小学部第1学年 自立活動学習指導案 1 単元名 ことばをつなぐことば(助詞) 〔コミュニケーション (2) 言語の受容と表出(3)言語の形成と活用〕 2 単元設定の理由 ○ 児童観 本学級は、聴覚障害のある3名の児童で構成されている。人間関係は良好であり、友達が困ってい るときは進んで助けたり、集団で協力し合ったりする姿が多く見られる。児童のコミュニケーション 手段は、場面や個人の実態によって様々であるが、集団での共通手段は手話をベースにしており、児 童同士で活発なコミュニケーションを図りながら生活している。生活や学習場面において、手話によ る指示や説明はある程度通じているが、複雑な説明や質問は理解できない児童もいてその実態差は大 きい。また、どの児童も、積極的に発表するなど学習に対する意欲は高い。 書記日本語の学習に関しては、手話と日本語では、文の組み立てや語順が異なるなど文法的な乖離 が大きいため、手話での受信、発信ができても書記日本語においては基礎的な文法力が身に付いてい ない。特に、手話では助詞に相当する表現が表情や位置関係などで表されることから、手話で表現で きても文中において適切な助詞を使用できないことが共通の課題である。また、ごく基本的な語彙が 身に付いていない児童と、基本的な語彙はある程度習得している児童との実態差が大きく、文法指導 を行っても語彙力の差で理解度に差が出てくる。3名とも、助詞については誤りが多く、場当たり的 に思い付いた助詞を用いて文を書いているのが実態である。また、書記日本語の文法指導の前提とな る基本的な獲得語彙の少なさも課題である。 ※書記日本語・・・筆談で用いるような、紙を媒体とした日本語。書き言葉。 児童 コミュニケーションの様子 書記日本語の実態 A児 受信・発信ともに手話が中心であ る。 語彙数が少なく、ごく基本的な身の回りの名詞、動詞、 形容詞なども正しく表記することが難しい。 B児 手話と口話を併用し、受信・発信 ともに手話の比重が高い。 よく使う身近な語彙はある程度習得しているが、基本 文型や助詞の理解が不十分である。 C児 手話と口話を併用し、受信・発信 ともに手話が中心である。 よく使う身近な語彙は習得しているが、基本文型や助 詞の理解が不十分である。 以下に対象児童の聴力レベルと各種検査結果を示す。 対象児童 A児 B児 C児 裸耳平均聴力レベル (dBHL) 右 左 装用時平均聴力レベル (dBHL) 右 左 J.COSS(日本語理解テスト) 助詞テスト・TK1型(100 点満点) 絵画語彙発達検査 ○ 単元観 本単元では、書記日本語学習の重要な文法項目の一つであり、最も指導が困難な助詞の学習を扱 う。文法は言語の骨格そのものであり、文法を指導した後、単語と表現を増やしていくと骨に肉が付 くように文としての全体像が完成していく。日本語文法において、助詞は更にその骨格を司るもので あり、助詞の用法を規定する品詞が動詞である。つまり文法指導では助詞と動詞の習得が最重要課題 となる。本単元においては、指導する助詞を「に」「で」「を」に設定し、それぞれの助詞がどのよう な時に使われるのか、用法ごとにまとめて指導する。それにより、同じ助詞であっても、文中で意味 が変わり、意味に応じて助詞を選択しなければならないことが理解できると考える。 また、本単元では、外国人のための日本語教育の指導方法として新宿日本語学校の校長である江副 隆秀氏が考案した「江副式教授法」と呼ばれる指導方法を参考として、視覚的かつ操作性の高い教材
