わが国の職業指導・進路指導の成立と展開(?)
著者
吉田 辰雄
著者別名
YOSHIDA Tatsuo
雑誌名
アジア文化研究所研究年報
巻
38
ページ
9(158)-22(145)
発行年
2003
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00009388/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.jaわが国の職業指導・進路指導の成立と展開
(
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)
はじめに 前回の論文では,わが国の職業指導の成立と 展開について,大正期における職業指導の導入 から昭和期の第2次世界大戦終結の昭和20年ま でについて論じてきた。今回は昭和20年から現 在に至までの歴史的推移を検討することにする。 最初に歴史的素描として,戦後の新教育におけ る職業指導の位置づけやその後の職業指導,進 路指導の変遷を概観してみると,先ず昭和22年 に日本国憲法,教育基本法,学校教育法が相次 いで制定され,これによって教育制度や教育の 理念や性格,指導内容も大きく改革された。そ れにともない,戦後は職業指導も民主主義の原 理に基づいて,新しい職業指導の形で行われる ことになった。 日本国憲法では,r
何人も,公共の福祉に反 しない限り,居住,移転及び職業選択の自由を 有するJ
(第27条)と規定している。また,教 育基本法では,第1条の教育の目的について 「教育は,人格の完成を目指し,平和的な国家 及ぴネ士会の形成者として,真理と正義を愛し, 個人の価値をたっとぴ,勤労と責任を重んじ, 自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育 成を期して行わなければならない」と明記して いる。学校教育法は,これらの精神を受けて, 小・中・高・大の学校種別ごとに教育目的,教 育目標を定めている。 また,昭和22年に制定された職業安定法は, 「第2条(職業選択の自由)何人も,公共の福 祉に反しない限り,職業を自由に選択すること ができる」というように,日本国憲法に保障さ 士 口田 辰 雄
れた職業選択の自由,勤労権の確立を具現化し た形で示している。 前述の学校教育法のなかに,新制中学校およ び新制高等学校における職業指導に関連する教 育目標を明示しているが,それを受けて文部省 は,昭和22年に「学習指導要領一般編J
(試案), 「学習指導要領職業指導編J
(試案)を提示し, つづいて昭和 24年に「中学校・高等学校職業指 導の手引」を発行し,職業指導の指針を示した。 そして中学校の職業指導は,教育課程に「職 業科」が新設されて教科として位置づけられ, 昭和 24年には「職業・家庭」の教科の中に位置 づけられるのである。また,昭和28年に「学校 教育法施行規則等の一部を改正する省令」によっ て,職業指導主事が設けられた。その後,この 職業指導主事の制度は,昭和46年には進路指導 主事に改称されることとなった。 なお,昭和 32年に職業指導という用語に代わっ て「進路指導」の用語が公用語として登場した。 それ以来,学校教育においてもっぱら進路指導 の用語が使用され現在に至っている。昭和33年 の教育課程審議会の答申や,中学校学習指導要 領において,それぞれ進路指導の用語が使用さ れ,進路指導が教育課程の用語として明確に位 置づけられるのである。 また,一方では,この時期に職業指導は大き な転換を迎えるO 昭和33年の中学校学習指導要 領の改訂により,それまでの「職業・家庭科」 が廃止されて,それに代わって新たに「技術・ 家庭科」が設けられ,従来,職業・家庭科で取 り扱われた知識・理解の指導としての職業指導 (職業情報・啓発的経験といった職業指導に固 - 9一(158)わが国の職業指導・進路指導の成立と展開(1I) 有な活動)は教科からはずされるとともに中学 校教育から完全に消えてしまった。そしてそれ までの職業指導は,進路指導と名称を変えて, 学級活動の中で計画的に実施されることになる。 昭和44年の中学校学習指導要領の改訂,昭和46 年の高等学校学習指導要領の改訂により,進路 指導は教育課程の全体において行うこと,全教 育活動を通して指導することが強調された。そ して教育活動全体を通しての進路指導を,さら に補充,深化,統合する場として学級指導(ホー ムルーム)を中心に展開されることとなった。 この考え方や方針は,現在の新学習指導要領に も引き継がれ,学級活動・ホームルーム活動で 行われている。 平成元年の学習指導要領の改訂では,新しい 学力観とともに「生き方の指導」としての進路 指導が強調され,さまざまな実践が試みられて きた。また,今回の平成 10年の中学校学習指導 要領の改訂,平成11年の高等学校学習指導要領 の改訂では,
1
生きる力を育むJ
教育を強調し ている。そこでは,新たに「ガイダンスの機能 の充実J
を進路指導とのかかわりをもたせてい る。戦後の新しい教育制度のもとで開始された 新しい職業指導も進路指導と名称を変えただけ にとどまらず,その後の大きな教育改革の流れ に沿って変化がみられるのである。すなわち, ①進路指導の位置づけとしては,教科として の職業ないし職業指導から,学校全体の教 育活動としての進路指導へ ②進路指導の指導内容としては,職業につい ての知識・理解の指導から個々の生徒のキャ リア発達の援助へ ③進路指導の指導領域としては,職業的教科 の領域から,特別活動または教科以外の教 育活動へ ④進路指導の担当者としては,職業科担当教 師から,学級・ホームルーム担当教師およ び、進路指導主事へ といった変化がみられる。また,最近,進路指 導という言葉に代えて「キャリア教育」や「キャ リア開発」という用語が盛んに使用されている。 本論文では,戦後のこうした一連の動向を分析 していくことにしたい。 1 戦後の新教育と職業指導の位置づけ 戦後,わが国の教育は民主主義の確立をめざ して教育の大改革が行われた。特に戦後のわが 国に民主的な教育制度を確立する上で大きな影 響を与えたのは昭和21年 3月の「第 1次米国教 育使節団報告書」に示された勧告である。そし て昭和 22年に日本国憲法,教育基本法,学校教 育法があいついで制定され,新教育制度によっ て教育の理念や内容が大きく改革された。職業 指導においても,民主主義の原理によって新し い職業指導として復興されることになった。 学校教育法では,中学校教育の目標(第36条) を,12
