第20回群馬小児がん研究会抄録
日 時:平成 22年 2月 26日 (金)
会 場:前橋商工会議所会館 3階 Lilyの間
当番幹事:黒岩 実(群馬県立小児医療センター 外科)
特別講演>
座長:黒岩 実(群馬県立小児医療センター 外科)
小児がんの治療終了後における化学療法と関連する
Late effects」
前田 美穂
(日本医科大学附属病院 小児科 教授)
一般演題>
座長:佐野 弘純
(群馬県立小児医療センター 血液腫瘍科)
1.診断および治療に難渋した慢性活動性 EB ウイルス
感染症の一例
市之宮 二,佐野 弘純,朴 明子
外 学,林 泰秀
(群馬県立小児医療センター 血液腫瘍科)
木本 富子,井上 雅美,河 敬世
(大阪府立母子保 合医療センター
血液腫瘍科)
【症 例】 15歳, 男子 【既往歴】 蚊アレルギー (11歳
時∼) 【現病歴】 2009 年 9 月に血球貪食症候群 (HPS)
を発症.EBV抗体価は既感染 pattern.EBVゲノム量は著
明に増加していた. Dexamethazone(Dex.) が有効であっ
たが,減量に伴う再燃を繰り返したため,免疫抑制剤・抗
腫瘍剤の併用 (HLH2004) を施行.しかし Dex.減量で同
様に再燃した. EBVに感染した NK 細胞の monoclonal
な増殖が確認されたことから慢性活動性 EBウイルス感
染症 (CAEBV) と確定し, 多剤併用化学療法 (ESCAP)
を行ったが無効であった. また合併症としてアデノウイ
ルスによる出血性膀胱炎, 及び糖尿病を認めた. 化学療
法での病勢のコントロールは不可能と判断し, 2009 年
12月に移植目的で転院. 2010年 1月に血縁者間造血幹
細胞移植を施行したが, 前処置中にも HPSが再燃し, 移
植後には真菌性肺炎の合併もあり, 多臓器不全のため移
植後 4日目に永眠された. 【 察】 CAEBVは稀で
はあるが非常に重篤かつ予後の悪い疾患である. 治療法
として造血幹細胞移植の有効性が示されているが, 本症
のように発症から診断・治療 (移植)に至るまでの期間の
長い症例では, 移植関連合併症死が多いことが問題であ
る. 本疾患の診断及び治療方針を えていく上で, 貴重
な症例と えられたため報告する.
2.眼歯指症候群(ODDD)に合併した AML1/ETO白血
病症例の解析
金澤 崇,塚田 昌大,柴 徳生
奥野はるな,荒川 浩一
(群馬大院・医・小児科学)
田村 一志 (たむらこどもクリニック)
眼歯指症候群 (ODDD) は主として常染色体優性遺伝
形式をとるまれな多発奇形症候群である. 原因として
gap junction をコードする Connexin 43遺伝子 (GjA1,
Cx43) 変異が報告されている. 今回, 我々は ODDD に t
(8; 21)-AML を合併した症例を経験し, 臨床像と GjA1
遺伝変異解析の結果について文献的 察を含め報告す
る. 【症 例】 13歳女子, 血, 発熱, 白血球増加を指
摘され当科紹介となった. 内眼角贅皮, 広い鼻根部, 縮れ
た毛髪, エナメル質形成不全を伴う ODDD 特異的な顔
貌を持ち, 軽度精神発達遅滞, 両側の合指症, 神経因性膀
胱, 不整脈を認め, 臨床症状から ODDD と診断した. 芽
球は AML-M2の形態を示し, CD13, 33陽性, 染色体
析にて t (8;21) を検出し,RT-PCR にて AML1/ETOキ
メラ遺伝子を検出した. AML99 プロトコールにて化学
療法を行い, 完全寛解を維持している. 治療反応性は良
好であったが, 骨髄抑制の遷 と感染症, 末梢神経障害
などの合併症が強く見られた. 【GjA1変異解析】 患者
の初発時骨髄,および寛解期末梢血細胞から gDNA を抽
出し, 既報に従い, PCR ダイレクトシークエンス法にて
GjA1遺伝子変異を解析したところ, 骨髄, 末梢血検体か
ら c8 A>C の 1塩基ヘテロ変異 (D3A のアミノ酸置換)
を検出した. 【 察】 これまでに細胞株モデルにお
いて, AML1/ETO白血病における GjA1遺伝子の細胞
395
Kitakanto Med J
2010;60:395∼397