Title
ドメスティック・バイオレンス−フェミニズム理論から
の分析−
Author(s)
仲里, 和花
Citation
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of
Humanities and Social Sciences(13): 1-16
Issue Date
2011-03-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/9624
ドメスティックoバイオレンス
ーフェミニズム理論からの分析一
要 約 仲 里 和 花本稿では,ドメステイツク・バイオレンス(以下,DVと略す)をフェミニズム理
賎から考察する。フェミ墨スト研究者のソルペイグ・アナ・ボアスドッテイア
(SolveigAnnaBoasdottir)は.rⅣは「偶然で個人的な道徳不正によって起こるのではなく,家父長制度の強い社会での社会的習働')によって起こると述べている。
多くのフェミニスト達が.IⅣは.個人的病気や納神異常に起因するのではな<.現
代社会の性差別的信桑規範,価値観を通して,歴史や文化の中で体系化されてきた
男女の不均衡な力関係の結果,起こると述べている。IⅣが発生する背景にある差別
的社会構造を検証し,その解決策を操る。キーワード:家父長制,支配と従属,ジェンダー,力関係,性別役割分業
は じ め に内閣府男女共同参画がホームページで掲載している「配偶者からの暴力に関するデータ」2)
によれば配偶者暴力相談支援センター8'における相談件数賎2側8年度で,68,196件である。
前年の2007年には,62,078件で,2006年には58.528件であった。2㈹6年から鋤0祥の間に,約
4,冊0件,2側7年から2008年の間に,6,000件と,年々,相談件数は増えている。また,警察署
の調べによると,配偶者間における犯罪の被害者(検挙件数)の割合4)は,総数2,471件のう
ち.女性の配偶者が2,232件,男性の配偶者が239件で,女性の割合が90.3%を占めている。さ
らに,内閣府による「男女間における暴力に関する調査」(釦08年度)6》ではb5,0m人を対象
に無作為抽出アンケート調査をした結果,身体的暴力(殴る,蹴る,物を投げつける,突き飛
ばす),心理的攻撃(人格を否定する暴貫,交友関係を細かく監視するなどの嫌がらせ),性的
強要(嫌がっているのに性的行為を強要された)のいずれか1つでも受けたことがある女性が,
33.2%で,10人のうち3人は何らかの暴力を配偶者または異性のパートナーから受けた経験が
あることを明らかにしている。配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス)の被害件数は年々増加し,深刻な社会
問題となっている。DVは,グローバルな問題としても取り上げられ,多くの科学的もイデオ
ロギー的0理論学的視点から研究されその介入と処霞が考えられるようになった。
IⅣは,その被害者の多数が女性であることから,フェミニズム理職家達によるその問題解
明,処置方法が研究されている。フェミニズム理賎では,女性が暴力の被害を被る背景には,
女性が現代社会で経済的,社会的に抑圧された状況に履かれていることを指摘している。
本稿では.DVをフェミニズム理競の視点から,次の4つの項目を中心に分析する。:1)
暴力.2)パワー,3)性とジェンダー,4)結婚
沖縄大学人文学部紀要第13号2011 1.ドメスティック・バイオレンスについて 1.DVの定義 DVを定義する方法は樺々である。ある著者は.DVを.身体的,あるいは心理的レベルの
行為を含め,定琴しているのに対し,他の著者は,診断可能な損傷を起こす身体的暴力に限っ
て6定義づけてい愚。フェミニズム理鐙ではDVをどのように定鶴づけているのだろうか。 ポニー・凪力一ソン伽nnieE・Carlson)は.DVは.一般に.身体的,心理的。経済 的,性的な形態の暴力を含む6》と述べているも例えば,身体的暴力には殴打,蹴飛ばす,凶器 による身体職I損傷などが含まれる。心理的暴力には,無視,社会的孤立,虐待の脅迫,離婚の 脅迫'何頭の非;賎‘愛,情を差し控えるなど,経済的暴力には,相手の個人的財産に損害を加え る,金銭'・物質の供給鞍差し控える,性的暴力には,相手の同意を得ず性行為を求めるレイプ などがあげられる。 フェミニズム聯篭は,樗般に.DV瀬謡Iこる動機が,震れらの暴力鮮剰識を使ってb相手 をコント圃蓉ルα鋼するごとにある蕊見なしでいる。暴力がj箪確相手に損儀漣蝋雷を加え る行為認あるのI覇鯵墜DVはj露力をふるうことによづてt相手をコシトロール:・麦癒Iする 意図を含んでい職さ さらに,フェミニズム理鎗では.DVが起こる背最に‘男性はr社会的.政箔的;経済的に 女性よりも優位な力毒持っている状況があることを指摘している。フェミニスト以外の理論家 の中に賎男性造索燃平等な力潅持っている状況で,暴力力嘱こるとする「ジェンダー中立」 の立場を主張している者もいるが,フェミニストは『ジェンダー中幽”の立場が,女性が社 会的,政治的,経済的に不利な立場に置かれているという状況を見落としていると批判してい る。フェミニズム理論に基づ<DVの定蕊は次のように明示できる。 1)親密恋関係において相謬凌支配・コントロールする宇段として暴力を行使する 2)男憐の女M陸に対する優位海力を利用し暴力を行使する 「コントローメル&Iという曾葉は,多くのフェミユストの著者達によって.DVの定j義の中で 力説されている. 2.コント側キルの零段としての暴力 ソルペイグ・アナねボアスドッティアは,DVを,親密な関係Jにおいて.『女性骨毒徐々に支 配・コントロール謙覇状況を徳立する」膨作られた態度J"で三あると述べている。:言い換えれ ¥,DVは.職制的溌コントロールを体系化する』9)ことを生み出す,;形作られた態度である。 そ扇の形作場賦雄暴力的態度のメカニズム惑詳しく醜明するため'.ボアスドツテイア漣ダストツクホルム(St咽城m)症候群趨讃に営及しぅ男女間の暴力的関係を,人質達補護者(誘拐
