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保健体育
改訂学習指導要領から見たこれからの保健体育を考える
森山 進 嶽山由佳里 本論の要旨 改 訂 学 習 指 導 要領 で は 「 心 と か ら だ の 一 体 化 ・ 指 導 内 容 の 体 系 化 ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ, 」 「 」 「 ン 能 力 の 育成 ・ 健 康 な ラ イフ ス タ イ ル の 確 立 」 と い う 4 つの キ ー ワ ー ド を 示 し , 「生 き る」 「 力 」 の 育 成を 明 示 し て い る 。 そ れ に と も なっ て 授 業 時 数 増 の 趣 旨 を ど の よう に 生 か す か が 求 め ら れ て い る。 授 業 時 数 増 の 最 終 的 な ね ら いは 「 思 考 力 等 」 の 育 成 で あ り 「 考 え る力 」 を 育 て, る た め に ,考 え る 時 間 や 場 面 を 保 障 す る こと が 必 要 と な る 。 つ ま り 「 思 考 力 等 」を 育 て る た, め の 時 間 をど の よ う に 生 み 出 す か , ま た ,そ れ を ど の よ う に 活 用 す る か が大 き な 課 題 で あ る 。 BIWAKO 本 年 度 は, こ の 「 思 考 力 等 」 に 焦 点 を 当て て み る 実 践 を 行 っ た 。 情 報 科・ B T ( )で 得 た 『 学 び 方 』 の 方 法 知 を 取り 入 れ , 仲 間 と の 関 わ り の 中 で, 動 き の 本 質 や 運 動 の TIME 特 性 を 考 えさ せ た り , か ら だ で 感 じ た こ と, 目 で 見 た こ と を 文 字 に さ せ たり , 頭 で 考 え た こ と を こ と ば で伝 え さ せ る こ と を 重 視 し た 。 また , 健 康 志 向 が 高 ま る 昨 今 , 家庭 や 地 域 社 会 と の 連 携 を 図 る 方法 を 探 り な が ら , 日 常 生 活 に おい て 健 康 に つ い て 考 え , 行 動 でき る 実 践 力 を 身 に 付 け さ せ る こと お 重 視 し た 。 そ の 結 果, 1 年 生 で は , か ら だ の 動 き に対 す る 語 彙 が 具 体 的 に 現 れ 始 め, 3 年 生 で は , 三 年 間 の 積 み 重ね を 得 て , 文 章 を 書 く こ と ・ 伝え る こ と が よ り 明 確 に な り , 視点 を 自 分 の 動 き と 他 人 の 動 き を比 較 で き る と い う 生 徒 の 変 容 が見 ら れ た 。 キーワード 心とからだの一体化,コミュニケーション能力の育成,思考力 1.研究主題によせて (1)はじめに 生徒を取り巻く環境の変化から,体力低下の問 題,積極的に運動に親しむ生徒とそうでない生徒 の二極化という問題がクローズアップされて久し い。2012 年(平成 24 年)度から完全実施される 改訂学習指導要領では,現行の学習指導要領の理 念を継承して「生きる力」の育成を目指し 「確, かな学力 「豊かな心」とともに「健やかな体」」 の育成が掲げられている。また,新しい保健体育 の目標に「心と体を一体化してとらえる」が加え られたことによって,これまでの具体的な目標で ある「健康的な生活の実践力を養うこと 「生涯」 にわたりスポーツに親しむこと 「体力の向上」」 の3つが相互に密接な関連を持っていることが強 調され,豊かなスポーツライフを実現するととも に,自己の健康は自ら管理し維持していく資質・ 能力を培うことが求められた。 「生きる力」を育成するポイントとして以下の 3つにまとめることができる。 ① 自分で課題を見つけ,自ら学び,考え,主 体的に判断し,行動し,問題を解決する資質 や能力を身につける。 ② 自らを律しつつ,他人とともに協調し,他 人を思いやる心や感動する心などの豊かな人 間性を身につける。 ③ たくましく生きるための健康と体力を身に つける。 ①で求められている力は,自分にふりかかる問 題を自分で解決していく力であり,解決の糸口を 自分で見つけ出していく力である。今回の改訂で 技能,態度と並列して 「学び方」が位置づけら, れている。ここでの「学び方」は,教師から提示 された目標や内容を上手に獲得,体得,習得する という学びではなく,興味・関心にもとづいて自 分が抱えている問題をどのように解決し,同じよ うな壁にぶつかったときにどのように活用できる かを問う学びである。この「学び方」を身に付け ていれば,生徒がこれからの人生で出合う壁を乗 り越えていくことができたり,目標を実現させた り,疑問や課題を解決していくために必要な最善 策を見つけ出すことができる力になる。 ②に有効な運動の一つが「武道」といえる。な ぜなら「武道」は常に相手との関係が重視される, , そしえ 我が国における伝統的な行動様式を有し 礼法や作法を重んじ,その中で人間性を養うこと が求められている 「相手はともに学び合う関係。 である」ことを理解することによって,相手を尊 重する心や自分を律する心を追求したり,規則の 遵守,公正,協力などの社会的に望ましい態度を 養うことができる。 ③は,これからの社会を生きる生徒に身に付け てさせたいたくましさを目指すものであり,心身 へのストレスに対応できるしなやかな心と体を鍛 えることである。 (2)「武道」領域について 本校では 「武道」領域の授業に柔道を選択し, てきた。その理由として,容易に柔道場が設置で きること,柔道着を用意できれば,いつでもでき ること,指導者に柔道の指導経験があったことが あげられる。柔道以外に剣道を選択できるが,防 具が準備できないという問題がある。この問題は 多くの学校が抱えているといえる。そこで,この 状況を改善する方法を探り,本年度は剣道の授業 を行った 「武道」領域の必修化にともなって,。 男女必修,防具がない現状,指導経験がない状況 においてどのような授業実践ができるかを「思考 力」 や 「コ ミ ュニ ケ ーシ ョ ン 能力」,「 自己観 察 ・他者観察」を通じて,自分の体幹に気づくこと を意識した展開を行った。 授業を始めるにあたって,中学1年生を対象に に剣道の経験の有無や武道についての印象と剣道 の授業の期待度を調査した。 【アンケート内容】 1.これまでに剣道をしたことがありますか? (YES or NO) 2 「. YES」 と答えた人は,どのくらいの経験 がありますか? ① 竹刀を持ったことがある程度 ② 小学校まで習っていた( 年) ③ 今も習っている ( 年) 3 「武道」という言葉を聞いたことがありま. すか? 4 「武道」という言葉からどんなことを想像. しますか? 5 「剣道」と聞いて,どんなイメージがあり. ますか? 6 「礼に始まり礼に終わる」と聞いて,どん. なことを想像しますか? 7 「剣道」の授業に関して感じていることが. あれば,どんなことでも良いので書いてくだ さい。 「 」 1の これまでに剣道をしたことがありますか では,男子では経験者が5人(52人中 ,女子で) は4人(56人中)であった。経験者は男子1人 を除いて小学校で数年間習っていた程度であり, 女子では,竹刀を持った程度である。剣道は未経 験者が多いことが示された。 3の「武道という言葉を聞いたことがあります か」では,男女ともに「武道」という言葉を聞い たことがあると答えた生徒が大多数であった。 4の「武道」のイメージは以下の通りだった。 男 高貴なスポーツ。かっこいい。自分の身を 子 守るための技。特別な服を着てそう。畳の 。 。 。 上でやる 男のスポーツ 厳しいスポーツ サムライ。人と人で取っ組み合って投げ飛 。 。 ばす 槍・剣などの類を鍛錬している様子 日本ぽい一対一で戦うスポーツ。 戦うことで何かを学ぶこと。気合い。作法 が厳しい。真剣。 柔道・剣道・空手・少林寺・カンフー 女 自分の身を守るためのもの。日本の歴史が 子 深いスポーツ。硬派。かっこいい。熱血。 暑そう。時代劇。格闘技。痛そう。オリン ピック。厳粛に行われる。男の人がやって いるというイメージ。投げ飛ばしたり,蹴 。 。 。 ったり 叩かれたりしていたそう 臭そう 「 エ イ 「 ヤ ー 」 と い う か け 声 , 厳 し い 練」 習に立ち向かっている。 武士。サムライ。 心技体。正々堂々と戦う。礼儀正しい。け じめをつけて常に全力で挑む。 柔道・剣道・空手・合気道 さらに,5の「剣道と聞いて,どんなイメージ がありますか」の結果は以下のようであった。 男 日本の伝統。チャンバラ。木刀で戦う。竹 子 刀でたたき合う。1 対 1 で戦う。大声を出 し,礼儀正しくする。 大変そう。汗くさそう。臭い。汗だく。礼 儀正しい。おもしろそう。怖い。危ない。 暑い。重い。かけ声とかがうるさそう。 女 裸足。重そうな服 「えいっ 「やぁ 「と。 !」 !」
