は じ め に 今日, 障害者福祉の領域では, 入所施設や病院での生活からグループホームなどを住まい の場として, 地域に生活の場を移行する地域生活移行を進めていくことが, 重要な課題とな っている。西欧では, 脱施設化の取り組みとして1970年代前後から, 政策的に入所施設の解 体と地域生活への移行の取り組みが進められてきたが, 日本では国の政策レベルで入所施設 の整備に歯止めがかかるのは, 21世紀になってからで, ほんの10年ほど前までは入所施設整 備に力点がおかれてきたのである。 本稿では, こうした日本における障害者福祉に関する福祉サービスの整備状況について, 障害者福祉領域での福祉計画策定の動向を概観することでその特徴を確認し, 障害者自立支 援法の成立により, 表面的にはより一層推進されることになった地域生活移行について, 今 後の課題を整理する。 1.障害者対策に関する長期計画と新長期計画 日本において障害者福祉を推進していくうえで重要な契機となったのは, 1981(昭和56) 年の「完全参加と平等」をテーマとした国連の「国際障害者年」であるが, この時期からノ ーマライゼーションの理念が普及することになった。 国連では1948(昭和23)年の「世界人権宣言」, 1971(昭和46)年の「知的障害者の権利 宣言」を経て, 1975(昭和50)年12月9日に「障害者の権利宣言」を採択している。そして こうした宣言の趣旨をふまえ各国が具体的な障害者福祉を推進していくための行動に着手し ていけるよう1980(昭和55)年に国連や各国が取り組むべき行動を定めた「国際障害者年行 動計画」が採択され, 81年が国際障害者年とされたのである。 また, 翌1982(昭和57)年にはこうした取り組みを継続的に推進していくために1983年か ら1992年までの10年間を「国連障害者の10年」とすることが決められ, そのための計画とし て「障害者に関する世界行動計画」が決議され, 予防, リハビリテーション, 機会の均等化 キーワード:地域生活移行, 障害者計画, 障害福祉計画, グループホーム
松
端
克
文
障害者福祉における福祉計画の
策定と地域生活移行
共同研究:グループホームの総合的研究(Ⅲ)などを柱にした障害者福祉推進の方向が示された。 日本では, こうした国連からの要請に応えるかたちで1982(昭和57)年に「国連・障害者 の10年」に対応する国内行動計画として, 1983年度から92年度までの10年間を計画期間とし た障害者施策に関する初めての長期計画である「障害者対策に関する長期計画」が策定され た。 その後, この長期計画の期間の終了する1992(平成4)年には, 国連アジア太平洋経済社 会委員会(ESCAP)総会において「国連障害者の10年」の後の1993年から2002年までの10 年間を「アジア太平洋障害者の10年」とすることが採択された。 そこで国内的にはこれに対応する第2次の長期計画として, 1992(平成4)年に1993(平 成5)年度からおおむね2002(平成14)年度までの10年間を計画期間とし, リハビリテーシ ョンとノーマライゼーションの理念を中心にすえた「障害者対策に関する新長期計画」が策 定された。 また, この間「対策」や「保護」,「収容」などの表現があるなどノーマライゼーションの 理念を基調とした国際的な動向にそぐわなくなっていた「心身障害者対策基本法」(1970 (昭和45)年制定)の改正作業が進められ, 1993(平成5)年12月に「障害者基本法」に改 正された。 同法は, 障害者の定義において身体障害, 知的障害, または精神障害があるために,「長 期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」(第2条)として, 精神 障害者を福祉領域において支援していくことを明記したことでも注目されたが, 第7条にお いて「障害者の福祉に関する施策は, 障害者の年齢並びに障害の種別及び程度に応じて, か 図表1 障害者基本計画および障害者計画の法的位置づけ 資料:内閣府 (出典:内閣府『平成20年版 障害者白書 , P11 一部修正, 2008年。) 国連 「長期的国 家計画」 策定勧 告 (昭和54年) 障害者基本法成立 (心身障害者対策 基本法の全面改正) (平成5年) 障害者基本法 改正 (平成16年) 中央心身障害者 対策協議会意見 具申(昭和57年) 障害者対策に 関する長期計画 (昭和58∼平4) 国 都道府県 市町村 (含指定都市) 障害者対策に関 する新長期計画 (平5∼平14) 義務化 努力義務 努力義務 障害者基本計画 (平15∼平24) 都道府県障害者計画 (平16年6月∼) 市町村障害者計画 (平19年4月∼) 義務化 義務化
