• 検索結果がありません。

共同性を育む「総合的な学習の時間」に関する研究 : 移行期間における全国アンケート調査の分析を通して

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "共同性を育む「総合的な学習の時間」に関する研究 : 移行期間における全国アンケート調査の分析を通して"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)学校教育学研究, 2002,第14巻, pp.35-45. 35. 共同性を育む「総合的な学習の時間」に関する研究 -移行期問における全国アンケート調査の分析を通して渡遵満山下聖和 (兵庫教育大学) (鹿屋市立寿北小学校) 本稿は,いじめ,不登校そして学級崩壊といった今日の学校教育の諸問題は,単に偶発的に生じた子どもたちだけの問題で はなく,システム合理性を一面的に追求してきた近代社会と近代教育が抱える病理であるという観点から,その近代教育の オルターナティヴとしての「総合学習」の意義と課題を探ることをめざしている。総合学習は近代教育の展開の中で,学習 の個別性と共同性という観点から幾度となくくり返し課題とされたものであり,今日の「総合的な学習の時間」が登場した 背景にも,教科の枠組みの中で知識の伝達に終始していた教授・学習活動への見直しがある。それはモノローグ的行為とし ての教育的行為への見直しでもある。 「総合的な学習」がその意義を実現するためには,この古くて新しい教育の課題への 取り組みが不可欠でる。そこで,本研究では,全国アンケート調査を通して総合的な学習の実態を調査すると共に,共同性 を育む総合的な学習の在り方を探った。 キーワード:総合的な学習の時間,共同性,コミュニケーション的行為,相互行為. 渡連満:兵庫教育大学・学校教育学部・教授, 〒673-1494兵庫県加東郡社町下久米942- 1 E-mail: [email protected] 山下聖和:鹿屋市立寿北小学校, 〒893-0013鹿児島県鹿屋市札元1-17-10. A Study on the Period for Integrated Studies in terms of Communality : Analysis of the Survey on Elementary Schools in Japan Michiru Watanabe and Seiwa Yamashita (Hyogo University of Teacher Education) (Kotobukikita Elementary School in Kanoya City) This study aims to make clear about the meanings and the problems of Integrated Studies associated with the alternative education to the modern education. The modern education has caused many problems in schools. Bullying among students, student s refusal to attend school, disorder in the classroom and so on are they. We think that it is necessary to change our paradigma of the modern education and to create a new paradigma of education. It is not the monological education, but the dialogical education. The monological education must fall into the problem of indoctorination. On the contrary, the dialogical education can develop the communality in students. We think that it is the most important meaning of the integrated studies. From this point of view, we investigated how teachers in elementary schools think of the meaning of integrated studies. This is the report on this survey.. Key Words: the period for integrated studies, communality, the communicative action言nteraction. Michiru Watanabe is a professor of Department of Counseling and Guidance at Hyogo University of Teacher Education, 942-1 Shimokume, Yashiro, Kat0-gun, Hyogo 673-1494 Japan. E-mail: miwatan@ edu.hyogo-u.ac.jp Seiwa Yamashita is a teacher at Kotobukikita Elementary School in Kanoya City, 1-17-10 Fudamoto, Kanoya City, Kagoshima 893-0013, Japan..

(2) 36. 学校教育学研究, 2002,第14巻. はじめに. ところで,生活世界における公共性の概念は,われわ れ日本人には理解されにくい。例えば,学校は行政的な. いじめ,不登校に加えて学級崩壊の問題が全国の学校 で起こっている。これらの諸問題の解決に向けて,学校 では,教育課程や指導方法の改善などに鋭意力を注いで いるが,必ずしもその成果が上がっているとはいえない。 学校は,社会の変化につれて大きく変容してきた。社 会の中で生きていく上で必要となる知識や技能を習得す る場というより,社会のミニシステム的な競争の場となっ ている。また,学校教育は人間形成上あたかも絶対的な ものであるかのような位置づけを与えられている。しか し,過度の競争による圧迫感や学校の絶対視による束縛 感は,子どもたちにむしろ息苦しさを感じさせているよ うである。さらに子どもにとって授業において学ぶ知識 は,受験によって権威づけられ,権威は親や教師によっ て学校教育というシステムを動かす原動力にさえなって いる。そういう権威を疎ましく思い,学校や授業から子 どもたちが逃避していく傾向も見られるようになってき た。さらに,今日の学校教育は教科書を教え込むが,真 実を自分の目で見極める知性を育てるものにはなってい ない。教師はそのことに気付かず, 「知識の伝達」を行っ ているのである。 このような複雑な問題状況の中で, 2002年からの新学 習指導要領では, 「総合的な学習の時間」 (以下「総合的 な学習」と略記する)を導入し,これまでの教育からの 転換を図ろうとしている。本稿では,移行期間の全国ア. 視点からは「公共施設」とよばれる。この「公共施設」 というよび方は,公共性がシステムから提供されたもの にのみ含まれているという誤解を招きかねない。こうし た語義の混乱を避けるためにも,ここでは, --バーマ スのいう公共性の意味を含みつつ, 「共同性」という表 現を用いる。共同性は,生活世界を基盤とした対話的な 話し合いによって,人々の間に生じる問題を解決してい くことを可能にするものであり,社会の発達とともに, 個々人の全人格的な成長をも促すものである。 さて,共同性はどのようにして失われていったのだろ うか。近代以前の社会では,社会的統合は伝統的知に強 く依存しており,生活世界とシステムは未分化のままで あった。しかし近代になり,社会システムがいっそう複 雑化するにつれて,伝統的生活形式が解体し,社会シス テムは独自の制御媒体をもっサブシステムを生活世界か ら自立化させた。それが,物質的再生産の機能に関わっ て成立する2つのサブシステム,貨幣と権力を媒体とす る経済と国家である。そして,それに対応して生活世界 も私的領域(家族)と公共性の領域とに二分化した。さ らに,言語的コミュニケーションは制御媒体としての貨 幣と権力にとって代わられ,その結果,システムの機能 主義的合理性が生活世界に浸透してくる。これを-ーバー マスは「生活世界の植民地化」2)とよんだ。 このことを学校に置き換えてみると,次のようになる. ンケート調査を通して総合的な学習の取り組みの実態を 探り,共同性を育む上で示唆となる総合的な学習のあり. であろう。産業社会は,生産力向上を至上の原理として. 方について検討したい。. とに二極分解させ,しかも前者を後者よりも価値あるも. いるために,人間の社会生活を機能システムと生活世界 のと見なしてきた。学校はこれまで,子どもの原初的で. I失われた共同性. 想像力に満ちた生活世界を機能システムの中に組み入れ ていく役割を果たしてきたのである。家庭は,社会の変. J.--バーマスによれば, 「公共性」 (offentlichkeit). 化に敏感であるがゆえに,体系的に知識を教授する機能. は, 「それよりも古い『公的』 (offentlich)という形容. システムをもっ学校に教育の価値を見出していく。その. 詞をもとにして, 18世紀の間にフランス語のpublicite. 結果,学校教育に寄り添う家庭が増え, 「意味システム」. と英語のpublicityを模して作られたものであり」, 「会 議や裁判の形もとりうる対話と,戦争であれ闘技であれ. の習得をも学校に求める傾向も見られるようになった。. 共同の行為とにおいて成立する」l)というoこの説明に おいて重要なのは,公共性は政治的な概念ではあるが,. だが, 「意味システム」の習得が家庭の中で充分になさ れなければ,生活世界の資源が不足してしまう。 子どもは大人との関わり(生活)の中で,世界の事物. 対話や共同の行為において成立するということであり,. を規則づけている「意味システム」としての生活形式を. それは学校教育にも欠かすことができない。. 学ぶ。そして,学校において事物,知識,他者と頻繁に. 教育は公共性と私事性の両方を含むということはいう. 関わり合いっつ活動をしながら,その活動を通して,各々. までもない。学校は,私事性とともに公共性を原理とし. の生活世界がつきあわされ,広げられ,修正され,組み. て子どもたちの社会化を目指す教育の場である。それは,. 換えられていくのである。 「意味システム」の習得は,. 対話や共同の行為において成立する。ところが,学校教. 共同体の中で言語的コミュニケーションによってなされ. 育から公共性の観点が失われつつある。このことが,教. る。ところが,社会システムの複雑化により,伝統的生. 育における対話や共同の行為の軽視という問題を生じさ. 活形式は解体し,共同性が失われつつある。そこで生じ. せているように思われる。. た様々な問題の一部である現在の学校教育における詰問.

