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犬追物と犬詞との関係についての試論 : 小笠原流平兵衛家派の研究史

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Academic year: 2021

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(1)ま. え. が. ︱ ︱ 小 笠 原流 平 兵 衛家 派 の研究史︱ ︱. き. 勇. 雄. 犬 追 物 と 犬 詞 と の関 係 に つい て の試 論. 0. 田. れ た が、 中 世 末 に鉄 砲 が 伝来 し 、 騎 射 の戦 闘 に お け る重 要 性 が低 下 す るととも に、 近 世 に お い ては スポ ー ツと し て の. 犬 追 物 は 騎 射 の二 つ物 の 一つで、騎 射 が戦 闘 の重 要 な決 め手 であ った中世 では、 そ の スポ ー ツ化 と し て最も 愛好 さ. け たも のは 、 大 追 物 と 鷹 と であ った、と 言 っても 憚 から ぬ であ ろう 。. い った武 士 の逸 話 があ る。 と も に、 戦 陣 と スポ ー ツと いう 面 白 そう な 話 題 であ る。 中 世 の武 士 の心 を 最も 強 く惹 き つ. あ る。 同 じ く ﹁ 応 仁 記 ﹂ に載 る 話 に、 戦 闘 の最 中 に敵 陣 に飛 び 込 ん だ愛 鷹を取 り 戻 す た め に、 敵 中 へ悠 々と 出 かけ て. ま た、 ﹁応 仁 記 ﹂ に は相 対 峙 す る東 西 両 軍 が、 長 期 化 す る戦 闘 の つれ づ れを大 追 物 でしば しば な ぐ さ め たと の記事 が. 強 調 表 現 と し ては、 ﹁ 千 匹犬 ﹂の方 が より ふさ わ し い であ ろう 。 そ れ に字 数も七 字 で、 歌舞 伎 の慣 例 にかな って いる 。. た かも 知 れ な い。 犬 追 物 は ワ ン コー スが百 五十 匹 だ か ら であ る 。 し かし それを 繰 り 返 し 繰 り 返し と り 行 な ったと いう. 怠 り 、 つい に鎌 倉 幕 府 の滅 亡 を 招 いた 、と いう こと を 主 題 にし た 作 品 であ る。 も っと も これ は ﹁百 五十 匹犬 ﹂ であ っ. ︲ 九代 目 団 十 郎 好 み の活 歴 物 に 、 ﹁ 北条 高 時 千 匹 犬 ﹂ と い った よ う な のがある 。 北 条 高 時 が犬 追 物 に ふけ って幕 政 を. 島. イ)3θ 9 (ゴ.

(2) 犬追物 と犬詞との関係につ いての試論 5) 3θ 8(ゴ. 犬 追 物も 全 く 廃 れ てし ま う 。 中 世 に は、 スポ ー ツと し て の大 追 物 の ルー ルが高 度 に整 備 し 、武 家故 実 と し て昇 華 し 、. 各 騎 士 はす ぐ れ た スポ ー ツ マンシ ップ に則 って行 動 す る こと が求 め ら れ、 ま た それ ら を 貫 く武 家 故 実 の理念 は思 想 的. にも 高度 化 さ れ 、 いわ ゆ る故 実 礼 治 思想 に根 ざ すも のと し て高 く 評 価 さ れ て いるc そ の武 家 故 実 の結 実 に指 導 的 地 位. を 占 め て い た の が京 都 小 笠 原 家 であ る。実 技 に お い ても 卓 越 し て いた よう で、京 都 家 の人 た ち は各 種 の競 技会 で審 判 官 に相 当 す る 検 見 の役 を つと め て いた。. 犬 追 物 は 、相 撲 な ど と 違 って、参 加者も 多 く 、き わ め て複 離 な ルー ルを持 つスポ ー ツであ る。 そ の役 者 と し ては、 ま. ず 射 手 の数 十 二騎 、 犬 の数 百 五十 匹、 これを 一手 と し 、 三手 を 本 式 と す る 、と 伊 勢 貞 丈 は言 う 。 貞 丈 に従 えば 、本 式. では射手 二十 六 騎 、 大 四百 五 十 匹と なる。 それ に、 検 見 が 正副 二名 、 換次 が 正 副 二名 、 以 上 が主 た る 競 技関係者 で、. こ のほか に 釆幣 振 ・日記 付 ・犬 放 ・同振 ・鉦打 o矢 取 介 添 ・多 く の奉行 ・検 見 中 間 そ の他 が いる。 競 技 は、 土俵 の中. から大 放 し が犬 を 放 し 、 そ の大 が土 俵 の中 央 か ら 飛 び 出 し たと き に初 め て射 手 は ︵ 鏑 矢 で︶ 射 る こと が でき る が、騎. 者 と 犬と の位 置 と の関 係 から 、 射 ても よ いば あ いと 射 ては な ら ぬば あ いと か 、 逃 げ る 犬 を 追う とき の方 向 と それを 射. る射 角 な ど が き び し く 定 め ら れ てあ る。 き わ め て高 度 な 技 術と 厳 格 な行 動様 式 と のも と に行 な う スポ ー ツであ った。. それ ら の こと は 、 近 世 の初 め にす っかり 忘 れ ら れ た が 、武 家 礼 式 が盛行 し 、諸 学 の振 興 が行 な われ る に従 って、 徐 々. に それ への関 心 が高 まり 、 研 究 も 行 なわ れ た。 実 技 上 の復 原も いく たび か試 みら れ 、 正保 四年 に島 津 家 で行 な ったも. のな ど知 名 な も のが いく つか あ る。 し かし多 く は文 献 的 研 究 にと ど ま った よう であ る 。 そ のば あ い武 家 礼式 家 の研 究. が先 行 す る が 、 それ に は 赤 沢 家 の延 宝献 上本 の伝書 、 庶 流 系 では小 池 貞 成 ・水 島 之 成 等 の伝 書 や伊藤 幸 氏 の諸 研 究 な. ど があ る。 そ れ ら の研 究 の中 では 、 やや時 代 は 下 る が 、 伊勢 貞 丈 の研 究 が最も す ぐ れ て いる。. 明 治 以後 の研 究 は ほと んど 皆 無 と い ってよ い。我 わ れ が、今 も し 犬 追物 に つい て調 べよ う と 思 ったと き 、 まず 誰 の. 研 究 を手 掛 り と す れば よ い のか 、な どと いう こと さ え分 っていな い。 そう いう 意 味 では 、私 な ど も、 多 少 の手 掛り を つ.

(3) δ)3θ 7 (ゴ. 田 勇 雄 島. か む ま では、 藤 圭 子 風 に言 えば 、 私 の人生 辛 か った 、 と いう 感 じ であ る 。私は か つて放 鷹 に つい て調 査 し たと き. 、要. 門 流 の兵 法 学 に つい て調 査 し たと き 等 々に そう し た よう に、 大 追 物 関 係 の伝書 で現 存 のも の に何 があ る かを 仔 細 に調. 国 書 総 目 録 ﹂ に所 載 の伝 書 を 項 目別 に分 類 し 、 それ に洩 れ たも の、 即 ち べて、現 存 書 一覧 表 を 作 成 し てみ た 。 ま ず ﹁. 、 こ の目録 の基 礎 調 査 以後 に作 成 さ れ た 図書 館 の 目 録 に所 載 のも のや 、 ま だ 目録と し ては 記 載 さ れ て いず 各 所 の図書 、 館 の受 入台 帳 の類 に記 載 さ れ て い る 段 階 のも のや 、 家 蔵 を も 合 め て個 人 の所蔵 にな るも の等 で 私 の知 り え たも のを. 加 え てみた。 ﹁国 書 総 目 録﹂ に洩 れ たも のと し て比 較 的 多 く 所 蔵 す る のは永青 文庫 や 蓬 左 文庫 ・八 ノ戸市 立 図書 館 。 それ ら の伝 書 の中 に. な ど であ る。 現 在 犬 追 物 関 係 の伝 書 を 最 も 多 く 所 蔵 す る のは 、 熊 本 大学 寄 託 の永青 文 庫 であ る.  多 く は   多 数 の伝書 群 より な るも のがあ る が、 永青文庫︶ のご と く 八 一冊を 納 め るも のを 最 高 と し 、 は 、 ﹁故 実 書 ﹂ ︵. 。 単 発 的 な伝 書 であ る 。 ま た多 く の中 に は書 名 は 違 っても 内容 は 同 じと いうも のも あ る 中 世 の貴 重 な資 料 があ る かと. 。 思 えば 、単 に先 行 書 の抜書 にす ぎ な いも のも あ る 。 質 的差 違 も ま た甚 だ し いわけ であ る 、 、 目下 の私 の単 純 な 調 査 の範 囲 では 、 大 追 物 関 係 の現 存 伝書 数 は 書 名 の異同を中 心 に言 えば 異り 書 数 が約 五五〇 、 、 種 であ る。 そ の ほ か にも 、 古 い伝 書 目 録 の類 に記 載 さ れ て い て 書 名 は 知 られ ていな が ら 現代 の目 録類 には書 名 の 。 そのよう に 、 実 際 に著 作 さ れ た伝書 は現 存 登 録 さ れ て いな いも のや そ の伝 書 の所 在 の明 ら か でな いも のな ども あ る. 、 のも のより 数 的 に多 か った ろう と いう こと が考 え ら れ る 。 し かし 各 種 の伝書を 比較 し て み ると 同 一伝 書 が改 編 ・増 、 、 補 等 を受 け る と と も に書 名 の 一部 を 改 めら れ たと いう 類 が多 いよう に思 わ れ そ のよう に 考 え れば 大 追 物 関係 の伝 。 し た が って大 追 物 関 係. 、 と 全体 を 総. 、 更 に それ ら が若千 の項 目. 書 は さ ほど に多 源 的 と いう も の では な く 、源 流 と す べき も のは限 ら れ てく るかとも 思 わ れ る. の伝 書 では 一般 的 にあ る種 の限 ら れ た伝書 におけ る 総 論 的 なも のが若 干 の各論 に分 け ら れ. に細 分 化 さ れ る よ う にな ったり 、 歴 史 的 な観 点 が加 え ら れ たり す る 、 と いう ふう にし て研 究 が推 移 し た 括 でき そう に 思 わ れ る 。.

