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ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2005-J-7 要約 金融資産の譲渡の会計処理に関する一考察 ―利益計算との関係を中心に―

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Academic year: 2021

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IMES DISCUSSION PAPER SERIES

INSTITUTE FOR MONETARY AND ECONOMIC STUDIES

BANK OF JAPAN

日本銀行金融研究所

〒103-8660 日本橋郵便局私書箱 30 号 日本銀行金融研究所が刊行している論文等はホームページからダウンロードできます。

http://www.imes.boj.or.jp

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金融資産の譲渡と会計処理に関する一考察

――利益計算との関係を中心に――

よ し だ け い た 吉田 慶太

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備考: 日本銀行金融研究所ディスカッション・ペーパー・シ リーズは、金融研究所スタッフおよび外部研究者による 研究成果をとりまとめたもので、学界、研究機関等、関 連する方々から幅広くコメントを頂戴することを意図し ている。ただし、ディスカッション・ペーパーの内容や 意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究 所の公式見解を示すものではない。

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IMES Discussion Paper Series 2005-J-7 2005 年 4 月

金融資産の譲渡の会計処理に関する一考察

―利益計算との関係を中心に―

よしだ けいた 吉田 慶太* 要 旨  金融資産の譲渡の会計処理は、金融資産が細分化されて取引されるという 証券化取引の実態、特にそうした取引における留保リスク・便益の状況を貸 借対照表上、適切に表示するという情報ニーズに応える形で検討が進められ てきた。しかし、金融資産の属性や保有目的に応じて異なる会計処理方法を 使い分けるという混合モデルを前提とした現行の会計基準のもとでは、損益 計算書の利益計算面との整合性、特に会計情報としての測定 の信頼性や譲渡 対象である金融資産の属性や保有目的との関係が重視されており、貸借対照 表上での証券化取引の実態開示は、これらの制約下での検討にとどまってい る。今後、混合モデルを前提としつつ、貸借対照表における証券化取引の実 態開示と損益計算書における利益計算といった異なる目的を達成する方向で 金融資産の譲渡の会計処理を検討するに当たっては、例えば、利益計算上の 制約条件にかかる適用方法の工夫や注記情報の拡充、さらには損益計算書と は別に貸借対照表面での情報提供機能を拡充するといったアプローチも考え られよう。 キーワード:金融資産の譲渡、認識・認識中止、利益計算、証券化、財務構 成要素アプローチ、リスク・経済価値アプローチ、リスクと便益 JEL classification:M41 * 中央青山 監査法 人公認会 計士 本 稿 は 、 筆 者 が 日 本 銀 行 金 融 研 究 所 に 客 員 研 究 員 と し て 在 籍 中 に 取 り 纏 め た も の で あ る 。 本 稿 の 作 成 に 当 た っ て は 、 日 本 銀 行 金 融 研 究 所 の 方 々 か ら 有 益 な コ メ ン ト を 頂 い た 。 も っ と も 、 本 稿 で 示 さ れ て い る 意 見 お よ び あ り 得 べ き 誤 り は す べ て 筆 者 に 帰 属 し 、 日 本 銀 行 、 金 融 研 究 所 あ る い は 筆 者 の 所 属 す る あ ら ゆ る 機 関 の 公 式 見 解 を 示 す も の で は な い 。

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目 次 1.はじめに... 1 2.金融資産の譲渡の会計処理に関する現行基準 および新たな提案の特徴... 2 (1)現行基準および新たな提案の基本的な特徴... 2 (2)各基準・提案の適用例... 11 3.金融資産譲渡の会計処理と利益計算の関係 ...16 (1)混合モデルを前提とする基準・提案の場合...16 (2)全面公正価値モデルを前提とする提案の場合...21 4.金融資産の譲渡の会計処理のあり方に関する 若干の考察...22 (1)利益計算面からの制約条件...23 (2)金融資産の譲渡の会計処理のあり方...25 5.おわりに...26 【参考文献】...28

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1.はじめに 近年、金融市場の発展に伴い、金融資産の証券化が盛んに行われ、それに 伴い多様な金融商品が開発されてきている。また、このような金融市場の発 展に対応する形で、会計制度においても金融商品に関する会計基準の設定が 急速に進められている。特に、金融資産の証券化を取り扱った金融資産の譲 渡の会計処理1は、それらの作業の中でも重要なものと位置付けられ、さまざ まな検討がなされてきた。 金融資産の譲渡の基本的な会計処理には、金融資産の認識を中止する「売 却処理」と、金融資産の認識は継続したままで同資産を担保に借入が行われ たとみなす「金融処理」がある。金融資産の譲渡が、譲渡人が譲渡後におい て譲渡資産と何ら継続的な関係を持たないような単純な資産の売却の場合に は、譲渡資産に関するリスクおよび便益はすべて譲渡人から譲受人に移転す ることとなる。こうした場合について、会 計上、当該資産全体を対象に売却 処理を行うべきことには、異論はなかろう。しかし、金融資産の証券化の実 務では、資産の譲渡後においても譲渡人が譲渡資産に対して、リスクや便益 の面で何らかの関係を有する場合が少なくない。例えば、金融資産にかかる 経済的便益は譲受人に移転するが、譲渡人は保証の提供や劣後部分の引受け 等の信用補完措置により何らかのリスクを留保するといった場合が生じてい る。以下、本稿では、このような譲渡人の有するリスクを留保リスクという。 これは、特に断らない限り、譲渡資産について譲渡人が譲渡後に買戻義務や 保証債務などを負うことにより、譲渡人に将来キャッシュ・アウトフローが 発生する可能性があることを意味する。 このように証券化の実務においては、金融資産の将来キャッシュ・フロー に関する経済的便益やリスクを分解して取引するという実務が発達してきて いる。このため、金融資産の譲渡の会計処理については、譲渡人が譲渡資産 のリスクや便益を留保するような資産譲渡の会計処理のあり方、特に、こう した留保リスク・便益に関する貸借対照表上の認識のあり方が重要な課題と なる2。しかし、こうした留保リスク・便益の認識を含めた金融資産の譲渡の 1 金 融資 産 の譲 渡 に 関 す る 会 計 処理 と して は 、譲 渡 人の 貸 借 対 照 表 か ら 資産 の 認識 中 止 が な さ れ る か ど う か の ほ か に 、 譲 渡 人 の 連 結 財 務 諸 表 に お い て 譲 受 人 で あ る 特 別 目 的 事 業 体 (SPE) を連 結す る かど う か が問 題 とな る が 、本稿 では 、 前者 の み を扱 うこ と とし 、後 者 に つ い て は 特 に 取 り 上 げ て い な い 。 2 金 融資 産 の譲 渡 人 が 譲 渡 資 産 に対 し てリ ス クや 便 益を 何 ら か の 形 で 留 保す る よう な 資 産 譲 渡 に お け る 会 計 処 理 の あ り 方 に 関 す る こ れ ま で の 検 討 と し て は 、例 え ば 宮 田[2004a, b]、 を 参 照 。

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会計処理は、収益の認識を伴うこともあるために、損益計算書上の利益計算 のあり方とも密接な関連を有している。そこで、本稿では、金融資産の譲渡 の会計処理について、主に利益計算との関係に着目しながら国際的な動向を 整理・検討し、そのあり方について若干の考察を加えることとしたい。 以下、2 節でこれまでに基準化され、あるいは提案されてきている主な金 融資産の譲渡の会計処理に関して、その基本的な考え方の特徴を整理する。 そのうえで、3 節で各基準・提案における金融資産の認識中止要件を利益計 算との関係に着目して分析する。4 節では、3 節の分析を踏まえて、金融資 産の譲渡の会計処理のあり方に関して若干の考察を加え、最後の 5 節で、本 稿全体をまとめることとする。 2.金融資産の譲渡の会計処理に関する現行基準および新たな提案の 特徴 本節では、金融資産の譲渡の会計処理について、(1)現行の会計基準およ び新たな提案の基本的な考え方の特徴を簡潔に紹介したうえで、(2)代表的 な取引への適用例を通じて、各基準・提案の異同を浮き彫りにすることとす る。 (1)現行基準および新たな提案の基本的な特徴  ここでは、現行の会計基準および新たな提案の基本的な考 え方について、 金融資産の認識中止要件を中心に整理を行う。 イ.現行基準 金融資産の認識中止要件にかかる現行基準としては、①英国基準に代表さ れるリスク・経済価値アプローチと、②米国基準に代表される財務構成要素 アプローチに大別されると考えられる。 ①英国 FRS5 号(リスク・経済価値アプローチ) 英国の会計基準において、金融資産の譲渡の会計処理を規律しているのは、 英国の財務報告基準(FRS)5 号「取引の実質の報告」である。FRS5 号で は、企業の財務報告は、取引のすべての側面と影響を勘案し、取引全体を考 慮して判断される「取引の実質」を報告するものであるべきだとされている

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(par.14)。また、FRS5 号の適用範囲は、金融商品だけでなく非金融商品も