つ, 有機的連携の下に総合的に, 策定され, 及び実施されなければならない」として, 続く 第7条の2において国(政府)による「障害者基本計画」の策定が義務づけられ, 先の「障 害者対策に関する新長期計画」はこの「障害者基本計画」として位置づけられた。 なお, この時点では都道府県および市町村は「障害者福祉計画」を策定するよう努めなけ ればならないという努力義務規定に留まっていたが, 2004(平成16)年6月の障害者基本法 の改正により, 都道府県および市町村(2007(平成19)年4月より施行)にも障害者計画の 策定が義務づけられ, 実施されることになった(図表1参照)。 2.障害者プラン∼ノーマライゼーション7か年戦略∼ その後, 「障害者対策に関する新長期計画」の後期重点施策実施計画として, 1995年12月 に7年間の障害者施策の整備目標を盛り込んだ「障害者プラン∼ノーマライゼーション7か 年戦略∼」が厚生労働省障害者対策推進本部により策定された。 同計画では基本的な考え方として, 「国においては, ライフステージの全ての段階におい て全人間的復権を目指すリハビリテーションの理念と, 障害者が障害のない者と同等に生活 し, 活動する社会を目指すノーマライゼーションの理念の下, 『障害者対策に関する新長期 計画』を策定し, その推進に努めているところであるが, この理念をふまえつつ, 次の7つ の視点から施策の重点的な推進を図る」として, ①地域で共に生活するために ②社会的自立を促進するために ③バリアフリー化を促進するために ④生活の質(QOL)の向上を目指して ⑤安全な暮らしを確保するために ⑥心のバリアを取り除くために ⑦我が国にふさわしい国際協力・交際交流を の諸点が掲げられた。 このなかでも,「①地域で共に生活するために」については,「当面緊急に整備すべき目標」 として, 図表2のように<住まいや働く場ないし活動の場の確保>, <地域における自立の 支援>, そして<介護サービスの充実―在宅サービス―>および<介護サービスの充実―施 設サービス>について, 障害者施策としては初めて数値による施策の達成目標が掲げられた。 この障害者プランでは, ホームヘルプサービスなどの在宅サービスや住まいとしてのグル ープホームの整備が示されたのだが, 同時に知的障害者更生施設についても当時整備されて いた約85,000人分に1万人分を加えた95,000人分の整備目標が示され, 身体障害者療護施設 も約17,000人分から25,000人分とする整備目標が示された。すなわち, このプランは「ノー マライゼーション7か年戦略」という副題がつきながら, 入所施設の整備を目標に含めると いう矛盾をはらんでいたといえる。 しかし, その背景には欧米諸国では障害をもつ子どもの親たちが入所施設の解体を唱えた ノーマライゼーションの運動とは対照的に, わが国の場合は「親亡き後」の生活保障の場と してこの時期では, なお入所施設建設が求められており, 施設建設のニーズが根強くあった
ことがあげられる。それは20世紀末の段階でも「施設」にしか「安心」を求められないわが 国の在宅サービスを含めた地域福祉の現状を反映してのものでもあるいえる。 3.障害者基本計画と障害者プラン 2002年12月には第3次の長期計画(障害者基本法に基づく「障害者基本計画」としては第 2次)となる2003(平成15)年度から2012(平成24)年度までの10年間を計画期間とした 「障害者基本計画」が策定され, またその着実な推進を図るために「重点施策実施5か年計 画(新障害者プラン)」が策定された。 わが国で最初の障害者施策に関する長期計画である「障害者対策に関する長期計画」が策 定されてから今日の「障害者基本計画」の策定に至るまでの推移を国連を中心とした国際的 な動向との関連で整理すると図表3のようになる。 国連においては, 1993(平成5)年からの「アジア太平洋障害者の十年」の終了する年で もある2002(平成14)年5月の国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)総会において, 日本の主唱により,「アジア太平洋障害者の10年」がさらに10年間(2003∼2012年)延長さ れた。また, 同年10月に滋賀県で開催されたハイレベル政府間会合では, 「アジア太平洋障 害者の10年」の行動課題である「びわこミレニアムフレームワーク」が採択されるなど, 日 本がアジアの取り組みに関して主導的な役割を果たした。 さて, 新たに策定された障害者計画は, 図表4のような構成になっており, 後述する基本 的な方向として示される考え方のもと, 4つの横断的な視点と4つの重点的に取り組むべき 図表2 「障害者プラン∼ノーマライゼーション7か年戦略∼」において示された数値目標 1995(平成7)年度 2002(平成14)年度 <住まいや働く場ないし活動の場の確保> グループホーム・福祉ホーム 5,347人分 2万人分 授産施設・福祉工場 4万1,783人分 6万8,000人分 <地域における自立の支援> 重症心身障害児(者)等の通園事業 307か所 1,300か所 精神障害者生活訓練施設(援護寮) 1,660人分 6,000人分 精神障害者社会適応訓練事業 3,770人分 5,000人分 精神科デイケア施設 372か所 1,000か所 <介護サービスの充実―在宅サービス―> ホームヘルパー 9万2,482人分 4万5,000人分上乗せ ショートステイ 1,082人分 4,500人分 デイサービス 501か所 1,000か所 <介護サービスの充実―施設サービス―> 障害者療護施設 1万7,169人分 2万5,000人分 精神薄弱者更生施設 8万4,490人分 9万5,000人分 (出典:障害者対策推進本部「障害者プランの概要∼ノーマライゼーション7か年戦略∼」 平成7年12月18日より, 著者作成。)