者)皿の関係と同等と考えた。この理論では,被害者である女性は,心理的,嫌俸的に孤立化 させられる。屋の孤蕊稚態冊で,男性は,喰性の知覚憾知)を独占」する、女性はb男性の 目から見た自分自鎌を内割上し,暴力の超こる状況を正常と見る。この状況に騒いて,女性は, ますます,男剛腔に従腐し.その男性と鰯関係が不健全で危険になることを見抜けなくなる。 -ヅエミ黒スト心理難瀞,レノア。E・ウオーカー(LenoreE.W概恥v)は.IⅣの結果b もたらされた亥シ憐鎮態魔謹,『学習されたJ無力感」剛》と表現した。男性の繰り返しふるわ;れる暴力行為は,徐々i鱈j1議性の自発的意忠を滅少させ,女性が,男性鑓対して無力で,糖極的6従
順になることをJ学習きせるb女性は,男性のコントロールから逃げられないこと:をi強制的に信 じ込まされ,その関係からにげる意志を失う。ウォーカーは殴打された女性は,『生活状況に 対応する,効率的i創造的な反応を失い,自分自身の生活状況を直接,自分でコントロールできないことを学習する」”と述ぺている。
スーザン・シェクター(SusanSchechter)は,男性が,社会化(社会生活に適応すること)
の過程で,自分がコントロールを失った時に,不快感を感じることを学習し,不快感を感じた時に,女性に暴力身をふるうことを学習すると述べている鰯。男性の女性に対する暴力は,処罰
や訓戒という言い訳でふるわれることもある。その場合,女性は,男性が勝手に作った規擁に
ついて気づいていな狐ことが多い。男性のr親のような理屈づけ」は,女性が悪い行いをした
ため.暴力を受けるのにふさわしいという,社会の通念}を作る”・男性の暴力の爆発が,どん
な不合理な理由であJろうと,女性に対する暴力行為は,正当化される傾向瀬ある。以上で述べたように.’Ⅳは相手をコントロールする心理的効築をもたらす。女性は.男性
の視点から見た女性を内在化させ,その内在化させたものに従って行動する。この効果によっ
て,女性の知覚は男性によって独占され,女性の真の知覚または主観は,二次的となり,減少
させられる。また.DVの暴力的行為は,個人から生み出されるものと雷うより賎社会化の
過程で学習される感男性は,コントロールを失った時,自分の支配下にある相手を暴力で押さ
えつけて従属させても許されることを学ぶ。多くのフェミニストが,DVは,精神異常,病気に起因するものではなく,むしろ,一般の
異性愛のカップルに,共通に認職できるものであるとしている。さらに,フェミニズム理論で
は.DVは,社会で女性をコントロールするために利用され.これを維持するシステムが存在
していると毒えている。あるフェミニスI、達は,この状況が生み出すDVを社会的に構築され
た暴力と考えている。 3.社会構造としての暴力ここでは.DVを承認し維持している社会システムについて,さらに分析する。DVを維持
している社会システムノに内在している償条は,男性が女性に対して暴力をふるうことは,道理
にかなっているということである。フェミニズム理論では,不平等な社会的,政治的,経済的システムが存在し,そのシステム
が親密な関係にある男性の女性に対する暴力を容認し,助長していると指摘している。これら
の社会システムをフェミニスト選働の文献を基に,次のように列挙することを試みた。
①親密な関係において男性は,暴力をふるうことにより,女性をコントロール。
支麗Iすることを承翻しているシステム②父親は常に長である階層的力関係が家族構成の中に存在していることを支持し
て い る シ ス テ ム③公的,私的領域で,性的役割分業を期待しているシステム
④男性が優位なジェンダー,女性が従属的なジェンダーであることを認めている
シ ス テ ム⑤公的,私的領域で,男性の持つ経験と興味が主要で,優勢であり,女性の持つ
経験と興味は,二次的で劣等であるとするシステム⑥常に,男性は,女性よりも.社会的,物質的賛源を利用する機会が多く,その
権利が大きいことを支持しているシステム例えば,①②③は,夫婦や家族の間で,男性が常に,先導を取り,自ら責任のある決断をし,
女性は,男性に従う状況を生み出す。また,男性と女性は,家庭で,家庭外で,性的役割分業
を担うことを期待される。女性は家事・育児などの無報酬の労働を押し付けられる傾向がある。
④⑤は,社会化の過程で,男性と女性力聴った役割や態度を学習する。例えば,社会化を通し
沖縄大学人文学部紀要露13号2011 て,男樋拡,「男らしく』,女性は「女らしく」ふるまうことを学習する。⑥は,綴鏑システム を例に鞠ることがで霞就業において,男性は,より高い地位を灘得する権利、を得やすいの に対しか女鱗は,バーふなど二次的な職蕊に属し,高い地位を得る恩とが困難壁毒えられてい る6"男糞卿平職紬助長し誼い裁どれらの社会システム鎚存探す番限り,職蕊な男女
関係が善のような郵醜瀞係であれt暴力が起こる可能性は’常に存在している。
このよ裁な機会騨爽ミテムが構築される根底には何があるのか。ボアス陰ツティアは,これらの社会シ蕊謬ム戯J識餐制イデオロギーを蕊識に繊蕊されていると通ぺ定いる.譲繊畏制イ
デオロギーによオf擬職の性釣関係(男海関卿は,暁配と棚属の関納職であ篭。男性は,
生まれながらに,女性よりも働薩睡力を持ち,その生褐幡はう生物学的に自然であると考えら れているさ ‐ポアス総ツテイアは’−3簡潔世界において,家父長制イデオロギー⑳基盤となっでいる億条の 1つは.皇女雛が人間《が醤しみと罪⑳起源と考える.『ユダヤ人とクリ!スチヤンの伝承神話j齢か ら生み出:鋤@た畜些強調池ている。女性は,エデンの園で,生命を罪に陥れたため,罰卜せられな ければならないという神話は,聖書の物語が鵠って無釈されたためである賊こ伽神謡は、現 代の倫理,文畿澗雛維深くと篭めるれ,男性より女性織劣ヮた従偶的な特質を持っているこ とを濯当化するため0利悶されていると述べている。 で臓里れらの社会シ鍵テムの基盤にある概念は社会でどのように総N侍されている功だろう か。ケイトpミレヅト(Kate脳遡e⑬は,家父長制イデオロギーは『社会で,同意(承認) と暴力により維持されていると考えている1..同意(承認)は男女の性の社会化の中で得られ る。ミレットによると,『社会化jは‘次の3つの部類:①地位(身分),②気質,③役割に分 類される。