含めた財務報告全体とされている(par.11)。

FRS5 号は、資産の譲渡等に伴う資産の認識中止要件の一般原則として、 すべての重要なリスクと経済価値(all significant benefits and risks)の移 転を 要 求 し てい る (par.22)3,4。 こ の よう な 金 融 資産 の 中 に 含まれ る リ ス ク と経済価値に着目し、その双方の重要な部分が移転するまで資産の認識を中 止しないという考え方は、「リスク・経済価値アプローチ」といわれる5。 この「リスク・経済価値アプローチ」の特徴としては、金融資産に内包さ れるリスクと経済価値は 1 つの単位(unit)として不可分なものと捉えられ ている点が挙げられる。これにより資産の認識中止にはすべての重要なリス クと経済価値の移転が不可欠であり、それらが移転していない場合には資産 の認識中止は認められない。こうした場合には、当該資産を引き続き認識す るとともに、譲受人から対価として受け取った金額を負債として認識する会 計処理(金融処理)を行うことになる。ただし、すべての重要な資産のリス クと経済価値が移転していない場合でも、一定の条件を満たすときには6 3 FRS5 号においてリ スクとは 、経済 価値の金額の 不 確 実性で あり、潜在的な 利益と損 失の 両 方 を 含 む も の で あ る (par.5)。ま た 、 リ ス ク と経 済 価 値 が 重 要 か ど う かは 、 当 該 資 産 に 関 し て 実 務 上 発 生 し そ う な リ ス ク と 経 済 価 値 の 中 で の 重 要 性 に よ っ て 判 断 さ れ る べ き で あ り 、 発 生 可 能 性 の あ る す べ て の リ ス ク と 経 済 価 値 と の 比 較 で 判 断 さ れ る も の で は な い (par.25)。 4 す べて の 重要 な リ ス ク と 経 済 価値 が 移転 し たと 認 めら れ る た め の よ り 具体 的 な要 件 と し て は 、 例 え ば 、 証 券 化 の 場 合 に は 、 以 下 の 3 つ の 要 件 を 満 た す こ と が 必 要 と さ れ て い る (par.D7, D8)。 ① 取 引 が 独 立 し た 第 三 者 間 の 公 正 な 売 買 価 額 で 行 わ れ る こ と ② 取 引 が 確 定 し た 価 格 で 行 わ れ 、か つ 譲 渡 人 が 損 失 に つ い て 明 示 ま た は 黙 示 の リ コ ー ス 義 務 を 負 わ な い こ と ③ 譲 渡 人 は 、証 券 化 資 産 が 期 待 以 上 の 成 果 を 生 ん だ 場 合 、あ る い は 期 待 以 下 の 成 果 し か 生 ま な か っ た 場 合 で も 、 利 益 を 得 た り 損 失 を 負 っ た り し な い こ と 5 こ の英 国 FRS5 号 の ほか 、 米国 の 財 務 会 計 基 準 審議 会 (FASB)実 務 広 報(TB)85−2

「CMO の会計 」(1985 年 公表)や 国際会 計基準(IAS)公 開 草 案 E40 号「金 融 商 品」(1991 年 公 表 )、 同 E48 号「金融商 品」(1994 年 公表)も 「リ スク・経済 価 値 アプロー チ」に依 拠 し た も の で あ っ た 。 例 え ば E48 号 では、「 実質的に すべて 」のリス クと経済 価値が 他に 移 転 し た 場 合 を 認 識 中 止 の 要 件 と す る 、 と さ れ て お り 、FRS5 号と 同 様 の 規 定が なさ れ て い た 。 6 具体的に は、次の 条件を すべて満 たす場合 とされ ている(par.27)。 ① 資 金 調 達 が 特 定 の 資 産( ま た は 類 似 資 産 の ポ ー ト フ ォ リ オ )と 結 び つ い て お り 、か つ 、 借 入 の 場 合 に は 、当 該 資 産 の み が 担 保 と さ れ 、資 金 調 達 主 体 が 保 有 す る そ の 他 の 資 産 は 担 保 と さ れ て い な い こ と ② 資 金 提 供 者 は 資 金 調 達 主 体 の 他 の 資 産 に 対 し て 明 示 的 に も 黙 示 的 に も リ コ ー ス を も た ず 、 か つ 、 資 金 調 達 主 体 は 資 金 提 供 者 に 対 す る 支 払 義 務 を 負 わ な い こ と ③ 資 金 調 達 主 体 の 経 営 者 は 、結 合 表 示 が 用 い ら れ て い る 各 財 務 諸 表 に お い て 、損 失 を 負 う

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「 結 合 表 示 (linked presentation)」という表示方法が認められている。こ の結合表示とは、貸借対照表において譲渡対象資産の総額を表示するととも に、当該資産の譲渡の対価として譲受人から受け取った金額のうち返済不要 額を当該資産からの控除形式で表示するものである(pars.26, 27)。 さらに、FRS5 号では、例外的な会計処理として、すべての重要なリスク と経済価値が移転していない場合でも、一定のケ ース7に該 当する場合には、 資産のリスクと経済価値に重要な変化があるとして、当該資産について、部 分的に認識中止することや、全面的に認識中止したうえで買戻義務や保証債 務を負債計上すること(par.23)が認められている(以下、本会計処理を「FRS5 号の例外的な会計処理」という)。 ②米国 SFAS140 号、日本基準および改訂前 IAS39 号(財務構成要素アプロー チ) 金融資産の譲渡に関する米国の現在の会計基準は、「リスク・経済価値アプ ローチ」には問題点があるとの考え方に立ったうえで8、金 融資産の認識中止 義 務 は な く そ の 意 図 も な い こ と を 明 示 す る こ と ④ 資 金 提 供 者 は 、担 保 と さ れ た 特 定 の 資 産 か ら 生 じ る 資 金 に よ っ て の み 返 済 を 受 け 、そ の 他 の リ コ ー ス 請 求 を し な い こ と に 書 面 で 同 意 し て い る こ と 。さ ら に 、そ の よ う な 同 意 が 、 結 合 表 示 を 用 い る す べ て の 財 務 諸 表 上 に 注 記 さ れ て い る こ と ⑤ 当 該 資 産 か ら 生 じ る 資 金 が 、資 金 提 供 者 へ 支 払 を 行 う う え で 十 分 で な い と し て も 、資 金 調 達 者 の デ フ ォ ル ト 事 由 と は な ら な い こ と ⑥ 資 金 調 達 主 体 が 、調 達 資 金 の 返 済 ま で 当 該 資 産 を 保 有 す る 権 利 や 義 務 を 有 す る こ と を 定 め た 条 項 が な く 、ま た 、い つ で も 当 該 資 産 を 再 取 得 す る 権 利 や 義 務 を 有 す る こ と を 定 め た 条 項 も な い こ と 7 具 体 的 に は 、 取 引 が 次 の 1 つ ま た は 複 数 の ケ ー ス に 該 当 す る 場 合 と さ れ て い る (pars.71-73)。 ① あ る 資 産 の 一 部 だ け の 譲 渡 の ケ ー ス ② あ る 資 産 全 部 の 残 存 期 間 の う ち 一 部 の 期 間 だ け の 譲 渡 の ケ ー ス ③ あ る 資 産 全 部 の 残 存 期 間 の す べ て に 亘 る 譲 渡 で あ る が 、譲 渡 人 が 当 該 資 産 に か か る あ る 程 度 重 要 な (some significant)経 済価値 またはリ スクを留 保して いるケー ス 8 FASB は、「リ スク・経済 価値 アプロー チ」に 対して、以下のよ うな問 題点を指 摘して い る (SFAS140 号 pars.133-136)。 ① 「 す べ て の 重 要 な リ ス ク と 経 済 価 値 の 移 転 」と い う 点 に つ い て の 解 釈 が 主 観 的 な 評 価 に 基 づ き 行 わ れ る こ と と な り 、 実 務 上 の 混 乱 が 生 じ る 。 ② 成 長 す る 金 融 市 場 に お い て 金 融 資 産 が 分 解 し て 取 引 さ れ て い る に も か か わ ら ず 、金 融 資 産 を 分 解 で き な い 資 産 と み な す こ と は 、 金 融 資 産 の 譲 渡 の 効 果 を 忠 実 に 反 映 し な い 。 ③ 例 え ば 、 証 券 化 に お い て 同 じ く 劣 後 部 分 を 保 有 し て い る 場 合 で も 、(a)単に劣 後 部 分 の み を 取 得 し た 場 合 は 、劣 後 部 分 の み を 単 一 の 資 産 と し て 認 識 す る こ と に な る の に 対 し て 、 (b)一 旦、 す べて の 金 融 資 産 プ ー ルを 取 得し 、優 先 部 分 を 売 却 し た残 り とし て 劣後 部 分 を 保 有 し て い る 場 合 は 、す べ て の 重 要 な リ ス ク と 経 済 価 値 が 移 転 し て い る と は い え な い