課題が明示され, その後に分野別施策の基本的方向として, 社会福祉サービスが含まれる生 活支援の領域のみならず, 生活環境や教育・育成, 雇用・就労, 保健・医療, 情報・コミュ ニケーションにわたる広範な領域における各種施策の推進の方向が示されている。また, 「びわこミレニアムフレームワーク」の推進に積極的に貢献するとともに, 技術協力や障害 者団体の交流等を通じアジア太平洋地域の各国・地域との協力関係の強化に主導的な役割を 果たすことも示されている。 このように障害者基本計画では, 障害者福祉に関する総合的・包括的な推進の方向が示さ 資料:内閣府 (出典:内閣府『平成21年版 障害者白書 , P2, 2009年。) 図表3 障害者施策の長期計画(障害者基本計画)の策定に関する推移 ∼昭45…56 57 58 59 60 61 62 63 平元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 ∼ 障害者基本計画 (平成15∼24年) 障害者対策に関する新長 期計画 (平成5∼14年) 障害者対策に関する長期 計画 (昭和58∼平成4年) 心身障害者対策基本法 成立 昭和45年 主 な 国 内 関 連 事 項 国 連 等 国連障害者の十年 (1983∼1992年) 「障害者対策に 関する長期計画」 後期重点施策 (昭和62∼ 平成4年) 障害者プラン ∼ノーマライゼ ーション7か 年戦略∼ (平成8∼14年) 重点施策 実施5か年 計画 (平成15∼ 19年) 新たな重点 施策実施 5か年計画 (平成20∼ 24年度) 障害者基本法成立 (心身障害者対策基本法 の全面改正) 平成5年 障害者基本法の改正 平成16年 障害者の 権利宣言 1975年 障害者に関する 世界行動計画 1982年 国連総会において 障害者権利条約を 採択 2006年12月 障害者権利条約の 署名 2007年9月 発効 2008年5月 ESCAP アジア太平洋障害 者の十年 (1993∼2002年) ESCAP アジア太平洋障害 者の十年 (2003∼2012年) 国連障 害者年
1981年 昭56年 はじめに Ⅰ 基本的な方針 (考え方) (横断的視点) 1. 社会のバリアフリー化の推進 2. 利用者本位の支援 3. 障害の特性を踏まえた施策の展開 4. 総合的かつ効果的な施策の推進 Ⅱ 重点的に取り組むべき課題 1. 活動し参加する力の向上 2. 活動し参加する基盤の整備 3. 精神障害者施策の総合的な取組 4. アジア太平洋地域における域内協力の強化 Ⅲ 分野別施策の基本的方向 1. 啓発・広報 2. 生活支援 3. 生活環境 4. 教育・育成 5. 雇用・就業 6. 保健・医療 7. 情報・コミュニケーション 8. 国際協力 Ⅳ 推進体制等 1. 重点施策実施計画 2. 連携・協力の確保 3. 計画の評価・管理 4. 必要な法制的整備 5. 調査研究, 情報提供 図表4 障害者基本計画の構成 (出典:「障害者基本計画」2002年12月より著者作成。)れているが, 特に注目すべきこととしては障害者福祉における入所施設の位置づけについて 明確な方針転換が図られている点である。すなわち, Ⅲ−2「生活支援」における「(2)施 策の基本的方向」において,「施設サービスの再構築」という項目が立てられ,「ア 施設等 から地域生活への移行の推進」として「障害者本人の意向を尊重し, 入所(院)者の地域生 活への移行を促進するため, 地域での生活を念頭に置いた社会生活機能を高めるための援助 技術の確立などを検討する」とされており, 続いて「イ 施設の在り方の見直し」では「入 所施設は, 地域の実情を踏まえて, 真に必要なものに限定する」とされたのである。このこ とは, 上述した「障害者プラン∼ノーマライゼーション7か年戦略∼」が, ノーマライゼー ションを標榜しながら同時に入所施設整備を掲げていたことからすれば, ようやく欧米にお ける脱施設化の政策が日本においてもひかえめながらも政策的に取り入れられたといえる。 そしてこのことは後にみる障害者自立支援法における障害福祉計画にも反映されているので ある。 こうした「障害者基本計画」の前期5年において重点的に実施する施策およびその達成目 標, さらには計画の推進方策を示した「重点施策実施5か年計画(障害者プラン)」では, 2007年度を目標年度として各種施策の具体的な数値目標が盛り込まれた。そこでは上述した 施設サービスの再構築の方針をふまえ, 入所施設に関する数値目標は示されていないが, 訪 問介護員(ホームヘルパー)や地域生活援助事業(グループホーム)などの整備目標が示さ れた。上述した「障害者プラン∼ノーマライゼーション7か年戦略∼」における数値目標と 図表5 「重点施策実施5か年計画(障害者プラン)」における整備目標 1 在宅サービスの充実 2 住まいや活動の場等の確保 (出典:厚生労働省「重点施策実施5か年計画(新障害者プラン)」2002年12月24日。) 区 分 平成14年度 (障害者プラン目標) 平成19年度 (新障害者プラン目標) 訪問介護員(ホームヘルパー) 45,000人 約 60,000人 短期入所生活介護(ショートステイ) 4,500人分 約 5,600人分 日帰り介護施設(デイサービスセンター) 1,000か所 約 1,600か所 障害児通園(デイサービス)事業 1,300か所 約 11,000人分 重症心身障害児(者)通園事業 約 280か所 精神障害者地域生活支援センター 概ね人口30万人 当たり概ね各2か所 約 470か所 区 分 平成14年度 (障害者プラン目標) 平成19年度 (新障害者プラン目標) 地域生活援助事業(グループホーム) 20,000人分 約 30,400人分 福祉ホーム 約 5,200人分 通所授産施設 62,800人分 約 73,700人分 精神障害者生活訓練施設(援護寮) 6,000人分 約 6,700人分
