高齢化社会と家庭用エネルギー
著者
木船 久雄
雑誌名
名古屋学院大学論集 社会科学篇
巻
32
号
4
ページ
95-116
発行年
1996-04-30
URL
http://doi.org/10.15012/00000793
Copyright (c) 1996 木船久雄名古屋学院大学論集 社会科学篇 第 32巻 第 4号 (1996.4) 95
高齢化社会 と家庭用エネルギー
*木
船
久
雄
目次 は じめに
1.家
庭用エネル ギーの特徴 と推移2.高
齢者のエネル ギー選択3.高
齢化が もた らすエネル ギー消費変化 おわ りには じ め に
近年,地
球環境問題が大 きく取 り上 げ られ,そ
の具体的な対応策 として省 エネル ギーがあ らためて注 目されている。産業部門においてはこれ までかな りの省エネルギー技術が導入 され,実
際効率的なエネル ギー利用が進め られ て きた。 しか し民生部門,
とりわけ家庭用 においてはエネル ギー消費機器の 効率改善 は進展 しているものの,機
器の大型化や多機能化,あ
るいはライフ スタイルの変更 に伴 って需要 は増加傾向 をた どっている。 ライフスタイルの変更は,様
々な社会 トレン ドと表裏一体の関係 にある。 それは余暇の充実 。女性の社会進出・個 人化 。情報化 。高齢化 といった トレ ン ドに対応 した生 き方の変化である。家庭用エネル ギー消費分析 において も, 近年 こうしたライフスタイル に注 目した研究がい くつかなされている。 その 多 くは実態調査 によるデータを元 に世帯属性か らミクロ的 に検討す るもので (*)本稿 は第30回日本経済政策学会中部地方大会での報告 を基 に してい る。鈴木利治名古 屋経済大学教授 には貴重な コメ ン トを項 いた。記 して感謝 したい。 またこれは名古屋学 院大学研究奨励金 (1994年 度)を受 けた研究成果の一部である。あ る0。 しか し,本稿 で はマ ク ロ的 なデ ー タか ら社 会 トレン ドとエ ネル ギー消 費 の関係 を分析 しよ う と試 み る。 と りわ け
,将
来 的 に需要 に大 きな影響 を及 ぼ す と想 定 され るデ モグ ラフ ィックな要因で あ る高齢化 につ いて焦点 をあて る。1.家
庭 用 エネル ギーの特徴 と推移
1.1
家庭用エネルギー消費の特徴(1)総
需要 に占める位置づけ1993年
度 に家庭 で消費 されたエネル ギー量 は,国
全体 で消費 したエネル ギー量全体 (一次エネルギー国内供給)の
約1割
を占め,480兆
kcalで
あっ た(図1-1参
照)。 同年の人 口は1億
2,476万人であるか ら,家
庭用 として 年間一人当た り3,850万 kcalを 消費 したことになる。これ を灯油 に換算すれ ば,一人当た り年間432リ ッ トルの消費であ り,一日あた りにすれば,1.2リ ッ トル/人。日ということになる(2)。 っ まり,老
弱男女問わず,一
人の生活 を支 一′麻 ルギーの話′,舅嚇膚 ζ′′ “ ソ 一次エネルギーロ 肉供給:5. 24● k1435 mO[ =1磨:″ェネルギーの=諄ルギー層〃″膚=富
″エネルギーの″曽″″″ 石炭●0 (資料)EDMC『
エネルギー経済統計要覧』 図1-1
家庭 用 エ ネル ギ ー の位 置 づ け 屁 2 冷 ︱ (1)例えば,商
品科学研究所 (1992),井口他 (1993)など。高齢化社会 と家庭用エネルギー 97 え るの に
,平
均 的 に毎 日毎 日 1リ ッ トル強 の灯油 を燃 や して い るこ とを意 味 して い る。(2)エ
ネル ギー源 別 エ ネル ギー消費 そ こで消費 され るエ ネル ギー源 は電力 。灯油・都 市 ガ ス 。LPG,太
陽熱, 石 炭 等 で あ る。この構 成 は,電力38%,灯
油27%,都
市 ガ ス19%,LPG 15%,
太 陽熱2%,石
炭等0.4%で