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の判断規準として「財務構成要素アプローチ」を採用している。すなわち、 2000 年に財務会計基準審議会(FASB)が公表した財務会計基準書(SFAS) 140 号「金融資産の譲渡およびサービス業務、負債の消滅に関する会計」で は9、金融資産の譲渡後に存在する資産および負債の構成要素を調査すること によって分析するアプローチを採用し、各当事者は、譲渡後に支配している 資産および負担している負債を認識するとともに、譲渡により支配を放棄し た 資 産 お よ び 消 滅 し た 負 債 は も は や 認 識 し な い こ と と さ れ て い る (pars.9, 142)。このように、金融資産がその譲渡において構成要素に分解できるとい うこ と を 前 提 に 、 譲渡 後 に 存 在 す る 各 構成 要 素 に 対 す る 「 支 配 」(control) の 有 無 に 応 じ て 認 識お よ び 認 識 の 中 止 を 判 断 す る 考 え 方 は 、「 財 務 構 成 要 素 アプローチ」と呼ばれている。 証券化の実務では、金融資産の将来キャッシュ・フローから得られる経済 的便益とリスクが分解されて取引され、経済的便益は譲受人に移転するが、 譲渡人に何らかのリスクが留保される場合がある。FASB は、金融市場にお いて金融資産が分解して取引されている実態を財務諸表に反映させるという 実務上の要請を考えると、「財務構成要素アプローチ」が採用されるべきであ ると説明している。これは、金融資産の価値は契約上の権利内容によって決 まる部分が大きく、その価値の実現において企業の経営技術が果たす役割は 限られているため、金融資産の価値を分解して捉えても特段の支障は生じな いとみられることを背景にしたものと考えられる(par.148)10。また 、一般 に、資産とは「特定の企業に支配された将来の経済的便益」、負債とは「特定 の企業において現在の義務から生じる将来の経済的便益の犠牲」と定義され るが11、財務構成要素ア プローチは、こうした 資産および負債の定義とも整 と し て 、優 先 部 分 お よ び 劣 後 部 分 の 両 方 を 資 産 と し て 認 識 す る こ と に な る な ど 、取 引 の 順 序 に よ っ て は 異 な る 会 計 処 理 を 要 求 す る こ と に な る 。こ う し た こ と は 、会 計 専 門 家 は 会 計 上 に お い て 現 実 の 差 異 を 隠 し て も 、 ま た 差 異 を 偽 造 し て も な ら な い と す る 概 念 フ レ ー ム ワ ー ク の 規 定(FASB 概 念書(SFAC)2 号「 会 計 情報の 質的特 徴」par.119)に 反 す る こ と に な る 。 9 1996 年 6 月に FASB は 、金 融資産の 譲渡に 関する会 計処理 として SFAS125 号を公 表 し 、 新 た な ア プ ロ ー チ で あ る 「 財 務 構 成 要 素 ア プ ロ ー チ 」 を 採 用 す る こ と を 決 定 し た 。 同 ア プ ロ ー チ は 、2000 年 9 月に 公表さ れた SFAS140 号に お いて も引き継 がれるこ ととな った。 10 一方、非金融資産 の価値 について は、契約 上の権 利内容よ りも企 業の経営 技術の 影響が 大 き く 、 企 業 の 経 営 技 術 と と も に 資 産 が 一 体 と し て 活 用 さ れ る こ と に よ っ て価値 が 生 み 出 さ れ る と 考 え ら れ る こ と か ら 、 そ の よ う な 資 産 を 分 解 し て 捉 え る こ と は 適 当 で な い と 考 え ら れ て い る (par.148)。 11 例えば、FASB の概念書(SFAC)6 号「 財務 諸表の要 素」で は、資産 とは「過 去の取 引 ま た は 事 象 の 結 果 と し て 、 あ る 特 定 の 企 業 に よ り 取 得 ま た は 支 配 さ れ て い る 、 発 生 の 可 能

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合的であるとされている(pars.141, 142)12 なお、「財務構成要素アプローチ」において、金融資産の認識の中止はあく まで譲渡人が所有していた金融資産に対する「支配」が放棄されたかどうか で 判 断 さ れ る が13、 支 配 の 放 棄 が 認 め ら れ る 具 体 的 な 要 件 の 1 つとし て 、 SFAS140 号では譲渡資産が譲渡人から法的に隔離されていること(倒産隔 離)が必須とされている(par.9a)14 金融資産の認識中止に関する「財務構成要素アプローチ」の考え方は、日 本の会計基準(「金融商品に係る会計基準」。以 下「金融商品会計基準」とい う。)においても採用されている15。すなわち、そこでは、金融資産の認識中 止の要件として金融資産に対する「支配」の移転が求められており16(「金 融 性 の 高 い 将 来 の 経 済 的 便 益 で あ る 」、負 債 と は「 過 去 の 取 引 ま た は 事 象 の 結 果 と し て 、あ る 特 定 の 企 業 が 他 の 企 業 に 対 し て 、 将 来 資 産 を 譲 渡 し ま た サ ー ビ ス を 提 供 す る と い う 、 現 在 の 義 務 か ら 生 じ る 可 能 性 の 高 い 将 来 の 経 済 的 便 益 の 犠 牲 で あ る 」 と 定 義 さ れ て お り (pars.25, 35)、資産の本 質は経 済的便 益、負債の 本質 は経済的 便益の犠牲 であ ることが 明 示 さ れ て い る 。 12 財務構成要素アプ ローチ では、資 産を保有 してい るとは、その経 済的便益 を支配 してい る こ と に 他 な ら ず 、 資 産 の 譲 渡 が 行 わ れ た と は 、 経 済 的 便 益 の 支 配 が 放 棄 さ れ た こ と で あ る と 捉 え る こ と に な る 。 こ れ は 、 資 産 の 譲 渡 を 、 貸 借 対 照 表 上 で 資 産 と し て 計 上 さ れ て い た も の の う ち 、 資 産 の 定 義 を 満 た さ な く な っ た も の に つ い て 、 譲 渡 が 行 わ れ た も の と 捉 え る 見 方 で あ る と い う こ と が で き る 。 13 SFAS140 号におい て金融資 産に対す る「支 配」が放 棄され たものと される のは、次 の要 件 が す べ て 満 た さ れ た 場 合 で あ る (par.9)。 ① 譲 渡 資 産 が 譲 渡 人 か ら 隔 離 さ れ 、破 産 ま た は 他 の 管 財 人 の 管 理 の も と で も 、譲 渡 人 お よ び そ の 債 権 者 が 力 を 及 ぼ す 範 囲 外 に あ る と 推 定 さ れ る こ と ② 各 譲 受 人( 譲 受 人 が 適 格 な 特 別 目 的 事 業 体〈QSPE〉で あ る 場合 には、その 受益 権の各 保 有 者 )が 、譲 受 資 産( ま た は 受 益 権 )を 担 保 差 入 れ ま た は 交 換 す る 権 利 を 有 し て お り 、 か つ 、譲 受 人( ま た は 保 有 者 )が そ の よ う な 権 利 を 行 使 す る こ と を 制 約 し た り 、譲 渡 人 に わ ず か と 考 え ら れ る 以 上 の 便 益 を 提 供 す る 条 件 が 付 さ れ て い な い こ と ③ (a)譲 渡人 に 対し て 、 譲 渡 資 産 を その 満 期前 に買 い 戻 す ま た は 回 収す る 権利 お よび 義 務 を 与 え る 契 約 、 ま た は(b)ク リ ー ンア ッ プ・ コー ル 以 外 の 方 法 で 一方 的 に特 定 の資 産 を そ の 保 有 者 か ら 返 還 さ せ る 能 力 、の い ず れ か を 通 じ て 、譲 渡 資 産 の 実 質 的 支 配 を 譲 渡 人 が 維 持 し て い な い こ と 14 米国においてこの ような 法的な考 慮が必要 とされ ている理 由とし ては、証 券化の 実務へ の 配 慮 を 挙 げ る こ と が で き よ う 。 す な わ ち 、 米 国 基 準 で は 、 取 引 の 経 済 的 実 質 を 判 断 す る 場 合 の 要 素 と し て 、 証 券 化 の 実 務 上 重 視 さ れ て い る 法 的 な 側 面 も 考 慮 す る こ と が 必 要 と 考 え ら れ て い る と み る こ と が で き る も の と 思 わ れ る ( 例 え ば 、 秋 葉[1996]p.27 参照)。 15 金 融 商 品 会 計 基 準 で は 、「 認 識 中 止 」 と 同 じ 意 味 で 「 消 滅 の 認 識 」 と い う 表 現 が 用 い ら れ て い る 。 16 金融商品会計基準 では、 次の要件 がすべて 満たさ れた場合 に、金 融資産の 契約上 の権利 に 対 す る 支 配 が 他 に 移 転 し た も の と さ れ る(『 金 融 商 品 に 係 る 会 計 基 準 』第 二 − 二 − 1,『金 融 商 品 に 係 る 会 計 基 準 注 解 』 注 4)。 ① 譲 渡 さ れ た 金 融 資 産 に 対 す る 譲 受 人 の 契 約 上 の 権 利 が 譲 渡 人 お よ び そ の 債 権 者 か ら 法 的 に 保 全 さ れ て い る こ と