社会に必要な職業についての基礎的 な知識と技能,勤労を重んずる態度及ぴ個性に 応じて将来の進路を選択する能力を養うこと j, 高等学校の教育の目標(第4
2
条)では,12
社会において果たさなければならない使命の自 覚に基づき,個性に応じて将来の進路を決定さ せ,一般的な教養を高め,専門的な技能を習熟 させること」。と規定している。 こうした法律に基づいて,学習指導要領の告 示や,教育制度の整備,職業指導,進路指導の 展開がなされるのであるが,本論文では,特に 中央教育審議会答申や学習指導要領とそれに基 づくカリキュラム,職業指導(進路指導)の手 引などを検討しながら,職業指導,進路指導の 考え方や内容がどのように歴史的に発展してき たかを考察していくことにする。歴史的推移を 見ていく場合,便宜的に一定の時代区分をして, それぞれの時期の特徴を検討していくことが必 要である。 ところで,わが国の職業指導(進路指導)の 歴史的区分については,かつて,淡路国治郎 (昭和2
3
年)が職業指導の時代区分として,第 1期(大正 8 ・9年 昭和 6 ・7年)は「教育 全般に自由主義,個性尊重の教育の時期j,第 2期(昭和6・7年 昭和20年)は「国家主義 的職業観の時期 j ,第 3 期(昭和 20 年~)は - 10一(157)わが国の職業指導・進路指導の成立と展開 (ll) 「戦後の新しい進路指導(職業指導)の時期」 の3期に区分している。 また,篠原俊雄・水戸谷貞夫らは, ,第 1期 「進路指導の創設期j,第2期「進路指導の独 立期j,第 3期「進路指導の充実期j,第 4期 「進路指導の発展期j,の 4期に区分している。 本論文では,職業指導,進路指導,これから 導入されるキャリア教育の特徴を把握するため に,便宜的に,次のように戦後を6期に時代区 分をして,分析を試みることにする。
2
わが国の戦後の職業指導,進路指導の 歴史的変遷についての考察 第 1期・「職業指導の復興・新発足期j (昭 和21年 昭和25年頃まで) この時期は,民主主義の確立,人間尊重の精 神を基盤とした学校職業指導の発足の時期にあ たり,職業指導の復興とともに新たな夜明けを 迎えた時期といってよい。前述の如く,昭和22 年に学校教育法が制定され,このなかに新制中 学校および新制高等学校における職業指導に関 連する教育目標を明示した。この学校教育法を 受けて文部省は,昭和22年に「学習指導要領一 般編j (試案),I
学習指導要領職業指導編(試 案)を世に出し,昭和24年に「中学校・高等学 校職業指導の手引」を発行して職業指導の指針 を示している。 そして中学校の職業指導は,教育課程の上で 「職業科」が新設されて教科の中に位置づけら れ,昭和24年には「職業・家庭」の教科の中に 位置づけられた。この中学校教科「職業科」の 性格や目的については,①生徒の労働の態度を 堅実にすること,②職業生活の意義と尊さを理 解させること,③将来の職業を定めることにつ いて自分の考えることのできるような能力を養 うこと,と述べている(学習指導要領,職業科 試案)。 また,職業の扱いについては,職業科の学習 指導要領と職業指導の学習指導要領を参照する ように示し,I
中学校の職業科は,生徒がその 地域で,職業についてどういう経験をもってい るかを考え合わせて,農・工・商・水産・家庭 の中の 1科または教科を選ぴ,これを試行課程 として労働の態度を養い,職業についての理解 を与え,職業指導によって更に職業についての 広い展望を与える」こととした。 また,I
職業・家庭科」に変更になってから は,この教科の性格と目標についてみていくと, およそ次の如くである。A.
教科の性格として, ①中学校における職業・家庭科は,実生活に 役立つ仕事を中心として家庭生活,職業生 活についての理解を深め,実生活の充実・ 発展を目指して学習する。 ②職業・家庭科の仕事は,啓発的経験の意義 をもっとともに,実生活に役立つ知識・技 能を養う。 ①職業・家庭科の学習内容は,地域社会の必 要と生徒の実状によって特色をもたせる。B.
教科の目標として, ①実生活に役立つ仕事をすることの重要さを 理解する。②実生活に役立つ仕事について の基礎的な知識・理解を養う。①協力的な 明るい家庭生活,職業生活のあり方を理解 する。④家庭生活・職業生活について社会 的・経済的な知識・理解を養う。⑤家庭生 活・職業生活の充実向上を図ろうとする態 度を養う。@勤労を重んじ,たのしく働く 態度を養う。⑦仕事を科学的,能率的に, かっ安全に進めようとする能力を養う。③ 職業の業態および性能について理解を深め, 個性や環境に応じて将来の進路を選択する 能力を養う。ことを掲げている。 また,新制中学校の職業指導については,昭 和23年 2月7日付の文部次官・労働次官の通牒 によると,職業指導の徹底として, ①学校において職業知識の啓培,職業実習,個 性に関する調査及ぴ諸検査,職業指導(進学及 び就職),卒業後の補導を行い,就職あっ旋及 び就職後の補導については公共職業安定所に必 要な資料を提供する等,緊密な連絡をとりこれ に協力しなければならない。-11
一(15
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わが国の職業指導・進路指導の成立と展開 (II) ①公共職業安定所においては学校に連絡の上, 職業に関する資料の提供,職業適性検査の援助, 工場事業場等における職業実習に対する協力, 職業相談,就職あっ旋,就職後の補導等,職業 安定に関する事項を行わなければならない。 ①職業指導は前述の問機関の各内容を実施する ことによりその成果を収めうるものであから, これを行う学校及び公共職業安定所は互いに協 力援助し,その実績をあげねばならない。とい うことが示された。このように職業指導の具体 的内容として,職業知識の啓培,職業実習,個 性に関する調査および諸検査,進学及び就職, 卒業後の補導,とともに公共職業安定所との相 互協力関係の徹底化が求められている。 第
2
期・「職業指導の展開期J
(昭和2
6
年 昭和32年頃まで) この時期は,中学校の「職業・家庭科J
にお ける職業指導と学習指導要領の改訂にともなう ホームルームにおける指導やカウンセリングの 重視がみられた。また,昭和28年11月に,学校 教育法施行規則等の一部を改正する省令によっ て,職業指導主事が設置された。前述のように, 昭和24年に「職業科」から「職業・家庭科j に 教科が改訂されたことにより,職業指導が「職 業・家庭科J
との関連のなかでおこなわれた。 それというのも「職業指導」は,直ちに即「職 業・家庭科J
