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中途障害者の口腔状況に関する研究 : 平成23年歯科疾患実態調査との比較

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中途障害者の口腔状況に関する研究 : 平成23年歯

科疾患実態調査との比較

著者

小澤 晶子, 宮尾 奈々, 縄岡 葉子, 吉田 好江, 田

中 宣子

雑誌名

鶴見大学紀要. 第3部, 保育・歯科衛生編

51

ページ

63-70

発行年

2014-03

URL

http://doi.org/10.24791/00000108

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中途障害者の口腔状況に関する研究

−平成 23 年歯科疾患実態調査との比較−

Study on oral health condition in the acquired disabled person 

− Comparison of the Survey of Dental Diseases (2011) −

小澤晶子

、宮尾奈々

、縄岡葉子

、吉田好江

、田中宣子

Akiko OZAWA, Nana MIYAO, Youko NAWAOKA, Yoshie YOSHIDA, Nobuko TANAKA

緒言  日本における障害者の状況は、障害者数の概数を見ると、 身体障害者366万3千人、知的障害者54万7千人、精神障害 者323万3千人となっており、障害児者数が増加している1) また、高齢になるほど身体障害者の割合が高く、人口の高 齢化により、身体障害者は更に増加していくことが予想さ れている。障害の原因別では、疾病によるものが20.7%で あり、そのうち、脳血管疾患は7.8%と高い割合を占めてい る2)。脳血管疾患のため障害を持った人の生活の質の向上 を目的として、亜急性期、回復期、維持期での歯科治療を 中心とした対応についての報告、急性期からの口腔ケアの 重要性に関する報告がされている3−12)。しかしながら、回 復期リハビリテーションを終了し、地域の中で生活してい る中途障害者の口腔状況についての報告は見当たらない。  そこで著者らは、脳血管疾患により中途障害になり、障 害者地域活動センターを利用している人の口腔内状況を調 査し、歯科疾患実態調査(平成17年)・国民栄養調査と比 *〒230−8501 横浜市鶴見区鶴見2−1−3 鶴見大学短期大学部歯科衛生科

Department of Dental Hygiene, Tsurumi University of Junior College, 2−1−3 Tsurumi, Tsurumi-Ku, Yokohama 230− 8501, Japan. 較した13,14)。その結果、口腔ケア、早期発見、早期治療、 定期的受診の重要性について指導を行うこと、また、中途 障害者の口腔の健康を支援する環境づくりが必要であるこ とが示唆された15)。前回の調査から5年が経過し、歯科口腔 保健の推進に関する法律が施行されるなど、中途障害者を 取り巻く環境は変化してきている。  今回は、障害者地域活動センターを利用している人の口 腔内状況を調査し、平成23年歯科疾患実態調査と比較する ことで、中途障害者の口腔状況における問題点について検 討した16) 対象ならびに方法 1.対象  中途障害者地域活動センターを利用している32人(男性 28人、女性4人)を対象として、平成25年3月に調査を実施 した。対象者の平均年齢は、58.1±9.3 歳であり、最低年 齢は34.0歳、最高年齢は75.0歳であった。中途障害の原因 要 旨  中途障害者の口腔状況における問題点について検討する目的で、脳血管疾患により中途障害になり、障害者 地域活動センターを利用している人を対象に、口腔状況の問診、診査を実施し、平成23年歯科疾患実態調査と 比較した。その結果、以下の結論を得た。 1.歯ブラシの使用状況は、毎日磨く人が100.0%であり、歯科疾患実態調査と比較した結果、中途障害者は毎 日磨いている人が多かった。磨く回数は2回が最も多く(50.0%)歯科疾患実態調査と同じ傾向を示した。 2.顎関節音がある人は31.3%、顎関節痛がある人は0%であった。歯科疾患実態調査と比較した結果、中途障 害者は関節音を自覚している者が多かった。 3.う蝕の処置状況は、処置完了者は72.4%であり、歯科疾患実態調査と比較した結果、中途障害者は処置完 了者が多かった。中途障害者は、現在歯、処置歯が少なく、未処置歯、重度う蝕歯、喪失歯が多かった。処 置歯数は、充填歯、クラウンとも少なかった。歯の喪失については、無歯顎者が多く、現在歯20歯以上の者 が少なかった。補綴の状況については、補綴物装着者、架工義歯装着者が少なく、部分床義歯、全部床義 歯装着者が多かった。  以上の結果から、口腔ケアの重要性に関する動議づけはできてきているが、口腔の健康に問題を持っている 人が多いため、定期的に受診することを個人に対して指導していくとともに、定期的な健診が受けられる環境 づくりをしていくことが必要であることが示唆された。