子 うっ!」。竹刀を使う。剣を使ってバシバシ する。姿勢がいい。身を守る。テンポ良く 動く。メリハリのある声と動き。男の人た ちが戦っている。鎧を着て戦う。棒で頭を ぽんと叩く。大人の遊び。 。 。 。 。 。 硬派 臭い 暑い 迫力ある言葉 痛そう かっこいい。危ない。 6の項目「礼に始まり礼に終わる」では, 男 しっかりとした礼儀。始まりも終わりもし 子 っ か り す る と い う こ と 「 よ ろ し く お 願 い。 します」で始まり「ありがとうございまし た」で終わる。相手やその武道館を尊敬し て使う。遊びの気持ちではできない,真剣 な気持ちで気を引き締めないといけない。 どんな相手でも礼儀をわきまえなければな 。 。 らない スポーツができることに感謝する 武道をさせてもらうことに感謝する。させ てもらったことに感謝する。 女 けじめ。武道の精神。昔の人がやっていた 子 感 じ 「 お 願 い し ま す 」 で 始 ま り 「 あ り が。 とうございます」で終わる。礼儀正しい授 業。気を引き締めている。堅苦しい。礼儀 正しく美しく勝っても負けても礼をする。 かしこまった感じ。初めは必ず礼をして, 終わった後も必ず礼をする。礼一つも武道 の修行。日本って感じがする 「オッス 」。 ! みたいな感じ,みんなが大きな声を揃えて …。 7の「剣道の授業に関して感じていることがあ , 」 れば どんなことでも良いので書いてください では,剣道の授業の期待感が確認できた。 男 久しぶりにやるので楽しみ。マンガでかっ 子 こよかったからおもしろそう。相手の攻撃 をかわして攻撃するのがおもしろそう。相 手と戦い何かを学びたい。竹刀で戦うのが 楽 し そ う 「 メ ~ ン 」 が 気 持 ち よ さ そ う 。。 前から一回はやってみたいという気持ちが あった。柔道をしていたので剣道という新 しい武道に取り組みたい。礼儀正しくして 相手のコミュニケーションをとるのが難し そう。痛いのはちょっと嫌。厳しそう。竹 刀で叩くのは少し怖そう。防具を洗濯して いないので防具を着るのがイヤだ。 女 お も し ろ そ う と い う か 好 き。 兄 が 剣 道 を!! 子 やっていたので感じは分かる。やったこと がないので楽しみ。竹刀を持って振るのが 楽しそう。ルールが難しそう。すごく楽し みにしている。剣道を通して色々なことを 学び,それを日々の生活に生かしたい。痛 そう。夏だから暑そう。全体的に楽しそう だけど痛そうで嫌。女子がするのが意外。 女子と男子を分けてほしい。やったことが ないので少し怖い。竹刀で打つのはできて も避けるのが難しそう。くさそうだし嫌。 以上のように,武道や剣道のイメージは 「日, 本の伝統的なスポーツ」と「精神を鍛えるスポー 」 , ,「 」,「 」, ツ という回答が多く また 痛い くさい 「怖い」が少なからずいたことがわかり,様々な 問題点が浮き彫りになった。 これらから剣道の授業では,まず期待感を生か すような授業展開と,恐怖心や剣道に対するマイ ナス的なイメージを取り除く授業展開が必要であ ると確認できた。 (3)研究内容 ①生徒の実態把握,幅広い資料収集 ②授業展開の検討,授業用資料の作成・準備 ③授業の分析と記録,生徒観察 ④画像遅延装置による評価 ⑤考え方をまとめるワークシートの活用 ⑥互いに教え合う場面設定 2.「体育分野」の授業実践 !! (1 “剣道”で自分の動きを発見してみよう) ~自己観察と他者観察~ (森山 進) ①題材名,対象学年,授業時間 武道(剣道 ,第1学年男女共修,全6時間) ②主題との関わり 改訂学習指導要領において 「武道・ダンス」の, 領域が必修になる 「武道」領域では柔道の授業を。 多く経験してきたが,改訂にあわせて,本年度は 「武道 領域 剣道の授業展開を実施した 今回」 , 。 , 竹刀は手に入れることができたが,剣道の楽しさ の醍醐味「相手を打つ」こと,防具を着けての攻 防はできない。したがって,防具がなくても剣道 の楽しさや剣道から学ぶこと,武道から他人をい たわる・尊敬する気持ちを感じさせる方法を考え た。指導者が未経験なため,有段者である本校校
