1)清泉女学院大学
ICT の教育的活用を目指した看護教員向け自主勉強会の実践報告
上原
明子
1)・大関
春美
1) 要旨 高等教育における ICT を活用した教育推進の必要性が高まっている.こうした中,清泉女学院大学 看護学部看護学科が2019 年 4 月に開設され,学習者主体の教育に向けた ICT の活用が期待される. 筆者らは,本学科の教員を対象としたICT 利活用のアンケート調査を行った結果,ICT の教育的活用 の未経験者が多く,教育的活用に対する不安が散見された.そこで,本学科におけるICT の教育的活 用を目指して,教員を対象としたICT 自主勉強会を開催した.受講者からは,「学習者主体の効果的な 教授法に対する関心とモチベーションが上がった」等の肯定的な意見が聞かれた一方で,「やってみて わからないことがあればその都度聞ける部門がほしい」,「トラブル発生時のタイムリーなサポート体 制があるのかどうか」などの課題が出された.本学科におけるICT の教育的活用に向けた課題として, 教員を対象とした継続的な学修機会の提供や担当部署設置の必要性が示唆された. キーワード:ICT,教育的活用,ワークショップ,看護教員Report of a Workshop of Educational Use of
ICT targeting on Nursing Faculty
Uehara Akiko
1), Oozeki Harumi
1) Key words:ICT, educational use, workshop, nursing facultyⅠ.はじめに インターネット環境の普及に伴い,Information Communication Technology(情報コミュニケー ション技術,以下ICT)が発展し,その教育的活 用が広まりつつある.文部科学省(2018)は,第 3 期教育振興基本計画において、高等教育におけ るICT を活用した教育推進について述べており, 大学における ICT 活用の必要性は益々高まって いる. こうした潮流の中,清泉女学院大学看護学部看 護学科(以下,本学科)は,2019 年 4 月に開設さ れ,学習者主体の教育に向けたICT の活用が期待 されるところである.筆者らは,本学科の2019 年 度新任教員(以下,教員)を対象として,ICT の 教育的活用に関する無記名のアンケート調査を 行った.その結果,ICT の教育的活用を経験した 教員が少ない状況であり,操作方法や運用への不 安が示唆された. そこで,筆者らは,本学科におけるICT 教育的 活用を目指して,教員を対象としたICT 自主勉強 会を開催した.本稿では,ICT 自主勉強会の実践 概要を報告し,本学科におけるICT の教育的活用 に向けた課題を検討する. Ⅱ.実践概要 1.ICT 自主勉強会のねらい 教員対象のアンケート調査結果から,学習管理 システム(Learning Management System: LMS)
の教育的活用の経験者は,12%程度にとどまって おり,LMS をはじめとする ICT 全般に対する利 用への不安が推察された.このため,ICT 自主勉 強会のねらいとして、大学が導入しているGoogle G Suite に慣れ親しむこととした.実施概要を表 に示す.
Seisen Jogakuin College Journal of Nursing Vol.1 No.1 pp.75-77 2021 ICT の教育的活用を目指した看護教員向け自主勉強会の実践報告
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大の課題となり得るのは,技術的な課題やトラブ ル対応である.大学ICT 推進協議会が 2017 年度 に実施した「高等教育機関におけるICT の利活用 に関する調査研究」によると,ICT の教育的活用 において,組織が抱える問題の回答として最も多 かったのは,「技術的支援のための人員の不足」 64.9%であった.本学科においても,同様の課題 が想定される.教育的活用を目指す場合,こうい った課題に対応する担当部署の設置が効果的で あると考えられる.必要に応じて,本学科内の委 員会など、小規模な構成から開始していくことが 現実的であると考えられる. Ⅳ.おわりに 本稿では,ICT 自主勉強会の実践概要を報告し, 本学科における ICT の教育的活用に向けた課題 を検討した.本学科において,ICT の教育的活動 を推進していくためには,教員を対象とした継続 的な学習機会の提供と技術的支援の担当部署の 設置が課題であることが示唆された. Ⅴ.謝辞 自主勉強会の企画・運営に携わってくださった 東口事務室の高田祥晃氏に深謝致します.また, 自主勉強会の開催を快諾くださった原田訓子氏 に心より御礼を申し上げます. Ⅵ.文献 大学ICT 推進協議会(2017).2017 年度高等教育 におけるICT の利活用に関する調査研究 調査 報告書,2021 年 1 月 5 日検索, https://axies.jp/_media/2020/03/2019_axies_ic t_survey_v2.1.pdf. 文部科学省(2018).第 3 期教育振興基本計画(平 成30 年 6 月 15 日閣議決定),2020 年 2 月 12 日検索, https://www.mext.go.jp/content/1406127_002. pdf. また,自主勉強会で触れる内容について,その場 で体験しながら学習できるよう,各自ノートパソ コンを持参するなどの工夫をして,参加型の勉強 会を企画した.企画・運営は,ICT の教育的活用 の必要性を感じている教員2 名と事務局員 1 名の 3 名が有志で行った.具体的な実施内容として, 第1 回では,G Suite 機能の中でも,Gmail,Google カレンダー,ドライブ機能について解説しながら 操作方法を演習した.