対比すると図表5のようになる。 4.新たな「重点施策実施5か年計画」 その後, 国では2007(平成19)年12月25日に「障害者基本計画」の後期の実施計画(2008 (平成20)年∼2012(平成24)年)として「重点施策実施5か年計画∼障害の有無にかかわ らず国民誰もが互いに支え合い共に生きる社会へのさらなる取組∼」が策定された。 この計画においては,「重点施策実施5か年計画」の計画期間において成立した障害者自 立支援法も含めた法制度の改正の施行状況, とりわけ後述する各自治体における「障害福祉 計画」の内容などをふまえ, 自立と共生の理念の下に, 共生社会の実現に真に寄与するため, 次のような4点に重点を置き, 施策展開を図ることとしている。 1. 地域での自立生活を基本に, 身体障害, 知的障害, 精神障害, 発達障害等の障害の特 性に応じ, 障害者のライフサイクルの全段階を通じた切れ目のない総合的な利用者本位 の支援を行うこと。 2. 障害者の地域における自立や社会参加に係る障壁を除くため, 誰もが快適で利用しや すいユニバーサルデザインに配慮した生活環境の整備等を推進するとともに, IT(情 報通信技術)の活用等により障害者への情報提供の充実等を図ること。 3. 障害者自立支援法の抜本的な見直しの検討を進め, その結果を踏まえ必要に応じ本計 画の見直しを行うこと。 4. 障害者の権利及び尊厳を保護し, 及び促進するための包括的かつ総合的な国際条約で ある障害者権利条約の可能な限り早期の締結を目指して必要な国内法令の整備を図るこ 図表6 重点施策実施5か年計画における 地域移行の推進に関する数値目標・達成期間 <訪問系サービス>の利用時間数 約376万時間〔19年度〕→約522万時間〔23年度〕 <日中活動系サービス>のサービス提供量 約713万人日分〔19年度〕→約825万人日分〔23年度〕 <療養介護事業の利用者数> 約0.4万人分〔19年度〕→約1.0万人分〔23年度〕 <児童デイサービス事業のサービス提供量> 約26万人日分〔19年度〕→約34万人日分〔23年度 <短期入所事業のサービス提供量> 約24万人日分〔19年度〕→約35万人日分〔23年度 <共同生活援助事業(グループホーム), 共同生活介護事業(ケアホーム)の利用者数> 約4.5万人〔19年度〕→約8.0万人〔23年度 <相談支援事業の利用者数> 約3万人〔19年度〕→約5万人〔23年度〕 <福祉施設入所者数> 14.6万人〔17年度〕→約13.5万人〔23年度 <退院可能精神障害者数> 4.9万人〔19年度〕のうち, 約3.7万人の減少〔23年度 (出典:障害者施設推進本部「重点施策実施5か年計画」2007年12月25日。)
と。 この計画においては, こうしたことをふまえ基本計画の後期5年間における諸施策の着実 な推進を図るため, 重点的に取り組むべき課題について, 120の施策項目並びに57の数値目 標およびその達成期間なども定められている。 障害者プランの構成は, 先に示した「障害者長期計画」の構成と同様であるので, ここで はその中でも「地域移行の推進」に関する数値目標と「雇用・就業」関連の数値目標を挙げ ておく (図表6,7参照)。 5.都道府県および市町村の障害者計画 これまでみてきたように「障害者基本計画」は国が策定する「障害者の福祉に関する施策 及び障害の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図る」ための計画である。これを 基本として, 都道府県が「都道府県障害者計画」を, 市町村が「市町村障害者計画」を策定 することになっている。これは, 2004(平成16)年6月の障害者基本法の改正により, 先述 したように都道府県および市町村にも障害者計画の策定が義務づけられたもので, 市町村の 計画策定に関しては2007(平成19)年4月から施行となった。 2007年度末現在で,「障害者計画」はすべての都道府県および指定都市(17市)において 図表7 重点施策実施5か年計画における雇用・就業に関する数値目標・達成期間 <雇用障害者数> 64万人〔25年度 <チャレンジ雇用の推進> 全府省で実施〔20年度〕 <公的機関の障害者雇用率> すべての公的機関で障害者雇用率達成〔24年度〕 <精神障害者の雇用> 56人以上の規模の企業で雇用される精神障害者数 0.4万人〔19年〕→1.5万人〔25年度〕 <精神障害者ステップアップ雇用> 常用雇用移行率 60%〔24年度〕 <在宅就労団体支援登録数> 16団体〔19年〕→100団体〔24年度 <ハローワークを通じた障害者の就職件数> 24万件〔20∼24年度の累計 <地域障害者職業センター> 支援対象者数 12.5万人〔20∼24年度の累計〕 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業における支援 終了後の定着率 80%以上〔24年度〕 <障害者就業・生活支援センター> 設置数135〔19年〕→全障害保健福祉圏域に設置〔23年 利用者の就職件数 9,000件〔24年度 就職率 50%以上〔24年度〕 <ジョブコーチ養成数> 1,500人〔18年度〕→5,000人〔23年度〕 <ジョブコーチ支援> 支援終了後の定着率 80%以上〔24年度〕 <精神障害者総合雇用支援> 支援終了後の復職・雇用継続率 75%〔24年度〕 <トライアル雇用> 対象者の常用雇用移行率 80%以上〔24年度〕 <一般就労への年間移行者数> 0.2万人〔17年度〕→0.9万人〔23年度〕 <就労移行支援の利用者数> 29.2万人日分〔19年度〕→72万人日分〔23年度〕 <就労継続支援の利用者数> 83.1万人日分〔19年度〕→277万人日分〔23年度〕 <授産施設等の平均工賃月額> 12,222円〔18年度〕→平均工賃倍増を目指す〔23年度〕 <障害者の態様に応じた多様な委託訓練の就職率> (出典:障害者施設推進本部「重点施策実施5か年計画」2007年12月25日。)
