生殖技術の受容と<近代家族>の構成要素
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(2) 人間科学編 (2006年 3月 ま総 論 的 な判 断 が行 なわれ ようと して い る。そ こに. ,. ). 法的問題 について,そ の不備が取 り上げられる。生. 上 記 の 混乱 の原 因があ る よ うに思 われ る。本稿 の試 み. 殖技術 を ヒ トに適用 した場合,生 まれて くる子 の法的. は ,錯 綜 した問題 群 の一 端 を明 らか にす る こ とで あ. 地位 ,特 に親子 関係 が問題 とされ る。た とえば先 の. る。 まず ,生 殖技術 の何 が問題 とされて い るのか につ. 「受精卵提供」 につい て,そ れ を認めない理 由のひ と. い て簡単 に整理 し,生 殖技術 の 是非 を問 う場 に「家族. つ に挙げ られてい るのが,「 受精卵 を提供 した側 と. 規 範」 の 視 点 を持 ち込 む こ との 意 義 を示 して お きた. 提供 を受けた側の どちらが法律上の両親なのか明確 で. い 。 そ の うえで ,な ぜ あ る生 殖技術 が 受容 されて別 の. ない」 ことで ある. ,. 生 殖技術 は受容 され な いの か とい う疑 間 を,〈 近代 家. 毎 日新聞』2002年 6月 15日 )。 同様 の法的問題点が指摘 されてい る代理妊娠 ・出産間. 族 〉の構 成要素か ら解 明す る。. 題 について,山 崎康仕 は「まず問 われなければならな. (『. い主要な問題 は,代 理妊娠 を用い る 自由を認 めるか ど Ⅱ. 生 殖 技 術 の何 が 問題 か. うかであ って,代 理妊娠 に関す る法制度が可能 か どう かではない。その問題 に対す る考察 を抜 きに した法技. 生殖技術 の問題群 に含 まれる視点 には,お お まかに. 術 的困難 さの議論 は本末転倒 か枝葉抹消 の議論 で あ. 分類 して以下の三点があ る。①技術的問題 ,② 法的問. る」 と 明 言 す る. 題 ,③ 倫理的問題 ,で ある。. も,「 安全性」 と同様 ,生 殖技術利用 の根源的な問題. 技術的問題 についてまず確認 してお きたいこ とは. ,. (山. 崎 1994:127)。 「法 的 問 題」. とはい えない。. 問題が生殖技術それ 自体 に見出されてい るのではない. 法的問題 と関連づ け られる倫理的問題 に,「 生 まれ. とい うことである。め ざましい発展 を遂げて きた生殖. て くる子 の福祉」 がある。 これは,専 門家 の間でほぼ. 技術 のなかには,家 畜へ の適用 においては問題 とされ ず,ヒ トヘ の適用 において問題 とされる技術があ る。. 合意 を得 てい る代理妊娠 ・出産の禁止 の理由,あ るい. その顕著 な例 は,ク ローニ ングで ある。「科学技術 会. を認めない理由 として挙げた ものである. 議生命倫理委員会 クロー ン小委員会」 の見解 は,二 つ. 2002年 6月 15日. の方向性 を示 してい る。「 クロー ン技術 は,学 術面. とは,具 体的 には子 どもの発達過程 における精神的な. ,. は 日本産科婦人科学会 の倫理審議会が 「受精卵提供」. )。. (『. 毎 日新聞』. 「生 まれて くる子 の福祉」 の問題. 応用面 の両方において,優 れた形質を持 つ畜産用,研. 影響 ,つ まリアイデ ンテ ィテ ィの確立 に困難 をきたす. 究用動物 の効率的生産等 のために大 きな意義 を持 つ画 期的技術」 と絶賛 される一方,ク ロー ン技術 の人個体. 恐 れのことをい う。精神的困難 を招 く根拠 は,育 ての. の産生へ の適用につい ては,「 人間の尊厳及 び安全性. 遺伝的な親 と育 ての親がで き,親 子関係 が複雑 になる. の両方 の観点 か ら問題があることを総 合的 に判断す る. ため とされてい る。 しか しなが ら,こ の二点について. と,人 クロー ン個体 の産生 を禁止する ことが妥当であ. 言 えば,養 子縁組 をした親子 も同様 の条件下 にある。. る」 と危機感が表明 されて い る. 17. もちろん生殖技術 を用いた場合,血 のつ なが りや母親. 日「クロー ン技術 による人個体 の産生等 に関す る基本. による出産の点 で養子関係 よりも親子関係 は複雑 にな. 的考え方」)。 同 じ技術 に対す る評価 が,対 象 を家畜 と. るだろう。 しか し,血 のつ なが りがないこ とや複数 の. す るか ヒ トとす るか によって,ま った く逆転 して い. 親 の存在 を子 の精神 的発達 の 困難 と結 びつ ける こ と. る。. は,養 子 と養親 お よび里子 と里親の関係 を否定 しかね. (平. 成 H tt H月. 親 と生 まれた子 どもに遺伝的なつ なが りがないこ と. ,. 新 しい生殖技術 の是非が議論 される際に例外 な く. ない。 こ うした親子 関係 が制 度 と して法 的 に承認 さ. そ しておそ らく真 っ先 に取 り上げ られる問題が,「 安. れ,ま た社会的 にも一定の地位 を得 てい る以上 ,親 子. ,. N性. 」 で ある。体外受精 を例 に とる と,1978年 に世. 関係 の複雑化 をもって生殖技術 の利用が 「生 まれて く. 界初 の体外受精児が誕生 した当初,「 安全性」 が重要 な問題 の一つ として取 り上げられた (村 岡 1998)。 四. る子 の福祉」 の観点 か ら望 ましくない とはい えないで. /‐. 半世紀 を経 た現在 ,安 全性 の面か ら体外受精 を批判す. あ ろ う。 「倫理 的問題」 には,こ れ以 外 に も「人 間 の 尊厳」. る声 はほとんど聞かれない。あ る程度 の安全性 が証明. が大 きな問題 として残 されてい るが,本 稿 で扱 う範囲. されれば,法 的にも禁止す る根拠 はな くなって しまう 口意友 2002:45)。 そ もそ も安全性 の問題 は,い. を超えてい る。 精子 ・卵子 0受 精卵 の提供や代理母 ・代理出産 をめ. ったん「利用」 を前提 に した議論であるために,生 殖. ぐる議論か ら見えて くるのは,生 殖技術 の是非 におい. 技術 の是非 を問 う根拠 としては弱 い。. て, どの ような親子 を適切 とするのか とい う「家族 ら. (山.
