ヤママユガ科ガ類の生態に関する研究
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(2) 博士学位論文. ヤママユガ科ガ類の生態に関する研究. 平成 19 年. 3月. 近畿大学大学院 農学研究科 農学専攻(指導:櫻谷保之教授). 城 本 啓 子.
(3) (和文題目) ヤママユガ科ガ類の生態に関する研究. 近畿大学大学院 農学研究科 農学専攻 城本啓子 (指導:櫻谷保之教授). (英文題目) Ecological study on Saturniidae moths. Keiko Shiromoto. March, 2007. Graduate School University Division of Agricultural Science Major: Entomology (Advisor:Prof.Yasuyuki Sakuratani). Subnitted to the g raduate School, K inki Univer sity, to Fulfill the requ irement for the Doctorate Degree..
(4) 目 次. 第1章. 緒言. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1. 第2章. 材料. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4. 2-1 ヤママユガ科ガ類の分類学的位置. ・・・・・・・・・・・・・・・・4. 2-2 ヤママユガ科ガ類の生活史およびその概要. ・・・・・・・・・・・・6. 2-3 主な調査地の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10. 第3章. 食性とその地域的変異. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14. 3-1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 3-2 調査方法と調査地. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15. 3-3 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 3-4 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28. 第4章. 餌植物のフェノロジーおよび利用生息部位. ・・・・・・・・・・・32. 4-1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 4-2 調査方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 4-2-1 産卵部位調査 4-2-2 幼虫の摂食調査 4-2-3 シンジュサンの営繭位置調査 4-3 結果. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35. 4-3-1 産卵部位調査 4-3-2 幼虫の摂食調査 4-3-3 シンジュサンの営繭位置調査 4-1 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42. 第5章. ヤママユガ科ガ類のバイオマスの季節的変化. ・・・・・・・・・・44. 5-1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44.
(5) 5-2 調査方法および調査地 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 5-3 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 5-4 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48. 第6章. ヤママユガ科ガ類の幼虫の隠蔽効果と成虫の警告効果. ・・・・・・49. 6-1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 6-2 調査方法および調査地 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 6-2-1 被食調査 6-2-2 隠蔽効果と警告効果の画像解析 6-3 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52 6-3-1 被食調査 6-3-2 隠蔽効果と警告効果の画像解析 6-4 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57. 第7章. 総合考察. 引用文献. 謝辞. 要約 Summary. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64.
(6) 第1章 緒 言. 環境の時間変動性はしばしば好適な時期と不適な時期を繰り返す.日本のような温 帯では,季節の変化とともに環境の変化が大きく,夏や冬における気温,日長など物 理的な変動は多くの生物にとって大きな影響を及ぼす.特に変温動物である昆虫類の 生活史に及ぼす影響はきわめて大きい.環境の時間的変動性のもと,生物は生きのび るために様々な戦略を用いている(千葉, 1979 ) .環境の季節性に対する適応の結果, 越夏や越冬のような休眠性をもち(Tauber et al ., 1986 ;Danks, 1987 ;Hunter・ McNeil, 2000 ) ,季節変動の枠に合わせて生活史を組み立てている.こののようなサ イクルの中で1年間に繰り返す世代数は種や生息地域によって異なっており,温度環 境の違いにより年1化から2化へ世代数が変化する種もある.同種や同科内のガ類に おいても,休眠状態の違いや化性の違いがあることが知られていることからも,環境 の時間的変動や生息地の地理的条件といった空間的な条件が生物の生態に影響してい ると考えられる(正木, 1979) .なかでも,ガ類(幼虫・成虫)等のかなりの種の昆虫 類は種々の植物を利用しており, 分布は気象条件の他に植生に大きく依存している (大 崎・佐藤, 1993) . 本研究でとりあげるヤママユガ科ガ類は日本で 11 種分布しており,そのうちシン ジュサン・ヤママユ・ヒメヤママユ・クスサン・ウスタビガ・オナガミズアオ・オオ ミズアオはほぼ全国に分布し,広い分布範囲を持っている.南北に細長い日本列島で は植生がかなり異なり,ヤママユガ科ガ類でも地域によっては食性が異なる可能性が 高い.このような広い分布域のため,シンジュサンのように同じ種でも地域により化 性が異なる種もある.これらヤママユガ科ガ類は里山に生息する種が多く,主に幼虫 はブナ科 Fagaceae やカバノキ科 Betulaceae,ニレ科 Ulmaceae 植物を食べる. ヤママユガ科ガ類を含むガ類は日本に約 5000 種分布しており,チョウ類の約 20 倍 の種数である(杉, 2000) .アケビコノハ Adris tyrannus などのヤガ類(Noctuidae) の吸汁による果実の加害や(森他, 19 89;堀川他, 2005 )マツカレハ Dendrolimus. spectabilis やマイマイガ Lymantria d ispar といった森林などで大発生する種や (Kikuzawa ・ Furuno, 1968 ;1971 ;古田, 1976 ;北沢他, 1977 ),ドクガ類 Lymantriidae sp. やイラガ類 Limacodidae sp. など人間に対して,有毒ガ類や害虫と 1.
(7) しての研究報告は多く(古田, 1976;服部, 1965) ,ガ類には農業・園芸・衛生害虫と して知られている種が多い(梅谷・岡田,2003).一方,ヤママユのようにそのマユの絹 糸が産業に役立っている種もある(青木, 1986;木内, 1997;栗林, 1998;松香・梅谷, 1998) .また,チョウ類は環境指標としてよく利用されているが(桜谷・藤山, 1991; 石井, 1997;Kitahara・Fujii, 1994;近松他,2002;Inoue, 2003) ,ガ類においても一 部のカトカラ(ヤガ科 Catocala 属)や微小蛾類などを環境指標生物として利用され 始めている(吉田, 1983;Magurran, 1988;Ricketts et al., 2001;広渡, 2002;西尾, 2005) . 近年,里山の生物資源が見直され,さらに里山管理などが注目されている(守山, 1997;石井他, 1993;林, 1999;広木, 2002;中村, 2002) .低次消費者であるが,大 型のヤママユガ科ガ類は里山生態系の食物連鎖において大きな影響を及ぼすものと考 えられ,生態の把握は不可欠と思われる.ヤママユガ科ガ類においても,シンジュサ ン Samia cynt hia が宮城県の準絶滅危惧種や新潟県の絶滅の恐れのある地域個体群, ヤママユ A.yamamai は沖縄県の希少種,ヒメヤママユ Saturnia j onasii が大阪府・ 京都府の準絶滅危惧種に指定されているなどレッドデータ種として注目されている種 もある.そこで生物多様性の保全の基礎データとして,生息状況の把握は必要と思わ れる.一方,ガ類は野鳥類の餌として利用されており(桜谷, 2001;上田, 1995) ,生 態系において重要な地位を占めていると考えられる.今後,里山管理やビオトープ biotope の面,さらに未利用資源の開拓の面からこうしたガ類の生息状況の把握は重 要と思われる.しかし,食物連鎖など種間関係に関する研究はほとんどない. ヤママユガ科ガ類は広食性の種が多く,餌植物種に関しては様々な報告がされてい る (栗林, 1990;寺本, 2001).しかし,ヤママユの餌植物としてバラ科 Rosaceae のサ クラ Prunus sp.が記載されているが,野外における確実な寄生記録が無いなど,再 検討を必要とするものも多い.ヤママユなど飼養されているものは各種飼料樹の報告 がされているが(寺本, 2001;佐原他, 2001) ,野外における記録や,ヤママユ以外の 種の餌植物についての報告は多くない.そこで第3章では,日本産のヤママユガ科ガ 類数種について,各地での調査で新たに確認された野外の餌植物を中心に報告すると ともに,日本におけるヤママユガ科ガ類の既知食樹も含めこれらの類縁関係の考察も 行った. 2.
(8) 里山で薪炭木として利用されているクヌギ Quercus acutissima ・コナラ Q.. serrata のような落葉広葉樹は,春に萌芽し秋には落葉するサイクルをもつ(八田, 2002).このような植物のフェノロジーと昆虫の関係は様々な研究がなされている (Foggo, 1996;Steinbauer et al., 2004) .そこで第4章では餌植物のフェノロジーと 里山林を利用しているヤママユガ科ガ類の各幼虫・蛹などのステージでの利用の関係 の考察を行った. ヤママユガ科ガ類を中心としたバイオマスの流れを知るために,第 5 章では近畿大 学奈良キャンパス内に生息するヤママユガ科ガ類を対象に,化性といった1年におけ る世代数の違いが,バイオマス(生体重)の時間的スケールにおいてどのように反映 されているか解析を行った. また,これら低次消費者から高次消費者へのエネルギーの流れを知る上で,ヤママ ユガ科ガ類の被食状況を調べる必要がある.近年外灯による昆虫類の誘引が生態系の 撹乱などで問題になっている(小野,1964;1966;日本道路公団, 1984) .当キャンパ スにおいても外灯は多く,ヤママユガ科ガ類への影響も懸念される.そこで第 6 章に おいて,環境管理の面から,被食状態を調べるために外灯におけるヤママユガ科の誘 引状況や被食状況について調査・解析を行った. 第 7 章の総合考察では,ヤママユガ科ガ類の生態をエネルギーの流れを含めて総合 的に論じ,里山を含めた生物多様性の保全管理について考察を行った.. 3.