とは言えないが,職業・家庭科と いう教科は職業指導を抜きにしては考えられな いとうことによっている。すなわち,仕事を中 心とする学習を展開しつつ職業生活に対する理 解を深め,その充実を図ろうとするもので,教 科の中で知識・理解や啓発的経験が取り上げら れたのである。 昭和2
6
年に改訂学習指導要領が刊行され,特 別教育活動ではホームルームについて, ["ホー ムルームを学校における家庭とし,まず生徒を 楽しい生活の雰囲気のなかにおき,生徒のもつ 諸問題を取り上げて,その解決に助力し,生徒 の個人的,社会的な成長発達を助長したり,職 業選択の指導を行ったりする」としている。ホー ムルームでは,このように生徒指導の一環とし て職業指導が取り扱われている。また,カウン セリングについては,中央産業教育審議会の建 議のなに, ["カウンセリングとしての職業指導 は,この教科外におき,その重要性にかんがみ 別途考慮する」としている。 職業指導の専任担当教員に関しては, ["職業 教育及ぴ職業指導分科審議会」による陳情,中 央産業教育審議会等の意見具申に基づき,昭和 28年に「学校教育法施行規則等の一部を改正す る省令J
によって,専任担当教員の設置は見送. りながらも職業指導主事の制度化を図っている。 社会的背景としては, ["第2
回職業・家庭科教 育・職業指導研究発表全国大会J
(昭和27年) での,次の 4項目にわたる陳情の内容にみるこ とができる。すなわち ①独立日本の復興を図るには,産業教育の振 興が急務であり,産業教育の重要な基底は 職業指導である。 ②中学校・高等学校において職業指導を行う べき法令の指示があるにもかかわらず,そ の実施上の裏づけを欠くために,現在にお いては教員定数等の関係で専任の教諭をお き得ない状態である。 ①職業指導は,その分野が広く任務内容が学 校内外にわたって複雑であり,かつ専門の 技術を要するので教科担任教師の兼務では 職業指導の効果が十分に期待できない。 ④現状を打開し組織的,計画的に職業指導の 効果をあげるめに,中学校,高等学校にそ れぞれ教科担任教師の定数以外に専任の職 業指導教諭を設置することが極めて必要で、 ある。 などの陳情が出されている。この職業指導主事 の制度は,昭和46年には進路指導主事に改称さ れている。進路指導の用語は,昭和32年11月の 中央教育審議会の「科学技術教育の振興方策に ついてJ
の答申において公式に登場する。 第3 高等学校および中・小学校における科 学技術教育について1
高等学校および中・小学校卒業者の質の向 - 12 -(155)わが国の職業指導・進路指導の成立と展開 (II) 上 高等学校の卒業者は,上級学校に進学する者 と直ちに職業または家事に従事す者とに分かれ る。進学者については,特に基礎学力の向上が 望まれ,就職する者については初級の技術者, 技能者としての資質の向上が切望されている。 このためには,高等学校および中・小学校を 通じて基礎を強化するとともに,高等学校にお いては産業教育,中学校においては職業に関す る基礎教育を強化する必要がある。 したがって,数学・理科教育および産業教育 の実施においては,生徒の進路の多様性に留意 して,その志望と能力に応ずる指導がなされる ことが必要である。 以上の観点、から,次の対策がとられなければ ならない。 (1) 教育内容および教育方法の改善 (a-b省 略)
c
中学校においては,義務教育の最終段階で あることにかんがみ,高等学校においては いっそう進路特性に応ずる教育を行うこと ができるように教育課桂を改善すること。 d高等学校および中学校においては,進路指 導をいっそう強化すること。e
高等学校の各課程の特色をいっそう生かす ようにするとともに,普通課程においては 進路に応ずる教育を充実するため,コース 制を強化すること。(以下略) また,翌年の昭和33年の教育課程審議会の答 申,同年の中学校学習指導要領でもそれぞれ進 路指導という用語が使用され,進路指導が教育 課程に明確に位置づけられた。 第3期・「進路指導の確立期J
(昭和33年 昭和43年頃まで) 進路指導にとって,この時期は特別教育活動 の時期といえる。中学校は学級活動を中心に, 高等学校はホームルームを中心にして進路指導 が展開された。また,科学技術教育の振興とい う社会的要請から,昭和33年に中学校学習指導 要領が改訂され,r
職業・家庭科」が廃止され, 新しく「技術・家庭科」が設けられた。昭和3
6
年に進路指導の定義が,文部省「中学校・高等 学校進路指導の手ヲ卜中学校学級担任編」で提 示され,学校進路指導の定義として,進路指導 の性格づけの基本となっている。 まず,学習指導要領についてで、あるが,昭和 33年及び昭和35年に中学校・高等学校学習指導 要領が改訂され,進路指導が特別教育活動に明 確に位置づけられたことである。それまでは, 職業・家庭科の一分野として扱われていた職業 指導が,進路指導という用語に改められ,しか も教科から独立して特別教育活動に位置づけら れ,r
個性の伸長を助けるJ
,r
将来の進路を選 択する能力を養う」ことを進路指導の達成目標 にかかげている。 また,中学校ではホームルームを学級活動と いう名称に改め,この学級活動を中学校におけ る生徒指導,進路指導の基本的な場としたこと である。そして進路指導は,学校の全ての教育 活動において,教育課程の全領域を通じて全校 の教職員の協力体制のもとに行われるべきもの であり,さらにそれらを補充し,深化し,統合 する指導の場として学級活動を位置づけている。 そして,学級活動において行う進路指導の具体 的内容として,つぎの4項目を揚げている。 ①自己の個性や家庭環境などについての理解一 自己分析をしたり,諸検査の結果を検討し たりして,各自の個性や家庭環境を理解す るとともに,それらと学習や進路との関連, 学習や進路の計画,相談の必要,進路選択 の一般的めやす,などについて理解するこ と。 ②職業・上級学校等についての理解一職業に ついては,産業との関連を考慮して,仕事 の内容,社会的な役割,資格その他の諸条 件,就職の機会などの概要について理解す るとともに,上級学校や学校以外の教育施 設などについては,将来の職業との関連を 中心として,それらの内容を理解すること。 ③就職(家事・家業従事を含む)や進学につ いての知識一求人申込の状況・事業所の選 - 13一(154)わが国の職業指導・進路指導の成立と展開 (II) び方,採用試験,卒業者の進学状況につい て知ること。 ④将来の生活における適応についての理解一 職業生活と学校生活の相違,将来の生活へ の適応のしかたについて理解すること。 高等学校の場合は,進路指導は特別活動の中 のホームルームを中心に取り扱うように位置づ け,ホームルームの目標の 1つとして「自主的 に進路を選択決定する能力を養う」ことを挙げ, 内容として「進路の選択決定やその後の適応に 関する問題
