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IRUCAA@TDC : 慢性化膿性根尖性歯周炎の治療は,「初回は根管口部までの治療にとどめる」と習うことがありますが,実際はどうなのでしょうか?

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

慢性化膿性根尖性歯周炎の治療は,「初回は根管口部ま

での治療にとどめる」と習うことがありますが,実際は

どうなのでしょうか?

Author(s)

末原, 正崇; 古澤, 成博

Journal

歯科学報, 115(6): 592-594

URL

http://hdl.handle.net/10130/3909

Right

(2)

592 歯科学報 Vol.115,No.6(2015)

臨床のヒント

Q&A 48

歯内療法学系

Q&Aコーナーは,東京歯科大学の3病院の臨床研修歯 科医から寄せられた質問に対しての回答です。回答は本 学3施設の専門家にお願い致します。内容によっては基 礎や臨床,あるいは歯科や医科と複数の回答者に依頼す る場合もあります。毎号掲載いたしますので,会員の皆 様もご質問がございましたら,ぜひ東京歯科大学学会ま でeメールかファックスで依頼していただきたいと存じ ます。必ずご期待に添えることと思います。今号は感染 根管治療に関する質問です。

Question

慢性化膿性根尖性歯周炎の治療は,「初回は根管口部までの治療にとどめる」と習うことがあ りますが,実際はどうなのでしょうか?

Answer

1.慢性化膿性根尖性歯周炎 ご存じのように歯周組織とは歯の周囲の組織のこ とで,歯肉,歯根膜,歯槽骨,セメント質の4つの 組織のことを指します。これらに何らかの原因で炎 症が起きた場合,全て「歯周炎」と言うことになり ます。歯髄組織が感染などにより失活し,その後に 感染根管が成立すると,根管内の細菌は根尖孔から 歯周組織側に移行し化膿性炎を惹起させます。根尖 孔はその名の通り根尖部にありますので,炎症は根 尖部周囲の歯周組織で生じます。すなわち“根尖 性”歯周炎ということになり,このうち慢性炎のも のを慢性化膿性根尖性歯周炎と呼びます。病理組織 学的には,根尖部の膿瘍形成と,その周囲にリンパ 球やマクロファージなどの炎症性細胞浸潤を伴う肉 芽組織の形成が認められます。これらの膿瘍や肉芽 組織が存在する部分の歯槽骨は,破骨細胞により吸 収しているので,エックス線画像検査では根尖部に エックス線透過像が認められます。また根尖部の歯 槽粘膜などに瘻孔を伴うことがあります。慢性化膿 性根尖性歯周炎に対する治療方法を考える上で重要 なことは,まずはその病態を充分に理解することで す。また炎症自体は根尖部周囲の歯周組織で起きて いますが,原因はあくまでも根管内の感染であるこ とや,治療法がその原因の除去(根管の無菌化)であ ることを充分に認識しなければなりません。 2.慢性化膿性根尖性歯周炎の治療 1)感染根管治療の目的 前述のように慢性化膿性根尖性歯周炎の治療法 は,原因除去療法としての感染根管治療となりま す。感染をしているのはあくまでも根管ですので, 原因の除去とは,根管からの細菌の排除ということ になります。したがって治療中のうがいや仮封材の リークなど,根管内に新たな感染が供給されてしま うような状況では,そもそも感染根管治療自体が成 立しませんので充分に気を付けて下さい。 また齲蝕の除去時には必ず齲蝕検知液を用いて除 去を徹底し,要に応じてフロアブルコンポジットレ ジン等で隔壁を作製して下さい。ラバーダム防湿を 行うことはもちろん必須です。またつい忘れがちか も知れませんが,ラバーダム防湿後の患歯の消毒操 作も重要です。感染根管治療の目的を確実に達成す るためには,自身の行っている処置操作が,根管を 無菌化するためのものであるかを常にチェックする 必要があります。 2)急性症状の発現機序を考える 慢性化膿性根尖性歯周炎への感染根管治療を開始 するときに,まず気になってしまうことは,「急性 転化させてしまったらどうしよう」ということでは ― 88 ―