(3) 門野里栄子 :生 殖技術の受容 と 〈近代 家族 〉の構成要素 しさ」 が 争点 となって い る ことで あ る。 一 方 ,生 殖技. 調査結果 を同列 に扱 う こ とはで きない が ,受 容度 よっ. 術 の 是非 を決定す る際 に,実 際 上 不可 欠 な要件 と して. て生 殖技術 を大 まか に次 の 3つ の グル ー プに分類 で き. 挙 げ られ て い るのが ,「 社 会 の 受 容」 で あ る。 こ こに. る。①配偶 者 間生 殖 技 術. お い て も後述す る よ うに,家 族観 ・親子観 が キ ー概念. 〈非 〉配偶者間生殖技術 (以 下,「 〈非 〉配偶 者 間」), ③代 理出産 ・代理母 ,で あ る (表 1)。 ただ し,「 胚提. になって い る。本稿 で は,生 殖技術 を社 会 に位置 づ け る際 に「社 会 の受容」 が不可欠であ る こ とを踏 まえ. 己偶 者 間」),② 下 ,「 酉. 供体外受精」 は技術 的 には② 「〈非 〉配偶者 間」 グル ー プに入れるべ きだが,受 容度 に従 えば「代理出産 ・. ,. そ の 指 標 とな る生 殖 技術 の 受容 度 に焦 点 を当 て なが. 代理母」 グループによ り近 いので,後 者 に入れた。 こ の点 については,後 で改めて取 り上げたい。. ら,社 会 にお ける生殖技術 の意味 を 〈近代 家族 〉の構 成 要 素 か ら説 明 す る。加 え て,す べ て とは 言 え な い. 表 1か ら指摘 で きることは,同 じ技術. が ,不 妊 の 当事者 たちが生 殖技術 に何 を求 めて利用す るのか を,同. (以. (人 工授精. ,. 体外受精)で あ って も,適 用対象が配偶者間 と非配偶. じ視点 か ら推論 してみ た い 。. 者間 とでは,受 容度 に大 きな差がみ られる ことであ る Ⅲ. 生 殖 技 術 の受 容. (前. 者 :約 9割 ,後 者 :6割 以下)。 山縣 らの調査 によ. ると,調 査対象者 自身が利用す る場合 に,第 三者が関. 1. わる生殖技術 を「利用 しない」理由のお もなものは. 社会 における生殖技術 の受容度. ,. まず,社 会 において どの ような生殖技術 が どの程度. 「妊娠 はあ くまで 自然 になされるべ き」,「 家族 (親 子). 受容 されてい るかを確認 してお きたい。生殖技術 の受 容 について一般市民お よび不妊当事者 を対象 に近年調. 関係 が不 自然 になる」 である。 この 2つ の理由は,法 律 上の問題や当事者 の健康問題 と比べ て,圧 伊1的 に多. 査 された もの として,以 下 3つ の研究がある。それ ら. くあげ られて い る (前 者 :7割 弱 ,後 者 :約 1.5割 )。. は,山 縣然太郎 らによる「生殖補助医療技術 に対す る. また ,東 京女性財 団 に よる調査 の場 合 も,第 三 者 が 関. ,東 京女性財団 に. わる技術 を「利用 しない理 由」 は,「 家族 (親 子)関. 一般国民 の意識」 (山 縣 ほか. 2001)い. よる「女性 の視点 か らみた先端 生 殖技術」 (東 京女性 財団 2000),フ インレー ジの会に よる 『新 ・ レポー ト. 係 が不 自然 になる」 が圧倒的に多い. 不妊――不妊治療 の実態 と生殖技術 についての意識調. 2. 査報告』 (フ. インレージの会 2000)で ある。 これ らの 表. 1. 資料① 資料② 資料③. ○ ○. ○ ○. ○○ ×. ○○○. ○ × ×. × ×○. ○ ×. ○ ×. 24.9. ○ ×. 42.1. 母 に よる 妊娠 0出 産. ○○ ×. *22.2. 42。 9. 母 との遺 伝 的 つ なが り. × ×○. 41.4. 父 との遺 伝 的 つ なが り ○ ○. 46。 2. ○ ×. *22.2. 52.8 43.6. ×○ ×. 31.0. ∩︶ × ×. 49。 6. ○ ×. 31.2. 59。 2. 体 内 での 受精. ○ ×. 35.7. 生殖技術の受容度 を「 自然な生殖」 か らの距離 によ. × × ×. 57.1. 58.1. 不 自然 な生殖. ×. 3 × ×. 自然妊娠 養子縁 組. 6. 85。. ×. 代 理 出産 代 理母 胚提供体外 受精. 60.2. 89。. 88.3. 性 的結合 の 必 要性 ×. 非配偶 者 間人工 授 精 精子提 供体外受精 卵子提 供体外受精. 91.7. 7割 )。. 社 会 にお ける生殖技術 の受容. 生殖技術 の受容度 (%). 配偶者間人工授精 配偶者間体外受精. (約. *代 理 出産 と代 理母 を合 わせ て尋 ねた回答率 資料① 山縣 らによる調査 1999年 ,全 国民 4,000人 を対 象 に,2,568人 か ら得 られた調査結果。一般論 として,各 技術 につい てその是非 を 尋 ねた質問に対 して,「 認 めてよい」 と「条件 つ きで認めてよい」 を合わせた回答率。 資料②東京女性財団 による調査 1998年 ,一 般都民 を対象 に,532人 か ら得 られた調査結果。一般論 として,各 技術 についてその技術 の利用 を望 む夫婦 にそれを認めるか どうかを尋ねた質問に対 して,「 認 めるべ きだ」 と回答 した率。 資料③ 「フ インレー ジの会」 による調査 1999年 ,同 会会員 (過 去 1年 間の退会者 を含む)1,391人 を対 象 に,857人 か ら得 られた調査結果。一般論 とし て,各 生殖技術 が用 い られることについて尋 ねた質問 に対 して,「 賛成」 と「どちらか と言 えば賛成」 を合わせた 回答率。.