長の村山勤治先生に指導・助言をいただいた。 授業開始は「黙想」から始めた。にぎやかな雰 囲気ではなく(活動するために話し合うことや生 徒にとって活動自体動的なものが多いため ,正座) 。 して心を静めて授業を迎えることは未経験である 第1次として武道の心得を理解させ,本単元で学 ばせたいこと,また,技能の最終的な基本技能の 目標は「正面うち」と「早素振り」であることを 伝えた。第2次では,目標技能を身に付けさせる ためにビデオ教材を用いて視聴覚で動きを確認さ せた。また,足さばきの動作を習得させるために スポンジを足の指先で蹴る動きを練習させた。さ , , らに 素振りの動きを身に付けさせるためにまた 補助棒,バスケットボール,スリッパ,物干し竿 を用いた。第3次では,自分と仲間の動きを学び 合うために 「自動画像遅延装置」を用いて遅れて, 映し出される動きをを確認させた。そして,技能 , 「 」 習得のためにグループを組ませ 仲間の 素振り を縦と横の三方から見て,感じたことを言葉で伝 えさせ,ワークシートに記入させる作業を繰り返 した。 このように,生徒一人ひとりに技の構造を理解 させて,技の動きを習得させるために必要な「知 識」を身に付けさせた。特に 「からだで感じる」, 「からだで身に付ける 「からだで考える 「でき」 」 て嬉しい」といった従来の教師指導型の授業展開 ではなくて,自分たちで学ぶことに喜びを感じさ せ,授業展開を目指した。 武道以外の様々な単元で「体幹」を意識させた 授業展開を工夫してきた。本年度もこのことを意 識した授業展開を取り入れようと,剣道において も重心移動の際にスムーズに足や腰を動かさせた り,竹刀を正しく,力まずにまっすぐ振らせるた めにバスケットボールや物干し竿で手首の動きを 意識させた。素振りをまっすぐに振らせるために 体育館や武道場の角を使って「角っこ素振り」や 鏡に貼ったテープにそわえた「素振り」の練習な どを行わせた 「自動画像遅延装置」に映った自分。 の姿を確認させて,教え合うことを大切にした。 12年間を見通した発達段階のまとまりを踏まえ , , , て 体系化を図り 生徒が単に習うだけではなく 自らの意志で運動することを選び,そのために必 要な考え方を身に付けられるようにした。 技とからだの動きを身に付けさせることで,生 涯にわたって運動に親しむ資質を学ばせることが できるであろう。そして,どんなことをすればい いいのかを考える力(知識の習得),「調べる」→ 「取り組む」→「わかった」という達成感と充実 感,他の領域や日常生活の中で活用できる実践力 を身に付けた生徒を育成することを目指した。 ③学習目標 ・武道の特性に関心をもち,仲間と協力して教え あい,互いの技能を高めようとする。 【関心・意欲・態度】 ・自己の能力に応じた目標を設定し,課題を解決 , するための工夫や仲間の課題を見つけ合いながら それを克服するための練習方法を探る。 【思考・判断】 「 」,「 」, 。 ・ 正面うち 早素振り の技能を身に付ける 【技能】 ・技の構造や正しい動きを身に付けるためのポイ 。 【 】 ントとそのための練習方法を理解する 知識 ④学習計画 第1次 「武道」とは何か。剣道の動きを知ろう。 ~スポンジで足の動きを覚える~ …1時間 第2次 ビデオで「素振り」の動きを身に付けよ う。~補助棒やバスケットボールで素振りを体 験する~ …1時間 第3次 自動画像遅延装置で自分と仲間の動き を見て,言葉で伝えよう。 …1時間 第4次 竹刀で受け止めてみよう。 …1時間 第5次 自分たちで練習してみよう。 ~連続正面うち・左右面にも挑戦~ …1時間 第6次 正面うち・早素振りのテスト …1時間 ⑤授業の様子 第1次 剣道を知る 第2次 ビデオで確認 第3次 自動遅延装置 第4次 男女ペアでの素振り練習