(4) 犬追物 と犬詞 との関係につ いての試論 7) (ゴ. 3θ δ. 右 に挙 げ た 約 五 五 〇 種 ほど の文 献 の中 で私 が 目下 入手 し て いる資 料 は そ の三 、 四割 にす ぎ な い。 それ ら を も と に初. め て行 なう 試行 な の で、 錯 誤 以前 の調 査未 了 のた め の不 備 が 目立 つが、 それ は起 筆 後 新 し く 生 じ た疑 間 点 に つい て更. に文 献 を 集 め て再 調 査 す る時 間 的 ゆとり がな か った た め であ る。 それ ら の点 に つい ては 、 あ ら た め て改 稿 す る機会 を 持 ち た いと 考 え て いる 。 国 犬 追  物 研 究 史 平兵 衛 家 ︶系 田   小 笠 原 流 赤 沢家 ︵ 0  延 宝 献 上 本 の体 系.  それ は究 極 的 問 題 と し て の 大 詞 や文字 指 導 の研 究 の 成 立 環 境 を 知 る た め であ ま ず 犬 追 物 の研 究 史 から 始 め た い。 0。 フ. 実 技と し て の大 追 物 は 、中 世 に そ の絶 頂期 にあ った が 、近 世 には いると とも に突如 と し て衰 退し てし ま った。衰 退. の原 因 は 、戦 闘 技 と し て の騎 射 が そ の価値 を 失 って衰 退 し た ため であ るし 、 こと に四海 波 穏 や か にし て泰 平 を 記 歌 す. る声 があ たり に充 み満 ち る世 に な った ため であ る。 実 技 と し ては ほと んど 跡 を 断 った が 、 逆 に諸 学 の隆 盛 に赴 き武 家. 諸 札 の研 究 の発 展 す る に つれ 、 これ に つい て の知 的 教 養 の必要 性 は 層 一層高 まり を 加 え てい った。 犬 追 物 の研 究 は、. 武 家 故 実 の研 究 と 指 導 と を も そ の任 の 一と し た諸 礼 家 の間 か ら起 き てき た。 ま ず そ の諸 礼 家 の研 究 の若 千 を 取 り 上 げ よ う と 思 う の であ る。. 赤 沢 家 の武 家 礼 式 は 、中 世 末 の人 赤沢 経直 が総 領 家 の長 時 や長 堅 の指 導を受 け た の に始 ま るも のと 思 わ れ る。 それ. 。 そ の点 、赤 沢経直 も. ま では多 く の小 笠 原 家 の分 家 と 同様 特別 に武 家 礼 式 に出 精 し たと は思 わ れ な い。長 時 は この時 武 田信 玄 に松 本 城 を追. わ れ 、 以 後 三 十 余 年 に わ たり 諸 国 を 流浪 す る が、 そ の際 、 ひ たす ら武 家 礼式 の指 導 に当 た った.

(5) 8)3θ 5 (ゴ. 雄 島 田 勇. 長 時 に似 た よう な 道 を 歩 いた か と 思 わ れ る 。も っと も 経 直 は 、長 時 が松 本 城 を 出 た時 、 そ の供 を し てと も に 一時 一族. の三 好 長 慶 の芥 川 城 に身 を 寄 せ 、 のち 長 時 が上 杉 憲 信 を 頼 って北 陸 に向 ったと き 、京都 に留 って京都 家 の指 導 を受 け. ぶ た 、 と ﹁赤 沢 大 系 図 ﹂ ︵ 蓬 左 文庫 ︶ は 述 べて いが 武 家 礼 式 を わ が 物 にす る 決 心を 堅 め た た め であ る。   ⊆ っし て、. 総 領 家 な ら び に京 都 家 の指 導 を受 け た う え で、 独自 の 一風 を 建 立 し た。 たと えば 、 総 領 家 の聖 典 ﹁七 冊書 ﹂ を も と に. し て独 自 の ﹁ 経 直 十 巻 書 ﹂ を 編集 し た こと に、 それ がう か が わ れ る。 のち 赤沢 家 の小 笠 原 丹斎 が 延 宝 六 年 に将 軍 家 綱. に献 上 し た家 伝 の伝 書 五〇 冊 一二軸 ︵四 冊 欠 ︶ が内 閣 文 庫 に ﹁ 小 笠原 礼 書 ﹂ と し て現存 し て いる。 それ に は総 領家 の. ﹁三 議 一統 書 ﹂ や京 都 家 系 の各 種 伝 書 ︵﹁ 犬 追 物 秘伝 之 書 ﹂ な ど ︶ を 納 め る が、  それ は赤 沢 家 が両 家 の指 導 を受 け た. こと の結 果 であ る c 赤 沢 家 では 延 宝献 上 本 を自 家 礼 法 の原 点 と し 、 のち これを近 世 的 に改 編 し て﹁ 窮 法 明 伝 極 秘伝 抄 ﹂ の体 系 と し 、 更 に改 編 し て ﹁ 窮 法 礼 誼 抄 ﹂ の体 系 にし たも のと 考 え る 。. 赤 沢 経 直 は 、京 都 家 の縫 殿助 家 と と も に武 家故 実 を も って 徳 川家 に 禄 仕 す る こと になり 、 通 称 を 平兵 衛 家 と 呼ば. れ 、 小 笠 原 姓 に復 し 、代 々小 笠 原 丹 斎 と 称 し た。 平 兵 衛 家 は 、も とも と 総 領家 と 京 都 家 と の両 家 の指 導 を 得 て武 家 礼. 式 家 と し て出 発 す る こと にな ったも のな の で、両 家 に対 し ては劣 等 感 を 持 ち、両 家 はま た師 匠 意 識 を も って これ に臨. む と いう ふう で、  一族 と は い いな が ら お 互 に穏 や か な ら ぬも のがあ った。 し かし近 世 に お け る礼 法 史 の観 点 か ら言 え ば 、 総 領 家 は早 く も 活 動 を 止 め、 縫 殿 助 家 は伝 統 の墨 守 にと ど ま って、 それ ぞれ な んら近 世 的 創 造 は全 く 行 な わ な か った 。 それ に対 し 、 平 衛 家 は 延 宝 献 上 本 を 原 点 と し て、 独自 の展 開を 計 った。 総 領家 と 縫 殿助 家 と が近 世 に開 拓 し た 伝 書 を 全 く持 たな い の に対 し 、平 兵 衛 家 は非 常 に多 く の伝 書 を 新 た に加 え ている。. 平 兵 衛 家 の大 追 物 の伝 書 は 、ま ず 延 宝 献 上 本 の中 に 一群 を 占 め て いる。 以後 の研 究 に よ る伝 書 は 、﹁ 蓬 御書 物 目録﹂ ︵. 左文庫︶ ・﹁ 小 笠 原 流 伝 書 目 録﹂ ︵ 蓬左文庫︶ ・﹁御書 物 目 録 ﹂ ︵ 岩手県立図書館新戸部文庫︶ な ど に よ って知 る こと が でき. る 。 延 宝 六 年 献 上 本 に お け る大 追 物 関 係 伝 書 の在 り 方 を ま ず 考 え てみ る。 平 兵 衛家 の礼 法 の基 点 は 延宝 六 年 の献 上本.

(6) 犬追物 と犬詞 との関係についての試論 9) (ゴ. 3θ イ. にあ ると 考 え ら れ るか ら であ る。 同家 では それを礼 法 上 の原 点 と し て尊重 し 、 以後 同家 の伝書 を 時 代 の進 展 に合 わ せ. て改革 し よう と いう動 き のあ る たびご と に そ の原点 に立 帰 り 、 そ の原 点 の精 神 を 確 認し な がら それ を 再 編 成 す ると い. 窮 法 明伝 極 秘伝 抄 ﹂ のご と きも 、基本 う 方 法 を 取 っている。 平 兵 衛 家 の全 伝書 を 一定 の体 系 で組 織 化 し よう と し た ﹁. 的 出 発 点 は 延 宝献 上本 に あ ると 思 わ れ る。 そ の伝書 体 系 と し ては 、全 伝 書 を 大 き く 三分 類 す る。 即 ち 、献 上本 に添 え.  そ の分 類 名 は 、 ﹁弓 箭並 射 法 ら れ た ﹁御 書 物 目録﹂ は 、 三 つの分類 名 を 挙 げ 、全 伝書 を そ のど れ か に配 当 し てあ る。. 乗 馬 並 手 綱 之 御 書 物 ・同御 軸 物 ﹂ の三 つであ る。 即ち 、 そ 諸 礼 法 儀 之 御書 物 ・同御 軸 物﹂・﹁ 之 御 書 物 ・同御 軸物﹂・﹁. れ は 弓 術 ・諸 礼 ・馬 術 の三 分 類 法 を採 る こと であり 、 このう ち 弓 術 o馬 術 は 弓 馬 礼 とし て 一括 さ れ 、 これ は本 来 京 都. 家 が主 と し て開拓 し た 領 域 で、 弓 馬礼 では それを ほと んど そ のま ま受 け つい で いる。諸 礼 は総 領家 の開拓 し た領域 で. あ り 、 そ れ を 継 承 発展 さ せ たも の であ る。 平 兵 衛家 は この後 主 と し て この諸 礼 に重 き を お い て研 究 を 重 ね て いく 。 そ. のよう に 延 宝献 上本 では 、 近 世 に重 要 性 を 加 え る諸 礼 を中 央 に 置 き 、 そ の前 後 に弓 ・馬 の礼 法 を 置 く と いう体 系 を 立 て て いる 。 そ の伝 書 のう ち 、弓 術 関 係 の伝 書 体 系 は次 のよう な各種 伝 書 に よ って構 成 さ れ ている。 十冊 一弓 箭 並射 法 之 御 書 物   一一. 二々九 手 挟 物   一冊    百 手 之 書 付百手之作法   一冊 大 的 之 書   一冊     小 的 之 書 付的之絵図   一冊       一. 二的 並小串 之 会 付三的之 目記   一冊       草 鹿 並円 物之 書 誕 生 引 目並矢 入 之 大 事 付屋越之基目之次第   一冊       一. 一冊       七所 勝 負 並十 所 勝 負之 書 付七所勝負之 日記   一冊       犬 追物 之 書   一冊      犬 追 物 之 次 第   一冊. 犬 追 物 秘 伝 之書   一冊       流鏑 馬 之 書   一冊      笠 懸 小 笠 懸並遠 笠 懸   一冊         弓 箭 並弓法 撰書 矢 披 之事   一冊       弓 馬 之 百 問 答   一冊    射 方 全書   一冊 ハ巻 一同 御 軸 物         エ.

