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竹富島における価値共創と移住促進 ― 価値を生み出す地域ファクターの考察 ―

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Academic year: 2021

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(1)論文. 竹富島における価値共創と移住促進 ― 価値を生み出す地域ファクターの考察 ― 大 和 里 美 . 1.はじめに 近年の消費者ニーズの変化によって、有名な寺社仏閣や温泉などの特別な 観光資源を持たない地域でも地域の独自性を活かした体験を提供することで 成功する可能性があり、衰退した地域経済の活性化に向けて観光が注目され ている。経済的な効果だけでなく、地域と観光で訪れた人が価値を共創し関 係性を深めていくことができれば移住や定住に繋がることが期待でき、観光 振興を図ることで交流人口が増えれば移住者が増える可能性も高まる。株式 会社NTTデータ経営研究所が、2014年に4万人以下の人口規模の市町村在 住者を対象に行った調査においても29.0%が現在実施されている移住・定住 促進施策として「観光・交流産業の推進」と回答しているが、その効果は十 分に認識されていない1)。地域の担い手不足のためにコミュニティを維持す ることが困難になっている地域にとって、地域に活力を取り戻し将来的に存 続していくためには、単に観光客誘致や観光消費額増加に努めるだけでなく、 観光で訪れた外部者との交流の中で移住に繋がる価値を生み出すことが重要 である。 本研究では、年間50万人の観光客が訪れ2)、移住希望者も多い沖縄県の竹 富島を事例として取り上げ、竹富町役場、地縁団体法人竹富公民館(以下、 公民館)館長3)と古くからの住民及び移住者を対象に聞き取り調査を行い、 企業と顧客との価値共創を中心に研究が進められているサービス・ドミナン ト・ロジック(Service Dominant Logic:以下、S-Dロジック)の視点から、 地域と観光に訪れた外部者との価値共創について分析し、移住に繋がる価値 地域創造学研究. 1.

(2) 論文. を生み出す地域のスキルやナレッジなどのファクターを明らかにする。また スキルやナレッジを生み出した地域の歴史や文化的要因、地域コミュニティ の構造などについても考察する。. 2.S-Dロジックの基本的な考え方と価値共創 サービス経済化の進展とサービスへの関心の高まりの中で、2004年に VargoとLuschによって提唱された新しい研究視点がS-Dロジックである。北 米を中心に研究が進んだ伝統的なマーケティングが、有形財である製品 (goods)に焦点を当てるのに対し、S-Dロジックは、 「他者あるいは自身の ベネフィットのための行為、プロセス、パフォーマンスを通じたコンピタン ス(ナレッジ・スキル)の適用という活動そのもの」(大藪2010)を意味す るサービス(service)が根幹となる。S-Dロジックにおけるサービスは、従 来の無形財としてのサービスと製品を包括した上位概念であり、無形財で あるサービスは上位概念であるサービスと区別するためにサービスィーズ (services)と複数形で表される。また伝統的なマーケティングの製品を中 心とした考え方は、グッズ・ドミナント・ロジック(Goods Dominant Logic: 以下、G-Dロジック)と呼ばれる(Vargo and Lusch 2004)。 G-Dロジックでは、価値は「交換価値(value-in-exchange)」であり、売 り手がグッズに価値を付加すると考えるのに対し、S-Dロジックでは、製品 やサービスィーズを購入した買い手が価値を認めたときにはじめて価値が生 まれるため、売り手は価値を提案することしかできず、価値は常に売り手 と買い手によって共創される。G-Dロジックの視点に立てば価値共創と考え られる消費者参加による製品開発は、S-Dロジックでは「共同生産」であり、 価値共創とは区別される(Lusch and Vargo 2006)。また買い手が価値を認 識するか否かは、買い手が製品やサービスィーズを使用する文脈の中で判断 されるため、S-Dロジックにおける価値は、 「文脈価値(value-in-context)」 と呼ばれる(Vargo, Maglio and Akaka 2008) 。 S-Dロジックは、企業のマーケティング研究から生まれたものであり、初 期には企業と顧客との関係に焦点を当てて論じられていたが、最近では、そ 2.

