論
文 内 容 要 旨
学籍番号 B6DD1019 氏 名 畠山 高徳
【目的】人体において自己修復が不可能な骨欠損の修復を行う際、主に自家骨移植が用いられる。しかしながら自
家骨移植は移植量に制限があることから、量的制限のない人工骨補填材の開発が進められている。当研究室で開発
されたリン酸オクタカルシウム(以下 OCP)は、骨再生の促進に寄与することがこれまでの研究で明らかになって
いる。さらに OCP 単独での骨欠損への埋入を行った場合よりも OCP に天然高分子であるゼラチンと複合化にする事
により,骨再生がより促進されることが当研究室の研究より明らかになっている。一方で,ゼラチン多孔体単体に
おいてもゼラチン原料の抽出方法や気孔構造により新生骨の形成が調節されることが報告されている。本研究で
は、ゼラチン多孔体の気孔構造を制御することで、OCP/ゼラチン複合体による新生骨形成に促進できるとの仮説を
立てた。本研究では、ゼラチン多孔体の作製条件の 1 つであるゼラチン濃度により多孔構造の制御を試み、多孔構
造と in vivo での新生骨形成挙動の関係を明らかとすることを目的とした。
【方法】1%、3%、5%、7%ゼラチン溶液をプログラムフリーザーにて予備凍結を行ったのち、凍結乾燥機にて
凍結乾燥した。凍結乾燥後、1 ㎜厚のディスク上に成形し、熱架橋を行った。材料の評価について、気孔構造を走
査型電子顕微鏡にて観察し、連通性については試料に滴下したトリパンブルー溶液の浸透性により評価した。動物
実験では 2 週齢雄性 Wistar ラットに作製した臨界径骨欠損に各濃度のゼラチンディスクを埋入し、8 週後に回収し
た組織における組織骨欠損部での新生骨量を計測した。
【結果】材料学的評価において、ゼラチン濃度 1%、3%では概ね直径 100 μm 前後の気孔径を配した均一な多孔質
構造を形成したのに対し、5%および 7%においては 300 μm 以上の気孔径も形成された不均一な構造であった。ま
た、全てのゼラチンディスクで気孔の連通性が確認された。Tris-HCl 溶液に 5 日間浸漬した結果では各条件の分解
率に有意差は認められなかった。動物実験においては、マイクロ-CT を用いて定量した石灰化組織の体積は、5%お
よび 7%ゼラチン埋入群のほうが 1%および 3%埋入群よりも有意に大きい値を示した。また組織標本の H-E 染色の
結果から、ゼラチンディスク埋入群においてゼラチン濃度が高い材料ほど新生骨形成量が多く、生体吸収性が低い
傾向が示された。
【結言】 ゼラチン水溶液の凍結乾燥によるゼラチン多孔体作製において、凍結速度を制御した場合、ゼラチン濃
度により多孔体の気孔径分布が変化した。高濃度のゼラチン溶液より作製した 300μm 以上の気孔径を有するゼラ
チン多孔体においては、新生骨の形成がより促進されることが明らかとなった。このことから、ゼラチン濃度によ
りゼラチン多孔体の気孔径を制御することで、OCP/ゼラチン複合体の骨再生能を向上できる可能性と期待される。