を用いて文法を可視化して理解させる手立てをとる。 本単元の主な学習内容は、大きく分けて4項目ある。1項目目に場所に関わる助詞としての「に・ で・を」である。内容は、①ある場所(目的地)に向かって行く時に用いる「行き先の『に』(母が スーパーに行きます)」、②ある場所で何かをする時に用いる「動作をする場所の『で』(母がスーパ ーで買い物します)」、③ある場所を出る(離れる)時に用いる「離脱の『を』(母がスーパーを出ま す)」、または「出発点の『を』(母が久留米駅を出発します)」、④ある場所に人(生き物)がいる時 や、物がある時に用いる「存在の『に』(母がスーパーにいます)」、⑤ある場所を人(生き物)や物 が通る時の「通過の『を』(母が横断歩道を渡ります)」の5点である。 2項目目に、時間・数量に関わる助詞「に・で・を」がある。主な内容は、①何かをいつするのか を表す文で用いる「時刻(時点)の『に』(友達が3時にきます)」、②いつを表す文で用いる「期 限・時間内を表す『で』(銀行は3時で閉店します)」、いくつ、どれだけなどの数量を表す時、時数 詞の後に用いる「数量を表す『で』(4人で遊園地に行きます)」、③「時間の経過や数量を表す 『を』(残業で9時を過ぎます)の3点である。 3、4項目目は、助詞「で」の用法を分類した学習である。3項目目は、あるものを使って何かを する時に用いる助詞「道具・材料・方法の『で』(はさみで紙を切ります・いちごでジャムを作りま す・じゃんけんで決めます)」の学習で、4項目目は、あることの理由や起こった原因を表す時に用 いる「原因・理由の『で』(風邪で学校を休みました)」の学習である。 学習内容である4項目において、同じ助詞でも文の意味から適切に選ばなくてはならないことや、 選択した動詞に合わせた助詞を用いなければならないことが理解できるようにしたい。 ○ 指導観 本単元の指導に当たっては、意味に合わせて述部に来る動詞を選択し、それに合わせた正しい助詞 を用いて文を作ることをねらいとする。本単元の学習が成立するためには、品詞及び基本文型の理解 が前提となる。品詞については、本単元に入る前の学習「文のしくみと文の作り方」において、「こ とばの仲間分け」の学習を行い、品詞ごとに色分けした品詞カードを用いながら品詞分類ができるよ うにしている。また、この色分けは国語科の学習においても同様に使用し、品詞についての理解を深 めている。 名詞については、他教科で学んだものも教室に掲示し、動詞、形容詞については、絵カードを作成 し、一日一語ずつ活用練習を行っている。基本文型については、前単元「文のかたち~基本の文型 ~」の指導において、基礎となる5つの基本文型(「~が」動詞文・「~が~を」動詞文・「~が~ に」動詞文・「~が~と」動詞文・「~が~に~を」動詞文)について学習している。これらの取組を 前提に、本単元の助詞の指導を行う。 本単元で指導する助詞は「に・で・を」であるが、同じ「に・で・を」でも場所に関わる場合、時 間・数量に関わる場合など、意味によって「に」を選ぶのか「で」を選ぶのか変わってくる。また、 「で」については、道具・材料・方法を表す場合、原因・理由を表す場合と2つに分けて考える。 江副式教授法においては、文章における主語に当たる部分を「情報」、述語に当たる部分を「述 部」というが、この述部に当たるパーツ(品詞)は決まっていて、名詞か形容詞か動詞であり、特に 助詞の指導では助詞と動詞をセットにして覚えると取り組みやすく、理解を深めることができる。 児童は、情報の部分に場所に関する名詞があれば場当たり的に「で」を用いたり「に」を用いたり しているが、文法上のルールを理解し、文の意味を考えて助詞を選択することが大切である。そのた めにも、文の意味から用いる助詞の用法を規定してまとめ、分かりやすく一覧にして、一つずつ取り 上げて指導する。その際、「に」をとる動詞を「『行く』グループの動詞」(乗る、入る、帰る、来る など)、「で」をとる動詞を「『する』グループの動詞」(寝る、泳ぐ、遊ぶなど)、「を」をとる動詞を 「『出る』グループの動詞」(出発する、卒業する、離れるなど)と名付け、助詞と動詞をセットで覚 えさせる。それに加えて「に」と「で」と「を」のそれぞれについて、意味に合わせた「助詞手話記 号」を使用し、その助詞がどんな意味を表しているのかを見て分かるように工夫する。 また、文の中では、それぞれの助詞を異なる形に表現した「助詞記号」を用いて助詞の違いを強調 し、文を構成している要素を視覚化して図示し、見て分かる方法で指導していく。そのために、情報 と助詞、述部を一列に並べた横書きの板書を行い、ノートやプリントも横書きに統一する。これらの 指導方法で、文章で説明する文法でなく、「図示して習得させる文法」を目指したい。