あ る。 それ ぞれの エ ネル ギー源 の供 給 サ イ ドか らみ れ ば,例
えば電力 は電気事業 者 販 売 量 の30%を
家庭 が 占め て い る。 同様 に他 の エ ネル ギー源 で は,灯
油52%,都
市 ガ ス47%,LPG 43%が
,そ
れ ぞれ家庭 用向 けに販売 され てい る。 太 陽熱 は,太
陽熱利 用 の96%を
占め,残
りが業務用 とな る。ただ し,石
炭 に つ いて は,家
庭 用販売 が 占め る割合 は微 々た る もので あ る。 こ う してみ る と,灯
油や ガ ス とい ったエ ネル ギー供 給 会社 に とって,家
庭 用 のエ ネル ギー消 費が 占め る位 置づ けは極 め て重要 な もの にな る。(3)用
途別 エ ネル ギー消費 家庭 用 で使 われ るエ ネル ギー を次 の ような使 用 目的・ 用 途 に分 けてみ る。 それ らは,暖
房 。冷 房 。給 湯・ 厨房・ 動 力他 で あ る。1993年
度 の これ ら用途 別 の構 成 は給湯 が34%と
最 も大 き く,つ
いで動 力他が30%,暖
房27%,厨
房9%で
あ る。近年夏場 の電力需要増大 の主 因 にな ってい る冷房用途 は,家
庭 用 エ ネル ギーの1%に
過 ぎな い。 使 用用途別 に即 したエ ネル ギー源 をみ る と,次
の ような特徴 が浮 き彫 りに され る。給湯用で はガスが圧倒 的 なエネル ギー源 で あ り,給
湯 用 エ ネル ギー の62%(都
市 ガ ス35%,LPG 27%)を
占め る。 これ に続 くのが灯油24%,
電 力7%で
あ る。 電気温水器 を使 用 してい る と考 え られ る「深 夜 電力」 お よ び「時 間帯別 電灯」の契約 回数 は,1994年
3月で それぞれ262万
口,32万
口 で あ り,両
者合計 で294万
口で あ る。 それゆ え,電
力 を給 湯用 と して使 用 し て い る世帯割合 は,6.7%で
あ る。 (2)以下の分析で用いたエネルギー・ データはエネルギー計量分析セ ンター『エネルギー 経済統計要覧』によった。暖房 用 で は
,主
カエ ネル ギー源 は灯油 で あ り,灯
油 だ けで67%を
占め る。 続 いて,都
市 ガ ス14%,電
力12%,LPG 6%で
あ る。 と りわ け関東以北 の寒 冷 地 にあ って は,灯
油 は圧倒 的 な暖 房 用熱源 にな ってい る。 また,関
東以 南 で は近年 の冷暖房 兼用 エア コンの普及 に伴 い,電
力の ウ ェイ トが徐 々に上昇 して い る。 さ らに,厨
房 用 で はガ スが80%(LPG 43%,都
市 ガス37%)で
あ り,残
り を電 力が支 えてい る。 しか し,オ
ール 電化住 宅の普及 は1%足
らず と推計 さ れ るこ とか ら(住宅統計調査報 告,1988),調
理 用 レンジの主熱源 は圧倒 的 に ガ ス とい うこ とになろ う。厨房用 に使 われ る電 力は炊飯 器や電子 レンジ等 に 限 られ て い るのが 実態 で あ る。 この他の用途 で あ る「動 力他」 お よび 「冷房用」用途 に資す るエネル ギー 源 はすべ て電力で あ る。1.2
家庭 用 エ ネル ギー消費の推移(1)近
年 の エ ネル ギー消 費推移 と背景 家庭 用 のエ ネル ギー需要 は,1980年
代 を通 じて年率3.4%の
伸 び を示 し, 徐 々 にわが 国のエネル ギー総需要 に 占め る割合 を高めて きた。1993年
の一 次 エ ネル ギー国内供給 に 占め る割合 は約1割
で あ り,最
終 エ ネル ギー需要部門 合計 に対 して は14%の
割 合 を 占め て い る。バ ブル 崩壊後 の景気低迷下 にあ る こ こ数年 をみて も,年
率4%を
上 回 る増加率 を示 してい る(図1-2参
照)(3)。 この理 由は以下 で あ る。0核