(9) 第2章 材料 2-1 ヤママユガ科ガ類の分類学的位置 ヤママユガ科ガ類(Saturniidae)は鱗翅目(Lepidoptera),カイコガ上科 (Bonbiycoidea)に属する大型のガ類である.本科に属する種数は,ヨーロッパでは 3属6種,アフリカでは 40 属 206 種,アジアでは 14 属 66 種,オーストラリアでは 5属 30 種,北米では7属 39 種,中南米では 39 属 588 種以上が知られている(寺本, 1996;Tuskes et al,1996) .日本には8属 11 種生息する(Fig.2-1.) .. Antheraea 属に属している種は日本ではヤママユのみで,同属の養蚕用に導入され たサクサン Antheraea pernyi は研究機関等で継代飼育がなされているだけで日本に 土着した報告はまだない.ヤママユ Antheraea yamamai は日本,台湾,朝鮮,中国, ロシア,スリランカ,インドおよびヨーロッパに分布している.分類学上5亜種に分 けられているが, 原名亜種 yamamai yamamai. (GUERIN-MENEVILLE) が本州,四. 国,九州,対馬および屋久島,y. yoshim otoi INOUE が奄美大島および沖縄本島,y.. ussuriensis SCHACHBAZOV が北海道,中国北部およびウスリー,y. s uperba INOUE が 台湾, y. bergmani Bryk が北朝鮮にそれぞれ分布している(寺本,1996).Samia 属 に属する種には,シンジュサン Samia cynthia とエリサン c. ricini Donovan の2種 があり,シンジュサンの本州以西 c. pryeri (Butler,) と北海道・対馬 c.walkeri (Felder & Felder)の2亜種が生息しているが,エリサンはサクサン同様日本では土着してはい ない.日本産の Saturnia 属にはヒメヤママユの北海道亜種 Saturnia jonasii Jordan と本州以南亜種 j. jonas ii (Butler),クスサンの屋久島以北亜種 Saturnia jap onica. japonica (Moore)と奄美以南亜種 j. ryukyuensis (Inoue)の各2亜種が生息する.また, Rhodinia 属にはウスタビガ北海道亜種 Rhodinia fugax diana (Oberthür)と本州以南 亜種 Rhodinia fugax fugax (Butler)の2亜種,Actias 属には,オナガミズアオ本州九 州亜種 Actias gnoma gnoma (Butler),北海道亜種 g. mandschurica(Staudinger),伊 豆諸島亜種 g. mi yatai Inoue と,オオミズアオ本州・四国・九州・対馬亜種 Actias. artemis aliena (Butler) ,北海道亜種 a. artemis (Bremer & Grey) ,屋久島亜種 a. yakushimaensis Kishida の各3亜種,Aglia 属には,エゾヨツメ北海道亜種 Aglia japonica japonica Leech と本州以南亜種 j. microtau Inoue の2亜種があるが,本研 4.
(10) 究で扱ったヤママユガ科ガ類個体群は亜種として区別しないでそれぞれ種レベルとし て扱った.. 鱗翅目(Lepidoptera) カイコガ上科 (Bonbycoidea). ヤママユガ科 (Saturniidae). ヤママユガ亜科 (Saturniinae). Attacus属. ヨナグニサン. Samia属. シンジュサン. Antheraea属. ヤママユ. Saturnia属. ヒメヤママユ. Attacus atlas Samia cynthia Antheraea yamamai Saturnia jonasii. クスサン Saturnia japonica. Rhodinia属. ウスタビガ Rhodinia fugax. クロウスタビガ Rhodeinia jankowskii. Loepa属. ハグルマヤママユ. Actias属. オナガミズアオ. Lopea katinka Actias gnoma. オオミズアオ Actias artemis. Aglica属. エゾヨツメ亜科 (Agliinae). Fig.2-1. Saturniid moths in Japan.(Inoue, 1982). 5. エゾヨツメ Aglica japonica.
(11) 2-2. ヤママユガ科ガ類の生活史およびその概要. 本研究で主に用いた近畿大学奈良キャンパスで確認されているヤママユガ科ガ類 7 種(シンジュサン,ヤママユ,ヒメヤママユ,クスサン,ウスタビガ,オナガミズア オ,オオミズアオ) (城本・桜谷, 2004)と,今回の調査で京都府亀岡市と福島県荒川 河畔林で確認されたエゾヨツメの生活史および生態の概略についてそれぞれ以下に述 べる.種の配列や学名,分布など生活史については「日本産蛾類大図鑑」 (井上,1982) によった.. ①シンジュサン(Fig.2-2) 本種成虫は,翅に眼状紋はもたないが,各翅には1個の透明な部分をもっている. また,前翅先端はヘビ類の頭部状の模様をしており,防衛効果があるとされている. 成虫は西日本では5∼6月と 8 月頃の年2回,北日本では1回発生する.幼虫は2化 地帯では,6∼7月と9月∼10 月に出現し,秋に出現する幼虫は樹上でそのまま蛹(マ ユ)で越冬し,翌年に羽化する.灯火によく飛来する.北海道から沖縄の西表島まで 日本に広く分布する.. Fige.2-2. Samia cynthia A :Adult, B:Lavra. ②ヤママユ(Fig..2-3) ヤママユガ科ガ類のなかでも特に大型の種で,成虫は年1回8∼9月に出現し,灯 火によく飛来する.成虫の翅色は色彩の変異が大きく黄色から暗褐色のものまで記録 されている.幼虫は4∼7月に出現し,7 月頃にマユをつくり蛹化する.羽化したメ ス成虫は餌植物の小枝に数個単位で産卵し,卵(卵殻内では幼態になっている)で越 冬する(中嶋, 1990) .北海道から沖縄まで日本に広く分布する. 6.
(12) Fig.2-3. Antheraea yamamai A: Adult, B: Larva. ③ヒメヤママユ(Fig.2-4) ヤママユに似るが,小型で斑紋なども異なる.成虫は年1回 10 月ごろに出現し, 灯火に飛来する.各翅に 1 個眼状紋がある.幼虫は4∼7 月に出現し,緑色で短い緑 黄色の毛を密生している.蛹の際,樹木下で落ち葉等を糸で荒く綴ってマユを作る. 本種も卵で越冬する.北海道から屋久島までの日本に広く分布している.. Fig.2-4 Saturnia jonasii A: Adult, B: Larva. ④クスサン(Fig.2-5) 本種の幼虫はかなりの雑食性で,和名の由来であるクスの他にクリなどのブナ科樹 木,クルミ,イチョウなど種々の樹木の葉を摂食する.成虫は前種のヒメヤママユと やや似て,各翅に眼状紋がある.成虫は 9∼10 月ごろ出現し,年1化である.幼虫は 4 月中ごろから出現し,7 月頃に楕円形の固い網目状のマユを作って蛹化する.本種 も卵で越冬する.北海道から沖縄本島まで分布している.. 7.
(13) Fig. 2-5. Saturnia japonica A: Adult, B: Larva. ⑤ウスタビガ(Fig.2-6) ヤママユガ科ガ類の中では最も遅く羽化する種で,成虫は年 1 回,11∼12 月上旬に 出現する.雄成虫の翅には色彩の変異が知られており,近畿大学奈良キャンパスにお いても黄色と褐色タイプが確認されている.各翅に眼状紋をもつ.幼虫は 4 月中ごろ から 6 月下旬に出現し,カマス型のマユを作る.本種も卵で越冬する.北海道から九 州の平地や山地に分布する.. Fig.2-6. Rhodinia fugax A: Adult, B: Larva. ⑥オナガミズアオ(Fig.2-7) 翅は全体が鮮やかな水色をしており,各翅には 1 個の小さな眼状紋をもつ.後翅に は長い尾状の突起があるのが特徴である.成虫は4∼5月と7∼8 月の年 2 回発生す る.幼虫は5∼6 月,8∼9 月に現われ,1 化目の幼虫は,樹上で葉を綴ってマユを作 り,2化目の幼虫は樹木下や樹幹にマユを作り蛹で越冬する.北海道から本州,伊豆 諸島に分布する. 8.
(14) Fig. 2-7. Actias gnoma A: Adult, B: Larva. ⑦オオミズアオ(Fig.2-8) 本種は前種のオナガミズアオに酷似するが,成虫の前翅外縁は前種より弓なりにな らない.また,後翅の尾状突起はやや短い傾向にある.生活史もほぼ類似しており, 成虫は4∼5 月と 7∼8 月の年2回出現し,幼虫も5∼6 月と 8∼9 月に見られるが, 前種よりやや遅く出現する傾向にある.北海道から屋久島までに分布する.. Fig.2-8. Actias artemis A: Adult, B: Larva. ⑧エゾヨツメ(Fig.2-9) 本種は,近畿大学奈良キャンパスではまだ確認されていない種である.本種成虫は 日本のヤママユガ科ガ類のなかで最も早く初春に出現する.幼虫は 5∼6 月に見られ 年1化であり,蛹で越冬する.北海道,本州,四国,九州に分布する.. 9.
(15) Fig.2-9. Aglia japonica Larva. 2-3 主な調査地の概要. ① 近畿大学奈良キャンパス 近畿大学奈良キャンパス(奈良県奈良市中町,34°40′N, 135°43-44′E,標高 約 170m:Fig.2-10)は,奈良市の北西部の生駒市,大和郡山市と隣接する矢田山丘 陵にあり,敷地面積は約 1.2 ㎢であり.コナラ・クヌギ林が優占的な植生である二次 林の里山環境にある(杉野他,1988) .キャンパス内にはオオタカ Accipiter gentilis やオオムラサキ Sasakia charonda などのレッドデータ動物種の生息が確認されてい る(前田・桜谷,2003) .当近畿大学奈良キャンパスは奈良市郊外の里山を主体にし た丘陵地にあり,二次林,草地,圃場などの多様な環境にある(馬場・岩坪, 2 001) . 一方,近年はクズ Pueraria l obata や外来種であるセイタカアワダチソウ Solidago .近年,生物多様性 altissima が繁茂し,生物多様性が低下しつつある(桜谷, 1999 ) の保全が見直される中,当キャンパスでもビオトープや里山修復プロジェクトといっ た試みがなされている(近畿大学農学部, htt p://nara-kindai.unv.jp/) .当キャンパス 内の低次消費者である昆虫類の生態系の把握は生物多様性の保全の基礎データとして 不可欠であり,レッドデータ種を含めた多様性の把握が必要である.. 10.