3 単元目標 ・絵を見て、文作りに取り組むことができる。(関心・意欲・態度) ・文の意味を理解し、適切な動詞を選択することができる。(思考・判断) ・文の意味を考え、正しい助詞を用いて文を書くことができる。(知識・理解) 4 指導計画(全20時間) 第一次 場所に関わる助詞「に・で・を」 6時間 1 「~が~に行く」(行き先の「に」) 1時間 2 「~でどうする」(動作する場所の「で」) 1時間(本時) 3 「~が~を出る」(離脱・出発点の「を」) 2時間 4 「~が~にいる・ある」(存在の「に」) 1時間 5 「~が~を通る」(通過の「を」) 1時間 第二次 時間・数量に関わる助詞「に・で・を」 6時間 1 時刻・時点や数量をあらわす「に」 2時間 2 期限・期間内や数量をあらわす「で」 2時間 3 時間の経過や数量をあらわす「を」 2時間 第三次 道具・材料・方法の助詞「で」 3時間 第四次 原因・理由をあらわす助詞「で」 3時間 第五次 「に」「で」「を」のまとめ 2時間 5 本時 (1) 本時の目標 ・動作する場所の助詞「で」の用法を理解できる。 ・正しい助詞を用いて絵の内容に即した文を作ることができる。 (個別の目標) A児 ・文の意味に合わせた動詞を考えることができる。 ・教師と一緒に、絵に合う正しい助詞を用いて文を作ることができる。 B児 ・文の意味を考え、助詞を答えることができる。 ・絵に合う正しい助詞を用いて文を作ることができる。 C児 ・助詞によって文の意味が変化することを理解できる。 ・絵に合う正しい助詞を用いて文を作ることができる。 (2) 本時指導の考え方 本時の指導に当たっては、導入段階で、前時の指導内容である、行き先を表す動詞を用いる時の 助詞は「に」であることを確認する。その際、行き先を表す助詞「に」をとる動詞を、使用頻度が 高く基本的な動詞「行く」「来る」「帰る」「着く」「入る」「乗る」に限定し、「『行く』グループの 動詞」としてまとめて提示しておく。前時の例文「おかあさんがスーパーにいく」から、本時の内 容「おかあさんがスーパーでかいものする」の違いを捉えさせ、行き先ではなく、ある場所で何か をする時の助詞は「で」であることを確認し、本時学習のめあて「『で』をつかってぶんをつくろ う。」につなげる。 展開段階では、まず文の中の述部に当たる動詞を考えさせる。この時、意味を考えさせ、選択す るのは「『行く』グループの動詞」ではないことを確認していく。文を書く場合は、助詞記号を用 いて「に」との違いを強調する。また助詞手話記号を用いて助詞の意味を手話で表現して意味を確 認し、「に」は行き先を表す時の助詞、「で」はする時の助詞という違いを手話表現からも理解させ る。次に、動詞から場所を考えさせる。まず動詞だけを考えさせ、次に場所を表す名詞を考えさせ るというスモールステップで進めることで、実態差の大きい児童に配慮したい。その後、「で」を 使った文を作らせる。本時で学ぶ動詞は、動作を表す動詞「動作語」であり、会う、遊ぶ、洗う、 言う、起きる、寝る等、児童にとっても身近でよく使う動詞であるので、まず動作語を自由に考え させ、動作語を使った文を発表させることによって「する」グループの動詞のイメージをつかませ
る。助詞「に」をとるのは「行く」グループの動詞、助詞「で」をとるのは「する」グループの動 詞、と比較しながら、「に」を用いる場合と「で」を用いる場合を区別していく。次に、いろいろ な場所が書いてあるカードが入った箱「どこどこ?!場所ボックス」からカードを一枚引いて、そ の場所に合った動詞を考えて助詞「で」を用いた文を作らせる。くじ引きのように、どんな場所が 出るのかを楽しみながら文を作ることができるようにしたい。その際、手話による発表だけに終わ らず、プリントに書かせる。授業において手話を用いて学習したことは全て、読んで書く活動で確 認することで、手話での理解に止まらず書記日本語として習得させることに留意する。