家族化 の進 展 に よって世 帯数が年率1.3%と着 実 に拡大 してい るこ と,(イ )家庭 内での テ レビや冷蔵庫,エ
ア コ ン とい った主 要 エ ネル ギー消 費機 器の保有 台数が1家
に1台
か ら複数保有 の形態 を とるよ うにな って きた こ と,0機
器 が大 型化 して い る こ と,(工)「なが ら」や深 夜族 な ど機 器 の稼働時 間が長時間化 してい るこ と,0近
年 は省 エ ネル ギー意識 が 風化 して しまった こ と,な
どで あ る。 (3)ただ し,1994年度 は猛暑・暖冬であったため に冷房用 は増加 した ものの,暖
房用や給 湯用が減少 した結果,前
年度比 ほぼ横 違い となった。本間・ 山崎 (1995)参照。高齢化社会 と家庭用エネル ギー 99
MTOE
太陽熱 石 炭 電 力 ノθεJ /θ′そ,
ノθ′ぞテノθθθ /θθ
J
ノθ′θ (資料)EDMC『
エネルギー経済統計要覧』 図1-2
家庭 用 エ ネル ギ ー消 費 の エ ネ ル ギ ー源 別 推 移 経年的な推移 をエネルギー源別 に見てゆ くと,電
力が シェアを拡大 して き たことに気がつ く。「動力他用」に資す るエネルギー源 はすべか らく電力であ る。そのため,家
庭用 における電力比率は1970年
度の25%が
1993年
度 には38%と
上昇 している。この理由は,0新
しい家電機器の普及,(イ)24時
間通電 のタイマーやスタン ドバ イ機能 を持つ機器の増加,(ウ)灯油の暖房機器か ら電 力を消費す るエアコンヘの代替な どによる。 さらに,
日本経済が内需主導,
とりわけ家計の消費支出に依存す る経済構 造に変革 しつつあるため,家
庭生活 に関連す る直接 。間接エネルギーのウェ イ トは増加傾向にある。間接エネル ギー とは,家
庭生活の営みに必要 な商品 群 を支 えるエネルギー消費量の ことである。つ まり,
日本の産業構造は最終 需要家 としての家計 にいよい よ重 きを移 し出 してお り,そ
れが家庭生活 に付 随す る間接エネルギー量 を大 きくしているのである(4)。 時代の トレン ドと言われ るキーワー ドの中には,将
来のエネルギー消費の 方向 を占う幾つかの言葉がある。アメニテ ィー志向,情
報化社会,産
業の空 0 0 0 0 0 0 6 5 4 3 2 1 灯 油LPG
都市ガス洞化
,女
性の社会進 出,高
齢化社会,生
活大国……。 これ らの どれ をとって も,我
々のライフスタイル を変化 させ,家
庭用エネルギー需要増大の要因に つなが るものばか りである。 快適 な住空間の確保のために,床
面積 を拡大 し,空
調機器の稼働時間 を延 長す る。情報化社会 は24時
間都市 を拡張 し,情
報機器の普及 と稼働時間の増 大 を助長す る。女性が社会に進 出 して行 くことは,家
事労働の 自動化 に拍車 をかけるだろ うし,外
食頻度 を高めてい く。高齢者 は安全 。快適・ ク リー ン な電力を好み,在宅時間の長時間化 に ともなって空調時間の拡大 をもた らす。 朝 シャンに洗浄便座。快適な生活 には大量のエネル ギー消費 を必要 としてい るということであろう。 こうした時代 トレン ドにのって家庭用エネルギー需要 はいましば らく堅調 な推移 をた どる。そ して,電
力への依存 を高めてゆ くことになる。(2)用
途別エネルギー消費の推移1993年
の用途別構成 は,給
湯用34%,動
力他30%,暖
房用27%,厨
房用9%,冷
房用1%で
ある。これ をデータ利用が可能な1965年
以降の推移 をみ ると,以
下の特徴が伺われ る (図1-3参
照)。 家庭用エネルギー消費合計 に占め る構成比が経年的に拡大 している用途 に は,①
動力他用,②
給湯用,③
冷房用がある。逆 にウェイ トを低下 させ てい るのは,④
厨房用 と⑤暖房用である。 ① 動力他用 動力他用は,照 明や冷蔵庫,テ レビ,洗