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鶴見大学紀要 第51号 第3部 となった脳血管疾患を表1に示す。脳梗塞が16人(50.0%) で最も多く、脳出血、くも膜下出血、脳外傷の順であった。 全麻痺、片麻痺を有する人は19人(59.4%)、高次機能障害、 体感機能障害、言語障害が13人(40.6%)であった。脳血 管疾患を発症してからの平均期間は7.2年であった。 2.方法  中途障害者の口腔清掃習慣、口腔機能、口腔内状況につ いて、調査票をもとに調査した。  口腔清掃習慣の調査項目を表2に示す。歯ブラシの使用 状況、歯磨きの時間帯、歯磨きの時間、歯ブラシの状況、 歯ブラシ以外の清掃用具の使用状況、歯磨き剤の使用状況、 歯磨き指導を受けたことがあるか否か、現在の通院状況、 定期的に歯科医院に通院しているか否か、BDR 指標の10 項目とした。歯ブラシの使用状況については、平成23年歯 表1 原疾患 脳梗塞 脳出血 くも膜下出血 脳外傷 16 11 3 2 50.0 34.4 9.4 6.3 (人) (%) 表2 口腔清掃習慣の調査項目       質問項目 歯ブラシの使用状況 歯磨きはいつしますか。 歯磨きの時間 歯ブラシの状況 歯ブラシ以外に何か使用していますか。 歯磨き剤は使用していますか。 歯磨き指導を受けたことがありますか。 現在、歯科医院に通院していますか。 定期的に歯科医院行っていますか。 BDR指標  歯磨き  義歯着脱  義歯清掃 毎日磨く(1回・2回・3回)・ときどき磨く・磨かない 朝食前・朝食後・昼食後・夕食後・就寝前・(      ) 1分以内・2∼3分・3分以上(       ) 良い・あまり良くない・悪い はい・いいえ(      ) はい・いいえ はい・いいえ   はい・いいえ はい・いいえ 自立・一部介助・全介助 自立・一部介助・全介助 自立・一部介助・全介助 表3 口腔機能の調査項目 調査項目 開口 舌運動障害 顎関節の異常 咬筋の触診 頬の膨らまし 嚥下機能 発音 表情 (     )横指 開口維持(可・短時間・不可) なし・上下・前後・側方 口を大きく開け閉めした時、あごの音がしますか。    はい  いいえ 口を大きく開け閉めした時、あごの痛みがありますか。   はい  いいえ 強い 弱い なし できる・やや不十分・不十分 症状 無・有(むせ・咳・こぼし・流涎・丸飲み) RSST   回/30秒 明瞭・不明瞭   パ   回/秒  タ   回/秒  カ   回/秒 有・無 科疾患実態調査の結果と比較検討した16)。比較群は、中途 障害者の平均年齢が58.1 歳であることから、55歳から59歳 の調査結果とした。  口腔機能の調査項目を表3に示す。開口、舌運動、顎関 節の状況、頬の膨らまし、咬筋の触診、嚥下機能、発音、 表情の8項目とした。顎関節の状況については、歯科疾患 実態調査と比較検討した16)  口腔内状況の調査項目を表4に示す。歯垢、歯石、食物 残渣、口臭、舌苔、軟組織疾患の6項目の判定は、口腔機 能の向上マニュアルの判定基準に準じて実施した17)。義歯 の状況の調査は、義歯装着の有無、付着物、沈着物の3項 目とした。  歯の状況の調査は、歯科疾患実態調査の調査票に用いら れている調査票を使用して実施した16)。歯の状況の調査項 目を表5に示す。う蝕の有病状況、う蝕の処置状況、歯の 喪失の状況、補綴の状況を調査し、歯科疾患実態調査と比 較検討した16)  本研究は鶴見大学短期大学部倫理審査委員会の承認を得 て行った。(承認番号24−2)施設長、利用者に対して、研 究の目的と方法について説明を行い、承諾を得た者を調査 対象者とした。