(16) Parking area for car. Parking area for bike. nna i Ha ai-n d f o road Toll. Ground Ground 0. 50. 100m. Fig.2-10. Nara Campus of Kinki University.. 11.
(17) ② 福島県福島市荒川河畔林 福島県福島市の一級河川荒川の中流域にあたる水林地区にあり(37°42-43′N, 140°21′E,標高約 270m:Fig.2-11) ,雑木林が続く中に遊歩道が通っている.第 3章のライン・トランセクト法を用いた調査地は,この遊歩道上の LineA、B,C の 3ヶ所で行った。主な植生として,アカマツ Pinus densiflora ,イヌシデ Carpinus. tschonoskii,コナラ Quercus serrata,ヤマザクラ Prunus jamasakura,ミヤマハ オニグルミ Juglans mandshurica subsp. sieboldiana, ンノキ Alnus maximowiczii, クマノミズキ Swida macrophylla が見られ,ヤママユガ科ガ類の餌植物が多種自生し ているため,ヤママユガ科ガ類も多く生息している.水林自然林として管理されてお り,初春にはスプリング・エフェメラル(Spring ephemer al)と呼ばれるカタクリ. Erythronium japonicum やキクザキイチゲ Anemone pseudo-altaica,ショウジョウ バカマ Heloniopsis orientalis などの林床植物も沢山見られ保全されている.自然林 内では,ヤマセミ Megaceryle lugubris が生息し,絶滅危惧種のオオタカの営巣が見 られるなど生態系は多様である.. Fig.2-11. Arakawa River side forest LineA: Nearby Azuma Park Bridge, LineB, C: Nearby Village of Four Season. 12.
(18) ③ その他の地域 ヤママユガ科ガ類はほぼ全国に分布しているため,奈良県内(奈良市,大和郡山市, 生駒市) ,大阪府(大阪市,東大阪市,堺市) ,京都府(京都市,亀岡市,丹南市) ,滋 賀県(大津市,志賀町) ,兵庫県(神戸市,宝塚市,姫路市) ,島根県(松江市) ,鹿児 島県奄美大島(名瀬市) ,栃木県(日光市) ,福島県(福島市) ,宮城県(石巻市,東松 島市) (Fig.2-12)の各地山林や,河畔林,里山林などで行った.すべて里山林であり, 一部の地域にはクリ園など農業地域を含む.. Kagoshima Pref. ・Naze City, Honcha Pass ・Naze City, Kominato. Tochigi Pref. ・Nikko City, Tanze ・Nikko City, Ganman-ga-fuchi Shiga Pref. ・Kouga-gun, Daito Riverside ・Shiga-gun, Shiga Town, Biwako-Valley ・Shiga-gun, Shiga Town, Kitakomatsu. 28° N. N 44°. Kyoto Pref. ・Kyoto City, Sakyo-ku, Yase ・Yawata City, Sewari-tsutsumi ・Kameoka City, Yagi Town. N 26°. 42° N. Hyogo Pref. ・Kobe City, Kita-ku, Dojo ・Takarazuka City, Takedao ・Himeji City. 40° N. Miyagi Pref. Ishinomaki City, Mt.Magiyama. Shimane Pref. Matsue City, Tamayu Town. 38° N. 36° N. 34° N. Fukushima Pref. ・Fukushima City, Arakawa Riverside forest ・Fukushima City, Arakawa Riverside forest, Azuma-sports' Park ・Fukushima City, Arakawa Riverside forest, Village of Four Season ・Fukushima City, Tsuchiyu-onsen Town ・Fukkushima City, Sugita. Nara Pref. ・Nara City, Nakamachi, Nara Campus of Kinki University ・Nara City, Ninnikusen Town ・Nara City, Kasuga Town, Mt.Kasugayama ・Yamatokooriyama City, Yata Town, Nature Park in Yata ・Ikoma City, Nabata Town, Mt.Ikomayama ・Totsukawa-Mura, Obako Pass. N 32°. Osaka Pref. ・Osaka City, Suminoe-ku, Osaka Nankou Bird Sanctuary ・Higashi-osaka City, Izumoi Town, Hiraoka Park ・Sakai City, Hamadera Park. Fig2-12. Study sites.. 13.
(19) 第3章 食性とその地域的変異 3-1 はじめに 大部分の鱗翅目昆虫は様々な植物を食べる.なかでもヤママユガ科(Sturniidae)に 属するガはすべて大型で,幼虫は各種樹木の葉を食べる(井上, 1982 ;Tuskes et al ., 1996). 日本には8 属11 種が生息しており, 生活史もかなり解明されている(平嶋,1989). 里山に生息する種が多く,多くの種が里山に自生または薪炭用に植栽されているブナ 科,ニレ科,カバノキ科植物の葉を食べる (城本・桜谷, 2004).近年環境保全・里山 資源が見直されるなか,里山管理や里山修復などが注目されている(守山, 1997;石井 他, 1993).近畿大学奈良キャンパスの里山においても,クズ Puerarie lobata の繁茂 やセイタカアワダチソウ Solidago altissim a の様な外来植物により生物多様性が低 下しつつある(馬場・岩坪, 2001;野々村他, 2005;東條・桜谷, 2006) .1 次消費者で ある大型のヤママユガ科ガ類は里山生態系の食物連鎖上において大きな影響を及ぼす ものと考えられ,その生態の把握は不可欠と思われる.ヤママユガ科ガ類は一部の種 を除き,ほぼ日本全土に分布しているが(井上, 1982) ,日本列島は南北に長く,北海 道と沖縄本島を比べても,その植生はかなり異なっている.例えば,北日本ではブナ. Fagus crenata を餌主体とするエゾヨツメ Aglica japonic a が南紀ではウバメガシ Quercus phill yraeoides を利用していることが報告されている(後藤, 2000 ;大野, 2002).日本全土に分布しているヤママユガ科ガ類が,地域的に異なった植生をどの ように利用しているのか,餌植物の面から解析を行った.また,奄美大島,沖縄諸島 沖縄本島に分布するハグルマヤママユ Loepa katinka は,日本の野外における植生が 不明である(有田他, 1 993)など,野外における記録やヤママユ以外の種の餌植物に ついての報告は多くない. そこで,今回はヤママユガ科ガ類数種について,各地での 調査で新たに確認された野外の餌植物種と文献による既知食樹記録の面から食性の解 析を行った.. 14.
(20) 3-2 調査方法と調査地 調査は2002年より随時行った. ヤママユガ科ガ類はほぼ全国に分布しているため, 調査地は奈良市郊外にある近畿大学奈良キャンパスを中心とした奈良県内(奈良市, 大和郡山市,生駒市) ,大阪府(大阪市,東大阪市,堺市) ,京都府(京都市,亀岡市, 丹南市) ,滋賀県(大津市,志賀町) ,兵庫県(神戸市,宝塚市,姫路市) ,島根県(松 江市) ,鹿児島県奄美大島(名瀬市) ,栃木県(日光市) ,福島県(福島市) ,宮城県(石 巻市,東松島市) (第2章の調査地参照)の各地里山林や,河畔林などで行った.ヤマ マユガ科ガ類の卵や幼虫,マユ(羽化後や捕食などによる空のマユも含む)の個体数 と寄生が確認された植物の種類を調査した.通常,ヤママユガ科ガ類のマユは餌植物 上に作られ,卵も餌植物上に産み付けられることから(井上, 1982 ;Tuskes et al ., 1996) ,マユや卵については周囲に他の餌植物がなく,幼虫期にその植物を摂食して いることが確実に認められる場合のみそれを餌植物として記録した.今回記録された 餌植物種に,ヤママユガ科ガ類の文献による既知記録餌植物種を加え,日本産ヤママ ユガ科ガ類間の類縁関係を調べるため,クラスター分析を行った.また,ヤママユガ 科ガ類の餌植物種の類似度は Ochiai 指数(OI) (Ochiai, 1957;夏原,1998)を用い て種間の関係を明らかにした.OI を以下に示した,. OI . c a b. 2種のヤママユガ科ガ類の各餌植物種数を a ,b とし,両方に共通な種数を c とし た.餌植物の科数についてもそれぞれ各餌植物科数を a ,b とし,共通科数を c とし, 同様に解析を行った.OI の値は完全に一致していると1となり,1に近づくほど類縁 度が高く,まったく異なると0になる. ヤママユが高密度に発見された福島県福島市荒川河畔林においては, 2004 年7月と 12 月,2005 年の 8 月,2006 年の 2 月と 7 月の計 5 回調査を行い,ヤママユの生息 密度についての調査も行った.また,福島市荒川河畔林の林道で遊歩道を3ヶ所 10 mずつ歩き,左右 5m 内の胸高直径 10cm 以上の樹木の種類を調べるライン・トラン セクト法を用いて植生を調べた.冬季には,落葉樹においては羽化済みのマユが確認 15.
(21) しやすいことから,2004 年に荒川河畔林においてライン・トランセクト法とともにマ ユ数のカウントも行った. 種の配列や学名はヤマママユガ科ガ類においては「日本産蛾類大図鑑」 (井上, 1982) , 餌植物種においては, 「牧野新日本植物図鑑」 (牧野, 1989)によった. 3-3 結果 今回の調査で,19 科 44 種の植物が 8 種のヤママユガ科ガ類(シンジュサン,ヤマ マユ,ヒメヤママユ,クスサン,ウスタビガ,オナガミズアオ,オオミズアオ,エゾ ヨツメ)の餌植物として確認された(Table3-1) .新たな餌植物として,カバノキ科の イヌシデ C. tschonoskii でヤママユ,ヒメヤママユ,ウスタビガ,クスサンの幼虫が 各地で確認され,ウバメガシ Quercus phillyraeoides ではウスタビガとヒメヤママユ の幼虫が確認された.また,ヤママユではカバノキ科のツノハシバミ Corylus. sieboldiana,ウスタビガではヤナギ科 Salix 2 種と植栽種であるアメリカヤマボウシ (ハナミズキ)Benthamidia florida,ヒメヤママユではネジキ Lyonia ovalifolia,オ オバクロモジ Lindera umbellata var. membranacea とクロガネモチ Ilex rotunda も 餌植物として確認された.最も多くのヤママユガ科ガ類が利用していた餌植物はイヌ シデ C. tschonoskii (ヤママユ,ヒメヤママユ,クスサン,ウスタビガ,オオミズアオ) とコナラ Q. serrata(ヤママユ,ヒメヤママユ,クスサン,ウスタビガ,エゾヨツメ) で各 5 種,続いてクリ Castanea crenata で 4 種(ヤママユ,ヒメヤママユ,クスサ ン,ウスタビガ)の利用があった.ヤママユにおいては各5つの都道府県単位でイヌ (Table シデ C. tschonoskii とコナラ Q. serrata を餌として利用する個体が確認された 3-2) .. 16.