濯機 といった家電機器のエネルギー 消費量 を示す。 この用途の需要は,家
電機器の普及 とともに着実 に増大 して きた。家電機器の購入が所得 につれて拡大す ることか ら,こ
の分野のエネル ギー消費量 は必需品的な性格 とい うよりも,贅
沢品的なエネル ギー消費の色 彩がある。機器普及は,現
代の情報化や娯楽の多様化,パ
ー ソナルユース化 とともにさらに拡大す る傾向にある。 (4)ライフサ イクルエネル ギーの観点か ら分析すれば,家
庭生活 を支 える直接・ 間接両者 の工不ル ギー消費量 は,1990年では 日本の最終エネル ギー消費量の77%に相 当 し,経年 的 にその比率 を高めて きてい る。 フ ォー ラム・ エネル ギー を考 える (1995)高齢化社会 と家庭用エネルギー 101
MTOE
ノθ `卍 F ノ′′θ /′ アJ /3々91θ ノ′′∫ /′ θθ 〈資料)『エ ネル ギー経済統計要覧』他 図1-3
家庭用エネルギー消費の用途別推移 この用途 のエ ネル ギー消費量 は1965年
の20兆 kcalが 71年
にはその2倍
に拡大 した。さらに,1981年
で はその2倍
の80兆 kcal,そ
して1993年
で は141兆 kcalで
あ る。 ② 給湯用 給湯用エネル ギー需要 は,都
市住宅における内風呂化の進展 によって本格 的な増加 をみた。それは,1960年
代後半か らとい うことになる。それ以降は, 風 呂に限定 されない台所や洗面所のお湯需要の増加,風呂の入 り方,シャワー 利用の拡大 とともに漸増 している。 この用途のエネル ギー消費量 は1965年
では最大の需要用途であ り,同年の それは36兆
kcal(構
成比34%)で
あった。 この値が2倍
になったのは1973 年であ り,さ
らに92年
には73年
値の2倍
になった。 ③ 冷房用 冷房用エネル ギー需要 は,ク
ーラー・エアコン機器の普及 によって もた ら され る。エアコンの世帯普及率 は1960年
ではわずか0.4%で
あったが,1972
年 には10%を
超 え,1984年
には50%を
超 えた。1993年
の世帯普及率 は72%
であるものの,台
数保有率 をとれば148%で
ある。それゆえ,エ
アコンを保有 50 40 30 20 10 動 力その他 厨 房す る家庭 に限れ ば
,平
均 して1家
に2台
を保有 して い るこ とにな る。 家庭 用 エ ネル ギー消 費 にお け る冷 房 用 の割 合 は未 だ1%足
らずで あ り,家
庭 用 電 力 において も年 間消費量 の3%程
度 に過 ぎな い。 しか し,近
年 にお け る冷房需要 の急増 が電力負荷 の ピー ク形成の主要 因 にな ってい るこ とか ら, 電 力需給へ の影響 は看過 で きない。 この用途 のエ ネル ギー消 費量 は1965年
で は 0.4兆kcalで
あ ったが, 2年
後 の67年
には2倍
に膨 れ上 が り,そ れが4倍
にな るの に もそれか ら5年
とい う短 期 間 で あ った。1993年
の消費量 は1965年
の13倍
で あ る。 ④ 厨 房 用 厨 房 用 エ ネル ギー消 費量水準 は,1965年
の17兆 kcalが 74年
に は2倍
の34兆 kcalに
至 る。 しか し,そ
の後 は大 きな増 加 は な く、1993年
で も41兆
kcalで
あ り,74年
以 降の年平均 増加率 は1.0%に過 ぎな い。 この背景 には,次
の ような原 因が あ る。 それ は,食
生 活 その ものの充実が それ までの時期 にお よそ達成 され て きた こ と,煮
炊 きをす る機 器 の効 率 改善 が進 め られて きた こ と,安 定成長 を向か えた70年
代 後 半 か らの外 食化 や レ ト ル ト食品の普 及進 んで きた こ と,な
どで あ る。 ⑤ 暖 房用 暖 房 用 エ ネル ギー需要 は,1965年