J
を取り上げている。 前述のように,昭和33年の中学校学習指導要 領の改訂では,i
職業・家庭科」が廃止され, それにかわって「技術・家庭科」が新設され, 従来,職業・家庭科で扱われていた知識・理解 の指導としての職業指導(職業情報・啓発的経 験といった職業指導に固有な活動)は教科から はずされ,職業指導は進路指導と名称を変えて 学級活動のなかで計画的に実施されることにな るのである。 第4
期・「進路指導の展開期J
(昭和4
4
年 昭和63年まで) この時期の進路指導は,昭和4
4
年の中学校学 習指導要領の改訂,昭和4
5
年の高等学校学習指 導要領の改訂に基づく進路指導の展開がなされ た時期で,進路指導は教育課程の全体において 行うこと,全教育活動を通して指導することが 改めて強調された。そして教育活動全体を通し ての進路指導を補充,深化,統合するものとし て,特別活動としての学級指導(ホームルーム) を中心に展開されることとなった。この立場は, その後の中学校学習指導要領,高等学校指導要 領の改訂においても,ほほ同じものとなってい るのである。 昭和4
4
年・4
5
年の中学校及び高等学校の教育 課程の改訂は,日本の社会,経済,科学技術の 急速な発展と国際情勢の変化に対応させる必要 から,①科学技術教育の強化,②国民的自覚の 高揚と国際理解,国際協調精神の育成,③将来 の進路を選択する能力の育成,を図ることを目 指しておこなわれたのである。 そして,昭和4
4
年改訂中学校学習指導要領に は,総則で「個々の生徒の能力・適性等の的確 な把握に努め,その伸長を図るように指導する とともに適切な進路の指導を行うようにする」 (第1章総則,第1教育課程一般9の(2))と明 示し,さらに特別活動で「心身の健全な発達を 助長するとともに,現在およぴ将来の生活にお いて自己を正しく生かす能力を養い勤労を尊重 する態度を養うJ
,i
健全な趣味や豊かな教養を 育て,余暇を善用する態度を養うとともに能力・ 適性等の発見と伸長を助ける」ことを目標にし ている。 また,進路指導は学級指導で扱われることと なり,学級指導の内容として,i
進路の選択に 関すること」を掲げ,学級指導の内容の取り扱 いに当たっての配慮すべき事項として i(l) 学級指導においては,たとえば,次のよ うな事項を取り上げるようにすること 1進路の選択に関することとしては,進路 への関心の高揚,進路の明確化とその吟味, 適切な進路の選択など (2) 生徒の学校生活全般において起こる問題 を考慮するとともに,学級指導の各内容相E
の関連を図り,3
年間を見通して,でき るだけ具体的な資料や事例を活用し,組織 的,発展的な指導を行うようにすること, なお,進路の選択に関する内容については, 特に各学年にわたって取り扱うようにする こと (3) 平素から個々の生徒についての理解に必 要な資料(たとえば,個人記録,家庭環境, 地域環境などの資料)を豊富に収集するよ う適切な指導となるようにすること j を示している。このように,中学校における進 路指導の取り扱いが学習指導要領の総則に明文 化されたことと,進路指導が教育課程の全領域 において,学校における全教育活動を通じて進 められることを明示している。 特に,学級指導における進路指導の具体的内 容として,生徒の職業的発達の視点から,①進 - 14一(153)わが国の職業指導・進路指導の成立と展開 (11) 路への関心の高揚,②進路の明確化とその吟味, ③適切な進路の選択,を取り上げている。 また,学校行事の「勤労・生産的行事」とし て,
1
勤労の尊さや意義,創造することの喜び などが体得できるとともに,職業についての啓 発的な経験が得られるような活動」が取り上げ られたのである。また,高等学校の進路指導に ついては,昭和45年改訂高等学校学習指導要領 の総則では,1
(
1
)
個々の生徒の能力・適性等の 明確な把握に努め,その伸長を図り,生徒に適 切な各教科,科目や類型を選択させるように指 導するとともに進路指導を適切に行うこ」と明 示している。 また,各教科以外の教育活動の目標として, 1(3)心身の健康を増進し個性を伸長するととも に,人間としての望ましい生き方を自覚させ, 将来の生活において自己実現させる能力を育て る, (4)健全な趣味や豊かな情操を育て,余暇を 活用する態度を養うとともに,勤労を尊重する 精神の確立を図る」ことを掲げている。 ホームルームの内容としては, 1(4)学業生活 および進路の選択決定に関する問題」を取り上 げ,その内容の取り扱いとして 1(2)1.学業生 活および進路の選択決定に関する問題としては, 各教科科目等の選択,学業生活への適応,進路 の吟味と選択,将来の職業生活等への適応など」 を具体例として示している。学校行事では,内 容として勤労・生産的行事をあげ,取り扱いと して,1
勤労の尊さや意義,創造することの喜 ぴなどが体得できるとともに,職業についての 啓発的な経験が得られるような活動」をあげて いる。 高等学校の場合も,中学校と同様に,進路指 導の取り扱いに関する事項が総則に明文化され, 進路指導が全教育課程の中で,まだ全体の教育 活動を通じて行われることが明示されたのであ る。また,特徴的なものとして,中学校の特別 活動の目標に「現在および将来の生活において 自己を正しく生かす能力を養うことJ
,高等学 校の各教科以外の教育活動の目標として,1
将 来の生活において自己を実現する能力を育てる ことJ
があげられるなど,職業的自己実現の重 視がみられる。 また,昭和40年代は,進路指導にとっては 「観察指導の時代」でもあった。「中学校観察 指導調査研究に関する協力者会議」の報告書 (1中学校における進路の指導についてJ)では, つぎの 5項目を掲げている。すなわち, ¢組織的,継続的な観察その他の方法によっ て収集された資料に基づき一人ひとりの生 徒について生徒理解を一層深めること ②生徒が自己の能力・適性等を理解し,卒業 後の学業生活または職業生活を通して自己 実現を果たし得るように指導すること ③生徒に卒業後の学業生活および職業生活に ついての理解を深めさせ,社会的使命の自 覚を促すとともに,自己の進路についての 理解を深め意欲を起こさせるような指導を 一層充実すること ④進路の指導は,生徒指導の一環であるので, これを学業指導,個人的適応指導,保健指 導等の生徒指導と密接な関連を図るととも に,各教科等の教育活動との関連を密にす ること ①進路の指導について,個々の教師の理解を 深め,意欲を高め指導力の向上をさせると ともに全教師の協力体制を一層強化するこ と などを強調している。その社会的背景としては, 昭和30年代の後半に入る頃から高校進学率の急 上昇と受験競争の弊害が指摘されたことと,生 徒の能力・適性・進路等の多様化していること, 他方,産業界では職種の専門化の進行と,新し い分野での人材需要が生じてきたことに即応す るために,より一層,教育内容の多様性が図ら れたと見ることができる。 中教審答申の「後期中等教育の拡充整備につ いてJ