(3) 共同性を育む「総合的な学習の時間」に関する研究. 題は,機能システムによって植民地化された子どもの生 活世界の側からの拒絶的な反応と考えられるのではない だろうか。 学校には,知識と実生活が分離した教授内容と, 「主 体一客体」モデルによって知識を伝達され,学ぶことの 意味を喪失しつつある子どもたち,そして「個性尊重」 と「秩序の維持」という2つの市場原理にとらわれてい る教師たちが存在する。こうした状況を打破していく手 がかりを,われわれは共同性の再構築に求めたい。共同 性は対話や共同の行為において成立する。この観点は, 学校教育にも欠かすことができないものであり,われわ れは学校教育において目指す共同性を「主体としての子 どもが言語を用い,全体の合意によって問題の解決を目 指す了解志向型の相互行為の態様」と定義したい。ここ でいう「了解」とは, -ーバーマスの言葉を借りると, 「言語能力と行為能力を備えた少なくとも2人の主体が ある言語表現を同じに理解する」ということである。ま た, 「相互行為」とは, 「複数の個人が互いに非機械的に 働きかけ合う社会的行為」であり, 「人倫的な規範ない し規則に導かれながら,身振り・記号・言語などのシン ボルを媒介にして遂行され」, 「意識と自己意識の発生, 社会化,パーソナリティの形成などに寄与する」3)もの である。相互行為によって参加者相互の間で当の行為に 対する解釈・評価の調整が行われ,その結果各々が準拠 する意味と規範の共有化が図られる。その際,共有され るシンボルである言語は,生活世界の中で培われた資源 である。総合学習においてもその資源を豊かにする取り 組みが必要であろう。. Ⅱ総合学習と共同性 総合的な学習は, 「自ら課題を見付け,自ら学び,自 ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質 や能力を育てること」, 「学び方やものの考え方を身に付 け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む 態度を育て,自己の生き方を考えることができるように すること」4)をねらいとしている。これらを踏まえてわ れわれは,総合学習と共同性の関係について,以下のよ うに捉えている。 総合的な学習が取り組むとされている現代的な諸問題 は,子どもたちがモノローグ的(独自的)に取り組むこ とによって解決することは困難であり,討議を通したディ アローグ的(対話的)な解決の方策を検討するという共 同的問題解決学習が必要なのではないだろうか。この方 法により,知的交流を行うことができ,問題を解決する ためのより多くの知識や方法を学ぶことが可能になる。 ただし,総合的な学習においては,多くの知識の獲得や 問題の解決のみを重視しているのではなく,学び方やも. 37. のの考え方の習得,いわば,問題解決の過程をも重視し ている。この過程で討議,つまり話し合いを取り入れた いのである。当然,教室内での話し合いは,他者との関 わりの中でなされるものである。 以上のことから,総合学習における共同性は,ディア ローグ的な問題解決学習の過程において「話し合いに習 熟する」こと, 「他者-の関心が広がる」こと, 「人間関 係が円滑になる」ことを中心的な観点として取り組むこ とによって,築き上げていくことができると考える。. Ⅲ総合学習先進校の取り組み 現在,総合学習に関する様々な書籍等が出版されてい るが,ここでは文部省編による『特色ある教育活動の展 開のための実践事例集- 「総合的な学習の時間」の学習 活動の展開-(小学校編)』 (教育出版, 2000年,以下 『実践事例集』と略記する)の中から,各学校の先進的 な取り組みを「共同性を育む学習過程」という観点で検 討する。具体的には, 「子どもどうしの人間関係を大切 にした活動」や「共同で問題を解決していく学習形態」 の取り組みがあるかを調べた。これら2つの視点で分析 した結果, 「子どもどうしの人間関係を大切にした活動」 の取り組みは『実践事例集』掲載の60校中13校 (21.7%)で, 「共同で問題を解決していく学習形態」の 取り組みは18校(30%)で行われていた。両方とも取 り組んでいた学校は,わずか5校のみで,これは全体の 8%にすぎない。共同性は,例えば「話し合い」によっ て育んでいくことが可能になるだろうが, 「話し合い」 は, 25校(41.7%)に記述されていたものの,先の2 つの取り組みはなされていなかったのである。 では,移行期問における各学校での総合学習は,どの ような観点から捉えられているのだろうか。. Ⅳ移行期間における各学校の実践 1抽出校への総合的な学習のアンケート調査 まず,全国の小学校から1000校を抽出し,郵送法に よるアンケート調査を実施した。抽出方法は,各都道府 県の小学校を都市部と郡部に分け,その4 %を無作為に 抽出した。調査項目は50項目で,そのほとんどを自由 記述式にした。記号選択式では選択肢によってあらかじ め答えが設定されてしまい,各校の取り組みが的確に反 映されないと考えたからである。また,共同性のみに絞っ た設問だけでは各校の意図する総合学習のねらいや背景 が不鮮明となるため,総合学習の取り組み全般に関する 設問も設定した。回答内容については,計画段階のもの も含んでいる。なお,調査実施期間は2000年7・8月の 2ケ月間で,回答率は19.3%であった。回答校の中で,.

