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イメージの母子インタラクション : 継母子のロールシャッハ・テストからみた母子相互作用

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Academic year: 2021

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(1)

イ メ ー ジ の 母 子 イ ン タ ラ ク シ ョ ン

― 継 母 子 の ロ ー ル シ ャ ッ ハ ・ テ ス ト か ら み た 母 子 相 互 作 用 ― は じめ に カ ウンセ リングの仕 事 を しなが ら, た えず 自問 して いたのは,(∋自分

(

-治療者)は この人

(

-患 者)を本 当 に理解 す る こ とがで きるのだ ろ うか と い う問 と,② 自分 は この人 を どの よ うな規範

(

-礼 会)の中 に適応 させ て い くのか とい う問であ った。 その よ うな中で,自分 が 曲が りな りに も(卦他者

(

-患者)と共感 で きた と思 う瞬間 は,例 えてみ れば母 親 (あるいは父親)が我 が子 を理解 しえた と思 うと きに似 てい るので は ないか と考 えた。 この① ∼(卦の次元 を, 現在考察 を進 め よ うとし て い るイ メージの側 面 か らみ るな らば,それ ぞれ, イ メージの①個 人的次元,② 共 同的次元,(卦対的 次元 に対応 させ てみ る ことがで きるのでは ないか と思 う。筆者 は先 の報告 l)で,人間 の イ メージを(ら 個 人的世界 の次元,② 共 同的世 界 の次元,(卦対 的 世 界 の次元 に分 け, 母親 が子 どもを理解 し,共感 して い くプ ロセ スは,子 どもが 自分 の個人 的世 界 の イ メージを理解 し共感 して もら うことに よって 自 らは共 同的 な イ メージの次元へ社会化 され て い くとい うプ ロセ スを生 み 出す ので は ないか とのべ た (Fig.1)0 ひ るが え って, この よ うな プ ロセ スは上 述 の ご と く, カ ウンセ リングの プ ロセ スに も類似 してい る。我 々の カ ウンセ リングの プ ロセ スにはそれ故 に,その人 の もつ母 子 関係や父子 関係 が反 映

(

-転 珍) されやす い とい う構 造 が あ る とい えない で あ ろ うか ? カル フ2)は箱庭 療 法 の設 定 を 「自由で あ る と同 時 に保護 された1つ のあ る空 間」 で あ る とし, そ *東京慈恵会医科大学小児科心理 〔〒105東京都港 区西新橋3-25-8〕 (長野大学産業社会学部)

男 *

れ は 「母 と子 の一体性」 をつ く りだす よ うな雰 囲 気 の中 にあ る とい って い るが, これ もまた 治療 の もつ親 子関係的側 面 (この場合は母子関係的側面)を よ く言 い表 わ してい る と思 う。子 どもは この よ う な雰 囲気 の中で 自己実現 へ と向 うので あ る。 筆 者 は 自分 自身 の個 人 分析 体験3)の さな か に コ ーチ

(

-寝椅子)の上 で, 分析者 の解釈 の言葉 を聞 きなが ら, まるで子宮 の中 にいて母 の言葉 の響 き を聞 いて い る よ うな イ メージ体験 に とらわ れた こ とが あ った (Fig.2)。 これ な どもカル フの述べた よ うな雰 囲気 と同 じ状況 か も しれ ない。 ところで,筆 者 は人間 の イ メージを この よ うに 3つ の次 元 に分 け る考 え方 を吉 本5)の次 の よ うな 考 えか ら敷 術 した。彼 は次 の よ うにのべ る。 ・--ぼ くなんか,人間の基層心理 とい うものを含め て,人間の観念の働 きが もっている世界を大体三つに 分けてかんがえるわけです。 そのひとつは どうい うことか と云います と,じぶん のじぷんに対す る関係の世界,それはふつ うの言葉で 云 えは,個人の,つま り自分 自身の内面の表現になっ ている,そ うい う世界 とい うもの。 もうひとつは,自 分 と他のひとりの関係の世界。これは広い意味で云え は,性の世界だ とかんがえます。(中略)要す るに,ひ と りの人間が じぶん以外 のひ と りの人間 と関係す る 世界が,性の世界だ とい うふ うにかんがえます。だか らひとりの人間 と他のひとりの人間のあいだに,もし なんらかの意味で交流があるとすれば,それ も広い意 味で,性の世界に含 まれ るとい うことができるとおも います。 (中略)もうひとつの理解の基軸は, ひとりの人間 が共同の世界- 社会 とい う言葉で も国家 とい う言 葉で もなんで もいいんですけれ ど- で ど うい うふ うに振 るま うか,あるいは どうい うふ うな心の持ち方 を持つか,そ うい うひ とつのべつの基軸です--しか し, ここで 注 意 して お か な け れ ば な らな いのは彼 自身, この3つ の次元 を,相互 に関連 し - 2

(2)

3-Fig.1 イ メージの3つの次元 と母親 の反応 て は い るが 他 の 次 元 か ら独 立 した もの で あ り, む しろ本 質 的 に相 入 れ な い性 質 を も って い る と考 え て い る点 で あ る。 彼 の 問題 意 識 は次 の2つ の引用 文 の 中 に よ くしめ され て い る よ うに思 わ れ る。 ・・-・哩昧な く倫理〉の解除 - (編集者)そ こで吉本 さんは, まず,全 く幻想領 域)の構造 を解 明す る鍵 として, (1)共 同幻想 -国家,汰,宗教 (2)対幻想 -セ ックス,家族 (3)個 人 (自己)幻想 -芸術,文学 の三つの軸 を設定 して,この三つの軸 の相互関係 を 解明 していけば 〈幻想〉領域 は統一的 に解 明で きるの ではないか,と演得的手続 きを踏 まれ るわ けです。(中 略) そ こで内容 に立入 って うかが うまえに,まず, この 書の最大 の問題 であ る 〈対幻想)軸 の設定 なのです が, この設定 に至 るプ ロセ スを お話 しいただければ と思 い ます。 吉本 いちばん根底 におかれ た モチ ー フは,個体 が現実世 界 とその歴史 的 な 由 緒か らおわ され て しま う(倫理〉の受 け と め方 にたいす る疑 問で した。 〈マル クス)主義 であ って もな くて もよ いのです が,政 治運動 が現実 に行わ れ る とき,あ るいは,国家や階級 とい った共 同 的 な概 念 と具 体 的 に関 わ ろ うとす る と き,そ うい う行動や理念 にた い して,個人 はいつ もその共 同性 を転倒 して, じぶ ん の内部 に 〈倫理〉として受 け とめて しま う のです。 "貧 しい人 々を解放す る"とい うのは正 義 では ないか, そ うい う運動 や理 念 は肯 定 され るべ きで はないか とい った,万人 が異 論 の余 地 な く認 め る よ うな場 所 で 〈倫理〉は もっとも危 うく され ます。 この理念が く倫 理〉的 に個 々人 にや って き た場合,あ る種 の愚劣 さ, 苦 々 しさ, ど うして も肯定 で きない矛盾, 自己欺賄み た い な もの が伴 って くる ことがあ るで し ょう。肯定 しな が らそ の現 実 的 な在 り方 に疑 問符がついて まわ る問題,個 々人がすべ て受 け入れて しまった とき,その正義が肯定で きない とい う矛盾 と息 苦 しさが伴 って くる問題- これ はい っ た い何 なのか とい う疑問が,ぼ くには根本的 なモチー フとしてあ りました。 それは共 同性の次元 の領域 と,セ ックスのかかわ る 家族 の次元 の領域 と,個人的 な領域 の3つが混合 され て一挙 に到来す ることか らくる錯綜 を,ただ ひ とつの 〈倫理)と して受け とって しま う矛盾 がや って くるの だ とい うよ うに解決 していったのです。 それ ら三つの概念水準は次元がちが うのだか ら,普 ず分離 され てそれぞれ に固有 な概 念 の次元 に差 しも どされ 各 々の概念の占め る位相 について,その領域 の水準 に概念を置 いてかんが えな くては,この相互関 係 の矛盾 は解決 しない とお もった のです。 F世 界認識 に .ひ こ き i:_-.-_--.:? . Lき り 】 十求め回鶴日 ひごと ボり イと ㊨四鴨ント Fig.2 コーチをつか った分析 の一場面4)

(3)

の方法

6

)