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商品会計基準」第二−二−1)、その点は米国基準と類似している。もっとも、 「支配」の移転の具体的要件において、日本基準では、①米国基準と同様に 倒産隔離が要件とされているものの、一定の場合には、第三者対抗要件の具 備だけが要求され、債務者対抗要件の具備までは求められないこと、②米国 基準では要件とされている「譲受人が譲渡人にわずかと考えられる以上の便 益を提供しないこと」が求められていないこと等の点で、日本基準と米国基 準の間には相違がみられる。 ま た、 改訂 前の 国際会計 基準 (IAS)39 号「金融商品:認識および測定」 (以下「改訂前 IAS 39 号」という。)17も米 国 基準と類似しており、企業は 契約中に特定された便益に対する権利を放棄したときに金融資産またはその 一部に対する「支配」を失い、その場合、当該金融資産またはその一部の認 識を中止することとされている(par.35)。しかし、改訂前 IAS39 号はこの ような「支配」の喪失により認識を中止するという一般原則とその例 示のみ を 規 定 し て お り18、 米国 基 準 や 日 本 基 準 の よ う に 「 支 配 」 の 移 転 の 具 体 的 要 件を明示していなかった。特に、改訂前 IAS39 号では、米国基準や日本基準 では「支配」の移転の要件とされている譲渡人等からの倒産隔離が求められ ていない点が特徴的であった。 ② 譲 受 人( 譲 受 人 が 一 定 の 要 件 を 満 た す 特 別 目 的 会 社 の 場 合 に は 、そ の 発 行 す る 証 券 の 保 有 者 )が 譲 渡 さ れ た 金 融 資 産 の 契 約 上 の 権 利 を 直 接 ま た は 間 接 に 通 常 の 方 法 で 享 受 で き る こ と ③ 譲 渡 人 が 譲 渡 し た 金 融 資 産 を 当 該 金 融 資 産 の 満 期 日 前 に 買 い 戻 す 権 利 お よ び 義 務 を 実 質 的 に 有 し て い な い こ と 17 本稿の改訂前 IAS39 号とは 2000 年 10 月改 訂の IAS39 号を 指 す。そ の後、2003 年 12 月 に 新 た な 改 訂 IAS39 号が 公表され 、2005 年 1 月以 降 開 始 の期よ り適用す べき扱 いとな っ て い る ( 脚 注25参照)。 18 例えば、譲受人が 譲渡さ れた資産 の便益を 獲得す る能力を 有する 場合にの み、譲 渡人は 「 支 配 」 を 喪 失 す る と さ れ 、 そ う し た 場 合 の 例 示 と し て 以 下 の よ う な 項 目 が 挙 げ ら れ て い る (par.41)。 ① 譲 受 人 が 譲 渡 資 産 の 公 正 価 値 の ほ ぼ す べ て を 自 由 に 売 却 ま た は 担 保 に 供 す る こ と が で き る 場 合 ② 譲 受 人 が 事 業 目 的 が 限 定 さ れ て い る 特 別 目 的 会 社 (SPC)で 、 SPC また は そ の会 社 の 受 益 証 券 の 保 有 者 が 譲 渡 資 産 の 便 益 の ほ と ん ど す べ て を 享 受 で き る 場 合 な お 、 上 記 の 譲 受 人 の 能 力 は 例 示 以 外 の 方 法 で も 示 す こ とが で き る と さ れ 、 限 定 さ れ て い な い 。 ま た 、譲 渡 人 が「 支 配 」を 喪 失 し な い 場 合 の 具 体 例 も 列 挙 さ れ て い る(pars.38-40)が、 そ の 中 に は 「 支 配 」 の 移 転 の 考 え 方 と リ ス ク と 経 済 価 値 の 移 転 の 考 え 方 が 混 在 し て お り 、 首 尾 一 貫 し て い な い と 指 摘 さ れ て お り ( 山 田[2002])、 この ことがそ の後の IAS39 号改訂 の 契 機 の1 つ になった と考え られる。

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ロ.新たな提案  現行基準のうち、英国基準の一般原則である「リスク・経済価値アプロー チ」は、認識中止の判断規準が単純であるという長所があるものの、証券化 等における金融取引の実態が財務諸表に十分に反映されない可能性があると いう短所がある。また、米国基準の「財務構成要 素アプローチ」についても、 金融取引の実態が財務諸表に反映され易いという長所があるものの、認識中 止の判断規準が複雑であるという短所がある。このため、新たな基準を模索 する国際的な動きとして、以下のような提案が行われてきている。これらの 新たな提案に基づく考え方については、反対意見が多く、当面は実際に基準 として導入される可能性は低いと考えられるものの、今後の金融資産の譲渡 の会計処理のあり方を検討するうえで参考となる部分が少なくないため、本 稿の分析対象とすることとした。 ①JWG ドラフト基準(構成要素アプローチ) ジョイント・ワーキング・グループ(JWG)19より 2000 年 12 月に公表さ れたドラフト基準「金融商品および類似項目」(以下「JWG ドラフト基準」 という。)では、金融商品について全面的な公正価値会計、すなわち原則とし てすべての金融商品を貸借対照表上、公正価値で評価するとともに、その公 正価値の変動をすべて当期の損益計算書に反映させる会計処理の採用が提案 されている(pars.69, 136)。そこでは、資産の属性や保有目的よりも外形に 着目して金融商品の範囲を決定し、一律に公正価値会計を適用するという考 え方が採られている。 このような金融商品の全面公正価値会計の前提のもとで、JWG ドラフト基 準では、多くの金融商品を契約上の権利の束という構成要素で構成されてい る も の と 捉 え て (par.3.8)、個々の構成要素について認識および認識の中止 を行うべきかどうかを判断することが求められている(par.3.15)。このため、 JWG ドラフト基準において金融商品の認識および認識の中止の考え方とし 19 日本を 含む主要 9 カ 国およ び 国際会 計 基準委 員会 (IASC:International Accounting Standards Committee の 略称 。2001 年 4 月 の 組織改正に 伴 い 、現在 は国際 会計基準 審議 会< IASB:International Accounting Standards Board>とな っ て いる。) からの 参加者に よ り 構 成 さ れ る Joint Working Group of standard-setters の略 称 。な お、JWG ドラフ ト 基 準 策 定 過 程 に お け る 各 参 加 者 の 見 解 は 、 各 参 加 者 個 人 の 見 解 で あ る と さ れ て い る 。