(4) 学校教育学研究, 2002,第14巻. 38. 最小の児童数は31名,最大は1003名,平均児童数は, 314名であった。 2全国アンケート調査結果の分析 本節ではまず,全国アンケ-ト調査の結果から単純集 計したデ-夕を提示し,その後このデータを類型化し, さらにクロス集計した結果を分析する。そして最後に, 共同性の観点からデータ分析を試みる.. (2)類型化並びにクロス集計等によるデータの分析 ①子どもの変容という観点で,総合学習によって予想 される効果についての考え方 18の項目を6つの観点で分類した(表3)。さらに, その観点毎に校数を集計し,項目の数で割ったのを,皮 数とした。その他の内訳は, 「学び方を学ぶ」, 「学ぶ楽 しさが実感できる」などであった。 表3総合学習によって予想される効果 観. (1)単純集計による抽出校の基本データ ①主な学習課題と学習時間別の学校数 表111の福祉・健康については,福祉のみの取り組み 12校,健康のみの取り組み5校を含む。その他は,千 どもの興味・関心,平和,防災学習などであった。なお, 各学校の課題への取り組みは複数回答で, 61通りに分 類できる。 (※以下NAは,無回答を示す。). 点. 環. 校数. 単. 位. 境. 73. 国際理解. 60. 3 5. 福祉 . 健康. 73. 3 6 一 、. 地. 域. 100. 情. 報. 36. 人. 権. 25. そ の 他. 24. NA. 3. 1一 、. 7 1-. 時. 間. 校数. %. 3 l. 72. 37 .3. (過 1 時間). 31. 16 .1. 7 0. 65. 33 .7. 1 0 9. 14. 7 .3. 2. 1 .0. 9. 4 .7. h o c過 2 時 間)∼ N A. その結果,体験活動型の学習に取り組む学校が48.7 %と最も多く,各学校が,まず体験活動から取り組もう としていることがわかる。 表2主な学習のねらいの類型別校数 タ. イ. プ. 校数. %. 問題 解決 型 + 体 験活 動 型. 8. 4 .1. 問題 解決 型 + 共 同学 習 型. 1. 0 .5. 39. 20 .2. 問題 解決 型 体 験 活動 型 + 共 同学 習型. 9. 4 .7. 体 験 活動 型. 77. 39 .9. そ の他 . N A. 59. 30 .6. 2. 不登 校 が減 少 す る. 3. (52校 ). 学校 が 楽 し くな る. 37. 表情 が 明 る くな る. 10. 話 し合 いが うま くな る. 12. 人 間関係 が 円滑 に なる. 28. 他者 へ の関 心 が深 まる. 30. 積極 的 に学 習 に取 り組 む. 76. 興味 . 関心 が広 が る. 85. 表現 力 が向 上 す る. 65. 知 識 が豊 富 にな る. 8. 共 同 性 (70校). 学. 力. (2 34校 ). フ イl ル ド. 地域 へ の理 解 が深 まる. 81. 7 - ?. 地 域 の人 との交 流 が活 性化 す る. 63. 活動範 囲が 広 が る. 32. 情 報 活用 能 力 が向 上す る. 46. コ ンピ ュー タ リテ ラ シーが 向上 す る. 12. 視 野 が広 が る. 46. 自立性 が高 まる. 49. そ の他 . N A. ll. (176校) 情報 処理. 個性 伸長. 蝣Jt*.. 校数. 生 徒指 導. (58 校). ②主な学習のねらいの類型 各校の総合学習主題名や活動内容,並びに主題設定の 理由,体験活動の内容,問題解決学習の内容の記述を踏 まえ,主なねらいを類型化した。校数は重複している。 その他については,記述からは上記の5つの類型に分類 できなかった学校並びに学習のねらいを検討中の学校で. 目. い じめが減 少 す る. 表111学習課題別校数表1-2学習時間別校数 学習課題. 項. (9 5校). この類型化の結果,総合学習に「生徒指導」の観点は あまり意識されておらず,逆に「学力」や「フィールド ワーク」の度数が高いことから,総合学習による学力低 下問題の解消や体験活動の充実,地域との交流の活性化 への期待が高いことがわかる。 そしてこれら18の項目から,各学校が選択した組み 合わせは,全部で64通りあり,その中で, 「フィールド ワーク」を含めて選択した組み合わせは, 44通り(126 校, 65.3%)で,最も多かった。同様に, 「学力」は43 通り(154校, 79.8%), 「個性伸長」は36通り(82校, 42.5%)であった。 各学校では,個人の学力やフィールドワークが重視さ れており,総合学習において個別的な教育効果が期待さ れる傾向にあるようだ。 ②主な学習のねらいの類型と主な学習形態並びに主な 学習方法などとのクロス集計 (1) -②で分類した総合学習の主な学習のねらいを学.

(5) 共同性を育む「総合的な学習の時間」に関する研究. 39. 習形態や学習方法でクロス集計を試みた。 主な学習形態は複数選択で, 20通りに分類できた。ど. また,共同学習があるならば,集団での学習形態が多い のではないかと考えていたが,各学校において,学習のね. のねらいにおいても個人の学習形態が多く(79.2%),次. らいと学習形態との関連は考慮されていないようである。. いでグループ学習が多い(58.8%)。共同学習型は全体数 が少ないのだが(5.2%),その中でさえも個人での学習が. ②主な学習形態と学習方法のクロス集計 続いて主な学習形態と学習方法をクロス集計した。. 多くを占める。このことから,個人やグループでの体験活. 学習方法は, 「話し合い」と「ディベート」に注目した。. 動や個人の問題を解決する学習活動が多いことがわかる。 次に,ねらいと学習方法の関連を探る。学習方法の中. 図1から「話し合い」や「ディベート」を取り入れている 学校は,個人の学習形態が多いことがわかる。また,集団の. で取り組みが最も多かったのは, 「見学・調査」 (81.9%). 規模が大きくなるにつれて, 「話し合い」の割合がほぼ減少し. で,次いで「発表」 (69.9%), 「話し合い」 (46.6%)の. ている。これは, 「話し合い」を学習方法に挙げていても,学. 順であった。選択は18通りに分類でき, 「見学・調査」. 習そのものは個人中心であるという,不整合さを学んでいる。. + 「発表」の組み合わせが21.2%, 「見学・調査」 + 「発表」 + 「話し合い」の組み合わせは19.2%であった。 「話し合い」や「ディベート」への取り組みは低く,こ れら2つの学習方法が含まれるのは,全体の35.8%であっ た。学習のねらいによって,学習方法が工夫されるよう であるが,そのほとんどが, 「見学・調査」したことを 「発表」するといった形になっているようである。 (3)共同性の観点によるデータ分析 ①共同学習の有無と主な学習形態や学習方法とのクロ ス集計 さてここで,ねらいの類型を「共同学習」に絞り込ん でクロス集計してみた5)。具体的には,主なねらいの類型. 図1主な学習形態×主な学習方法(%) ③主な学習形態と総合学習で期待される児童の変容の クロス集計. である「問題解決型+共同学習型」, 「体験活動型+共同学. 最後に,主な学習形態と総合学習で期待される児童の. 習型」を「共同学習あり」とし,それ以外を「共同学習. 変容について,共同性の観点である「話し合いがうまく. なし」と分類する。それを,表4のように6つの区分とク. なる」, 「人間関係が円滑になる」, 「他者への関心が広が. ロス集計した。あわせて,学習形態も個人形態を含むもの. る」に限定してクロス集計した。. と含まないものの2つに区分し,集計,分析した。 ねらいに「共同学習あり」という学校でも学習方法に 「話し合い」を取り入れているのは, 2.6%しかない。逆 に「話し合い」や「ディベート」などの取り組みがあっ ても,共同学習にはなっていないこともわかる(44.3%)。 中には,学習したことを「発表」のみで終わらせる場合 (31.2%)や,何もしない場合(18.8%)もあった。 表4共同学習の有無×主な学習形態(2区分)・ 主な学習方法(6区分) (%) 共 同学 習 あ り. な し. 図2主な学習形態×総合学習で期待される児童の変容(%). 形. 個 人形 態 を含 む. 2.1. 44 .6. 態. 個 人形 態 を含 まな い. 3 .1. 50 .3. 発 表 . デ ィベ ー ト . 話 し合 い. 0. 4 .7. 学. 発 表 . デ ィベ ー ト. 0. 0 .5. 習. 発 表 . 話 し合 い. 1.6. 32 .8. 方. 話 し合 い. 1.0. 6 .8. 法. 自体,意識されていないし,共同性そのものを総合学習. 発表. 1.0. 30 .2. に期待しているわけではないことがわかる。これは表3. な し. 1.6. 17 .2. の結果を裏付けることにもなる。. 個人,グループ,学級と集団の規模が大きくなるにつ れて共同性の観点として挙げた3つの項目の割合が減っ ている。学級よりも個人の学習形態に共同性の育成を期 待するという矛盾した結果になった。各学校においては おそらく,共同性を育む観点と3つの項目とのつながり.