----・個人の意識 (ぼ くは幻想 とい う言葉を使 っていま すが),個人の幻想に属す る層 と,対なる幻想,つま り 個人が他の一人の個人 と関係づ け られ るときにでて くる意識の領域,これはいってみれば家族 とか男女の 性の世界ですけれ ど,そ うい う観念の層 と,それか ら, 国家 とか法律 とか社会 とかに属す る共同の観念の世 罪,共同の意志の世界 とい うように層に分離 してその 関連性をつ け られれば,たぶんわれわれは共同の 目 的,意志 と個人の意志 とのはざまに引 きさかれて苦悶 す るとい う阿呆 らしい ことは しな くて もすむのでは ないか,そ うい う意味での倫理的なことは解除 され る のではないか と考 えてい ったのです。『言葉 とい う思 想』7)--・ 筆者 自身 は吉本 の, この問題 意識 を まだ よ く理 解 で きないが,イ メージを単 に (丑個 人的世 界 の次 元 ② 対的世 界の次元 ③ 共 同的世 界 の次元 に分 け, 母親 の子 どもへ の理解 ・共感 に よって,子 どもが 共 同性 を獲得す るのだ とい う筆者 の考 えには まだ い くつ かの注釈 が必要 で あ る とい うこ とだ けは よ く分 か った。 筆者 の よ うに考 え うるため には少 な くとも,母 一子 とい う対幻想 が,共 同幻 想 と矛盾 な く存在 し て い る とい う前提 が必要 なのだが, これ はあ ま り に も楽観的 な見方 で あ る。筆 者 な りの言 い方 をす るな ら,母 か ら受 け入 れ られた よ うに この社会 も 自分 を受 け入れ て くれ るのだ とい うのはあ ま りに も楽観 的 な見方 の よ うに思わ れ る とい うこ とにな る。母 が 自分 を受 け入 れ て くれた よ うには受 け入 れ て くれ ない社会 (共同性)もあ る とい うのは 自明 の ことであ るよ うに思わ れ る。 村瀬8)は母親 との関係 (対幻想)で え られた社会 性 が,必ず しも共 同性 につ なが る社 会性 で はない ことを 自覚的 に と りあげ,次 の よ うにのべ て い る。 --・(社会性)と く対偶性 (対幻想の こと一引用者)) の区別 と関連,これは もっと- ッキ リと自覚 されて と りあげ られな くてはならない。六 ケ月までであると, 乳児はだいたい誰が抱いて も喜 こんでいたのだが,六 ケ月をす ぎるあた りか ら知 らない人 に対 しては表情 がかあ りだ し,そ していよいよ不安になると泣 き出 し た りしは じめる。その時は もう母親が抱かない と泣 き やまない とい うよ うな事 も起 って くる。こうい う現象 をみて一般的にわかることは,母親が (対象)として - ッキ リ措定 されてきた とい うことであろ う。母親 と 他の人 とを 〈対象〉として区別 して受けとめ られ るよ うになったわけである。そ こか らそれは人に対す る意 識の高 ま りとして,対人関係-社会性の現われだ とさ れるわけである。 ところが私たちは,そ こに〈社会性〉 ではな く〈対偶性 (対幻想))とい う特異な心的現象の 現われをみるのである。 (対偶性)とは何か。すでに予備考察でのべて きた よ うに,それはひと言で言えば,人間が1対1でかか わ る時にみせ る心的な〈同着)の関係である。(社会性) とはあ くまで人間が多 と- の関係の中で現まっれ る人 間関係であ り,その (多)に対す る 〈-)の関係は, 誰におきかえられて もかまわない抽象的な (-)の関 係である。〈対偶性〉はそ うではない。これは特定の一 に対す る特定 の- の関係 (ペ アー 引用老)であ り, そ こでは簡単 に置 きか えの きかない関係が成立 して いる。その特定の関係 とい うものの具体的な中身が, 心的な く同着)とい うよ り, よ り融合的な人間関係の 形態なのである。-・ -ここで主張 され て い る ことは人 間 が母 との間 に もつ社会 性 といわ ゆ る社会性 (-共同性)とは違 っ て い るのだ とい うこ とであ る。 以上 み た よ うに (∋個 人 的 イ メー ジが ② 母親 の 側 の子 どもに対 す る理解 と共感 (対的イメージ)に よ って ③ 共 同 的 イ メ ー ジに単純 に高 め られ て い くわ けで は ない ことが 明 らか にな った。 した が っ て,筆 者 の先 の図式(Fig.1)は次 の よ うに改め ら れ なけれ ば な らない(Fig.3)0(さ らに個 人的世 界 の次元 につ いて も同様 に ,理解 され る部分 と理解 され ない部 分 が あ る と思わ れ る。) 対偶 関係 に よ って共 同性 にな った部 分 は いつ ま でた って も対 的 次元 なのでは ないか とい う反 論 も な り立 ちそ うで あ るが,筆者 として はや は り,対 偶 関係 に よって共 同性 につ なげ られ てい く部 分 も あ るので は ない か とい う見方 をす てがた い ので あ る。 吉 本9)は 『共 同幻想論』の中で

,

「く母 系)制 の社 会 とは家族 の (対 な る幻想)が部 落 の (共 同幻 想) と同致 して い る社会 を意 味す る」 とのべ て,対的 世 界 の次元 と共 同的世 界 の次元 が 同一 で あ る と見 えるの は, そ う見 え るだ けで あ るにす ぎない と断 定 して い る。吉 本9)に よれ ば,これ は初期 の農耕社 会 に固有 な ものであ る。 - 2

(4)

5-本来 の共同的 世界の次元 対偶関係によ って共 同化 さ れた部分 対的世界の次元 本来の個人的 世界の次元 対偶関係に よって理解 された部分 子 どものイメージ世界 Fig.3 イメージの 3つの次元 と母親の反応 (Fig.1の改訂版) ・・・-かれ ら (初期農耕社会の人々)の共同の幻想にと っては,一対の男女の (性〉的な行為が (子〉を生む とい う結果を もた らす ことが重要なのではない。女 (性)だけが 〈子〉を分娩するとい うことが重要なの だ。だか らこそ女 く性〉はかれらの共同幻想の象徴に 変容 し,女 〈性〉の く生む〉 とい う行為が,農耕社会 の共同利害の象徴である穀物の生成 と同一視 される のである。-・・・ もしも, 日本 の社会 を母系制的 な社会 と考 える ねち ば,10)母 (女性)は生み,育て, は ぐくみ,受 け入れ る もの として, あたか も共 同幻想 と一致 し ているよ うにみ える とい う根拠 は,上述 の よ うな 我 々の社会 の もつ特殊性 の中に兄 いだ され るか も しれない。筆者 が対偶関係 (-母子関係)に よって 共 同性 につ なげ られてい く部分をすてがた い とみ たのは,筆者 が生 きているのは,や は り, この 日 本の社会 なのだ とい う実感 に裏打ち された ものな のだ と思われ る。 まえが きがあ ま りに も長 くな り過 ぎたが,Fig.3 に図式化 した よ うな筆者 の考 えをま とめ, 明確 に してお くため には必要 な ことであ った。 さて, この よ うな(Fig.3)筆者 の見解 に立 って, 母親 が子 どもの イメージ世界を理解 ・判断 ・共感 してい くプ ロセ スが,子 どものイメージ世 界を社 会化 (-共同化)してい くとす るな らば, この機能 が人生 の初期 において欠 けてい る継母子 の関係 に おいては, どの よ うな プ ロセスがお こるのだ ろ う か ? ここで報 告す る症例 において, この母親 は 6歳 か ら継母 とな ってい る。 したが って, この母 子関係 においては初期 の6年間が欠 けた形 で母子 関係が始 まって い る。 さらに実母は本人を放置 し ていた。 この2つの欠落が上述 の プ ロセスに どの よ うな影響を与 えるかをみてみたい。 も し,子 どもの社会化 (共同化)に と って,母子関係 (-対偶関係)が決定 的 な役割を果す な らは, この子 ども には,社会性 の欠落 してい る部分が 増 え ると思われ るか らであ る。 これ が本論の第一 の 目的である。 さ ら に 筆 者 は, こ れ ま で の 報

告 1,ll-16)で,AnorexiaNervosaの症

例11・12)を イ メージの コ ミュニケー シ ョン能 力 か らみ て重 度,夜 尿 の症 例13・14)を中皮,心 因性頭痛 の症例1・15)を軽度 とし, さらに これ らの症例 と比較す るために ノーマルな 児童 について も報告 した16)が,その中で欠けてい たのは,母が子 どものイ メージ世界を どの よ うに 推測 ・判断 ・共感す るかの方 向のみで,逆方 向, 子 どもが母 のイ メージ世界を どの よ うに推測 ・判 断 ・共感す るかについてみ る とい うことであ った。 この方 向について もみてみたい とい うのが本論 の 2番 目の 目的 であ る。

Ⅰ.症例

症例 :

S・

A。1

4

歳 の男児。 主訴 :夜尿が毎晩 ある。ないのは年 に

2,3

日。 爪 かみがあ る。顔 の色が青 い。 家族構成 :父(42歳)前妻 との問 に15歳 になる娘 があ る

。S・

A

の姉 になる。現在別居 中。父 と現在 の継母 との間 に5歳 の娘が い る。 したが って現在 の家族 は父 ・母 (継母)・姉 ・本人 ・妹の5人。 現症歴 :身体面 には異常 な し。 これ まで薬物療 汰,暗示療法,漢方薬療法 な ど行 ったが効果が な か った

。1

回寝た ら目が覚め ない

。S・

Aに 3

つ の 願 いを きいてみ る と①夜尿 が治 る ② す ぐ起 き る こ と ③ 早 寝早 起 きがで きる よ うにな る こ ととい う。 自分の願 い とい うよ りいつ も親 に言わ れてい ることだ ろ う。 生育歴 :小1の