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て 採 用 さ れ た ア プ ロ ー チ は 、「 構 成 要 素 ア プ ロ ー チ 」 と 呼 ば れ て い る20 , 21。 「構成要素アプローチ」では、金融資産またはその構成要素のうち、契約上 の権利を有するものについては引き続き認識を行うとともに、もはや契約上 の権利を有さなくなったものについては認識の中止を行う。また、新たに有 することとなった契約上の権利または義務については、金融資産または金融 負債を認識することになる(pars.31, 37)。 ただし、JWG ドラフト基準では、上記のような会計処理だけでなく、個別 の判断規準22も定められ ている点は留意する必要がある。 20 JWG は、 認 識 およ び認 識中 止の 問題 を解 決 す るた め に 、前 述の 「リ スク ・ 経 済価 値 ア プ ロ ー チ 」に 基 づ く 英 国 の FRS5 号 と「財務 構成要素 アプロ ーチ」に 基づく 米国の SFAS140 号 と の 調 整 を 図 る こ と に よ っ て 共 通 的 な ア プ ロ ー チ を 開 発 す る こ と を 試 み た 。 し か し 、 両 者 は 両 立 で き な い と 判 断 し 、新 し い ア プ ロ ー チ と し て 、「 一 括 ア プ ロ ー チ( 認 識 の 中 止 と な る 可 能 性 が あ る 事 象 に 着 目 し 、 過 去 に 認 識 さ れ た 資 産 の す べ て の 認 識 の 中 止 を す べ き か ど う か を 問 う も の )」と「 構 成 要 素 ア プ ロ ー チ 」の 2 つ の ア プ ロ ー チ を 検 討 し た が 、最 終 的 に 「 構 成 要 素 ア プ ロ ー チ 」 を 採 用 し た 。 21 JWG が「 構 成 要素 アプ ロー チ」 を採 用す る こ とと し た 主な 理由 とし ては 、 以 下の 点 が 指 摘 さ れ て い る (pars.3.16-3.25)。 ①   市 場 の 経 済 実 態 を 最 も よ く 反 映 す る 金 融 市 場 の 参 加 者 は 、 全 体 と し て の 金 融 商 品 を 権 利 ・ 義 務 に 分 解 し 、 取 引 し て お り 、 そ の よ う な 見 方 や リ ス ク 管 理 の 方 法 と 整 合 す る 。 ②   公 正 価 値 シ ス テ ム の 要 求 を 最 も よ く 満 た す 金 融 商 品 の 公 正 価 値 を 測 定 す る 前 提 と し て 、 企 業 の 有 す る 権 利 ・ 義 務 の み を 考 慮 す べ き で あ る と 考 え ら れ る 。 ③   実 際 の 適 用 が 可 能 で あ る 分 解 に よ っ て 新 た に 生 じ る 資 産 や 負 債 は 多 く な く 、ま た 市 場 の 経 済 実 態 を 反 映 す る た め 、 通 常 、 取 引 時 の 価 格 は 十 分 理 解 さ れ て い る 。 ④   利 用 者 に と っ て の 理 解 可 能 な 会 計 情 報 で あ る 金 融 取 引 の 複 雑 化 に 伴 い 、 そ れ ら に 含 ま れ る リ ス ク の 開 示 や 説 明 に 対 す る ニ ー ズ が 増 大 し て い る 。 22 具体的には、実質 を有す る金融資 産の譲渡(譲受 人が金融 資産の 譲受人と なるこ と以外 に 実 質 の あ る 事 業 を 行 っ て い る 場 合 、 ま た は 、 譲 渡 さ れ た 構 成 要 素 が 譲 渡 人 か ら 隔 離 さ れ て い る 場 合 に 、 当 該 譲 渡 は 実 質 を 有 す る と さ れ る <par.36>) に つ い ては 、 以下 のよ う な 構 成 要 素 ア プ ロ ー チ に よ る 認 識 ・ 認 識 中 止 の 具 体 的 な 判 断 規 準 が 別 途 定 め ら れ て お り 、 下 記 ① ∼ ④ に つ い て 検 討 し 、 そ れ ら に 該 当 し な い も の に つ い て 、 下 記 ⑤ の 適 用 が 求 め ら れ る 扱 い と な っ て い る 。 ① 譲 渡 人 が 譲 渡 資 産 に 対 し 、 継 続 的 関 与 を 有 さ な い 場 合 に は 、 譲 渡 人 は 当 該 資 産 全 体 の 認 識 を 中 止 す る (par.51) ② ① に 該 当 し な い 場 合 で 、譲 受 人 が 、(a)譲受 資産のす べてを 第三者へ 譲渡する 実際上 の能 力 を 有 し 、か つ 、(b)その実 際上の 能力を一 方的に 、かつ、譲渡に関 して追 加的な制 約 を 課 す 必 要 な し に 行 使 で き る 場 合 に は 、 譲 渡 人 は 譲 渡 資 産 全 体 の 認 識 を 中 止 す る (par.55) ③ ①、②に 該当しな い場合 で、譲渡 人が、受 取対価 の全額の 返済を 行うか、または 行う可 能 性 の あ る 義 務 を 有 す る 場 合 は 、 資 産 の 認 識 を 継 続 し 、 代 金 を 返 却 す る 負 債 を 認 識 す る (par.64)

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なお、JWG ドラフト基準は、金融商品を細分化して捉えている点では前述 の財務構成要素アプローチと似ている が、金融資産の譲渡において譲渡対象 である金融資産の倒産隔離が認識中止の必須要件として課されていない点で は SFAS 140 号や日本基準とは異なっている23。 ②IAS39 号改訂草案(継続的関与アプローチ) 国際会計基準審議会(IASB)は、金融資産の認識中止の判断規準として、 改訂前 IAS39 号の矛盾した概念24を 取り除き、曖昧さがなく内部的にさらに 首 尾 一 貫 し た 適 用 可能 な ア プ ロ ー チ を 確 立 す る 必 要 が あ る と 判 断 し 、「 継 続 的関与アプローチ」という新たなアプローチを提案する IAS39 号の改訂草案 を、2002 年 6 月に公開した25 「継続的関与アプローチ」とは、譲渡資産が分割可能であることを前提に、 譲渡人がどの程度まで譲渡資産に継続的に関与しているかを判断し、譲渡人 が譲渡資産(またはその一部)について継続的関与を有していない部分につ ④ ① 、 ② 、 ③ に 該 当 し な い 場 合 で 、 (a)譲 渡 人 が 受 取 対 価 の 一 部 の 返 済 を 行 う か 、 ま た は 行 う 可 能 性 の あ る 義 務 を 有 す る か 、お よ び / ま た は 、(b)譲渡 人 が、譲渡され た構成 要素 の う ち 譲 受 人 が ② で 示 し た 実 際 上 の 能 力 を 持 た な い も の に 対 し て 、コ ー ル ・オ プ シ ョ ン を 有 し て い る 場 合 に は 、資 産 の 一 部 の 認 識 を 継 続 し 、代 金 の 一 部 を 返 却 す る 負 債 を 認 識 し 、 当 該 資 産 の 残 り の 認 識 の 中 止 を 行 う (par.67) ⑤ 上 記 す べ て に 該 当 し な い 場 合 に は 、 譲 渡 人 が も は や 所 有 し な い 構 成 要 素 の 認 識 の 中 止 を 行 い 、 ま だ 所 有 し て い る 構 成 要 素 を 認 識 す る こ の ほ か 、 パ ス ・ ス ル ー 取 引 に つ い て は 、 原 資 産 か ら キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー を 受 け 取 る 契 約 上 の 権 利 を 有 す る 企 業 ( 回 収 人 ) が 、 最 終 受 取 人 に 支 払 う べ き キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー が 原 資 産 か ら の 回 収 額 を 全 額 ま た は 比 例 的 基 準 で 反 映 す る こ と を 要 求 さ れ て い る 場 合 に は 、 当 該 資 産 の 一 部 ま た は 全 部 の 認 識 を 中 止 す る 扱 い と な っ て い る(par.43)。こ れ は、企 業が回 収 し た キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー を 他 の 企 業 に 支 払 う 契 約 上 の 義 務 は 、 新 た な 義 務 の 引 受 け で は な く 、 関 連 す る 資 産 の 契 約 上 の 権 利 の 放 棄 と 捉 え て 、 資 産 お よ び 負 債 の 両 建 て で は な く 関 連 す る 資 産 の 認 識 の 中 止 を 行 う も の で あ る 。 23 例えば、金融資産 の譲渡 のうち、 譲受人が 実質の ある事業 を行っ ている場 合には 、それ に よ り 「 実 質 を 有 す る 金 融 資 産 の 譲 渡 」 と さ れ 、 倒 産 隔 離 は 求 め ら れ て い な い 。 24 脚注18を参照。 25 その後、IASB は、IAS39 号 改訂草 案に対す るパブ リック・ コメン トとして 継続的 関与 ア プ ロ ー チ の 導 入 に 反 対 す る 意 見 が 多 数 寄 せ ら れ た こ と を 踏 ま え て 同 ア プ ロ ー チ の 導 入 を 取 り 止 め て (IASB[2003a])、改 訂前 IAS39 号と同 様に「 支 配」 の考え方と リス クと経済 価 値 の 移 転 の 考 え 方 を 混 在 さ せ る こ と を 前 提 と し つ つ 、 両 者 の 関 係 を 明 確 化 す る 方 向 で の 見 直 し を 行 い 、2003 年 12 月 に新た な改訂 IAS39 号を 公 表し た。か かる改訂 後の IAS39 号 で は 、 金 融 資 産 の 認 識 中 止 に つ い て 、 ま ず リ ス ク ・ 経 済 価 値 ア プ ロ ー チ に よ り 判 定 を 行 い 、 そ れ で 判 定 で き な い 場 合 に は 、 当 該 資 産 に 対 す る 譲 渡 人 の 「 支 配 」 の 有 無 、 よ り 具 体 的 に は 、 譲 受 人 に よ る 当 該 資 産 の 自 由 処 分 権 の 有 無 に よ り 判 定 す る 扱 い と な っ て い る (IASB[2003b]pars.20-23)。