(4) 甲南女子大学研究紀要第 42号. 人間科学編 (2006年 3月. ). って説明す ることは,有 効 とはい えない。 た しかに 体外受精 の技術 が登場 した 1970年 代 には,マ ス・メ. 根拠 とな りうるか に見 える。 しか しなが ら,受 容度 の. デ イアはそれを「生命操作」 の問題 として取 り上げた. カテ ゴ リー と しては異 質 な 「胚提供体外受精 」 を同一. しか しなが ら現 在 ,第 三者が介入 しな. グル ー プに入れ ざる を得 なか った。依頼者 で あ る母親. ,. (門. 野. 2000)。. 差 に よつて グループ分 け した際 ,「 代理 出産 ・代 理母」. い配偶者間体外受精 はほとんど問題視 されな くな り. が 出産す る「胚提供体外受精」 の受容度 は,母 親 自身. 「不妊治療」 としてあ る程度受 け入れ られて い る。同. の 出産 に よらな い「代理 出産」 や 「代理母」 の それ と. じ人工生殖 であ りなが ら,一 方 (配 偶者間)は 受容 さ. 同率 か ,調 査 に よっては低 い 。 この ことは ,生 殖技術. ,. れて他方. (非 配偶者間)が 受容 されない とした ら,受. 容度 の差 を「生殖 の 自然性」 に帰す ことはで きない。. の 受容 度 にお い て ,「 母 に よる妊 娠 ・出産」 が 決 定 的 な要因で はない こと を示唆 して い る。. そ もそ も生殖技術 は,妊 娠が 自然 にな され ない ため に,文 字 どお り生殖 を補助する技術 として登場 したの. 3. 不 自然 な家族 意識調査 か ら得 られた,生 殖技術 を認 め ない もうひ. である。 これ まで生 殖技術 の 問題 は,主 と して「 自然 な生. とつ の 理 由 は,「 不 自然 な家族 」 で あ った。そ こで. ,. 殖」 か らの距離 によって語 られて きた。たとえば柘植. 社 会 にお ける生殖技術 の受容 を,社 会が どの よ うな家. あづ みの研究 では,不 妊治療技術 の性質 として「性的. 族 を「家族 ら しい」 と思 ってい るか とい う視点 か ら考. 結合の必要性」,「 体内での受精」,「 父 との遺伝的つ な が り」,「 母 との遺伝的つ なが り」,「 母 による妊娠 ・出. 察す る必 要があ るだろ う。. 産」 の項 目があげられ,各 生殖技術 が これ らの項 目の. の は,森 岡正博 で あ る。森 岡 は,生 殖技術 の進展 ,子. 有無 によって特徴 づ け られ る. 生 殖技術 を く近代 家族 〉規範 の視点 か ら特徴 づ け た. 植 1999:27)。 柘. 産み願望 ,家 族規範 の 関連 を論 じる中で ,落 合恵美子. 植 は,性 と生殖 の分離 ,父 性 の分割 ,母 性 の分割 の観. の 〈近代 家族 〉を引 きなが ら生殖技術 を次 の よ うに分. 点か らこれ らの項 目をあげてい る。そ こでの父性 と母. 類 した。① 〈近代家族 〉規範 に沿 った もの :配 偶者間. 性 は,そ れぞれ「父 との遺伝的つ なが り」,「 母 との遺 伝的つ なが り」 お よび「母 による妊娠 ・出産」 に対応. 人工授精や配偶者間体外受精など。 これ らの生殖技術. する。「技術 の文化 ・社会的性 質」 と称 される これ ら. れを強化す る働 きをするとい う。② 〈近代家族 〉規範. の項 目は,結 局 の ところ 自然妊娠 にどれだけ近 いかを. がかつ て切 り捨 てた もの. 示 してい るように思 われる。. 人工授精」 など。 これ らと同等 の行為 は,か つ て社会. (柘. において く近代家族 〉規範 は完全 に守 られ,む しろそ :「 代理母」 や 「非配偶者 間. 柘植 による生殖技術 の特徴づ け と,先 にあげた生殖. 的 に承認 された り実際 に広 範 に行 われた りして い た. 技術 の受容度 を照合 したのが,表 1で あ る。「性 的結. が,〈 近代家族 〉規範 にお いては望 ま しくない行為 と. 合の必要性」 と「体内での受精」 は生殖が 自然 か人工. して追放 された不道徳な行為 に他 ならない とい う。③. 的かを問 う項 目であ り,主 要な問題 でないことはすで. 〈近代家族 〉規範 に とっての新事情. に述べ た。次 に問題 となるのは,「 父 との遺伝的 つ な. 子宮」「第 三 者 の精子 と卵 に よる妊 娠 出産」「ク ロー. が り」 と「母 との遺伝的つ なが り」 の うち,い ず れが. ン」 など。 これ らは 〈近代家族 〉規範 にとってまった. 受容度 に影響 してい るかである。表 1に 見 るとお り. く新 しい事態 で ある。なぜ な ら,1970年 代後半以 降. 3つ のグルー プ間で比 較 した場合,父 もしくは母 の遺 伝的つ なが りの有無 と生殖技術 の受容度 との関係 は錯. には じめて実現 した技術体 系 を基盤 としてお り,か つ,そ れ以前 には決 してあ りえなか った よ うな形 の. 綜 して い る。「〈非 〉配偶 者 間」 と「代 理 出産 ・代 理. 「遺伝子」 と「妊娠出産」 の組 み合 わせ を可 能 に した. ,. 母」 の間 にある受容度 の差 は,父 もしくは母 の遺伝的 つ なが りの重要度 によっては説明 されず,「 配偶者間」. か らだ とい う (森 岡. :「 借. り卵」「借 り. 2002)。. 第① グルー プの分類 と説明 については,こ れまで他. と「〈非 〉配偶者間」 との 間 にある受容度 の顕著 な差. の論者 か らも指摘 されて きた ことであ り,本 稿 の主張. については,「 両親」 との遺伝的つ なが りの有無 にあ. において も異論 はない。 しか しなが ら,第 ② ,第 ③ グ. ると考 えられる。生殖技術 の受容度 の説明 において. ルー プについては検討 の余地があるだろう。 まず,第. 父 と母 の遺伝的つ なが りを区別することはほとんど意. ② グルー プに分類 された技術 は,「 かつ て切 り捨 てた. 味がない。. もの」 を単 に復活 させ た技術 とは い えな い。 た しか に,代 理母や非配偶者間人工授精 に類似 したかつ ての. ,. 最後 に,「 母 による妊娠 ・出産」 は,「 〈非 〉配偶 者 間」 と「代理出産 0代 理母」 の受容度 の差 を説明する. 行為 は,一 夫一婦制 の性規範 に反するものであった。.