(7) (2θ )3θ 3. 島 田 勇 雄. 弓之 総 名 之 事   一巻       一張 弓     一巻    天 道 弓方 同 機 叙   一巻      犬追物 目安   一巻 当 家 弓之 書     一巻       当家 矢 本   一巻. . 右 のう ち 、 ﹁ 御 書 物 ﹂ では 一 大 的 之 書 ﹂ か ら ﹁七 所 勝 負﹂ ま でが 、 歩 射 の名 で 一括 され る武 家 故 実 に 関 す る伝 書 。. 次 の大 追 物 ・流 鏑 馬 ・笠 懸 の 三種 が騎 射 の三 つ物 の名 で呼ば れ るも の。 次 の ﹁弓 馬 之 百問 答﹂ ﹁ 射 方 全 書 ﹂ は弓 術 総. 論 と す べき も の。 即ち 、 ﹁ 御 書 物 ﹂ は武 家 故 実 のう ち 、 歩 射 o騎 射 ・総 論 の三種 の伝書 より な る わ け であ る。 それ に. 対 し、﹁ 御 軸 物 ﹂ は特 殊 な 文 献 を 集 め たも の で、 たと えば ﹁犬 追 物 目安 ﹂ は、  か つて犬追 物 廃 止 論 のあ ったと き 、 然. る べか ら ざ る旨 を 認 め て、 小 笠 原 貞 宗 が後 醍 醐 天 皇 に上 訴 に 及 ん で勅 許 を得 た 、 と 伝 承 さ れ て いる 、 そ の上 訴 文 であ. る。 そ の他 ﹁弓 之 総 名 之 事 ﹂ は 弓 の部 分 名 に つい て小 笠原家 で伝 承 す ると ころを 記 録し たも の で、墨 礎 的 知識 に つい. ︲ ︲ て述 べた資 料 で、 以 下 は 皆 これ に類 し て いる 。 そ の種 の家 伝 の秘 事 を ﹁御車 ︲物 ﹂ と 称 し たわけ であ る 。 ﹁ 御 書 物﹂ と. ﹁ 御 軸 物 ﹂ と は 、 そ のよう に伝 書 と し て の質 的 差 違 に よ って区 別 し ており 、 それ ら のう ち を 更 に伝 書 の内容 上 の差 違 に よ って右 のよう に区分 す る と いう方 法 を 取 って いるわ け であ る 。 m   延 宝献 上本 の大 追 物 の伝 書. ﹁御 書 物 ﹂ の大 追 物 関 係 の伝 書 三 冊 に つい て、 それ ら が犬 追 物 と いう 競技 に関 し 、 何 に つい て述 べるも のか を 知 る. た め に 、 そ れ ぞ れ の伝 書 に つい て そ の記 述 内 容 の項 目名 を挙 げ れ ば 、次 のご と く であ る。 犬 追 物 之書. 射 御 之 事 o犬 追 物 之 書 ・射 手 並役 人 出 立 之 事 ・出場 之 次 第 ・入場 之次 第 ・射様 並犬 言 葉 之 事 ・退場 之 次 第 o シ チ ノ次 第. 右 のう ち 、 ﹁ 射 御 之 序 ﹂ と ﹁犬 追 物 之 書 ﹂ と は ﹁ 騎 射 秘抄 ﹂ と 呼 ば れ るも の の内 容 を 三分 し たも の であ り 、 他 は別. の伝 書 よ り 採 録 し たも のと 思 わ れ る。 ﹁ 騎 射 秘 抄 ﹂ 以外 のも の が全 部 単 独 の伝 書 より 採 ったも のか 、   そ れと も そ の全.

(8) 犬追物 と犬詞 との関係についての試論. 2(2ゴ ) 3θ. てが同 一伝 書 か ら 採 ったも のか 、 それと も 二三 の伝 書 の集 合 かな ど の細 部 の事情 に つい ては 、 日下 の所 十 分 な 調 査 は. でき て いな い。 手 も と の資 料 の単 純 な 一瞥 か ら す れば 、類 似 の伝 書 が若 千 あ り そう に思 われ る。 たと えば 、 内 閣 文 庫 吉 田家伝来本︶は次 の見 出 し より な る。 の ﹁ 犬追 物 之書 ﹂ ︵.  入場 之 次 第 、 馬 ノ前 ヲ切 ル犬 二弓 手 切馬 手 切 卜言 ︵ 馬場 の法 量 ︶、 縄之 事 、 射 手 並役 人出立 之 事 、 出場 之 次第 、.  矢之 次  縄之 外 四箇 条 之 射 様 、 内 之 犬 之 射 ル ニ可 心 得 事 、 外 之 犬 射 ル ニ可 心 得 事 、 事 有 也 、 縄 之 内 四条 之 射 様 、 第 、 検 見 可 心 得 事 、失 沙 汰 之 口伝 、犬 之 名 所 、外 之 馬 場 坪 馬 場 卜言 事 有. このう ち ﹁馬 場 の法 量﹂ と 仮 の見 出 し を付 け たも のは ﹁犬追 物 之 書 ﹂ ︵延 宝本 ︶ の中 の見 出 し の ﹁犬 追 物 之 書 ﹂ に. 騎 射 秘 抄 ﹂ に相 当 す る。 それ で こ の部 分 は 、 射 御 之序 ﹂ を付 け たも の が ﹁ 犬 追 物之 書 ﹂ の前 に ﹁ 当 た る。 見 出 し の ﹁. 騎 射 秘 抄 ﹂ に つい て の小 笠原家 の誰 か の講義 の間 書 かと も 思 わ れ る。 犬 追 物 関係 では最も 古 い伝 書 と さ れ あ る いは ﹁. 騎 射 秘 抄 ﹂ と の関係 か ら 言 えば 、 この部 分 だ け で 一ま と まり に な って いるも のと 考 え てみる こと は 、 大 追 物 の伝 る ﹁. 書 一般 の成 立 を 考 え る際 の 一つの方 法 であ ると 思 わ れ る。 次 の ﹁射 手 並役 人出 之 事 ・出 場 之 次第 ・入場 之 次 第 ﹂ の三. 射様 並 犬 言 葉 之 事 ﹂ があ 見 出 し は両 書 共 通 であ る。 ﹁シ チ ノ次第 ﹂ と ﹁失 之 次 第 ﹂ と も 同 内 容 であ る。 延 宝本 には ﹁. 失 之 次 第 ﹂ の前 の項 ま で る が、吉 田家 本 に は それ に相 当 す る見 出 し は な い。 ただ し 、 ﹁入場 之 次 第 ﹂ の次 の項 か ら ﹁. 射 様 並 犬 言 葉 之 事 ﹂ の項 が ほ ぼ成 立 し そう に思 わ れ る。 ま た吉 田家 伝 失 の次 第 ﹂ の次 の 二項 と を 編 集 す れば 、 ﹁ と 、﹁. 検 見 可 心 得 事 ﹂ は そ の部 分 の終 り に ﹁己上 ﹂ と あ ると ころ か ら 、 これ はも と 独 立 し た伝書 であ った可 能 性 が強 書の ﹁. い。 更 に ﹁犬 之 名 所 ﹂ は犬 の身 体 に基 目 の当 る箇 所 の部 位名 を 図示 し た貴 重 な 例 で、 ど れ か の伝 書 に添 え ら れ たも の の写 し であ ろう し 、 最 後 の馬 場 の件 は補説 と も 考 え ら れ る。. 失 之 次 第 ﹂ ま で の記 事 を持 つ 射 手 並役 人 出 立 之 事 ﹂ か ら ﹁ 騎 射 秘抄 ﹂ と 、 ﹁ 以上 の こと か ら し て、 延宝 献 上 本 は ﹁. 騎 射 秘抄 ﹂ と これ に続 く 伝 書 の発 展 的 伝 書 と の、 二伝 書 が根幹 にな って成 立 し た かと 思 わ れ る。 ま た吉 田家 伝 書 は ﹁.

(9) (22)3θ ゴ 田 勇 雄 島. 部 分 を 持 つ祖 形 的 伝 書 と 、 ﹁ 検見 可 心 得 事 ﹂ と いう 伝 書 と 、 若千 の補 説 と より 成 るも の であ ろう と 思 わ れ る。. と ころ で、見 出 し ﹁射 様 並 犬 言 葉 之 事 ﹂ に納 め ら れ た犬 言 葉 は 、 犬 追 物 と いう 競 技 に関 す る特 殊 な術 語 を 集 め たも. の では な い。 む し ろ競 技 の進 行 に関 し て審 判 官と し て の検 見 が指 示 す る 命 令 と か 、 射手 の動 作 に対 し検 見 が そ の中 断. や 進 行 を求 め ると き 、 ど のよう に射 手 に命 じ たり 尋 ね たり す るかと か と い った、言 葉 の作 法 に ついて書 いたも の であ. る 。 つま り 、 大 追 物 競 技 に関 し て審 判 官 の心 得 る べき ﹃言 葉 の作法 集 ﹂ と でも 言 う べき も のであ る。 そ のよう な 言 葉. の作 法 が確 定 し て いな いと 、 競 技 の円 満 な進 行 に障害 の生 じ る こと は 、 現代 の各 種 競 技 を 考慮 す れば 自 ら 明 ら か であ. ろ う 。 四 人 の騎 士 が 同時 に行 動 し 、 疾 走 す る 大 に向 か ってそれ ぞれ 暮 目 で射 ると いう 、集 団 的 、瞬 間 的 競 技 を 厳 正 に. 判 定 す る た め に は 、 厳 し い言 葉 のと り き め が 必禁 であ り 、 早 く か ら それ は洗練 さ れ て い ったも のと 思 わ れ る。 な お 、. 大 言 葉 と 通 例 呼 ば れ るも のに は これ と は 別種 のも のがあ る。 それ は 検 見 の審 判 に必要 な 、審 判 上 の特 殊 な 術 語 を 集 め たも の であ る。 両 者 は 一応 区別 し てお く べき であ る。 同  延 宝 献 上 本 の ﹁ 犬追 物 之 次第 ﹂ 本 伝 書 の項 目名 は 次 のご と く であ る 。 犬 追 物之 次 第. 一大 追 物 之 起 之 事 ・一同 作 法 之 事 ・ 一同 言葉 品 々之 事 ・ 一同検 見 上 巻之 事 ︵ 検 見 進 退聞書 ・検 見故 実 之 事 ・内 外 之 検 見進 退之 事 γ 一同検 見 下 巻 之 事 ︵ 犬追 物 検見 之 次第︶. 本 伝 書 では 、本 文 が 五項 目 に分 れ 、 第 四 項 では 更 に そ の本 文 が三種 の中 項 目 に分 れ て いる。 実 は第 二 項 目 では本 文. の見 出 し には ﹁ 犬 追 物 之 時 言 葉 遣 之 事 ﹂ と し 、 同 じ く 第 五項 目は ﹁犬 追 物 検 見 之 次 第 ﹂ と す る。. と ころ で、 一 大 追 物 之 次 第 ﹂ は 、 延 宝 献 上本 にお け る 犬 追 物 の体 系 の中 では、〓一 種 の伝 書 より な る体 系 の 一翼 を 担 う. も のと し て の位 置 を 占 め て いるc そ れ はも と か ら そ のよう な 位 置 を 占 め るも のと し て編著 さ れ た のか 、 あ る いは 既成.