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いてはその範囲で認識の中止を行うという考え方である26。  なお、譲渡人が継続的関与を有している場合、その部分については資産の 認識を継続し、同時に、払い戻す可能性のある当該資産にかかる受取対価を 借入金として負債認識する(par.52)。こうした資産および負債の両建て認識 の理由につき、本草案で は、譲渡人は、当該資産 にかかる将来の便益に対し て継続的関与を有しているほか、譲受人に当該資産にかかる受取対価を払い 戻す可能性があるという意味で条件付の負債を負っているからと説明されて いる(par.C44)。 (2)各基準・提案の適用例  (1)で概観した各基準・提案における金融資産の認識中止要件の違いは、 例えば、①部分的譲渡、②保証付譲渡、および③コール・オプション付譲渡 の会計処理の違いとなって現れてくる。そこで、ここでは、各基準・提案の 異同をより明らかにする観点から、上記①∼③のケースに各基準・提案を適 用した場合の会計処理について整理する。なお、 財務構成要素アプローチの うち、日本の「金融商品会計基準」と IAS39 号は、SFAS140 号とほぼ類似 し て い る こ と か ら 、 以 下 で は 、 同 ア プ ロ ー チ に よ る 基 準 と し て 、SFAS140 号のみを取り上げることとする。 イ.部分的譲渡のケース ここでは、金融資産を非譲渡部分と譲渡部分に分割して部分的に譲渡した 場合の会計処理について検討する27 FRS5 号の一般原則では、譲渡人が非譲渡部分を保有していることにより、 すべての重要なリスクと経済価値の移転がなされていないと判断される場合 には、譲渡資産全体の認識中止の要件が満たされ ることはない(par.23)。こ 26 IAS39 号改訂草案 では、次 の 要件が すべて 満たされ た場合 に、金融 資産に 対する譲 渡人 の 継 続 的 関 与 が な い も の と さ れ る (par.37)。 ① 譲 渡 人 が 、(a)キャッシュ・ フ ローに 対する 契約上の 権利 を 放棄して いる、も しくは (b) 一 定 要 件 を 満 た す パ ス ・ ス ル ー 契 約 を 締 結 し て い る こ と ② 譲 渡 に お い て 、(a)譲渡 人が 当該契約 上の権 利を再取 得する こと にな る、もし くは(b)譲 渡 し た 契 約 上 の 権 利 の 価 値 が 変 動 し た 場 合 に 、譲 渡 人 が 支 払 義 務 も く し は 受 益 権 を 有 す る こ と と な る よ う な 契 約 上 の 条 項 が な い こ と 27 具体的には、適用 例を単 純化する ため、金 融資産 を優先部 分と劣後 部 分に 分割し て譲渡 す る 場 合 で は な く 、 金 融 資 産 を 元 本 部 分 と 金 利 部 分 に 分 割 し て ど ち ら か 一 方 を 譲 渡 す る 場 合 や 、 金 融 資 産 に か か る キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー を プ ロ ラ タ で 譲 渡 部 分 と 非 譲 渡 部 分 に 分 割 す る 場 合 を 想 定 す る 。

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の場合、譲渡資産を担保とする借入取引としての会計処理(金融処理)が行 われ、譲渡資産を引き続き認識するとともに、受取対価を資産・負債両建て で認識する扱いとなるため、譲渡による売却損益は一切計上されないことに な る28。 た だ し 、 前 述の よ う に 、 譲 渡 資 産 に か か る す べ て の 重 要 な リ ス ク と 経済価値の移転がなされていないと判断される場合であっても、リスクと経 済価値に重要な変動がある場合で、かつ、一定条件(脚注 7 参照)を満たす 場合には、例外的な会計処理として、金融資産の部分的な認識中止が認めら れる(par.23)。この場合、売却の対価として得た資産から譲渡部分の帳簿価 額を控除した差額が売却損益として計上されることとなるが、譲渡資産の帳 簿価額を譲渡部分と非譲渡部分に按分する際の測定が困難であり、結果とし て生じる損益が不確実なときには、発生する可能性のある損失は全額を引当 金として計上する一方で、利益のうち不確実な部分は繰り延べる扱いとなっ ている(pars.24, 74)。 SFAS140 号では、「財務構成要素アプローチ」に基づき、「支配」の放棄の 要件 を満 たす 限り 、金 融資 産の 部分 的な認識 中止 がな され る(par.9)。この 場合、譲渡部分と非譲渡部分の帳簿価額は、譲渡時の譲渡部分と非譲渡部分 の公正価値の比に基づき、譲渡前の金融資産の帳簿価額を按分して求められ る。また、当該資産の譲渡の結果として、非譲渡部分の帳簿価額を引き続き 認 識 す る29と と も に 、売 却 の 対 価 と し て 得 た 資 産 ( 現 金 ) か ら 譲 渡 部 分 の 帳 簿 価 額 を 控 除 し た 差 額 が 売 却 損 益 と し て 計 上 さ れ る (pars.10a, 10b, 11a, 11d)。 JWG ドラフト基準では、ここでの設例のような部分譲渡のケースについて は、金融資産の構成要素のうち、譲渡部分の認識が中止され、非譲渡部分の 認識 は、 そ の公 正価値 によ って 継 続さ れる (pars.31, 37)。この場合、当該 期の期末において、①非譲渡部分の期末時点における公正価値評価額および 譲渡部分の認識中止時点における公正価値評価額の合計額と、②当該期の期 首(または当該期中に最初に認識された時点)における譲渡前の金融資産の 公正価値評価額、の差額が、当該期の損益に計上される(pars.136, 380)。 28 た だ し 、 一 定 の 条 件( 脚 注 6参 照 ) が 満 たさ れ る 場 合 、 負 債 計 上さ れ る 受 取 対 価 の う ち 返 済 を 要 さ な い 額 に つ い て は 、 資 産 か ら 控 除 す る 形 式 で の 表 示 ( 結 合 表 示 ) が 認 め ら れ る 。 29 金融資産の譲渡に おいて 、非譲渡 部分は譲 渡前の 金融資産と は 異 なる資産 ではあ るが、 「 支 配 」 の 放 棄 は な さ れ て い な い た め 、 非 譲 渡 部 分 の 帳 簿 価 額 は 譲 渡 前 の 資 産 の 帳 簿 価 額 を 按 分 計 算 す る こ と と さ れ 、 譲 渡 に お い て も 非 譲 渡 部 分 か ら は 損 益 が 認 識 さ れ な い こ と と さ れ て い る (par.273)。

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したがって、JWG ドラフト基準では、当該期における金融資産の譲渡部分と 非譲渡部分の公正価値の変動が損益となるため、譲渡部分の売却損益が個別 に計上されるわけではない。 IAS39 号改訂草案では、金融資産のうち譲渡人が継続的関与を有していな い部分について部分的な認識中止が認められる。この場合、SFAS140 号と同 様に、譲渡部分と非譲渡部分の帳簿価額は、譲渡時の譲渡部分と非譲渡部分 の公正価値の比に基づき、譲渡前の金融資産の帳簿価額を按分して求められ る。そして、売却の対価として得た資産(現金)から、譲渡部分の帳簿価額 を控除した差額が売却損益として計上される(par.47)。 ロ.保証付譲渡のケース 次に、金融資産の譲渡人による信用補完措置の 1 つである、譲渡人がその 譲渡後に譲渡資産の一部にかかるキャッシュ・フローの回収を保証する場合 の会計処理について取り上げる。 FRS5 号の一般原則では、たとえ譲渡資産の一部にかかるキャッシュ・フ ローの回収に対する保証のケースであっても、すべての重要なリスクと経済 価値の移転がなされていないと判断されれば、資産全体の認識中止の要件が 満 た さ れ る こ と は ない30。 こ の 場 合 、 譲 渡 資 産 を 担 保 と す る 借 入 取 引 と し て の会計処理(金融処理)が行われるため、譲渡により売却損益は一切計上さ れ な い こ と に な る31。た だ し 、 前 述 し た よ う に 、 す べ て の 重 要 な リ ス ク と 経 済価値が移転していないと判断される場合でも、資産のリスクと経済価値に 重要な変動があるときには、一定の条件のもとで、FRS5 号の例外的な会計 処理が認められ、譲渡資産の認識を中止し、保証債務を負債として新たに認 識することになる(par.73)。この場合、売却の対価として得た資産から、譲 渡資産の帳簿価額と新たに認識された負債の金額を控除した差額が売却損益 として計上される。 SFAS140 号では、「支配」の放棄の要件を満たす限り、譲渡資産の認識中 止がなされるとともに、保証債務が新たに生じた負債として公正価値で認識 される。また、当該資産の譲渡の結果として、売却の対価として得た資産(現 金)から新たに引き受けた負債(保証債務)の公正価値と譲渡資産の帳簿価 30 FRS5 号では、譲渡 人が譲渡 資産の 回収に対 して保 証する場 合、そ の取引の すべての 側 面 と 影 響 を 勘 案 し 、 リ ス ク と 経 済 価 値 の 移 転 の 有 無 を 評 価 す る こ と と な る (par.19)。 31 なお、一定の条件 が満た される場 合、負債 として 計上され る受取 対価のう ち返済 を要さ な い 額 に つ い て は 、 資 産 か ら 控 除 す る 形 式 で の 表 示 ( 結 合 表 示 ) が 認 め ら れ る 。