①地位とは,公に露められている身分のことで,ある特#定の個人につぐが薦審きや 職務上置かれでいる立場である。②気質は,個人の性格や人格を示している。性に関して雷え ば"男性の気質は鶏らしさ,女性の気質は女らしさと見なされる。③役劉は,ある火に割り当 てられた役目である。 この社会化の3つの繍が,社会で家父長制を永続させる役割を果たしているという。例え ば①地紘に関しで賎:男性が優勢であるとする鶴見から.男性に鶴#雌な地位,女?性に劣位の 地位を保織している葡働気質にりいでは,『男らしさ」の特徴?である攻I鯵健,知丸力強さ● 有効性な篭は,優位海:グループに属し.『女らしさ」の特徴である消極性ホ’無知,従順i無効 化などは,従属的グループに属すると考えられている。③役割の認類ではb女性肱家事に従 事)する蓬とを期待される一方,男性漣ゥ、達成感,興味〆大望を持つことのできるH篭蕊に従事す ることを期待される。 DVは,女性をコントロールする手段であり,社会構造によって承鯛されているとするこれ らの’フ垂ミニズム理誌を検討してみると,1)家父長制イデオロギー.2)社会化の中で得ら れる承認3)暴力,という3つの要素を見出すことができる。男性の女性に対する支配を維 持するだめsこれ惨の霊騒は相蕊に作用しあっている。寒父長制イデオ厩ギーは,社会化によっ て浸透し,維持されこの社会化によって作られたシステムを破壊する識みがあれば.暴力に よってそ昌鰯試みは減少させられるのである。例えば,家父長制を社会化によって身につけた夫 に対して,妻が反抗的態度をとったり,家父長制システムを破壊する試みがあオ1ば,夫は暴力 によっ確その識み翻溌少させるの稲ある。 Ⅱ、パ璽圭(力》 フェミ農ズム理識では.DVは,男性が女性を擬雷するため,男性の優位な力を誤用する状況において発生すると考えている。この状況の背景には,異性愛の親密な関係にあるカップル の間に,不均衡な力関係が存在している。男性賎優位な力を持ち,女性が劣'位の力を持つ。 男性はその優位な力を利用して,女性をコントロール・支配する。 ここでは,パワー(力)について麓ずる。多くのフェミ星スト達飢パワー《力)は.「パ
ワーオーバー」(力による支醐または.「コント画一ル・支配』と圃じ意味に解される傾向が
あると述べている。産の力の定;鍵『パワーオーパー』は,パワー(力)の一般的な概i念として
社会に浸透している。「パワーオーパー」(力による支配)の概念は.どの様に生じ普及したの
か,モ二カ.ホイット伽nikaI肋③を参考に蟻鎗していく。また,『バワ≠オーバー』の概念は,フェミ黒ズム理齢家によれば家父擬制イデオ風ギーに由来していると考えられてい
る。フェミ星ズム理論では,この「パワーオーバーjの代替案として『力」の新しい定義を提
案している。その『加の新しい定蕊について,ナンシ一°C。M・ハー1,ソック(NancyC.
M・Hartsock)を参考に輪ずる° 1.力の定醸パワー(力)は,身体的な力.樋力,力強さ,コントロール,影響力bリーダーシップ,支
配などの犠々な雷葉と関連づけて定義されている。英語の雷葉.p⑪w唾は6商いラテン語の
語源,「noterej(できる)に由来する。多くの『パワー』に関する定蕊が『できる』または
『能力』の意味と関蕊している卿。また,力は.r力強い」『嬢力な」といつ耀惑傭の状態を表
す雷葉としても使われている。さらに.力は,人間が.ある環境や周囲の人に適応し,互いに
影響しあう時,その人の資源(資質》として,使うことができる。機々な学者が,力を,社会関係の相互作用に関連して定義している。例え賎パウラ・ジョ
ンソン(PaulaJohnson)は,力は「人に考える,感じる,何かJをさぜることのできる能力」
であると定義している鋤。もし.ある人が力を使った職それ職影響と呼ぱ札その影響が成
功すれば,コント画一ルと呼ばれる。ジョンソンは,3つの要素:力,影響力.コントロール
が,あらゆる人々の生活の一部となっていると述べている。フェミニズム理論家たちは,どの様に.力を定護しているのだろうか。ボアスドッテイアは,
『力は全ての人間関係の中に広がっている』と述べている”・力は,一人の人間に存在してい
るものではなく,他の人との関係の中に存在している。ボアスドツティアは,力は●、絶対的
『静態的jなものではなく,むしろ.噛対伽峻えられる』物だと述べている。
ナンシー,C・班・ハートソックは。力は個人の財産ではなく.むしろ.人々が集まる地域
共同体の中に存在すると述べている。ハートソック賎力が個人の『能力』『エネルギーj「才
鯛勘果」と関連して定義されることを批判している。なぜなら.『世界に影響を及ぼし,世
界を変えようとすることに焦点があてられ,その行鶏によって.他の人に危糟を与える可能性
がある」鋤からである°力は,胸か(人/物)に影響を与え,コントロールする」意味ととらえがちな,一般的傾
向があり,力の定義は『支配」や「コントロール』の意味と関連付職て考えられやすい。こう
した「力」の定鍵の中では,影響する人,影響される人・力を持つ人,力を受ける人.優位の
力を持つ人,劣位の力を持つ人など.2分極にわかれる°常にb一方の当事者が変化を与え,
もう一方の当事者が変化を強いられる。力の関係賎常に,支配と従属の関係として解釈され
る危険性をはらんでいる。沖縄大学人文学部紀要第13号2011 2.パワー溌一パー《力による支配) モニカ・ホイツトは,龍文の中で,米国社会では,力の意味を『力随よる支配」と見る傾向 があると指摘している。社会は.n晦事を起こす能力」『目に見え,量逢[図ることができ,首尾 一貫した効果を人びとや状紬に与えることができる才能に,価値を置く傾向がある麺。この 能力や才能は肝繍火が物事を変えるために,または,何事かをコント画一ルするために,どれ だけの力を持謬でい毒かによる。『パワーオーパー」(力による支配)の概念の由来を税明する ためもホイットは,サラ・ホーグランド《SarahHoagland)とシャロン・ウェルチ侭haron Wも1曲)を参考にしている. ホーグラン膳は文献の中Jで#現代の米英翻の倫理観ば0父子主義の奉賀を反映した『父親ら し粒愉理勧宅あると述べている旬この晩親らしし噛理観』の中で謹鰯されでいることは, 『道篭的働きjまたは随徳的に行動する能力」である”・道徳的に行動することとは,欲望