3

学期 に姉 とともに引 き取 られ た。 それ以前 の事 はわか らない。実母 は家 を出て いたので恐 らく放 って置 かれたのではないか と思 うとの こと。実母 は 自分の事 は奇麗 に して も子 ど もの世話 は しない人であった らしい。引 き取 った とき既 に夜尿はあ った。小

4

の頃 までは寒 い と昼 間 ももらしていた。恥ず か しい とい う意識 はない。

(5)

大人 しいが依固地 な ところがある。急 に身体 に触 わ るとびっくりす る。お風 呂で髪 にお湯をかけた らびっくりしていた。水が怖 く,暗い所が怖かっ た。成績は普通で,中 よ り少 し下 との こと。筆者 が本人について もった第一印象は,いつ も鳩が豆 鉄砲を くらった よ うな顔 を しているとい うことだ った。 また, ソワソワして落ち着 きがない。話 は よ くして くれ るが, 自分の話 にのめ り込み,空想 がふ くらんで時 々,筆者 に分か らな くなって しま うことがあった。本人にいつ頃か ら記憶があるか きいてみると,小

2

の頃以降 しか憶 えていない と い う。 (しか し,後になって,それより少 し前のこと も思い出した。それによると,今の母親のところに来 る少 し前に他の女の人に預けられたことがあったとい う。これは実母のことなのだろうか? 実母のことは 何 も憶えていないとい う。筆者はむ しろ思い出した く ないのではないかと思った。) 現在の母は とて も好 きだ とい う。排尿については,小2の頃,授業中 に も漏 らした ことがあ った とい う。50分我慢で き る ようになったのは小学校4, 5年の頃か らだ と い う。 K県か ら小 2の時引 っ越 した。友人に臭い とい ってい じめ られ泣 くことがあ った とい う。喧 嘩は避け るように している。疲れ易い。人の事が あ ま り気にな らない とい う。知 らない人でも話せ る (このことからS ・Aのアタッチメント能力が発達 していないことが予想される)。人の考 えている事が 分か らない。母の意見では,忘れん坊であ り,夜 尿 に限 らず基本的生活習慣がついていない。 ポー カーフェイスで しれ っとして嘘をつ くので母は余 計腹立た しい とい う。 心理 テス トの結果 :

PF

スタデ ィの結果,内罰, 無罰が ともに低 く,外罰は逆 に

7

3%(

平均より

3

0

%

高い)と極度に高い。これは外か ら見た印象 と違 っ ている。 また, 自己防衛が強 く,要求への固執 が 低 い ことか ら

,S・

A

の外 か らみた大人 しさは防衛 の結果 と思われ る。また

S・

A

の しれ っとした懐 向 は この要求固執 の低 さか ら説 明で きるよ うに思わ れ る。筆者は

S・

A

に面接 していて,なにか水に漂 う浮草 と対面 しているよ うな手 ごた えのなさをか な り長い間感 じ続 けた。TATのス トー リーは,_初 めついていけるのだが,途中か ら話が空想にのめ り込 んで,筆者はついていけな くなった。 治療 について :初期の母子関係の詳細 は不明だ が

,S・

A

には他人に関心を もち,他人の気持ちを 理解 し,適切な行動を とってい くとい う対人関係 の能力 が十分 には発達 していない よ うに思わ れ る。したが って,さしあた って

ほS・

A

の夜尿の原 因を上述の心理困+習慣形成 の不全 と考 え

,S・

A

の現在の状態の原因を母親 とともに追求 し, テス トや面接 な どの様 々なデ ータか ら得 られた

S・

A

の内面世界のイメージを母親 に呈示す ることにし た。 この よ うな母へのカウンセ リングに加 えて,

S・

A

本 人 に対 して ほ トー ク ン ・エ コ ノ ミ一 法13・14・17・18)を使 った.トークンにはシールを使い,

S・

A

自身の作 った カレンダーに,夜尿のなか った 日にはシールを貼 り,このシールが一定の枚数(10 秩)潜 った ら報酬(reward)と交換 とい うことにし た。 この結果,開始後

3

週間で

5

日連続 してない 日がでた。 さらに2ケ月後 には 1カ月の うち50% ない 日があった。 3ケ月後 までに

%∼

%ない 日が 続 き

, 4

ケ月後 には

7

0%

ない 日があ り

, 5

ケ月後 には80%に達 した.その後, このあた りのパーセ ンテージを多少変動 し,開始後一年 の時点ではあ る日の方が

2, 3

日とい う状態になった。夜尿の ある 日について も時間的には明け方近 く(6時頃) であ り,量的に もパ ンツが少 し濡れ るぐらいに減 っている。 ただ し,母親 は依然 として

,S・

A

の対人関係の 可笑 しさ,感情音痴振 りを心配 してお り,本人 自 身へのインテンシブな精神療法を希望 している。

.

母 子 の ロール シ ャ ッ- 反 応 母子の ロールシ ャッ-反応 について考察す るた めの原資料 として プ ロ トコルをそ の まま記載 し た。 それぞれのカー ドについて,本人の反応,母親 の反応 の順 に示 した。母の反応 については ≪M》 で示 した。 自由反応段階については(Per.),質疑 段階については(Inq.)と略記 した。領域は クロッ パーら(Klopfer&Davidson)19)に従い ( )内に 記 してあるo p-ルシ ャツ- ・テス ト (以下 ロ・テ ス トと略記)の施行 日時は

S・

A

(昭和

5

7

2

1

0

日),母親 (昭和

5

7

年4月

2

7

日)である。

-2

(6)

7-〔カー ド

Ⅰ〕

・t,:; ∴ 十 (丑 (per.)10′′< 人が羽をつけて飛んでいるよ ラ.(In°.)羽 (D2)背中 (D6), これ 目 (d5), これ 足(D 3)。 こ うや って飛 んでいる (動作でしめす)0 W M± H ② (per.)怖そ うな人の顔。(Inq.)これ髪 (D5), これ ヒゲ, これ 目, ロ, これ鬼の ツノ(d。)。鬼に 人が と り患 いていて変 な顔になっている。 W F± (H) ③ (per.)両方か らひっは られている人。(Inq.) ここが真申で, ここで引 きさかれている。足は も ともと分かれている. 1′15〝 W M手 H くM) ① (per.)10′′< 蛾。(Inq.)切れた とこ羽のか んじ。上の こうい うとこなど。(どんな

?)

大 きい, 気持ちの悪 い蛾,鱗粉 (dd)が舞 っている。

W mF A

② (per.)虫みたい。 甲虫。(Inq.)触角 (d3)が ある。(どんな?)元気そ うな, しっか りした甲虫。

3

0

"

d

r F

S

Ad

〔カー ド

① (per.)

3〝

<

人が手を合わせている。何か の風習みたい。(Inq.)これ2人で,どこかの国のあ いさつみたいに手を合わせている。W M± H ② (per.)鏡 に向 ってお じぎしているみた い。 (Inq.)ここが半分,頭 (D 2)が こ うおじぎしてい る。 こっち (右)が本物で こっち (左)が鏡 に映 っ ている。55〝 W FK±,M H くM) ① (per.)15′′< 口の よ うなかんじ。パ ッと見 た ら。(Inq.)赤い色 と口唇 のかん じ。色が形 にオー バーラップした。

W,

S FC± Hd

(参 (per.)ピェ ロが手で押 えている。手を合わせ てせ っせ っせを している。(Inq.)だぶついた服,頭 (D2)は トル コ帽のかん じ。身体 に動 きがあ る。 1′20〝

W M+ H,

Cg

〔カー ド

(丑(Per

.

)

5"

<

アレッ,ガイ コツみたい。(In°.) 身体,辛,お し り,火の玉。(どんな?)変形 した ガイコツで, -- ト型みたいに,真申がへ っこん でいる(S)。足がない。 W,S F芋

At

②(Per・)何かの怪物、がちぎられたみたい。(Inq.) T.Ⅴ.にでて くる変な怪物。これ合わせた ら同 じよ うになる。足がな くて, ここ戦車,辛(D 3)。車輪

(

D

s)がある。

W,

S Fm

A

③ (Per.)ケンカを とめてい るよ うなかん じ。 (Inq.)ここで分かれていて, この2人がたた きあ っているとこに,小 さいのが飛 んで きて,やめろ と引 き離 している。ケソカして るの見てて, ここ に血がでているので,宇宙か ら止めに来た。 これ 光線 (Dl), これ燃や された t'ころ (D2)050′′ W M芋,m H

,

Blood P くM) (∋ (Per.)

5〝

これ も黒人が引 っは り合いを しているかんじ。(Inq,)賛 肉のないかんじ,女の人 である。 これ頭(d2),これ身体 (D6),足(D5),管 中 (D6), シャープなかん じ。 W M± H P ② (Per.)骨盤 (人間の骨)(D3)0(Inq.)イメー ジ として骸骨の標本のかん じ。赤いのは何 もイメ ージ としてでて こなかった

. 1′

D F± At

〔カー ド

Ⅴ〕

(∋ (Per.)