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額を控除した差額が売却損益として計上される。ただし、保証債務の公正価 値 が 実 務 的 に 測 定 困難 な 場 合 は 、 そ れ を売 却 益 が 認 識 さ れ な い 額32で測定 す ることが求められているため、売却益の計上はされないことになる(par.71)。 JWG ドラフト基準では、保証付譲渡は、通常、個別の判断規準を満たす「実 質を有する譲渡」(注 22 における③または④)に該当する。すなわち、取引 の 全 部 ま た は 一 部 が 譲 渡 資 産 を 担 保 と す る 借 入 取 引 と し て 扱 わ れ 、 譲 渡 に よって受け取った対価のうち払戻しを要求される可能性のある最大額を、負 債として認識するとともに、譲渡資産に関しては、当該負債額を超える部分 の金 額の 範 囲内 で認識 を中 止す る (pars.64, 65)。なお、譲渡資産の一部の 認識中止に伴う当該期の損益計上は、前記の部分的譲渡の場合と同様である。 他方、「実質を有する譲渡」に該当しない場合には、譲渡資産全部の認識が中 止されるとともに、保証債務が新たな債務として、公正価値で認識される33 IAS39 号改訂草案では、継続的関与を有していない範囲については部分的 に認識の中止が認められ、売却損益が生じることになる。しかし、保証債務 を負っている場合は継続的関与があるとされるため、当該部分については認 識中止が認められない。この場合、継続的関与を有している部分については、 譲渡資産の認識を継続するとともに、受取対価のうち返済を要する額を負債 として計上し、借入取引として会計処理するこ と になるため、売却損益が計 上されることはない。 32 SFAS140 号は、譲 渡後に存 在する資 産・負 債の測定 が信頼 を持って できな い場合に は、 利 益 が 計 上 さ れ る こ と を 避 け る た め 、 当 該 資 産 は ゼ ロ と し て 測 定 す る ほ か 、 当 該 負 債 は 、 譲 渡 人 に 当 該 取 引 か ら 利 益 が 生 じ な い 金 額 、 す な わ ち 、 次 の い ず れ か の 大 き い 方 の 金 額 に よ り 計 上 す る 扱 い と し て い る (par.71)。 ① 取 得 し た 資 産 の 公 正 価 値 か ら 負 担 す る 他 の 負 債 の 公 正 価 値 を 控 除 し た 金 額 が 、譲 渡 資 産 の 帳 簿 価 額 を 超 過 す る 金 額 ② SFAS5 号「偶発 事象の会 計処理 」によ り認識すべ きこ ととなる 金額 な お 、 日 本 基 準 (『 金 融 商 品 会 計 実 務 指 針 』〈 以 下 、『 実 務 指 針 』〉 38 項)お よ び 現 行 の IAS39 号(par.54)にもほぼ 同様の規 定がみ られるが 、IAS39 号改 訂 草 案では 削除され て い る 。

33 この場合、当該期 の期末 において 、譲渡資 産の認 識中止時 点にお ける公正 価値評 価額と

当 該 期 の 期 首 ( ま た は 当 該 期 中 に 最 初 に 認 識 さ れ た 時 点 ) に お け る 公 正 価 値 評 価 額 の 差 額 が 当 該 期 の 損 益 に 計 上 さ れ る と と も に 、 保 証 債 務 の 期 末 時 点 に お け る 公 正 価 値 評 価 額 に 相 当 す る 金 額 が 当 該 期 の 損 失 と し て 計 上 さ れ る 。

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ハ.コール・オプション付譲渡のケース   金 融 資 産 の 譲 渡 後に 譲 渡 人 が 譲 渡 資 産全 体 に 対 し コ ー ル ・ オ プ シ ョ ン34を 有する場合の譲渡については、譲渡人がコール・オプションを行使する可能 性の高低を認識中止の判断において考慮するか否かという点で、各基準・提 案の会計処理が異なることになる。 FRS5 号では、コール・オプションの行使可能性が高い場合には、すべて の重要なリスクと経済価値が移転しているとは判断されないため、認識中止 は 認 め ら れ な い35。 その 結 果 、 譲 渡 資 産 を 担 保 と す る借 入 取 引 と し て の 会 計 処理が行われ、譲渡により売却損益は一切計上されないことになる。他方、 コール・オプションの行使可能性が低い場合には、すべての重要なリスクと 経済価値が移転しているとみても差し支えないとして、認識の中止が認めら れる。その結果、譲渡資産全体につき認識が中止され、売却の対価として得 た資産から、譲渡資産の帳簿価額を控除した差額が売却損益として計算され ることになる。 SFAS140 号や JWG ドラフト基準においては、コール・オプションの行使 可能性が高い場合には認 識中止は認められないが 、行使可能性が低い場合に は 認 識 中 止 が 認 め られ る36。 す な わ ち 、 コ ー ル ・ オ プ シ ョ ン の 行 使 可 能 性 が 高い場合、取引の全部または一部が譲渡資産を担保とする借入取引として扱 われ、譲渡によって受け取った対価について負債を計上する。一方、コール・ オプションの行使可能性が低い場合には、譲渡資産の認識中止がなされると ともに、コール・オプションが新たに生じた資産として公正価値で認識され る。これは、譲渡人から譲受人に対し実質的に経済的便益の移転がなされて いるという取引の経済的実質を重視し、譲渡資産の認識の中止を認めている 34 ここでのコール・ オプシ ョンは、 金融資産 の譲渡 契約とは 独 立し たもので あり、譲渡資 産 が 市 場 で 容 易 に 取 引 さ れ る も の で は な い 場 合 に 、 譲 渡 人 の 一 方 的 な コ ー ル ・ オ プ シ ョ ン の 行 使 に 備 え る た め 、 譲 受 人 の 譲 渡 資 産 に 対 す る 権 利 行 使 が 制 約 さ れ る 可 能 性 が あ る も の を 想 定 し て い る 。 35 FRS5 号におけるこ うした結 論(par.61)は 、 譲渡人 が譲渡 資産に対 してコー ル・オ プ シ ョ ン を 有 す る 場 合 、 そ の 取 引 の す べ て の 側 面 と 影 響 を 勘 案 し 、 そ の 評 価 を 行 う こ と (par.19)に よる も のと 考え ら れる 。な お 、 コ ール ・ オプ シ ョ ン の 行 使可 能 性が 高い 場 合 は 、 譲 渡 資 産 か ら 受 領 し た 対 価 の う ち 返 済 を 要 さ な い 額 を 資 産 か ら 控 除 す る 形 式 で の 表 示 ( 結 合 表 示 ) も 認 め ら れ な い 。 た だ し 、 譲 渡 人 が 譲 渡 資 産 の 一 部 の み に 対 し て コ ー ル ・ オ プ シ ョ ン を 有 す る 場 合 に は 、 結 合 表 示 が 可 能 で あ る (par.86)。 36 SFAS140 号(pars.30, 32) では 、発行時 点で十分 にアウ ト・オブ ・ザ・マ ネーの コー ル・オ プ シ ョ ン は 行 使 さ れ る 可 能 性 が ほ と ん ど な く 、譲 受 人 を 制 約 す る も の で は な い た め 、 譲 渡 資 産 の 認 識 中 止 が 認 め ら れ る 。 さ ら にJWG ドラ フ ト基準 (pars.59(a), 61)にお い て も 、 同 様 に オ プ シ ョ ン の 発 行 時 に 行 使 可 能 性 が ほ と ん ど な い 場 合 に は 、譲 渡 資 産 の 認 識 中 止 の 制 約 と は な ら な い と さ れ て い る 。

(20)

ものと思われる。この場合、SFAS140 号では、当該資産の譲渡の結果として、 売却の対価として得た資産(現金)と新たに取得した資産(コール・オプショ ン)の公正価値から譲渡資産の帳簿価額を控除した差額が売却損益として計 上される。ただし、コール・オプションの公正価値が実務的に測定困難な場 合は、それをゼロで測定することが求められており、コール・オプションの 取得に伴う利益計上は行われない(par.71)。他方、JWG ドラフト基準では、 当該期の期末において、譲渡資産の認識中止時点における公正価値評価額と 当該期の期首(または当該期中に最初に認識された時 点)における公正価値 評価額の差額が当該期の損益に計上されるとともに、資産として計上された コール・オプションの期末時点における公正価値評価額に相当する金額が当 該期の利益として計上される。 これらに対し、IAS39 号改訂草案では、譲渡人が行使する可能性の低いア ウト・オブ・ザ・マネーのコール・オプションを有している場合についても、 認識 の 中 止 を認 め ない 扱い と し て おり (par.A9(g))、金融資産の譲渡に伴っ て損益が計上されることはない。これは、認識中止の判断において、オプショ ンの行使可能性を考慮せず、取引の外形( 形式面)を重視する取扱いがなさ れていることによるものと考えられる37 3.金融資産譲渡の会計処理と利益計算の関係  本節では、2 節で概観した各基準・提案の特徴を踏まえて、各基準・提案 における金融資産の譲渡の会計処理、すなわち、金融資産の認識中止要件が、 損益計算書における利益計算とどのような関係にあるのかを分析することと したい。 (1)混合モデルを前提とする基準・提案の場合  各基準・提案のうち、JWG ドラフト基準以外のもの、すなわち FRS5 号、 SFAS140 号、IAS39 号改訂草案では、金融資産の評価およびその評価差額 の会計処理に関し、金融資産の属性や保有目的に応じて異なる会計処理方法 37 日本基準や現行の IAS39 号 に おい ても、譲 渡人にコ ール・オプショ ンがあ る場合に は行 使 の 可 能 性 に か か わ ら ず 、認 識 の 中 止 は で き な い と さ れ て い る 。日 本 基 準 に つ い て は 、『 実 務 指 針 』33 項お よび 250 項 参照 。また、現行 IAS39 号に つ いては 、par.38(a)および par.40 参 照 。

(21)