から独立して行動することである。その道徳性は,人の感情から理挫を切り離して考えること
を要求している。「感情を理性でコントロールする」というこの倫理鶴は,長い歴史の中で, 『力によるコントロール」の価値観を生み出し普及させてきた”・英米社会で,ミ蕊徳とは,理 性的本質が動犠的本質をコントロールすることである。ホイットは,どの価値観が,米国社会 随浸透し,人間が自分自身達コントロールすると同時に,人間が脅威塗感じるものや人をコン ト回一ルすること巻鍵励していると述べている。 ウェルチは交餓の中で,『抑圧的な力は,もっと大きな道徳的目的に服従することによって, より大きな力渥得ることができる』”と述べている。ホイットは,米国文化に根ざした椴威あ る神学概念紙全能の神をあが吟,絶対的な力に高い評価を置いていると指摘している。ホイッ トは,神の絶対的力議あがめる礼拝は,人間が,いっそう,力審切望することを強要し,絶対 的カヘの服従は,人間が,他の人間を支配する力を持つことを正当化することを助長すると述 べている。この様に,全能鰯神と,神の絶対的力をあがめるという.米国社会に機ざした神学 概念は,ある個人がj他の個人をコントロールする力を肯定的な能力とみなし,その能力に高 い評価を霞くことを奨励している。 『父親らしい愉理観」や全能の神をあがめる僧仰が利用されて,犠裳坐燕暴力や戦争を二生み出 してきた歴史がある。例え賎侵略戦争や植民地支配は,自国の領土拡大や資源の獲得を目的 として行われるが,支配国は.噸手園が理性を持たない野蛮な人種であり,我々が理性を持っ て教育しなければならない』という蕊別的な倫理観を振りかざし,自分たちがあがめている神 惑絶対化して,暴力をふるったり戦争を行うことを正当化してきた。DVもまたj同じ状況下 で起こる。男性は,理性的であ⑬,全能の神から力を得る櫓利を持っている。女性ば感情的・ 動物的で,男俊よりも劣る箸であり,男性が●道徳的倫理観を持ってう女性を教育しなければ ならない。L教育する時には,暴力を使うことも許される。 『力による支融r力によるコントロール」の僧条と価値体系は,長い歴史を通して形作ら れ〆社会に浸透し。利用されている。『力による支配』の価値観が,『父子主鋤峻親らしい 倫理馳畷父長制』の毒えに深く根ざしていることがわかる。 3.ツェミ墨ズム理輪における『力』の概念 あるフェミ塁罵群建は●「力による支馳の概念が,社会で一般的に,「力」の定義として認 められていることに同意している。この『力による支配』の概念は,文化的,歴史的に構築さ れ,社会に浸透している。さらに,この『力による支配」は,男性支配と女性従腐の性的力関 係に適応されている。ハートソックは,男,性の女性に対する嫌悪感が,’家父長制イデオロギーや男女間の不均衡な
力関係の起源であると指摘している。また,女性の性的興奮が噸密で身体的喜び』から得ら
れるのに対し,男性の女性に対する性的興奮は,女性に対する職意と支配Jの感情に曲采し ていると述べている卸。ハートソック賦これらの性的特質と性的興奮雛敵意と支配欲の感情から生じているという考えは,男らしい性と男らしい性的興奮の概念であ番と結鎗づけている。
すなわち,これらの性や性的興奮に見られる概念はb優位な立場にある男性のジェンダーの経
験と視点から理解され解釈されている。男性男らしい文化,そして男性の歴史が,男性の女
性に対する擾位性を表現する性と性的興奮の概念を構築し,理論化しているというのである麺。
家父長制により生み出された「力jまたは『性的関係』の概念が.峻配力』であるなら,
フェミニストの経験と視点は,どの樺に,『力」や唯的関係」の概念を体系化しているのだろうか。ハートソックは,力の理議飢地域社会の理議であると強調している。力と地域社会
は,お‘互い連結しあっている.地域社会が組織化され,維持されていく方策賎地域社会の中
にいる人々が持っている力関係の形による。もし,人々の力闘係が,「支配・従麗の鰯力』に
よって体系化されれば.『地域社会全体が支配・従腐という形によって,体系化されていく」卸
と述べている。よって,女性の性の経験によって体系化された地域社会は,家父長的形態とは
違った,形態の社会となるのではないか。ハートソックは,ハナ・アーレント(HannahArendt)の「力」の理議に言及し‘力は,
地域社会を団結させる手段であり,力は地域社会を構成する手段であると定蕊している。さら
に,フェミニストの「力」の概念を理解する上で,重要な三つの点を指し示している。1)「支配するjという意味の力の理解を明圃に否定すること,2)力を「暴力jの意味と区別す
ること.3)力を,脇力して行動する』ことに再定義すること”。「力」の定義が一般的に,『支配』の定義になる傾向があることに雷及して,アーレントは,
力が「ただ§行動するという人間の能力ではなく、協力して行動する能力」鋤で‘あると述べて
いる。力は,個人的財産ではなく,むしろ,「グループに偶し,グループが団結するところ」
に存在している。グループが消えれば,力も消える。また.力は.身体的力や体内に存在して
いるものでもなく,むしろ,『人々が集まり,協力して行動する」時に,生じるものであると
述べている。フェミニズム理論による「力jの定義と家父長糊に由来する『力」の定羨は対照的である。
一方が.聴力・共同」であるのに対し,他方は,『支配力』である。女性の性の経験が,「愛
や親密感,喜び」などと表現されるのに対し,男性の性の経験は(すべての男性がそうとはい
えないが),『敵意と支馳と表現されることがある。また.フェミニストの提案する性的関係
は,『対等』『平等」であり,家父畏嗣が体系化した性的関係は『支配と従属jである。
私たちの社会や文化は,長い家父長綱の歴史の中で‘男性中心主義の視点・経験によって構
築され,女性の視点・経験は,二次的,劣等と見なされてきた懸史がある。。私たちは.もう一
度,女性の視点・経験の重要性を認識し,検討し,女性の観点から定義した異性の力関係,そ