5′

<

大男。(Inq.)これ足(D 2)下か ら見ている様子。 これ手(d.), これ頭(d2), ここ らへん身体,いはっている。 W M± H ② (per.)大木。(Inq.)これ木の幹, この足みた

(7)

いの (D2)枝。 これ (dl)ヤナギ とかがでている変 わ った木。 W F±

P

l (勤(per.)上か ら落ちて木が其二つに分かれてい る。その上 に大男が乗 っている。(Inq.)は じめに大 男が上か ら

ちて きて さけた。大男が落ちてきた ために木 (

Dl

)

がおれた。55′′ W M ±,Fm H,Pl ≪M》 (》 (per.)

5′

< 毛

皮 を拡げては した よ うなか ん じ。(Inq

.

)モコモコ柔

らかい。 しなやかなかん じ,ケモ ノ

のような足(

D2

)

,

尻尾(Dl),足,顔(d2) のかんじ。 W Fc± Aobj ② (per.)

動物の後姿に尻尾

あ って立 っている よ う。(In

q

.

)大きいオラン

ンか ゴ リラが後 向いて立

っている。毛の

1′ W Fc± A 〔カー ド

Ⅴ〕

E:

∃ ①(Per・)

5

<

チ ョウみたい。(.Inq・)紋 白蝶, これ(dl)後 について るの,花 に とまっている。羽 (Dl)が こ う下 になっている。 W FM± A P ② (per.)なんかぶつ けて,変 な形 にな った。 (Inq.)両方か ら来て,粘土みたいの きて, は じめ はちゃん としていたが,ぶつけた時 こんな形 に ぐ に ゃっとなった。 W mF Obj ③(per.)合わ さっていたのがちぎれそ う。(Inq.) は じめ, こことここくっついていたのが,何かで ・iッと分かれて,上下が)(と分かれた。40〝

W

mF Obj ≪M》 (》 (per.)

3

<

これは蝶 々が羽を拡げた よ う になって,上 に向って飛 んでいるよ う。(Inq.)足 (dl),級,尻尾(d2)。 アゲ-みたいに2本 に分か れている。留 ってるん じゃな くて, スー ツと気持 ち よ く上 に昇 っている

。 1′ W

FM±

A P

〔カー ドⅥ〕 ①(Per

.

)

1

0

〃< ミサイル。(Inq.)しぶ きみたい のほ砂煙,下に向 っている。 W Fmj: Obj ② (Per.)<戦車が川 に映 っている。(Inq.)前の方 に進 んでいる戦車。砲台, これ(D5)草みたいのあ る。(上)本物 の戦車,(下)映 っているもの。 W FK+,Fm Tr,Pl ③(Per.)< 誰かが投げた石が鏡 にあた った。 (Inq.)正面か ら投げて,上(D5)にあた ってか ら, 下に(Dl)きて,下の方が大 きく破れた。上で穴が あいて,下 に落ちた.50′′ W FK耳 Hole ≪M》 ① (Per.)

1

0

<

ムササ ビをひっ くり返 した よ う。飛 んで るみたい。(Inq.)足,辛,皮の毛 の とこ, 天井向いて飛 んでいる。背中の辺濃 い。ふわ っと 飛んで きて飛 びついた よ う。 ここ2つに分かれて いるの皮

。 1′

W FM

±

,

Fc A

〔カー ドVIl〕 G)(Per

.

)

1

0

<

鳥が兎の耳にかぶ りついてい る。(Inq.)これ,へんな新型 の名 も分か らない鳥が 兎 にかぶ りついて食べ る。 肉食, タカか ワシ,羽 (d2),身体(D。-d2),足,耳,顔(D2),草 ムラ(DIX

.

l

O

(卦 (Per.)狼が 口を開いている。(Inq.)恐犬病 に かか った よ うな狼がいる。 目(dl),ロ (S),身体 (Dl),こんな大 きい ロだか ら兎 とかいっぺんに呑 み こむ。40′′ D FM芋 A ≪M》 (》 (Per.)

1

0

<

(は じめて手 に とる)兎がひ っ くり返 って (逆立ちして)踊 っている (透かして みる)0(Inq.)女の子 ? そんなかん じで もない。 ここのかん じで兎,足(d2)がはわん と柔 らか くて - 2

(8)

9-兎 の よ うなかん じ

。5

0

D FM±,Fc A 〔カー ド

V

ul〕 @

(

》 (

Pe

r.)5′′< 変 な魚が光線 をだ して うち合 っている。下に町が見 えて,そ こに行 っている。 (Inq.)こことここ(Dl)同 じの。人間みたいな, 魚みたいな もの。 こことここ(D3)光線銃 うってい る。 2人 は町か ら出て遊 んでいる。光線銃発射 し て盲滅法 に うっている。

W M

±

H

,

Ob

j

(

pe

r

.

)

引 っは って紙を切 っているよ う。(Inq.) これ紙 が貼 って あ って敵 が こない よ うに貼 った が,そ こを破 って しまった。 こっちの町 (左)の方 が強か った。 2人で闘 っていて,紙を破れば向 う の町に行 け ると思 った

。4

5

W F± Ob

j

(M) ①

(

Pe

r

.

)

5〝< 舟 の帆か ヨッ トの よ う。(Inq.) ホンコソの ジも ック.帆をは って ス- ツとい くよ う。奇麗 な舟で はな く,人間が住 んでい るかん じ。

(

参(

Pe

r.)小鳥, インコ,色が奇麗 だか らO(In°.) インコがっかまって留 っている。

D FC± A

(

卦(

Pe

r.)-② イモ リ(トカゲの大 きいの).(In°.) 手 と足,頭 の三角 にな った他虫類。 D F± A P 〔カー ド

Ⅹ〕

(

丑 (

pe

r

.

)

10′′< 怪獣 が復讐 に きて人や天使が バ ラバ ラにな ってい る。(Inq.)目(D2)か ら炎をだ して怒 りに燃 えている。 これ天使(Dl)羽,辛,下 に町があ る(D6)。 ひ とかた ま りの人間がいて逃 げ てい く。それで怒 って炎が頭のて っぺんまで きた。 (町?)ホテル, 自動車,道が広 くて歩 ける。一分 ぐらいで駅 か ら家 までつ ける。 W FM±,m (H),Arch,Fire ②

(

Pe

r

.

)

真申か ら半分に されているよ うなかん じ。(Inq.)真申が ここ(D8)で こ うい う顔 みたい。 いつの間にか ここで光線銃 か何かで真二つ に分か れて会 えな く (会わなく?)な って しま う。1′ W

m

Obj くadditional〉 復讐 の怪物 が2匹 (①+additional)い る。 向 う に も一 匹い る。真申で合体す る。 向 うのは ここ怪 物 の鼻(S), ここ目(S), も うひ とつの怪物 の角。

W M,

FK (

H)

(M) ①

(

pe

r

.

)2

0

伊勢 エ ビ。(Inq.)色 と形。 こ こ角 (D 2), ギザギザ2本,色のかん じ。 D

FC

± A ②

(

pe

r.)森,木があ って拡が りが ある。(Inq.) 森林,大 きい木 とその上が太陽(D,S)。色 と段 々で 全体的 に空。 こじつけみたいだけ ど, ピンクの と こ(D6)が クル ッとな ってい るのが暮夜 の固 りみた い。 1′10〝 W F± Pl 〔カー ド

Ⅹ〕

(

》 (

pe

r

.

)5

′′< 山に登 ってい る人。 山の上で ケンカ してい る(D3)。 山を崩 そ うとしてい る人。 (内側からくずれてい く。)(Inq.)これ(D13)山に登 ってい る人。 ここ(D16)崖みたいになってい る。 死火山の山の崖,中に行 く程広 くな ってい る。 4 人で登 っている。 これは(D 6)崩 そ うとしてい る。 ②

(

pe

r.)ミサイルが飛 んで きてい る(D 13)0(Inq.) ここ (Dl)で爆発 されたので両方 か らだ して (で て?)や っつ け よ うとしてい る。(2つの小さいのと 小さいのが争 っている。 ライバル同士。)は じめ左を うって,次 に右 のがや られ る。

D M

7

:

,

Fm H,

Ob

j

(

pe

r.)向 うの方 に同 じよ うなのがみ える (D, S)0(Inq.)近 くにあるの と,遠 くにあ るもの (① + ②を小さくしたもの)0

5

0

D FK

±

Obj

(M)

(

∋ (

p

e

r.)10〝< 標本 (色んなものがひとつのと こに置いてある)0(Inq.)エ ビの頭 (目・形が似てる)

(

D

3),竜の落 とし子 (D 9)0 40〝 W F±

Ob

j

(9)

S・

A

mos

tl

i

ke

dca

r

d

に Ⅹ カ ー ドを選 びそ の理 由 として 「複雑 だ し, い ろんな絵 がつ いてい る」 とのべ

,mo

s

tdi

s

l

i

ke

dc

ar

d

にⅤ カー ドを選 びその理 由は 「単純 す ぎる」 か らとしてい る。 こ れ は母 の

mos

tdi

s

l

i

ke

dc

ar

d

が Ⅰカー ドで あ り, そ の理 由が 「気持 ち悪 い」 とい うの と好対照 を な してい る。つ ま、り

,S・

A

は好 き嫌 いをその カー ド が お こさせ る感情 で は な く,複雑,単純 とい う形 状 に よって選 んでい るのであ る。 さらに この ことを証 明す るかの ご と く