(10) (23) 3θ θ. の伝 書 の中 か ら そ のよう な 位 置 を 占 める伝 書 に ふさ わ し いも のと し て これ が選 出 さ れ た のか 、と いう こと がま ず 問 題. にな る 。 つま り 延 宝 献 上 本 の体 系 の成立 す る 頃 に 編著 さ れ た のか 、 あ る いは そ の頃 に は 既 に成 立 し ていた のか 、 が問. 題 だ 、 と いう こと であ る 。 も っと 違 った言 い方 を す れば 、 この伝 書 は近 世 に編 著 さ れ たも のか それとも 中 世 に 編著 さ. れ たも のか 、と いう こと であ るし 、 ま た平 兵 衛家 の人 に よ って編著 さ れ た のか それと も 他 家 の、 お そらく京 都 家 の 人. に よ って編 著 さ れ 、平 兵 衛 家 は それ を単 に伝 承 す る にす ぎ な い のか 、と いう こと でも あ る。 そ の こと に つい て考 察 す る際 に示 唆 を 与 え るも のと し て、次 の二種 の奥 書 があ げ ら れ る。. 検 見 下 巻之 事 ﹂ の末 尾 に奥 書 0 が 本 伝 書 では 、 そ の大 項 目を表 わす ﹁ 検 見 上 巻之 事﹂ の末 尾 に奥 書 い が、 同 じ く ﹁ 記 載 し てあ る。 m 右 此 一巻 当流 雖 為 秘 説  有 心而 註進 候也. 0 右 、 大 追 物 之 起   同 作 法   同 詞 ご 叩  同 内 外 之 検 見 上 下 巻 ノ事   尽 サ レサ ル事 ナ シト云 ト モ  古来 ヨリ弓 馬 之 道. 尽 事 ヲ制 シテ微 細 者 口伝 ト ス  就中 此 書 ハ旅 用 ナ レ ハ  十 ヲ 一二約 ヌレ ハロ伝 ナ ク シ テ ハ曽 以叶 フ ヘカ ラ ス. こ の奥 書 ② の終 り に ﹁就 中 此 書 ハ旅 用 ナ レ ハ﹂ と あ る。 これ は本 伝書 の本 来 の編集 意 図を 示 すも のと 解 す べき 辞 句. であ ろう 。本 伝 書 が旅 行 用 と し て編 集 さ れ たと いう のは 、旅 行 に携 帯 し て備忘 の用 に充 てると いう 用途 を示 す も の で. あ ろう 。 そ のよう な 伝 書 を 必要 と す る情 況と し ては、 たと えば 地方 の競 技 に競 技者 と し て参 加 す る時 と か 、 同 じく 検. 見 と か の役 者 と し て参 加 す る時 と か 、同 じ く な ん ら か の実 技指 導者 と し て参 加 す る時 と か 、 同 じく武 家 故 実 の講 義 者. と し て出 張 す る時 と か と 、 さ ま ざ ま な情 況 が考 え ら れ よう 。中 世 には それ ら のど れも が成 立 可 能 であ った。 犬 追 物 と. いう 競 技 が盛 行 さ れ て い た か ら であ るし 、中 央 文 化 の地方 への伝 播 が盛 ん で、 小 笠原 家 の者 が地方 に招 か れ ると いう. 機 会 も 多 か った ろう と 考 え ら れ るか ら であ る。 し か し 犬 追 物 が廃 れ 、 ま た武 家 礼 式 の研 究 も ま だ さ ほど に盛 ん にな ら. な か った近 世 初 期 に は 、 そ のよう な旅行 用 伝 書 を 必要 と す る よう な情 勢 に はな か った ろう と 思 わ れ る。 それ ら の こと.

(11) な 項 目 を 含 む 伝 書 と し て編 集 さ れ たも のな のか 、 それと も それ ぞ れ の項 目 に相 当 す る単 元的 伝 書 の多 数 に基 づ い てあ. 次 に 、 本 伝 書 の目 録 に よ れ ば 、本 書 の五種 の大 項 目を 含 む も のと し て編集 さ れ て いる が、 それ は 当初 か ら そ のよう. か ら 、 本 伝 書 は中 世 に 、 お そら く 京 都 家 の 人 に よ って編 著 さ れ てあ ったも のと 思 わ れ る。. )299. 上 巻 之 事 ﹂ の巻末 と 同様 に い に てし ま ったも のと 思 わ れ る 。 ま た伝 書 の慣 習 と し ては ﹁検 見 下 巻 之 事 ﹂ の巻末 にも ﹁. 起 之 事 ﹂ は ﹁犬 追 物 之 書 ﹂ と 重 複 す る が 、 それ は 既成 の伝書 の編 集 であ る た め、重 複 す る こと に な っ を含 む 。ま た ﹁. 起之 事 o作法 之 事 ・言 葉 品 々之 事﹂ の三者 れ たも の であ ろう と 思 わ れ る。 平 戸 の松 浦 史 料 博物 館 の ﹁犬 追 物 事 ﹂ は ﹁. ︲ 検 見 之 事 ﹂ を 内 容 と す る伝 書 と の 三種 の伝 書 に基 づ い て こ の ﹁犬 追 物 之 次 第 ﹂ が編 集 さ 事 ﹂ を 中 心 と す る伝 書 と 、 ﹁.  それ は ﹁起 之 事 ・作 法 之 事 ・言葉 品 々之   そ の内 容 量 や 形 式 面 な ど考 え て、 て編 集 さ れ たも の であ ろう 。 お そら く 、.  即 ち 、 ﹁ 犬追 物 之 次 第﹂ は少 なく と も 味 す るも の であ ろう。 以 前 の 三 項 目と は 本 来 別 種 の伝 書 に 由 来 す る こと を 音い ︲ 検 見 上 巻 之 事 ﹂ と ﹁同 下 巻之 事 ﹂ を 含 む 二種 の伝 書 に基 づ い ﹁起 之 事 ・作 法 の事 ・言 葉 品 々之 事 ﹂ を 含 む 伝 書 と 、 ﹁. 検 見 上 巻之 事﹂ が それ ら ず 、 そ れ ら の巻 末 に は m を 添 え てな く 、 ﹁ 検 見 上 巻之 事 ﹂ の巻 末 だ け に添 え てあ る こと は 、 ﹁. に ﹁ 言 葉 品 々之 事﹂ は 内 容 的 にも 独 立 し たも のな の で、 こ の巻 末 に い の添 え てあ る のが自 然 と 思 わ れ る。 にも か か わ. り 、 そ れ が実 際 に伝 授 の素 材 と な って い た のな ら 、 お そら く そ れ ぞ れ の項 目 の巻 末 にm は添 え ら れ た であ ろう. あ い、 そ れ ぞれ の巻 末 に添 え てあ るも の であ る。 それ で ﹁犬 追 物 之 次 第 ﹂ が当初 か ら 現在 のよう な構 成 で成 立 し てあ 。 こと. し 伝 書 の慣 習 か ら 言 って、 い の類 は 、 あ る伝 書 が乾 の巻 と 坤 の巻 と か 、上 巻 ・中 巻 ・下 巻と かと 複 数 に分 冊され るば. 検 見 上 巻之 事 ﹂ だ け に添 えられ たも のと も 考 え ら れ そう であ る。 し か 全 てを 含 む も のと し て添 え ら れ たも のと も 、 ﹁. 葉 品 々之 事 ﹂ ﹁ 検 見 上 巻之 事 ﹂ の四項 目 の 作 法 之 事﹂ 喜 口 起 の事 ﹂ ﹁ ﹁検 見 上 巻 之 事 ﹂ の末 尾 に添 え てあ る奥 書 叩 は 、 ﹁. ら た め て 一書 と し て編 集 さ れ たも のな のか 、 と いう こと が問 題 にな る。 奥苦 の か ら は そ の解 答 を ひき 出 す こと は でき 。 な い。 二 つのば あ い のど ち ら と も 解 し う る か ら であ る。 し か し 奥 書 岬 の存在 意 義 は 奥書 のと は事 情 を 異 にす る こ の. (2イ.

(12) 犬 追 1勿 と犬 詞 との関係 につ いて の試論. 298(25). 相 当す るも の が添 え てあ った の であ ろう が、 ﹁ 犬 追 物 之 次 第 ﹂ の編集 の際 に それ を 削 除 し 、 別 に この伝書 の編集 意 図 と し て のの を 添 え たも のと 思 わ れ る。. 本 伝 書 の存 在 は 、 伝書 の編 集 の 一般 的あ り 方 を 考 え るば あ い、  一つの重 要 な方 式 を 示 すも のと し て記憶 せら れ る べ. きも の であ ろう 。そ の形 式 面 では、まず第 一に 日 録 と 本 文 の見 出 し と の対 応 不十 分 と いう こと があ る。 それも 形 式 的 に. は 目録 にあ る 項 目 が本 文 の見 出 し にあ るも のと な いも のと いう こと があ るし 、表 現 内 容 では両者 の表 現 に離 嬬 の見 ら. れ ると いう こと があ る。 次 に奥 書 い のば あ い のよ う に特 定 の巻 にだけ あ る種 の奥 書 ︵ 伝 書 独特 の表 現内容 のも の︶ が. あ ると いう 不 統 一の見 ら れ ると いう こと であ る。 ま た、 項 目名 にも ﹁ 検 見 故 実 之 事 ﹂ のよ う に故 実 を 内容 と す る事 項. の合 ま れ る こと は注 意 を 要 す る。 これ は検 見 に つい て の諸 方 式 が定 ま って以来 時 日を 経 た のち そ の方 式 の解 釈 等 に つ. い て混 乱 の生 じ た時 、 古 例 を 求 め て拠り 所 と す べき も のを 考 証 す ると いう観 点 に立 つも の であ る。武 家 礼 式 で故 実 が. 主と し て論 じ ら れ る のは 一般 に それ の慣行 化 の十 分 に実 現し て のち の こと であ る。 私 の手 控 え に京 都 家 の各 人 の伝 授. し た伝 書 名 の 一覧 を 作 成 し てあ る が、現在 ま で の調 査 範 囲 では 犬 追 物 関係 の伝 書 に故 実 を 標 榜 し たも のを見 出 す こと. は でき な か った 。本 書 の こ の事 項 のあ る こと は 、 そ の原 拠 ・編者 等 の検 討 を めぐ って、 今 後 再 吟 味 す べき こと の多 い こと を 示 す も のと 私 は自 戒 し て いる。. 本 書 で特 に重 要 視 す べき こと は ﹁ 言葉 品 々之 事 ﹂ に関 し て であ る。私 の主 題 は こ の類 にま つわ るも の であ る。私 の. 調 査 の範 囲 では 、 こ の ﹁言葉 品 々之事 ﹂と 同様 に 大 追 物 に関 す る特 殊 用語 を集 め た 単 語 集 の類 が数種 あ る。 そ のほか. に犬追 物 に関 し そ の表 記 の指 導 を 意 図し た ﹁ 文 字 集 ﹂ の類 も 数種 あ る。 それ ら がど のよう な史 的 背景 の中 で創 案 さ れ. 伝授 さ れ た か を 追 跡 し てみ た いと いう のが 、 私 の主 た るね ら い であ る。 これ に類 す るも のと し て、 私 は今 兵 法 学 の伝. 書 に関 し て これ と 同様 の現象 の見 られ る こと を 報 告 し つ つあ る。 即ち古式 兵 法 の ﹁訓 閲集 ﹂ に つい て、小 笠原 氏 隆 伝. 上 泉 信 綱 系 の伝 書 群 に は 伝 書 ﹁文字相 伝﹂ があ り 、 同 じく 氏 隆 伝 岡本 半 介 系 に は 伝 書 ﹁ 軍 敗 文 字 ﹂ があ る。 上泉 の.

