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大学院生の「障がいのある人
J
に対する潜在的態度に影響を及ぼす要因
一障がいのある人との関わりの質に着目してー
人間教育専攻 臨床心理士養成コース i 芦 馬 彩 香 1.問題と目的 文部科学省 (2009)は,r
交流授業及び共同学習J について,障がいのある幼児児童生徒と障がい のない幼児児童生徒との交流及び共同学習は, 障がいのある幼児児童生徒の社会性や豊かな人 J間性を育む上で重要な役割を担っており,障が いのない幼児児童生徒が,障がいのある幼児児 童生徒とその教育に対する正しい理解と認識を 深めるための機会であると述べている。また, 渡辺ら (2003) は,障がいのある子どもたちと の接触経験は,障がいのない子どもたちの障が いのある子どもたちに対する受容的態度に肯定 的な影響を与えたと述べている。 このように,障がいのある人に対する偏見の 低減や受容的態度に肯定的影響を与える重要な 要因の1
っとして,接触経験,言わば障がいの ある人との関わりが挙げられている。しかし, 河内 (2006) は障がいのある人と接触したから といって,いつでも交流意欲が肯定的な方向に 変化するとは限らず,この不明確さには,関わ りの質の違いが影響することを明らかにしてい る。では,どのような関わりの内容が障がいの ある人に対する態度に影響を与えるのであろう か。これまでに,マイノリティに対する偏見・ 排除意識を低減させるための関わりの条件は既 に明らかにされている(大槻, 2003)。しかし, そのほとんどが,黒人や外国人に対する研究で あり,障がいのある人との関わりの質との関連 に着目した研究は少ない。そとで本研究では, マイノリティに対する関わりの条件を参考に障 がいのある人との関わりの内容を調査し,障が 指 導 教 員 小 倉 正 義 いのある人との関わりの内容と障がいのない人 の障がいのある入に対する潜在的態度との関連 について検討することを目的とする。研究Iで は,障がいのある人に対する潜在的態度につい て,研究Eではト樟がいのある人との関わりの 内容について,研究E
で,研究1
rn
の結果の 関連について検討した。 2.方法 調査対象:研究1,研究n
,研究E共にX大学 の臨床心理士養成コースに所属する 22"""'29歳 の大学院生を対象とし,研究 Iでは 40件,研究n.m
では 31件の有効回答を得た。 調査内容:研究Iでは,障がいのある人に対す る潜在的態度を測るために,F
U
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I
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テストを用 いた。F
U
M
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テストとは,制限時間内にタ}ゲ ット語にOあるいは×をつけ,その作業量をも って肯定的なイメージ(
0
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と否定的なイメー ジ (x) との連合強度を測定する方法であり, 自分でも意識していない潜在的意識を測ること ができる。 研究Eでは,障がいのある人との関わりの有 無と関わりの経験の内容を問う質問紙調査を行 った。調査項目として,①障がいのある人との 関わりの内容,②生活している地域で障がいの ある人と顔を合わせる頻度,③上記の質問の際 に思い浮かべた障がいのある人についての自由 記述,という 3つを設けた。 研究Eでは,研究Iと研究 Eの結果を元に, 障がいのある人との関わり (8つの関わりの内 容)と潜在的態度との関連,普段生活している 地域で障がいのある人と顔を合わせる頻度と潜- 78 - 在的態度との関連,障がいのある人との関わり の経験の数と潜在的態度との関連を検討した。 3.結果と考察 研究 Iでは,障がいのある人に対する潜在的 態度について,肯定的が45%,否定的が47.5札 ニュートラノレが7.5%であり,肯定的・否定的 共に,割合が高いことが分かった。栗田ら(2014) の研究によると,大学生を対象とした多くの研 究が,特別支援教育や福祉サービスを専攻して いる大学生を対象としたものを除いては,障が いのある人に対して,否定的な潜在的態度を示 す結果となっている。本研究の対象者である大 学院生は,大学時代,特別支援教育や福祉サー ビスを専攻などを含む,様々な専攻で学び,進 学してきたことから,肯定・否定に大きな差が みられなかったと考えられる。 研究Eでは,質問項目①と②の結果を太槻 (2003)の研究を参考に,受動的な関わり・能 動的な関わり・あいさつ程度の関わり,接触機 会がある・関わりなしの5つの関わりに分類し た結果,全体の約8割が能動的な関わりに当て はまった。内閣府 (2012)が行った,