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結果 1.口腔清掃習慣 (1) 歯ブラシの使用状況  図1に歯ブラシの使用状況についての結果を示す。毎日 磨く人が32人(100.0%)、ときどき磨く人は0人、磨かない 人は0人であった。磨く回数は、2回が最も多く18人(50.0%)、 以下、3回が9人(28.1%)、1回が5人(15.6%)の順であった。 歯科疾患実態調査との比較では、中途障害者は、毎日磨く 人が多かった。磨く回数については、ほぼ同じ傾向を示した。 (2) 歯磨きの時間帯  図2に歯磨きはいつしますか。の質問に対する結果を示 す。朝食後・就寝前が最も多く7人(21.9%)、以下、朝食 後・夕食後が5人(15.6%)、朝食後・昼食後・夕食後が4人 (12.5%)、朝食後が3人(9.4%)、朝食前・朝食後、朝食前・ 朝食後・昼食後・就寝前が各2人(6.3%)、他の時間帯は各 1人の順であった。 (3) 歯磨きの時間  図3に歯磨きの時間についての結果を示す。3分以上が最 も多く14人(43.8%)、以下、2~3分が12人(37.5%)、1分 以内が4人(12.5%)の順であった。 (4) 歯ブラシの状況  図4に歯ブラシの状況についての結果を示す。あまり良く ないが最も多く15人(46.9%)、良い、悪いが各7人(21.9%)、 不詳が3人(9.4%)の順であった。 (5) 歯ブラシ以外の清掃用器具  歯ブラシ以外に何か使用していますか。の質問に対して、 はいが17人(53.1%)、いいえが15人(46.9%)であった。 歯ブラシ以外には、歯間歯ブラシ10人、デンタルフロス4人、 舌ブラシ3人、洗口剤1人を使用していた。 (6) 歯磨き剤の使用  歯磨き剤は使用していますか。の質問に対して、はいが 28人(87.5%)、いいえが4人(12.5%)であった。 (7) 歯磨き指導の状況  歯磨き指導を受けたことがありますか。の質問に対する 結果を示す。はいが23人(71.9%)、いいえが9人(28.1%) であった。 (8) 通院の状況  現在、歯科医院に通院していますか。の質問に対して、 はいが16人(50.0%)、いいえが16人(50.0%)であった。  定期的に歯科医院に行っていますか。の質問に対して、 はいが13人(40.6%)、いいえが19人(59.4%)であった。 (9) BDR 指標  歯磨きについては32人全員が自立していた。義歯の着脱 については、義歯装着者13人全員が自分で着脱していた。 うがいについては32人全員がブクブクうがいが可能であっ た。 表5 歯の状況の調査項目   調査項目 う の有病状況 う の処置状況 歯の喪失の状況 補綴の状況 う歯(DMF歯)の有無 処置歯および未処置歯(DF歯)の有無 現在視・健全歯・DMF歯・D歯・F歯・M歯の一人平均歯数 一人平均未処置歯数・一人平均処置歯数 無歯顎者・現在歯20歯以上の者・現在歯24歯以上の者・喪失歯を持つ者 補綴物装着者・架工義歯、部分床義歯、全部床義歯装着者 表4 口腔内状況の調査項目  評価項目 歯垢 歯石 食物残渣 口臭 舌苔 軟組織疾患 義歯  付着物   沈着物        評価基準 なし なし なし なし なし なし・あり 有・無 なし なし ある ある ある 軽度 ある (      ) ある ある 多い 多い 多い 強度 多い 多い 多い 図1 歯ブラシの使用状況 % 100 80 60 40 20 0 中途障害者 毎日 1回 2回 3回 ときどき磨かない 歯科疾患実態調査 不詳