して「力」の定義を,社会に反映させていかなければならない。 以上の文献を参考にしたフェミニズム理翰における『力」の概念は次のようにまとめられる。1>『力」は「力による支配』または卿睡・支配』の意味と一致するもので漣なく,
『力による協力j「力による測結』の意味と一致するものであゑ‐ 2)『力」は,暴力,心理的圧力,強制的力の形態とは正反対のものである。 3)『力」は,男らしい性とは区別される,女性の性.女性の生命力から生じる『愛の 力や活力」を通して表親することができる。沖縄大学人文学部紀頚第13翻加11 フ淫ミニズム燕職臆おけ鞍異性の力関係は,決して6支配と従属の関係ではなく,平胤等の関 係である。女性の力儀男継の力と平等であるべきであり,建設的灘係を築くために6女性の 力はひ男3陸の力と共握儀く蔭とができる。このような協力的・協同的な異性の力関係塞篭うやっ て,築い窓いくの燕熱俸的腿吟味し検講していくことが,DVを根絶し,平等な社会を築いて いくため臆も鐘要である。 班.性とジエンダー 異性間鋤不均衡な力関係は回DVを引き起こす基盤となっている。異性間の不均衡な力関係 は,家父長綴Iイデオ掴ギーを基礎に持つ社会化の過程を通して形作られていく。社会化とは, 人々が社会1膳適応し鞭いく過程であるが,その過程で.男性と女性はb異なった方馴法で養育さ
れげ教審を受け,社会に躍聴していくことを学び,人間関係を築き。また,社会で異なった待
遇を受輸霧bルー般にb唯jは,生物馨的特愛であり。『ジェンダー』は心理学的現象であると 欝われでいる.ジェシダーはj社会化の過程と深い関わりがある。総会化;の過程の中でd異性 間の不均衡な力関係はどの様に構築されていくのか,フェミニストの著者運の文職を通して, 議稔していく. 1.ジェンダーと社会化 フェミニズム理購廼は,『男らしさ」『女らしさ」が,男性と女性の生物学的特徴ではなく, むしろ男性と女性雁よって.〆社会的,文化的に学ばされた態度であることを主彊している。例えば,ケイト・ミレツト隣幼児のジェンダーの性格砿生後18ケ月までにつくられると述ぺ
ているaa・幼児を取り囲んでいる両親や大人の嘗葉や.鴬葉によらない態度は》J幼児のジェン ダーの性格に影蕃を及ぼす。その幼児が,男らしさ,女らしさの性格を身につけるざか.つけないかは,その幼児の生物学的本質によるものではなく,社会的,文化的に割り当てられた性格
である。 ミレットは,子閲供たちの性についての個性に関して,子供たちは壁の穂に,雷語により影響 を受けるか職している卸。例えば,たいていの大人が,『この子は6男の子,女の子?」と 患れることや,男Jの子に対して,「こんにちは,坊や。」と話しかけ,女の赤ちゃんに対して,『この子bかわいいでしよ。」と雷う°子供を取り巻く環境の中で,大人たちや他の人々の会話
を通して5子供は話L方を習得する前に,自分自身のジェンダーを意識することを学ぶ。
子供の挫が5男性が女性か艇よって,その子供の社会的状況が§予供をどの犠腫脊でるべき
かを決醗患。もしが子供が男なら,その子は,男の文化の中で青でられ,女の子なら,女らし い文化の車鞭育てぢ蹴る。子供は,性の違いによって,社会的状況の中でb違っ雄生括の経験 選持つよう槌なる。ミレツトは,両親友達,そして文化が。その子供に.f気跳性格,興 味,:馳位,綴値,身綴り,表現力』に関して,その子供の性によって,適切な方桧で考え,行 動するごとを教え*要I求すると述べている”。 さらに.ミレットは,「異性間の気鶴的違い」を維持するため,社会化のシステムが,どの 様に樵隠しているか鋭畷している躯》。例えば,社会化のシステムは,若い男性が攻挙的衝動を 発達さ蝋女性が瑛繋剛醗助を抑制し,自分の心の中へその攻麟性を向けることを;職際する。 攻繋的である男性伽または,消櫛的である女性のジェンダーアイデンティティーは,社会化 のシステムを通しで確立される.ミレットは,男女の「ジエンダーアイデンティティー」が基 盤どなっているこの職会システムが.家父長制イデオロギーを維持させていると述べている。 家父長蝿社会にお腕て,「攻鍍性」は,支配者階級の特質であり,聴順さjはj1泊属グループI の特質であるためJ,攻撃的特性を持った男性は,従順さの特性を持った女性を支配することが できると説明している。 この支配・従属の男女関係を支持している家父長劇社会では.男性は。女性を支配しコント
ロールすることを学び;女性を支配しコント画一ルするために嘘ある程度の精神的・身体的
暴力を利用しても許されるという観念を持つ。このような背景で深刻なDV問題が生じてくる。 2.ジェンダーと政治キャサリン・マッキーノン仙曲鯉§“・A*MacKinnon)は,性は,力の問題であり.性
は,政治に反映されるべきであると主張している。女性の政摘をI副葬するためには,女縦の人
間的な生活,特に,女性の性の生活を知らなければならないというのである麺。また.『個人
的なことは政治的なこと」であることに営及し,ジェンダーの問題は,ただ卜個人的なもので
はなく,政治的なものであると述べている。ジェンダーは,男性と女性の力関係に関与してい るので,ジ灘ングーの問題も,政讃のレベルで話しあわなければならないとしている.,ジェンダーの問題は,女性の性的抑圧の問題であり,女性の抑圧された経験を率直に話し合うことは,
政治と社会にある影響をもたらすにちがいないと主張している・鑑者自身も含めて.女性自身が6抑圧されている蓮とに気づいていないことが多い。社会で
仕事を持ち,満足に生活している中で,差別されていることに鈍感になっているのかもしれな
い。また,知らず知らずのうちに,男女の支配・従属関係を社会構造化することに加胆してい
ることもある。そこで,視点を変えて・固常生活を見つめ直し,『変だな』鴨心地が悪いな」
と思うところがあればその理由を突選詰め,吟味し,発露していくことも大切である。女性が抑圧さ抗,:麓別されている状混に気づき,その差別されている経験や状況?を発僧していくこ
とによって,社会に影響をもたらすだけではなく、女性自身が,薗分のさらなる可能性に気づ
きウ成長していくきっかけになる。また,同じ立場にある女性連の生活を磯霧する助けにもな
る・女性の抑圧・差別された経験は,平等な社会を築いていく上で,とても麓要である。また,