(13) (26)297 雄 田 勇 島. 軍 敗文 字 ﹂ は文 字 指 導 か ﹁文 字 相 伝 ﹂ は ほと んど 文 字 指 導 に終 始 す る の であ る が、上 泉 より や や後 の人岡本 半 介 の ﹁. ら 語 彙 指 導 に展 開 す る過 渡 的様 相 を 示 すも の であ る。 そ の岡本 半 介 か ら 甲州流祖 小 幡 景 憲 は ﹁訓閲 集 ﹂ に つい て伝 授. 、 を 受 け る が、 そ の小幡 の指 導 のも と に成立 し た ﹁軍 鑑 挙 要 ﹂ では 、 す でに文字指 導 に関 す るも のは抹 殺 さ れ 語彙 指. 導 に関 す るも のだ け が浮 上 し て い る。 それと 同 じ こと は 、 上 泉 信 綱 の上 泉 流 の後 の伝書 にも 現 わ れ 、初 期 の伝書 には. 陣 言 ﹂ が浮 文 字 相 伝﹂ が行 な わ れ る が 、後 の兵 学 体 系 では文 字 に関 す るも のは抹 殺 され 、語 彙 指 導 と し ての伝書 ﹁ ﹁. 。 上 し てく る。 そ のよう に、 兵 法 学 に お い ては 、文 字 指 導 か ら 語 彙指 導 へと いう史 的 推 移 が見 ら れ た わ け であ る この. 文 字 指 導 と 語 柔 指 導 と の関 係 は 放 鷹 にお い ても 、 庖 丁道 にお い ても 、 医学 にお い ても 、 同 様 にあ る いは類 似 し て認 め. 犬 追 物之 次 第 ﹂ ら れ た。 それ ら の こと を 含 みと し て犬 追 物 に お け る文 字 字 指 導 と 語 彙指 導と の関 連 に お い て、 この ﹁ に お け る ﹁言 葉 品 々之 事 ﹂ は 重 要 な 位 置 を占 め るも のと いう こと が でき る。. 、能 島 流 ・合武 三. 中 世 か ら近 世 に か け て の言 語指 導 は これら の兵 法 関 係 と 犬 追 物 関 係 と のみに限 ら れ る わ け ではな い。 兵 法学 と の関. 係 か ら 、 お そら く そ の学 的 影 響 に よ るも のと 思 わ れ る が、水 軍 関 係 でも 舟 言葉 の指 導 が 盛 ん になり. 島 流 等 の伝 書 に舟 言 葉 集 が納 め ら れ る こと に な る。 兵 法 学 を受 け た軍 礼 家 、あ る いは諸 礼 家 の軍 礼 関 係 伝書 にも それ. が 現 わ れ 、 小 笠 原 流 庶 流 系 の小 池 貞 成 ・水島 之 成 ・伊 藤 幸 氏 ら の編 纂 し た伝書 に言 語 関 係 のも のが多 出 す る。 な お 弓. 道 の歩 射 関 係 に お い ても 、 弓 の惣 名 そ の他 の用 語 解 説 が編纂 さ れ 、 それ は のち にな る ほ ど 細 説 され る。 ま た放 鷹 ・鹿. 狩 等 の狩猟 関 係 の伝書 にも 文 字 や 用 語 に関 す る指 導 書 が多 出 す るし 、 庖 丁道等 にお い ても そ の こと は 同様 に見 ら れ 、.   一字 銘 等 の文 字 指 導 や 異名 集 等 の用語集 の編纂 も 行 な わ れ て いるし 、本 草学 か 本 草 学 のよう な学 的 領 域 に お い ても 、. ら 主 と し て物 と 名 と の関 係 を 論 じ る名 物学 の独 立 し た こと に つい ても 述 べた こと があ る。 仏教 学 に お い ても 各 宗 派 の. 用 語 集 が多 数 著 述 さ れ 、時 に は 用 語 索 引 の類 ま で編 纂 さ れ た こと に つい ても 既述 し た。 連 歌 に おけ る新在 家 文 字 に つ. い ては 、 か つて山 田孝 雄 博 士 が述 べら れ た。 た だ 連 歌 に おけ る 用 語 の研 究 が、従来 と か く 国 語 学 史 に お い て実 作 上 の.

(14) 犬追物 と大詞 との関係につ いての試論 29δ (27). 必 要 にせま ら れ た 研 究 と のみ説 明 さ れ てき て、 和 歌 に お け る類 似 の研 究 と の相 互 関 係 に つい て見 落 さ れ てき た のは 、. 不 十 分 な処 置 と 考 えざ るを えな い。 まし て連 歌 に お け る そ のよう な 研 究 を 、連 歌 と いう世 界 で の特 殊 性 と いう こと だ. け に限 定 し て、 それ を 私 の以上 に述 べた よう なも ろも ろ の集 団社 会 に共 通 す る 一種 の学 的 傾向 と し て把 え な か った の. は 、 論 者 の視 座 の狭 さ を 意 味 す るも ののよう に思 わ れ る。中 世 か ら 近 世 にかけ て、各 界 の指 導 者 層 は そ の指 導内容 の. 体 系 化 を 考 え る中 で、 そ の言 語 的指 導 の必要 を 痛 感 し 、 それ を ど う 組 織 的 に構 築 す る か に腐 心 し た の であ る。 そ の結. 果 と し て、  それ ぞ れ の領 域 でほ ぼ 同 じよう に文 字 指 導 か ら 用 語指 導 へと指 導 が 展 開 し て い った の であ る 、と 考 えら れ る。. ﹁言 葉 品 々之 事 ﹂ に納 め る用 語 集 は、 主と し て犬 追 物 と いう 競 技 に必要 な、審 判 上 の判 定 に関 す る 用 語 を 集 めたも. の であ る。 これ を 相 撲 で言 えば 四 十 八手 の決 め手 に つい て の術 語 を 集 め た よう なも の であ る。 ただ 犬 追 物 の方 が競 技. に関 連 す る要 素 は 遥 か に複 離 であ る。と いう のは 、 こ の競 技 に関 係 す るも のに、 大 ・馬 ・射 手 ・弓 ・矢 があ り 、 それ. ぞ れ の行 動 ・動 作 等 に つい て厳 し い判定 基 準 が定 め ら れ てあり 、 そ のた め それ だ け 勝 負 の判 定 が複雑 であ り 多 岐 にわ. たり 厳 格 を極 め る。 そ のよ う な 複 離 多岐 に亘 る判 定 基 準 に対 応 し て、微 細 に用 語 が識 別 さ れ 命 名 され て いる。 検見 は. それ ら の基 準 に基 づ いて判 定 を 下 し 、 それ を 逐 一日記 付 に報 告 し 、 日記付 は それ を 一定 の様 式 で記 録 にと ど める。 即. ち 、 検 見 の職 責 は 単 に勝 負 の判 定 を 下す だ け では な く 、 判 定 の根 拠 o決 め手 を 明 ら か にし 、言 語 的 に明 確 に解 説 す る. 義 務 をも 担 う も の であ る。 検 見 には そ の道 に多 年 の練 達 の士 の選ば れ る のが常 であ る が、京 都 家 は そ の道 の師 範格 の. 家 柄 であ るた め 、時 に は未 練 の者 が選ば れ たり 経 験 不 十 分 の者 が選ば れ たり す る な ど の こと も あ って、 旅 用と し てか か る手 控 を 用 意 し て おく 必要 が感 じ られ た わけ であ ろ う 。. 旅 行 用と し て こ のよう な 用語 集 の編集 が必要 視 さ れ る こと も あ った ろう 、と いう のは 、奥 書 ② の存 在 を 含 みと す る. 推 測 であ る。 検 見 の故 実 も 、検 見 の判定 の基準 に つい て故 実 を 権威 あ るも のと し て求 め ると いう 発 想 か ら 提 出 され る.

(15) に至 ったも の であ ろ う し 、 それ ら のよ う に実 地 の必 要 上 か ら 著 作 さ れ たも のが この種 の旅 行 用 伝 書 の中 に納 めら れ る.  一面 、近 世 の庶 流 系 の水 島 之 成 や伊藤 幸氏 ら の編者 に は故 実 の研 究 それ自 こと にな ったも のも 当 然 あ る わ け であ る 。. じ て旅 行 用 の用 語 集 の編 集 にま で進 展 す る契 機 は十 分 あ った し 、 ま た他 面 のち の研 究者 が ﹁犬 詞﹂ のご と き も の の編. 判 定 に必要 な 用 語 を 多 数 列挙 し て解 説 す る箇 所 を 数 多 く 摘 出 す る こと が でき る。 それ ら の記 事 か ら 、時 には 必要 に応. のご と き は それ の 一例 と 考 え る こと が でき る であ ろ う 。 犬 追 物 の伝書 、 こと に検 見 に関 す る 伝 書 を 調 査 し て み ると 、. 編 成 さ れ る過 程 で発 生 し たも の であ る 、大 追 物 の用 語 集 に ついても 、 それ に同 じく 用 語 の特 殊 性 に着 目し て全 く の言 ︲ 犬 追 物 類 鏡 ﹂ に おけ る ﹁犬 詞﹂ 語 的 関 心 か ら 大 追 物 用 語 の採 集 を 行 な う と いう こと も あ る は ず であ る。 伊 勢貞丈 の ﹁. 古 実 集 ﹂ ﹁古 実 抜 糸 ﹂ ﹁ 雑 学 集 ﹂ 等 が多 数 編著 さ れ た。 諸 礼 が歴史 学 の要 素 を 加 え て学 的 に再 体 を 対 象 にし た 伝 書 、 ﹁. (28)295. 編 著 さ れ た の であ ろ う と 推 定 し て いる が 、も し そう な ら 、 兵 学 上 の伝書 等 と比 較 し て そ の成 立 期 は若 千 早 いと せねば. は 今 後 の問 題 と し て 、 葉 品 々之 事 ﹂ は 必要 か ら中 世 末 頃 に   一般 的 に は 以 上 のよ う な こと が考 え ら れ る の であ る 。 喜 口. 葉 品 々之 事 ﹂ の原 典 が実際 上 はど ち ら の契 機 に よ って成 立 し たか 集 の着 想 を 得 る契 機 も 十 分 あ った わ け であ る。 喜 口. 田 勇 雄. 家 元制 の中 で、 各 流 派 の指 導 内 容 も それ に似 て いる の であ ろう 。 それ ぞ れ の流 派 の指 導 上 の理念 ・体 系 ・術 語 と いう. る。 そ の こと は 慣 行 と 言 えば それ ま で であ る。 そ の慣 行 の背 景 にあ る意 識 に差 違 があ る か ら であ ろう。 現在 の芸能 の. か し 同 じ く近 世 でも 平 兵 衛 家 の伝書 に は 伝 承 は され た か も 知 れ な いが伝 書 に編者 名 を 記 載 す る こと はな い よ う で あ. 同 じ う す る こと も あ る が、水 島 之 成 や 伊 藤 幸 氏 の編 著 では な んら か の方 法 で編者 を 明 ら か にし てあ る こと が多 い。 し. ら が誰 に よ って編 著 さ れ たも のか に ついて そ の記述 を 欠 く のが中 世 の こ の種 の伝書 の常 であ る。 近 世 でも 若 千 事情 を. す る点 であ る。 同 一の伝書 が異 る年 月 に異 る人 によ って伝 授 さ れ た こと は奥書 など で知 ら れ るば あ いが多 いが、 それ. この ﹁ 犬 追 物 之 次 第 ﹂ に限 ら ず 延 宝 献 上 本 一般 に 、 それ ぞれ の伝書 に ついてそ の編者 名 を 挙 げ な い こと も 留 意 を要. な ら ぬ。 そ の こと を 考 慮 に入れ て、 こ の成 立 期 に つい ても 再 検 討 を要 す ると考 え て いる わけ であ る。. 島.