(22) Table3-1 List of foodplants of Saturniidae recorded in this study.. Scientific name. Myrica rubra. Juglans mandshuica var. sachalinensis. Salix chaenomeloides S. subfragilis Alnus sieboldiana A. firma A. japonica A. serrulatoides Caprinus japonica C. tschonoskii Corylus sieboldiana Fagus japonica Quercus phillyraeoides Q. acutissima Q. variabilis Q. serrata Q. sessilifolia Q. glauca Q. myrsinaefolia Castanea crenata Castanopsis sieboldii Lithocarpus edulis Celtis sinensis var. japonica Zelkova serrata Ulmus davidiana var. japonica. Lindera umbellata var. membranacea. Prunus mume P. grayama P. yedoensis P. jamasakura Sapium sebiferum Zanthoxylum ailanthoides Phellodendron amurense Picrasma quassioides Rhus javanica var. roxburghii Acer palmatum. A. mono var. marmoratum f. dissectum. Aesculus hippocastanum Ilex rotunda Swida macrophylla Benthamidia florida Lyonia ovalifolia Styrax japonica Paulownia tomentosa. Species of Saturniidae moths. Japanese name ヤマモモ オニグルミ マルバヤナギ タチヤナギ オオバヤシャブシ ヤシャブシ ハンノキ カワラハンノキ クマシデ イヌシデ ツノハシバミ イヌブナ ウバメガシ クヌギ アベマキ コナラ ツクバネガシ アラカシ シラカシ クリ スダジイ マテバシイ エノキ ケヤキ ハルニレ オオバクロモジ ウメ ウワミズザクラ ソメイヨシノ ヤマザクラ ナンキンハゼ カラスザンショウ キハダ ニガキ ヌルデ イロハモミジ イタヤカエデ セイヨウトチノキ クロガネモチ クマノミズキ ハナミズキ ネジキ エゴノキ キリ Total no. species. ●: Reliable species. Larvae observed feeding on tree in this study.. Samia cynthia Antheraea yamamai Saturnia jonasii Saturnia japonica Rhodinia fugax Actias gnoma Actias artemis Aglica japonica. Food plants. ● ● ● ● △ ●. ● ● ○ ● ○ ● ● ○ ● ○△ ● ● ●. 17. ● ●. ●. ●. △. ●. ● ○. ●. ●. ●. ●. ●. ○ ●. ●. ○ ● ○ ● ● △ ● ○△ ●. ● ●. ○ ○ ● ○△. ○ ○ ○ ○ ● ● ● ●. ● ●. ● ●. ●. ● ○△. ● ● ○. 6. ○: Indefinite species. Cocoon attached to tree from which an adult emerged.. △: Indefinite species. Live egg attached to tree.. ●. ● △ ● ●. 17. 12. 11. 17. 2. 6. 2.
(23) Table3-2 List of foodplant of Antheraea yamamai in this study site. Quercus glauca Quercus salicina Quercus myrsinaefolia. Castanea crenata Castanopsis sieboldii. Lithocarpus edulis. Prunus grayama Prunus ×yedoensis Prunus jamasakura. 1. 1. 4. Nara. ●: Reloable species. Larvae observed feeding on tree in this study. △: Indefinite species. Cocoon attached to tree from which an adult emerged. ×: Nothing of A.yamaami . ‐: Nothing of tree.. 18. Miyagi. Quercus serrata Quercus sessilifolia. Fukushim. Quercus variabilis. ● ● × ● × × ● △ ● △ ● ● ● ● ● × × 10. Tochigi. Quercus acutissima. × ● × ● × ● × ● × × × × -. Shiga. Fagus japonica Quercus phillyraeoides. × × × × × × × ● × × × × -. Osaka. Corylus sieboldiana. × × × ● -. Kyoto. Carpinus tschonoskii. Japanese name. ヤマモモ イヌシデ ツノハシバミ イヌブナ ウバメガシ クヌギ アベマキ コナラ ツクバネガシ アラカシ ウラジロガシ シラカシ クリ スダジイ マテバシイ ウワミズザクラ ソメイヨシノ ヤマザクラ Total no. sspecies. Hyogo. Myrica rubra. Shimane. scientific name. Prefecture Kagoshima. Food plants. × × ● × × ● ● × ● ● ×. × × × × × ● × × ● × -. × × × × × ● × × ● × × × -. ● × × × × × ● × × × × ● × × × × ●. ● ● ● × × ● × × ● × × -. ● × ● × × ● × × × × × ×. 5. 2. 2. 4. 5. 3. 1 5 1 2 2 1 1 5 0 4 0 3 4 3 2 1 1 1.
(24) Saturnia japonica Antheraea yamamai Saturnia jonasii Samia cynthia Rhodinia fugax Actias artemis Aglica japonica Actias gnoma Attacus atlas Loepa katinka Rhodinia jankowskii 0.0. 1.3. 2.5. 5.0. 3.8. 6.0. Fig.3-1. Unweighted pa ir-group method us ing average (UPGMA) cluster analysis of Euclidean distances derived from foodplant species of Saturniidae larvae.. Samia cynthia Saturnia japonica Saturnia jonasii Actias artemis Aglica japonica Rhodinia fugax Antheraea yamamai Attacus atlas Loepa katinka Actias gnoma Rhodinia jankowskii 0.0. 0.8. 1.6. 2.4. 3.2. 4.0. Fig.3-2. Unweighted pa ir-group method us ing average (UPGMA) cluster analysis of Euclidean distances derived from foodplant family of Saturniidae larvae.. 19.
(25) 20. J. regia var. orientalis Salicaceae Salicaceae Populus maximowiczii P. nigra var. italica Salix chaenomeloides S. subfragilis S. bakko S. babylonica S. kinuyanagi Betulaceae Betulaceae Betula platyphylla var. japonica Alnus spp. A. japonica A. hirsute A. serrulatoides A. firma A. sieboldiana Caprinus tschonoskii C. laxiflora C. japonica C. cordata Corylus sieboldiana Fagaceae Fagaceae Fagus crenta. Juglans mandshuica var. sachalinensis. Ginkgoaceae Ginkgo biloba Myricaceae Myrica rubra Juglandaceae Juglandaceae. Family Species (Scientific name). ●3 6 △. 6. 6. ブナ類 ブナ. ○6. 6. ○. △ 6 ○. △6. ◎ ○6. Antheraea yamamai. ◎ ○ ○6 ○6 6 ○ ◎. ●4. 1. ● ●4. Samia cynthia. カバノキ類 シラカンバ ハンノキ類 ハンノキ ヤマハンノキ カワラハンノキ ヤシャブシ オオバヤシャブシ イヌシデ アカシデ クマシデ サワシバ ツノハシバミ. ヤナギ類 ドロヤナギ セイヨウハコヤナギ マルバヤナギ タチヤナギ バッコヤナギ シダレヤナギ キヌヤナギ. クルミ類 オニグルミ テウチグルミ. ヤマモモ. イチョウ. (Japanese name). ●3,5 7 ●. ◎ ●1. ●3. 1,3. ●. Saturnia jonasii. Table3-3 Summarized list of foodplants of Saturniidae from the literature and recorded in this study Foodplant. ●3. ◎. ◎. ●3 ●1,2,4,7 4 ●. 1,3,7,8. ● ◎●4. 1,2,4,5,7-9. ●. Saturnia japonica. ●3. ◎. ●1,7. ●3. ◎ ◎. ● ◎?●3. 4. 3. s gnoma. ● ●3 ◎●3,4. Rhodinia Actia fugax. Saturniidae. ●3,5. ◎●1,2,4,7 9 ● ◎ ◎? ◎ ◎?. ●1-5,7. ●12. Acias artemis. ●3 1,4,5,10 ●. ◎. ●4,10. ●1,3,5,10. ●1,3,5,10 4,10 ●. Aglica japonica.