(5) 門野里栄子 :生 殖技術 の受容 と 〈近代 家族 〉の構 成要素. 57. しか し現 在 の生 殖技 術 は ,性 と生 殖 を切 り離 す こ とに. の指標 と して ,落 合恵美子 が析 出 した く近代 家族 〉の. よ り,こ の 規 範 を犯 す こ とな く第 三 者 の 手 を借 りて 子. 特徴 を参考 に し,新 た に 〈近代 家族 〉の構成要素 を想. どもを持 つ ことを可能 に したので ある。「妾」 が産ん. 定 した。. だ子 と現代 の代理母 が産 んだ子 とで は,〈 近代 家族 〉 規範 において異なる意味 を持 つ はずである。 次 に,第 ③ グルー プの分類 と説明 によれば,〈 近代 家族 〉規範 にお け る生 殖技術 の 問題 は「遺伝 子」 と 「妊娠出産」 にある とい うことになる。 また,第 ② グ ループと第③ グループの違 いは,人 工授精 と体外受精 とい う「技術 レベ ル」 の差 と考 えることもで きる。森. 落 合 は,〈 近代 家族 〉の特徴 を理 念 的 に取 りだ し. ,. 次 の 8点 に まとめた。① 家内領 域 と公共領域 の分離. ,. ②家族成員相互の強い情緒的関係,③ 子 ども中心主 義,④ 男は公共領域・女は家内領域 という性別分業 ⑤家族の集団性の強化,⑥ 社交の衰退,⑦ 非親族の排 除,③ 核 家族〕 (落 合 1989:18)。 また,落 合 は ,. ,. 〈近代 家族 〉は性 ・生 殖 ・婚姻 ・愛 が 結 び つ くこ とに. 岡の生殖技術 に関す る論考 は,〈 近代家族 〉規範 の視. よって 特 徴 づ け られ る と も述 べ て い る (落 合 1989:. 点 を導入 しなが ら論点 を「遺伝子」 と「妊娠 出産」. 8-10)。. もしくは「技術 レベ ル」 に収敏 させて しまっている。. 族 〉の 特 徴 を用 い て 図式 化 を試 み た の が ,図 1で あ. その点で,森 岡の見解 は「 自然な生殖」 とい う従来 の 基準 による特徴 づ けを超 えるもの とはいえない。〈近. る。. ,. 代家族 〉の特徴 を広 く視野 に入れるならば,こ れまで とは異なる生殖技術 の意味づ けを見出す ことがで きる だろ う。. Ⅳ. 本 稿 で は,落 合 が 提 示 した 後 者 の く近 代 家. まず,性 ・生殖 ・愛 を婚姻に結 びつけるために必要 な規範 として以下 3つ の要素 を導出 した。①l生 一婚 姻 :性 的関係 を法的夫婦 に限定する「婚姻内性規範」 (こ こでの「婚姻」 は一夫一婦制 をい う),② 生殖 一婚 姻 :結 婚 していれば子 どもを産むべ きとす る「子産み 規範」,③ 愛情 一婚姻 :夫 婦が愛情 によつて結 ばれる ことを奨励する「ロマンチック・ラブ」,で ある"。 次. 〈近代 家族 〉 と生 殖技 術. 1(近 代家族〉の構成要素. に,〈 近代家族 〉の特徴 として明示 されていないが 婚姻を媒介 にして結ばれた 2つ の要素から創出 された ,. 生殖技術の受容 においてキーワー ドになっているの は,「 不 自然な生殖」ではな く「不 自然な家族」であ り,受 容度 を説明す るためには「家族 らしさ」の視点 が有効であると思われる。本稿 では,「 家族 らしさ」. 要素 を く近代家族 〉の構成要素 に加えた。 これらは 規範化されていない ものの社会 に共有 されていること ,. か ら「観念」 と呼 ぶ ことにす る。以下,4要 素 であ. 自分 の 子 親子 の血のつ なが り 母親 による妊娠 ・出産. 要件 を満 たす 要件 を満たさない. ―・―・― 図. 一部要件 を満たす. 1〈 近代 家族 〉の構 成 図式.
(6) 人間科学編 (2006年 3月 る。 (i)性 ―愛情. ,(11)性 一生殖. :「 夫婦 の性愛」. 「 自分 の子」,(面 )生 殖 ―愛情. :「 親子 の愛情. ). この点 を踏 まえるならば,生 殖技術 の進展が生殖 を. :. に よる. 性愛 か ら切 り離す といっ た指摘. (横. 山 ・難波 1992:. 絆」,で ある。 (11)の 「 自分の子」 とい う観念 はさら. 226;浅 井 1996:281)や 「科学的不倫」 (ヤ ンソ ン. に,「 親子 の血の つ なが り」 と「母親 による妊 娠 ・出. 1989:108-109;宮 1992:209)で ある との批判 は不. 産」 とい う要素に分けられる. 下,こ れ らの要素は. 正確 である。生殖技術 は「性」 と「生殖」 を切 り離す. そ れ ぞ れ「夫 婦 の 性 愛」,「 自分 の 子」,「 親 子 の 愛. だけであって,「 性愛」 を切 り捨 てるわ けではない。. 情」,「 血のつ なが り」,「 妊娠出産」 と略記)。. 生 殖技術 の利用 によって性愛が影響 をうける と した. 先 に導出 した 3つ の要素 は「婚姻」 とい う制度 を中 、 ′ 亡に直接結 びつ くため,規 範 としての拘束力が強 く行. ら,そ の原因は生殖技術それ自体 にあるのではな く 夫婦 の性的関係 に医療 が介入する ことにある。 たとえ. 動規制 を伴 うのに対 し,後 か ら導出 した 4つ の要素 は. ば逆 に,生 殖技術 を利用 しない「 タイミング療法. 主 として感情 コン トロール として作用す るため意識化. 師が排卵 日を予測 し,性 交 日を指定す る)」 であって. されないこ とが 多い。. も,生 殖 か ら性愛が切 り離 され る ことがあ る。「1生 」. (以. ,. (医. と「性愛」 を混同 した議論 は,問 題 の論点 をあい まい. 2(近 代家族〉の構成要素から見た生殖技術. にする。. 〈近代家族 〉の特徴 か ら導出 した 7つ の構成要素 に ついて,そ の有無 によって各生殖技術 の特徴 を示 した. 〈近代家族 〉の構成要素 にもとづいて構成 された表 2を 一見 してわかることは,ま た前出の表 1と 比較 し. のが表 2で ある。個別の生殖技術 についての考察 を行. て言 える ことは,こ こで扱 う生殖技術 の ほ とん どが. う前 に,図 1と 表 2か ら全体 を通 して確認 で きる こと. く近代家族 〉の構成要素 の 多 くを満た して い ることで. を指摘 してお きたい。. ある。. ヒ トの領域 において,生 殖技術 が実際 に適用 される. (1)配 偶者間生殖技術. のは「不妊治療」 の場 で ある。「不妊」 の状態 とは. 配偶者間生殖技術 は,「 不妊」 のために欠落 した要. ,. 図 1の 〈近代家族 〉図式 に当てはめて言えば,「 生殖」. 素. が成立 しないために「子産み規範」,「 自分の子」,「 親. 完 し,7つ の構 成 要素すべ て を満 たす。図 1に お い. 子 の愛情」 の要素 が満 た されてい ない状態 で あ る4。. て,「 生殖」 を「生殖技術」 で代替 させ ることによっ. 不妊 によって影響 を受け るのは,こ れ ら 3要 素 のみで. て,途 切れてい た要素間の連関. ある。夫婦関係 に関す る「婚姻内性規範」,「 夫婦 の性. される. 愛」,「 ロマ ンチ ック・ラブ」 の 要素 は満 た され て い. てみた場合,こ の技術 は何 ら異なる点 はない。配偶者. る。 したがって,生 殖技術 の問題 は夫婦関係 の問題 で. 間生殖技術 に逸脱性 があるとするならば,そ れは「人. はな く,端 的に親子関係 の問題 であることがわかる。. 工生殖」 にあるのであって く近代家族 〉としての要素. 意識調査 にお いて受容 の規準 で あ った「家族 ら しさ」. にあ るのではない。そ れゆえ,こ の技術 は「人工 生. とは, よ り厳密 には「親子 らしさ」 のことを指 してい. 殖」 としての問題がなければ,ま さに く近代家族 〉を. ると思われる。. つ くる “ 架け橋 表. (「. 子産み規範」,「 自分の子」,「 親子 の愛情」)を 補. 夫婦 の性愛. 子産 み規 範. 子. 親子 の血 の つ なが り. 関. 係. 母親 に よる 妊娠 。出産. 親子 の愛情 に よる絆. ○ ○. ○ ○. ○ ○. ○ ○. ○ ○. ○ ○. ○○○. ○○○. ○○○. △ △ △. ○○○. ○○○. ○○○. ○○○. ○○○. ○ △×. × ×○. ○○○. ○ ○. ○ ○. ○ ○. ○ ○. ○ ×. ○ ×. ○ ○. 自然妊娠 養子縁組. ロマ ンチ ッ ク 。ラ ブ. 親. ○○○. 代 理 出産 代理母 胚提 供 体外受 精. 助医療)"と なる。配偶者 間生殖. ○○○. 非配偶 者 間人工 授 精 精子提 供体外受 精 卵子提 供体外受 精. (補. ○ ○. 配偶者 間人工 授 精 配偶者 間体外受精. 完全 に修復. 2〈 近代 家族 〉の構成要素 と生 殖技術. 夫婦 関係 婚姻 内性 規範. (点 線 )は. (直 線 の実線 )。 表 2で 「 自然妊娠」 と比較 し.