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593 歯科学報 Vol.115,No.6(2015) ないでしょうか。では,根尖性歯周組織疾患で,急 性症状の発現(自発痛の発現)は,どのような機序で 起きるのか,もう一度確認してみましょう。根尖性 歯周炎が起きている場所は,周囲が歯根や歯槽骨な どで囲暁されていますので,根尖孔外へ細菌が人為 的に押し出されるなどし,短時間で多量の膿汁が発 生してもすぐに排出されません。このような環境で は病変内の内圧が亢進したままになり,自発痛が発 現します。瘻孔がある場合は,この圧力は瘻孔から の膿汁の排出により緩和されてしまいますので,強 い自発痛は比較的発現しにくい構造であると言えま す。根尖性歯周組織疾患で自発痛がある場合は,根 尖病変内の内圧の亢進を考える必要があります。 3)急性転化をさせないためには 前述のように,慢性化膿性根尖性歯周炎の急性転 化をさせないようにするためには,根尖孔外に感染 物を押し出さないように注意することが重要です。 またどんなに注意しても,わずかに押し出される可 能性もありますので,あらかじめ根管内容物中の細 菌数を減らすことも急性転化の防止には有効である と言えます。 これらのことから,安全策として「慢性化膿性根 尖性歯周炎の治療では,初回時は根管内に器具操作 を加えず,根管口部に根管治療薬を応用するにとど める」といった処置法が提案されます。これは根管 内容物に消毒剤を作用させ,含まれる細菌数を可及 的に減らしてから続きの処置を行うことで,急性転 化を防止するというコンセプトであると言えます。 しかしながら現在の歯内治療の教科書では,取り立 ててこのよう処置をするように推奨されているわけ ではありません。重要なのは,根管内の感染物を根 尖孔外に押し出さないようにすることで,根管内に まだ感染物が多い状態のときは急性転化のリスクが 高いので特に注意が必要であるということです。ま た根管内容物の除去操作は,根管内へ次亜塩素酸ナ トリウム溶液を満たしつつ慎重に行いますが,根管 内の有機物に接触し発泡することで有効濃度は徐々 に下がってゆきますので,発泡状況を良く見て常に 新しい薬液に交換しながら処置を行うことも大切で す。 また根管内容物の除去操作を2回以上に分けて行 うときに貼薬する根管治療薬は,強力な消毒効果を 図1 近遠心歯頸部に齲蝕の残留が認められることから根管 内には多くの細菌の存在が予測されるが,口蓋根根尖孔 の直径が大きい様子が確認できる(矢印)。 求めて応用しますので,ホルマリン・トリクレゾー ル FC Ⓡ ,ホ ル マ リ ン・グ ア ヤ コ ー ル FG Ⓡ ,メ ト コールⓇ などを応用すると良いで (ネオ製薬工業) しょう。特に前二者は,ホルマリンガスによる気化 消毒性が有効に作用します。しかしながらパラホル ムアルデヒドは近年,シックハウス症候群や,発癌 性が指摘されていますので,最近では水酸化カルシ ウム(製剤)を応用することも多くなりつつありま す。水酸化カルシウム(製剤)は,強アルカリ性のた め直接接触した部分については消毒効果も得られま すし,根管内に2週間以上程度貼薬しておくことで 歯根全体の pH が上がり,細菌が繁殖しにくい環境 となりますので根管の無菌化を行う上で有効である と言えます。 いずれにせよ根管内容物の除去操作を2回以上に 分けて行う目的は,根管内容物内の細菌数を減少さ せ急性転化に対する安全性を高めることですが,歯 冠部に齲蝕が残っていたり,仮封処置が不確実だっ たりすることで新たな感染が根管内に侵入するよう な状況では,本処置操作自体が全く意味をなさなく なってしまいますので注意して下さい。 3.おわりに 慢性化膿性根尖性歯周炎は,慢性炎症ですので自 発痛が無く自覚症状が極めて少ないのが特徴です。 そのようなことから患者さんご自身は,病態がある ― 89 ―

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594 歯科学報 Vol.115,No.6(2015) ことさえ気が付いていない場合も多いと言えます。 したがって実際の臨床の場では,1回目の処置直後 に強い疼痛が発現してしまうと「今まで痛くなかっ たのに,先生のせいで痛くなった」と思われ,治療 開始初期における患者-歯科医師関係を良好に構築 しなければならない大切な時期に,大きなマイナス 因子となりかねません。すなわち,慢性疾患を急性 転化させないように細心の注意を払うことは,良好 な信頼関係を築く上でも重要であると言えます。 慢性化膿性根尖性歯周炎を急性転化させないよう にするためには,感染を伴う根管内容物に対する除 去を複数回に分けて行う工夫などももちろん有効と 言えますが,まずは「慢性化膿性根尖性歯周炎とは どのような病態の疾患なのか」「急性転化とはどの ような状況になったものなのか」など,慢性化膿性 根尖性歯周炎について充分に理解することが最も大 切です。これは慢性化膿性根尖性歯周炎に限ったこ とではないのですが,まずはこれから処置をする相 手のことを良く理解することです。一般的な特徴を 充分に理解した上で,これから処置を施す歯につい て,齲蝕の範囲,残存歯質の量(隔壁の必要性),歯 根や根管の数・形態・長さ・吸収の有無,根尖孔部 の状態などを個別によく精査し診断することが大切 です。例えばエックス線写真により根管が比較的直 線的で広い場合や,根尖孔の直径が大きいことが予 測されるようなときは,根管内容物(感染物質)は根 尖孔外へ押し出され易いと言えます(図1)。よく精 査した結果,急性転化させ易いと思われる場合は処 置を2回以上に分けるなど,対策をすることは安全 性を確保する上でも有効と言えるでしょう。 しかしながら,たとえ処置を2回以上に分けて根 管治療薬を応用しても,充分に注意した器具操作を 行わなければ急性転化させてしまうこともあり得ま す。特に根管形成用器具を反時計回りに回転させる ことは,切削片を根尖孔側に送り出すことになりま すので,リーミング操作にも注意が必要です。 ご質問にあるように「慢性化膿性根尖性歯周炎の 治療は初回は根管口部までの治療にとどめる」と決 まっているわけではありません。根管の形態は千差 万別であり,1つとして同じものは存在しません。 慢性化膿性根尖性歯周炎のことを良く理解したうえ で,これから処置をする歯の状態や形態を充分に精 査・診断し,必要に応じ「処置を分割すべきかどう か」を良く考えて下さい。細心の注意を払って処置 をすれば,1回目で根管内容物の徹底除去と根尖孔 の穿通とを行うことも可能でしょうし,現在の状況 に至るまでにかなりの日数が経っていることを考え れば,処置を複数回に分割し多少治療回数が多くか かっても,急性転化の防止を最優先に考えた処置を することもまた有効な処置方針と言えます。 Answer:末原正崇,古澤成博 東京歯科大学歯科保存学講座 ― 90 ―

参照

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