の33兆 kcalが 70年
には2倍
強 の72兆
kcalと拡大 した。 しか し,そ
の後 の増 加 テ ンポは緩慢 で1993年
で も128兆
kcalで
あ る。1970年
以 降の年平均増 加率 は2.6%に
過 ぎな い。 同期 間の世 帯 増 加率 は1.7%で
あ るか ら,世 帯 当た りの暖房需要 の増加率 は1%弱
とい うこ とにな る。 この理 由は主要 な暖房機 器 の普 及が飽和化 していった こ と,機
器 の熱 効 率 改 善が進 んだ こ と,断
熱材 の普 及や 高 い気 密性 を持 つ集合 住 宅 の割 合 が増 加 して きた こ と,などで あ る。火鉢 か ら電気 こたつ,石油 ス トーブや ガ ス ス トー ブ,フ
ァ ンヒー ター,
さ らに近年 で は冷暖 兼用 エ ア コン とい うように暖房機 器 間の代替 は頻繁 に行 われ て きた。 それ らはエネル ギー間の代替 に影響 を も た ら した。 暖房 器具 の数 は増 加 し,暖
房 可 能 な住空間 も拡大 して きた。 こ う した追加高齢化社会と家庭用工不ルギー
103
的 な暖 房 空間の増 加 は,暖
房 用 エ ネル ギーの新 規 需要 を もた ら した はず で あ る。 しか し,こ
の 限界的 な空間 におけ る暖房器具 の稼働働時 間が短 い こ とか ら,エ
ネル ギー需要 の量的 な効果 は少 なか った とい うこ とで あろ う。2.高
齢者 の エネル ギー選択
2.1
高齢 者 の生活 時 間 高齢 化社会 の到来 が将 来 の 日本社 会や経 済 に及 ぼ す影響 と して,
しば しば 取 りあげ られ る問題 には,高
齢 者 の介護 体 制や 医療 問題,あ
るいは社会保障 給 付 の ための財政 負担 問題 な どが あ る。 また,マ
ク ロ経済 へ の影響 と して, 消 費性 向や貯蓄 の問題,あ
るいは生 産年齢 人 日の減少 に ともな う潜在 成 長 力 の低 下 といったこ とも指摘 されてい る(5)。 しか し,こ
こで はあ くまで も高齢者社会の到来 がが もた らすエ ネル ギー消 費へ の 直接 的 な影響 を検 討 してゆ く。 以下 で は,高
齢 者世 帯 の生活 行動 に注 目 して,エ
ネル ギー消 費 との関係 を見 て行 きたい。 総 理 府 の『社 会生 活基 本調 査報 告1991年
』に よれば,高
齢 者 の生 活時 間 は あ きらか に在 宅型 で あ る。睡 眠時 間 はい うに及ばず,身
の 回 り,食
事,テ
レ ビ 。ラ ジオの視聴時 間 といった家庭 内に留 ま りなが ら過 ごす時 間が,高
齢 者 は国民平均 に比べ ていずれ も1割
か ら5割
大 きい (図2-1参
照)。 各 々の生 活 行為 につ いて在 宅・ 非在 宅 と判 断 しなが ら,そ
れ ぞれ の時 間 を 集計 してみ る と,次
の ようにな る。 国民平均 の在 宅時 間 は16時
間19分
(週 平均,男
女)で
あ るの に対 して,高
齢 者 の それ は20時
間07分
で あ る。つ ま り2割
強 ほ ど長 い時 間家庭 内 に とどまってい る。 同様 な傾 向 はNHKの
『国民生活時 間調査1990年
』で も伺 われ る。 それ に よれ ば,1990年
の 国民平均 の平 日在 宅時 間 は15時
間26分
で あ るの に対 し て,60歳
代 で は17時
間53分 ,70歳
代 の それ は20時
間03分
で あ る。起床在 宅時 間 だ け を取 り出 してみ て も,国
民平均 が7時
間53分
で あ るの に対 して, (5)こ うした指摘 は経済企画庁 (1991),最近では 日本経済研究セ ンター (1995)があ る。睡眠 身 の回 り 食事 通勤 時間 仕 事 学業 家事 介護看護 育児 買 い物 移動 テレヒ゛ラシ゛オ 休養 学習研 究 趣味娯 楽 スポー ツ 社会活動 交際 受診診療 他 n υ ハ υ 貪 υ n v ∩ v 員 υ n v ハ U ′ マ n v ヽ 30 カ n v n v つ 4 0 v n v ∩ v (資料)総理府統計局『社会生活基本調査報告1991』 図