(6) 学校教育学研究, 2002,第14巻. 40. Ⅴ移行期間における各学校の実践上の課題. 況がある。筆者は,その見直しのキーワードを共同性と 捉えている。前述の①∼⑥の矛盾点は,共同性の観点の. 各学校とも,総合的な学習に対する様々な取り組みを. 欠落から生じているのではないだろうか。. 始めている。アンケート調査に回答を寄せた各学校によ. アンケート調査の結果を見ると,各学校では,学びが. る書籍や事例集の紹介も81種類104冊を数え,その中. 個別的なものと捉えられており,問題解決が個別性に基. では,地域や子どもの実態や学校の特色等を生かした活. づいて考えられている。さらに,総合学習において人間. 動が工夫されている。また,総合学習を週あたり1単位. 関係を育む重要性を理解していると言葉では語られてい. 時間以上実施する学校は半数を超え,積極的に取り組も. ても,具体的なものは構想されていない。総合学習で共. うとしている様子がうかがえる。 しかしながら,本アンケート調査において,以下のよ. 同性を育むことが重要なのは,子どもたちに「生きる力」 を育成するためであった。その「生きる力」とは,変化. うな矛盾点も明らかになった。. する社会への「適応」ではなく,一人一人が主体として. ①子どもたちの人間関係を育むことと総合学習との問. 自らの生き方を模索する力であり,他者と連帯して共同. につながりがある,と74.1%の学校が考えているにも. で新しい社会をつくりだしていく力なのである。. かかわらず,共同学習をねらいとする学校は5.2%と少. 総合学習は,これまでの学習観,児童観,教材観,指導観. ない(表2より)0. を変える,いわばパラダイム転換を図る契機となりうる。そ. ②学習のねらいを体験活動を通して達成できると考え. のためにも,各学校では総合学習のねらいを再吟味し,共同. ている学校が多い(表2より)。. 性を育む観点で進めていく必要があるのではないだろうか。. ③子どもたちの人間関係を育むことと総合学習との間 につながりがある,と考えているにもかかわらず,問題 解決学習や体験活動をねらいとしながらも,個人での学 習形態をとる学校が79.2%と多い((2) - ②より). ④共同学習をねらいとしながらも,学習方法として 「話し合い」や「ディベート」6)への取り組みが少ない (表4より)。 6) 「話し合い」の学習方法をとるにもかかわらず,個 人の学習形態をとる学校が多い(図1より)0 ⑥総合学習によって, 「話し合いがうまくなる」, 「人 間関係が円滑になる」, 「他者への関心が広がる」と子ど もの変容を期待しながら,個人での学習形態をとる学校 が多い(図2より)。 これらの点に共通するのは,学習活動が個人のものとし て捉えられていることである。このことは,表3での「個 性伸長」の観点が多いことからもわかる。 「一人一人を大 切にする」という極端な個人主義のもと,これまでのよう な教師主導の伝達型授業に代表される一方的な指導は,千 どもたちを個別化し,集団から切り離された位置を与える ことにつながるだろう。このことが,結果的に個人差の拡 大につながり,ひいてはアイデンティティの危機,アノミー 化への拍車をかけることになるのではないだろうか。つま り,学習活動を個人のものとする考え方は,昨今の生徒指 導上の諸問題の増加に見られるように,学校教育における 公共性の崩壊やアノミーの状態を生み出すのである。 そこで新学習指導要領においては, 「個性を生かす」 教育とあわせて, 「豊かな人間性や社会性」を育成する こととなった。主体性,自立性のみならず,共同性を重. Ⅵ共同性を育む総合学習の構想 1総合学習の教育過程づくり (1)現代的課題とは何か 総合的な学習の時間をどのような内容と活動の時間と するかは,学校に委ねられている。そこでは,何を課題 として取りあげていくかが重要である。新学習指導要領 では,総合的な学習で取り組む課題として国際理解,情 戟,環境,福祉・健康を例示している。これらは現代的 課題ではあるが,これまでの実践例をみるとその捉え方 にいくつかの問題を抱えている。例えば,国際理解教育 は多様な民族・宗教・文化などを理解することよりも, しばしば「日本の伝統文化」の学習を重視する自国中心 主義・自文化中心主義になっている。また,環境教育が 環境問題を引き起こした企業社会,商業主義,南北問題 などの環境破壊の本質を不問に付す個人の心がけ主義や リサイクル活動への参加に,福祉教育が福祉の公共性の 問いを欠落させたボランティア体験主義にという具合で ある。このような学習は,現状-の子どもの適応を求め ることにつながっていかないだろうか。現代的課題は, 例示されたもの以外にもあり,現時点で国境を越えた世 界的な問題,緊急に解決・改善を求められている問題, 個々人に関わる普遍的な問題などを指すと考えると,辛 和問題,人権問題,ジェンダー問題,労働問題などであ ろう。それぞれいずれは当事者となる子どもにとっても 意義深い学習であると考えられる。これらの課題は,共 生を土台としており,自然や社会,人間がいかに共生を していくかが問われている時代でもある7)。. 視する方向が見えるのである。総合的な学習が登場した 背景には,今までの教科の枠組みや学習活動,学習形態 並びに学習方法の大きな見直しが迫られているという状. (2)単元構成における題材の設定 現代的な課題を列挙したところで,学習が進められる.