第5次 自分で練習・連続正面打ち 第6次 テストの様子
⑥学習展開(第3次) 左の授業の生徒の感想
⑧成果と課題 , 。 剣道の単元の終了後 再度アンケートを行った 【アンケート内容】 1.剣道の授業を受けて楽しかったですか? 2.YES と 応え た人は 、何(どん なこと) が 楽しかったですか? 3.NOと応えた人は、何(どんなこと)が楽 しくなかったですか? 4.男女共修での剣道の授業はどうでしたか? 5.これから学年が上がって剣道をする場合、 どういった授業がしたいですか? 6 「礼に始まり礼に終わる」をあなたはどう. 受け取りましたか? 7.剣道の授業を終えて、自分や仲間を振り返 っての感想を書いてください。 1の「剣道の授業を受けて楽しかったですか」 では,男子57人(59人中 ,女子45人(5) 4人中)が楽しかったと答えた。 次に2の 「YES と 応えた人は、何(どんなこ と)が楽しかったですか」の回答である。 男 早素振りが気持ちよかった。 子 剣を振った後の重心移動に慣れた後に剣道 をしたとき。連続でたたくこと。 。 竹刀で打ち合う時の音がいい音だったから , お互いに打ち合うとお互いの欠点がわかり それを直したこと。 カメラや鏡で自分の姿を見ながらしたのが とてもやりやすかった。 竹刀の素振りやビデオを見て自分はどんな 風に振っているのかがわかったこと。 女 竹刀を振ることですっきりした。 子 お互いに教えあえてやったこと。 最初の黙想と「1 「2 「面!」などみん」 」 なで声を出すこと。 上下ぶりや早素振りが上達していくこと。 少しずつ竹刀の重さになれて上手にふれる ようになってきたこと。 連続面打ちがサイコーに楽しかった。 スリッパや物干し竿を使ったりビデオや鏡 を使ったこと。 竹刀を振って相手の竹刀に当たる音が気持 ちよかった。 足と手の動きがあったときの達成感。 3の「NOと応えた人は、何(どんなこと)が 楽しくなかったですか」では 「正座がきつかっ, た」や「竹刀が重かった 「練習ばかりだった」」 という感想があった。 「 」 4の 男女共修での剣道の授業はどうでしたか では 「男女での力の差」を感じた生徒以外はほ, とんどの生徒が男女共修に違和感や不安感を感じ た生徒はいなかった。 「 、 5の これから学年が上がって剣道をする場合 どういった授業がしたいですか」では 「簡単な, 試合がしたい 「防具を着けてみたい」という感」 想があった。 6の「 礼に始まり礼に終わる』をあなたはど『 う受け取りましたか」では,男子が「剣道ってこ んなに楽しいものなんだなあと思いました 「心」 身共に成長できた 「仲間とめったにできない剣」 道をやってまた交友が深まった」さらに「来年も 続けて欲しい」などの感想もあった。女子では, 「ともだちにキレイ(うまい)といわれたことが 嬉しかった 「はじめより技能が上手になって嬉」 し か った 「 いい 経験 に な った 「一 生懸 命やっ」 」 ている仲間を見て,自分も一生懸命やれたし,精 一杯やるということが身に付けられた」などがあ った。 これらの生徒の感想から,多くの生徒が概ね剣 道の授業に「楽しさ」を感じることができたと見 て取れる。また,正面打ちや早素振りのような基 礎的な技能習得のために様々な教具を用いたこと で,生徒の興味を引くことができ,からだを動か す楽しさを感じさせることができた。さらに,鏡 や「自動遅延装置」を用いたことで,自分の目で 自分を見るという活動ができ(自己観察 ,友達) や自分の動きの欠点や長所を学び(他者観察 ,) 言葉や文字で伝えようとする姿が見られた。今後 は,さらに生徒の興味を高める授業展開の工夫を するとともに 「思考力」を高める授業展開,高, 度な「コミュニケーション能力」を身に付けさせ る活動を目指したい。また,剣道の授業を継続す るために,防具がない状況でも実施できる授業方 法も模索したい。 【引用・参考文献】 「 」, ■最新体育授業シリーズ 新しい剣道の授業作り 大修館書店,村山勤治・岡嶋 恒 他,/ 2004. ■財団法人全日本剣道連盟編「剣道授業の展開 ,」 . 2009 , ■先生の面白 びっくり 新発想! ! ! 剣道レッスン スキージャーナル株式会社,髙倉聖史,2008.
