長時間心保存のための実験的研究
大
嶋
清
宏
は じ め に 平成 4年に群馬大学を卒業し, 旧第二外科に入局した 私は, 平成 8年に大学院に入学した際, 当時教室の主任 教授であった現病院長の森下靖雄先生から, 新しい冠 灌流装置による心保存・移植実験」というテーマを頂い た.それ以来,冠灌流を中心とした心保存・移植は私の一 貫した研究テーマとして現在に至っている. ここでは, 今まで私が関わってきた内容も含め, 移植を前提とした 心保存について述べてみたい. 臓器保存の方法および結果 移植を前提とした臓器保存のポイントは, 臓器の via-bilityを如何に維持しながら可及的に長時間保存するこ とにある. 現在までに報告されている臓器保存法には大 別すると 2つの方法がある. 1つは臓器や組織の代謝を 抑制する方法, 他の 1つは臓器や組織の代謝を維持ある いは補助する方法である. 1) 臓器や組織の代謝抑制による保存法 (単純浸漬保存法) 低温は保存臓器の酸素欠乏による組織障害を防止する 上で最も簡 かつ有効な方法である. 現在臨床の現場で, 実質臓器の保存に広く用いられているのが単純浸漬保存 法である. 心, 腎, 肝, 膵などの大きな実質臓器は表面か らの冷却だけでは急速な低温化ができないので, 摘出前 あるいは摘出後に流入血管等から低温 (0-4℃) の保存 液を用いて臓器の血管床から血液成 を washoutした 後, 摘出臓器を同液内に浸漬する方法である. この方法 は簡 な方法だが保存時間に限界があり, 心臓保存の場 合, そのタイムリミットは 4-6時間と言われている. 摘 出したドナー心を如何に早く搬送し移植するかが重要な 問題なのはこのためである. 2) 代謝維持による保存法(灌流保存) ⑴ 灌流保存 この方法は, 保存期間中に臓器灌流を行って組織に必 要な酸素や栄養素を補給し, かつ老廃物を除去して保存 期間の 長を図るものである. 灌流保存には灌流温度, 灌流圧, 灌流量, 灌流液の組成など種々の因子が関わっ てくるが, 詳細な至適条件については未だ確立されたも のはない. ⑵ 群馬大学式臓器保存装置の開発 教室ではドナー心の長時間保存を目的とし, 低流量の 持続冠灌流保存と単純浸漬保存を組み合わせた群馬大学 式臓器保存装置を 案・試作した. 本装置は, 1) 低温保 存可能, 2)駆動装置不要, 3)灌流圧可変, 4)搬送可能, 等の特徴を有する (図 1). 本装置の有用性を以下の実験 を通じて検討してきた. ⅰ)実験1 雑種成犬を用い, 心摘出後本装置を って 12時間保 存した (CP-12) 群を, 単純浸漬のみによる 12時間保存 (SI-12)群と比較した.12時間後の心筋内高エネルギーリ ン酸保存状態は, CP-12群が有意に (p<0.05) 良好であ り, また 12時間保存心同所性移植後の循環動態も CP -12群が有意に (p<0.05) 良好であった. 245 Kitakanto Med J 2006;56:245∼246 1 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部附属病院集中治療部 平成18年4月25日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部附属病院集中治療部 大嶋清宏ⅱ)実験2 なる保存時間の 長を目指し, 雑種成犬を用いて 24 時間ドナー心保存後の同所性移植実験を行った. 本実験 でも, 移植後の循環動態は CP-24群の方が SI-24に比較 して安定していた. ⅲ)実験3 本装置を用いて犬の心臓を空輸し, 臨床の実際を想定 した本装置の有用性を評価した. 鹿児島大学で雑種成犬 のドナー心を摘出後, 本装置を保存したドナー心を鹿児 島空港より, さらに羽田空港まで空輸し, その後群馬大 学までは自家用車で陸路搬送後, 同所性に移植した. 8時 間 42 間の保存は陸路・空路を通じて安全に行い得,移 植後の循環動態は摘出前値と比較してほぼ安定してい た. ま と め 本装置を用いた長時間心保存は臨床に応用できると えている. 現在, 本装置に灌流用小型ローラーポンプを 組み込み,軽量化した改良型を試作し (図 2),雑種成犬を 用いた移植実験で良好な結果を得ている. 今後本装置を 臨床 用に耐え得るものとすべく, に検討を進めてい る. 最後になりましたが, 今回このような発表の場を与え てくださった北関東医学会の皆様方に深謝いたします. 文 献
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2. Oshima K,Morishita Y,Yamagishi T,et al. Long-term heart preservation using a new portable hypothermic perfusion apparatus. J Heart Lung Transplant 1999 ; 18: 852-861.
3. Tsutsumi H,Oshima K,Mohara J,et al. Cardiac trans-plantation following a 24-h preservation using a per-fusion apparatus. J Surg Res 2001; 96: 260-267. 4. 大嶋清宏,森下靖雄,茂原 淳ら : 空路と陸路を用いたド
ナー心の長距離 (鹿児島−群馬間) 搬送実験−群馬大学 式冠灌流装置を用いて−. 移植 2000; 35: 212-217. 5. Nameki T, Takeyoshi I, Oshima K, et al. A
compara-tive study of long-term heart preservation using 12-h continuous coronary perfusion versus 1-h coronary per-fusion following 11-h simple immersion. J Surg Res 2006 Feb 23;[Epub ahead of print].
長時間心保存のための実験的研究
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