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鶴見大学紀要 第51号 第3部 2.口腔機能  開口の状況は、30人が3横指以上開口可能であり、2横指 から3横指までが2人であった。舌運動は、障害がある人は 0人であった。図5に顎関節の状況についての結果を示す。 顎関節音がある人は10人(31.3%)、顎関節痛がある人は0 人であった。歯科疾患実態調査との比較では、中途障害者 は関節音を自覚している者が多かった。図6に頬の膨らまし についての結果を示す。十分可能が最も多く25人(78.1%)、 以 下、 や や 不 十 分 が4人(12.5%)、 不 十 分 が3人(9.3%) の順であった。嚥下機能は、自覚症状がある人は0人であ り、不詳が3人であった。RSST テストは、2回以下が14人 (43.8%)、3回以上が18人(56.3%)であった。発音は、明 瞭が17人(53.1%)、不明瞭が13人(40.6%)、不詳が2人(6.3%) であった。オーラルディアドコキネシスの結果は、パが4.4 回/秒、タが4.6回/秒、カが4.3回/秒であった。健常値は、 概ね1秒間に4回以上であり、パ、タ、カともに4回に達して いた18−20)。表情は、32人全員があった。 3. 口腔内状況 (1) 歯垢、歯石、食物残渣の状況  図7に歯垢、歯石、食物残渣の状況についての結果を示す。 歯垢は、なしが最も多く19人(59.4%)、以下、あるが11人 (34.4%)、多いが2人(6.3%)の順であった。歯石は、なし が最も多く21人(65.6%)、以下、あるが10人(31.3%)、多 いが1人(3.1%)の順であった。食物残渣は、なしが最も 多く31人(96.9%)、以下、あるが1人(3.1%)、多いが0人(0%) 1分以内 図3 歯磨きの時間 % 50 40 30 20 10 0 2∼3分 3分以上 不詳 良い % 50 40 30 20 10 0 あまり良くない 悪い 不詳 図4 歯ブラシの状況 図2 歯磨きの時間帯 % 30 20 10 0 朝 朝食 後 昼食 後 朝食 前・朝食 後 朝食 前・就寝 前 朝食 後・昼食 後 朝食 後・就寝 前 朝食 後・夕 食後 朝食 前か 後・就 寝前 昼食 後・就寝 前 朝食 前・昼食 後・夕 食後 朝食 後・昼食 後・夕 食後 朝食 前・朝食 後・昼 食後・夕 食後 朝食 前・朝食 後・昼 食後・ 就寝前 朝食 後・昼 食後・夕 食後・ 就寝前 十分可能 やや不十分 不十分 図6 頬の膨らまし % 100 80 60 40 20 0 図5 顎関節の状況 100 80 60 40 20 0 % 中途障害者 音あり 音なし 痛みあり 痛みなし 歯科疾患実態調査

