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大学院生の「障がいのある人」に対する潜在的態度に影響を及ぼす要因-障がいのある人との関わりの質に着目して-

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Academic year: 2021

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- 77 -

大学院生の「障がいのある人

J

に対する潜在的態度に影響を及ぼす要因

一障がいのある人との関わりの質に着目してー

人間教育専攻 臨床心理士養成コース i 芦 馬 彩 香 1.問題と目的 文部科学省 (2009)は,

r

交流授業及び共同学習J について,障がいのある幼児児童生徒と障がい のない幼児児童生徒との交流及び共同学習は, 障がいのある幼児児童生徒の社会性や豊かな人 J間性を育む上で重要な役割を担っており,障が いのない幼児児童生徒が,障がいのある幼児児 童生徒とその教育に対する正しい理解と認識を 深めるための機会であると述べている。また, 渡辺ら (2003) は,障がいのある子どもたちと の接触経験は,障がいのない子どもたちの障が いのある子どもたちに対する受容的態度に肯定 的な影響を与えたと述べている。 このように,障がいのある人に対する偏見の 低減や受容的態度に肯定的影響を与える重要な 要因の

1

っとして,接触経験,言わば障がいの ある人との関わりが挙げられている。しかし, 河内 (2006) は障がいのある人と接触したから といって,いつでも交流意欲が肯定的な方向に 変化するとは限らず,この不明確さには,関わ りの質の違いが影響することを明らかにしてい る。では,どのような関わりの内容が障がいの ある人に対する態度に影響を与えるのであろう か。これまでに,マイノリティに対する偏見・ 排除意識を低減させるための関わりの条件は既 に明らかにされている(大槻, 2003)。しかし, そのほとんどが,黒人や外国人に対する研究で あり,障がいのある人との関わりの質との関連 に着目した研究は少ない。そとで本研究では, マイノリティに対する関わりの条件を参考に障 がいのある人との関わりの内容を調査し,障が 指 導 教 員 小 倉 正 義 いのある人との関わりの内容と障がいのない人 の障がいのある入に対する潜在的態度との関連 について検討することを目的とする。研究Iで は,障がいのある人に対する潜在的態度につい て,研究Eではト樟がいのある人との関わりの 内容について,研究

E

で,研究

1

r

n

の結果の 関連について検討した。 2.方法 調査対象:研究1,研究

n

,研究E共にX大学 の臨床心理士養成コースに所属する 22"""'29歳 の大学院生を対象とし,研究 Iでは 40件,研究

n.m

では 31件の有効回答を得た。 調査内容:研究Iでは,障がいのある人に対す る潜在的態度を測るために,

F

U

M

I

E

テストを用 いた。

F

U

M

I

E

テストとは,制限時間内にタ}ゲ ット語にOあるいは×をつけ,その作業量をも って肯定的なイメージ

(

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)

と否定的なイメー ジ (x) との連合強度を測定する方法であり, 自分でも意識していない潜在的意識を測ること ができる。 研究Eでは,障がいのある人との関わりの有 無と関わりの経験の内容を問う質問紙調査を行 った。調査項目として,①障がいのある人との 関わりの内容,②生活している地域で障がいの ある人と顔を合わせる頻度,③上記の質問の際 に思い浮かべた障がいのある人についての自由 記述,という 3つを設けた。 研究Eでは,研究Iと研究 Eの結果を元に, 障がいのある人との関わり (8つの関わりの内 容)と潜在的態度との関連,普段生活している 地域で障がいのある人と顔を合わせる頻度と潜

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- 78 - 在的態度との関連,障がいのある人との関わり の経験の数と潜在的態度との関連を検討した。 3.結果と考察 研究 Iでは,障がいのある人に対する潜在的 態度について,肯定的が45%,否定的が47.5札 ニュートラノレが7.5%であり,肯定的・否定的 共に,割合が高いことが分かった。栗田ら(2014) の研究によると,大学生を対象とした多くの研 究が,特別支援教育や福祉サービスを専攻して いる大学生を対象としたものを除いては,障が いのある人に対して,否定的な潜在的態度を示 す結果となっている。本研究の対象者である大 学院生は,大学時代,特別支援教育や福祉サー ビスを専攻などを含む,様々な専攻で学び,進 学してきたことから,肯定・否定に大きな差が みられなかったと考えられる。 研究Eでは,質問項目①と②の結果を太槻 (2003)の研究を参考に,受動的な関わり・能 動的な関わり・あいさつ程度の関わり,接触機 会がある・関わりなしの5つの関わりに分類し た結果,全体の約8割が能動的な関わりに当て はまった。内閣府 (2012)が行った,

r

障害者と のふれあいについての世論調査Jでは,行事や 催しの参加意向の項目において,参加したいと する者の割合が69.舗と過半数を超え,障がい のある人と関わる機会に対する参加意欲が高い ことが分かる。そのため,能動的な関わりの割 合が他の関わりに比べて高いという結果になっ たことが考えられる。また,障がいのある人と どのような関わりの経験があるかを問う質問項 目では,

r

学校で一緒に勉強している(勉強して いた)J に当てはまる場合が最も多く,全体の 60.3,%であった。内閣府 (2006)が行った f障 害者の社会促進に関する国際比調査」での,身 近な障がいのある人の有無を問う質問では,

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学 校

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障がいのある人がいる

J

と回答した人が20 代の男性で57.~%, 20代の女性で60.4%と最 も多い数字となっている。また,文部科学省が 障がいのある子どもたちとの「交流授業・共同 学習

J

を推奨しており,多くの学校で実践され ていることから,障がいのある人との関わりの 項目の中で「学校Jが最も多く,過半数を超え る数字になったと考えられる。 研究Eでは,

r

学校で一緒に勉強していたJ• 「友人であるJ・「家族・親戚であるj という 3 つの質問項目のそれぞれに当てはまる場合には, 当てはまらない場合よりも障がいのある人に対 する潜在的態度が肯定的である傾向が示された。 この結果から,障がいのある人との関わりが単 発的なものよりも,長期・定期的な関わりの方 が障がいのある人に対する潜在的な態度が肯定 的であると考えられる。 また,障がいのある人との関わりが一つより も複数場面に

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たる場合の方が障がいのある人 に対する潜在的態度が肯定的である傾向が示さ れた。関わりが複数場面にわたる理由として, 自らが選択して障がいのある人との関わりの機 会を作っている可能性が考えられる。また,複 数場面で関わることによって,障がいのある人 に対するイメージが固定化されなかったのでは ないだろうカミ。 以上の研究結果から,障がいのある人との関 わりは,長期的・定期的な関わり,及び複数場 面での関わりが肯定的な潜在的態度と関連があ ることが示唆された。しかし,どのような活動 内容が望ましいかなど,詳細な関わりの内容に ついては今後の課題であり,現在推奨されてい る障がいのある児童・生徒と障がいのない児 童・生徒との交流授業の内容に活かしていくこ とが望まれる。

参照

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