(7) 共同性を育む「総合的な学習の時間」に関する研究. わけではない。具体的には,題材が重要であり,実践の 成否は題材で決まるといってもよい。題材を決めるうえ で必ず満たされなければならない条件は,それが子ども の求めに基づくことである。しかし,そうはいってもそ の求めが享楽的で自堕落的なものであってはならない。 子どもが,全力をあげて取り組める活動を構成でき,そ の力を十分に発揮できるような題材が望まれるのである。 例えば,長野県長野市伊那小学校では,学習を吟味する 観点として次の4つの条件が掲げられている8)。 ①共通の関心事であり,子どもたちの胸をときめか すようなものであること。 ②材(ママ)と関わって, 「こうしたい」 「どうしてだろ う」という求めが次々に生まれ,その求めが具体的 な目当てとなって連続していく見通しがもてること。 ③展開される学習活動が,どの子にとっても可能で あり,しかもやりがいのあるものであること。 ④どの子どもにも,その子にふさわしい「学力」を 身につけることができるものであること。 ただ,この条件に当てはまることがすべてではない。 子どもの意識や意欲が重要であり,教師の判断がそこに は発揮されるのは当然であろう。 (3)単元構成における学習の展開 単元の内容をどのように発展させていくかということ は,単元構成の重要な問題である。総合学習では,子ど もが主体的に追求することを大事にしようとしてきた。 子どもが主体的に追求し続けるということは,追求の過 程における意志決定を子どもが行うということである。 それは,子どもが自らの課題に直面し,それを解決する ために考え,判断し,意志決定し,その結果に基づいて 行動するということである。つまり,子どもが自己決定 するということである。総合学習の単元構成に当たって は,その子どもの自己決定に対する教師の支援の在り方 を検討する必要がある。子どもを学習の主体と見なすと き,これまで当然のように教師が決めてきた学習の課題 や学習の仕方,学習の場などの自己決定による自由度が 増すのである。 そのような活動の展開に当たり,これまでの学習は個 別学習に偏りがちであった。総合学習においては,すべ ての学習活動が集団共通の題材を扱うというわけではな いが,学校で学習する意味を考えると,子どもたちどう しの関わり合いを通した学習が求められるのではないだ ろうかo学習活動を通した人間的な関わり,特に友だち との関わりは,それぞれの子どもが持っている力を十分 に発揮させ,伸ばしていくために大きな支えになる。も ちろん題材が共通であっても,それに関わる追求方法や. 41. 考え方,並びに学習材や活動内容,そして活動の場など が個人的な場合もあるだろう。共同的な学びとともに個 性も大切にされるというバランスが必要である。更に, 学習を進めるうちに子どもたちの求めに応じた体験学習 も取り入れられよう。総合学習だから体験学習という短 絡的な発想のもと,学習を構成することはやめたいもの である。子どもの学習の過程で生じる体験学習は,発達 段階によってもその内容が検討されるものであろう。 さて,総合学習における現代的な課題としてあげられ ている中で,環境教育がある。環境教育はグローバルな 視点を求められており,このことは,子どもにとっての 主観的世界だけでなく,客観的世界,社会的世界におい ても関わりを持っということでもある。 --バーマスの 社会的パースペクティヴの発達段階の考えによると,人 間の行為は,自己中心的なパースペクティヴに制約され た前慣習的段階から,手続きにもとづくパースペクティ ヴ(っまり,規範の根拠づけを討議に委ねる。)を獲得 した脱慣習的段階-と発達するという。子どもたちは, その成長過程で,権威や利害に左右されて物事を判断し たり,行動したりする段階がある。やがて成長するにつ れ,自分の社会的な役割を意識し,規範に準拠するよう になる。更に発達すると,その規範をも吟味する原理を 認識し,規範の根拠づけの手続きをとる(討議を行う) ことができるようになるのである。子どもたちのこのよ うな発達段階を踏まえると,環境学習はとても意味ある ものになる。つまり,環境学習を行うことで,個人的な 狭い視点から世界の広い視点を意識していくことが可能 になるのである。これは,学習を通してより高次のパー スペクティヴを獲得することになり,子どもたちの道徳 判断の段階をも向上させ,我々が営む生活世界を豊かな ものにし,社会を共同で創りあげていく力を育てること にもなる。環境問題はむしろ,このような視点を獲得し ていかないと解決できない問題でもある。 では次に,総合学習としての環境学習について具体的 に構想していくことにする。. 2環境学習の学習活動案 (1)環境教育の意義と進め方 環境教育では,子どもや学校,地域社会がグローバルな 社会にどのようにコミットしていくか,そして学校と地域 が,子どもたちに学習経験と体験の場をどのように提供す るかが求められている。環境教育は近年クローズアップさ れてきており,その背景としてあげられるのが,大気汚染 や海洋汚染,土壌破壊,酸性雨,地球温暖化,放射能廃 棄物などの地球環境の悪化が人間の棲息を脅かしていると いう現実である。そして,いかにしてこの美しい地球環境 を保全し,改善していくかが世界的に優先課題となってき ているからである。このような環境問題を解決するために.

