• 検索結果がありません。

脳腫瘍におけるイソクエン酸脱水素酵素遺伝子変異の網羅的代謝解析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "脳腫瘍におけるイソクエン酸脱水素酵素遺伝子変異の網羅的代謝解析"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

氏 名 宮田E み や た A AE五月E さ つ き 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 甲第 467 号 学 位 授 与 年 月 日 平成 26 年 3 月 19 日 学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第 4 条第 2 項該当 学 位 論 文 名 脳腫瘍におけるイソクエン酸脱水素酵素遺伝子変異の網羅的代謝解析 論 文 審 査 委 員 (委員長) 教 授 山 形 崇 倫 (委 員) 教 授 浜 本 敏 郎 准教授 藤 原 寛 行

論文内容の要旨

1 研究目的 イソクエン酸脱水素酵素遺伝子(IDH)の変異を有する神経膠腫(グリオーマ)は、変異を有 さない場合よりも予後が良い。その理由を示した報告は少ない。今回我々は脳腫瘍の網羅的代謝 解析を行うことで、イソクエン酸脱水素酵素変異を有するグリオーマがなぜ予後が良いのか検討 した。 2 研究方法 ① 培養細胞解析:培養グリオブラストーマ細胞株に変異型IDH、正常型 IDH プラスミドをそ れぞれ用意しトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞をRNA マイクロ アレイ法、定量的 RT-PCR 法、キャピラリー電気泳動質量分析法、液体クロマトグラフィ ー質量分析法を用いて解析した。 ② 脳腫瘍組織解析:外科手術的に摘出した患者サンプルからDNA を抽出しダイレクトシーク エンス法にてIDH の変異解析を行った。そして IDH 変異群 5 群と IDH 正常群 5 群をキャ ピラリー電気泳動質量分析法、液体クロマトグラフィー質量分析法にて解析した。解析では 両群間で脳腫瘍患者の条件が異なるため、細胞実験の結果と矛盾しない結果をデータとした。

3 研究成果

1) 変異型 IDH グリオーマは解糖系が亢進し TCA 回路が抑制され Warburg 腫瘍であった。 2) 変異型 IDH グリオーマでは細胞分裂に必要な材料(アミノ酸、核酸、エネルギー)の低 下を認めた。

3) 変異型 IDH グリオーマでは脂質代謝は亢進していた。細胞実験において、脂質代謝を司 る転写因子sterol regulatory element-binding protein (SREBP)の上昇を確認し、SREBP が細胞周期調節蛋白p21 の調節をしていることを確認した。

4) 変異型 IDH グリオーマでは酸化ストレスの傾向にあった。 4 考察

(2)

謝の変化を生じている。我々が示した上記結果は網羅的代謝解析を行うことで初めて示すことが 出来た事実で極めて新規性は高い。Warburg 腫瘍ではミトコンドリア外膜の安定性を増強しアポ トーシス抵抗性となる。そのため、予後良好の機序としてアポトーシスとの関連性は少ないと思 われた。またTCA 回路が抑制されているためエネルギー産生の欠如があると考えられるが、TCA 回路を詳細に検討するとTCA 回路後半部分の蛋白量が増加していた。このことは変異型 IDH 腫 瘍細胞におけるフマル酸呼吸の存在の可能性を初めて示唆する。 5 結論 変異型 IDH グリオーマは何故予後が良いのか、代謝を中心に検討した。IDH 変異があると SREBP1 発現が亢進し、細胞周期制御因子の一つである p21 の発現増加が細胞分裂を抑制してい る可能性があることが分かった。また、IDH 変異が存在すると培養グリオブラストーマ細胞、脳 腫瘍組織のメタボローム解析から、細胞増殖、分裂に必須の核酸、アミノ酸が枯渇する傾向にあ ることが分かった。このこともIDH 変異脳腫瘍の細胞増殖性低下に寄与していると考えられた。