(昭和41年10月答申)によると,後期中 等教育の多様化に伴い,生徒の能力・適性,環 境に応じて適切な進路を選択させることが,ま すます重要となり,そのために中学校における 生徒の能力・適性等を的確に把握する方法を開 - 15一(152)わが国の職業指導・進路指導の成立と展開 (II) 拓するとともに,綿密な観察を行って,その結 果に基づいて適切な指導を行う体制を整備する 必要があるということで観察指導の強化を求め たのである。 昭和 52年改訂中学校学習指導要領および昭和 53年改訂高等学校学習指導要領の段階では,昭 和 50年10月の教育課程審議会の「教育課程の基 準の改善に関する基本方向について
J
(中間ま とめ)において,①人間性豊かな児童生徒を育 てること,②ゆとりのあるしかも充実した学校 生活が送れるようにすること,③国民として共 通に必要とされる基礎的・基本的な内容を重視 するとともに児童生徒の個性や能力に応じた教 育が行われるようにすること,の3点について 指摘をし,進路指導については,1
その指導が 計画的・組織的に行われるように努めるととも に,個性の理解や進路に関する知識の整理・統 合・深化が一層,図れるよう学級指導およびホー ムルームの充実を図る」ように求められた。 進路指導に関しては,中学校学習指導要領 (昭和 52年 7月改訂)では,総則で 19-
(
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)
学 校の教育活動全体を通じて,個々の生徒の能力, 適性等の的確な把握に努め,その伸長を図るよ うに指導するとともに,計画的,組織的に進路 指導を行うようにすることJ
,19 -(3)教師と生 徒及び生徒相互の好ましい人間関係を育て生徒 指導の充実を図ること」と述べ,特別活動のう ちの学級活動で 1(3)進路の適切な選択に関する こと,一進路適性の吟味,進路の明確化,適切 な進路選択の方法などを取り上げること」を掲 げている。 一方,高等学校学習指導要領(昭和 53年 8月 改訂)の総則では,1
4
学校においては,地 域や学校の実態の応じて,勤労にかかわる体験 的な学習の指導を適切に行うようにし,働くこ とや創造することの喜びを体得させるとともに, 望ましい勤労観や職業観の育成に資するものと するJ
(第1款教育課程編成の一般方針等),1
6
一(2)学校の教育活動全体を通じて個々の生 徒の能力,適性等の的確な把握に努め,その伸 長を図り生徒に適切な各教科・科目や類型を選 択させるように指導するとともに計画的・組織 的に進路指導を行うようにすることJ
(第 7款 指導計画の作成等に当たって配慮事項)を目指 している。 第5
期・「進路指導の新展開期J
(平成元年1
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年まで) この時期は,平成元年の学習指導要領の改訂 により,1
生き方jの指導としての進路指導が 強調されることになる。「生き方」の指導の背 景をみると,わが国の教育の問題点を臨時教育 審議会の数次にわたる答申では,つぎのように 指摘していある。すなわち, 「①戦後改革で強調された人格の完成や個性の尊 重,自由の理念などが必ずしも十分に定着し ていない面がある。また,個性豊かな我が国 の伝統・文化についての正しい認識や国家社 会の形成者としての自覚に欠け,しつけや徳 育がおろそかにされたり,権利と責任の均衡 が見失われたりした面も現れてきた。 ②教育が画一的になり,極端に形式的な平等が 主張される傾向が強く,各人の個性,能力, 適性を発見し,それを開発し,伸ばしていこ うとする面に欠け,また,受験戦争が加熱し 教育が偏差値偏重,知育偏重となり,創造性, 考える力,表現力よりも記憶力を重視するも のとなっている。いじめ,登校拒否,校内暴 力などの教育荒廃の現象が目立ちはじめ,画 一的,硬直的,閉鎖的な学校教育の体質の弊 害が現れてきた。 ①大学教育が個性的でなく,また,教育・研究 に対して国際的に評価されるものが多くない ことである。学術研究では,従来ともすれば 科学の応用とその技術化に関心が傾き世界的 視野で見れば純粋な科学や基礎的な研究への 寄与が乏しく,大学は概して閉鎖的であり, 機能が硬直化し,社会的および国際的要請に 十分に応えていなかった。 ④学歴偏重の社会的風潮は,教育にいわゆる有 名校,有名企業などを目指す学歴獲得競争の 弊害を生んでいる。 - 16一(151)わが国の職業指導・進路指導の成立と展開 (II) ①教育行政が画一的,硬直的となっており,教 育の活性化をさまたげている面があり,また, これまでの教育行政には学校外における教育 活動の広がりなど新しい教育需要に柔軟かっ 積極的に対応する姿勢に欠ける状況が見られ ることである。」 この臨時教育審議会答申を受けて,文部省は 教育改革の基本方向として, ①生涯学習体系への移行とそのための基盤整 備 ②児童生徒の個性を尊重しつつ,心と身体の 健康の確保,増進のための教育環境の整備 ③高等教育の充実と学術研究,特に基礎研究 の振興 ④時代の変化への適切な対応(情報化への対 応と国際化への対応) の 4つの柱をあげている。そして,教育改革 推進のための具体的な取り組みのなかで,特に 初等中等教育の充実と改革として, (a) 教育内 容・方法の改善(教育課程の改善,徳育の充 実), (b)後期中等教育の多様化, (c)生徒指 導の充実,等をあげている。 こうした経過を踏まえて,人間としての「在 り方生き方」の教育指導を重視している。「生 き方」の指導が提唱されてきた経緯,この「生 き方」の指導が持つ意味と, 1"生き方」の指導 としての進路指導の内容,について取り上げる ことにする。 「生き方」の指導という言葉が使われるよう になった経緯を歴史的にみると, ①中央教育審議会答申「生涯教育について」 (昭和 56年6月11日) ②中央教育審議会「教育内容等小委員会審議 経過報告