(7) 門野里栄子 :生 殖技術 の受容 と 〈近代 家族 〉の構 成要素 技術 に対す る受容度 の高 さは ,こ の点 か ら説明す る こ. 字通 り第三者が出産 の代理 をする ことであ り,言 うま. とが 可能 で あ り,従 来 の説 明 をよ り明確 に論証 す る こ. で もな くそれは「妊娠出産」 の要素が満たされないこ. とがで きる。. とである。. (2)(非 〉配偶者間生殖技術 「家族をつ くる」, とりわけ「親子 をつ くる」 とい う. 専門家 の判断 と異な り,意 識調査 において く非 〉配 偶者間生殖技術 と代理懐胎 との間に受容度 に顕著な差. 目的に対 して,配 偶者間生殖技術 の補完性が高いのに 比べ て,〈 非 〉配偶者間生殖技術 のそれは不完全であ. 類似性 か ら説明可能である。両者 は,配 偶者間生殖技. る。後者の技術を利用 した場合,不 妊によって欠落 し. 術 と比 べ て「不完全」 で あ る とい う点 で,大 差 はな. た構成要素の うち「子産み規範」 と「親子の愛情」 は 補完 される。 しか し「自分の子」 については,「 妊娠. い。その点 を踏 まえたうえで,両 者 の受容度 の差 の説. 出産」が確保されるものの「血のつなが り」 は半分 し. ここで 問題 にな るの は,「 胚 提 供 体外授 精」 で あ. か補完されない。表 2を 見れば,両 者の違いが「血の つなが り」の補完性 にあることが容易 に伺 える。. る。 この技術 を除けば,生 殖技術 の受容度 は表 2に お いて比較的明瞭に説明す ることがで きる。配偶者間生. 自然生殖 では,「 子産 み規範」 と「自分 の子」 は. 殖技術 とそれ以外 の生殖技術 の受容度 の差 は,「 血 の. 「生殖」 を通 して相互に要件 を満たす. が見 られなかった ことは,〈 近代家族 〉図式 における. 明 に踏み込んでみたい。. 婚姻内. つ なが り」 の有無 にあ り,さ らに 〈非 〉配偶者間生殖. で子 どもを産めば親子の間で完全 に血がつなが り,親 子の間で完全 に血がつながる子は婚内子である。 した. 技術 と代理懐胎 の間 にある差 は「妊娠出産」 の有無 に. がって,婚 姻関係 にある夫婦 に子産みを要求すること. 両親 との血のつ なが りがあ るので,や や例外 的 で あ. と婚外子 を排除す ることは矛盾 しない。生殖技術 は. る)。 これは,森 岡が指摘 した,生 殖技術 が もた らす. この相互補完性 をいったん切 り離 し,婚 内子 であ りな. 新 たな事態 はかつ てあ りえなか った「遺伝子」 と「妊. が ら夫婦以外 の配偶子か ら生 まれる子 ども,あ るい は. 娠 出産」 の新 しい組 み合 わせ を可 能 に した こ とにあ. 母親以外 の女性か ら生 まれる子 どもを出現 させ る。つ. る,と い う説明 と符合す る。森 岡 は特 に「妊娠 出産」. ま り,〈 非 〉配偶者間生殖技術 によって生 まれて きた. について,広 く一般 に見 られる思想 として特別 の地位. 子 どもは,「 不完全 な婚 内子」 となる。それ は,婚 内. が与 えられてい るのではないか と推測 してい る。 しか. 子 とも婚夕ヽ 子 ともいえる,あ るいはどちらともいえな い子 どもである。 こうした不完全 さが,生 殖技術 に対. しなが ら,「 胚提供体外授精」 を投入す る と,こ れ ら. (図. 1)。. ,. ある とい うことになる. (た. だ し,「 代理出産」 だけは. の説明 に混乱が生 じる。. する不寛容 をもたらすのであろ う。 しか し同時に,そ. た しかに,受 容度 の低 さは「血のつ なが り」 もしく. のあい まい さは,生 殖技術 に対 して異 なる態度 をもた. は「妊娠出産」 の どちらかの不完全 さにあると考 えら. らす。技術 を受容す る側 は,家 族 の核 となる子 どもの. れる。ただ,そ れだけでは両者の組み合わせ に対す る. 存在 と愛情 あ る親子 関係が得 られるメ リッ トに注 目. 受容 の仕方 に混乱がある ことが説明 されてお らず ,代. し,技 術 を拒否す る側 は家族 の境界が不明瞭 になる点. 理懐胎 のみを禁止す る根拠 とな り得 ない。生殖技術 の. を危惧す る。. 問題 を「血のつ なが り」 と「妊娠出産」 に特化す る前. (3)代 理母 と代理出産. に,生 殖技術 をもって して も完全 に補完 し得 ない「 自. 卵子 を提供 し出産 も肩代 わ りす る「代理母 (surOgate. 分 の子」 とい う観念 を捉 え直す必要があるのではない. ,出 産 のみ を肩代 わ りす る「代理出産 (host は,ど ち らも生 殖補助医療部会 ,日 本産婦. だろ うか。そのためには,表 2の ように個別 の構成要 素 の補完性 だけを見 るのではな く,要 素間相互の連 関. 人科学会倫理審議会双方 において認 め られなかった技. の 中で そ の要素 が持 つ意味 を捉 えた考察 が必 要 であ. 術 で あ る。 しか しなが ら,こ れ らは図 1の く近代 家. る。改 めて図 1か ら,「 自分 の子」 とい う観念 につい. 族 〉図式 か らみれば,基 本的 には 〈非 〉配偶者間生殖. て考 えてみたい。そ こか ら,不 妊 の当事者が生殖技術. 技術 と同型 である。代理母お よび代理出産. に何 を求 めてい るのか を推論す ることもで きるだろ. mother)」 mother)」. (以 下 「代. 理懐 胎」)の 両技術 にお い て完全 に補 完 され る要素 は,〈 非 〉配偶者間生殖技術 と同様 ,「 子産み規範」 と 「親子 の愛情」 であ る。代理出産 では「血のつ なが り」. う。. V「 自分の子」 とは何か. も補完 されるが,代 理母では半分 しか補完 されない。 代理懐胎 が 〈非 〉配偶者間生殖技術 と異なる点 は,文. 生 殖 技 術 の 問題 は 親 子 関係 にお け る 問題 で あ り,そ.