策定されている。また, 特別区を含め市町村では1,710団体(95.1%)で策定されているよ うな状況である。 これまでみてきた国により策定されている「障害者基本計画」や「障害者プラン」は, 都 道府県・市町村のレベルで実施していくことになるので, 各自治体においてそれぞれの実情 に応じて計画を策定していくことは必然的な流れである。 各自治体における計画の策定に際しては, 役所内に計画策定の検討チームを設置するだけ ではなく, ニーズ調査や各種の障害当事者(団体)からのヒアリングはもちろんのこと, 計 画の策定過程においてたとえば障害者施策推進協議会のもとに計画策定の検討委員会などを 設け, 当事者や障害福祉領域で実践している各種の専門職を含めた住民の参加を図りながら 計画の策定に取り組まれている。 また, 計画策定後の計画の進行管理・推進体制についても, 役所内にそのための組織を置 いたり, 障害者施策推進協議会などを活用するなど, 当事者を含めた住民の参加・参画を得 て計画の推進体制が整備されている。 6.障害福祉計画 これまでは障害者基本法にもとづく「障害者基本計画」および自治体の 「障害者計画」 関 連の動向を概観してきたが, 障害者の福祉に関する計画としては障害者自立支援法に基づき, 厚生労働大臣の示す基本指針(同法第87条)に即して, 市町村およびに都道府県策定が義務 づけられている「障害福祉計画」(同法第88, 89条)がある。 同法は, 2004年10月に厚生労働省により社会保障審議会障害者部会に示された「今後の障 害者保健福祉施策(改革のグランドデザイン案)」と題する改革案をもとに, 紆余曲折を経 て2005年10月に成立した。同法では, 2006年4月より支援費制度の枠組みのままで, サービ ス費用の1割の自己負担に関する部分などが一部施行され, 同年10月より同法に基づく新制 度体系によるサービスが開始され, 本格的に施行された。この法律のポイントとしては, ① 障害者の福祉サービスの一元化, ②障害者がもっと「働ける社会」に, ③地域の限られた社 会資源を活用できるよう「規制緩和」, ④公平なサービス利用のための「手続きや基準の透 明化, 明確化」, ⑤増大する福祉サービス等の費用を皆で負担し支え合う仕組みの強化, と いう5つが示されている。 同法では, 市町村障害福祉計画において定めるべき事項として, ①指定障害福祉サービス または指定相談支援の種類ごとの必要な量の見込み, ②その必要な見込み量を確保するため の方策, ③地域生活支援事業の種類ごとの実施に関する事項, ④その他障害福祉サービス, 相談支援および市町村の地域生活支援事業の提供体制の確保に関し必要な事項という4点が 示されている(同法第88条)。 また, 都道府県障害福祉計画に定めるべき事項として, ①都道府県が定める区域ごとの各 年度の指定障害者福祉サービスまたは指定相談支援の種類ごとの必要な量の見込み, ②その
必要な見込み量の確保のための方策, ③指定障害福祉サービスまたは指定相談支援に従事す る者の確保また資質の向上に関する事項, ④各年度の指定障害者支援施設の必要入所定員総 数, ⑤指定障害者支援施設の施設障害福祉サービスの質の向上のために講ずる措置に関する 事項, ⑥地域生活支援事業の種類ごとの実施に関する事項, ⑦その他障害福祉サービス, 相 談支援および都道府県の地域生活支援事業の提供体制の確保に関し必要な事項という7点が 示されている。なお, 障害福祉計画の期間は, 図表8のようになっている。 この「障害福祉計画」のひとつの特徴は, 国の「基本方針」として日本においてはじめて 入所施設の入所者の1割以上約1万人と精神科入院患者のうち退院可能と思われる約7万人 図表8 障害福祉計画の期間 (出典:厚生労働省「障害福祉計画の策定に向けて」2006年5月11日。) 22年度 23年度 21年度 20年度 19年度 18年度 新サービス体系への移行 平成18年春 国 の 基 本 指 針 平 成 23 年 度 の 数 値 目 標 障害福祉計画策定 (都道府県, 市町村) ※ 第1期の実績を踏まえ, 第2期計画を策定 第2期計画期間 障害福祉計画策定 (都道府県, 市町村) 基本方針に則して, 平成23年度を 目標において, 地域の実情に応じ, サービスの数値目標を設定 ・訪問系サービス ・日中活動系サービス ・居住系サービス 第1期計画期間 (18年度中に策定) 図表9 サービス利用者の将来見通し (出典:内閣府 平成20年度版 障害者白書 , P13, 2008年。) 訪問系サービスの 利用者数 日中活動系サービスの 利用者数 居住系サービスの 利用者数 一般就労への移行用者数 福祉施設における 雇用の場 ※ 計数については, 端数処理を行っているため, 積み上げと合計が一致しない場合がある [平成23年度] [平成17年度] 47万人 16万人 9万人 0.8万人 就労継続支援(雇用型) 3.6万人 小規模作業場 1万人 24万人 一般就労移行者 0.2万人 9万人 30万人 施設入所者等 22万人 グループホーム 3万人 福祉工場 0.3万人 小規模作業場 8万人 25万人 ※平成15年 (1.6倍) (1.8倍) △6万人 +6万人 16万人