(16) 犬 追物 と犬 詞 との関 係 につ いての 試論 29イ (29). も のに つい て解 説 さ れ 、 そ の流 派 の特 徴 など に ついても 解 説 さ れ る こと であ ろう。 し かし 芸 能 の領 域 で の指 導 は それ. ま で で、 それ 以 上 に、 当 面 し て いる よう な 伝書 の書 誌 的 ・歴 史 的 解 明 と いう こと は 、別 の文 化 史 ・歴史 学 の領 域 と さ. れ る の であ ろう 。 そ の こと は 、 大 追 物 の伝書 に ついても 同様 で、京 都家 でも 総 領家 でも 平 兵 衛家 でも 、 そ の伝 系 に つ. い て触 れ て自 派 の伝 書 であ る こと の証明 はす る が、 あ え て それ 以 上 に編 著 者 に ついて明 ら か にし よ う と はし な い。 主. と し て近 世 に活 躍 す る平 兵 衛 家 が そ のよ う な姿 勢 を守 って いる のに対 し 、 同 じく近 世 には な ば な し い活 躍を 行 な った. 彼 ら は そ の編 著 者 名 を 顕示 す る 庶 流 系 、こと に水 島 之 成 の系 列 は それと は著 し く対 照的 な姿 勢 を 次 第 に明 ら か にす る 。. 傾向 を 次 第 に明 ら か にす る。 い って みれ ば 、小 笠 原家 の人 び と が小 笠原 家 一門 の集 団 の中 に埋 没 し そ の こと に よ って. 自 己 を 権 威 づけ よ うと し た のに対 し 、水 島 之 成 ら は小 笠原 流 の門 下 と いう こと は 一応 の拠 り 所 と し な がら 、 そ の研 究. 業 績 と し て の伝 書 に ついては著 述者 を明 確 にす る こと に よ って小 笠原家 離 れ を宣 言 し 、著 者 独自 の業 績 であ る こと を. 顕 示 す る方 法 を 採 った。 それ は小 笠原家 者 の認 識 が そ の伝 授 事 項 に ついて芸 能 と 同様 の習 い事 と し て の認 識 以 上 を持. た な か った のに対 し 、水 島 之 成 ら は そ の指 導 内容 に ついて学 問 上 の指 導 と いう認 識 を 次 第 に高 め て いき つつあ った か. ら であ る。 水 島 之 成 ら の諸 礼 は 、も とも と礼 法 と とも に それ に た ち きり 難 く 結合 し た知 的教 養 の指 導 を 行 な い、次 第. に後 者 の比 重 を 重 点 化 す る こと に よ って、自 派 の指 導 理念 を 日本 的教 養学 に高 め て いく 傾向 にあ った か ら であ る。. と ころ で、 以 下 では ﹁犬 追 物 之 次 第﹂ に説 か れ る各 大 項 目 に ついて、 そ の成 立 に関 連 し て同事 項 を 対 象 と す る単 元. 犬 追 物 起之 事 ﹂ と ﹁同 作 法 之 事 ﹂と では 、 これ 的 専 攻 的 な 伝書 と の関 係 に ついて注 目す る こと にし た い。 ま ず 初 め の ﹁. ら だ け に は本 文 に見 出 し の付 いてな いこと に留意 せねば な ら ぬ。 犬 追 物 の起 源 だけ を 内容 と す る伝 書 は数種 あ る が、. 作法 ﹂ と い ﹁ 犬 追 物 作 法 之 事 ﹂ と いう 題 名 ま た は類 似 の題 名 を持 つ伝 書 は 見 ら れ な い。 それ は犬 追 物 関 係 に ついて ﹁. 躾 と と いう 用 語 が近 世 にも 用 いら れ 仕付 け ︵ う 概 念 は本 来 は使 用 さ れ な か った た め であ ろう と 思 わ れ るc 諸 礼 では ﹁. 作 法 ﹂ と いう 用語 作 法 ﹂ は これ より 以前 から 用 いら れ て いた の で、武 家 礼 式 にお け る ﹁ た。 も っと も 単 語 と し て の ﹁.

(17) (3θ )293. 雄 勇 田 島. に つい て は 再 考 し よ う と 思 う 。  いず れ にし ても ﹁ 作 法 ﹂ と いう 用 語 が武 家礼 式 にも 導 入さ れ た こと にま ち が いは な. く 、今 では諸 礼 を こ の語 で表 わ し て いる の であ る。 と ころ で ﹁ 起 之 事﹂ と ﹁ 作 法 之 事 ﹂ と には本 文 に見 出 し がな く 、. 形 式 的 に は 両 事 項 の本 文 は 連 続 し て いる。 それ に それ ら の内 容 量 は少 な い。 し か し次 の ﹁ 言 葉 品 々之 事 ﹂ には見 出 し. が あ って、 そ の事 項 と 前 の両 事 項 と を 切 断 し て いる。 それ ら の こと から し て、前 の両 項 は本 来 連 続 す るも の であ り 、. お そら く ﹁ 言 葉 品 々之 事 ﹂ と は原 拠 を 異 にす るも の であ った ろ う と 思 わ れ る。 前 の両 項 だ け で 一つの伝書 を形 成 す る. に は 、 量 的 にも 内 容 的 にも ふさ わし く な いよ う に思 わ れ る の で、 そ の両 項 は や や総論 的 に構 成 さ れ て多 数 の項 目 を持. つ伝 書 か ら 任 意 に右 の 二項 目を 抜 き 取 ってき たも の であ ろう と 思 わ れ る。 そ のも と にな った伝 書 は 目下 の所 つき と め て いな い。. ﹁ 言 葉 品 々之 事 ﹂ の項 に つい ても 同様 にど れ か の伝書 か ら そ の項 を 抜 き 取 ってき たも のか と 思 って いる。 あ る いは. そ の事 だ け を 内 容 と す る単 独 の伝書 が作 ら れ てあ った かも 知 れ な いとも 考 え る が、 日下 の所 そ のよ う な 伝書 にめ ぐ り. あ え て いな い。 む し ろ 、 そ のよ う な外 題 を 持 つ伝書 は な いよ う に思 わ れ る。 た だ私 の調 査 では 、 古 伝 書 を継 承 し た か. と 思 わ れ るも の で、 これ と 同様 の用 語 集 が他 にも 二三 あ る の で、 それ ら の用語 集 の共 同祖 系 と し て の伝書 の存在 を 考 慮 し ても 差 支 え な いと 思 う の であ る。. 次 に、 ﹁検 見 上 下 巻 之 事 ﹂ は 四 つの項 目を 含 ん で いる。 犬 追 物 関 係 の伝書 のう ち に検 見 に関 す るも のは数多 いが、. そ れ ら のう ち にも 右 の 一つ 一つの項 目 に正確 に対 応 す る 伝 書 を 探 し て いる が、 伝書 名 本 位 にす れ ば う ま く いか な い。. こ の上 下 の巻 に つい て は 、 既 に述 べた よ う に ﹁ 上 巻﹂ に は 三 項 目を納 め る が、 そ の巻 末 に奥 書 m を 持 って いた。 そ の. こと か ら ﹁犬 追 物 之 次 第 ﹂ が 編集 さ れ る以 前 、 既 に ﹁ 検 見 上 巻﹂ と ﹁同 下 巻﹂ と が成 立 し て いた であ ろう 、と いう こ. と は 既 に述 べたご と く であ る。 そ の上 下 巻 の編 集 され る 以 前 にま でさ か のぼると 、 あ る いは 四 つの単 独 伝書 があ った. か も 知 れ な いが 、 それ に ふ さ わ し い単 独 伝書 は 目下 の所 発 見 でき な い。 既述 のよう に故 実 を 内 容 と す る伝書 は中 世 の.

(18) 犬追物 と犬詞 との関係についての試論 ). 292(3ゴ. 終 り 頃 のも のか とも 考 えら れ る の で、単 独伝書 があ ったと し ても 、時 代 的 には後 のも の であ ろう 。 も し こ の ﹁検 見 上. 下 巻 ﹂ が新 し く 編集 され た と す る な ら、 そ の編集 時 期 は いず れ に せ よ さ し て古 く はな いはず であ る。. 延 宝献 上 本 の大追 物 の伝 書 は 、性 格 の相 違 す る 三種 の伝書 によ って構 成 さ れ ると いう方 式 を 取 る。 そ の中 核 的 な ﹁ 犬. 追 物 之 次 第 ﹂ は 奥 書 の で示 さ れ る よう に旅 行 用 にま と め た各 種 の重 要 事 項 の手 控 と し て の性 格 を 備 え るも の であ る。. それ も 検 見 のよう な 最も 重 要 な 役 種 を勤 め る者 の観 点 から 、大 追 物 と いう 競 技 の中 で決 定 的役種 と し て の検 見 にと っ. て最 も 根 幹 的 知 識 と す べき も の の中 特 に重 要 な事 項 を 抜 き 出 し て集 め たも の、と いう のが本 書 の性 格 であ る。本 書 の. 焦 点 が検 見 に置 か れ てあ る と いう こと は 、小 笠原 家 が犬追 物 と いう 競 技 の中 で永 年 にわ た って占 め続 け てき た 地 位 を 最も 端 的 に示 す も のと言 う こと が でき る であ ろう 。 国   延 宝 献 上本 の ﹁犬 追 物 秘伝之 書 ﹂. ﹁犬 追 物 秘 伝 之 書 ﹂ は大 追 物 二 部 作 の最 後 の書 と され るも の で、 それ ら が小 笠 原 家 の秘伝 の書 に よ って構 成 さ れ た. こと が書 名 か ら 知 ら れ 、 そ のよ う な 秘伝書 を 二部 作 中 の第 二番 目 に当 た る本 書 に集 め ると ころ に編者 の意 図 のあ る こ. と が知 ら れ る の であ る。 そ の ﹁犬 追 物秘 伝之 書 ﹂ の内容 は次 のご と く であ る。形 式 的 には上 中 下 の三巻 より 成 り 、各. 巻 に収容 す る伝 書 は本 文 部 に見 出 し で示 し てあ る。 それ ら の見 出 し を 括 弧 の中 に入 れ て示 せば 、次 のよう にな る。 犬追 物 秘 伝之 書  上 ︵ 騎 射 秘 抄序 、大追 物 射 手 条 々。 犬 追 物 日記 。 犬 追 物 射 手 具 ス ヘキ次 第 ︶ 犬 追 物 秘 伝 之 書  中 ︵ 犬 追 物 初 心 之 射 手 可 心 得 次 第︶ 犬 追 物 秘 伝之 書   下. ︵ 犬 追 物 矢代 打 振 之 次 第 。 犬 追物 検 見 条 々、 二騎 検 見 之 事 、 射 手 検 見 之 事 。 犬 追 物 カ イ ソ ヘノ事 ︶.