,S・

A

は 母親 カー ド,ⅠⅠ(ここ日で, ここロ,似てる), 自己 カ ー ド,ⅥⅠ(この白い とこ, こ う見 るとボクの顔の形 に似ている。あ と肩幅が似ている)を選 んで い るが, ( ) 内 に示 した よ うに外的 な形 のみ で選択 して い る。 一方母 は,父親 カー ド

,I

X(

分か らない人), 自己 カー ド

,

ⅠⅠ(明かるいがいいかげん)

,S・

A

カ ー ド

,

Ⅰ(軟弱な くせにすば しっこい)と選 んで い る。 こ こで も

S・

A

の選 択 は

1

4

歳 とい う年 齢 に も拘 ら ず,母 に比較す る と極 めて, 内面化 の少 ない,外 的条件 のみで決定 され て い る こ とが分 か る。 ここ において

,S・

A

の カー ド選択 か らだ けで も

S・

A

においては他人 の内面 (-感情)を理解 す る こ とが むず か し く, ひ るが え って, 自分 自身 の感情 も理 解 しに くい とい う構 造 が あ るので はないか とい う. こ とを推測 させ る。

S・

A

の イ メー ジ内容 の特徴 ここで

S・

A

の イ メー ジの特 徴 を ひ ろ って み る と, まず 目につ くのは(∋ひ っは られて真 申か らさ け て い る イ メー ジが とて も多 い とい うこ とで あ る。 「両方 か ら引 っは られ て い る人 (カー ドⅠ)」, 「さけた ガ イ コ ツ(ⅠⅠⅠ)」

,

「怪 物 が ち ぎれ て い る (ⅠⅠⅠ)」

,

「其二 つ に さけた木(ⅠⅤ)」

,

「合 わ さって い た の が離 れ そ う, ち ぎれ そ う(Ⅴ)」

,

「破 れ た 紙 (†Ⅰll)」

,

「バ ラバ ラにな った人 や天使(ⅠⅩ)」

,

「巽 中 か ら半分 に され て会 えな くな った (ⅠⅩ)」な どや た らに多 い。筆者 は この イ メージの中 に

S・

A

の実母 との分離 を強 く感 じた。 筆者 がそれを母親 に伝 え る と,母親 (-継母)も合 点が い くとの ことで あ っ た。 次 にあげ られ るの は,②何 かが鏡 に映 って い る とい うイ メージ (-対鏡反応)が多 い とい うこ とで あ る (これ は同一性危機 の指標 にな る とされ て い る20・21)が詳 しくは後述す る)。例 えば 「鏡 に向 ってお じ ぎを して い る (ⅠⅠ)」

,

「戦 車 が 川 に映 って い る (ⅤⅠ)」

,

「鏡(ⅤⅠ)」

,

「向 うの方 に同 じよ うなのが見 え る(Ⅹ)」な どで あ る。 ここにはS・Aが 自分 とは 何 かが分 か らず に,一生懸命 それ を鏡 の中 に探 し て い る様 が連 想 され る. 同一 の ものを求 め る, そ れ故 に鏡 (同一の ものを うつす もの)はS・Aに とっ て強 く意識 され るのでは なか ろ うか ? ち なみ に

S・

A

が治療 開始後

4

ケ月 目にみ た 夢 は次 の よ う な もので あ った。 --ある一人の少年が町を歩いているとき,ボクに会 って,その子が迷子になっていたので家に連れて帰 っ た。お腹 もペ コペ コだってい うか ら,家に連れて帰っ た。次の 日にや っとその子の正体が分 った。 5, 6歳 の子,男の子(5,6歳はまさにS・Aが継母にひきと られた年である一引用老)魔法が使 えて,むやみに使 うと身体の中のエネルギーが使 えな くなる。 その子 といて,熊 に襲われそ うになった とき,その 子が魔法を使 って熊をたお して しまった。 ボクがポカーンとしていると,いっしょに帰ろ うと い うところで 目が覚めた。・-= これ は ま'こ とに興 味深 い夢 で あ る

。 S・

A

5

, 6歳 の頃 の 自己 に出会 い, これ か ら何処 へ行 こ う として い るのか ? そ して, この魔法 を使 う子 と は誰 なのだ ろ うか (もしか した らそれは治療者かも しれない 22))0 さ らに

, S・

A

の イ メー ジに特 徴 的 なの は (卦喧 嘩 (-戦争)を して い るイ メ丁ジで あ る。 「ケ1/カ を止 め てい る(ⅠⅠⅠ)」

,

「魚 が光線銃 をだ して うち合 って い る (Vn)」

,

「山の上 で ケンカ(Ⅹ)

「小 さい の と小 さい のが争 ってい る(Ⅹ)」な どで あ る。加 えて, これ は ③ とも関連 して い るが,⑥ 攻 撃的 な イ メー ジが 多 い こ とも 目立 つ。 「怖 そ うな人 の顔 (Ⅰ)」

,

「大 男が落 ちて きたた め に さけた木(ⅠⅤ)」, 「ぶ っつ けて変 な形 にな った(Ⅴ)」

,

「ミサ イル, 戦争 ,誰 か が投 げた もの(ⅤⅠ)」

,

「鳥 が兎 の 目にか ぶ りつ い て い る,狼 が 口を 開 い て 兎 を呑 み込 む (VII)」

,

「光 線 銃 ,紙 を破 る (VIII)」

,

「復 讐 の怪 物 (ⅠⅩ)」

,

「死 火 山, ミサ イル (Ⅹ)」な どがそ れで あ る。 これ は

PF

ス タデ ィにみ られ た外 罰傾 向 の極 端 な強 さ とも一 致 してい る こ とか らみ て,外 見 と は裏腹 に

,S・

A

の中 には抑制 され た攻 撃性 がか な り強 くあ る こ とが推 測 され る。 - 3

(10)

1-M F1-M m k K FK F Fc c C′ FC CF C Fig.4 母子のサイコグラム 以上 あげた ① 裂 けた イ メージ(分離不安)②対鏡 反応 (自我同一性の未確立,ナルシシズム)③ 喧嘩の イメージ (去勢不安)⑥攻撃的 なイメージ (抑圧さ れた攻撃性)とい う

4

つ の軸 が

,S・

A

の問題 を考 えてい くさいの重要 な ポ イ ン トに な る と思 わ れ る。

.

母子それぞれの ロ ・テス ト反応か

らみた母子差 とイメージの母子 イ

ン′ク ラ ク シ ョン′

A.

サ イ コグ ラムか らみた母子差 Fig.4に母子 のサ イ コグ ラムを示 した。 また, Tablelに母子 の量的比率を示 してある。 ( )内 がS・Aの もので あ る。Fig.4か らみ て とれ るの は,(丑S・Aが極度 の内向型で ある とい う決定的 な 違 いであ る。つ ま り

,S・

A

は内面的 なイメージが とて も豊 かであ るのに対 して,母親 は内面だけで な く外的 な面 に対 して十分 に反応 していけ る柔軟 な タイプであ る とい うことで ある。次 にあげ られ る特徴 は ②

S・

A

M

反応 が

9

個 と圧倒 的 に多 い とい うことであ る。 これ に対 して母親 の

M

反応 は わずかに

3

個で あ る。また

,S・

A

H%

4

6

%

で あ る。M反応 の多 きは 「他 の人 とよい共感的な関 係 を もち うる能力」23)とされてい る。M反応 の多 さ か らみて基 本的 に

S・

A

は対人的 に適応 してい け る能力を もっている と考 え られ る。しか し

,S・

A

M

反応 の うち,形態水準が ±に判定 さ れ た の は9個 の うち4個 で あ との5個 は 7:に判定 されたのであ る. この 事の反 応 についてそのイメージをみ ると,「両方 か らひ っぼ られ (引 き裂かれてい る)人 (Ⅰ)」

,

「ケンカを とめてい る(ⅠⅠⅠ)」

,

「人 間みた いな魚みたいなのが光線銃 を うち 合 っている (Ⅷ )」

,

「山の上 で ケンカ して い る人(Ⅹ)」

,

「2人 の小 さいの と小 さい のが争 ってい る (Ⅹ)」 と 「争 い」の イメ ージが全てである。この ことはS・Aの共 感性 の良 さ (とみえるもの)が, その内容 としては人間の喧嘩場面への敏感 さにす ぎないのではないか とい うことを予想 さ せ るのであ る。(恐 らく父 と離婚 した実母 の喧嘩の場面をS・Aは何度 となく目撃 し, 小さくおびえていたのではないかと思われる。ちなみ に, この実母はS・Aの世話を全 くしない人だ ったよ うである。)残 りの4個 のM反応 (±の反応)につ い ては 「羽 をつけて飛 んでい る人 (Ⅰ)」