2-1
生 活 時 間 の 比較60歳
代 で は10時
間04分
,70歳
代 は11時
間22分
と長 い。 こ う した在 宅時 間の長 さが空調時 間の長時 間化 を もた ら し,エ
ネル ギー消 費 の増 大傾 向 を招 く可能性 は否 め な い。 ただ し,現
在 の高齢者世代 は,戦
前 戦 後 の経 験 か ら省 エネや節約意識 は他 の世代 に比べ て高 い とい うア ンケー ト に よる意識調査報告 もあ る(6)。2.2
高齢 者 の ニーズ と支 出(1)ニ
ーズ 加齢 に ともな う身体 的 な機 能低 下が新 たなエネル ギー消費機 器のニーズ を 形 成 して い る。既 に,住
宅用 の エ レベ ー ター な どは発売 ・ 普 及が始 まってお り,
よ り明 るい照 明器具や病 人介護 用品 (例えば電動ベ ッ ドや入浴機 器)な
匡
]F夕
平カ
吻置高齢者
(6)例えば, フォーラム・ エネルギーを考える (1994)高齢化社会 と家庭用エネル ギー 105 ども
,開
発 され普及 を始めている。 高齢者 は生物学的に も寒 さを嫌 い,若
年層 に比べて より暖房 を必要 とす る と言われ る(7)。 加齢 は寒 さに対す る抵抗力を弱 くさせ,そ
れが暖房用エネル ギーを必需品 とす る。高齢者ほど暖房器具 を必需品 と認識す る傾向があると いうのは,ア
ンケー ト調査 などか らも示 されている(8)。 そのために,高
齢者 に なるほ ど通電時間が長い電気毛布な どの保有率 も高 くなっている。 同様 に視力の低下は照明器具 について も,
より照度が高い ものを必要 とさ せ る。読書 をす るのに必要な明るさは,20歳
代 を1と した とき60歳
代 はその 3.2倍 もの大 きさになるという報告 もある(9)。 一方,高
齢者の商品選択 は次の ような傾向があるとされている。それは, 安全性 に優れていること,操
作が簡単で分か りやすいこと,が
重視 され ると いう(10)。 こうした観点は,高
齢者のエネル ギー選択 において比較的電力が好 まれ る実態 を説明 して くれ る。(2)家
計支出 高齢者世帯の家計支出をみ ると,上
の ようなニーズが反映 されている。1994年
の『家計調査報告』によれば,勤
労者世帯平均の消費支出合計が年 間400万
円であるのに対 して,高
齢者世帯 (世帯主年齢65歳
以上)の
それは310万
円である。高齢者世帯は平均 に比べて23%ほ
ど小 さな消費金額 という ことになる。エネルギー消費に関わ る光熱費だけを提 えて も,平
均世帯は年 間18万
7,177円を向けているのに対 して,高齢者世帯 は17万
4,286円年 ほど の光熱費であ り,平
均 よりも7%ほ
ど小 さい。 しか し,両
者の世帯人数 をみ ると,勤
労者平均世帯は3.47人であ り,高
齢 者世帯は2.57人である。それゆえ一人当た りに換算 して比較すれば,高
齢者 世帯 は平均世帯 に比べ て,支
出金額合計で5%,光
熱費では26%も
多 くの金 (7)これはラッ トに関す る研究事例 であるが,高
齢 ラ ッ トほ ど寒 さへの抵抗力が衰 えてい る。人間―熱環境系編集委員会 (1990) (8)日本エネル ギー経済研究所 (1991) (9)『住宅性能標準化の調査研究報 告書』 (10 経済企画庁編 (1994, a)額 を支 出 して い る。 この結果
,消
費支 出合計 に 占め る光熱 費 の割 合 は高齢 者 世 帯 の方が平均世 帯 に比べ て大 きい。1994年
の 光熟 費割合 は全世 帯が4.7%
で あ るの に対 して,高
齢 者世 帯 は5.6%と な って い る (図2-2参