(19) (32)29ゴ 島 田 勇 雄. ﹁騎 射 秘抄 ﹂ は 京 都 家 にと って最 も 重 要 な伝 書 の 一つであ る。 武 家 礼 式 一般 に ついて の京 都 家 の伝 書 では 満 長 以来. のも のが現存 し 、 それ をも っても 、 小 笠原 家 全 般 と し ては京 都家 の満 長 の頃から武 家 礼 式 の世 界 におけ る活 動 が始 ま. るも の であ ろう と 考 えら れ る が 、 ﹁ 騎 射 秘 抄 ﹂ に つい ては そ の満 長 の署 名 入り の最 高 級 の善本 が尊 経 閣 文 庫 に現存 す. る 。 同文 庫 には こ のほか にも ﹁騎 射 秘 抄 ﹂ の最 高 級 の善本 が多 数 現 存 し 、 たと えば 満 長 の応永 二三年 四月 五 日付 の署. 名 入 り 、浄 元 では文 安 四年 四 月 付 彦 五郎 宛 のも のと 宝徳 元年 一 一月 二 日付 の自 筆 伝 書 、 元長 の延徳 四年 八月 二九 日付. 赤 松 左 京 太夫 宛 のも の、政清 の文 明 九 年 六 月 二五 日付 のも の、植 盛 の自 筆 、清 連 の文 亀 三年 二月 二 日付 の自 筆 な ど で. あ る。 そ のほか では 、 元長 の長 享 二年 六 月 二三 日付 平 賀 蔵 人宛 のも の が静 嘉堂文 庫 にあり 、 宮内 庁 書 陵 部 に は 伊勢 貞. 丈 の校 合 し た 一本 が 現存 す る 。 延 宝 献 上本 では 巻末 に、 喜子徳 三年 八月 二 日  民部少 輔持 清 在 判 ﹂ と あ る。.   こ の種 の 伝書 には 珍 ら しく 漢文 の 序 文 が付 いて いる にも か か わ ら こ のよう に満 長 以来 の伝 書 が多 数 現存 す るし 、. ず 、 そ の編著 者 名 は 明 ら か では な い。 本 書 がな ぜ漢 文 の序 文 を持 つのか な ど本 書 に ついては再 吟 味 を 要 す る こと が多. 数 あ る よう に思 わ れ る。 とも あ れ 、 本 書 を 秘伝 書 群 の第 一に位 置 せ し め る こと は 、小 笠 原 流京 都家 系 の指 導 を受 け た 者 にと っては 、 き わ め て自 明 な 判 定 であ る。.   日記 は記 録 で、 犬追 物 の競 技 に関 し て各種 次 に、 ﹁ 犬 追 物 日記 ﹂ には同 名 の伝 書 が多 く 、 内 容 的 には種 類 が多 い。. の記 録 を 記 載 し たも のが 日記 であ り 、 そ の記 録 は多 方 面 にわ た る た め 、 日記 にも 内容 上 多方 面 に分 れ る。 それ ら は 副. 題 で示 さ れ る こと が多 いが、 それ に は 、上 覧 記 ・弓 手 押 戻 。弱押 戻 ・三 匹勝貨 ・縄 四矢 所 ・十文 字 ・進 向 弓 手 ・検 見. 事 な ど の副 題 を 持 つも のがあ る 。 副 題 を持 た ぬも の で京 都 家 によ る伝 書 では、伝 授 者 に持 清 ・持 長 ・元長 ・政 清 ・元. 清 ・光 清 ・清 連 ・政 幸 ら の名 を 持 つ 一級 品 が現存 す る。 小 笠原 家 以 外 のも のでは 、 伊勢家 伝 ・伊 勢 貞 頼 ・武 田元信 ・ 武 田元光 ・滋 野 入 道 ら によ る伝 書 が 現 存 す るc. 延 宝 献 上 本 の ﹁犬 追 物 日記 ﹂ は 一名 ﹁犬 追 物 日記 勢 鏡 ﹂ と 呼ば れ るも の で、例 に よ って著者 関係 は定 か でな い。 彰.

(20) る。 伊 勢 貞 親 と多 賀 高 忠 と は同 じく 八代 将 軍 義 政 の頃 の人 で持 清 の門 弟 であ る。 も し右 の伝 書 が、 ﹁ 犬追物初 心之 者.  それ ら は広 義 の京 都 家 系 の伝 承者 に入れ る べき も の であ 田家 ︶・伊 勢 貞 親 ・多 賀 高 忠 ら は いず れも 京 都 家 の門 弟 で、. 伊 勢家 伝 ︶・﹁ 犬 追 物 初 心書 ﹂ ︵ 不明 ︶ な ど が あ る。 それ ら の伝 者 で、武 田家 ︵ ︵ 多 賀 高 忠 ︶二 犬 追 物 初 心 記﹂ ︵ 若 州武. 犬 追 物 射 手 初 心覚 悟 条 々﹂ ︵ 伊 勢貞 親 ︶ が あ るし 、 関 連 の書 に、 ﹁ 町時 代 、 彰孝 館 、武 田家 伝来 Y ﹁ 犬 追物 初 心 抄 ﹂. ︲ 犬 追 物 初 心射 手可 相 嗜 条 々﹂ ︵ る 人 の伝 書 一覧 の中 に は見 出 せな い。私 の手 控 では 、類 似 の題名 を持 つ伝 書 には 、 一 室. の多 く の伝 書 は いわば か なり の専 門 家 に対 す る伝 書 と い った趣 の物 が多 く 、 特 に初 心者 向 け を 標 榜 す る伝書 は名 だ た. あ ろ う 。 た だ 京 都 家 のう ち 、誰 の創 案 にな るも のか 、 と な ると 、 現在 の私 の調 査 の段 階 では 明 ら か でな い。 京 都 家 系. 説 書 の 一つであ るc これ は ﹁犬追 物 初 心者 可 心得 書 ﹂ ︵ 小 笠 原家 伝 ︶と 同 系 統 のも の で、京 都 家 の伝書 と す べき も の で. 犬追 物 初 心 之 射 手 可 心得 次第 ﹂ で、 次 に延 宝献 上本 の ﹁犬 追 物 秘伝 之 書   中 ﹂ に所 収 の伝 書 は 、 ﹁ 初 心者 に対 す る解. ﹁ 初 心之 者 可 心得 事 ﹂ の伝 書 名 の方 が古 い の では な か ろう か とも 思 われ る 。. 伝 書 であ る が 、 これ では ﹁犬 追 物初 心之 者 可 心 得 ﹂ の見 出 し にな って いる 。 同名 の単 独伝 書 は永 青文 庫 に数 部 あ る 。. 犬 追 物 秘伝 之 書 ﹂ に ほぼ近 い項 目を 持 つ 蓬 左文 庫 ︶ は ﹁騎 射 秘抄 ﹂ そ の他 の伝 書 に よ って編 集 され たも の で、 ﹁ 抄﹂︵. 内 閣 文 庫 ・蓬 左 文 庫 ︶ な ど があ る。 ﹁ 犬追 物 騎 射 秘 同︶ や 、 ﹁ 犬追 物 之 時 射 手 具 足 之 事 ﹂ ︵ 犬 追 物時 射 手 具 足 ﹂ ︵ や、 ﹁. 伊勢貞丈 校 、 同 ︶ 犬 追 物 射 手可 具 足 次第 ﹂ ︵ 犬追 物 射 手 可 具 足 事 ﹂ ︵宮内 庁 書 陵 部 ︶や ﹁ 持 つ単 独 伝 書 には 、 元長 伝 の ﹁. 射 手 具 足 ス ヘキ次 第 ﹂ も 本 来 も と 単 独 の伝書 に基 づく も の であ ろう 。 同名も し く は類 名 を の で、第 二項 目 に当 た る ﹁. 次 に、 ﹁ 騎 射 秘抄 ﹂ と ﹁ 犬追 物 日記﹂ と は単 独 の伝 書 な 犬 追 物 射 手 具 足 ス ヘキ次 第 ﹂ は 上 巻中 の第 二項 目 であ る。 ﹁. であ る。 検 見 にと って高 度 な 技 術水 準 を示 す も の であ り 、 お そら く類 書 の続 出 の起 源 にも な ったも のと 思 わ れ る。. と し て被 射体 と し て の大 に対 し 射手 の射付 け た矢 に ついて良 否を 判定 す る上 で の注 意 事 項 を 図解 をも って示 し たも の. 考 館 本 は文 禄 元年 の書 写 な の で、本 書 が中 世 に行 な わ れ て いた こと は明 ら か であ る。 本 書 は検 見 に関 す るも の で、 主. 犬 追物 と犬 詞 との関係 につ いての試論 29θ (33).