,

「挨拶 して い る人 (ⅠⅠ)」

,

「大男 (ⅠⅤ)×2」 とい うあ りきた り の反応 であ る。 したが って

,S・

A

の共感能力 は, その イメージが 「争 い」 であ る場合 かな り自己防 衛的 な敏感 さ- と変貌 を とげてい るよ うに思われ る。 さらに,③

S・

A

の反応 は,母 と比べて圧倒 的 に m 反 応 が 多 い とい うこ とが あ げ られ るだ ろ う (m-5,additionalも含めるとなん と11個)0m が 「緊 張 と葛 藤 を示 す」19)指 標 で あ る とす る な ら ば,② の ところでのべた よ うに

,S・

A

には非常 に 対人的緊張 と対人的葛藤 の多 い ところがあ る とい う予想 は さらに確 か らし く思われ る

。m

反応 にお いて も形態水準が±の もの2個,non・Fが3個 と, 形態水準 の低 い ものが多い ことが 目立つが, それ らの反応 の イメージ内容はいずれ も,「ちぎ られた 怪 物 (ⅠⅠⅠ)」

,

「ぶ っつ け て 変 な形 に な った もの (Ⅴ)」

,

「ち ぎれそ う(ⅤⅠ)」

,

「ミサ イル(ⅤⅠ)」

,

「半 分 に されている(ⅠⅩ)」とい った よ うに引 き裂 かれ た よ うな (去勢的な)イメージが多 い。 この よ うに 対人的緊張が高 く,対人的蔦藤 が強 いのだか ら, M が多 くさらに M が FM の数 よ り多 い こ とは決 して額面 ど うりには受 け とれ ない こと,す なわ ち

S・

A

の防衛 の高 さを予想 させ る。

(11)

Tablel まとめの蓑 (SummaryScoringTable) R (totalresponse) (1276) W :D (21:4ll:5) FC+CF+C:Fc+C+C′ (2:20:0) Rej(Rej/Fail) (

0

0) W% (6851) FM :M (4:14:30) TT (totaltime) (552500′

)

Dd% (60) F%/∑F% (1239//8948) RT (AV.) 3(22.04

)

S% (

0

0) F十%/∑F十%/R十% (5400//8143//7368) RIT (AV.) (16.3.81

)

W :M (21:1ll:30) A% (188) RIT (A寸.N.C) (3.8〝8)〝 .B ∑C:M (0:11:30) At% (68) RIT (AV.C.C)- (9.5.36

′′

)

Fc+C+二FM十mC′ (0:l2.5:6l.5) P(%) (3(2(188%)%)) MostDeCalayerd& Tid me

(Ⅰ

.ⅤⅠ

Ⅹ..

I2.0

Ⅹ.′′

l

o

)

Vur+IX+X/R (2357%)% ContentRange (77) MostDislikedCard (Ⅴ)Ⅰ FC:CF+C (2:00:0) DeterminantRange (65) *上段 母 下段 ( )内子

⑥ S・Aには FK反応 が 4個 (additionalも含め ると5個)あ り,それは,鏡や水に映 っている姿あ るいは こち ら側 と同 じ風景が向 うにも存在 してい る とい う反応である。 この よ うに鏡や水に映 った 姿 をみ ることや, 自分の見た一つの対象世界を遠 ざけてみ る見方の中に も,S・Aの特徴である対象 との間に距離を保つ防衛方法が予想 され るのであ る。ちなみにクロッパ ーら19)はFK を「その人が 自 分の不安 に対 して理解 し耐 えてい こ うと努力 して い ることを示す」とのべている。また細木21)は上述 のFK反応 (Vista)の多 きを,個体の同一性危機 とのつなが りを もつ として,思春期危機 との関連 で考察 している。

B.

量的比率か らみた母子差 Tablelか らい くつかの特徴をひろってみ る。 まず,(む母,S・A ともにW%の高 さがあげ られ る (母-65%,S・A-81%)が, これは母において

W

の形態水準が比較的良好で 自然であるのに反 し て,S・Aにあっては,その形態水準が低 い ことが 目立つ。S・AのW反応 は形態水準の低 い漠然 とし た未分化 な ものにな って しまっている。 これは先 に も触れた よ うに

,

「争 い」のイメージにおいて著 る しい。 次に②母 のW :Mは11:3で (W >2M)ある。 これは 「要求水準 の高 さ」19)を表わ している と考 え られ るが,筆者が母親 と面接 した印象では, この 要求水準 の高 さが, S・Aの夜尿 を治 して あげ よ ラ,S・Aをなん とか理解 してい こ うとい う良い方 向に作用 しているのではないか と感 じられた。 と ころで,母親 はFig.4よ り両 向的傾 向を もち,内 面への反応 と外界への反応 とバ ランスが とれてい る。 さらに,Fcを「個人がその愛情,所属,満足 すべ き接触 を求め る欲 求 を処理 す る方法」19)であ り 「他人お よび 自身の,愛情欲求の受容 と認知を 示す」19)とす るな らば,先 にのべた要求水準の高 さ は,母 のバ ランスの とれた性向や愛情の質 の良 さ と相侯 って,S・Aへの理解を高め る一助 とな りえ ているのではないか と考 えられ る。 ちなみに筆者 紘, S・Aが この継母 に引 き取 られ る ことに よっ て,実母 とひき続 き暮 しているよ りもず っと艮か ったのではないか と感 じた。特 に下の子 (妹)が生 まれてか ら,母親 は改めて小 さな子供 の実態を知 り

,S・

A

への理解 が不足 していることを実感 して いった よ うであ る。母は,夜尿が

S・

A

の本質的 な 問題ではな く, S・Aの対人的緊張 と葛藤 の強 さ, その結果 としての感情音痴や,対人的 とんちんか ん さこそが本質的問題であることを よ く理解 して くれたのであ った。 さらに,(

卦S・

A

におけるP% (8%)は極 めて - 3

(12)

3-低 し土と思われ る。筆者 が

S・

A

に面接 して強 く感 じ たのはいわ ゆ る 「す っとん き ょうな」態度であ る が, それは単 に対人的緊張や葛藤 の結果 としての みでな く

,S・

A

自身が一般的 な生活習慣 を身につ けていない ことに も大 いに関連 している と考 え ら れ る

。S・

A

はいわば常識 が欠 けているのである。 ① 最後 にS・Aの形 態水準 の低 さにつ いて触 れ てお きた い

。S・

A

F十%-4

0

%,∑F十%-4

3

%

,良+%-3

8%

で あ る。 これ はS・Aが形態を き ちん とみれ ない とい うことよ りも

,S・

A

の空想癖 のためであ ろ う。確 かに

S・

A

の反応 は,最後 に空 想 にのめ り込 むため につ いてい きに くい

。S・

A

は この空想 の中で父 と実母 の 「争 い」 を再現 し,皮 復 してい るよ うに思われ る。 まさに反復強迫24)で あ る。これ もまた

,S・

A

独特 の防衛であろ う。特 に

,S・

A

の形態 水準 は

,S・

A

が攻撃的 なイメー ジを ロ ・カー ドに投影す るさい,他 に もまして低 くな る と思われ る。

Ⅴ.

ロ ・テス ト反応 の推測能力,判断

能力,共感能力について

これ まで母子 の反応 その もの と, その差,共通 性 につ いてみて きた。 しか し,母子 の ロ ・テス ト の差をみ るだけでは,確 かに母子 をそれぞれ別個 の存在 として独立 させた上 で,個 人 としての ロ ・ テス ト反応 をみた場合 よ りは幾分進歩 している と はいえ,イ メージの母子 インタラクシ ョン(相互作 用)の測面 にまで立 ち入 る視点を得 てはいない。イ メージの母子 イ ンタ ラクシ ョンにつ いて考察す る ためにはい ま一歩,歩を進 め子 どもの (また母の) イメージ世界 を母 (または子 ども)が ど う見てい る か とい うところまでいかなければな らない。 その よ うな視点を得 て初 めてイ メージの側面か らみた 母子 の相互作用 が見 えて くる と思われ る。 Table2推測の3段階の測定内容 1 fre(er推 測)esponse 両者の資質 (個性)の類似性 ii suggestion 他者 (子 ども)の反応パター (暗示.ヒン ト) ソの推測 (判断)能力 iii explanation 他者 (子 ども)の反応への共 筆者 は母親 (または子 ども)が,子 ども (または 母親)を どれ くらい理解 しているかをみ るために, 子 ども (または母)の ロ・テス ト反応 を推測 して も らった。したが って推測 は母 か ら子 どもの推測(以 下,母一子 と略記する)と子 か ら母 の推測 (以下,千 -母 と略記) とい う