(3) 竹富島における価値共創と移住促進-価値を生み出す地域ファクターの考察-. の適用範囲は、個人や家族、社会や国などにも広がっており、経済的な交 換・価値創造だけでなく、社会的な交換・価値創造を捉える考え方としても 有効である(Vargo and Lusch 2008) 。. 3.竹富島の概要 竹富島は、沖縄県八重山郡竹富町に属する周囲9.2㎞、面積5.43㎢の小島で、 空港のある石垣島からは高速船で約10分の距離にある。竹富町は、八重山 諸島の複数の島から成る島嶼の町であるが、「東洋のガラパゴス」と呼ばれ 世界自然遺産の推薦候補地となっている西表島やNHKの朝ドラ「ちゅらさ ん」の舞台として知られる小浜島など、町の各島は豊かな自然に恵まれ、島 ごとに独自の歴史や文化を持っており、多くの歌謡や芸能、古くから続く祭 りや風習などの伝統文化が継承されている。中でも竹富島は、1977年(昭和 52年)に600年の歴史があるといわれている種子取祭(タナドゥイ)が国の 重要無形民俗文化財に指定されたのに続き、1987年(昭和62年)には、琉球 赤瓦葺き木造の伝統的な町並みが重要伝統的建造物群保存地区に選定され、 時を超えて受け継がれた民俗芸能と沖縄の原風景が残る島として多くの観光 客が訪れている。. 図1 竹富町の島々と竹富島の位置 出典:竹富島HP. 地域創造学研究. 3.

(4) 論文. 写真1 竹富島の町並み 出典:2018年7月2日筆者撮影. 図2 竹富島の観光客数の推移 出典:竹富町HP「竹富町入域観光客数(年別)」. 竹富島には、1524年頃から琉球王国が八重山を統治するための役所である 蔵元が置かれていた。首里王府で功績を認められた竹富島出身の西塘が、八 重山人として初めて八重山地方の行政長官である竹富大首里大屋子の頭職 4.

(5) 竹富島における価値共創と移住促進-価値を生み出す地域ファクターの考察-. に任じられたことで設置されたもので、1542年に石垣島に移されるまでの約 20年間、竹富島は八重山政治の中心であった。西塘は、琉球政府が編纂した 『球陽』にも「八重山武富島に西塘なる者有り。其の人となりや、賦性俊秀 にして器量非凡なり」と記されており、首里の園比屋武御嶽(ソノヒヤンウ タキ)の石門築造や首里城北面の城壁設計など琉球政府の技師としてその才 を発揮しただけでなく、頭職として竹富島に帰郷後は、農具の作製配布や農 業の改善指導、日時計の設置や時報太鼓によって島民に時刻を知らせるなど の改革を行った(今林2015)。西塘は石垣島で亡くなった後に島に帰り、そ の墓は現在「西塘御嶽」として住民の精神的な拠り所となっており、島の守 護神・豊作の神として多くの信仰を集めている。西塘が石垣島から故郷の竹 富島を想って作った「しきた盆」は、竹富島の代表的な古謡であり、種子取 祭の奉納芸能の1つになっている。西塘がこの歌の中で残した「うつぐみ」 の精神(一致協力の精神、助け合いの精神)4)は、西塘の遺訓として島民に 受け継がれ、島の基本精神として現在も大切にされている。. 写真2 西塘の遺訓を刻んだ島内の石碑 出典:2018年7月1日筆者撮影. 地域創造学研究. 5.