(26) 21. ニレ類 ハルニレ ムクノキ ケヤキ エノキ. イヌブナ クリ イタグリ シイグリ コナラ ミズナラ クヌギ アベマキ ナラガシワ カシワ カシ ウバメガシ シラカシ アラカシ アカガシ ツクバネガシ ウラジロガシ イチイガシ スダジイ マテバシイ. クスノキ Lindera umbellata var. membranacea オオバクロモジ Cercidiphyllaceae Cercidiphyllum japonica カツラ Platanaceae Platanus orientalis スズカケノキ Hamamelidaceae Liquidamber fomosana フウ L. styracifl アメリカフウ Saxifragaceae Deutzia crenata ウツギ. F. japonica Castanea crenata C. mollissima C. henryi Quercus serrata Q. crispula Q. acutissima Q. variabilis Q. aliena Q. dentata Q. sp. Q. phillyraeoides Q. myrsinaefolia Q. glauca Q. acuta Q. sessilifolia Q. salicina Q. gilva C. sieboldii Lithocarpus edulis Ulmaceae Ulmaceae Ulmus davidiana var. japonica Aphonante aspera Zelkova serrata Celtis sinensis var. japonica Lauraceae Cinnamomum camphora. Continued. ●1,3-5. ●1. 3. ●. △6 ●?○6. △ △6. 6. ◎●6 ◎●1-9 6 △ △6 1-7,9 ◎● 6 ● 1-7,9 ◎● 6 ◎● ●6 1-7 ● ●1 6 ◎● ◎●6 ◎●4,6 6 ○ ◎ ◎ △6 ◎●1,6 6 ◎● 1. 3. ●1,2,4,7. ◎. ●1. ● ●4. ◎. ●1. ●2,4,7,9. ●1,8,9. ●1,2,4,7 ●1. 3. ●. ●. 14. ●. ◎● ●1 1,2,4,7,9 ●. 1,2,4,7,9. ◎●1-5,7-9. ◎● ●4 1,2,4,7,9 ●. 4. ◎●1,7. 1,7. 3. ◎●1,2,4,5,7 ◎●1,7. ● ◎?. ●1. ◎ ◎. ●. 1-4,7. ◎●. 1,2,4,7. ◎●. ◎●1,7. ●. 1,2,7,9. ●1,2,4,7. ●4,10. ●. 10. 1,4,5,10. ●. 1,4,5,10. ◎● ●4,10 4 ●. ●1,5,10.
(27) 22. Continued. Rosaceae Rosaceae Malus domestica M. prunifolia Pyrus pyrifolia var. culta Sorbus commixta Pourthiaea villosa Chaenomeles sinensis Prunus armeniaca P. mume P. salicina P. persica P. spp. P. yedoensis P. jamasakura P. grayama Euphorbiaceae Mallotus philippensis Sapium sebiferum Routaceae Routaceae Zanthoxylum armatum Zanthoxylum ailanthoides Euodia meliifolia Phellodendron amurense Simaroubaceae Picrasma quassioides Ailanthus sltissima Anacardiaceae Rhus succedanea R. silvestris R. verniciflua R. javanica var. roxburghii Aceraceae Aceraceae Acer palmatum A. amoenum. カエデ類 イロハモミジ オオモミジ. 1,4. ●. ◎●1-5 1-5 ●. ニガキ シンジュ (ニワウルシ). ハゼノキ ヤマハゼ ウルシ ヌルデ. ●1 ●4 4 ◎● 4 ● ◎●1-3,5. 柑橘類 フユザンショウ カラスザンショウ ハマセンダン キハダ. 1,3,4. ◎?●. ●. 1,4. ●. 1,4. アカメガシワ ナンキンハゼ. バラ科植物 リンゴ ヒメリンゴ ナシ ナナカマド カマツカ カリン アンズ ウメ スモモ モモ サクラ類 ソメイヨシノ ヤマザクラ ウワミズザクラ 6. △. 6. ●2-5,7-9 ◎? 6 ◎ △. △. ●6 △6 ○6. ● △6. 2-7. ●2,3,5,7,8 ●1. ●1,2,7-9 4 ◎● ◎. 1,2,4,7,8. ● 2,4,7 ●. 1,2,4,7. ●. 3,5. ● ●7,8. ●7,8. ●1,2,7-9 ●4 1,7,8 ● 1-4,7 ◎●. ●1. ◎ ◎. ●7 1,2,4,7-9 ● 1,2,4,7 ● ●2,4,7 ●1. 1,2,4,7. ●. ●. 1,2,4,7,8. ●1,3,5,7,8 ◎ 4 ●. ●1. ●1-3,5,7 4 ◎● ◎ ◎. ◎. 1,4,7. ●. 4. ●1,2,7-9. ●2,4,7 2,4,7-9 ●. ●2,4,7. ●. 3,5. ● ●1,2,4,7. ●3,10. 4,10. ●.
(28) 23. ハウチワカエデ ミネカエデ テツカエデ A. mono var. marmoratum f. dissectum イタヤカエデ Hippocastanaceae Aesculus hippocastanum セイヨウトチノキ Aquifoliaceae Ilex rotunda クロガネモチ Staphyleceae Euscaphis japonica ゴンズイ Rhamnaceae Rhamnella franguloides var. inaequilatera ヤエヤマネコノチチ Tiliaceae Tilia maximowicziana オオバボダイジュ Sterculiaceae Firmiana simplex アオギリ Lythraceae Lagerstroemia indica サルスベリ Punicaceae Punica granatum ザクロ Cornaceae Cornaceae ミズキ類 Swida controversa ミズキ S. macrophylla クマノミズキ Benthamidia florida ハナミズキ Araliaceae Schefflera octophylla フカノキ Kalopanax pictus ハリギリ Ericaceae Pieris japonica アセビ Lyonia ovalifolia ネジキ Ebenaceae Diospyros kaki カキノキ Styraceae Styrax japonica エゴノキ Oleaceae Osmanthus sp. モクセイ Fraxinus sp. シマトネリコ. A. japonicum A. tschonoskii A. nipponicum. Continued. 1-4,11. ●1 ●13. 1,3,5. ●. ●. 1. ●4. ●. ◎●4. ◎. ◎. ●4. ●3,5 1,2,4,7 ● ◎. ◎. 4. ● 1 ◎●. 1,2,4,7-9. ●. ◎●4. 7,8. ●. ●1,4,7,8. ◎. ◎. ◎. ●. 7. 2,7. ●1,2,4,7,9. ●3. ●. ◎. ●10. 4,10. ●. 4,10. ● ●4,10.
(29) 24. シュロ Total no. species 24. ●1,11. キリ. ●4. ●1,4,9. クサギ. スイカズラ類 ガマズミ サンゴジュ スイカズラ. ●1,4. ネズミモチ. 30. 31. ●5 ●1,2,4,7,911 ●2,4,7,8 ●7. 35. 23. 4. 16. 11: Shiromoto and Sakuratani (2004), 12: Kanai (2002), 13: Azuma (1996), 14: Kogi (2005). 1: Esaki (1958), 2: Hattori (1965), 3: Nakajima (1987), 4: Miyata (1983), 5: Inoue (1982), 6: Teramoto (2001), 7: Sekiguchi (2003), 8: The Japanese Society of Applied Entomology and Zoology (2006), 9: Japanese Highway Landscape Association (1984), 10: Ohno (2002);. ◎: Field data in this study. ●: Field data by literature. ○: Rearing data by literature. △: Some of the larvae matured in rearing. ?: Species needs to be reconfirmed. Total no.species: Total number of foodplant species except △, ◎?, Foodplant name is sp.. Ligustrum japonicum Verbernaceae Clerodendron trichotomum Scrophulariaceae Paulownia tomentosa Caprifoliaceae Caprifoliaceae Viburnum dilatatum V. odoratissimum var. awabuki Lonicera japonica Palmae Trachycarpus fortunei. Continued. 17.
(30) Rhodinia jankowskii. Actias gnoma. Acias artemis. Aglica japonica. Saturnia japonica. Saturnia jonasii. Antheraea yamamai. c =1 0.204 c =1 0.102 c =5 0.261 c =9 0.455 c =0 0. c =0 0 c =0 0 c =0 0 c =0 0. c =2 0.250 c =3 0.364 c =0 0. c =4 0.243 c =0 0. c =0 0. 5. c =1 0.091 c =0 c =2 Antheraea 30 yamamai 0 0.075 c =0 c =5 c =10 Saturnia 31 jonasii 0 0.183 0.328 c =1 c =7 c =10 c =14 Saturnia 35 japonica 0.076 0.242 0.309 0.425 c =0 c =3 c =10 c =14 c =11 Rhodinia 23 fugax 0 0.128 0.381 0.524 0.388 c =0 c =1 c =0 c =0 c =0 Rhodinia 1 jankowskii 0 0.204 0 0 0 c =0 c =0 c =2 c =0 c =0 Actias gnoma 4 0 0 0.183 0 0 c =0 c =2 c =5 c =6 c =8 16 Acias artemis 0 0.102 0.228 0.269 0.338 c =0 c =1 c =9 c =9 c =6 Aglica 17 japonica 0 0.050 0.399 0.392 0.246 c =0 c =0 c =0 c =0 c =0 Loepa katinka 3 0 0 0 0 0 c is the number of foodplant species common to both moth species. Samia cynthia. Rhodinia fugax. Attacus atlas. Samia cynthia. No. of foodplat species. Attacus atlas. T able3-4 Similarities among the foodplant species of Saturniid moths (Ochiai index: OI ). 24. 25.
(31) Rhodinia jankowskii. Actias gnoma. Acias artemis. Aglica japonica. Saturnia japonica. Saturnia jonasii. Antheraea yamamai. c =1 0.354 c =1 0.354 c =5 0.625 c =5 0.668 c =1 0.204. c =0 0 c =0 0 c =0 0 c =0 0. c =1 0.354 c =1 0.378 c =0 0. c =4 0.535 c =1 0.204. c =1 0.218. 4. c =2 0.229 c =0 c =3 Antheraea 6 yamamai 0 0.281 c =1 c =7 c =4 Saturnia 15 jonasii 0 0.415 0.422 c =2 c =8 c =4 c =9 Saturnia 18 japonica 0.236 0.433 0.385 0.548 c =0 c =5 c =4 c =7 c =7 Rhodinia 8 fugax 0 0.406 0.577 0.639 0.583 c =0 c =1 c =0 c =0 c =0 Rhodinia 1 jankowskii 0 0.229 0 0 0 c =0 c =0 c =1 c =1 c =1 Actias gnoma 1 0 0 0.408 0.258 0.236 c =0 c =3 c =3 c =7 c =7 Acias artemis 8 0 0.243 0.433 0.639 0.583 c =0 c =3 c =3 c =6 c =6 Aglica 7 japonica 0 0.260 0.463 0.586 0.535 c =0 c =0 c =0 c =1 c =1 Loepa katinka 3 0 0 0 0.149 0.136 c is the number of foodplant family common to both moth species. Samia cynthia. Rhodinia fugax. Attacus atlas. Samia cynthia. No. of foodplat family. Attacus atlas. Table3-5 Similarities among the foodplant familiess of Saturniid moths (Ochiai index: OI ). 19. 26.