2

つ の方 向が考 え られ る。 推測 にい くつかの段階 を も うけた (Table2)0 i)何 もヒン トを与 えず に相手の反応 を 自由に推 測 して もら う段階 (freeresponse王の段階), ii)皮 応 内容 (相手が何をみたか)のみ教 えてその反応領 域,内 容 等 を 説 明 で き るか ど うか を み る段 階 (suggestionの段階),iii)反応 内容 の領域,内容 の 細 かい説 明を してそれが理解 で きるか ど うかをみ る段階(explanationの段階)0 i)-iii)に進 むに つれて,母 (または子 ども)の推測能力 が低 い こと を意味す る。結果 を分か る(+)と分か らない(-) に大別 し, それぞれを また3段階 に分 けて評定 し た。全体 で6段階の評価 になる (Fig.5)。 相手の ロ.テス ト反応が 分かる 分か らない L l l 非常にとても とても やや やや とても 非常にとても Fig.5 推測能力の6段階評価 結果 は

1

〕母一子 の方 向において,+(I,+

,

±)

に評定 された ものが, i段階 目3個 (3/27), ii段 階 目12個(12/27),iii段階 目9個(9/27)であ った。 また - (も ー,=)に分探 され た ものが3個 残 っ た。 この

3

個 は,(

ⅡⅠカー ドの 「ち ぎれた怪物

で母 は 「一寸むず か しい」 とのべた。 また母 は② 「ケンカを止めてい る感 じ (ⅠⅠⅠ)」につ いては 「そ んなに喧嘩 を している とは感 じられ ない」,(卦「ミ サ イル (ⅠⅤ)」につ いては 「人の もの (反応)だか ら分か らない」 と分か らない (共感できない)理 由 をのべ てい る。母 は とくに② の 「ケンカ」 を理解 で きなか った。確 かに

S・

A

の この反応 は筆者 が客 観的 にみて もむず か し く,母が分 か らないのはむ しろ当然 の ことと思われ る

。S・

A

の病理 の板深 さ が予想 され る反応 で もあ る。 次 に〔2〕子-母 の方 向 の推 測 につ いて は,十に評 定 された ものがi段階 目で1個 (1/17), ii段階 目 9個 (9/17),iii段階目5個 (5/17)であ った。一に 分摸 された ものが2個残 った。 この 2個 の反応 は

-3

(13)

4-① 「舟 の帆(VIID」で,その理 由 として Dlの領域 が 余計 だ としてい る

。S・

A

自身 は この領域 を変 な魚 として い る。 また② 「森 (ⅠⅩ)」 とい う反応 を 「な ん とな く分か る」 とい う消極 的肯定 に留 めてい る ので 手に評定 した.(丑につ いては風 を受 けて走 る 舟 の帆,② につ いては拡 が りのあ る森 を連 想 させ るが, この よ うな プ ラスイ メージを共感 で きない ところに も

S・

A

の対人的 な 「うち とけな さ」あ る いは愛情 を十 分 に受 け入 れ られ ない ところが表 現 されて い るので あ ろ うか ? 母一子, 千-母 の推測 の違 いは この手続 き全体 につ いて母子 が もった感 想 の中 に もあ らわ れて い る。母 は この手続へ の感 想 として 「小

2

の時引 き 取 ったO何 で も一人 でや るのが子 どもだ と思 って いた ので大変だ った

。S・

A

に何 か緊張 した ものを 感 じる。それが分 かれ ば

,S・

A

もほ ぐれ て くる と 思 う。(S・Aの気持ちが段々掴めてきて)空恐 ろ しい ものが な くな った.(S・Aの)イ メージが掴 めた」 とのべ てい る。母 はひ き とった時 か ら

,S・

A

の中 にあ る不全 な部 分 に気 づ き,なん とか して

S・

A

を 理解 しよ うと努 めて きた よ うに思わ れ る。 した が って,筆者 の イ メージ推 測 とい う試 み に も積極 的 で

,S・

A

の イ メージが分 か って よか った とのべ た。 これ に対 して

S・

A

は この手続全体 に対 して「一 寸 と分 かんなか った。 お母 さん も (ボクと)同 じも のを見 てい る と思 っ (てい)た。 お母 さんの見 てい る もの分か んない」とい う

。S・

A

は母 が 自分 と同 じイ メー ジを も って い る と信 じて いた よ うで あ る。 そ して, 同 じものを見 てい ない ことが不思議 で な らない とい う様 子 で あ った。 この事実 か ら想 像す るに

,S・

A

は他者一般 も自分 と同 じこ とを考 え て い る と思 って い るの で は な い か ? そ れ 故 に

,S・

A

M

反応 の多 きは決 して共感性 の よさを 反 映 して い るのではな く, 防衛的 に発達 した空想 能 力 の豊富 さにす ぎないのでは なか ろ うか ? ま た,他 人 も自分 と同 じこ とを考 えてい る と信 じて い る とす れ ば,客観的 に存在 して い る生 きた他 人 を理解 す る とい う努力 は なお ざ りに されて い くの で は ないか と思われ る。 Table3に母子間 (母一子,千-母)の各段 階 に お け る推 測 率 を示 した。 数 値 は いず れ も各 段 階 で 一に評 定 された%で あ る。母一子,千-母 とも に似 た よ うな推測率 で あ るが,iiのsuggestion段 階 のみ差 が大 きい (母一子-44%,千-母 -29%)0 これ は子 どもの方 がsuggestion段 階 で は推 測 が 良い ことを示 してい る。筆者 の印象 では, これ は 母 の反応 の方 が理解 しやす い (したがって判断 ・共 Table3 母子間の各段階における推測率 ・ 段 階 母一子の推測率 千-母の推測率 i) fre(er推 測)esponse 89* 94 ii)(暗示.ヒン ト)suggestion _44 29 iii) expl(説ana明)tion ll 12 *単位は% ・数値は各段階で一に評定されたものである。 Table4 母子同質性指標(SMC)の得点スケール ボイン′ト ス ケ - ノレ 5 完全に同じ反応である○ e母,千 :蝶 々が飛んでいるo(カー ドI).g. 4 一致 していないが似ているo e母 :蝶々,千 :蛾 (カ母 :バイオ リソ,千 :.ど.ー ドⅠⅠⅠ) (例 えば2つ とも平 三味線(カー ドⅥ) 凡反応である) 母 :蝿の顔,千 :カマ

キ 1

)

)の顔 (カー ド 3 部分的に一致 しており,一致 している部 チ :ポニーテールの女e母 :女の子が.g.している○2人で話 分が大 きいo (カー ドⅥⅠの子が岩の上に乗っているo)

2 部分的に一致 していていない部分が大 きいoるが,いまだ一致 し e母 :鳥が話 し合 ってい千 :.(カー ドg.でいるoが飛んでいるoを叩いているoその間を蝶々が飛んるoその間を蝶 々2人の人間が太鼓

H

)

1 あるoまった く違 う反応で e母 :鬼が笑っているo千 :象が鼻を くっつけ.(A- Tg.ているoIII)

(14)

5-感 しやすい)反 応 なのだ とい う事実 に よ って い る と思わ れ る。したが って,freeresponseで の推測 は しに くくて も(94%),何 をみた とい うヒン トを 与 え られ た のみ で判 断 しや す くな った の で あ ろ う。さらに,S・Aはそれ程 明確 に理解 で きな くて も 「うん分か った」 と答 えて しま う候 向 もあ った のではないか と考 え られ る。

Ⅴ.

母子反応 同質性

(SMC)か らみた

母子 インタラクシ ョン

先 の報 告1)で,筆 者 は母 子 の も とも との イ メー ジが どれ くらい資質 として似 てい るのかを指標化 して これ を母子 同質性指標 (SMC:Similarity of RorschachResponsesbetweenMotherandChild)

と名づ けた。Table4に示 した よ うに,母子 の ロー ル シ ャ ツ- ・イ メージが完全 に同 じものであれば

5

ポイ ン ト,全 く違 うもので あれば

1

ポイ ソ トと し, 5か ら1の段階 に尺度化 した (Rejectionがあ った場合は0ポイン ト)0 SMC算 出の公式 は次 の よ うにな る16)0 SMC-他者 の各反応 のポイン ト合計(TotalPoint) 他者 の全反応 数(R) ・----・・(1) ところで この(1)の公式 が他者 を基準 に して測 ら れてい る ことに注 目していただ きたい。 ここで他 者 が基準 にな ってい るのは,Aとい う人 とBとい う人 がいた場合,Aのイ メージがBの イメージに 似 てい るか ど うかは,Bの イ メージがAの イメー ジに どれ くらい似 てい るかに よって決 まる とい う 理 由に よる。つ ま り, 自分の イ メージが どれだ け 他者 の イ メージに似 てい るか ど うかは他者 の イメ ージの中 に どれ くらい 自分 と似た イメージがあ る かに よってい る とい うことで あ る。注 これを図式化 す る とFig.6の よ うにな る。(Fig. 6によれば, ここでは自分が他者に似ているとい うこ とは,自分が他者を推測 しやすいことと同義である。) 他人が どれ くらい自分 に似ている 自分が どれ くらい相手 を推測 し

他人が自分に 似ていればい る程相手を推 Fig.6 イメージが似ている (同質である) とい うことの意味 ところで(1)の公式 は,母 が どれ くらい他者(子 ど ち)を推測 しやす いか とい う方 向 と,子 どもが他者 (母親)を どれ くらい推測 しやす いか とい う2つ の方 向が考 え られ る ことか ら,具体 的 には次 の(2) と(3)の公式 に分 け られ る。 SMC (M - C) -子 どもの反応 の各反応 のポ イ ン ト合 計 子 どもの全反応 数(R) ----

-(

2

)

SMC (C-→ M)-母親 の反応 のポイ ン ト合計 母親 の全反応数 (R) --・・-・- (3) (2)のSMC(M - C)は母 が どれ くらい子 どもの 反応 を推測 しやす いか

,(

3

)

のSMC(C- M)は子 どもが どれ くらい母親 の反応 を推 測 しやす いか と い うことであ る。 Table4の スケールに よって,SMC (M - C) とSMC (C- M)を算 出 した結果,SMC (M -C)-1.67,SMC (C- M)-1.94であ った (Fig. 7)。 したが って,SMC(C- M)>SMC(M - C) とい う関係 にな ってい る。 これは子 どもが母親 を 推測 した場合 の方が,母 が子 どもを推測 した場 合 1.67 ≡

≡ ≡∃

・.