論文審査の結果の要旨

脳腫瘍の中でも悪性度の高い神経膠腫(グリオブラストーマ)において、イソクエン酸脱水素 酵素(isocitrate dehydrogenase:IDH)の R132H 変異を持つ例が変異を持たない例よりも比較 的予後が良好であることに関する機序を解析した論文である。宮田氏は、IDH の変異により、糖・ 脂質代謝が変化することが予後の改善に影響しているとの推定から、代謝系の網羅的な解析を行 い、新たな知見を含む多くの結果を得た。

解析手法として、培養グリオブラストーマ細胞にIDH1wt あるいは IDH1R132H cDNA を導 入した細胞系を樹立し、両者での代謝系の遺伝子発現を RNA マイクロアレーを用いて比較し、 結果を定量的RT-PCR で確認した。さらに、脂質代謝動態のメタボローム解析を行うなど、IDH の変異による代謝の変化を広範に、網羅的に解析した。

その結果、IDH 変異導入細胞では、TCA 回路が抑制され、acetyl CoA の増加から acyl CoA が 上昇し、脂質代謝系が亢進している結果を得た。さらに、新たな知見として、脂質代謝が亢進す ることにより脂質代謝を調節する転写因子である sterol regulatory element-binding protein (SREBP)1 および SREBP2 の発現増強を確認し、その結果として、細胞周期を G1 期で停止させ るp21 が上昇することを示した。これらの細胞内エネルギーの低下や p21 の上昇等が腫瘍増殖を 遅らせると推定した。 また、手術で摘出したIDH 変異を持つグリオーマ細胞を用いて、同様に、網羅的代謝解析を行 い、変異型IDH グリオーマでは、脂質代謝系の亢進と、細胞増殖、分裂に必要なアミノ酸、核酸 およびエネルギーの低下を確認した。また、変異型IDH グリオーマでは酸化ストレスが亢進して いる傾向にあることも示した。これらの知見は、今後の治療法開発にもつながる重要な知見であ る。 本研究内容は、Neurologia medico-chirugica 誌に原著論文として受理された。 IDH 変異に伴う代謝の変化を、培養細胞および腫瘍細胞両者で、この様に網羅的に解析した報

(3)

告はなく、また、SREBP や p21 の上昇などの新たな治験も得ており、審査員一同、本論文は学 位論文に相応しいと判断された。

最終試験の結果の要旨

最終審査では、IDH の R132H 変異を持つ神経膠腫が変異を持たない腫瘍よりも予後がいい機 序について、代謝系の変化に着目して網羅的に解析した研究内容について発表した後、質疑応答 がなされた。発表においては、学位論文の内容に加えて、その後の研究の進展状況と、診断マー カーとして新たな分子を同定し、特許出願中であることも報告され、研究内容の重要さと共に、 申請者が高い研究能力を有し、今後も研究を発展させていく力を十分に持ち合わせていると判断 された。質問に対しても、研究内容と解釈について的確に返答し、関連分野の知識も十分あるこ とが示された。 以上から、申請者は、本学の学位授与に値する研究業績と学識を有すると、審査員全員により 判断された。

参照

関連したドキュメント

 BRAF V 600 変異腫瘍に対しBRAF キナーゼ阻害薬が効 果を示す一方で,

の変化は空間的に滑らかである」という仮定に基づいて おり,任意の画素と隣接する画素のフローの差分が小さ くなるまで推定を何回も繰り返す必要がある

その産生はアルドステロン合成酵素(酵素遺伝 子CYP11B2)により調節されている.CYP11B2

今日のお話の本題, 「マウスの遺伝子を操作する」です。まず,外から遺伝子を入れると

ときには幾分活性の低下を逞延させ得る点から 酵素活性の落下と菌体成分の細胞外への流出と

第四章では、APNP による OATP2B1 発現抑制における、高分子の関与を示す事を目 的とした。APNP による OATP2B1 発現抑制は OATP2B1 遺伝子の 3’UTR

一部の電子基準点で 2013 年から解析結果に上下方 向の周期的な変動が検出され始めた.調査の結果,日 本全国で 2012 年頃から展開されている LTE サービ スのうち, GNSS

・逆解析は,GA(遺伝的アルゴリズム)を用い,パラメータは,個体数 20,世 代数 100,交叉確率 0.75,突然変異率は