(2)実践力を高めるための学習形態の工夫 ~イメージから感覚へ~ (嶽山 由佳里) ①題材名,対象学年,授業時間 球技(バレーボール),第3学年女子,全5時間 ②研究主題との関わり 現代の生徒は、野外での遊び経験が減少してい るといわれており、その理由としては、社会・環 境の変化が挙げられる。それに比例して、生徒の 運動能力の低下が問題となっている。特に“投げ る”という動作について、新体力テストの結果か らも、若干の記録向上はみられるものの課題が多 く指摘されている。その要因として、幼少期のボ ール遊びなどの経験不足が深く関与しているので はないかと考えられている。 中学校においても、ボールの大きさや硬さ、柔 らかさ、弾み方など、競技に応じたボールの特性 の理解はもちろん、本来遊びの中で自然と身につ けていた感覚である、ボールの特性に対応する動 き方が分からずにとまどい、そのことによって競 技に苦手意識をもつ生徒も少なくない。このよう な実態から、これまでの指導方法を見直し、ボー ル遊びの段階から指導していくことが、競技の上 達につながっていくのではないかと考え、授業実 践を行った。とくに主題とした「思考力」に焦点 をあて、動きの本質や運動の特性について生徒自 ら考えさせ、記憶と思考において重要な役割を果 たしているイメージ(心的イメージ)として思い 描 い た も の を 感 覚 と し てと ら え さ せ た い と 考 え る。 バレーボールは、幅広い年齢層の誰もが気軽に 楽しめるので、生涯スポーツとして人気のあるス ポーツである。味方のミスをカバーしてボールを つなぐことで、チームとしての一体感が生まれる ため、よりよい人間関係を築くことができる種目 である。また全身運動であり、敏捷性・調整力な どの中学生に必要な能力を養うことができる。ネ ットを挟んで対戦し、相手チームの技能に応じた 攻防を工夫して、ゲームを展開していくことに楽 しさの本質がある。対戦中は、常にボールが移動 し止まることがないため、瞬間的にしかボールに 触れることができず、プレイヤーはボールの行方 を予測しながら、素早く落下点に移動してボール をつなぐ能力が要求される。しかしながら、左右 と後方に動いたり、跳び上がるなどの動作は、非 日常的な動きであり、初心者にとっては、短期間 に習得することが難しい。例えば、自分のところ へ飛んできたボールには手が出せるものの、少し はなれたところへ飛んできたボールに対しては、 落下点に入ることができず、簡単にミスしてしま う傾向が見られる。これを解消するためには、基 本技術の習得と共にボールに触れていない時のポ ジショニングの技能が要求されるが、それ以前に ボールを捕ったり投げたり弾ませたりする感覚の 体得が不可欠であろう。そこで本研究では、さま ざまな身のこなしをリズムとしてとらえさせ、そ の中でボールに触れさせることを通してバレーボ ールの特性と体の使い方などを体得させていきた い。 その方法として、元来神経系のリハビリテーシ ョンに用いられている PNF Proprioceptive 固、 ( 〔 有受容性感覚器〕Nuromuscular〔神経-筋〕Faci litation〔促通 )の理論を応用した“運動神経〕 がよくなる体操 (作成:TEAM自然体研究会)を” 活用する。PNFは、昨今スポーツ分野で用いられ るようになっている。これによって直前の動作に 焦点をあてて、ボールに触れる感覚を身につけさ せたい。また授業後にワークシートを記入させ、 生徒の苦手意識やつまずきの原因を見出し、挑戦 することの大切さ、できないことができるように なる喜びにつなぐ指導を行う。その際、仲間とと もに体を動かすことの楽しさや他を思いやる気持 ちの重要性など、コミュニケーション能力も育成 していきたい。 ③学習目標 ・意欲的に活動し、仲間と協力しながら互いに高 めあい、積極的に取り組む。 【関心・意欲・態度】 ・自己の課題を見出し、その改善に向け練習法を 工夫する。 【思考・判断】 ・仲間の課題に気づき、改善点を探る。 【思考・判断】 ・バレーボールの基本技術とボールに触れる感覚 【技能】 を身につける。 ・体や技の仕組みや構造を理解し、習得した技の 活用法を理解する。 【知識・理解】