(32) 今回の調査と文献による既知餌植物の記録から(Table3-3.),ユークリッド距離によ るクラスター解析(UPGMA) (桜谷・夏原, 1994) による樹系図を示した(Fig.3-1.) . 餌植物種による結果ではクスサンが最も遠い距離となり,分布範囲の狭いヨナグニサ ン,ハグルマヤママユ,クロウスタビガにおいては距離が短いことが示された.餌植 物種の科による結果では(Fig.3-2.)シンジュサンが最も遠いことが示された.種によ る結果と同様に,分布範囲の狭いヨナグニサン,ハグルマヤママユ,クロウスタビガ においては距離が短いことが示された.ヤママユガ科ガ類内での日本の分布域の幅を 緯度の幅で表し,餌植物種類数との関係をみたところ,分布の広いクスサンが最も多 くの植物を利用していた(FIg.3-3.). 40. No.of foodplant species (y). 35. ①. 3.2673x. y = 1.7417e r 2 = 0.4718. 30. ②. 25. ③. ④. ⑤. 20 ⑥. 15. ⑦. 10 5. ⑩. ⑧ ⑪. ⑨. 0 0°. 6°. 12°. 18°. 24°. N°range (x) ①クスサンSaturnia japonica, ②ヒメヤママユSaturnia jonasii,③ヤママユAntheraea yamamai, ④シンジュサンSamia cynthia, ⑤ウスタビガRhodinia fugax, ⑥エゾヨツメAglica japonica, ⑦オオミズアオActias artemis, ⑧オナガミズアオActias gnoma, ⑨クロウスタビガRhodeinia jankowskii, ⑩ヨナグニサンAttacus atlas, ⑪ハグルマヤママユLopea katinka. Fig.3-3. Relat ionship betwe en distributio n range and num ber of foodplant speci es of Saturniid moths in Japan.. 27.
(33) ,餌植物種の類似度はヒメ Ochiai 指数(OI )で類似度を示したところ(Table3-4) ヤママユとウスタビガが最も高く(OI = 0.524) ,シンジュサンは他のヤママユガ科ガ 類に比べて低いことが示された(OI = 0.242) .ヤママユにおいてはウスタビガ(OI = 0.381)とエゾヨツメ(OI = 0.399)といったブナ科植物を主な餌植物とする 2 種と類 似度が高いことが示された.餌植物種の科においては(Table3-5) ,ウスタビガとエゾ ヨツメが最も高い類似度を示した(OI = 0.668) .. 100%. C. tschonoskii Q. serrata. 80%. Castanea crenata Corylus sieboldiana. 60%. other plant species 40% 20% 0% Summer. Winter. Fig.3-4. Seasonal change of foodplant species of A.yamamai in Arakawa Riverside forest. 福島県福島市荒川河畔林においてライン・トランセクト法による植生調査を行った ところ,本数の割合はイヌシデが 32.6%で優占種であり,アカマツ Pinus densiflora (25.6%) ,コナラ Q. serrata(10.7%) ,ヤマザクラ P. jamasakura(8.8%)であっ た(Table3-6) .また当地での夏季・冬季のヤママユの密度調査を行ったところ,夏季 に確認されたヤママユ幼虫個体数はイヌシデ C. tschonoskii で 56.8%,コナラ Q.. serrata で 35.1%であった.冬季のヤママユのマユ調査(空マユの数)においては, . イヌシデ C. tschonoskii で 65.6%,コナラで 26.4%確認された(Fig.3-4.). 28.
(34) Table3-6 List of plants found by line transect method in Arakawa riverside forest. Plant Scientific name Japanese name Carpinus tschonoskii イヌシデ Pinus densiflora アカマツ Quercus serrata コナラ Prunus jamasakura ヤマザクラ P. grayana ウワミズザクラ Acer palmatum イロハカエデ Alnus hirsuta ケヤマハンノキ Juglans ailanthifolia オニグルミ Robinia pseudo-acacia ニセアカシア Ilex macropoda アオハダ Cryptomeria japonica スギ Acanthopanax sciadophylloides コシアブラ Salix babylonica シダレヤナギ Toxicodendron vernicifluum ウルシ Swida macrophylla クマノミズキ Parabenzoin praecox アブラチャン Ulmus davidiana var. japonica ハルニレ Morus bombycis クワ. LineA 35 16 1 8 3 2 1 1. LineB 20 27 20 8 1 8. 1 1. LineC Total no. 15 70 12 55 2 23 3 19 14 15 11 3 5 4 4 3 3 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1. (%) 32.6% 25.6% 10.7% 8.8% 7.0% 5.1% 2.3% 1.9% 1.4% 0.9% 0.5% 0.5% 0.5% 0.5% 0.5% 0.5% 0.5% 0.5%. 3-4 考察 今回の調査において,ヤママユガ科ガ類8種の餌植物として,19 科 44 種の樹木が 確認された.ヤママユガ科の幼虫はすべて広葉樹の葉を食べ,多くの種が主にブナ科 植物を餌としている(井上, 1982 ;寺本, 1993 ;1996;1998) .日本で新たに,カバ ノキ科のイヌシデがヤママユ,ヒメヤママユ,ウスタビガ,クスサン,エゾヨツメの 餌植物として野外で確認され,ツノハシバミもヤママユの新たな餌植物として確認さ れた.カバノキ科はブナ科と同じブナ目 Fagales であり,類縁関係にある種であるの で(田村, 1974),利用可能な餌植物であると言える.また,イヌシデについては,色々 な地域で摂食が確認されていることから,その他の地域でも,広く利用されていると 思われる.多くの鱗翅目幼虫がブナ科植物を利用する(宮田, 1983;Teramoto, 1990) . 宮田(1983)によると,鱗翅目でカバノキ科のイヌシデ(利用する鱗翅目幼虫種数, 以下同様:16 種)やアカシデ(14 種)を利用する種数はブナ科のコナラ(151 種),ク ヌギ(160 種) ,クリ(83 種)に比べると大変少ない.シジミチョウ科 Lycaenidae のミドリシジミ類において,餌植物の選択はブナ科植物から他の科へと広がったもと 29.
(35) の推察されている(白水, 1961;大島, 1981;小山他, 2003) .ヤママユガ科ガ類もブ ナ科からカバノキ科,ニレ科のような他の科へと食性を広げていったと考えられる. Ochiai の類似度指数(OI ) (夏原, 19 98)を用いたところ, 餌植物種間では,ヒメ ヤママユとウスタビガが最も類似していることが分かった(OI = 0.524) .ヒメヤママ ユはクスサンに次いでかなりの広食性であるが,ウスタビガと同様ブナ科植物とバラ 科植物種など餌植物種が重なっていることが多く,ブナ科を中心とした餌植物種の選 択の幅を広げていったものと考えられる.シンジュサンは他のヤママユガ科ガ類との 餌植物種の類似度が低いことが示された(OI = 0.242) .シンジュサンは他のヤママユ の使わない植物へ餌植物選択の幅を広げていったものと考えられる.ヤママユにおい てはウスタビガ(OI = 0. 381)とエゾヨツメ(OI = 0.399)といったブナ科植物を主 な餌植物とする 2 種と類似度が高いことが示された.餌植物種の科においては,ウス タビガとエゾヨツメが最も高い類似度を示した(OI = 0.668 ) . 2 種は亜科が違う種 であるが,幼虫形態が似ており,北方系の種であることからも形態と同様,餌植物に おける他科への餌植物種の選択が似ていることが示された.また,餌植物種における クラスター解析より,分布域が広いとされるクスサンがもっとも長いユークリッド距 離を示し,分布域が狭いとされる3種(ヨナグニサン,クロウスタビガ,ハグルマヤマ マユ)は短くなった.分布面積は多くの生物における多様性の緯度勾配に関係している とされ(Rosenzweing, 1995) ,ヤママユガ科ガ類においては分布域と餌植物種の多様 性との関係も示唆された(Fig.3-3.) .餌植物の科におけるクラスター解析により,同 じ Saturnia 属に属するヒメヤママユとクスサンの距離が近いことが示された.これ . は,OI によっても類似度は高いことが示されている(OI = 0.548) 奄美大島と奈良県ではヤママユがスダジイ Castanopsis sieboldii を摂食していたが, 天蚕(ヤママユ)の摂食試験においてスダジイは飼料としての評価は低く,大多数が 4齢まで成育できないという(終齢は5齢) (寺本, 2001 ) .ヤママユにおいては,個 体,系統によって食性が若干異なることが知られていることから(寺本, 2001) ,今回 の調査で見つかった個体はスダジイを餌植物とする系統であったと考えられる. また, 京都市八瀬において,バラ科サクラ(ソメイヨシノ)へのヤママユ雌成虫の産卵が見 られた.図鑑などにはサクラを餌植物としてあげているものもある(服部, 1965) .一 方,奈良市郊外の近畿大学キャンパスにおいて,外灯による誘引で校舎の壁にオオミ 30.