(6) 論文. 4.調査の実施と結果 2017年2月と2018年7月に竹富町を訪れ、竹富町企画財政課、竹富島で生 まれ育った住民3名(公民館長と70代・80代の女性2名)及び定住者(10年 以上島に居住している移住者)3名に、島の歴史とコミュニティの状況、移 住・定住の現状などについて聞き取り調査を行った。 (1)島の歴史とコミュニティの状況 琉球史の時代区分では、14世紀位から17世紀初頭までを古琉球と呼ぶが、 この時代の資料はほとんど存在しない。島の歴史の中で、現在の住民の気質 や精神に大きな影響を与えていると思われるのは、蔵元設置と人頭税である。 琉球王府が1637年から課した人頭税は、1902年(明治35年)に廃止されるま で260年余り続く。人頭税は、役人や身障者などを除き担税能力に関わらず 八重山に住む各個人に一律の額の税を義務付けるもので、15歳から50歳の住 民に課されていたが、実際には課税の基準になる「人頭税石」という石の 高さに身長が達すると課税対象とされた。税は、穀物や上布によって納めな ければならなかったが、隆起珊瑚礁の島で高い山がない竹富島には穀物を作 るのに足る水がなく、危険を冒して海を渡り西表島で土地を開拓して農業を 行った(はいの2015)。現在は観光業が島の産業の中心になっているが、農 業が中心であった時代には、お互いに協力し助け合うことが生きていくため には必須であり、日々の生活の中でうつぐみの精神が培われ守られてきた。 また八重山全体の行政を司っていたという竹富島の歴史は、住民の誇りで あり、それが高い自治意識に繋がっている。島の重要な事項については、竹 富公民館議会で議論・決定され、観光案内や島内の道路整備なども「特定非 営利活動法人たきどぅん(以下、NPO法人たきどぅん)5)」と連携して自分 たちで行っている。竹富島には、1986年(昭和61年)に制定された「竹富憲 章」があり、 「売らない」「汚さない」「乱さない」「壊さない」「活かす」と いう島を守り発展させていくための5つの原則が掲げられている(2017年改 6) 定) 。. 島には、旧暦の9月に行われる種子取祭をはじめとして年に20回以上の祭 6.

(7) 竹富島における価値共創と移住促進-価値を生み出す地域ファクターの考察-. 祀があり(表1)、集落単位・公民館単位の行事や集まりもある。島内には、 仲筋集落・西集落・東集落の3つの集落があるが、それぞれの集落には青年 会・婦人会・老人会があり、65歳までは公民館の役を務め70歳になれば必ず 老人会に加入しなければならない。それ以外にも保育園や小中学校のPTA や子供のための読み聞かせの会、三線や古謡の会などの任意の同好会もあり、 ボランティアで行う清掃などに参加することも多い。会合や行事の前後には、 参加している者同士で会話することで島の歴史や文化・習慣などを伝えると いう「島習い」と呼ばれる習慣があり、島の文化や伝統を守り、うつぐみの 精神を次代に伝えるために活発なコミュニティの活動が行われている。 表1 竹富公民館の祭事・行事(2019年度). *虫送りの日。十日目の神事で、戦後暫くまで実施されていた。 出典:竹富島ビジターセンター竹富島ゆがふ館HP「平成31年(令和元年)度 竹富公民館祭事・行事表」7). 地域創造学研究. 7.

(8) 論文. (2)移住・定住の現状 図3は、1990年から2015年までの竹富島の人口の推移を5年毎に示したも のである。年によって増減はあるが、一時300人を下回った人口は増加傾向 で推移している。. 図3 竹富島の人口推移 出典:竹富町HP「竹富町地区別人口動態票」8). 竹富島では、観光で訪れたことがきっかけとなり移住を希望する人が多い。 年間50万人の観光客が訪れる竹富島であるが、沖縄が本土に復帰した1972年 頃は民宿もなく、「調査などのために島を訪れる学生は、竹富島は何もない 島なので、訪れた人を親切にもてなすことで良い経験をしてもらい、また来 てもらえるようにしなければならないという思いで、年配者が中心となって 世話をした」(住民F氏)。豊かな自然や掃除の行き届いた集落に惹かれ、た びたび訪れるうちに住民から親切にしてもらい、「自分のことを心配してく れる仲の良い父親のような年齢の友人が増えたことで自分の居場所ができ た」(定住者M氏)と感じて移住した人もいる。 8.