④学習計画 第1次 本単元のねらいと目標の確認、ウォーム アップダンス(D2ダンス)の実践 …1時間 第2次 アンダーハンドパスでボールをとる左右 の動き方の実践と理解 …1時間 第3次 スパイクを打つための基本ステップの習 ( ) 得 …1時間 本時 第4次 ゲームでの活用 …2時間 ⑤ウォーミングアップダンスの様子 ⑥第3次の学習展開 ・ 支 援 事 項 ◆ 評 価 規 準 学 習 内 容 ・ 活 動 評 価 ・ 配 慮 事 項 導 1 集 合 あ い さ つ 指 示 準 備 運 動 ・ 欠 席 者 , 見 学 者 の 確 認 を 行 う 。 入 ・ 更 衣 後 体 育 館 3 周 の ラ ン ニ ン グ を 行 ・ け が 防 止 の た め , ス ト レ ッ チ 体 操 は て い ね い う 。 に 行 わ せ る 。 10 ・ 4 列 横 隊 で 集 合 し 健 康 観 察 を 受 け る, 。・ 用 具 ・ 服 装 の 忘 れ 物 な い か 、 確 認 す る 。 分 ・ 本 時 の 内 容 を 知 る 。 ・ 授 業 開 始 に 遅 れ ず に 体 育 館 3 周 し , ス ト レ ッ ・ ス ト レ ッ チ 体 操 を 行 う 。 チ 体 操 な ど の 準 備 運 動 が し っ か り 行 え た か 、 確 ・ 補 強 ・ 補 助 運 動 を 行 う 。 認 す る 。 ・ ウ ォ ー ム ア ッ プ ダ ン ス ( D2ダ ン ス ) を ◆ 一 つ 一 つ の 動 作 を 理 解 し 、 積 極 的 に 取 り 組 ん 。 【 】 行 う 。 で い る 関 心 ・ 意 欲 ・ 態 度 2 学 習 内 容 の 確 認 ・ ボ ー ル を 上 げ る の で は な く 、 左 右 に 移 動 し た 後 、 ボ ー ル に 触 れ る 瞬 間 は 静 止 し て 、 腕 に ボ ー ル を 当 て る 感 覚 を つ か む よ う 指 導 す る 。 ・ 8 カ ウ ン ト の リ ズ ム を 取 り な が ら ボ ー ・ ス テ ッ プ が 習 得 で き て い る グ ル ー プ に は 、 投 展 ル に 触 れ る タ イ ミ ン グ を つ か む 。 げ る ボ ー ル の 速 さ ・ 高 さ を 変 え て 、 難 易 度 を 上 開 ・ 2 人 組 ( 3 人 組 ) に な り 交 互 に 取 り 組 げ て い く よ う 指 導 す る 。 、 、 み 、 ボ ー ル を 投 げ る 距 離 や タ イ ミ ン グ な ◆ 自 己 仲 間 の 課 題 に つ い て 互 い に 助 言 し 合 い ど を 互 い に 助 言 し あ い な が ら 取 り 組 む 。 練 習 法 に 変 化 を 加 え 、 工 夫 し て い る 。 【 思 考 ・ 判 断 】 ・ 実 施 方 法 に つ い て の 説 明 を 聞 く 。 ・ 正 面 か ら の ボ ー ル に 対 応 で き る よ う で あ れ ・ リ ズ ム に 合 わ せ て ス テ ッ プ 練 習 を 行 ば 、 右 斜 め 前 か ら ボ ー ル を 上 げ て 、 よ り 実 践 に う 。 近 い 形 態 で 行 わ せ る 。 35 分 ・ 空 中 で ボ ー ル に 触 れ る 感 覚 を 身 に つ け る 。 ◆ 空 中 に あ る ボ ー ル に 合 わ せ て 、 ス パ イ ク の ス ・ 2 人 組 ( 3 人 組 ) に な り 交 互 に 、 ボ ー テ ッ プ を 行 っ て い る 。 【 技 能 】 ル を 投 げ る 距 離 や タ イ ミ ン グ な ど を 互 い に 助 言 し あ い な が ら 取 り 組 む 。 ま 3 集 合 ・ 振 り 返 り ・ あ い さ つ ・ 本 時 の 活 動 が 今 後 ど の よ う に つ な が っ て い く と ・ 本 時 の 成 果 と 次 時 へ の 課 題 を 確 認 す の か 理 解 さ せ る 。 め る 。 ◆ ワ ー ク シ ー ト に 自 己 の 課 題 や そ の 改 善 策 に つ ・ ワ ー ク シ ー ト に 自 己 評 価 ・ 反 省 ・ 感 想 い て 記 入 し て い る 。 5 分 を 記 入 す る 。 【 思 考 ・ 判 断 】 ・ 後 始 末 を す る 。 スパイクの基本ステップを習得しよう 左右へ移動しアンダーハンドパスで返球しよう