を 使 い 分 け る 、 い わゆ る 「 混 合 モ デ ル 」が 採 用 さ れ て い る38。こう し た 混 合 モデルを前提とした基準・提案では、譲渡の対象とされる金融資産がいかな る属性や保有目的にあるかによって、当該資産の譲渡に伴う利益計算への影 響 が 異 な り 得 る39。 以下 で は 、 取 得 原 価 ま た は 償 却 原 価 で 評 価 さ れ て い る 金 融資産を念頭に置いて、混合モデルを前提とする基準・提案における金融資 産の譲渡の会計処理と利益計算との関係をみていくこととする。 イ.各基準・提案の特色 ① FRS5 号  FRS5 号の一般原則においては、すべての重要なリスクと経済価値が移転 していなければ金融資産の認識中止は認められないため、金融資産の譲渡に おいて譲渡人が重要なリスクあるいは経済価値の一部を留保する場合、例え ば部分的譲渡や保証のような付帯条件付譲渡の場合には、金融資産の認識中 止が一切認められないこととなる。こうした会計処理においては、金融資産 の認識 中止の 可否が「全か 無か (all-or-nothing)」の形で決まることに対応 して、利益計算への影響も画一的である。すなわち、金融資産の認識が中止 される場合には金融資産の譲渡損益が生じるのに対し、そうでない場合には 損益は一切生じず、利益計算への影響は生じない。このため、譲渡の形態に かかわらず、認識中止に伴う信頼性の低い不確実な利益の計上を避ける等の 利益計算面での工夫は特になされていないものと考えられる。 その反面、こうした会計処理では、金融資産の譲渡人がリスクや経済価値 を留保するような取引について、取引の実態に即した資産・負債の表示を行 うことが難しいという問題がある。例えば、譲渡人が、譲渡した金融資産か らのキャッシュ・フローの回収について、その一部のみを保証す るような場 38 例えば、わが国に おける 現行の金 融商品に かかる 会計基準 におい ても、そ の評価 は時価 評 価 を 基 本 と し な が ら も そ の 属 性 や 保 有 目 的 別 に 異 な る 会 計 処 理 を 行 う こ と と さ れ て い る 。 そ し て 、「 純 粋 な 」時 価 会 計 、す な わ ち 、貸 借 対 照 表 上 時 価 評 価 さ れ 、評 価 差 額 が 損 益 に 含 め ら れ る も の は 、 売 買 目 的 で 保 有 す る 有 価 証 券 や ヘ ッ ジ 以 外 の 目 的 の デ リ バ テ ィ ブ と い っ た 一 部 の 金 融 商 品 に 限 定 さ れ て い る ( こ の ほ か 、 時 価 評 価 さ れ る も の に は 評 価 差 額 が 資 本 直 入 さ れ る 「 そ の 他 有 価 証 券 」 も あ る 〈「 金 融 商 品 会 計 基 準 」 第 三 − 二 − 4 〉)。 39 例えば、売買目的 の金融 資産のよ うに、公 正価値 評価され 、評価 差額が直 ちに損 益認識 さ れ る 扱 い と な っ て い る 金 融 資 産 の 場 合 は 、 認 識 中 止 が 利 益 計 算 に 影 響 を 与 え る こ と は な い 。 他 方 、 貸 付 金 の よ う に 、 流 動 性 が 低 い た め 換 金可 能 性 が 制 約 さ れ て い る 場 合 が 多 く 、 公 正 価 値 で は な く 取 得 原 価 ま た は 償 却 原 価 で 評 価 さ れ る 扱 い と な っ て い る 金 融 資 産 の 場 合 は 、 非 金 融 資 産 と 同 様 に 、 そ の 認 識 中 止 が 依 然 と し て 利 益 に 対 し て 重 要 な 意 味 を 持 つ こ と に な る 。

(22)

合、仮に FRS5 号の原則的な会計処理を適用するとすれば、譲渡人は当該金 融資産の認識中止を一切認められず、受け取った対価の全額を借入取引とし て負債に計上することとなるが、譲渡人は必ずしも全額を保証する義務がな いにもかかわらず、貸借対照表上、負担していない保証義務についても負債 として表示されることになる。こうした会計処理方法が譲渡人の保有するリ スクや経済価値の状況を的確に表現しているとは言い難い。 このような不都合に対して FRS5 号が設けている方策の 1 つは、いわゆる 結合表示である。これは、譲渡資産の認識中止が行われない場合において、 一 定 の 条 件 が 満 た され る 場 合 に は40、 貸 借 対 照 表 の 資 産 の 部 に お い て 、 譲 渡 資産の総額の認識を継続するとともに、受取対価のうち将来払戻しを要求さ れる可能性のない金額を譲渡資産の控除項目として表示し、譲渡資産の総額 か ら こ の 控 除 金 額 を控 除 し た 後 の 「 純 額」 も 表 示 す る と い う も の で あ る41 その場合、受取対価のうち借入取引として負債に計上する金額は、受取対価 の総額から、資産に控除項目として計上した金額を除いた金額となる。こう した結合表示によって、利益計算に影響を与えることなく、取引の実態を忠 実に表現する42ことがあ る程度可能になると考えられている。 さらに、FRS 5 号では、金融資産の部分的譲渡や付帯条件付譲渡に関し、 一 定 の 条 件 の も と で43、 譲 渡 資 産 の 一 部 の み を 認 識 中 止 す る こ と や 、 譲 渡 資 産の全体を認識中止したうえで買戻し義務や保証債務等を負債に計上するこ とを認める、例外的な会計処理が設けられている。ただし、この場合におい て、例えば、譲渡資産の帳簿価額を譲渡部分と非譲渡部分に按分する際の各 金額の測定が困難であるといった理由から、利益計算上、信頼性の低い不確 実な利益が算入される可能性があるときは、損失は すべて引当金として計上 し、利益の認識は繰り延べることとされている。このように、FRS5 号では 例外的な会計処理において、取引の実態をより忠実に反映するような貸借対 照表上での資産・負債の計上が志向されてはいるものの、利益計算の影響へ の配慮から、別途、資産・負債の計上額の再調整が行われることとなってい る。 40 脚注6を参照。 41 この純額は、譲渡 人が当 該資産へ の関与を 継続す ることに 伴って 譲渡人に 留保さ れるリ ス ク と し て 、「 当 該 資 産 の 価 値 が 失 わ れ た 場 合 に 蒙 る 損 失 の 最 大 額 」と し て 示 す 意 味 を 有 す る と 解 さ れ て い る ( 弥 永[1997]p.61)。 42 大塚[1998]p.6 参照。 43 脚注7を参照。

(23)

② SFAS140 号  SFAS140 号では、金融資産の譲渡において、金融資産が構成要素に分解で きることを前提として、各構成要素に対する「支配」の有無に応じて認識お よび認識中止を判断することとされており、これによ り、取引の実態に即し た会計処理が可能になるとの考え方が採られている。したがって、金融資産 の部分的譲渡や付帯条件付譲渡においても、支配が喪失された構成要素につ い て は 認 識 の 中 止 が認 め ら れ44、 ま た 、 付 帯 条 件 に 伴 う リ ス ク や 経 済 的 便 益 の留保に関しては、新たな資産・負債の計上により対応することとされてい る。こうした構成要素の支配の有無に基づく会計処理と利益計算の関係は、 次のとおりである。  まず、金融資産の部分的な譲渡のケースでは、譲渡部分として認識が中止 される金額と受取対価の差額が損益として計上される。この場合、譲渡部 分 として認識が中止される金額と非譲渡部分として認識が継続される金額は、 譲渡前の金融資産の帳簿価額を譲渡時の公正価値を用いて按分することによ り求めることとされている。これは、取得原価または償却原価によって評価・ 計上されている金融資産の譲渡においては、分解して損益を認識しても特段 の支障は生じないとみられることから、譲渡部分からは損益が生じ得るが、 非譲渡部分については従来からの認識が継続されているに過ぎないため利益 計算に影響を与えるべきではない、との考え方によるものと理解される。  また、金融資産の譲渡において保証等の付帯条件が付される場合には、金 融資産の認識を中止する一方、付帯条件にかかる資産・負債を新たに公正価 値で認識し、金融資産の帳簿価額と受取対価の差額、および新たに計上され る資産・負債の金額相当額を損益に計上することとなる。ただし、この場合 において、新たな資産・負債の公正価値の見積りが信頼性をもってできない ときは、信頼性の低い不確実な利益の計上を回避するために、資産をゼロと 測定する、あるいは負債を利益が計上されない金額により計上するといった 会計処理が求められる45 44 ただし、認識中止 の判断 規準であ る「支配 」の放 棄が認め られる ためには 、別途 、脚注 13に示されてい るような 倒産 隔 離などの 要件を満た さな け ればな らない 。このた め、ロ ー ン ・ パ ー テ ィ シ ペ ー シ ョ ン の よ う に 、FRS5 号 や IAS39 改訂 草 案では 認識中止 が認め られ る 一 方 で 、SFAS140 号では倒 産隔離 の要件を 満たさ ないため に認識 中止が認 められな いも の も あ る 。 45 例えば、保証付の 譲渡で は、譲渡 資産の認 識中止 がなされ るとと もに売却 損益が 計上さ

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