(8) 学校教育学研究, 2002,第14巻. 42. も,環境教育は,グローバルな視点で行われるべきであり, 地球市民としての責任の意識を育てることが重要であろう。 その点が学校教育に求められているわけで,その意識を育 てるにはまず,身近な部分から出発することから始まるの である。文部省の『環境教育指導資料(小学校編)』に, 「地球規模で考え,足元から行動する」 (Think Globally, Act Locally)ということが述べられている9)。そうはい うものの,考えることはできるが行動することはなかなか 難しいものである。しかし,環境の改善は考えるだけでは 何も進まない。われわれは,子どもたちが学習を進める中. ア指導計画作成の手順 指導計画は以下の手順で作成する。 段階1 :環境教育の活動内容の検討 ①地域の資源・環境,状況,歴史などを把握する。 ②子どもの興味関心事を把握する。 ③学校の組織,機能,資源・環境,教師の願いなどを 把握する。 ④保護者や地域の願いを把握したり,中学校との連携 を図ったりする。 ⑤今日的な課題,社会問題を把握する。. で,様々な環境破壊の状況は人間の手によるものであり, それを復元できるのも人間の手によるしかないことや,ロー カルな学習や体験を積んでいくうちに,単に環境問題はロー カルな現象ではないことなどに気づくような学習を保証し ていきたい。そうして,一人の力では,地球環境の保全・ 保護はできない大きな問題を学んでいることがわかってく るはずである。 また,環境問題は場合によっては,国家の方針が相反. 段階2 :活動のねらいと主題の設定 ①問題解決的な学習活動を構想し,活動のねらいを明 らかにする。 ②内容は当該学年で終わるのではなく,学習した学年 以降への継続的な意識づけができるよう工夫する。 ③主題の設定に当たっては,子どもと話し合いながら 決定する。. する国どうしの環境倫理が衝突する可能性も考えられる。 環境倫理の確立は,国際機関での協議がどうしても必要 になってくる。国家,宗教,そして場合によっては民族 が絡み合っている国際社会では,国際機関での協議なし には問題の解決は望めない。特に大気や水,土に関わる 地球規模の問題は少なくない。その性質上,国家間の利. 段階3 :指導計画の作成 ①子どもたちと学びたい課題を話し合い,活動内容を 設定し,活動計画を作成する。 ②時間の割り振りをし,各教科等との連携を明記する。 ③評価等について計画を立てる。. 害が常に絡んでくるのである。環境教育がグローバルな 視点を考えなければならないのは,このような問題をも 学んでいるからである。 そのようなことをふまえて,どのような環境教育の学 習カリキュラムを組むか,次に示そう10)。 A環境の大切さの自覚(小学校低学年のカリキュラム). イ手順に従った実際の作成 ①段階lより まずは,以下のように実態把握から始めていきたい。 そして,環境教育の活動内容を検討していく。ここで は,環境教育の学習に関連するワードやタームを強調 文字として表している。. なぜ環境保全が大切なのか,様々な場面での体験を 通して自覚できるような教材と学習の場の提供をする。 B自然環境の機能(中学年のカリキュラム) 自然環境がどのように機能しているか,ある程度体 系的な知識・理解の得られるカリキュラムを構成する。 C環境倫理の学習(高学年のカリキュラム) 環境倫理を扱うことを中心概念とする。それは,国 家や宗教などが複雑に絡み合う生臭い領域でもあり, 国益や宗教教義が激しく衝突する。戦争や紛争とも関 わりが生C,政治や経済が前面に出てくることもある。 このようなことを規定したカリキュラムを構成する。. 鹿屋市は,大隅半島のほぼ中心に位置するという地理 的特性により,古くから「交易の会所」といわれてきた が,明治以降,郡役所・裁判所・税務署などの行政機関 がおかれたことにより,大隅地域の行政・経済・教育・ 文化の動じ、としての都市機能の集積が図られてきた。ま た,昭和11年に設置された海軍航空隊は,戦後,海上 自衛隊鹿屋基地として今日に及んでいる。更に,昭和 16年の市制施行以来,周辺地域との合併や編入などに より,人口規模においても県下第2の都市としての発展 を続けている。. 総合学習では,各学校の創意工夫のある学習内容が求 められている。そこで,ここでの構想は,筆者の一人. 産業としては,年間平均17-Cの温暖な気候と豊かな資 源を生かした畑作や畜産などの農業が盛んで,中でも国営 初の畑地かんがい事業によって整備された笠野原台地は, 南九州随一の食糧基地としての役割を担っている。また,. 山下の在籍校である鹿児島県鹿屋市寿北小学校の第6学 年の学習過程として考えていく。. 産業別純生産では第3次産業が8割以上を占め,大隅地域 の中核的な商業都市としての機能も果たしている。この間,. (2)学習活動案.

(9) 共同性を育む「総合的な学習の時間」に関する研究. 第一次長期総合開発計画や「太陽と緑に育まれた国際健康 科学都市の創造」を基本理念とする第二次長期総合開発計 画に基づいて,生活基盤の整備,産業の振興,健康・福祉 対策の充実,人材の育成事業などの市政発展の諸施策を推 進してきた。このような取り組みに伴って,鹿屋体育大学, 国立大隅少年自然の家,アジア・太平洋農村研修村,県民 健康プラザなどの特徴ある施設も整備されている。 本校の所在地のある札元地区は,昭和30年代までは畑 作農業の中心地としての役割を担ってきたが,国道220号 と269号との交差点に位置するため,鹿屋市の東の玄関口 としての役割を担い,昭和40年代から急速に市街化が進 み,人口の増加,商業機能の集積が見られる。特に,那 外型の大型店舗の集積が著しい。主な施設として,食糧事 務所,社会保険事務所などの国の施設,鹿屋家畜保健衛生 所,鹿屋警察署などの県の施設,農業センター,勤労婦人 センター,寿光園などの市の施設が立地している。更に, 本校の隣接地には県民健康プラザが建設された。 地区の課題としては,急速な市街化のためインフラの 整備が遅れていること,郊外型の店舗の立地による商業 機能の偏り並びに一部地盤沈下が懸念される。 このような地域にある本校は,人口8万人の鹿屋市に おいて,最多の850名はどの子どもが在籍する大規模校 である。本校の子どもたちの興味関心事は, 4月に行っ たアンケートの結果を基に把握したい. (省略) 本校は, 38名の職員が校務を分掌しており,それぞれ が特性に応じて活躍をしている。教師の願いとしては, 「子どもたちが進んで行動すること」, 「明るくて元気であ ること」, 「表現豊かであること」などがある。施設的に は,普通学級25学級,情緒障害,特殊学級が2学級あり, 理科室,音楽室,家庭科室, TT室,少人数教室,プレイ ルーム,図書室,コンピュータ室などがある。コンピュー タはインターネットへ接続され,今後の活用が期待できる。 また,県の「レッツビギン!英語に親しむABCプロジェ クト推進校」に指定されていたこともあり,英語教育も行 われている。更に, 「ティームティーチング実践推進校」, 「鹿児島大学教育学部実地研究Ⅱ副免実習校」などにも指 定され,算数の授業において, 4年生はティームティーチ ング, 3, 5年生は少人数学級での指導も工夫されている。 地区の中心校として周囲の期待も大きい。 保護者は,新興住宅地に越してくる場合と転勤等で移動 する場合が多く,多様な価値観が見られる。全般的に協力 的で,地域全体で学校を見てくれるという雰囲気が感じら. ンクーの外国人との出会い,日米草の根交流による米国 人の受け入れなど.T外国.'を意識することも多い。こ れは,グローバルな視点を養うのに一役買いそうである。 ②段階2より 段階1で把握した実態等を吟味し,活動のねらいを 「私たちの町の環境を調べ,環境問題を把握する」, 「地域の環境問題を解決する方策を考える」, 「友だち と協力して学習する」とする。これは,子どもたちが 学習活動を通して,主体的に社会の一員として社会的 世界へ関わることを意図しており,その学習過程はコ ミュニケーション的行為による共同的な問題解決学習 を構想している。また,活動内容は,当該学年で終わ るのではなく,学びが連続するように,継続的な意識 づけができる工夫をする(表5中「発展的取扱い」)0 具体的には,以下に各学年における大主題名(教育課 程上の把握のためのもの) ・子ども主題名(子どもと 話し合って決めたもの)と内容を考え,ねらいを示し た。学習活動においては,主観的世界,客観的世界, 社会的世界が,発達段階に応じてそれぞれの学習に関 われるよう意識したい。 3年地域に生きる私たちI ・ 「地域をたんけんしよう」 ※学校や自分の家の周りの中で調べたいことを見つけて, みんなで解決する。 4年地域に生きる私たちⅡ ・ 「地域を知ってもらおう」 ※私たちの住む市や県のことを調べてみんなで解決し,そ のことを他へ発信していく。 5年社会に生きる私たち・ 「周りのことを見つめてみよう」 ※私たち人間が共に生きるということについて考えて,問 題を解決していく。 6年地球に生きる私たち・ 「未来へ向けてできることを 考えよう」 ※広い視野で地球のこと,生命のこと,人間のことを見 つめ,私たちができることを話し合っていく。 表5学習内容の広がり 学年. 学期. 環 境学 習 の 内容. 3 年. 1 2 3. く ら し と商 店 街 生 き物 と私 た ち (発 展 的 取 扱 い ). 4 年. 1 2 3. 水 と くら し ごみ と く ら し (発 展 的 取 扱 い ). 5 年. 1 0 3. 産業 とくらし (発 展 的 取 扱 い ) 社 会 問 題 と私 た ち. 6 年. 1 2 3. 国 際 社 会 と私 た ち み んな の 問題 (発 展 的 取 扱 い ). れる。学校に望むことは多く,期待も大きい。 最後に,本校区においては,今日的な課題である環境 問題に対する意識が高く,店舗や市民グループの取り組 みもある。また,高齢者施設や病院も多く,子どもたち の意識の中に何らかの種がまかれている状態であると思 われる。更に,英語の授業やアジア・太平洋農業研修セ. 43.