⑦ワークシート ≪スパイクに関する生徒のイメージ≫ ≪生徒の感想より≫ ・初めはこんなダンスで本当にバレーボールが うまくなるのか不思議だったけれど、このダンス で バ レ ー ボ ー ル の 動 き が自 然 と 体 に 入 っ て き た し、今まで空振りばかりしていたのが、ボールに ちゃんと届くようになった。 ・スパイクは意外と身近なものに感じた。バレー のことを少し好きになれそうだ。 ・練習をしていて音が「バシッ」と響いた時に、 すごくおもしろいと感じました。 ・リズムに合わせて練習することで、スパイクを 打つ時のタイミングをはかれるということを発見 しました。 ・ボールを上げる方も、どこに出せばちゃんと打 てるのかということがわかった。 ・今回の授業を生かし、もっと「考えたゲーム」 をやりたいと思いました。 【 3年生 保健 体育】 ≪バレーボール≫ ID :( )名 前 ◇バレーボールへのイメージ ◇もしかめダンス①(ウォームアップ)について * 難易度 高い 低 い * 有効性 高い 低 い ◇もしかめダンス②(基本動作)について * 難易度 高い 低 い * レシー ブに おいて の有効 性 高い 低 い 4 3 2 1 4 3 2 1 ≪ 理由≫ ≪ 理由≫ 4 3 2 1 4 3 2 1 ≪ 理由≫ ≪ 理由≫ ◇イ メージ マップ ◇ふりかえり(授 業を終えて感じたこと・ 感想など) ID:( )名 前 スパ イク ≪イメージマップより≫ スパイク できない 難しい 練習が大変 トレーニング が必要 タイミングが つかめない 無理 できる人は うまい人 すごい 強い あこがれ できたら 格好いい 自分は したこと がない 速い するどい とるのが 難しい 痛い こわい よける ボールが つながら ない 授業の 本番(試合)で やったことがない レシーブ トス みんなで つなげた 成果 チームワーク ジャンプ力 背の高い人 に有利 返せたら うれしい 攻撃の チャンス 得点力 UP 打てたら 楽しい ⑧成果と課題 授業前の調査では、生徒のバレーボールに関す る イ メー ジ は 「 手が 痛 い 「突 き指 しそ う」な、 」 どの身体面におけるマイナスイメージや技術面に おける苦手意識が数多くみられた。しかし事後の 生徒の感想からは、そのようなマイナスイメージ は、減少していた。主題でもある「思考力」につ いては、体の使い方・動きの本質について考え、 友人同士言葉で伝え合うなど、コミュニケーショ ン能力の育成という観点をふまえた学習を展開す ることができた。 しかし、球技における身のこなしや巧緻性など については、もう少し早くから経験させ、繰り返 し反復させていくことが必要であるという課題が 浮き彫りになった。 生徒の実情に合わせて、指導内容の視点を変化 させていく必要があると改めて感じるとともに、 今後は改訂学習指導要領のポイントの一つでもあ る「身体能力の向上をめざした指導内容の一層の 体系化と明確化」を視野にいれたカリキュラム編 成を考えていく必要がある。 中学校の保健体育の授業においては、小学校・ 高等学校での学習内容にも精通しながら、学習指 中 導の独自性を発揮することが期待されている。 学校の授業で生徒が様々なスポーツに触れ、学びの 中で楽しみを見出し、生涯スポーツとして継続して取 り 組 ん で いけ る 競 技 に 出 会 う 機 会 を つ く っ て いき た い。 【引用・参考文献】 ■自然体バレー塾の〈基シリーズ〉 第1巻 「動きの基 ,草野健次著,バレーボール・アン」 2008 リミテッド, ■自然体バレー塾の〈基シリーズ〉 第2巻 「レシーブの基 ,草野健次著,バレーボール・」 2008 アンリミテッド, ■「保健体育ジャーナル」第84号 (株)学研, 2010 教育みらい,