(8) 甲南女子大学研究紀 要 第 42号. の中で も「 自分の子」 とい う観念 をめ ぐる問題 である ことが浮か び上が って きた。〈近代家族 〉に とつての. 人間科学編 (2006年 3月. ). また ,橋 爪大 三郎 の 親子 の血 縁 関係 に関す る次 の論 考 は示唆 的 であ る。. 「自分 の子」 とは,自 然生殖 の条件下であれば,「 両親 ともに血がつ なが り,母 親 の妊娠出産に よつて生 まれ. 父子 関係 は ,多 分 に観念 的 (抽 象的 )な 性 関係. た子」 である。 このことはあまりにも自明であるため. であ る。 けれ どもこの こ とは ,母 子 関係 が (や は. に,研 究者 の間で も 〈近代家族 〉の必要不可欠な前提. り)観 念 的 (抽 象的 )な 性 関係 で. 条 件 で あ る こ とが 見 過 ご され て きた. を,否 定す る ものでは な い 。 む しろ母 子 関係 は. (田. 間 2001:. (も. )あ るこ と ,. 父子 関係 と,思 考 の秩序 の なかで同等視 され る こ. 226)。. 「 自分 の子」 とい う観念 を構成す る一 方 の 要素 であ. とで ,成 熟 した社 会関係 となる。対等 なふ たつ の. る「血のつ なが り」 とは何 か。それは,父 系 もしくは. 観念 的 な関係―― 父→ 子 /母 → 子―― は,血 縁 関. 母系 の継承 を意味 しない。〈近代家族 〉の特徴 の一 つ. 係 で あ る。 (橋 爪 1993:302). は,夫 婦 とその子 どものみで完結す る「核家族」 であ る。「血のつ なが り」 とは,一 代限 りの「親子」 の つ. 母子 ・父子関係が観念的に対等 に布置 される ことに. なが りを指す。では これを,森 岡が用 いてい るように. よって,い ずれの血のつ なが りが優位か とい う問題設. 「遺伝子」 と言 い換 えられるだろうか。. 定 は無意味 となる。 さらに母親に特権的に付 与 されて. 田間康子 によれば,明 治 31年 に制 定 された民法親 族編 ・相続編. い る「妊娠出産」 も,場 合 によつては親子関係 の決定. 下 「三一 年民法」)制 定 を境 に,親. 因 として無化 される可能性がある。胚提供体外受精 に. 子 の関係 がそれ以前の非血縁関係 を含 む「オヤ コ」 か ら,父 ・母 ・子 とい う関係 のみで規定 され る血 縁 的. 対す る低 い受容度 は,「 両親Jと の血のつ なが りを犠. 「親子」へ と変質す る。「三一年民法」以降,「 実子主. 親子 関係 に対す る抵抗 と理 解 で きない だろ うか。逆. 義」 は父 と母 との血のつ なが りがある子 のみを理想 と. に,父 親 との血のつ なが りのみ を確保す る「代理母」. して きた。現代では,医 学 0生 物学的知識 によつて さ らに強化 された「遺伝子的つ なが り」 とい うイデオロ. の受容度 も同様 に低 い。 これ らの生殖技術 に比べ て. ギー. (柘. (以. 植 1995:81-82)に 引 き継 が れて い る とい. 牲 に し,母 親 だけの特権 であ る「妊娠出産」 を介 した. ,. 同 じ代理 人による出産であ って も,「 両親」 との血の つ なが りとい う点 で父母が対等 になれる「代理 出産」 の受容度 は若干高 くな る。「 ロマ ンチ ック・ラブ」 に. えるか もしれない。 しか しなが ら,田 間が指摘するように,非 血縁者が 完全 に排除 されたわけで はない。養子 は,血 縁 のある 「実子 の代替者」 として家族内 に受 け入れ られた。実 子 を理想 としなが らも,偽 装 ・代替 とい う手段 によつ. よって結 ばれた夫婦 に とっては,「 母親が産 んだ子」 で ある ことよ りも「二人の子」 で あ ることが,「 自分 の子」 の証 しになるのか もしれない。. て実子 としての養子 を得 る道 を確保 して きた ので あ る。そ こに,非 配偶者間人工授精. Ⅵ. 生 殖 技 術 は 何 を保 証 す る か. (Aniicial lnsemina―. tion by Donor,AID)の 技術 が登場 した。第三者 の精 子 を妻の体内 に送 り込 んで人工授 精 させ る AIDは. ,. 父 との血のつ なが りがない にもかかわ らず,戦 後不妊 治療 の現場 で普及 して きた。そ の理 由の一 つ は,「 妻 が婚姻 中に懐胎 した子は,夫 の子 と推定す る」 とい う 「嫡出の推定」 (民 法 772条 )に よって夫婦 の実子 とし て戸籍 に記載 されるか らだと言われてい る。母 との血. 〈近代 家族 〉に とっての「 自分 の 子」 とい う観 念 が,単 純 に「遺伝子」 と「妊娠出産」 によってのみ構 成 されない と考 えた時,不 完全 に しか補完 しない生殖 技術 を不妊 の当事者があえて利用することの意味 を考 えてみたい。 〈近代家族 〉を「″ 卜1生 」 の面 で特徴 づ け るな らば. ,. そ れ は「愛 情」 と言 え る だ ろ う. (田. 間 2001:224-. のつ なが りを持 ち,法 的 にも社会的にも「実子」 の偽. 225)。. 装 が可 能な AIDは ,自 然妊娠 に次 ぐ手段 として受 け. けでな く,両 者 の間 に愛情 による絆 が形成 されてい な. 入れ られたのである'。 この ような歴史的背景 を見 る. ければならない と考 えられてい る。愛情 の ない家族 は. 時,現 在不妊 の当事者や一般 の母親 たちによつて使用 される「 自分 の子」 とい う用語 には,「 遺伝 的 なつ な. 「家族 らしくない家族」,「 機能不全家族」 とみなされ. が り」 のみに還元 されない解釈 の余地が残 されてい る ように思われる。. 家族形態 として夫婦 とその子 どもが存在す るだ. る。では,親 子 間の愛情 関係 は何 に よって もた らさ れ, どの ように維持 されてい るのか。 感情社会学 によれば,「 感情」 は社会統制 の手段 で.