(9) 竹富島における価値共創と移住促進-価値を生み出す地域ファクターの考察-. 竹富町は、東京で開催される移住フェアに年に2回参加している。町では、 移住を支援するためにファシリテーター制度を導入しており、移住促進の担 当部署である政策推進課がファシリテーターとなって移住希望者の相談に 乗ったり、町内各地区の習慣や移住後に必要となる付き合いなどについて説 明を行ったりしている。説明を受けた上で移住を希望する場合は、現地での 体験を行うことになるが、この時点で町から移住希望地区の公民館に連絡を 入れ、その後は各地区が移住希望者に直接対応して公民館長の面談などを行 う。 しかし、移住を希望してもすぐに住居を借りることができるわけではない。 竹富島に移住を希望した場合は、最初の5~6年は年に2~4回程度島を訪 れ、島の住民が経営する民宿に滞在し、地域で行う清掃などのボランティア に参加する必要がある。移住希望者が滞在する民宿の経営者は、滞在中の会 話などから希望者の人柄や移住後に島で営む予定の生業などの情報を収集す る役割を担っている。また地域のボランティア活動への参加を通じて住民と の交流を図ることで、コミュニティの一員として相応しいかどうかを判断す る。最終的に移住を受け入れることが決まれば住居を紹介することになる。. 5.住民と外部者による価値共創 図4~6は、竹富島における移住に至るまでの住民と外部者による価値共 創について示したものである。 観光で竹富島を訪れた外部者は、島の美しい自然、歴史的な町並みや清掃 が行き届いた集落、住民との交流の場でのもてなしの心や親切な対応などか ら価値を知覚することによって、竹富島への移住を希望するようになる。島 の環境を守り維持する基盤になっているのは、うつぐみの精神や高い自治意 識という島の歴史の中で培われてきた住民のナレッジ・スキルであり、その ナレッジやスキルが生み出した竹富憲章やボランティアなどの活動である。 すなわち、住民側が、「うつぐみの精神」「もてなしの心、親切な対応」 「高い自治意識」「祭事をはじめとする島の伝統・文化に関する知識」など のナレッジ・スキルを適用することで、自然や集落の景観などのハードの価 地域創造学研究. 9.

(10) 論文. 値と心地よい交流というソフトの価値が提案され、観光客が住民側から提案 されたこれらの価値を認めることで、住民と観光客との価値共創が実現され ている(図4) 。. 図4 住民と観光客との価値共創 観光を契機として移住を希望するようになった外部者は、島内の民宿に滞 在し、行事や清掃などに参加して住民と接点を持つ中で、移住した後コミュ ニティの一員として相応しいかどうかを判断される。従って、移住を実現す るためには、住民となるに相応しいと認められる価値を提案する必要がある。 住民側は、移住希望者からの価値提案に対して、「うつぐみの精神」や「高 い自治意識」、「島の伝統・文化に関する知識」というナレッジ・スキルを 適用し、価値が認識されれば価値共創が実現されて移住が認められる。民 宿での滞在やボランティア活動は、価値共創の「場」であり、「島習い」の 習慣は、会話や学習によって価値共創を促進する仕組みとして作用している (図5) 。 10.

(11) 竹富島における価値共創と移住促進-価値を生み出す地域ファクターの考察-. 図5 住民と移住希望者との価値共創. 以上のように、竹富島では、住民が「うつぐみの精神」「もてなしの心、 親切な対応」「高い自治意識」「島の伝統・文化に関する知識」などのナ レッジ・スキルを適用することで、島を訪れた観光客に美しい環境や精神的 な価値を提案し、観光客がそれらの価値を認識することで価値が共創される。 共創された価値によって、観光客は移住を希望するようになるが、すぐに移 住できるわけではなく、一定の期間、今度は住民側だけでなく移住希望者側 からも住民となるに相応しいと認められるような価値提案を行い、住民側は 自らのナレッジ・スキルを適用して価値判断を行い、価値が認識されれば価 値共創が実現され、はじめて移住者となることができる(図6)。. 地域創造学研究. 11.