(21) 可 心 得 書 ﹂ と ど のよ う な 関 係 にあ るか 、 な ど と の関 係 をも 含 め て初 心者 用 の伝 書 の成 立 と いう 、 大 追 物 研 究 史 の上 で. 興 味 あ る 問 題 を 提 起 す る こと にな る であ ろ う 。 お そら く それ は 大 追 物 と いう競 技 が、 従来 より 遥 か に広 い層 に拡 大 し. よ う と いう 傾向 にあ った こと を 意 味 す るも の であ った ろう 。 伊 勢貞 親 は応 仁 の乱 を 巻 き 起 し てあ わ てて近 江 の国 へ逃. 亡 し た 当 の本 人 であ り 、多 賀 高忠 は身 は近 江 の国 の半 国 守 護 京 極 家 の被 官 であり な がら 、応 仁 の乱 では東 軍 側 の最 大 の. 実 力 者 であ った。 乱 中 の つれ づ れ に大 追 物 がも よ お さ れ た こと は初 め に述 べた が、東 軍 側 には多 賀 高忠 のほか若 州武 祀 田家 の武 田信 光 ら の京 都 家 の門 弟 の 一団 が い て、戦 力 の中 心 にな って いた こぁ そ こ で犬 追 物 の催 し のあ る こと は 地. 方 出 の武 士 の興 味 を 大 いに そ そ った であ ろ う こと が考 えら れ 、 それ が初 心者 用 の伝 書 の創案 の動 機 にな った かも 知 れ. な いと 考 え ら れ る。 応 仁 の乱 は都市 文 化 の地 方 伝 播 に重 要 な 職 務 を 担 った が、 そ の中 に各種 の武 家 故 実 があり 、 そ の. 一つに大 追 物 関 係 があ った と 考 え てみ た いわ け であ る。 そ の こと は単 な る推 定 では な い。 地方 の有 力者 を対 象 にし た. 伝 書 が 多 く 現 存 す る し 、 た と えば ﹁ 山 名 家 犬 追 物 記 ﹂ な ど と 独 自 の家 伝 を 装 う 伝 書 が行 な わ れ て いる が、実 は それ が. ま ず 第 一項 目 の ﹁犬 追 物 矢代 打 振 之 次 第 ﹂ であ る が、 私 の調 査 では同名 の単 元的伝 書 は 現存 し な い。 あ る いは 同 一. 文 庫 ・小 笠 原 伝 書 目 録 ︶ に納 めら れ てあ る 。. 明 確 にし え て いな い。 こ のう ち 、 ﹁ 蓬左 犬 追 物 検 見 条 々﹂ コ 一 騎 検 見 之 事 ﹂ ﹁犬 追 物 介 副之 事 ﹂ は ﹁犬 追 物 騎 射 秘抄 ﹂ ︵. 複 数 の項 目 を持 つ伝 書 より の抜 き 取 り に基 づ く も の であ ろ う と 思 われ る。 この 二項 目 の原 典 に ついては 、 日下 の所 は. 項 目 は 後 述 す る よう に ﹁犬 追 物 検 見 記 ﹂ よ り 書 き 抜 いた 項 目 であ る。第 一と第 五と の 二項 目 は単 独 の伝 書 、も し く は. 次 に 延 宝 献 上 本 の ﹁犬 追 物 秘 伝書   下 ﹂ の構 成 であ る。 それ は 五項 目 より成 る が 、 そ のう ち第 二 ・第 二 ・第 四 の三. 笠 原 流 伝 書 ︶ に納 めら れ て いる。. 独 自 性 を 僣 称 し たも の にす ぎ な い ので あ る 。  な お ﹁ 蓬 左 文庫 ・小 犬 追 物 初 心 之者 可 心得 事﹂ は ﹁ 犬 追 物 騎 射 秘抄 ﹂ ︵. 京 都 家 の伝 書 を 換 骨 奪 胎 し たも の であ る こと も 衆 知 の こと であ る。 これ ら は京 都 文 化 を 取 り 入 れ た地方 文 化 が、 そ の. (3イ )289. 雄 勇 田 島.

(22) 犬追物 と犬詞 との関係につ いての試論. 288(35). 矢 代 閣 手 拍 法 式 ﹂ があ る。 た だ それ ら と本 伝書 の第 一項 目と の相 互 矢代 之 巻﹂・﹁ 内容 のも のか と 思 わ れ るも の に、 ﹁. 関係 に ついて は 、 ま だ 調 査 を 行 な って いな い。 矢 代 振 り と いう のは こ の方 法 であ る 。 犬 追 物 では射 手 が 十 二騎 出場. し 、 六 騎 ず つ二組 に分 れ る。 そ の手 組は事前 に決 定 す る のが常 であ る が、時 に は事 前 に決 定 し な いで、当 日馬場 で各. 矢代 打 振 自 の矢 代 を 振 って それ で手 組 を 決 め る こと が あ る。 それ を矢 代 振 と い い、 そ の方 式 の順序 を 述 べたも のが ﹁. 之 次 第 ﹂ と いう こと にな る。 これ に関係 す る伝 書 に右 に挙 げ たも のがあ る が、 他 の大 追 物 の伝 書 の 一部分 に これ に関. し て述 べたも のがあ るか ど う か 、本 伝書 のそれ は ど れ に基 づ いたも のか に つい ては 、 ま だ 精 し く 調 査し て いな い。. 次 に、 以 下 の ﹁犬 追 物 検 見 条 々、 二騎 検見 之 事 、 射 手 検 見 之 事 ﹂ の三項 目は 、満 長 伝 の ﹁犬 追 物 検 見条 々﹂ に同 じ. 続 群 書 類 従 ﹂ では外 題 を ﹁犬追物 検見 記 ﹂ と し 、 そ の本 文 を 右 の二 つの見 出 し のも と に 三分 類 し てあ る。 それ い。 ﹁ は書 陵 部 の伊 勢 貞 丈 の校 合 本 に基 づくも のであ る が、次 の奥 書 を持 って いる。.  惟 判形 之 正本 也 。柳 不可 有 外 右 此 検 見 条 々者 。 多 賀 豊 後 守 高忠。 壬生 之 官江相 伝 之 物 也 。 然 元治 以自 筆 書 写 畢 。 見者也 。. 右 同 寺 之 書 也 貞丈云。同寺ト ハ右 ノ木 ヲ ハ八幡寺橘本坊 ニテ書 シ也。是又同寺 ニテ書卜云事也. 検 見 故 実 可 覚 悟 条 々﹂ の項を持 ち 、 最 後 に応永 二五年 八月 十 六 日興 元 な お ﹁続 群 書 類 従 ﹂ 本 は 、 こ のあと に更 に ﹁. 検 見 故 実 可覚 悟 条 々﹂ を 持 た な い のは 延宝献 上本 の原 典 の奥書 な ど を併 せ持 って いる。 延 宝献上本 のば あ い、 そ の ﹁. 続 群書 類 従 ﹂ 本 と 同 様 に そ の項 目を 加 え て四項 目 よ が そ のよ う な 形 式 であ った た め な のか、 それ と も そ の原 典 では ﹁. り な るも の であ った のに、本 伝 書 編集 の際 に そ の第 四 項 目を 除 いたも のな のか 、 それ ら の こと は判 明 し な い。 た だ 目. 続 群書 類 従 ﹂本 のも と にな った 多 賀 高忠 の相 伝 本 の本 文 に若 千 の疑 間 が あ るか と 考 え て いる。 それ は 下 の所 、 そ の ﹁. 犬 追 物 検見条 々﹂ の項 で、 同本 に ﹁一本 是 ヨリ以 下 下 ノ巻 ト ス﹂ と 細 字 で註 記 のあ る前 続 群 書 類 従 ﹂ 本 のう ち 、 ﹁ ﹁. 後 に、 同本 には 異 同 があ る。 即 ち上 巻 の最後 の小 項 目 の説 明 に増 補 があり 、 そ の増 補 の部 分 で文 脈 が混 乱し て いる。.

(23) 増 補 があ り 、 それ に ひき 続 い て 五 小 項 目 の増 補 が あ る。  それ ら の増 補 の部分 は、 ﹁ 検 見 条 々﹂ の項 で欠落 し て いるも. にま ぎ れ こん だも の であ る。 ま た ﹁ 射 手 検 見 事 ﹂ の項 目 では 、 ﹁ 続 群 書 類 従﹂ 本 に、   そ の 一小 項 目中 の本 文 の末 尾 に. ま た下 巻 では 巻 首 の六 小 項 目 が脱 落 し て いる。 実 は上 巻 末 の増 補 分 は 下 巻首 の脱落 項中 の本 文 が混 乱 し な がら上 巻末. )287. 以上 の分 析 は き わ め て不 備 で、 曖 昧 で、多 く の点 に未 解 決 な こと を 残 し て いる が 、 それ な り に概 括 す れば 、 延宝献. あ ろ う。. た と いう 流 派 内 伝 説 に立 つ文 献 な の で、 当 流 にと っては 不可 欠 の文 献 と いう べき も の で、採 録 は 当 然 と す べき な の で. 物 目安 ﹂ が 選 ば れ て いる。 それ は 犬 追 物 廃 止 論 が 出 さ れ たと き 、 反 対 説 とし て本 書 を 小 笠原 貞 宗 が後 醍 醐帝 に上 申 し. 以上 の外 に 、 小 笠 原 流 の大 追 物 にと って最 も 由 緒 あ る文 献 と し て、 ﹁ 御 軸物 ﹂ の中 に小 笠 原貞 宗 著 と され る ﹁ 犬追. 的 新 し いも の であ る べく 、 し た が って ﹁秘 伝 之 書 ﹂ も 全 体 的 には新 し いと いう こと にな る であ ろう 。. 測 のよう に京 都 家 系 の単 元 的 伝 書 に由来 す るも の であ ると す る な ら 、 この伝書 も 単 元 的 伝書 な の で、 そ の成 立 は比 較. 系 か らも 京 都 家 系 であ ろう と 思 わ れ る が、細 部 に ついては調 査 を 行 な って いな い。 ﹁ 秘 伝 之 書 ﹂ の第 五項 目 が私 の推. 之 書 ﹂ ︵伊 勢 家 伝 Y ﹁ 介 副類 ﹂ ︵ 内 閣 文 庫 ・﹁  これ ら は ほ ぼ 同 源 の伝 書 かと 思 われ る。 伝 類 衆 犬 追 物 ﹂ 所 収 ︶ があ り 、. ﹁秘伝 之 書   下﹂ にも も う 一項 目 ﹁ 犬 追 物 カ イ ソ ヘノ事 ﹂ と いう のがあ る。類 名 を 持 つ単 元的 伝 書 に ﹁ 犬追 物 介 添. は 、 お そら く 京 都 家 伝 の伝 書 に基 づ いたも のと 思 わ れ る。. 文 関 係 に つい て は 、 ま だ 調 査 を 行 な って いな い。 し か し 単 元的 伝 書 の存 在 が知 ら れ る と ころか ら 、 延宝献 上 本 の本 項. 館 にあ った が 、 戦 災 で焼失 。 ま た 内 閣 文 庫 の ﹁ 真 犬 追 物 並弓之 記 ﹂ 中 に そ の書 名 が見 え る。 これ と 延 宝献 上本 と の本. さ てこの ﹁ 検 見 故 実 可 覚 悟 条 々﹂ の項 に ついて 、 同名 の単 元的 伝 書 に応永 二五年 付 細 川満 元伝 の伝 書 が 旧浅 野 図書. のよう な 現象 が生 じ たも のと 思 わ れ る。 ﹁ 続 群 書 類 従 ﹂ 本 の本 文 は よく な いも のであ る 。. の であ る。 お そら く ﹁ 続 群 書 類 従 ﹂ 本 のも と にな った伝 書 で、 そ の伝 書 中 のあ る種 の部 分 がと じ 誤 り を 起 し た た め そ. (3δ. 島 田 勇 雄.

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