第2 回では,ICT を教育的 に活用していく際の学習理論として,インストラ クショナルデザインの概要について解説し,教育 実践について紹介した.第3 回では,第 1 回,第 2 回のそれぞれの内容を踏まえ,各授業で Google Classroom をどのように活用できそうか検討し 合った.第4 回では,授業中の学習活動を膨らま せる機能として,Google スライドやハングアウト 機能について解説した.第5 階では,個別相談と して,各教員の相談に応じる形式とした. 2.実施期間・場所 2019 年 7 月から 11 月に ICT 自主勉強会を開 催した.教員の負担にならない程度で参加しやす い回数を考慮して,月1 回 90 分の開催とした. また,参加しやすい工夫として,会議室ではなく, ラーニングコモンズなどの開放された空間での 開催とした(写真,本人の許可を得て掲載). 3.受講者からの反応 全5 回のワークショップ開催に対して,のべ 43 名が参加した.各ワークショップ後には,無記名 のアンケート調査を実施し,ワークショップ内容 や企画・運営に関する感想を記載するよう依頼し た.その際,アンケート結果の一部については, 個人が特定できない状態で学内外での活動報告 に掲載される場合があることを明記し,回答をも って同意を得たものとした.本稿では感想の一部 を紹介する. 第2 回開催(テーマ:学修支援実践 1.ICT を 効果的に活用するための教授理論を学ぶ)のアン ケート結果では,「とても刺激になった」,「今まで の自分の講義を振り返る機会となった」,「漠然と していた授業案作成について,(インストラクシ ョナルデザインの活用で)どこに自分の問題・課 題があるのか見直しができた」,「学習者主体の効 果的な教授法に対する関心とモチベーションが 上がった」と肯定的な反応が見られた.一方で, 第 3 回開催(テーマ:学修支援実践 2.Google Classroom 活用編)のアンケート結果からは,「授 業デザインとしての使い方等,適切にできていく のか不安」,「やってみてわからないことがあれば その都度聞ける部門がほしい」,「トラブル発生時 のタイムリーなサポート体制があるのかどうか」 など,ICT の教育的活用における実際の運用に不 安に思う記述がみられた. Ⅲ.本学科における ICT の教育的活用に向けた今 後の課題 1.教員を対象とした継続的な学習機会の提供の 必要性 ICT の教育的活用を目指すためには,教員を対 象とした継続的な学習機会や情報提供が必須で ある.特に,ICT の効果的活用に向けた授業設計 の考え方や方略を学ぶ機会が重要である.こうし た文脈は,Faculty Development(FD)と類似し ている点があり,本学科でICT の教育的活用を目 指す際には,多部門による横断的な取り組みが必 要であると考えられる. また,学科内におけるICT の活用事例の成功体 験や失敗体験などの共有は,身近な実践例として 親しみやすい.事例を通じた学修機会を定期的に 開催できる仕組みが必要と考えられる. 2.担当部署設置の必要性 教員がICT の教育的活用を行っていく上で,最 回数 開催日 テーマ 内容 第1回 7月30日 学修支援に集中するための環境を 整える Googleメール、カレンダー、 ドライブ、ToDoリストなど)の 活用方法 第2回 8月21日 学修支援実践活用するための教授理論を学ぶ1. ICTを効果的に インストラクショナルデザインの概要と教育実践紹介 第3回 9月10日 学修支援実践2. Google Classroom活用編 Google Classroom機能の活用方法 第4回 10月29日学修支援実践3. 魅力的な学修支援教材を創るためのノウハウ Google プレゼンテーションやハングアウト機能の活用方法 第5回 11月26日 個別相談 個別対応 表.ICT自主勉強会の開催内容 写真 − −76 ICTの教育的活用を目指した看護教員向け自主勉強会の実践報告
大の課題となり得るのは,技術的な課題やトラブ ル対応である.大学ICT 推進協議会が 2017 年度 に実施した「高等教育機関におけるICT の利活用 に関する調査研究」によると,ICT の教育的活用 において,組織が抱える問題の回答として最も多 かったのは,「技術的支援のための人員の不足」 64.9%であった.本学科においても,同様の課題 が想定される.教育的活用を目指す場合,こうい った課題に対応する担当部署の設置が効果的で あると考えられる.必要に応じて,本学科内の委 員会など、小規模な構成から開始していくことが 現実的であると考えられる. Ⅳ.おわりに 本稿では,ICT 自主勉強会の実践概要を報告し, 本学科における ICT の教育的活用に向けた課題 を検討した.本学科において,ICT の教育的活動 を推進していくためには,教員を対象とした継続 的な学習機会の提供と技術的支援の担当部署の 設置が課題であることが示唆された. Ⅴ.謝辞 自主勉強会の企画・運営に携わってくださった 東口事務室の高田祥晃氏に深謝致します.また, 自主勉強会の開催を快諾くださった原田訓子氏 に心より御礼を申し上げます. Ⅵ.文献 大学ICT 推進協議会(2017).2017 年度高等教育 におけるICT の利活用に関する調査研究 調査 報告書,2021 年 1 月 5 日検索, https://axies.jp/_media/2020/03/2019_axies_ic t_survey_v2.1.pdf. 文部科学省(2018).第 3 期教育振興基本計画(平 成30 年 6 月 15 日閣議決定),2020 年 2 月 12 日検索, https://www.mext.go.jp/content/1406127_002. pdf. − −77