Fig.7母子同質性 (SMC)からみた母子関係 * 才 は2着間において黒い線の方がSMC が高いことをあらわしている。 * - はSMC(M-C),SMC(C-M)の方 向をしめしている。 注 他者のイメージが自分のイメージに似ているこ とが自分が他者のイメージを推測 しやすい とい う関 係を図式化す ると次のようになる。

(15)

よ りも推測 し易 い ことを表わ してい る。 この結果 はTable3において(suggestion段階に ついては)子 どもの方 が母 の イ メージを判 断 し易 か った とい う事実 ともよ く合致 している。それ故 に,本論の母子関係 においては,資質 として,千 どもの方が母親 を よ り推測 し易 い構造 があ るとい え る。 この よ うな構 造 の中 に あ ってTable3の explanation段階 に もみ られた よ うに母 の方 の成 積 が よい とい うことは, そ こに,母 の側 の よ り意 識 的で努力 した共感的 な活動 があ ることを確証 し て い るので はなか ろ うか ?

S・

A

は この母 が継 母 であ った ものの,①資質 として母 の ことを よ く 理解す る ことの可能 な状況 (-構造)があ り, さら に加 えて,(卦母親 が

S・

A

を よ りよ く共感 しよ うと して くれ る人であ った とい う幸運 に恵 まれた とい うべ きであろ う

。S・

A

においては確 かに,実母 と の不幸 な母子関係のために(》対人的緊張や葛藤 が 高 く,②実母か ら朕 を きちん として もらえなか っ た とい う,習慣形成上 の弱点があ り, これは共通 して,共 同化 (社会化)の欠落 と呼べ るものであろ う。 これは, は じめの ところで示 した よ うに,個 人的世界の イメージが対偶 (ペア)的関係 (-母子 関係)に よって共 同的世 界の イメージに高め られ なか ったため と考 えて よい。 しか し, この よ うな 欠落があ ったに も拘 らず,ひ とつ には(丑S・Aが資 質 として もってい る共感 的な イ メージの豊 か さに よって, さらには②継母 がみせ て くれた意識的共 感 の努力 に よって,た とえその努力が多少知的 レ ベルの ものに傾 きがちである とはいえ

,S・

A

の適 応 レベルは最悪 の ものに陥 らなか った と考 え られ る。 要 約 習慣 性 (1次的)夜尿 の毎晩続 く14歳 男児 の症例 を報告 した。患児は治療 開始後4ケ月にて約80% 夜尿が な くな り,現在 で はほ とん ど症状が消失 し た。 治療法 として,子 どもには行動療法 の一種で あ るTokenEconomy法 をつ かい,母親- は一般 的 な指導的 カ ウソセ リソグを行 った。 本症例ではその母子関係が継母子 とい う関係 に あ った。患児は6歳 の時 ひきとられた。実母 と父 は離婚 し,父 はその後再婚 したのであ る。実母 は 患児の世話 を全 くしなか った らしい。患児は初期 の母子関係 において十分 なケアを うけていないた めに,(》対人的緊張や葛藤が極めてつ よ く,② ま た,朕 を して もらっていないために生活習慣 に も 不全があ った。 しか し, この よ うな欠落を もちつ つ も,(》患児が資質 として もってい る共感 性の よ さへ通 じる内面的対人 イ メージの豊富 さ (しか し 現時点では単なる空想癖に留っている) と② 継母 が 資質 として もっている共感能力 の よさと意識的 な 育児努力のために, 曲 りな りに も社会生活 を営 ん で これた よ うに思われ る。

上 述 の 見 解 はExchangeRorschachMethod (母子がそれぞれ, ロールシャッ- ・イメージを推測 し判断 し共感することによって,相手に対する理解を 深めるとい う治療法)の プ ロセスの中か ら浮 かびあ が って きた ものであ る。 この他 に も,相手 の ロー ル シ ャ ッ- ・イメージを どれ くらい推測で きるか (推測率)辛

,SMC(

母子のイメージが資質 としてど れ くらい似ているのか,あるいはお互いを推測 しやす いのかの指標)な どをつか って,患児 の母子関係の 特質 が明 らかに された。

ERM (ExchangeRorschachMethod:交換 ロール シャッ-法)は相手 の内面世 界 を知 るのに有効 で あ り,推測率や

SMC

は指標 として妥 当で あ る こ とが示唆 された。今後例数を増やす中で, これ ら の方法 と指標 を さらに深化 させてい きたい。 謝 辞 最後に,症例の公表を許可された東京慈恵会医科大 学小児科教授前川喜平先生にお礼を申しあげます。ま た,日頃の御指導に深謝いた します。(なお,本症例は 1982年9月の小児精神研究会で 口頭発表 した。) 引用文献 1)井原成男 :イメージの母子相互作用- 心因性頭 痛をもつ女児のロールシャッパテス トに反映 した母 子相互作用- .長野大学紀要,vol.4,No.1・2: 43-59,1982. 2)カル7,M .(河合隼雄監訳):カルフ箱庭療法,誠 信書房,1972. 3)井原成男 :人が怖 くてたまらなかった S・A君の 作品 『にわ とり村のめんどりおじさん』の分析.長 野大学紀要,Vol.3,No.1・2:43-65,1981. 4)佐藤紀子 :無意識への挑戦,河野心理 ・教育研究 - 3

(16)

7-出版部,1974. 5)寺本隆 明 :フロイ トお よびユ ングの人間把握 の 問題点について (知の岸辺へ),弓立社,1976. 6)吉本隆明 :世界認識の方法,中央公論社,1980. 7)吉本隆明 :幻想論の根底(言葉 とい う思想),弓立 社,198

1

.

8)村瀬学 :初期心的現象の世界 (理解のお くれの本 質を考 える),大和書房,198

1

.

9)吉本隆明 :共同幻想論,河出書房新社,1968. 10)河合隼雄 :母性社会 日本 の病理,中央公論社, 1976.

/

ll)井原成男 :アノレクシア ・ネルポーザ症例におけ る ロールシ ャ ッハ ・テス トの母子差 と治療へ の適 用.日本心理学会第43回大会発表論文集,652,■1979. 12)井原成男 :ロールシャッ-・テス トの母子差 と治

療への適用.ロール シ ャツ-研究,γol.XXIII:145 -158,1981

.

13)井原成男 :ロールシャツ- ・テス トか らみた母子 相互作用(1).日本心理学会第45回大会発表論文集, 633,1981

.

14)井原成男 :ロールシャツ- ・テス トか らみた母子 相互作用- あ る夜尿児の症例研究-.長野大学紀 要,Vol.3,No.3・4:19-33,1982. 15)井 原 成 男 二イ メ ー ジ の 母 子 相 互 作 用

(

1)

-ExchangeRorschachMethodの試み-. 日本教育 心理学会第24回総会発表論文集,1982. 16)井原成男 :イメージの家族 内力動- ノーマルな 児童 の ロール シ ャ ツ- ・テス トか らみた家族 関係 -.長野大学紀要,Vol.4,No.3・4:45-63,1983. 17)Herbert,M∴ Behavioraltreatmentofproblem children,AcademicPress,1981

.

18)井 原 成 男 :新 刊 紹 介.小児科診療,Vol.44,No.12 :140-141,1981

.

19)Klopfer,B.&Davidson,H.H.(河合隼雄訳):ロ

ールシ ャッノ、・テクニ ック入門, ダイヤモン ド社, 1964. 20)石川元(編):鏡 と人間 の心理.現代 のエス プ リ No.155,至文堂,1980. 21)細木照敏 :ロールシャッ- ・テス トにおける立体 反応(Vista)の精神医学的意味.精神医学,Vol.15, No.2:145-153,1973. 22)河合隼雄 : Fゲ ド戦記』 と自己実現 (人間の深層 にひそむ もの),大和書房,1979. 23)片 口安史 :新心理診断法,金子書房,1973. 24)フロイ ト

,

S

.

(井村恒郎訳):快感原則の被岸 (フ ロイ ド選集4・自我論), 日本教文社,1970.

参照

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