抑圧されてきた女性の視点から.政摘や歴史や文化を吟味し‘表現してく,そして,社会に訴
えていくことが大切であ晴る。支配・従属の男女関係力職会で承認されている以上,どんな異性愛のカップルにも搾取的,
暴力的関係は想定できる.DVは,私たちにも超こりえる身近な間題として認識し,もし,周
囲にXⅣの被害者がいれば,女性として親身になって支援していくことは璽要である。決して,
加害者と同じ視点に立って,被害者に落ち度や欠点があるのではないかと鮭索したり資めたり
してはいけない。 マッキーノンは,性的自由は,女性漁蝋性と同じように,性を表現することが許されること であると述べている.それを『性的革命』鋤と呼んでいる。男性と女性は噌発的な性交」唯の平等」を持つことができる。もし.女性が,『彼女自身の樋を自由に表現することができき
たら、異性愛の性交は奥義を授けられるだろうと言っている。理性的な「性』は,支配と従属の力関係として表されるぺきではない。男らしい性は.「支
配・侵書を楽しむためのもの』であってはならず‘女らしい性は,「支配・侵害されるのを楽 しむもの」であってはならない。性的興奮からの喜びは,男性と女性の両擬によって分かち合 われるべきである。 Ⅳ、結婚 結婚は,男女が夫婦になることである。IⅣは,一般に,結婚した夫婦間で起こる問題であ沖縄大学人文学部紀要第13号2011 る触結婚のしきたり狐私たちの社会において,どのようにDVの問題と関連しているのか, フェミニストのキャロル・ペイトマン㈹arolPateraan)とスーザン・モラー・オキン (Susan剛lar伽fin》を参N毒に議論する。 1.結婚の定義J キャ画ル・ペイトマンは,著書『性の契約」の中で,結婚は正しい契約でないことを指摘し ている鋤。契約が,平等な当事者により.二人の当事者が平等な生活葱持つことのできる平等 な拘束力と総寵を与覚られて,結ばれなければならないのに対し,結婚は,一人の当事箸であ る夫が妻に対しで力を編魚使し支配,することができるのでb本当の;鍵絢でばないと述べている。 もし,結婚郡正しい契約なら.女性賎夫と同じ根拠で,市民としての生活を持つべきである と主張してい職 例えばザ日本では,結i婚したら,女性は男性の苗字を名乗らなければならないか峡錦別姓 という制嘆Iもあるが,まだ十分に普及していない)また,結婚したら,女性は,男性の家に嫁 鐘男性側の家系に入る§という意味合いがあって,男性の家系のしきたりに従っ逼畢振る舞 い行動することを要求される。沖縄で磯女性が男性の家へ嫁ぐことをf根91き』と蝋い,女 性の実家から男性の蕊べ女性の根薄噛え替えられることを意味し,年間行事(正月や摺明祭b 葬式など)ではb嫁が率先しで料理を作ったり準備をする重労働を要求される。このように, 結婚によ毎て,<女性の身分は6男性の家系に属し,自由を拘束される。 ペイ陰マンはb##結婚漣ついての法樺を改藩すべきだと主張iしてい乱現代の絢瞬は*伝統的 世界と家父長制の創造であると指摘し,もし,社会的秩序が.f相互協力,または,協力的社
会主調を土台りご作磁直されてい蹴ぱ,結婚における異性間の自由な関係はb可能であると主
頚して?いる毎聴力#鯉共同社会的社会主義Jについて,ペイトマン憾計隣同で行う家事』, 子育でのJ瞬間鱗任』;i『共同の資源』は,異性間の平等な性的関係の基礎毒iつくるために麓要 であると塞顕しでいる識。この理想的状溌の下で,財産と所有物は.異性間で平等臆舞配され 性的満足と愛摺はj異性間の自発的で平等な意志から得られる。女性は市民樋と溌治の権利を 得られ,濁時に,女性賎男性の協力で,経済的自立を得ることができる。 ベイ勝マン1は,現在の織婚鰯問題点をいくつか指摘している。結婚③関係;は,懐を支援す る夫の義務と夫に奉社する蕊の義裁J鋤として表すことができると述ぺ,Jそれは『保謹と服従 の関係1であると擢祷している。これは,法律に書かれていないげれども,私たちの社会の習 慣と規範の中で,皿一般職蕊として深く組み込まれている。これは,夫婦関係において,妻に対 する夫の支配の意味毒含むも妻は,経済的に,夫に依存しなければならず,妻賎経j済的保渡 を得る代おりに,夫鱈奉仕する。そこには,「保護と服紬の関係が築かれる。社会瞳,この 結婚関擁切興タイル審議要する傾向がある。 結婚後男性は,夫としての地位(身分)を得て,女性は。妻としての録分を得る回結婚に おいて・性の違いは,夫と妻の地位を決定するために重要であ感男性獄i妻に態る這とがで きずけ女性は,夫になることができない。ペイトマンは,もし結婚が本当に,契約上のもので あるなら,性の違いは問題とされるべきではない,と述べている4n。もし,結婚が;本当の契約 なら,ゞ夫と妻の身分賎性別で決諭られるぺきではない。 性的相違を基礎とした身分が消えることによって,男性は夫の身分や役目から解放され,女 性は妻の身分や役目から解放される。性的役割分業がなくなり,繭方の異性が,家事・育児・ 仕事慨済的自立)を鶴力して分担することによって,両方の利益のために平等な$認蟻鑑活を 送る産産ができる。イぞこでは,-『支配・従属の関係』は消失し,『平等・』共同、協力』的関係が − 1 0 −築かれる。
現代の結婚における不平等な男女関係の根底に流れる家父長的観念として,ペイトマンは,
カントα・鷲ant)の考え方を批判している。カン膿は.女性を侭人として見ているが.『女
性紙政治的‘市民的理性(判断力)を欠いて恥る』と理解し,『女性餓理性でなぐ感情の
生物』であり,道徳の原理メを理解することができない,よってb理性の生駒である男性減,結
婚生活をコントロールすべきであり.女性は夫に鵬従すべきであると考えている鋤。ペイトマ
ンは結婚についてのカントの考えは.夫の家父長的権利を確立する助けをしていると批判して
いる。ペイトマンは,唯の家父長的構溌』鋤の改善を支持している。改善するためには,性的相違
が,公的・私的領域で除かれるべきであり,男らしさ,女らしさの概念が政措的に問題とされ
るべきであると論じている。女性は生まれつき従属者であるとする考えは,打ち破られるべき
であり,異性愛の関係は,主人と従潟者の関係ではなく.自由であるぺきだと提案している.