(36) ズアオ,ウスタビガの産卵が確認されている(城本・桜谷, 2004) .したがって,今回 の記録されたサクラも,近くにライトが設置されていたことからも,誘引によりたま たまそこに産卵したものと考えられるため,再確認が必要である. オオミズアオとオナガミズアオは同じ属であるが,前種はかなりの広食性で,後者 は Alunus 属のみを餌としている(宮田,1987) .台湾等に分布するネッタイオナガミ ズアオ(A.selena)はきわめて多食性であるが(Wang, 1994) ,今回の調査において もオナガミズアオはハンノキ,ヤシャブシのみ餌植物として確認され,近畿大学奈良 キャンパスで隣接して生育していた同じ属のオオバヤシャブシにおいては確認できな かったことより,本種は Alunus 属の一部のみ利用するものと考えられる.一方,伊 豆諸島にはオナガミズアオがオオバヤシャブシの高密度な自生により生息を可能にし ており,オオミズアオは分布しないと言われている(宮田, 1987 ) .このことからも, オオバヤシャブシの野外利用は認められているため,再確認が必要と考えられる. クスサンでは裸子植物のイチョウ科 Ginkgoaceae のイチョウ Ginkgo biloba,シン ジュサンでは単子葉類のヤシ科 Arecaceae シュロ Trachycarpus fortunei. を食べる. 記録がある(宮田, 1983) .東南アジアにおいて,Actias 属の数種が針葉樹を食べる報 告や(Robinson et al ., 2001 ) ,北アメリカのヤママユガ科 Hyalophra 属ではカラマ ツ類(Larix laricina)を餌植物とすることから(Tuskes et al., 1996) ,エゾヨツメの ような北方の種が氷期におけるブナ類の南下にともない分布を広げ,氷河期の終了に よりブナ類が衰退し,ウバメガシなどに餌植物の選択を変えていると考えられる(後 藤, 2000) .今回の調査においては,裸子植物を食べるヤママユガ科ガ類は見つかって いないことから,里山にある植生(特にブナ科,カバノキ科)で十分に適応している と考えられる.また,今回ウスタビガにおいては植栽種であるアメリカヤマボウシ(ハ ナミズキ)を食べることが確認された.これはブナ科植物をギルドとする昆虫類が多 いため(寺本, 1993;宮田, 1983) ,空ギルドを利用しているのではないかと考えられ る.. 31.
(37) 第4章 餌植物のフェノロジーおよび利用生息部位 4-1 はじめに 昆虫類は卵・幼虫・成虫など生活史において,植物を利用しているものは多い.カ ミキリムシ類やボクトウガ類のように幹を利用したり餌として利用するものや (柴田, 2006) ,捕食者から回避するための隠れ場所にするものなど(Meg et. al., 2002, ),生 息場所としてもさまざまに利用している.特定の植物のみを餌として利用するものや 特定の花のみ訪花する狭食性昆虫などは,その植物のフェノロジーにあわせて発生し ているなど(Raimondo et al ., 2004 ) ,昆虫の生活史と植物のフェノロジーは相互に 関わっている.昆虫類の食性進化の要因としても,寄主植物のフェノロジーがあげら れる.ハナバチ類などのように花粉や蜜を利用するものは,植物との相互の進化に作 用したりしている(Selten・Shmida, 1991 ) .一方,植物はこのような昆虫類の摂食 に対して物理的や化学的な防御を行い,摂食を防ぐことが知られている(Le Corff et. al., 1999) .このような植物の利用方法として,集合を形成して摂食する種が知られて おり(Fordyce, 2003) ,集合性を持つオビカレハやアメリカシロヒトリなどの幼虫は 外敵への防衛や体温調節・湿度保持の機能を兼ね備える(服部, 1965 ;山本, 19 69) また,卵塊形成と幼虫の集合性とは深く関係している.前章で述べたようにヤママユ ガ科ガ類幼虫は餌として様々な植物を利用している.卵から蛹までの生活史の中のほ とんどを植物上で生息している.餌として利用するには植物の葉の展開など植物のフ ェノロジーにあわせて孵化する必要がある. 昆虫類は植物を餌としてだけではなく,生息場所として利用し隠蔽効果など野鳥類 などの捕食者からも何らかの回避を行っていると考えられる.そこで今回はヤママユ ガ科ガ類が利用している植物の部位や各ステージにおいて利用している部位など,生 息場所について調査解析を行った.前章で示したように各地で利用している餌植物は 異なっており,今回確認された餌植物種に既知食樹記録を用いて,利用している植物 種の特性などフェノロジーとの関係も調査した.また,クスサンは餌植物の幹に卵塊 を作り,しばしば餌植物を食いつくす現象も確認されている.ヤママユやヒメヤママ ユ,ウスタビガなどは卵塊で産卵するが,クスサンのように 100 個以上の卵塊である ことは少ない.そこで,卵塊と幼虫の集合性が餌植物種数と関わっているか,調査を 32.
(38) 行った. 4-2 調査方法 4-2-1. 産卵部位調査. 2001 年から 2006 年の冬期に,近畿大学奈良キャンパスおよび大和郡山市矢田山 遊びの森,生駒市生駒山上周辺において,ヤママユの卵塊調査を随時行った.ヤマ マユは餌植物の枝に産卵することから,ヤママユの卵塊の卵数,その卵塊の産み付 けられている部位の枝とその幹の直径,およびその枝が出ている方角の計測を行っ た.方角の測定は対象餌植物を中心として,東西南北の8方角(N,NE,E,SE, S, SW, W, NW)として測定した.今回の調査で確認されたヤママユガ科ガ類の産卵部位を, 植物上(葉,茎,幹)マユ,ライト・壁などの人工物に分類した. 4-2-2. 幼虫の摂食調査. 前章で様々な餌植物を利用していることが確認されたことから,ヤママユガ科ガ 類がどのような植物種を主に利用しているのか,植物の種類(科の違い) ,形状(単 葉-羽状複葉) ,落葉樹か常緑樹,遷移段階特性(パイオニア種)を基に,餌植物の 分類を行った.今回調査確認された餌植物を含めて利用状況がヤママユガ科ガ類間 でどのような違いがあるか比較した.また,1化性と2化性の種でどのような植物 開葉を利用しているのか,植物のフェノロジーとの関係についても調査した. 4-2-3. シンジュサンの営繭位置調査. ヤママユガ科ガ類において,ヤママユや,ウスタビガ,ヒメヤママユ,クスサン は卵(一部の種は卵内で幼虫に発育)で越冬するのに対して,シンジュサンは餌植 物の葉に営繭越冬し,翌年の春に羽化する.シンジュサンのように樹上で蛹越冬す る場合,野鳥などの天敵に長時間さらされることとなる.今回はシンジュサンの餌 植物とされる植物を 10 種選択し,マユを固定する茎の節から葉の先端までをマユ までの長さとし,葉身と葉柄を加えた長さを茎からマユまでの距離とみなした (Fig.4-1) . 33.
(39) Blade 葉身. Petiole 葉柄. Compound pinnate leaf. Simple leaf 単葉. 羽状複葉. Fig.4-1. Measurement site of plant. シンジュサンの主な餌植物である,キハダ Phellodendron amurense ,カラスザ ンショウ Zanthoxylum ailanthoides , ヌルデ Rhus javanica , シンジュ Ailanthus. altissima ,ニガキ Picrasma quassioides ,クロガネモチ Ilex rotunda Thunb. ,ク スノキ Cinnamomum camphora (L.) Sieb. ,ナンキンハゼ Sapium sebiferum , クサギ Clerodendron trichotomum ,キリ Paulownia tomentosa の葉柄および葉 身の計測を行った.葉身,葉柄の測定部分は以下に図示する. それぞれ計測に用いた植物については,キハダは奈良県宇陀郡大宇陀町,ニガキ は兵庫県神戸市北区道場,シンジュは兵庫県神戸市中央区ポートアイランド,ナン キンハゼは奈良県奈良市春日野町奈良公園で計測を行い.その他の種類は近畿大学 奈良キャンパス構内に自生または植栽されている樹木で計測を行った.. 34.
(40) 4-3 結果 4-3-1. 産卵部位調査. ヤママユの産卵部位調査の結果,枝直径と卵数には相関関係は認められず (Fig.4-2) ,近畿大学奈良キャンパス内のヤマザクラの幹の卵塊以外はほぼ枝で卵 塊が確認されており,平均枝直径は 2.6±0.8 ㎜,1卵塊の平均卵数は 8.2±5.8 個 であった(Fig.4-3) .餌植物からの方角については,北東から東,南東側に産卵数 が多いことが示された(Fig.4-4).ただし,これは道路法面の方角でもあった. Table4-1. より,調査で確認されたヤママユガ科ガ類の産卵部位毎に分類した結果, 卵塊で産卵するクスサンとヒメヤママユについては餌植物の幹に産卵し,その他は 植物の枝や葉に数個単位で産卵,ヤママユ,ウスタビガ,オナガミズアオでは壁な どの人工物への産卵が確認された.また,シンジュサンと Actias 属の2種(オナガ ミズアオ・オオミズアオ)の2化目の産卵については植物体の葉上に産卵が確認さ れた.. 35 30. No. of eggs. 25 20. y = 0.0153x + 8.1764 R2 = 4E-06. 15 10 5 0 0.0. 0.5. 1.0. 1.5. 2.0. 2.5. 3.0. 3.5. 4.0. 4.5. Diameter of twig (㎜). Fig.4-2. Relationship between diameter of twig in diameter and number of eggs of A.yamamai. 35. 5.0.
(41) 10. 6 4 2. 4 . 5~. 4 . 0~. 3 . 5~. 3 . 0~. 2 . 5~. 2 . 0~. 1 . 5~. 1 . 0~. 0 . 5~. 0 0~. No. of eggmass. 8. Diameter of twig (㎜). Fig.4-3.Frequency distribution in diameter of twig and number of eggmass of A.yamamai. 80 NW. N. 60. NE. 40 20 W. 0. E. SW. SE S. Fig.4-4. The frequency of direction of oviposition bearing of A.yamamai.. 36.