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の順であった。 (2) 口臭、舌苔の状況  図8に口臭、舌苔の状況についての結果を示す。口臭は、 なしが最も多く29人(90.6%)、以下、軽度が3人(9.4%)、 強度が0人(0%)の順であった。舌苔は、なしが最も多く 24人(75.0%)、以下、軽度が6人(18.8%)、わずかが2人(6.3%) の順であった。 (3) 軟組織疾患  軟組織疾患を有する人は0人であった。 (4) 義歯の状況  32人中、義歯の装着者は13人(40.6%)であった。図9 に義歯の状況についての結果を示す。付着物は、不詳の2 人(15.4%)を除くと、なしが最も多く6人(46.2%)、以下、 あるが4人(30.8%)、多いが1人(7.7%)の順であった。沈 着物は、不詳を除くと、なしとあるが多く5人(38.5%)、多 いが1人(7.7%)であった。 4.歯の状況 (1)う蝕の有病状況  う歯(DMF 歯)のある人は、無歯顎者を除く32人全員 であった。歯科疾患実態調査においても、う蝕有病者率は 100%であった。 (2)う蝕の処置状況  処置歯および未処置歯(DF 歯)のある人は29人(92.3%) であった。歯科疾患実態調査においては、99%であり明ら かな違いは見られなかった。  図10に DF 歯のある人の状況を示す。処置完了者は21人 (72.4%)、DF 歯を併有する者は7人(24.1%)、未処置の者 は1人(3.1%)であった。歯科疾患実態調査との比較では、 中途障害者は、処置完了者の者が多かった。 (3)現在歯・健全歯・DMF 歯・D 歯(未処置歯)・F 歯(処 置歯)・M 歯(喪失歯)の一人平均歯数  図11に現在歯・健全歯・DMF歯・D歯・F歯・M歯の 一人平均歯数を示す。現在歯は22.0本、健全歯は11.3本、 DMF 歯は16.7本、D 歯は1.4本、F 歯は9.3本、M 歯は6.0本 であった。歯科疾患実態調査との比較では、中途障害者は、 現在歯、処置歯が少なく、未処置歯、喪失歯が多かった。 (4)一人平均未処置歯数・一人平均処置歯数  図12に一人平均未処置歯数を示す。総数は、1.4 本、軽 度う蝕0.3本、重度う蝕 1.2本であった。歯科疾患実態調査 との比較では、中途障害者は、未処置歯が多く、重度う蝕 歯が多かった。  図13に一人平均処置歯数を示す。充填歯は4.1本、クラウ ンは 5.3本であった。歯科疾患実態調査との比較では、中 途障害者は、充填歯、クラウンともに少なかった。 (5) 歯の喪失の状況  図14に歯の喪失の状況を示す。無歯顎者は2人(6.3%)、 現在歯20歯以上の者は25人(78.1%)、現在歯24歯以上の者 は23人(71.9%)、喪失歯を持つ者は21人(65.6%)であった。 歯科疾患実態調査との比較では、無歯顎者が多く、現在歯 20歯以上の者が少なかった。 なし ある 多い 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図7 歯垢、歯石、食物残渣の状況 歯垢 歯石 食物残渣 なし ある 多い 不詳 なし 軽度 ある 強度 多い 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図8 口臭、舌苔の状況 口臭 舌苔 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図9 義歯の状況 付着物 沈着物 中途障害者 歯科疾患実態調査 処置完了者 DF歯を 併有する者 未処置の者 図10 DF歯のある人の状況 % 80 60 40 20 0

