. 確かに虐待事例の親を調べると自らも幼少期に虐待を受けていた者が多いと言われるが (池田, 1987な i 1988 ど), Qu t )の 研 究 で は, 幼少 期 に 不 遇 な養 育 を受 けた 女子 の 約 3分 の 2 が, 自身 はわ が 子 on & Rut e r( nt. に通常の養育を行っていたと報告されている‐ 常識的にも, 被養育体験のみが, 親となった者のわが子に対 47.
(9) . 一 戸. 田 ま. り. する養育行動をすべて規定するとは考えられない. その他のさまざまな要因を含め, どのような要因が親行 動に大きく影響するのかを多面的に捉えてゆく必要がある. 総じて精神分析の枠組み内では, 母親の母性は本能的な衝動の一部として捉えられるか, もしくは彼女自 身の母親との関係に帰着するとされる‐ しかし母親の実際のどのような養育が将来子どもを産む娘に影響す るかについて詳しい検討はあま りない‐ また母親に与える父親の影響やそれ以外の環境要因についてもあま り述べられていない. 親本人が生きる社会や文化の影響についてはほとんど言及されていない. このように 母子関係をきわめて重視しながら, 精神分析理論の中で親としての発達プロセスを正面から捉えた研究は , i kson の 理 論の ほか はわず か で ある. これ は専 らフロイ トが提 唱 した 発達 論 の 影響 と も 受 け 取 先 に述 べ た Er. れる‐ つまり人間の発達は性器期までで一応の完結を見, それ以降の発達を考えないという観点が, 親にな るまであるいは親になって以降の変容や発達を考える素地を阻害していたと考えられる. 3. ある時点での親の子どもに対する意識 自明 と され て いた 「母性 本 能」 が, わ が 国 で心 理学 の 対 象と な っ た の は近 年 である. 古く は平 井 ( ) 1976. が, 母親がわが身を犠牲にしなくなったと言う 「母性の喪失」 を嘆く社会を背景に質問紙調査を行い 妊娠 , ・出産以前からの 「子ども好きさ」 が母性意識に影響することを示した‐ が, この問題に大きく貢献したの は70年代から発表されていた大日向の研究 ( 1988 ) である‐ 従来, 母親個人の生得的な, あるいは性格的な 特徴と思われていた子どもに対する意識や感情が, 実は母親を取り巻く対人関係, 特に夫との関係に大きく 影響を受けることを多数のデータで示した功績は大きい‐ 現在では自明のように聞こえるこの事実も, 従前 は母親個人の性格的な歪みなどと見なされがちだったからである. さらに8 0年代より 「育児不安」「育児ノイ ローゼ」 という頻繁に言葉が聞かれるようになり, 育児を担当する母親の精神的な悩みや不適応行動が注目 されるようになった‐ 例えば佐々木ら ( 9 98 ) は, 乳幼児を持つ専業主婦の仕事は, 製鉄所の転炉作 197 0 ,1 業員や航空管制官に匹敵する重労働であり, 疲労度も高いことを示した‐ また牧野 ( ) は育児行為の中 19 82 で持続し蓄積された不安の状態, 子の現状や将来や育児方法に対して持つ漠然とした恐れを含む情緒の状態 を 「育児不安」 として, 産業疲労の諸徴候をもとに 「育児不安尺度」 を作成して調査を行っている. 対象は 幼児を持つ母親364名である‐ 回答から育児不安の高い者は近所付き合いや趣味のために時間を割くなどの 育児以外の活動が少なく, 夫の精神的な支えが得られず, 子どもだけが生きがいという意識を持っているこ と が 明 らかと な っ た. す な わ ち一 般 の 「尽く す 母 親イメ ー ジ」 に 合致 す る よ う な, 子 ども だ け を 生 きが い と. し, 育児中の社会参加を控える層にかえって育児不安が高いという結果が見いだされたのである‐ また1歳 半の乳幼児を持つ母親の調査では, 専業主婦に子育てについての悩みや不安を持つものが多いという結果が 得られている (総理府青少年対策本部,1983 )‐ これらの知見は野津 ( ) の実証研究でも支持された. 夫 19 88 のサポートの影響は既に大日向 ( 1988 ) の研究で指摘されているが, 特に父親 (夫) が どの程度, 母親 (妻) を支援しているかという心理的側面が重要であると言われる (牧野,1983;野村,1986 ). ただし, こ の結果には 「夫は早朝から深夜まで仕事に時間を拘束されているので, これ以上育児参加を望める状態にな い」 という妻側の諦めも含まれると言われ, 今後の社会情勢や意識の変化により, 変わる可能性もある. 母親の子どもに対する意識・感情の規定要因に関する研究は, わが国以外にも多い‐ 母親の性格を捉えた も の と して は, MMPIに よる 自我 強度 を挙 げたHe i i 1983 ) n ckeほか( ,妊 娠中 に 行 っ た 面 接 か ら母親 の 親 和 性 と. 自律性を評定したFede l ) の研究などが挙げられる‐ 後者では出産以降の母親の心理適応について 1988 eら ( も調べているが, 親和性は一貫してプラスに働くが, 子どもが1歳になると当初は関連がなか っ た自律性 も, 母親の心理適応にプラスに働くようになることを見いだした. すなわち心理適応に及ぼす母親のパーソ ナリティ 要因は子どもの発達段階によって異なることが示された‐ 夫婦関係は常に大きな影響力を持ってお 48.