のうちの5万人とあわせて, 合計6万人を地域生活に移行するというかたちで移行先として 共同生活援助事業 (グループホーム) と共同生活介護事業 (ケアホーム) を中心に地域生活 移行の数値目標を明示したことにある。 同時に, 退院可能な精神障害者の退院促進や福祉施設から一般就労に移行する者の数(現 在の4倍以上とすること)や, 就労継続支援の利用者のうち3割以上はA型(雇用型)をめ ざすべきことも明示された。それら図示すると図表9のようになる。 7.障害福祉計画の事例──兵庫県伊丹市の場合── (1)伊丹市の障害者福祉の概況 ここでは障害福祉計画について, 具体的な事例をもとに検討してみることにする。 兵庫県 伊丹市は阪神地域の南東部に位置し, 神戸市から約 20 km, 大阪市から約 15 km のところに あり, 面積約 25 km2 , 人口約19万人の都市である。農地は約10%, 第1産業就労者は1.0% と少なく, 逆にサービス業などの第3次産業従事者が6割を超え, 市域の東には大阪空港も 立地しており, 商工業中心のまちである。市域の4割弱を住居が占めているなど戦前から住 宅都市として発展してきており, 阪神地域のベットタウンでもある。 市内には障害者の入所施設はなく, 育成会をはじめ知的障害のある親たちにとっては, 上 述したように国が2002年に策定した「障害者基本計画」のなかで示した入所施設は「真に必 要なものに限定する」という方針が示されたものの, やはり知的障害者入所施設の建設は長 年の願いでもあった。 (2)伊丹市障害福祉計画策定の取り組み そうしたなか伊丹市では, 2006(平成18)年10月より「伊丹市福祉対策審議会」およびそ のもとに置かれた「障害者部会」において, 障害者自立支援法に基づく障害福祉計画の策定 作業が進められた。また, 同部会のもとには, さらに「伊丹市障害者福祉計画ワーキングチ ーム」は設置され, より具体的な検討が行われた。 市町村における障害者計画や障害福祉計画の策定組織については, こうした伊丹市のよう に福祉審議会が設置されている場合は, そこが審議機関となるが, 障害者施策推進協が設置 されている市町村では推進協が計画の策定組織となる。こうした機関を設置していない場合 には, 通常計画策定委員会が設置される。また, いずれの場合でも, そのもとにより具体的 な検討や審議をする作業部会(ワーキングチーム)が置かれることが多い。 さて, 伊丹市では2007(平成19)年2月に審議会として障害福祉計画を市長に答申するま での間, 障害福祉計画のなかでも特に「地域生活移行」についての議論が非常に活発に行わ れた。なぜなら, 国の先の方針に加え, 障害者自立支援法においても入所施設から地域生活 への移行の促進や入所施設の定員削減の方向が具体的に示されていたためである。 伊丹市では, 障害者自立支援法が成立する前に, すでに入所施設の建設についての内示が
図表10 伊丹市障害者福祉計画の概要 (出典:「伊丹市障害福祉計画」 P 2007年4月。) 第1期 平成18年度 第2期 平成20年度 平成22年度 平成21年度 平成19年度 平成23年度 23年度目標 現状 小規模作業所 身体 6か所 知的 9か所 精神 4か所 計 19か所 1 43人 市外の入所施設 129人 ・身体障害者 33人 ( 16施設) ・知的障害者 96人 ( 41施設) 生活ホーム 2か所 8 人 通勤寮(あけぼの寮)14人 市内の通所施設 〇さつき(知的) 50人 〇くすのき(知的) 55人 〇ワークハウス(精神) 20人 〇ゆうゆう(知的) 60人 〇障害者デイ(身体) 30人 計2 15人 障害者デイは 18年10月 新体系へ移行 <地域生活の定着を支援します。> 伊丹市では, 平成2 3年度末までに, 知的障害者のケアホーム ( C H )等 を18か所78人分整備します。 また, 精神障害者のケアホーム ( C H )等 を 3か所14人分整備します。 <住み慣れた地域での日中活動の場を保障します。> ◎養護学校卒業生の受け皿 15人×5年=75人 ◎市外の入所施設から39人を総合支援施設に施設変更 するための日中活動の場を確保します。 ◎退院可能精神障害者の日中活動サービス 14人 〇くすのき 自立訓練 20人 就労継続 20人 就労移行 10人 一般就労 2 4人 市内の通所施設 〇さつき 45人 〇くすのき 50人 〇ワークハウス 30人 〇ゆうゆう 60人 〇フォーゆう 2 0人 〇障害者デイ 3 5人 計 240人 地域活動支援センター 身体 6か所 知的 8か所 精神 3か所 計17か所 182人 就労継続 2か所 4 0人 市外の入所施設 90人 身体障害者 33人 知的障害者 57人 市内のケアホーム等 21か所 92人分 地域生活移行型支援施設(入所) ライフゆう 40人 入所施設から39人 がライフゆうに施 設変更します。 C H 等(知的)1か所10人 C H 等(知的)自立体験型2か所8人 C H 等(知的)1か所4人 C H 等(精神)1か所6人 C H 等(知的)1か所4人 C H 等(知的)2か所8人 〇ライフゆう(入所) 生活介護 20人 自立訓練 20人 施設入所支援 40人 〇フォーゆう(旧デイ) 生活介護 20人 短期入所 5人 小規模作業所は2 0年度末までに地域活動支援センターをめざします。 地域活動支援センター 〇ワークハウス 就労継続 2 0人 就労移行 1 0人 〇さつき 生活介護 4 0人 〇ゆうゆう 生活介護 1 0人 自立訓練 2 0人 就労移行 1 0人 ※地域生活総合支援施設 暫定定員40人に 暫定定員40人に 19年4月に10 人を定員増 19年4月に オープンし ます。 生活ホーム を C H 等に 変更