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中途障害者 歯科疾患実態調査 現在歯 健全歯 DMF歯 処置歯 未処置歯 喪失歯 図11 現在歯・健全歯・DMF歯・D歯・F歯・M歯の一人平均歯数 本 30 25 20 15 10 5 0 中途障害者 歯科疾患実態調査 無歯顎者 20歯 以上の者 以上の者24歯 喪失歯を持つ者 図14 歯の喪失の状況 % 100 80 60 40 20 0 中途障害者 歯科疾患実態調査 補綴物 装着者 架工義歯 部分床義歯 全部床義歯 図15 補綴の状況 % 80 60 40 20 0 中途障害者 歯科疾患実態調査 総数 軽度う 重度う 図12 一人平均未処置歯数 本 1.5 1 0.5 0 中途障害者 歯科疾患実態調査 充填歯 クラウン 図13 一人平均処置歯数 本 7 6 5 4 3 2 1 0 (6) 補綴の状況  図15に補綴の状況について示す。補綴物装着者は17人 (53.1%)、架工義歯は9人(28.1%)、部分床義歯は9人(28.1%)、 全部床義歯は2人(6.6%)であった。歯科疾患実態調査と の比較では、中途障害者は、補綴物装着者、架工義歯装着 者が少なく、部分床義歯、全部床義歯装着者が多かった。 考察  本研究は、中途障害者の口腔状況における問題点につい て検討する目的で、脳血管疾患により中途障害になり、障 害者地域活動センターを利用している人を対象に、口腔状 況の問診、診査を実施し、平成23年歯科疾患実態調査と比 較した。 1.口腔清掃習慣  歯ブラシの使用状況は、毎日磨く人が100%、磨かない人 0%であった。歯科疾患実態調査と比較した結果は、中途障 害者は、毎日磨く人が多かった。平成20年より毎年、歯科 健診、歯科保健指導を実施している効果であると考えられ る21)。磨く回数は、2回が最も多く、歯科疾患実態調査とほ ぼ同じ傾向を示していた。感染症の予防、口腔機能の回復 を勧めていくためには、毎食後磨くことを指導する必要が ある。  歯磨きの時間帯は、朝食後・就寝前が最も多く21.9%で あった。夕食後に磨いている人は34.3%、就寝前に磨いて いる人は40.6%であったが、25.0%の人は夕食後、就寝前に 磨いていなかった。どの時間帯で歯磨きを行うのが効果的 であるかについての指導が必要であることがわかった。歯 磨きの時間は、3分以上の人が43.8%であったが、1分以内 の人が12.5%であった。歯磨き時間が短い人には、口腔ケ アの方法について指導することで、歯磨き時間を改善でき ると考えられる。  歯ブラシの使用状況は、良いが21.9%、あまり良くない、 悪いが68.8%であった。良くない歯ブラシを使用している 人が多く、歯ブラシの交換に関する指導を行っていく必要 がある。歯ブラシ以外の清掃用器具の使用状況は、はい が53.1%、いいえが46.9%であった。2人に1人は補助清掃 用具を使用しているが、さらに補助清掃用具を使用するこ とを推奨していく必要がある。歯磨き剤の使用は、はいが 87.5%、いいえが12.5%であった。歯磨き剤の使用に関して 鶴見大学紀要 第51号 第3部