(10) . 発達心理学における成人期 (1). り, 特に縦断データを基に, 父親 (夫) が母親 (妻) の就労に反対の時に, 母親による子どもへの拒否感が 1988 l )の研 究 は興味 深 い‐ 大 きく な る こ と を示 した Leme rと Ga ambos(. これらを総合すると, 一般に乳幼児を持つ親の場合, 自らを犠牲にして子育てに尽くさなければならない と考える母親に, かえって苛立ちや子どもに対する拒否感が強いと言える. その他の要因で挙げられるの は, まず夫婦関係であり, 外国のデータでは母親自身の成熟したパーソナリティ も指摘される‐ 学歴につい て一貫した結果は得られていない‐ 社会経済的地位 はわが国ではほとんど検討されていないが, アメリカ同 様, 経済的な不遇さが子どもに対する拒否感と結び付くのではないかと考えられる データもある (戸田ほ か,1996 ). これ ら個々 の 要 因の どれ が大 きな 影響 を 持 ち, どれ はあま り重要 でない かと い う相 対 的な影 響力. 91 ) が横断調査データを多変量解析し, 親自身の想起された被 19 ははっきりしていない‐ 唯一, 遠藤ほか ( 養育体験やその他の変数よりも, 生まれた子ども自身の行動特徴の方が母親の子どもに対する拒否感を規定 す る 度 合 が 高 い こ と を示 して いる.. 4. 親としての発達プロセスの解明に向けて 親 と なる こと は実 際に どの よう な 意 識の 変 化 を引 き起 こす の か, 親 に な っ た こと で人 間は どう変 わ る の か. については, 日本ではまだ記述が始まった ばかりである‐ このような問題提起の背景として, 出生率の低下 も一役かっているが, 大きな背景としては社会・経済・生活が比較的安定しており, 乳児死亡率も低く,′b の問題に目が向きやすい社会となったことが挙げられる. 受胎調節や不妊に対する医療が進み, 子どもは授 93 )‐ さらに男性中心の理論化や研 かりものではなく 「つくる」 意識が一般的であることもあろう (中山,19 究パラ ダイムに対し, 女性学的立場からから批判が出てきたことも見逃せない. わが子を持った親に共通しているのは, 「責任感を持つようになった」 「忍耐力 がついた」 など, 子育ての 99 0 )‐ 主たる養育者として直接毎日の子育 中で人間的に成長したという主観的な思いである (牧野・中原,1 て に 携わ っ て い る者 が 多 い と考 え られる 母親 の 方 が この度 合 が 強い‐ さ らに 詳 しく 見 る と, 子 ども を 持 っ て. 実際に育児に参加している父親では母親と似た認識を持つが, 直接育児にタ ッチしないような父親では, か え っ て 「子 ども は生 きが い」 「子 ども は分 身だ」 な ど の 意 識 が 強 い と い う 知 見 が 得 ら れ た (柏 木 ・ 若 松,. ). また父母とも同様に子育てを経験することで, 人知を越えた運命の受容や生命への畏怖の年が芽生 1994 )‐ え る と 指摘 され て いる (柏 木 ・若 松, 1994. これら諸研究はいずれも幼児を持つ父母の横断サンプルに基づいており, 厳密に言えば 「発達」 ではなく 「コホート効果」 を取り上げているのかもしれない. ひとつのコホートを縦断的に追跡する形での研究が待 たれる‐ また首都圏の親を対象にした研究であることも, 一般化に際し注意が必要である‐ さらに子育てや 親になることについての認識は, 個々の人間を取り巻く社会や文化に大きく影響される. たとえば一人っ子 政策を取る中国や, 逆に子 どもの数が経済的な裕福さと直結する社会では, 子育ての意味はま っ たく異な る‐ こうした社会的文脈をも考慮にいれた理論化が望まれる‐ 次稿では主にアメリカでの親としての発達研 究を中心に, 生涯発達の中で親となることをどう位置づけられるかについて考察する.. 文 献 Ahammer i l l i l l l i tudyofadu t per ty deve ‐ a earn ngtheor opment r ameworkf orthes sona y asaf . .M.1973 Soc ,1 l IPsycho i l B. & Scha i 帆マ fesPan Deve l tes )Li opmenta ogy c Pr ess n Ba e eds .( ‐P253一284 Academi ,P. , K. lauthor i Z Baumr f pa i t ty ternso ogツ ルイo 7 z ogγαPれ nd r entPa renta ‐DeリメOPmgntαZpsyc力o . ,1 ,1-103 ,D.1971 Cur i f f i Z i l lo fP御 Be l l take rbehav o rby o spr ng ogy r nu uscont ro r ento rca re ‐Deり認OP“彫“td psyc九o ,4 ,63一72 , R.Q.1971 St & d f M d i lt d i i B l l R H L V d R 1 9 7 7 H i ft h h i l i l t Q Be l l ( ) t Q e a e e v a o mo e r n m e s n r e r e s o r o ec s n u e n c e : p y ‐ , ‐‐ , ‐. s , ‐‐ 49.
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