(12) 論文. 図6 竹富島における移住に至る住民と外部者との価値共創 移住者側からの価値提案が価値共創に繋がらなければ移住は実現しないし、 もし移住が認められるまでの間に住民側から価値提案がなく、移住希望者が 島の価値を認識できなくなれば移住の希望はなくなる。移住希望者と住民側 の価値共創は、価値提案と提案された価値に対する価値認識が相互に行われ ることが必要であり、一方的な価値提案による価値共創では、移住に至るこ とは難しい。. 6.おわりに 企業が提案した価値を顧客が認識することで価値が共創され購買に繋がる ため、企業と顧客との価値共創においては、一般的に、製品やサービスを販 売する企業が価値提案を行い,購入者である顧客が価値を判断する。移住・ 定住を促進する地域が増加し地域間競争が激しくなる中で、多くの地域では、 自治体が住民誘致に向けての様々な支援策を提示して地域は移住者を受け入 12.

(13) 竹富島における価値共創と移住促進-価値を生み出す地域ファクターの考察-. れている。すなわち、自治体などの地域が価値提案者となり、外部者が価値 判断を行って価値が共創されるという企業と顧客による価値共創と同様の関 係が見られる。 しかし竹富島では、地域側が一方的に価値を提案するのではなく、外部者 である移住希望者からの価値提案によって価値が共創されたときにはじめて 移住できる仕組みが作られており、地域の住民が、外部者が移住するまでの プロセスを主体的にマネジメントしていた。また価値共創を生む地域のナ レッジ・スキルとしては、 「うつぐみの精神」「もてなしの心、親切な対応」 「高い自治意識」「島の伝統・文化に関する知識」というファクターが認め られたが、これらのナレッジ・スキルは、竹富島の歴史や文化の中で培われ てきたものであった。 企業の販売行為においては、会話と学習、サプライヤー・顧客間の仲介 者の存在などが価値共創を実現するが(Le Meunier-FitsHugh et al. 2011)、 竹富島の移住に至るプロセスにおいても、価値共創の「場」の創出、仲介 者としての民宿の経営者、「島習い」の習慣による会話・学習が、価値共創 を促進していた。また、共通の場に互いが身体を置き、共に存在している ことからくる共存在感を持つことが、背景や価値観が異なる多様な人々が、 「我々」という共同体意識を創出することと密接に関係していると言われて おり(三輪2007)、移住希望者が行事や清掃などのコミュニティ活動に参加 することは、住民との価値共創を促すだけでなく,移住希望者の中に地域の 一員としての意識を高める効果が期待できる。 竹富島は、移住のためのハードルが高く移住に至るまで相当な期間を要す るため、急速に人口減少が進み早急に大量の移住者を受け入れたいと考えて いる地域にとっては、同じ方法は現実的ではないかもしれない。しかし移住 者が増えても、地域コミュニティと一切交流を持たなかったり、地域の習慣 やルールを考慮せずに元からの住民との間に軋轢が生じたりすれば、定住に 至らないだけでなくコミュニティの存在自体が危うくなる。移住促進が緊急 の課題となっている地域には、古くからの伝統や祭祀を守り重視する地域も 多く、地域の精神的な拠り所としてはもちろん、観光客誘致に繋がる地域の 地域創造学研究. 13.

(14) 論文. 重要な文化資産としての役割も担っている。人口が維持されても地域資産が 保全されず、移住者の受け入れによって地域が変容するようなことがあれば、 存続しているというだけで、それはもはや住民にとって愛着のある本来のそ の地域とは別のものになってしまう。その意味で、地域が主体性を持って移 住者受入れのプロセスをマネジメントし、移住希望者との価値共創では、地 域側も価値提案を受けるという竹富島における地域と外部者との価値共創の 形は、移住・定住を促進する地域に多くの示唆を与えるものである。 本研究では、竹富島の地域側に焦点を当てて調査を進め、S-Dロジックの 視点から、地域と外部者との価値共創について分析し、移住に繋がる価値を 生み出す地域のナレッジ・スキルとそれを生み出した地域のファクターにつ いて明らかにした。今後は、移住者側に焦点を当て、移住者のナレッジ・ス キルや移住者同士の関係性と移住者間のネットワークが与える影響、及び移 住者側から見た文脈価値の内容について検討することが課題である。また竹 富島同様、入域観光客数・人口が増加している石垣市において調査を行い、 移住・定住に繋がる価値共創のマネジメントについて更に研究を深めていく 予定である。. 謝辞 本研究は、JSPS科研費(18K18280)の助成を受けたものである。ここに記して 謝意を表す。またインタビューのために時間を割いていただいた竹富町役場と竹 富町の住民の皆様に深謝いたします。. 【注】 1)株式会社NTTデータ経営研究所「小規模市町村における移住・定住の要因 と 生 活 状 況 に 関 す る 調 査 」(https://www.nttdata-strategy.com/survey/goo/ pdf/20140708.pdf)より2019年10月23日取得。 2)竹富町入域観光客数(年別)によると、2018年の観光客数は、506,573人である。 竹富島HP「竹富町入域観光客数(年別)」 (https://www.town.taketomi.lg.jp/) より2019年10月23日取得。 3)公民館は地域の自治組織で、島の祭祀と行事を司り、役所とのパイプ役となる。. 14.