厚生労働省よりおりていたが, そこには従来型の入所施設ではなく, 全室個室のユニット型 の施設であり, 地域福祉推進の拠点となるような機能が期待されていた。したがって, 計画 策定の過程では, こうした状況をふまえ, 知的障害者の親の会やその他障害の当事者組織や 福祉専門職らによる熱心な検討が進められたのである。 (3)伊丹市障害福祉計画の特徴 こうしたプロセスを経てできた「伊丹市障害福祉計画 ともに暮らせるまちづくり (平成18年度∼20年度 第1期 )」の概要は, 図10のようになる。 この図の左下にある「ライフゆう」が2007(平成19)年4月に新設された40人定員の知的 障害者の入所施設である。障害者自立支援法のもとでは, 日中活動のサービスとしては, 生 活介護(20人), 自立訓練(20人)の2つの事業を行い, 夜間の部分は施設入所支援(40人) となる。障害者自立支援法では, 自立訓練では2年の利用期限が設けられているが, 生活介 護の利用者については利用期限が設けられていない。 しかし,「ライフゆう」ではこの20人も含めて,「5年間の有期限制」の施設として位置づ けられており, 2011(平成23)年の計画の終了時点で,「ライフゆう」の40人に加え, 市外 の施設からの地域生活移行者10人, 親元からの移行者20人, そして通勤寮(あけぼの寮)の 生活ホームへの転換分(10人)を合わせて, 知的障害者のケアホーム等を18か所78人分, 病 院から地域生活に移行する精神障害者のケアホームを3か所14人分の合計92人分, 21か所の ケアホーム等を整備することを目標としている。 国の指針に基づく地域移行者数は, 計画策定時点で伊丹市において入所施設で生活してい る129名の1割の12.9人(=13人)となるが, 伊丹市ではその約4倍にあたる50名の地域移 行を計画しているのである。長野県や宮城県など大型のコロニーからの地域生活移行を積極 的に推進しているところがあるが, 人口20万人規模の市の取り組みとしては特筆すべきもの であるといえる。 そして計画策定後の状況としては, 現在第2期 (平成21年度∼23年度) に入っているが, 2009 (平成21) 年度末で 「ライフゆう」 からの地域生活への移行者は, 5か所の共同生活援 助事業 (グループホーム) および共同生活介護事業 (ケアホーム) に23人となる予定である。 また, 計画では 「ライフゆう」 からの移行者を含めて, 伊丹市全体の目標が2009年度末で14 か所で67人のところ, 13か所のグループホームおよびケアホームに63人が移行する予定であ る。 このように計画通りほぼ順調に進展している背景には, 計画の策定プロセスを通じて, 障 害のある子どものいる親など当事者の意向, 社会情勢の変化, 行政の姿勢, そして地域特性 などをふまえ, さまざまな利害を調整し, 社会的な合意が得られるような方向をていねいに 見出してきたことがあるといえる。
まとめにかえて 以上, 概観してきたように, 障害者福祉における計画策定を通じて, 地域生活移行を推進 していく方向にあるが, それほど楽観できる状況にあるわけではない。 厚生労働省が社会保障審議会障害者部会で示した資料では, 2005(平成17)年10月時点で の知的障害者入所施設の利用者数は139,009人で, 2007(平成19)年10月時点では138,620人 (−389人, −0.3%)となっており, ほとんど横ばいの状況である。この間, 18,945人が退 所しているが, ほぼ同数の18,556人が新規入所しているためである。 そしてより深刻なのは, 地域生活移行に関する数値である。この施設退所者のうち地域生 活に移行した人は9,344人とのことだが, その移行先の内訳は, 自宅 (家庭復帰) 3642人 (39.05%) 共同生活介護2270人(24.3%), 共同生活援助1661人(17.8%), 福祉ホーム195人 (2.1%), 通勤寮(旧法)112人(1.2%), 一般住宅1072人(11.5%), 公営住宅190人(20.%), その他202人(2.2)%となっており, 実に約4割もの人が「自宅」≒親元に戻っているとい う状況になっているのである(社会保障審議会障害者部会第33回資料, 2008年6月9日)。 これらの人たちは, 新たな施設入所待機者となると考えられる。まさに, 施設の施設入所 のたらい回しであり, いったん地域に出た人が再び施設や病院に戻ってくるいわゆる「回転 ドア」現象が生じているのである。 障害者福祉の推進においては, 計画を策定することが重要な役割を果たすが, 国により示 される方針のもとでの全国画一的なものであっては, 計画策定の効果は弱いものとなる。む しろ伊丹市の事例のように各都道府県や市町村の実情をふまえ, 地域生活を支援していくた めの創意工夫が求められるのである。 そのためには計画の策定過程における障害当事者や福祉専門職の参加・参画が重要となり, 計画の策定に関わる策定組織の運営の仕方が問われることになる。とりわけ計画の内容を規 定することになるアジェンダ(協議検討課題)をどのように設定し, 計画策定を通じて地域 生活を実質的に保障していけるような支援の仕組みを地域のなかにいかに創っていくのかと いうことが問われているといえる。 現在, 政権交代に伴い障害者自立支援法は廃止の方向で検討されているが, 能力主義的な 選別主義を改めるとともに(松端克文, 2006), 地域生活支援の仕組みのないままに地域生 活への移行を進めるといった愚行は, 早急に改善されなければならないといえる。 施設や病院から地域生活への移行を推進していくためには, 計画で大枠を決めておくこと も重要だが, より大切なことは, 一人ひとりの状況に合わせて地域のなかに支援の仕組みを 構築していくことである。 そのためには個々の利用者ごとの個別支援計画をていねいに作成 し (松端克文, 2004), それぞれの人が地域のなかに豊かな社会関係を形成し, ひとりの市 民としてのごくあたり前の生活を営めるような支援のネットワークを構築していくことが不 可欠であるといえる。