(9) 門野里栄子 :生 殖技術の受容 と 〈近代 家族 〉の構 成 要素 あ る。 ただ し,同 じ統 制手段 で あ って も,「 観 念 に も とづ く権 力」 とは異 な る。 た とえば ,障 吉婚 した ら子. Ⅶ. 生 殖 技 術 と家 族 の ゆ くえ. どもを産むべ きである」 とい う規範が作動す るには. ,. 「子 どもを産み育てる ことが ,家 族 をつ くる とい うこ. 〈近代家族 〉の構成要素 か ら生殖技術 を検証 した結. とであ り,人 としての義務 である」 とい う正当化 が必. 果 ,ど のような技術 であれ 〈近代家族 〉の亜型 を形成. 要であ る。 ところが「∼ と感 じるはずだ」 とい う感情. す ることが可能 で あ るある ことがわかった。〈近代家. 規則 の場合 は,理 由づ けが不要 で あ る. 「家族 で あれ ば 自然 に愛情 が わ くはず」 とい う. 族 〉としての完成度 の点 で,配 偶者間生殖技術が 自然 生殖 とほぼ同程度 であるのに比べ て,代 理懐胎 を含 む. 「愛情 イデ オ ロギ ー」 (山 田 1994:67-68)が 共有 さ. 非配偶者間生殖技術 は不完全 である。そのことと,意. れていれば,親 子 の愛情関係 は 自動的に供出され るこ. 識調査 にみ られた生殖技術 に対す る受容度 の差 は呼応. とになる。 したが って,親 子 の愛情関係 は「家族 であ ること」 に求 め られ,「 家族 で あ ること」 の根拠 は明. す ると思われる。 このような背景か らは,第 三者 が関 わる生殖技術 の うち,精 子 ・卵子 ・胚 の提供 による体. 治民法以降受 け継 がれて きた「実子主 義」 に帰 され. 外受精 を容認 し,代 理懐胎 を禁止する論拠 を導出 し得. る。換言すれ ば,「 自分 の子」 で ある ことが「親子 の. ない。「社会 の受容」 を生殖技術 の規制 に とつて不可. 愛情」 を保証す るとみなされるのであ る。 ただ し「 自. 欠な要件 とす るのであれば,こ の矛盾 を解消す るため. 分 の子」 とい うのは,「 血のつ なが り」 と「妊娠出産」. の説明が必 要である。た とえば代理懐胎 を禁止する理. にのみ還元 で きない偽装 0代 替 の余地が残 された もの. 由 として,「 人 を専 ら生殖 の手段 として扱 い,ま た. であることはすでに指摘 した通 りである。. 第三者 に多大 なリス クを負 わせ る」 とい う説明 は説得. 75)。. (山. 田 1997:. ,. 多数 の人 々にとって妊娠出産 は,子 どもに愛情 を注. 的である。生殖技術 の是非 をめ ぐる議論 の 中で安易 に. ぐ最大 の契機 となる。あ るいは,結 婚当初 か ら子 ども. 「家族 らしさ」 を持 ち出 し,「 血のつ なが り」 や「妊娠. へ の愛情 が用意 されてお り,妊 娠出産 を機 に作動 し始. 出産」 に特権 を与 える ことは,脱 〈近代家族 〉的な個. めると言 ってよいか もしれない。子 どもを産んだ者 は. 人の生 き方 を認 めようとす る流れを阻む ことにつ なが. 生 まれ た人 間 の 身体 を出産 後 も問題 に し続 け (養. りかねない。. 育),そ の ことを通 じてその人 間を自分 の「子」 とみ. 本稿 の分析 にお いて配偶者間生殖技術 と第三者が介. なす (橋 爪 1993:289-290)。 妊娠 出産「後」 に築 き 上げ られた親子 の愛情関係 は,「 血 のつ なが り」 ゆえ. 入する生殖技術 の間で顕著な受容度 の差が見 られたの は,性 ・生殖 ・愛情 が「婚姻」 に取 り込 まれてい るか. に与 えられた もの と解釈 され,「 自分 の子 はかわいい」. らであ り,〈 近代家族 〉にお け る法的婚姻 関係 の重要. とい う言説 を支えてい く。. 性 がそこに示 されてい る。 しか し,家 族 の リア リテ イ 構成 の核心が「婚姻」 か ら「愛情」へ移行 しつつある. 家族 に愛情 を感 じることが,家 族 であることのアイ デ ンテ ィテ ィを もた らすのだ とした ら. 田 1997:. ことを見通すならば,生 殖技術 は単 に技術 な面か らだ. 86),生 殖技術 を利用 して子 どもを持 つ ことの最終的 な目標 は,親 子 ・家族間で愛情関係が構築 される こと. け で な く,規 範面 か らも「婚姻」 を超 えた家族 (親 子 )の 形成 をサポー トす る可能性 を持 つ。 た とえば図. になる。その 目標 を実現 させ るための “ 最 良 の ツー. 1で 「婚姻」 を取 り除 い た場合 ,同 性愛 カ ップル は. ル"が ,「 血 のつ なが り」 と「妊娠 出産」 なのではな. 「夫婦 の性愛」 の延長上 に,生 殖技術 を媒 介 と して. い だろ うか。「血のつ なが り」 を得 られない者 は「妊. 「親子 の愛情」 を結 ぶ ことが可能であ る。あ るい はシ. 娠 出産」 に,「 妊娠 出産」が不可能 な者 は「血 のつ な. ングルマザ ーは「愛情」 と「生殖技術」 によって「親. が り」 に,愛 情 の保証 を求めて生殖技術 を利用す る。. 子 の愛情」 を結 ぶ ことがで きる。. (山. 養子縁組 が敬遠 される理 由 も,制 度 上 の 障壁 に加 え. 生殖技術 は,ま さしく社会 の「家族」 のあ りようを. て,そ う した愛情保証 の手段 を持 たない にもかかわ ら ず 「親子 の愛情」 を求め られるとい う愛情関係構築 の. 問 うてい る。生殖技術 が「子」 を生み出すための技術 である以上,何 を「家族 ・親子」 とみなすのか とい う. 難 しさがあると思 われる。「血のつ なが り」 も「妊娠. 視点 は決定的 に重要である。その場合 ,「 自然 な生殖」. 出産」 も,そ れ 自体 に意味があ りそれ 自体 が求 め られ てい る とい うよ り,「 愛情」 を表象す る もの として希. や「遺伝子」,「 妊娠出産」 とい った “ 実体 "か らのア プローチでは不十分 であ り,規 範的 ・観念的な「家族. 求の対象 とされてい るのだ と推察 される。. ら しさ」 につい ての議論 が必 要 であ る。生殖技術 を 「家族 らしさ」 か ら検証す る ことの意義 と限界 を見極.