最後に 「『する』グループの動詞」を表にまとめていく。 まとめ段階では、本時学習の振り返りを行う。助詞が空欄になった文を提示して、動詞に着目さ せながら「に」か「で」のどちらであるかを考えさせる練習をすることで、学習内容の定着を図り たい。 (3) 準備 ①形容詞フラッシュカード②既習文③既習図④掲示用品詞ード(名詞・時数詞・形容詞・動詞) ⑤情報・述部・助詞カード⑥品詞カード⑦動詞のグループ分け表⑧助詞記号⑨文に合わせた絵 ⑩お助けカード(動詞)⑪「どこどこ?!場所ボックス」⑫練習プリント1⑬練習プリント2 (4) 展開 過 程 学習活動・内容 指導上の留意点 教 材 配 時 学習 形態 評価 導 入 / 展 開 1 形容詞フラッシュカードをす る。 ・日本語を見て意味を答える。 2 前時の内容を想起する。 「おかあさんがスーパーにいく。」 (1) 絵を見て文を考える。 (2) 助詞手話記号で意味を確認す る。 ・助詞手話記号「に」 (3) 絵に助詞記号を入れて助詞 「に」を確認する。 ・助詞記号「に」 (4) 「『行く』グループの動詞」を 確認する。 3 絵を見て動詞を考える。 「おかあさんがスーパーで かいものする。」 (1) 意味を確認する。 (2) 助詞を考える。 ○時間を取り過ぎないよ うテンポよく進める。 ○時間を意識させるため 着席していない児童が いても待たずに始める。 ○買い物をする場所のイ メージが広がるように 児童に身近な店を挙げ る。 ○助詞手話記号で文の意 味を確認する。 ○動詞が出てこない時は お助けカードの動詞を 提示し、その中から選ば ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ 2 分 8 分 15 分 一斉 一斉 一斉 ○カードを見 て形容詞を 答えること ができる。 ○行き先を表 す動詞は 「に」を使 うことが分 かる。 ○「『行く』 グループの 動詞を答え ることがで きる。 ○動詞「(か いもの)す る」を手話 めあて 「で」をつかってぶんをつくろう。
展 開 / ま と め ・助詞記号「で」 (3) 「行く」グループの動詞では ないことを確認する。 (4) 助詞手話記号で意味を確認す る。 ・助詞手話記号「で」 (5) 絵に合う動詞を答える。 4 動詞から場所を考える。 5 「で」を使った文を作る。 (1) 自由に発表する。 (2) 「どこどこ?!場所ボック ス」からカードを引き、出た場 所カードに合わせて文を作る。 (3) 発表した文をプリントに書 く。 (4) 「『する』グループの動詞」を まとめる。 6 「に」と「で」の区別の練習 を行う。 せる。 ○助詞記号「で」を用いて 「に」との違いを意識さ せる。 ○助詞手話記号で文の意 味を確認する。 ○理解しやすい場面の絵 を提示する。 ○児童を主語にすること で興味をもって考えら れるようにする。 ○自分の考えた動作語を 自由に出させる。 ○ゲーム性のある活動で 楽しみながら多くの文 を考えることができる ようにする。 ○書記日本語で書く活動 をさせ、書記日本語での 定着を図る。 ○「する」グループの動詞 を一覧表にまとめ「『行 く」グループの動詞」と 区別できるようにする。 ○「に」を使う時と「で」 を使う時の違いを整理 する。 ⑧ ⑦ ⑨ ⑪ ⑫ ⑦ ⑬ 15 分 5 分 一斉 個別 と指文字で 表出でき る。 ○場所で何か を行う時に は「で」を 使うことが 理解でき る。 ○絵に合う動 詞が分か る。 ○場所カード に合う動詞 を考え、 「で」を使 った文を作 ることがで きる。 ○グループご とに動詞が 分類でき る。 ○適切な助詞 を選択でき る。 (5) 板書計画 品詞カード 情報 助詞 述部 情報 名詞 述部 めあて 「で」をつかってぶんを つくろう。 絵 絵 絵 絵 既習図 既習の文 まとめ 文 絵 文 文 い く グ ル ー プ す る グ ル ー プ 動詞のグループ分け表 絵 文 絵 文
(6) 座席配置図
A児 C児
黒板