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(昭和 58年11月15日) ①臨時教育審議会「教育改革に関する第二次 答申についてJ
(昭和 61年 4月23日) ④教育課程審議会「幼稚園,小学校,中学校 及ぴ高等学校の教育課程の基準の改善につ いて(答申)J(昭和62年12月24日) ①中学校及び高等学校学習指導要領の改訂 (平成元年 3月) の中に,それぞれ使用されていることが指摘で きる。 ① 中央教育審議会答申「生涯教育についてJ
(昭和56年 6月)にみられる「生き方」の 指導 昭和52年6月,文部大臣は中央教育審議会に 対し,我が国における公教育に対する国民の信 頼を高め,人々の生涯を通ずる学習を盛んにし, 学術・文化の振興を期するため, 1"当面する文 教の課題に対応するための施策について」の諮 問を行い,その結果として昭和56年に「生涯教 育について」の答申をおこなったものである。 その中で 「第3章 成 人 す る ま で の 教 育 3ー(3) 進 路指導の充実 中学校や高等学校においては,生徒が正 しい勤労観や職業観を身につけ,将来社会 人としてあるいは職業人として,よりよい 生き方を見い出し,自らその進路を選択す ることができるようにすることが重要で、あ る。そのためには,生徒に対して,将来の 進路設計や職業に関する適切かつ具体的な 情報を提供したり,職業についての理解を 深めるための体験の機会を与えることが大 切であり,また,個別の進路相談に応じら れるような工夫が必要である。特に,中学 校卒業後,直ちに社会に出る者に対する十 分な配慮が望まれる。さらに,学校や父母 にたいしても,子どもの進路の選択に関し 適切な指導・援助ができるよう進学上,職 業上の広い知識・情報が与えられるように するとともに,進路指導に関し,学校,家 庭,社会の聞の連携・協力を一層強化する ことが大切である。また,このような進路 指導の充実と並んで,学校,家庭はもとよ り社会全体が人聞の能力をより多面的にと らえ,これを正しく評価するようになるこ とが望まれる。」と指摘している。 このように,初等中等教育では,学習意欲を 育て,物事を自ら進んで、考えたり,そこに楽し みを見出すことができるような生き生きとした - 17一(150)わが国の職業指導・進路指導の成立と展開 (II) 人間を育てることが大切であり,特に中学校, 高等学校教育では,生徒の個性・能力の伸長に 十分に配慮するとともに,生徒が自らその進路 を選択することができるように進路指導を充実 することが必要であることを指摘している。 ② 中央教育審議会答申「教育内容等小委員 会審議経過報告
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(昭和58年11月)にみら れる「生き方」の指導 第13期中央教育審議会は,昭和 56年11月24日 に文部大臣から「時代の変化に対応する初等中 等教育の教育内容などの基本的在り方について」 の諮問を受け,審議内容を報告したものである。 この中で「生き方jの指導に関して, III.時代の変化と学校教育の在り方につい て 4今後特に重視されなければならな い視点 1)I
自己教育力」の育成 自己教育力とは,主体的に学ぶ意志, 態度,能力などをいう。(中略) 自己教育力はこれからの変化の激しい社会に おける生き方の問題にかかわるものである。 特に中学校段階では,自己を生涯にわたって 教育し続ける意志を形成することが求められ ているものと考えられる。N
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初等中等教育における教科構成等の間 題 (3)青年期の生き方についての指導の 在り方 中等教育段階の生徒は,自己の確立期に 当たり,家族や友人との人間関係をはじ め,自己の進路,将来の生き方などにつ いて不安や葛藤を抱き,模索する時期に 当たるO しかも,青年期特有の問題に直 面し,乗り越えることによって人間とし ての健全な成長が図られるものであ。こ の意味において,道徳教育の充実を含め 青少年期の生き方に関する指導への配意 は,学校教育においても極めて重要で、あ るといえる。このような大切な時期のあ る生徒に対する人間の生き方に関する指 導については自己探究期としての青年期 にふさわしい内容を考え,ゆとりをもっ て指導できるとともに,生徒自身に自己 をみつめさせ,あるいは生徒の疑問にこ たえていく方途を確保することが必要で、 ある。」と述べている。 このように,社会の変化と学校教育をめぐる 諸問題,家庭や地域等の教育機能への期待など を含め,幅広い範囲にわたって問題点を指摘し, その上で初等中等教育の教科構成,教育内容の 在り方を述べており,進路指導に直接かかわる 内容のなかで,I
青少年期の生き方についての 指導の在り方」という内容が示されたのである。 ③ 臨時教育審議会「教育改革に関する第2 次答申J
(昭和61年4月23日)にみられる 「生き方」の指導 臨時教育審議会は,昭和 59年 9月 5日,I
我 が国における社会の変化及び丈化の発展に対応 する教育の実現を期して各般にわたる施策に関 し必要な改善を図るための基本的施策について」 の諮問を受け,昭和6
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月に「教育改革に関 する第2次答申」を提出している。この中で, 「生き方」の指導に関しては, 「第2部教育の活性化とその信頼を高める ための改革」第 1章生涯学習体系への移行 第 1節生涯にわたる学習機会の整備」の中で 「② 初等中等教育においては,生涯学習の 観点から,基礎・基本の徹底,自己教育力 の育成,教育の適時性への配慮を重視する ことを基本とし,その内容の改革進める。 それとともに,個性や適性に応じた進路 選択を行い,また,正しい勤労観,職業観, 職業生活に不可欠な基礎的知識・技能を身 に付けさせ,将来のよき職業人を育成する 必要がある。この観点から,中学校におけ る進路指導の見直し,高等学校職業科にお ける職業教育や高等学校普通科における職 業基礎教育の充実,産業・職業に関する実 態認識の向上,社会人教師の登用などにつ いて検討する。また,高等学校普通科さら に職業訓練機関との連携・協力などについ て検討する。」また,1