結婚は,一人の当事者である女性が.生まれながらの従属者としてではなく,男性と平等な
個人として,契約に入るべきである。そうするためには.社会の改善を必要とし‘男性の家父
長的権利が取り除かれなければ女性は.男性と平等の個人として,結婚生活に入ることはで
きない。そして,結婚における夫婦関係鯛主人と従属者の関係である限り.また.社会が男
性に家父長的構利を認めている限り.DVの問題を根本から解決することはできない。
2.結婚と傷つきやすさオキ‘ンは結婚における女性の傷つきやすさについて競輪している。オキンによると,傷つき
やすさに賎2つの要素があると述べている。1つは,生まれながらにある『幼児の傷つきや
すさ」や嶋気による傷つきやすさ』で,もう1つは,「社会的に構造化された女性の傷つき
やすさ」鋤がある。「社会的に構造化された女性の鰯つきやすさjの中には.「容認できない関係』と購認で
きる関係」の傷つきやすさがあると述べている。その鶴つきやすさが容認できない関係である
のか,容認できる関係であるのかを区別するため』には,『その関係から身を引くことができる
能力」を調べる必要がある。従属している当事者賊耐え難い犠牲《損鋤iもなく,身を引く
ことができる限り,支配している者は.搾取することができない。よって,"傷つきやすさの容
認できない関係は,従属している当事者が,支配している当事跨昔との関係から身を引くことが
できない,身を引く能力がない,ことを意味すると述べている。例え嘱妻域結婚鰯関係か
ら身を引く能力(経済的,社会的に自立できる能力)を持っていれば,その関係は.容認でき
る関係ということができるが,妻が夫との関係から身を引く能力がなければ,妻は,容易に夫
から搾取され.虐待されることになる。これは容認できない関係と富える。
オキンは,現代の『ジェンダー構造化された結婚は.女性を社会的に生じた傷つきやすさの
周期の中に巻き込む」伽と述べている。例えば.総婚における役割分業は,妻を.夫よりももっ
と傷;つきやすく,搾取されやすくする。結婚自体が,女性を傷つきやすくずるのである。女性
は,男性からの経済的支授を得るために,子供の世話役となり.主婦の役割を果たし,男性に
とって.魅力的となるように期待される.才キンは,「歴史と現代の結婚の憤り行による女性の従属と依存,女性‘⑱子育ての責任の伝
細鋤によって,女性は傷つきやすくされていると述べている。また,女性の傷つきやすさは・
女性達の生まれながらの特質ではなく,むしろ『現在の家族の法律』、賎婚の伝統的鰯樹に
よって社会的に構造化されたものであると結鐙づけている.沖縄大学人文学藤紀要第13号別11 以上述べたように,結婚によって,女性は.さらに傷つきやすい立場に履かれる。結婚にお ける性的撰叡陶鼎業はり女性艇育児や察事をすることを期待し,経涜的自立を困難なも鰯とする。
そしてt夫との関鶴から身醤引くことができ談搾取や虐待を愛けやすぐする。DVも,この
ような傷つきや索い女{蝿が,暴力巻ふるわれても,結婚から身を引くことができない状況毒 権り出蛎で恥<訂交性瀧《繊嚇瞳化された傷つきやすい状況をいかに改善していくか.今,後,検 討していかなければならない。 3.耗繍における性的役割分業・』女性嘘たいてい⑨議溌の中で,男性よりも,家事と子育てを多く行うが絃婚した女性の労
働力湖増式心寵嘩患イにもかか』わらず,外で働く妻は,家事について,すぺでの責任を担っているかオ:キン鶴I異性の間沼か賀金のある労働力は,かなり.女性に移動し霧いる一方,霧賃
金の労剛働はけまシたく,男性に移働しておらず,家事を平趨;に分担してい篭夫婦はまれであ る』“と述べている。女性はげ嫁ゥ蹴や稼児の労働を強いられるのか。オキンは,ほとんどの人々は,多くの家
事労働をしたくないjその塗めfあまり力悪持たない女性が.必然的に,耗鰭におい迩議夢のJ
責ソ任毒食う.と述べている.また.夫は高い賃金をもらい,妻より,名声のある仕察を持って
いるので『夫の僻鍾畷先される傾向があると述ぺている.ほとんどの夫婦は歩女性が,もっと家事をするべきであり,それは,賃金の低い.名声の低い仕事を持っている人が,家族内で,
家事をやらなければならないと考えているのである。オキンは,女#性は,エネルギーと時間を家事のために消費しているので,女性力晩鐘金のあ
る仕熱霧ゆだねる時間とエネルギーは,夫よりも限られていると,譜摘している。女性の二重
の」醗荷のため,寒察と子育ての不平等な分配のため,労働力の機会は,男性よりも制限されて いるのである。例えぱ,「フルタイムで働いている女性の平均の給料と男性との比率は.21蟻から鋤歳にかけで'83:1側剰iあり.45歳から晩歳の賃金差は,60胤刈00と増えている』鋤と報
告している。このように,女性臆家事や瀞児な雲の無報酬労働が押し付けられる背溌臓賦繊祷腰おいて
男女の不平簿な力関係がある.女性は男性よりも劣った者であるとい詠翻躯繍か駒劉謝酒M
の厄介な労働感女性に押し付けられる。そして,外で働く女性には‘彦重の負誕鋪§強いられ
る°女性賎脊堀索鵜に時間を費やすため,外での仕事に費やすエネルギーや時間は限られ,
賃金権掲蕊のj膳差も生まれる.女性は,社会で,または家庭内で.不当に搾取されている状況 があ患。糊瞬嘩関係から身を引けば6つまり離婚すれば,この不平等な関係から鵬獄J出せるのか〃離
婚後の状況も,女性にとづては厳しいものである。離婚した家庭(Singlem⑥伽e跡の半数が,
貧困レベル以下鰯生活をしているという。オキンは,女性が離婚後.さらに不平等な斌況に鐙 かれることは,女維が呼供に対する日々の貿任」柵を負わなければなら欺い理由に起懸して いると述べている。離婚のケーズの棚%は,予供は,父親よりも母親と暮らす。母親はう繊斉 的自立に加えて9育児+の蝿豊を両方背負わなければならなくなる。 女性ば,耗蛎中も,結姥畷も,傷つきやすさの状況の中に麓かれている。熱性の糊衡な力 闘膝腫よって蝋燭された性的綬馴分業の中で,女性の傷つきやすさの状況剛馳されていく. 私たち総憾こうした刻生の鯛つきやすさの状況を改善していくために働かなければならな い°「交醗と従属J伽耗総鰯係ではなく,異なった方法で,女姓一人ひとりが,侭火的生活を 作れるような寒雄やぅ仕事場の組織作りを考えていかなければならない。拙会はぴ勢除と女性?の間で,賃金のある仕事と,無賃金の仕事を平等に分配することによってゥ社会的に構造化さ
れた女性の傷つきやすさの状況を改善していかなければならないと思う。
おわりに以上述ぺてきたように,DVの問題は,ある特定のカップルに起こる個人的な問題ではなく.
社会的な問題である.DVが起こる背景には,男女の差別的社会構造があったり。夫婦間にお
ける不均衡な力関係があったり,社会化の過程で教育されていく男女の特徴にみられる攻撃性
や受け身催社会が押しつける家父長制的な結婚のしきたり等の原因が存在する。家父鍵翻社
会の中で育った人々にとって,壁のような関係においても,どのカップル膳もnVが起運秒え
る可能性があることを示唆している。DVを根絶するには。家父長制社会の改善が必要である。男性が女性を支配し,コントロー
ルすることを肯定的にとらえている社会,男性と女性の関係が,「保穫と服従」の関係で表さ
れる社会を改善し,女性がb社会で,または家庭で,重重の負担巻強いられ鴇など,搾取さ札
利用されている状況を改善すること力泌要である.また,女性の人権が踏みにじられている状
況を認鍵することが大切である。DV被害者の体験は.私たちの社会を改善していく上で,貴重なものである。抑圧された側
からの経験を聞くことは。抑圧された者,社会の底辺にいる弱者の視点を教えてくれる。また.