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も、個人個人の口腔内状況に合わせた指導が必要である。  歯磨き指導の状況は、受けたことがある人が71.9%、な い人が28.1%であった。入院中、リハビリテーション中に 医療機関に掛かることが多かったため歯磨き指導を受ける 機会が比較的多かったと推察されるが、指導を受けたこと がない人には、歯磨き指導を受ける機会をつくっていくこ とが必要である。通院の状況は、通院中が50.0%であった。 定期的に通院をしている人は、40.6%であった。定期的に 通院している人が増えるように指導していく必要がある。 BDR 指標は、歯磨き、義歯の着脱、うがいについては全員 が自立できていた。  今回の調査では、毎日磨く人が100%であり、歯科疾患 実態調査と比較した結果、中途障害者は、毎日磨く人が多 かった。このことから、口腔ケアの重要性に関する動議づ けはできていると考えられる。しかしながら、夕食後、就 寝前に磨いてない人が25.0%、歯磨き時間が1分以内の人が 12.5%、歯ブラシが良くない状況の人が68.8%、補助清掃用 具の未使用者が46.9%、歯磨き指導を受けてない人は28.1% であり、歯科健診、歯科保健指導を定期的に受けてもらう ことの必要性を理解してもらうことが重要である。  一方、中途障害者が、個人のみで口腔の管理を行ってい くのは難しいと考えられる。歯科口腔保健の推進に関する 法律は、国及び地方公共団体は、障害者等が定期的に歯科 検診を受けことができるようにするための施策を講じるも のとされている。個人のみで、口腔の健康を管理するので はなく、中途障害者の口腔の健康を支援する環境づくりが 必要である。 2.口腔機能  口腔機能の診査において、顎関節音がある人は31.3%、 顎関節痛がある人は0%であった。歯科疾患実態調査と比較 した結果、中途障害者は関節音を自覚している者が多かっ た。顎関節に関して継続的に検診をしていく必要があると 考えられる。舌運動に障害がある人は0%、頬の膨らましは、 やや不十分が12.5%、不十分が9.3%であった。嚥下機能は、 自覚症状がある人は0%、RSST テストは、3回できれば正 常とされているが、2回以下が43.8%であった。発音は、不 明瞭が40.6%であった。オーラルディアドコキネシスは、パ が4.4回/秒、タが4.6回/秒、カが4.3回/秒であった。オ ーラルディアドコキネシスの健常値は、概ね1秒間に4回以 上であり、パ、タ、カともに4回に達していた18−20)。   以上のことから、脳血管障害になり、平均で7.2年経過し 地域の中で活動をしている人において、頬の膨らまし、嚥 下機能に問題を持つ人が多く見られた。平成20年より毎年、 歯科健診、歯科保健指導を実施しているが、口腔機能の改 善に向けて定期的な指導が必要であると考えられる。 3.口腔内状況  歯垢、歯石、食物残渣の状況は、歯垢が付着している人 は40.7%、歯石が付着している人は、34.4%、食物残渣が ある人は3.1%であった。口腔清掃習慣の結果から、毎日磨 いているが、25.0%の人が夕食後、就寝前に磨かないこと、 口腔清掃に適していない歯ブラシを使用している人が多い こと、補助清掃用具の使用者が少ないことから、歯垢の付着、 歯石の付着が多かったと考えられる。  口臭がある人は9.4%であり、舌苔がある人は25.1%であ った。口腔機能の調査の結果から、頬の運動、嚥下運動な ど機能面に問題を持っている人が多く、自浄作用の力が弱 いこと、また、ブラッシングによるプラークコントロール が不十分であることから、舌苔の付着者が多かったと考え られる。粘膜、舌の清掃法を指導していく必要がある。  義歯に付着物がある人は38.5%、沈着物がある人は46.2% であった。付着物、沈着物の存在により、う蝕、歯周病な どの感染症、誤嚥性肺炎などのリスクが高くなるため、毎 食後、義歯の清掃を行うことが大切である。義歯清掃の必 要性、清掃方法を指導していく必要がある。  口腔内状況は、歯垢付着者、歯石付着者、舌苔のある人、 義歯の付着物、沈着物が多かったことから、プラークコン トロールの方法を指導していく必要がある。歯の清掃のみ ならず、粘膜、舌の清掃法、義歯清掃の必要性、義歯の清 掃方法を指導していく必要がある。 4.歯の状況  う蝕の処置状況は、処置完了者は72.4%、DF 歯を併有す る者は24.1%、未処置の者は3.1%であった。処置しなけれ ばならない歯がある人は27.2%であった。歯科疾患実態調 査と比較した結果、中途障害者は処置完了者が多かった。 今後さらに受診を勧めていく必要がある。  現在歯・健全歯・DMF 歯・D 歯・F 歯・M 歯の一人平 均歯数について、歯科疾患実態調査と比較した結果、中途 障害者は、現在歯、処置歯が少なく、未処置歯、喪失歯が 多かった。   現在歯は平均年齢58.1歳で22.0本であり、80歳まで20本 の歯を残すのは難しいと考えられる。脳血管疾患を発症し てからの平均期間は7.2年であるので、地域での生活が始ま ったと同時に歯科のかかりつけ医を持ち、定期的な検診を 受けていくことが必要である。  一人平均未処置歯数について、歯科疾患実態調査と比較 した結果、中途障害者は、未処置歯が多く、重度う蝕歯が 多かった。定期的に受診していないことから、重度う蝕に なっていると考えられる。  一人平均処置歯数について歯科疾患実態調査と比較した 結果、中途障害者は、充填歯、クラウンともに少なかった。 中途障害者は、未処置歯、喪失歯が多いため、処置歯数が 少なかったと考えられる。未処置歯、喪失歯への指導が必 要である。  歯の喪失について歯科疾患実態調査と比較した結果、中 途障害者は、無歯顎者が多く、現在歯20歯以上の者が少な い点が問題である。今後さらに、早期発見、早期治療、定 期的受診を積極的に勧める必要がある。  補綴の状況について歯科疾患実態調査と比較した結果、 中途障害者は、補綴物装着者が少なかった。喪失歯に対し