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わが国の職業指導・進路指導の成立と展開 (n) 「第 3章 初 等 中 等 教 育 の 改 革 第 1節徳育 の充実」において 「① 自己を他との好ましい人間関係の中で とらえ,自己実現を図ることは,これから の教育にとって特に重要な謀題である。一 中略ー また,中等教育段階においては, 「生き方」の指導を重視し,このため,特 別活動における学級指導や例えば高等学校 の「社会」科の中における価値・倫理,人 間の生き方などについての指導を改善する とともに,勤労体験や教員以外の者による 指導の機会の拡大などにより,自己および 進路の確立についての洞察を深めるように する。(後略) 第 2節教育内容の改善(1).教育内容の改善 の基本方向 ② 青年期は自我が確立し,個性の分化が 徐々に顕著になる時期である。この時期の 教育は,生徒の個性の伸長を図り充実した 学校生活が送れるよう,多様な教育内容と 教育機会を提供すべきである。 こうしたことから,中学校教育について は,基礎的・共通的な内容をより深く習得 させながら,個々の生徒の個性に応じた教 育の推進について配慮しなければならない。 したがって,生徒の能力・適性の把握・進 路に関する意識の確立に資する観点から, 高等学校教育との関連にも留意して,選択 教科の種類を時間数を拡大する。 また,高等学校教育については,さらに 能力,適性に応じて,できるだけ多様な教 育内容を選択履修できるようにする。(後 略) ③生徒が自らその進路・職業について考 え,自己の将来の進路を選択する能力を培 うことは,中等教育の重要な役割である。 こうした時期にある生徒の能力・適性を組 織的,継続的に把握し,生徒の主体的な進 路選択の能力を伸長するため,学校におい ては,進路指導の意義や必要性を理解し, それを円滑に行うための観察・指導をはじ めとする進路指導の体制を確立するととも に,家庭,接続する上級学校および企業等 相互間の理解と連携を強化する必要があ る。
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(後略) と述べている。このように,初等中等教育段階 においては基礎・基本の徹底,自己教育の育成, 教育の適時性等への配慮,職業教育の振興が提 言され,また,中等教育においては,自己探究, 人間としての「生き方」の教育の重視が提言さ れている。 このことは,1
生き方」の指導が単に人間と してどう生きるかという倫理や人間の存在価値 のみを意味するものでなく,学校教育において 自己や進路の確立に向けた実践的な学習の展開 が必要であることを示唆している。 ④教育課程審議会「幼稚園,小学校,中学 校及び高等学校の教育課程の基準の改善に ついて(答申) (昭和62年12月24日)にみ られる「生き方」の指導 教育課程審議会は,臨教審の第 2次答申を踏 まえて昭和62年12月に答申をしたが,教育課程 の基準の改善の 4つの柱をして, ①豊かな心をもち,たくましく生きる人閣の 育成をはかること ②自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応 できる能力の育成を重視すること ③国民として必要とされる基礎的・基本的な 内容を重視し,個性を生かす教育の充実を 図ること ④国際理解を深め,我が国の文化と伝統を尊 重する態度の育成を重視すること1
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各教科・科目の内容 (1) 各教科・科目 等の共通的な改善方針 イ これからの社会の変化に主体的に対応で きるよう,思考力,判断力,表現力などの能 力の育成を重視するとともに,自ら学ぶ意欲 を高め主体的な学習の仕方を身に付けさせる 観点から,体験的な学習や問題解決的な学習 などが充実するよう配慮する。 I 特別活動については,学校や児童生徒の - 19一(148)わが国の職業指導・進路指導の成立と展開 (II) 実態に応じて,道徳的実践の指導,健康や安 全にかかわる指導,進路指導などが充実する ようにする。その際,特に中学校及び高等学 校における進路指導については,人間として の生き方に関する指導に配慮しつつ,主体的 に進路を選択する能力の育成を図るようにす る。 中学校特別活動では (イ)学級活動については,生徒が学級集団の 一員としての自覚のもとに望ましい集団生活や 人間関係を築く自主的活動に関する指導,並び に個人及び社会の一員としての在り方,健康で 安全な生活,学業生活の充実及び進路の選択な どに関する指導を主にして内容を構成する。そ の際,特に人間としての生き方に関する指導を 重視する観点、から,個人及び社会の一員として の在り方や進路の選択に関することなどの内容 を充実するとともに,その指導時間数ついて明 示する。 高等学校特別活動では (ア)ホームルームについては,人間としての 在り方生き方に関する指導の充実を図る観点か ら,望ましい集団生活や人間関係を築くための 自主的活動に関する指導,並びに個人及ぴ社会 の一員としての在り方,健康で安全な生活,学 業生活の充実,進路の選択・決定,国際化や情 報化の進展に対応する能力の育成などに関する 指導を重視して内容を構成する。その際,特に 個人及ぴ社会の一員としての在り方や進路の選 択・決定に関する内容が重点的に取り扱われる よう,その内容を充実するとともに授業時数の 示し方等を工夫する。 (ウ)学校行事における集団宿泊活動,奉仕活 動及び勤労生産活動については,小学校と同様 の趣旨で改善する。その際,人間としての在り 方生き方の指導の充実にも配慮する。と述べて る。この教育課程審議会の答申にあるように, 中学校では「人間としての生き方の指導
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,高 等学校では「人間としての在り方生き方の指導J
が強調されている。こうした答申の指摘を受け て,平成元年3月に新学習指導要領が告示され, その総則では,1
