カリキュラムの活用方法についての実態―ベトナム農村部における初等教育を中心に―

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− 413 − カリキュラムの活用方法についての実態 ベトナム農村部における初等教育を中心に一 教科・領域教育専攻 国際教育コース 清水茜里 1.研究背景 ベトナムは社会主義国家であるが、実際 教育に関しては、社会主義国家としての枠 組みを残しつつも、市場経済を取り入れた 柔軟性のある教育が進められている。ベト ナムは多民族をひとつの国家としてまとめ、 国民性を強化すべく、他の東南アジア諸国 と同様に、国民統合の教育、とりわけ道徳・ 公民教育を重視してきた。やはり過去を見 ても複雑な歴史をもっベトナムは、それら を払拭してベトナムという国際社会の一国 としてやり直すためにも教育に力を注いだ ということであろう。 今回は調査地としてベトナムの二つの地 域に訪問を行なった。学校環境も子ども達 の生活環境も大きく異なるこの地域で、同 じ学習指導要領(指導書)を基に授業が組ま れている。どのように具体的に授業に違い がでてくるのか、それぞれの地域の特質を 生かした授業があるのかについて疑問と興 味をもった。そもそも二つの地域の教員た ちの指導書の活用方法に違いがあるのかも しれない。このような二つの地域に住む子 ども達の将来性なども加味しながらこれら を明らかにしていきたい。

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研究目的 本稿では教員を対象にインタビューを行 なうことによって、ベトナムにおけるカリ キュラムを教師がどのように活用している のかについて調査し、教員達が教員養成課 指導教員 石村雅雄 程で学んだことと、実際の現場で教えてい ることの違いについて明らかにする。また、 その違いにどう対応しているのかについて も調査を行なう。子ども達はどれくらい授 業についてくることが出来ているのかを重 視する。ベトナムのいくつかの小学校を訪 問していくなかで、恵まれているとは言え ない学習環境で、何人の子ども達がカリキ ュラムに示されている目標についていけて いるのかを観察したい。教員はそのような 状況の下でベトナム全国共通のカリキュラ ムを使って授業を行なっていくことについ てどう思っているのかについても明らかに していきたい。 そして都市部と非都市部との違い及び家 庭の学校教育に対しての期待の中身とそれ に対する教員達の対応にも注目していきた い。これらのことを踏まえて、最終的にはベ トナムの初等教育における問題点や改良点、 また、これから日本が支援していくに当た ってどのような支援がベトナムの子ども達 や教員の役に立つのか、についても考えて いきたい。

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研究方法 本稿ではベトナムで、実際に教壇に立って いる教員にインタビュー調査を行う。今回 の調査で対象となった教員はベトナムの都 市の一つでもある、カントー省に位置する 小学校3校と、ベンチェ省タンソン村の小 学校

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校で働く教員である。カントー省は

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− 414 − 中心部はかなり整備されており訪れる外国 人観光客も少なくない。 一方ベンチェ省は 農業が盛んであり、ホーチミンやカントー と比べて貧しい省である。このような正反 対といえる 2つの地域でクラス教員へのイ ンタビューを試みた。 このインタビューでは彼らが日頃どのよ うに授業をっくり上げているのかについて 調査する。また、カリキュラムについてどこ で学ぶことができたのか、その実際の使用 方法、また授業の工夫や評価の方法につい ても調査する。 併せて実際の小学校で、行われている授業 を見学し、板書の様子や、子どもたちの様 子、授業の進め方などを観察し、分析を行な

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結論 調査の結果、教員は全員カリキュラムを 使用して授業計画を立てており、授業の指 針にしているということが分かった。しか しカリキュラム上に記されていることだけ では子ども達の授業に対する目標達成が難 しいと感じるときには、ゲームを行なった りして子ども達が英語にもっと親しみやす くなるように工夫をしている。また、ベトナ ム全国共通のカリキュラムを使って授業を 行なっていくことに矛盾点を感じている教 員もいた。また、子ども達がどれくらいの割 合で授業についていくことが出来ているの か、教員が把握する方法が不十分であった。 そして家庭では

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つの地域のどちらでも、 学校に対して子どもの知識の向上はもちろ んのこと、マナーや社会的な常識等を学ん でほしいと考えていた。 これらのことより、授業に「ついていけな い子

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をどのように教員が把握し、対策を行 なっていくのかということが今後のベトナ ムの課題となると考えた。子ども達、もしく は保護者、教員が、良い点数を採り、良い評 価を得ることを第一目標としている限り、 今の状態から抜け出すことは難しく、教員 の意識の問題というよりもより深いところ に問題があるのではないかとも考える。こ のような結論に至った本稿では、発展途上 国として様々な海外からの干渉を受け、影 響を受けやすいこの重要な時期だからこそ、 全ての子ども達に平等な教育を受けさせる ために、もう一度カリキュラムの活用方法 について教員の教育方法を見直すべき時が きていると考えた。

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