(42) Table4-1. Part of oviposition of saturniid moths.. Species of Saturniidae moth. Samia cynthia. Antheraea yamamai Saturnia jonasii S. japonica Rhodinia fugax Actias gnoma A. artemis. 4-3-2. Part of oviposition Plant Leave 1 2. 1 2 1 2. Twig. Trunk. ◎. ◎ ● ●. Cocoon. Artificial materials. ◎ ◎. ◎ ◎ ◎ ◎ ◎. ◎ ◎. ◎. ◎ ◎. ◎ ◎. ◎ ●:Egg mass, ◎:Several eggs. 幼虫の摂食調査. 第3章の結果を用いて,ヤママユガ科ガ類の餌植物種を,ブナ科,カバノキ科, ニレ科といった里山の代表的な3つの科とその他の科に分類したところ,ヤママユ が最もブナ科を餌植物として利用し(約 52%) ,クスサンを除いた年 1 化の種であ る,ヤママユ,ヒメヤママユ,ウスタビガ,エゾヨツメは一斉開葉の種が多いブナ 科(菊澤, 1986 )の利用割合が高く,年2化であるシンジュサン,オナガミズアオ やオオミズアオは順次開葉の種が多いカバノキ科(菊澤, 1 986)の利用割合が高か った(Fig.4-5) .多くのヤママユガ科ガ類は落葉樹を利用しているが,ヤママユは クスサンと比べ,常緑樹を利用している割合が高かった(χ2=9.14, d.f.=1, p<0.005) (Fig.4-6) .ヤママユガ科ガ類は主に在来種を利用しているなか,クスサンは餌植 物種の約8%の外来植物を利用していた(Fig.4-7) .シンジュサも餌植物種の 8.6% が外来植物であり,約 21%がパイオニア植物種(先駆植物種)であった(Fig.4-8) .. 37.
(43) 40. Fagaceae Betulaceae 5. Ulmaceae 16. 2. 15. 26. 10. 20. 5. 7. 22. 4 10. 7. 1. 4. Aglica japonica. Rhodinia fugax. Samia cynthia. Antheraea yamamai. Saturnia jonasii. 10 5. 0 Saturnia japonica. 2 4. 7. 3. 2. 4. 1. Loepa katinka. 2 2. 20. Other family 1 0 1. Attacus atlas. 25. 7. Rhodinia jankowskii. 2 2. Actias gnoma. 30. Actias artemis. No. of foodplant species. 35. Species of Saturniidae. Fig. 4- 5. Re lationship be tween Saturniidae moth s an d foo dplant prop erties (fo odplant family).The figures in the bar shows the number of species.. 40. Evergreen tree. 1. 30. Deciduous tree 2. 25. 9. 2. 29 21. 19. 20 15. 5. 15. Actias artemis. Aglica japonica. Rhodinia fugax. Samia cynthia. Antheraea yamamai. Saturnia jonasii. Saturnia japonica. 0. 4. 4. 2. 1. Rhodinia jankowskii. 10. 1. Loepa katinka. 15. 3. 34. Attacus atlas. 5. 20. Actias gnoma. No. of foodplant species. 35. Species of Saturniidae. Fig. 4-6 . Relationship between Saturniidae moths and foodplant properties (evergreen tree and deciduous tree).The figures in the bar shows the number of species.. 38.
(44) Pioneer p lant. 2. 2. Non-pioneer plant. 0. 25. 1. 5. 20 15 10 5. 33. 30. 29. 19. 22. 0. 0. 17. 16. Actias artemis. Aglica japonica. Rhodinia fugax. Samia cynthia. Antheraea yamamai. Saturnia jonasii. Saturnia japonica. 0. 0 4 Actias gnoma. No. of foodplant species. 40 35 30. Species of Saturniidae. Fig.4-7. Relationship between Saturniidae moths and foodplant properties (Pioneer plant or non- Pioneer plant).The figures in the bar shows the number of species.. Alien species. 35 30. Native species. 3. 25 20 15. 2 32. 31. 30. 23. 22. 10 5. 17. 16 4 Actias artemis. Aglica japonica. Rhodinia fugax. Samia cynthia. Antheraea yamamai. Saturnia jonasii. Saturnia japonica. 0. Actias gnoma. No. of foodplant species. 40. Species of Saturniidae. Fig.4-8. Relationship between Saturniidae moths and foodplant properties (Alien species and Native species ).The figures in the bar shows the number of species.. ヤママユガ科ガ類の餌植物の形状で解析を行ったところ,20 種以上の餌植物を利 用しているヤママユガ科ガ類のなかでも,シンジュサンは餌植物種の約 38%を羽状. 39.
(45) 複葉の植物を利用しており,他のヤママユガ科に比べ高い利用頻度を示した.全く 羽状複葉を利用していないヤママユとシンジュサンには有意差が認められた(χ2 =13.50,d.f.=1,p<0.001) .クスサンも多少,羽状複葉の利用が見られた(約 14%) (Fig.4-9) .. 40 5. Pinnate compound leaf tree Non-pinnate compound leaf tree. 25. 9. 1. 20. 1 30. 31. 30 22 16. 15. 5. 15. Actias artemis. Aglica japonica. Rhodinia fugax. Samia cynthia. Antheraea yamamai. Saturnia jonasii. Saturnia japonica. 0. 4. 4. 2. 1. Rhodinia jankowskii. 10. Loepa katinka. 15. Attacus atlas. No. of foodplant species. 30. Actias gnoma. 35. Species of Saturniidae. Fig. 4-9. Relationship between Saturniidae mo ths a nd food plant pr operties (le af ty pe).The figures in the bar shows the number of species of foodplant.. 4-3-3. シンジュサンの営繭位置調査. シンジュサンの餌植物 10 種の葉柄を測定した結果, 平均4cm以上を示したのは, 羽状複葉であるキハダ,カラスザンショウ,ヌルデ,シンジュ,単葉種のナンキンハ ゼ,クサギ,キリの 7 種であった.その他の3種は,単葉で常緑樹のクロガネモチ, クスノキ,羽状複葉のニガキの葉柄が短い事が示された(Fig.4-10) .葉柄に葉身を加 えた測定結果では,ニガキを除く羽状複葉種4種と,単葉で落葉樹であるキリは平均 30cm以上となった.ニガキと単葉のクロガネモチ,クスノキ,ナンキンハゼ,クサ ギは短い事が示された(Fig.4-11) .近畿大学奈良キャンパスのカラスザンショウにマ ユを作り越冬していたシンジュサン1個体は枝からマユまでの距離が 42 ㎝であった. 40.
(46) 14 12. petiole( ㎝). 10 8 6 4 2 Paulownia tomentosa. Clerodendron trichotomum. Sapium sebiferum. Cinnamomum camphora. Ilex rotunda. Picrasma quassioides. Ailanthus altissima. Rhus javanica var. roxburghii. Zanthoxylum ailanthoides. Phellodendron amurense. 0. Foodplant species of Samia cynthia. Fig. 4-10. Relationship between leaf distance (petiole) and foodplant species in S.cynthia Left five bar: Pinnate compound leaf tree. Right five bar: Simple leaf tree. White Bar: Ever-green tree, Gray Bar and Dot Bar: Deciduous tree.. 100. 60 40 20. Paulownia tomentosa. Clerodendron trichotomum. Sapium sebiferum. Cinnamomum camphora. Ilex rotunda. Picrasma quassioides. Ailanthus altissima. Rhus javanica var. roxburghii. Zanthoxylum ailanthoides. 0 Phellodendron amurense. petiole+blade(㎝). 80. Foodplant species of Samia cynthia. Fig.4-11. Relationship between leaf distance (petiole+blade) and foodplant species in S.cynthia Left five bar: Pinnate compound leaf tree. Right five bar: Simple leaf tree. White Bar: Ever-green tree, Gray Bar and Dot Bar: Deciduous tree.. 41.
(47) 4-4. 考察. ヤママユの卵塊調査の結果,ヤママユは産卵に3㎜程度の枝を好むことが確認さ れた(Fig.4-3).また,幹から東側を主に産卵方角としていた(Fig.4-4).ヤママユは夜 行性でメスは広範囲の飛翔は少ないとされることから(Tuskes et al ., 1996 ) ,太陽 の関係する方角が産卵の条件として利用することは考え難い.そこで今回示してい ないが,餌植物の枝が突き出す法面の方角も関係するものと考えられる.ヤママユ の産卵は林縁の明るい1∼2mの高さの枝に多いとされており(新開,2002) ,今回 調査を行った当キャンパス内や福島県福島市の荒川河畔林などの調査結果では林道 沿いや法面にせり出した樹木枝で見つかった個体が多い事から,このような林縁部 のようなエッジ部や法面などが産卵場所として利用されているものと思われる. ま た,チョウ類などではメス成虫による誤産卵の報告もあり(長岡, 1974;稲泉, 1979; 青木, 1989 ;福田他 1983;福田・高橋,1988),ヤママユガ科ガ類数種においても人 工物などへの誤産卵が確認されたことより,違う植物へ産卵することで餌植物種の 範囲が広がる可能性も示唆される. ヤママユガ科ガ類幼虫の既知記録餌植物と前章で新に確認された餌植物を解析し た結果,ヤママユが最もブナ科に依存していることが示された(約 52%)(Fig4-5). ヤママユとエゾヨツメがブナ科,カバノキ科,ニレ科といった里山植物をよく利用 しており,里山植生に依存する種と考えられる.前章でも述べたように,ヤママユ ガ科はブナ科植物の利用からニレ科,カバノキ科へ利用範囲を広げていったと考え られる.しかし,シンジュサン,ヒメヤママユ,クスサンはこれら里山植物とされ る3科の利用頻度はやや低いことから,他の科へと利用範囲を広げていったものと 考えられる.ヤママユ幼虫に当年葉を与えた場合の体重,消化量は共に前年葉を与 えた場合よりも高いとされ(大塚・松嶋, 1990 ) ,植物の葉の窒素量や水分量といっ た栄養状態は季節的に変化することが知られており(Raupp・Denno, 1983 ; ,野外のヤママユ,ウスタビガの年 Keaesley・Witham, 1989;Scheirs et al., 2002) 1化の種は春に孵化することで,ブナ科植物のような春に一斉に開葉する植物のフ ェノロジーに合わせていると推察される.年2化であるオナガミズアオやオオミズ アオは順次開葉の種といわれるハンノキ類などのカバノキ科を利用することで,2 化目の幼虫にも新葉を利用できるようにしていると考えられる. 42.
図
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