生き方」の指導としての進路 指導は, ①生徒が自らの生き方を考え主体的に進路を 選択することができるよう学校の教育活動全 体を通じて計画的,組織的な進路指導を行う ②人間としての生き方についての自覚を深め, 自己を生かす能力を養うこと 特別活動一将来の生き方と進路の適切な選択 に関することとして, 進路適性の吟味,進路情報の理解と活用,望 ましい職業観の形成,将来の生活設計,適切 な進路の選択 勤労生産・奉仕的行事では 勤労の尊さや意義を理解し,働くことや創造 することの喜びを体得し,社会奉仕の精神を養 うとともに,職業や進路に関わる啓発的な体験 が得られるような活動を行うことが強調された。 生き方の指導とは,生徒が自分をしっかり見つ め,判断し,自主的に,自分の生き方を決めて 人生を創造していく力を育成することにある。 また,生き方の指導は人間としてどのように生 きるかという倫理や人間存在の価値のみを意味 するのではなく,学校教育において自己や進路 の確立に向けた実践的な学習や指導の展開を図 ることを意味している。 第6期・「進路指導からキャリア教育への移 行・導入期J
(平成1
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年 現在まで) 平成8年7月19日,中央教育審議会は, 121 世紀を展望した我が国の教育の在り方について」 (第1次答申)で,これからの豊かな成熟社会 の実現を図る社会的要請や,国際化・情報化な どの急速な変化といった展望を踏まえ,1
ゆと り」の中で,こどもたちが「生きる力」を育む ことの重要性を提唱している。答申では,1
生 きる力」とは,①自分で課題を見つけ,自ら学 ぴ,自ら考え,主体的に判断し,行動し,より よく問題を解決する能力,②自らを律しつつ, 他人と強調し,他人を思いやる心や感動する心 など豊かな人間性とたくましく生きるための健 康や体力,のことを指している。 - 20一(147)わが国の職業指導・進路指導の成立と展開 (ll) こうしたことを受けて,新学習指導要領が告 示された。小学校,中学校は平成14年 4月から 全学年全面実施,高等学校は平成15年 4月から 第
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学年から学年進行で実施に入った。新学習 指導要領による進路指導の考え方は, (1)学び方やものの考え方を身につけ,問題の 解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む 態度を育て,自己の生き方を考えることがで きるようにする。 (2)生徒が自らの生き方を考え,主体的に進路 を選択することができるよう学校の教育活動 全体を通じ,計画的,組織的な進路指導をお こなう。 (3)生徒が学校や学級での生活によりよく適応 するとともに,現代及び将来の生き方を考え, 行動する態度や能力を育成することができる よう学校の教育活動全体を通じガイダンスの 機能の充実を図る。 (4)自然体験やボランテア活動,就業体験等の 社会体験,観察・実験・学習・研究,発表や 討論,ものづくりや生産活動,交流活動など 体験的な学習,問題解決的な学習を積極的に 取り入れること,を特徴としている。また, 新しい要素として,r
ガイダンスの機能の充 実」をあげている。教育課程審議会の答申で は「将来の生き方を考える態度や主体的に適 切な選択を行う能力を育成することの重要性 にかんがみ,ガイダンスの機能を充実し,例 えば,選択教科や進路等の選択に関し,各教 科との関連性をはかりつつ,計画的・組織的 に指導したり,入学時の学校生活への適応及 ぴ円滑な人間関係の形成について計画的に指 導するものとする」と明記している。特別活 動では「学校生活への適応や人間関係の形成, 選択教科や進路の選択なとやの指導に当たって は,ガイダンスの機能を充実するよう学級活 動等の指導を工夫すること」としている。 また,最近,キャリア教育の推進が叫ばれは じめている。キャリア教育そのものは, 1970年 代に米国で提唱され,実践されて現在に至って いる。キャリア教育は,アメリカ連邦教育局の 主導で行われた教育改革の重点施策の一つであ り,r
すべての人にキャリア・エデユケーショ ンを」をモットーに揚げ,全米の幼稚園から大 学までの教育全体をキャリア発達の視点から精 力的に実践的教育活動を展開したものである。 その中心的な役割を果たしたのは,当時,連 邦教育局長官のシドニー・マーランド (s.P. Marland)とホイト (KB
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Hoyt)らである。 マーランドは「キャリア・エテ'ユケーションと は,初等・中等・高等・成人教育の諸段階で, 各々の発達段階に応じ,キャリアに入り,進歩 するように準備する組織的,総合的教育である」 と述べている。また,州教育長協議会の定義で は,r
キャリア・エデュケーションとは,教授・ 学校活動とキャリア発達概念を結合し,教育成 果の改善をめざすところの教育戦略である」と 述べている。 キャリア教育の目標は,いうならば,すべて の児童・生徒・学生に対して知的教科と職業教 科を総合的に指導して,高等学校卒業時に最も ふさわしい進路を選択し,杜会的職業的自己実 現が図られるように,知識・技術・態度を習得 し,人間としての望ましい生き方を指導しよう とするものである。アメリカでは,時限立法で 「キャリア教育振興法J
(1979年度開始, 1981 年度終了)が発動し,全国レベルで推進され, その後は,民間レベルで継続的,発展的に実施 されている。 仙崎武らは, 1970年代の早い段階からアメリ カのキャリア教育をわが国に紹介し,啓蒙・普 及に努めたが,一部の県や高校が試みただけで, 全国レベルでの本格的な取り組みはなされない で今日に至っている。 わが国では,最近になってやっと本格的な取 り組みの姿勢を見せたところである。 わが国では中央教育審議会答申「初等中等教育 と高等教育との接続についてJ
(平成 11年12月) で,r
学校と社会及び高等教育の円滑な接続を 図るためのキャリア教育(望ましい職業観,勤 労観及び職業に関する知識や技能を身につける とともに,自己の個性を理解し主体的に進路を - 21一(146)わが国の職業指導・進路指導の成立と展開 (II) 選択する能力,態度を育てる教育)を小学校段 階から発達段階に応じて実施する必要がある」 と述べている。アメリカのキャリア教育のわが 国への紹介は,比較的早くから行われてきたが, 本格的な取り組みは,遅くれること30年で最近 になってからである。 文部科学省は平成12年度から「キャリア体験 等進路指導改善事業jに取り組み,高校キャリ ア教育としてのインターンシップ制度の導入を 行っている。また,平成14年11月に「キャリア 教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議」 を設置し検討を進め, 15年に中間報告が発表さ れた。最終答申は平成