(10) 学校教育学研究, 2002,第14巻. 44. ○やってみる ・動植物の飼育,栽培・微生物の観察. ③段階3より 活動計画においては,充分な調べ学習や体験活動がで きるようにしたい。時数に余裕があると,子どもの興味 関心の移り変わりにも柔軟に計画を修正できるうえ,調 査・見学-の対応がしやすい。 ここでは2学期に「みんなの問題」という単元名で,こ れまでの環境学習のまとめに位置づけられるような主題に 取り組むことにする。ねらいをふまえながら,教師と子ど もたちで学習活動の内容を話し合っていく。教材化の段階 では,子どもたちの考えだけではねらいの達成が難しい場. ・植物採集・野鳥,渡り鳥の観察・植林 ・廃油石鹸作り・酸性雨調査 ・発泡スチロ-ル,牛乳パック工作 ・環境ポスター,看板作成・環境サミット ・ホームページ作成・動植物マップ作成 以上のような活動を,計画に入れていく。問題を解決す るような学習活動であり,共同的な学びであるように教師 側でしっかりねらいを把握する。次に学習過程を構想して いく。 (下表). 合もあるので,適宜,教師が助言をする必要がある。. 表中にゲストティーチャ-の名前,連絡先やフィールド ワークの場所,時間等の具体的な情報も入れると緻密な計 画になる。ただ,子どもの興味・関心等に応じて作成する ことを考えると概略で計画を立案し,柔軟に対応できるよ うにした方がよいだろう。また,共同性を育む活動は, 「課 題の追求」や「活動状況報告・話し合い」, 「課題解決」, 「実践に向けての話し合い」の各過程において取り組むこと ができる。例えば,漠然とした問題意識から,解決してい く課題として焦点化する場面で話し合いによって課題を浮 かび上がらせることができる。また,課題解決のための迫. 具体的な学習活動内容(社会的世界との関わりを意図する。) ○調べてみる ・動植物の生態・川の水質や土の性質 ・地球温暖化,フロンガスとオゾン層の破壊・酸性雨 や砂漠化・産業廃棄物の処理 ・ダイオキシン・ごみの再資源化の技術 ・人口増加と食糧問題・住民運動 ・環境保全と経済問題ODAやNGO ・エコロジー商品ISO規格 ④学習過程の提案 領. 域. 名. 主. 題. 名. 地 球 に 生 き る私 た ち. い. 広 い 視 野 で 地 球 の こ と, 生 命 や 人 間 の こ と を見 つ め , 私 た ち が で きる こ とを話 し合 っ て い く0. ね 活. ら 動. 過. 環. 程. 活. 境. 教. 育. 標 準 時 数 (5 0 時 間). . 未 来 へ 向 けて で き る こ とを 考 え よ う 動. 内. 容. . 今 ま で の学 習 を振 り返 り, 疑 問 に 思 った こ とや も つ と調 べ て み た い こ とな どを 話 し合 う。. 1 問 題 の 意 識 化. . 個 人 的 な視 点 よ り グ ロ I バ ル な 視 点 が重 視 され る環 境 問題 に 関 し,. ( 3 時 間 ). 私 た ち が で き る こ と は な い か話 し合 う0. 指 導上の留意点 . 既 習 の 振 り返 りが で き る よ う に準 備 す る0 . 新 聞 記 事 や 教 師 の 願 い な ど か ら も課 題 を 提 供 す る0. . 私 た ち の 学 校 や 家 庭 , 地 域 の環 境 問 題 を調 べ る。 . 社 会 的 に 取 り あ げ られ て い る環 境 問 題 につ いて 把 握 す る0. . 身 近 な問 題 を確 実 に把 握 させ る0. 3 課 題 の. . 問 題 状 況 が 浮 き彫 り に な る と同 時 に, 解 決 すべ き課 題 が 明 らか に な る0 そ の 課 題 の 解 決 に向 け て, そ れ ぞ れ の方 法 で 追 求 して い く。. . 漠 然 と した 問 題 意 識 か ら, 解 決 して い. 追 求 ( 15 時 間 ). (※. 2 問題 状況 の把 握. . 多 様 な調 査 方 法 に 取 り組 ま せ る0. ( 5 時 間 ). :. く課 題 と して焦 点 化 す る0. テ ィ ー ム テ ィー チ ン グや グ ル ー プ 学 習 , ま た, ゲ ス トテ ィ ー チ ヤー との 学 習 や フ イ l ル ドワl ク を 取 り入 、 れ た りす る学 校 外 部 と の交 流 な ど, 学 習 形 態 の 工 夫 を す る。. :. - ※ コ ン ピュ ー タを 活 用 した り, 子 ど もど う L や大 人 も交 え た話 し合 い を 柱 に して 考 え を 深 め て い く学 習 方 法 - の工 夫 を す る0 4 活動状況報告 .. . 3 に お い て , 個 人 や グ ル ー プ で 調 べ た り, 活 動 した り した り した こ. . 共 同 的 に課 題 を解 決 して い く こ とを た こ. とを学 級 全 員 に報 告 し, 話 し合 う こ とで そ の内 容 につ い て 吟 味す る0. 話 し 合 い ( 10 時 間 ). . 話 し合 い は, 根 拠 を も って 妥 当性 を 吟 味 す るの で, 場 合 に よ っ て は, 再 調 査 や 補 充 的 な 活 動 が 必 要 に な る0. と を意 識 させ る。 . 客 観 的 世 界 に 関 わ る 「真 理 性 」, 社 会 的. 5 課. 題. 解. 決. ( 10 時 間 ). 世 界 に関 わ る 「正 当性 」 の追 求 を させ る0. . 解 決 の 見 通 しを 立 て , これ ま で の 学 習 活 動 を ま とめ る0 . 学 習 した こ と を発 表 し た り, 公 開 した り して , 更 に よ り多 くの人 に. . 暫 定 的 な 解 決 策 で よ く, 解 決 策 を 導 き. 私 た ち の 解 決 策 を 吟 味 して も ら う0 . 自分 の 活 動 を 振 り返 り, 評 価 す る と と も に, 友 だ ち ど う L で 相 互 に. . 学 習 の 成 果 を報 告 した り, 検 討 した り して も らえ る よ うな 場 を 設 定 す る。. 出 す 過 程 を評 価 す る0. 評 価 す る0 b 実践に向けての話 し合い ( 7 時 間 ). . 解 決 した こ とを も と に, 具 体 的 な 行 動 計 画 を話 し合 う。 . 更 に 生 じた 課 題 意 識 を 出 し合 い, も つ と調 べ た り, 実 践 した い こ と に つ い て話 し合 って , 今 後 の活 動 へ つ な げ る0. . よ り よ い 社 会 を 築 く成 員 と して の 自覚 を 持 たせ る0.