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て補綴物を装着していないことから、補綴物装着者が少な かったと考えられる。補綴物装着の必要性について指導す る必要がある。また、喪失歯が多いため、架工義歯装着者 が少なく、部分床義歯、全部床義歯装着者が多かったと考 えられる。  歯の状況は、未処置歯、喪失歯、重度う蝕歯が多い、無 歯顎者が多い、現在歯20歯以上の者が少ない点が問題であ る。リハビリテーション後、地域に戻った後、どのように 口腔の管理をしていくかが問題であると考えられる。平成 20年より毎年、歯科健診、歯科保健指導を実施しているが、 年1回では改善が難しため、定期的に受診することを個人に 対して指導していくとともに、定期的な健診が受けられる 環境づくりをしていくことが必要である。 結論  中途障害者の口腔状況における問題点について検討する 目的で、脳血管疾患により中途障害になり、障害者地域活 動センターを利用している人を対象に、口腔状況の問診、 診査を実施し、平成23年歯科疾患実態調査と比較し、以下 の結論を得た。 1.歯ブラシの使用状況は、中途障害者は毎日磨いている 人が多かった。磨く回数は2回が最も多く、歯科疾患実態 調査と同じ傾向を示した。 2.中途障害者は関節音を自覚している者が多かった。 3.中途障害者は処置完了者が多かった。現在歯、処置歯 が少なく、未処置歯、重度う蝕歯、喪失歯が多かった。 処置歯数は、充填歯、クラウンとも少なかった。歯の喪 失については、無歯顎者が多く、現在歯20歯以上の者が 少なかった。補綴の状況については、補綴物装着者、架 工義歯装着者が少なく、部分床義歯、全部床義歯装着者 が多かった。  以上の結果から、口腔ケアの重要性に関する動議づけは できてきているが、口腔の健康に問題を持っている人が多 いため、定期的に受診することを個人に対して指導してい くとともに、定期的な健診が受けられる環境づくりをして いくことが必要であることが示唆された。 参考文献 1)内閣府編:障害者白書,平成25年度版,国立印刷局,東京, 2013. 2)厚生統計協会:国民衛生の動向(厚生の指標,臨時増刊, 2012/2013),厚生統計局,東京,2012. 3)植田耕一郎,江澤敏光,他:リハビリテーション専門病院 における歯科的需要について.総合リハ,20:1241−1246, 1992. 4)米山武義,吉田光由,他 : 要介護高齢者に対する口腔衛生 の誤嚥性肺炎予防に関する研究.歯医学誌,20:58−68, 2001. 5)大野友久,藤島一郎,他 : 総合病院における新しい歯科の役 割−リハビリテーション科の一部門としての歯科−.総合 リハ,32:271−276, 2004. 6)藤井 航,永田千里,他:回復期リハビリテーション病棟 を中心とした歯科診療の検討 . 障歯誌,27:182−186, 2006. 7)吉岡昌美,藤井裕美,他:急性期病院の脳神経疾患患者に 対する口腔ケアニーズの分析.口腔衛生会誌,58:490− 497, 2008. 8)上島祥子,谷本来覧,他:ICU における専門的口腔ケアが 口腔内環境の改善に及ぼす影響についての細菌学的検討. 障歯誌,29:306, 2008. 9)柴田祐子,平塚正雄,他:脳血管傷害者の口腔ケア時おけ る循環動態に関する調査.老年歯学,24:205, 2009. 10) 大岡貴史,渡邊賢礼,他:急性期病院における口腔ケア活 動と口腔内状況の変化について.障歯誌,31:749−757, 2010. 11) 平塚正雄:脳卒中患者の歯科治療−亜急性期,回復期およ び維持期での対応−.障歯誌,31:11−20, 2010. 12) 渡邊 裕:要介護高齢者の継続的口腔管理の現状と展望に ついて.日本歯科医師会雑誌,65(1):6−16, 2012. 13)歯科疾患実態調査報告解析検討委員会:歯科疾患実態調査 報告解析検討委員会編,解説 平成17年歯科疾患実態調査, 口腔保健協会,東京,2007. 14) 健康・栄養情報研究会:厚生労働省 平成16年国民健康・ 栄養調査報告,第一出版,東京,2006. 15) 小澤晶子,宮尾奈々,縄岡葉子,吉田好江,田中宣子: 中 途障害者の口腔状況に関する研究−歯科疾患実態調査・国 民栄養調査との比較−.鶴見大学紀要,49:51−59, 2012. 16)歯科疾患実態調査報告解析検討委員会:歯科疾患実態調査 報告解析検討委員会編,解説 平成23年歯科疾患実態調査, 口腔保健協会,東京,2013. 17)口腔機能向上マニュアル(改訂版) 植田耕一郎:平成21年 3月   18)西尾正輝,新美成二:Dysarthria における音節の交互反復 運動.音声言語医学,43:9−20, 2002. 19)伊藤加代子:新しい口腔機能測定器を用いたオーラルデ ィアドコキネシスの測定.新潟歯学会誌,39(1):61−63, 2009. 20)羽村 章:口腔の老衰とその対策.日本老年医学会雑誌, 47(2):113−116, 2010. 21) 小澤晶子,宮尾奈々,縄岡葉子,吉田好江,田中宣子:中 途障害者の口腔状況に関する研究−歯科健康診査・歯科保 健指導の効果−.鶴見大学紀要,50:1−9, 2013. 鶴見大学紀要 第51号 第3部

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