女性が抑睡されたジェンダーであることを認識させてくれる.DV被害者の悲しみ.辛さを共
有することで,女性達は,社会を改善していく力を得る。DV被害者の体験を通して,さらに
家父長制社会の根深さや恐ろしさを認議し,その社会を改善していく対策をさらに生み出して
いくことができる。DV被害者餓画V被害を容易に訴えていける環境,そして,訴えた後も,社会的・経済的
自立を得られる環境づくりをしていくことは大切である。DV被害者の人権が守られる社会作
りを今後は考えていかなければならない。そして,この社会からDVの問題をなくすためには,
DVの原因となっている家父長制社会を改善していくために女性一人一人が行動を起こしてい
く必要がある。 注1)SolveigAnnaBoasdottir,¥物伽蝿凡wer,andJus"砿AF剛賊St働油効88吻鮒如鰯戒地〃鈍灘Mt
蝋鱗.Sw鯉印i.UppsalaUniversitylibraiy,1998p.193.2》内閣府男女共同参画周ホームページ(httptf/www.gender.即jp)公表壷料:澗査◇統§f
嘘偶者からの暴力に関するデータ』3)混偶者暴力防止法腫基づき.都道府県の婦人相餓所など適切な施設が,配偶者暴力相鱗支授センター
の樹龍を果たしている。4)内閣府男女共間参画蝿ホームページ公表資料:調査・統計「配偶者からの暴力に関するデータj5
配偶者閥における犯罪の被害者験挙件数の割合)5)内閣府男女共同参i画婦ホームベージ公畿変料:鯛査・統計『男女間における幾力に関する澗謹」
6)Bonnie遮偽rlson,蜘紬sa醜j鰯eirWiv鍛乃tccffcei惚I伽andFa蜘鋤必娩侭tudiesinSo曲1
W割飽顕剛i画“鋤APrograms,No14).1992,p.427.7
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Oaks,California,Sa顕獅剛Icatkms,1996,p、22. 8)SolveigAnnaBoasdottir.前掲注1p、35.沖縄大学人文学認紀要第13号20皿 鋤駒1噸騒餐狐鞠急伽sdottir.稲掲注1p.部. 1⑲SolvetoAn靭職・伽s伽蛎r.筋掲溌1pm 11)LenoreB.Walker.1耐賊滅肋蜘e銘.NewYork,HarperandSow,Publi釧鴻rs,Inc.1979,p. 棚. I鋤I鋤鰯e零灘馳I妙良卿掲注u厩別 捌 S 噸 如 粉 鍬 h 鋤 脇 、 x 伽 卿 伽 剛 柵 伽 撫 : 7 U V 惚 伽 s 柵 鋤 卿 s ( ^ n e m 伽 蹴 … 鷺 富加#蛾動s蜘鰯蛸勲u伽伽dP嘩鯛1982,p4!19. 蛾S噸蹴鋤mSxUat.舗慧職13い劉駄 1副肋靭R鋤蝿g鱒畔馳IveigAnnaBossdottar,Eve8.Buzawaa岨伽rlQ・職lasawa.BounieM. Ca曲。XLSanaLoue,LewisOkMn,SusanSchediter,Lenore・Walker. 16》剛vesgAnna馳躯恥t血赫掲注1p.58. 跡j鯛恵卿mm蹴鞠職b圃繍職1p.60・ I砂随膨Mill鶴細§鞠I伽。。Lcmdon,Virag○醗遵鍋1971,p、m. 19)David4僻さm蹴卿b卿購駒獅JfiilNW.NewYoifc,FreePr配馳1973,p.6・
m)PaulaJohnson,Wmmand撚紬駄勘c鮒f洲c蛇加〃物測卿・WWN醜伽I&Coine伽秘,
1978,p.鋤班 21)SolveigAnnaBoasdottir^前掲注1p.52. 鋤測an卿錘肌翻諏剛砿j捌鋤蹴and…;Tarn斌α藤脚伽蹴胤漁伽刺伽迩I帥.伽”・ 剛砿蝋east…綱、蜘自i〃駒B蛎閲83,P.22S. 鋤伽ik&踊叩t●4と鰯郷趣蹴聯允s槻鋤s海〃伽瀞out伽脚痢鱈娩1物蜘礎伽蹴酬翻伽・Clarem@鴎 Ca脳勉mia,Clare…tGraduateUniversityt跡伽.p’36. 鋤恥nil臓伽也鏑掲注鯛pM. 鋤‘4蜘嵐鮎燃珊t・%鵬翻3p40. 鋤雰恥戯雄I跡*・前織鍵3pi5. 27)Nan啄逼灘Hartsock.前掲注22 −鋤NancyCM.咽曲rtsock.前掲注22 29)NancyCM・亜叡rtsock・前掲注躍p.3. 30)NancyCbmHartsock.前掲注22p.32. 31)Na繭聯心湖.Hartsock.前掲注22p.32. 32)KateMill銚b前掲注18p,鮒. 33)Katelumi鮎飼掲注18p鋤. 測臓teMin鮎前翻迩8P、3L 忽帥K戯”澱Ⅲ鱗#煎織瓢8P剛. 鋤仇地錘ineAMacKinnon,TmardAJF伽紬#了卿γ呼珊e跡.Cambridge,M弧麹achusetts,1989, p,120. 37)CatherineA.MacKinnon.前掲注36p、134. 鋤QurolFa卿期靭・匪鰍俵…伽加Cf鋤'絢域働嚇測趣,StanfordUniversityP闘錦.i988.p』認・ 鋤)偽xiA勘糎man.I鵬注銘p、1肘. 40)Carol恥卿nan,煎鯛注38p.l鋪. 剣》&蜘Ml駒卿”駄撒畷注鯛砂167. 棚仇lOl恥醇、卿.前掲注38p4闘司 蝿》CarolPatema皿.前掲注38p.!師.jjjjjj判柘輪靭網棚
SusanMollerOkin,JusticeGenderandtheFamily.USA躯asicBooks,Inc.1^9,p.136.
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翻辞本稿をまとめるにあたり,貴重なご指摘・ご教示を頂きました先生方に,感謝申し上げます。
戸
·Domestic Violence
Analysis from Feminism Theory
Kazuka
NAIU\ZATO
Abstract
This paper examines domestic
violence
from the perspective of feminismtheory:
AferniDist
scholar, Solveig Anna Boasdottir mentionsthat
domesticvio1e~'
is
caused
by f'notaccidental
individual moralwrongs. but
social
prac-tice
in
patriarchal societies."Many
feminist authors consider the issueof
do· mestic violence not as a problem of individual sickness or abnormality,but as a consequence of the unequal .power relationship between male and female.historically'and culturally structured through sexist beliefs, norms and 'values of our society. I examine the discriminatory social structure in the context of domestic violence and. search for its solution.
Ke)'WOI1I :patriarchy, do~tion and subordination, gender. power relation-ship, the sexual. division of labor