(11) 共同性を育む「総合的な学習の時間」に関する研究. 45. 求方法も話し合うことが大切である。更に,活動状況を報 告したり,調べたことを発表することにより,共同的に課. 筆者は,話し合いがより質の高いものになることを期待し,. 題を解決することになる。また,このときの話し合いは,. が参加し,話し合った結果を全ての子どもが受け入れること. 根拠をもって妥当性を吟味するため,再調査や補充的な活 動が必要になるであろう。そこでは,客観的世界に関わる. を原則とする。そして根拠を述べながら自分の意見(妥当性. 「責理性」,社会的世界に関わる「正当性」の追求が中心. トは,論点を明らかにしたり,根拠を述べたりする中で,請. になる。こうした過程を通して,子どもたちによりよい社 会を築く成員としての自覚を持たせたい。. 理的な思考を育成することができることから,多くの話し合. 「討議」という形を構想する。これは話し合いに全ての子ども. 要求)を掲げ,他者との合意を目指すものである。ディベー. い活動が陥っている先の問題点を克服する手だてとして捉え られた場合にのみ,有効な取り組みといえるのである。. おわりに. 7)以上は,子安潤『「学び」の学校』ミネルヴァ書房, 1999, pp.173-174を参照。. 2002年から実施される総合学習において,各学校がど. 8 )高浦勝義編著『総合学習の理論』繋明書房1999, pp.175-1760. のような考え方で実践を進めていくかが気がかりであった。 調査の結果において,やはり各学校では共同性の観点が欠. 9)文部省『環境教育指導資料(小学校編)』大蔵省印刷局,. 落している傾向にあるということがわかった。. 10)高浦勝義編著,前掲書, 1999, p.148を参照。. 1995, p.8。. 共同性を育むことで,子どもたちに「生きる力」が育成 され,他者と連帯して共同で新しい社会をつくり出してい くことになるだろう。そのような総合学習を構想してみたが, あくまでも試案である。今後は,コミュニケーション的行. 《参考文献》 (1)小笠原道雄監,坂越正樹・高橋勝・増測幸男・田代尚弘編 『近代教育の再構築』福村出版2000。. 為理論にもとづく実践を生かし,このような総合学習の取. (2)教育思想学会編『教育思想事典』勤草書房, 2000。. り組みが,学校教育のパラダイム転換の契機となりうるこ. (3)熊谷一乗『現代の教育社会学』東信堂, 2000。. とを,実践を通して検証していきたい。. (4)小玉重夫「公共性の復権と総合学習-カリキュラム改革か. 《注》 1)ユルゲン・--バーマス,細谷貞雄・山田正行訳『公共性の. ら学校改革へ」 『UP』東京大学出版会, 2000。 (5)柴田義松『学び方の基礎・基本と総合的学習』明治図書, 1999。. 構造転換』 [第2版]未来社1983, p.13。なお,似たよう. (6)高橋勝『子どもの自己形成空間』川島書店, 1997。. な言葉で「公共圏」もある。公共性と同じ意味であるが,ド. (7)中岡成文『現代思想の冒険者たち27 --バーマスコミュ. イツ語のoffentlichkeitが空間的概念をもつことに由来する。 2)ユルゲン・-ーバーマス,丸山高司・丸山徳次・厚東洋輔・ 森田数実・馬場字瑳江・脇圭平訳『コミュニケイション的行 為の理論(下)』未来社1998, p.307。 3)磨松渉他編『岩波哲学・思想事典』岩波書店, 1998, pp. 969-970。. 4)文部省『小学校学習指導要領解説総則編』東京書籍, 1999, pp.45-46。. 5)アンケ-卜調査の質問項目8番で主なねらいを尋ね, 14番, 15 番でそれぞれ体験活動の内容と問題解決学習の内容を尋ねた。 ここに回答された記述の内容によって,筆者が「共同学習がみ. ニケーション的行為』講談社, 1998C (8)野上智行編著『「クロスカリキュラム」理論と方法』明治図 書, 1998。 ( 9 )野平慎二「教育の公共性と政治的公共圏」 『教育学研究』 日本教育学会第67巻第3号, 2000。 (10)原聴介・宮寺晃夫・森田尚人・今井康雄『近代教育思想 を読みなおす』新曜社, 1999。 (ll)久田敏彦編『共同でつくる総合学習の【理論】 』フォーラ ム蝣A, 1999a. (12)藤井千春『く社会科教育全書33)問題解決学習のストラテ ジー』明治図書, 1996。. られる」ものと, 「共同学習がみられない」ものに区分した。ま. (13)水越敏行『総合的学習の研究①総合的学習の理論と展. た, 12番で主な学習者の形態を尋ねたが, 「個人」を選択した. 開』明治図書, 1998。 (14)村川雅弘編『'実践に学ぶ''特色ある学校づくりNo.2 「総. 学校は, 「個人形態を含む」とみなした。それとは逆に, 「個人」 を選択していない学校は, 「個人形態を含まない」とした。 6)共同性を育むという観点からすれば,ディベ-トを無批判的. 合的な学習」編』教育開発研究所, 1999。 (15)文部省『特色ある教育活動の展開のための実践事例集-. に肯定することはできない。なぜなら,ディベートでは,相手. 「総合的な学習の時間の学習活動の展開- (小学校編)』教. の論拠の鼠点を探し,そこを突いて論拠を崩すことが重視さ. 育出版, 2000。. れるからである。ただ,多くの話し合い活動自体が,発言の. (16)渡遥満「教室の人間関係に根ざす道徳教育試論」 『道徳教. 出し合いで終わる,一部の子どもの意見表明で終始する,多. 育方法研究第5号』日本道徳教育方法学会, 1999。 (2001.7.31受稿, 2001.9.17受理). 数決で安易に決定するといった問題点を学んでいる。そこで.

(12)

参照

関連したドキュメント

The explicit treatment of the metaplectic representa- tion requires various methods from analysis and geometry, in addition to the algebraic methods; and it is our aim in a series

We have avoided most of the references to the theory of semisimple Lie groups and representation theory, and instead given direct constructions of the key objects, such as for

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”

児童生徒の長期的な体力低下が指摘されてから 久しい。 文部科学省の調査結果からも 1985 年前 後の体力ピーク時から

小学校学習指導要領総則第1の3において、「学校における体育・健康に関する指導は、児

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に

平均的な交通状況を⽰す と考えられる適切な時期 の平⽇とし、24時間連続 調査を実施する。.