照)。 この ような傾 向 は先 に述べ た高齢者 のニーズや在 宅時 間 と深 い関係 が あ る と推 測 で きる。 3。高齢化社会 が もた らすエネル ギー消費 への影響
3.1需
要 関 数 家庭 用 エ ネル ギー消 費の変動 を規 定す る要 因 は幾つ か考 え られ るが,高
齢 化 とい った社会 トレン ドを取 り込 ん だ形 でエ ネル ギーの需要 関数 を構 築 して み る。一般 に,財
の需要量 は所得 と価格 で決 定 され る とい うのが教科 書的 なL雪
1気κ 躾§ガス κ 艤夕そ
%
0 0 公 υ И ” n ∠ ∩ v 全世帯 高齢世帯 全世帯 高齢世帯L____」
│____」
1980 1990
全世帯 高齢 世帯│___」
1994
(資料)総理府統計局『家計調査年報』 図2-2
家計 に 占め る光 熱 費 割 合高齢化社会 と家庭用エネルギー 107 需要 関数 で あ る。 その原型 を重視 す るの は言 うまで もな いが
,採
用 した需要 関数 には これ に加 えて次 の ような変数 も適 宜考 慮 した。a.基
本 的 な経済 的変数 ・ 価格 変数 (灯油価格,都
市 ガ ス価格,電
力価格) 。所得変数 (民間最 終 消 費支 出) 。物価水準 b。 世 帯 。人 口に関 わ る変数 。世帯数 ・ 世帯 当た り人 口C.機
器普 及 に関 わ る変数 。風 呂普及率 ・ クー ラー台数普 及率 ・ 厨房用石炭比率d.機
器 のエ ネル ギー効 率 に関 わ る変数 。家電機器効率指数 ・ 暖房効率指 数 e。 社会 トレン ドに関 わ る変数 ・ 高齢者 人 口比率 ・ 女性有職者 人 口比率f.気
温 に関わ る変数 ・ 暖房 度 日 ・ 冷房度 日 所得 や価格 変数以外 に,上
の ような変数 を需要関数 に組 み込 もうとす るの は,次
の ような理 由か らで あ る。 それ は,そ
もそ もエ ネル ギー消 費量 を規 定 して い るの は① 世帯数,②
エ ネル ギー消費機 器 の保有 台数,③
その効率,さ
らには これ ら機 器 の④稼働 時 間で あ る と考 え られ,次
の式 で示 され る。E=″
・
予
#・
券・
ο
グ
(1)
ここで
,Eは
エネルギー消費量,″ は世帯数
,4グは機器保有台数,3/4グ
はz・ 機 器 のエ ネル ギー消 費効 率
,0グ
は グ機器 の稼 働時 間 を示 す。 例 えば,世
帯 当た りの人数 が増 えれ ば,当
然 なが ら機 器 の台数 も増 え よう し,稼
働 時 間 も増 加 す る。 さ らに,高
齢 者比 率 が 高 まれ ば,高
齢 者 の在 宅時 間が長 い こ とか らエ ネル ギー消 費機器 の稼 働時 間 も増 加 して,エ
ネル ギー消 費量 を増 加 させ る。逆 に,女
性 の社 会進 出は在 宅 お よび家事 時 間 を減 少 させ, 家庭 用 エ ネル ギー に対 して は減 少要 因 に働 く。 ただ し,そ
の場合 は家庭 とい う場 で な く,職 場や輸 送のエネル ギー量 を増 加 させ るこ とにつ なが って い る。 さ らに,機
器 の効 率 は必要 な 「有効 エ ネル ギー」 を一 定 だ と して も,実
際 に 消 費 され る最終 エ ネル ギー消費量 を変化 させ る。 上 の式の4変
数 は,そ
れ ぞれが高齢化 とい う社会 トレン ドの影響 を受 け る こ とは十分考 え られ る。例 えば,高
齢 化 が進 展 す るこ とに よって核 家 族化 の 速 度 は弱 まるか も しれ ない し(世帯 人員 の減 少,世
帯 数 の増 加),機
器 の保 有 や 当該機 器が持 つ効率 も,高
齢者 が どの ような機 器 を選 好 す るか に よって変 化 す る可能性 が あ る。稼働時 間 につ いて も同様 で あ る。 しか し,既