参 考 文 献 内閣府『障害者白書 平成21年版』日経印刷, 2009. 伊丹市『伊丹市障害福祉計画 ともに暮らせまちづくり 』2007. 全国自立生活センター協議会編『自立生活運動と障害文化 当事者からの福祉論 』 現代書館, 2001. 北野誠一・石田易司・大熊由紀子・里見賢治編『障害者の機会平等と自立生活 定藤丈弘その福祉の 世界 』明石書店, 1999. 定籐丈弘・坂田周一・小林良二編『社会福祉計画』有斐閣, 1996. 松端克文 「障害者自立支援法の衝撃 障害者福祉はどうなるのか 」 桃山学院大学総合研究所紀 要 第32巻第2号, 2007年. 松端克文 障害者の個別支援計画の考え方・書き方 社会福祉施設サービス論の構築と施設職員の専 門性の確立に向けて 日総研出版, 2004.
Analysis of Deinstitutionalization and Social Planning
for People with Disabilities in Japan
Katsufumi MATSUNOHANA
The purpose of this paper is to examine the impact of social planning for people with disabilities on the process of deinstitutionalization. Deinstitutionalization or ‘from institution to community’ has been perhaps the most important subject in the way services for people with intellectual dis-abilities have been organized in Japan.
The provision of institutional care in Japan increased continuously from its establishment in the middle of the last century up until 2002, when the Ministry of Health, Labor, and Welfare made the 2002 Plan for People with Disabilities. The Plan recommended that more provision should be made to house people with intellectual disabilities in group-homes within the community, rather than build new institutions. And the Services and Support for Persons with Disabilities Act of 2005 stipulated that ten percent of people living in institutions should be transferred to commu-nity living. Unfortunately, many people who transferred from institutions have returned to their parents’ home and increased the burden of care on their families.
Therefore in the creation of alternatives to institutions lies the task, not only of building new placements within the community, but also of finding new ways of organizing services and provid-ing help and support, especially for people with the most extensive needs. A new vision of com-munity services is required, focusing on such things as primacy of comcom-munity living, emphasis on social relationships, individual-centered support, and personal choice and control. This is the greatest challenge facing all modern societies.