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機能性ヒドロゲルの最前線

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Academic year: 2021

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271 生物工学 第96巻 第5号(2018) 著者紹介 大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻(助教) (PDLOQDNDKDWD#FKHQJHVRVDNDXDFMS 「我々の身体の6割が水分」というのは誰もが一度は 耳にしたことがあるに違いない.より正しくは,骨や歯 といった硬く含水率の低いものから臓器や皮膚といった 柔らかく含水率の高いものまで,さまざまな物理的特性 を有する組織から生体が構成されており,それらを平均 して6割前後が水分で占められている,ということにな る.このように,生体は分子ネットワークが水を含んだ 「機能性ヒドロゲル」の集合体であり,その構造・機能 にヒントを得た人工材料として,これまでにさまざまな ものが提案・開発されてきた.近年の機能性ヒドロゲル の多くは我が国で生まれたものであり,我が国はヒドロ ゲル研究において世界でも先導的な役割を担っていると 言って差し支えない1).寒天,豆腐,こんにゃくなど, 古くからヒドロゲルに囲まれて生活してきた日本人には なじみの深い研究対象であったのかもしれない. ヒドロゲルを構成する分子のデザインは高分子科学の 得意とするところである.詳しい解説は専門書に譲るが, ダブルネットワークゲル,ナノコンポジットゲル,架橋 点可動型ゲル,Tetra-PEGゲルといったユニークな分子 構造を有するもの(図1)から,自励振動ゲル,生体分 子インプリントゲル,異方性ゲル,超分子ゲルといった ユニークな機能を発現するものまで,枚挙に暇がない. このような機能性ヒドロゲルの幾つかについて,最近の 応用研究を紹介したい. ダブルネットワーク('1)ゲルは,一次高分子網目 の中でさらにモノマーの重合を行うことで得られる「相 互侵入網目ゲル」の一種であり,高い力学的強度を有す るだけでなく,変形に対して一方の網目が犠牲的に破壊 されることで材料全体の破壊を食い止め,強靭性を獲得 している.その力学特性を利用して軟骨の再生などに利 用されてきた2)が,より硬い組織である骨との親和性を 向上させるために,無機成分との複合化が試みられた. '1ゲル中でヒドロキシアパタイト(+$S)の結晶化を 行うことにより,+$Sを複合化した'1ゲルが得られた. 元の'1ゲルと比較して弾性率が向上しており,より骨 の硬さに近づいた.骨を構成するタンパク質の一つであ るコラーゲンのゲル中への透過性も確かめられた.実際 にこのゲルをウサギの骨中に埋め込んだところ,元の '1ゲルと比較して骨との接着性が向上し,界面での骨 形成が認められている3). Tetra-PEGゲルは,長さの揃った四分岐高分子の末端 を結合することで形成される.高分子のゲル化反応では さまざまな要因によってネットワークは本質的に不均一 になるが,このゲルでは分岐高分子の末端のみで架橋を 行うため,架橋反応の進行度に応じたゲルの架橋密度を 制御しやすく,可能な限り不均一性を排除した理想網目 に近いゲルが得られる.高分子をある程度架橋して,系 全体がゲル化する直前の‘ギリギリ’の状態で反応を止 めることもでき,それによりゲル化前後の浸透圧の差を 最小限にとどめることが可能である.このような特徴を 活かせば,眼内治療に用いられるヒドロゲルに求められ る注入可能特性とゲル化後の低い膨潤圧を同時に満たす ことができる.実際にウサギの眼内で形成されたゲルは, 一年以上にわたって悪影響を及ぼさないことが確かめら れた4). このように例としてあげた人工の機能性ヒドロゲルに 対して,同じくヒドロゲルである生体構成要素の振る舞 いを制御し,応用につなげるのが生物工学の担うところ である.さらに,この他にも,動的に制御可能な超分子 ゲル5)をはじめとして,生物工学に寄与する可能性のあ る新しい機能性ヒドロゲルが次々と開発されており,材 料科学者と生物工学者の連携による更なる発展が見込ま れる.高分子間だけでなく,研究者間の架橋により強固 なヒューマンネットワークが形成されることを期待して いる. 1) 日本化学会編:驚異のソフトマテリアル,化学同人  

  <DVXGD.et al.: Macromol. Biosci.9     1RQR\DPD7et al.: Adv. Mater.28     +D\DVKL.et al.: Nat. Biomed. Eng.1     +|UQLQJ0et al.: Sci. Rep.7  

機能性ヒドロゲルの最前線

中畑 雅樹

図 1 .ユニークな構造を有する機能性ヒドロゲル

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