(15) 竹富島における価値共創と移住促進-価値を生み出す地域ファクターの考察- 公民館長はその長である。 4)しきた盆の6番に「かいしくさ うつぐみどぅ まさりょうる」とあり、島民 が努力して一致団結の精神を島の美風にしなければならないことを歌っている。 竹富島ゆがふ館HP「もっと知りたい竹富島」(https://www.taketomijima.jp/ motto/oto/uta.html)より2019年10月27日取得。 5)NPO法人たきどぅんは、2002年にコミュニティの核である公民館を支えるため に設立された。「たきどぅん」とは現地の言葉で「竹富島」のこと。 6)竹富島では、この憲章に基づき島の環境を守るための具体的な活動が展開され ている。2019年には、環境保全を行うために「一般財団法人竹富島地域自然資 産財団」を設立し、環境保全活動費に充てるための入島料の徴収を開始した。 7)竹富島ゆがふ館HP「平成31年(令和元年)度 竹富公民館祭事・行事表」 https://www.taketomijima.jp/topics/令和元年度竹富公民館年間祭事行事表/ (2019年10月30日取得)。 8) 竹 富 町HP「 竹 富 町 地 区 別 人 口 動 態 票 」https://www.town.taketomi.lg.jp/ administration/toukei/jinko/doutai/(2019年10月30日取得) 。. 引用・参考文献 1)大藪亮(2010)「S-Dロジックと価値共創フレームワーク」、井上崇通、村松潤 一編著『サービス・ドミナント・ロジック―マーケティング研究への新たな視 座―』、pp.151-164、同文舘出版 2)Vargo, S. L., and R. F. Lusch(2004)"Evolving to a New Dominant Logic for Marketing" Journal of Marketing, Vol.68, No.1, pp.1-17 3)Lusch, R. F. and S. L. Vargo(2006)"Service-Dominant Logic Reactions, Reflections and Refinements" Marketing Theory, Vol.6, No.3, pp.281-288 4)Vargo, S. L., P. P. Maglio and M. A. Akaka(2008)"On Value and Value Co-Creation: A Service Systems and Service Logic Perspective" European Management Journal, Vol.26, No.3, pp.145-152 5)Vargo, S.L. and R.F. Lusch(2008)"Service Dominant Logic: Continuing the Evolution", Journal of the Academy of Marketing Science, Vol.36, No.1, pp.1-10 6)今林直樹(2015)「八重山諸島の歴史と文化―石垣島と竹富島を中心に―」、 『沖 縄研究ノート』第24号、pp.1-16、宮城学院女子大学キリスト教文化研究所 7)はいの晄(2015)「竹富島の「うつぐみ」と祭り」、NPO現代の理論・社会フォー ラム、古川純編『八重山の社会と文化』、pp.108-114、南山舎 8)Le Meunier-FitzHugh. K., J. Baumann, R. Palmer and H. Wilson(2011)"The Implications of Service-Dominant Logic and Integrated Solutions on the Sales Function ", Journal of Marketing Theory and Practice, Vol.19, No.4, pp.423-440 9)三輪敬之(2007)「共創の場をデザインする―存在のコミュニケーションによ る場の統合」、『年次大会講演資料集』第8巻、pp.218-219、日本機械学会. 地域創造学研究. 15.

(16) 論文. 16.

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