(10) 甲南女 子 大学研究紀 要 第 42号. め た う え で ,そ れ 以 外 の 条 件 との 整 合 性 が 求 め られ る。. 人間科学編 (2006年 3月. ). 療 の実態 と生殖技術 についての意識調査報告』 橋 爪大三郎 ,1993,『 橋爪 大三郎 コ レクシ ョンⅡ 性 空 間 .. 論』,勁 草書房 門野里 栄子 ,2002,「『不妊』 の 社 会的意味―― マ ス ・メ デ イア言説 を通 して」『甲南女子大学研究紀要 人間科 .. 付記 :本 稿 は,第 75回 日本社会学会大会一般研究報告 に お い て配布 した資料「〈近代家族 〉の構成要素 と生 殖 技術 の受容」 を加筆修正 した ものである。. 学編』,38:49-57. 宮. 淑子 ,1992,『 不妊 と向 き合 う一一 生殖技術 。わた し の選択』教育史料出版会. .. 注. 1)山 縣 を主任研究者 とす る「生 殖補助医療技術 に対す. 村 岡 潔 ,1998,「 不妊 治療」佐 藤 純 -0黒 田浩 一 郎 編 『医療神話 の社会学』世界思想社,158-184.. る国民 の意識 に関す る研究」班 によつて,こ の調査 内 容 に準 じた調査が 2003年 1月 に新 たに行 われている。. 森 岡正博 ,2002,「 生殖技術 と近 代 家族」『家族社会学研. ところが,一 般論 と しての技術受容 に関す る問 い にお. 落 合恵美子 ,1989,『 近代 家族 とフ ェ ミニ ズ ム』勁 草 書. いて,前 回調査 に設 け られて い た 「認 めて よい」 の 選 択肢が な くな り,「 条件付 で認 めて よい」「認 め られ な. 究』,13(2):21-29。 房. .. ____,1994,『. 111-世 紀家族へ』有斐閣。. い」「わか らない」 のみが設定 された。他 の調査 との比 較 のため,本 稿 では 2001年 の論文 を採用することにす. 田間泰 子,2001,『 母性 とい う制度―― 子殺 しと中絶 のポ. る。ちなみに,新 しい調査結果 は前 回調査 の結果 を大. 東京 女性財団,2000,「 女性 の 視 点 か らみ た先 端 生 殖技. きく覆す ものではなかった。. 術」 (研 究報告書 ). 柘植あづ み,1995,「 生 殖技術 に関す る受容 と拒否 のデ イ. 2)落 合 は後 の著作 『二一 世紀家族 へ』 にお い て,③ の 「核家族」 に関 して,「 日本 な ど拡大家族 を作 る社 会 の 家族 につい て論 じる場 合 には,カ ッコに入れてお いた 方 が よい」 と述 べ て い る。そ の理 由 は「祖父母 と同居 して い て も,質 的 には近代家族 的な性格 をもって い る とい う こ とが あ りうる」か らだ と して い る (落 合 1994:103-104)。. 3)こ. リテ ィクス』勁草書房。. ス ク_ル 」浅井美智子 ・柘植 あづ み編 『つ くられ る生 殖神話―一 生殖技術 。家族 。生命』制作同人社,55-89.. ―――一 ,1999,『 文化 としての生 殖技術―一 不妊治療 に たず さゎる医師の語 り』松籟社 .. 山田昌弘 ,1994,『 近代家族 のゆ くえ―一 家族 と愛情 のパ ラ ドックス』新曜社. こでの「1生 」 は,第 一義 的 に生殖 とい う日的 のた. めの手段 と認識 されてい るもの として,「 sex」 の意味 で 用い る。 然生殖 ではなぜ「親子 の愛情」 が 得 られ るのか, 不妊治療 で生 殖技術 を利用 した場合 に,な ぜ この 要素. 4)自. が 自動的 に補 完 されるのか,に つい て説明 を要す る。 ここではひとまず理念的 に得 られる要素 としてあげて お き,詳 しい説明 については後述す る。 5)森 岡 は AIDを 〈近代 家族 〉規範か ら見れば,婚 外子 を家庭 の なかで育 てることと同等 の行 いで ある と位置 づ け,AID公 言化 の抑制理 由 を 〈近代 家族 〉規範 か ら 追放 されたはずの不道徳 な行 い に帰 して い るようであ る (森 岡 2002:26-27)。 その ことよ りも,偽 装 された 「実子」 によって存 立 してい る「家族」 が崩壊す ること を恐れるか らではないだろうか。 文. 献. 浅井美智子 ,1996,「 生殖技術 と家族」江原由美子編 『フ ェ ミニ ズムの 主張 3生 殖技術 とジ ェ ン ダ ー』勁 草 書 房,255-284. フ ィンレージの会,2000,『 新 ・ レポ ー ト不妊―一 不妊治. .. ____,1997,「. 感情 による社会的 コン トロー ルーー 感 情 とい う権力」岡原正幸 ・山田昌弘 ・安 川 一 ・石 川 准 『感情 の社 会学―一 エ モー シ ョン・コ ンシ ャス な. 時代』世界思想社,69-90. 山縣然太郎 。武 田康 久 ・北 島智子 ・小 田 清 一 ・矢 内原 巧 ,2001,「 生殖 補助 医療技術 に対 す る一 般 国民 の 意 識」『厚生 の指標』,48(3)三 3-8。 山口意友 ,2002,「 ク ロー ン技 術 と生 殖 医療 の 是非 を問 ぅ」篠原駿 一郎 ・波 多江忠彦編 『生 と死 の 倫理学―一 ょ く生 きるため の バ イオエ シ ックス入 門』ナ カニ シヤ 出版 ,33-57. 山崎康仕 ,1994,「『代理母』問題 へ の法 的対 応―一 英 国 の対応 を素材 として」高島學司編 『医療 とバ イオエ シ ックスの展開』. 律文化社,108-132.. 横 山美栄 子・難波'去 貴美 子,1992,「 現代 日本 の家族 と生 殖 技術」 お茶 の水女 子大学生命倫理研究会 『不妊 とゆれ る女 たち―一 生殖技術 の現在 と女性 の生 殖権』学 陽書 房,225-247. ャ ンソ ン由美子 ,1989,「 “ 代理母"が 問 うもの」 グルー 。 ・ 『 プ 女 の 人 権 と性 ア ブ ・ナ 。イ生 殖 革 命』有 斐 閣,96-lH..
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