存統計 で はそ う した変化 を年齢 階層別 にデー タセ ッ トす るこ とは可能で ないため,(1) 式 の型での モデル化 は試 み るこ とがで きない。 それ ゆ え ここで は,左
辺 に世帯 当た リエネル ギー消費量 をお き,前
述 した 諸変数 を説 明変数 と して右 辺 においての推計 とな る。3.2
具体 的 な関数 型 時系列 デ ー タ に よる最 小二 乗法 を用 いて推 計 した需要 用途 (暖房,冷
房, 給湯,厨
房,動
力 その他)ご
との関数 は,次
の ように示 され る。 なお,以
下 に示 す式 において( )内
はt値
,AR2は
自由度調 整済 みの決 定係 数,SDは
標 準 誤差,DWは
ダー ビ ンワ トソ ン比 で あ る。①
暖房用
推計期間
(1970-1992)世帯当た り原単位
/暖房効率指数
=
-5473.12+1420.98*(LOG(民
間最終消費支出
/世帯数
))(-0.78) (0.86)
高齢化社会 と家庭用エネルギー 109
-334.913*(LOG(灯 油価格/CPI))+ .896551*(暖 房度日
)(-2.70) (2.53)
+708.731*(世
帯 当た り人数)+178.238*(高
齢 者 人 口比 率) (2)
(0.50) (1.61)
AR2=.828386 SI)=151.256 1)ヽ V=1.25469
左 辺 の原単位 を暖房 用効率指 数で除 してい るの は,有
効 エ ネル ギー概 念 の 考 え方 に よる。所得 変数 のパ ラメー タが正,価
格 の それが負 で得 られ たの は 理 にか な ってい る。高齢者 人 口比率 が1ポ
イ ン ト高 くな るこ とに よって,世
帯 当た リエ ネル ギー消 費量 は約142*103 kcal(現
在 の ほぼ5%)の
増 加 にな る と推計 された (パラメー タの178*0.7(現
在 の暖房 効 率指 数))。 また,世
帯 当た り人数 が増大 す れ ば,当
然 なが ら世 帯 当た りのエネル ギー 消 費量 は増大 す るため に,この変数 につ くパ ラメー タは正 で あ る。ここで は, 一 人増 え るこ とに よって約638*103 kcalの
増 加 と推 計 され て い る。実 際 に は,核
家 族化 の進 展 に よって,世
帯 当た り人 口は減 少傾 向 を辿 って い るため, エ ネル ギー消費 を押 し下 げ る要 因 に働 いてい る。②
冷房用
推計期間
(1970-1992)世帯当た り原単位
/家電機器効率指数
=
-332.8 +76224.7 *(ク
ーラー台数保有率
/世帯
)(-0.31) (1.01)
+0.394492*(冷
房 度 日) (4.67)+27.9449*(世
帯 当た り人数)+19.884*(高
齢 者 人 口比 率) (3)
(0.10) (1.13)
AR2=.923464 SD=27.2069 Dヽ
V=2.47328
冷房 需要 はクー ラーの普 及,冷
房 度 日,世
帯 人数 お よび高齢 者 人 口比 率 に よって規定 されてい る。所得変数 を関数上 に入れていないの は,所
得 とクー ラー台数 とが 多重共線性 の問題 を もた ら して しまうためで あ る。 また,冷
房 度 日は,気
候 変化 に よる短 期 的 な需 要 変動 を説 明 して い る。 高齢 化指標 につ いて もプ ラスのパ ラメー タが得 られ てい る。③ 給 湯 用 推 計期 間 (1965-1992) 世 帯 当た り原単位
=
-7718.6 +68.6193*(風
呂普 及率)+817.067*(LOG(民
間消 費支(-1.97)(7.15) (0.75)
出
/世帯数
))+.2503*(暖
房度 日
)+1564.52*(世
帯当た り人数
)(1.27) (1.80)
+192.627*(高
齢者 人 口比率)-66.6251*(女
性 有職 者 人 口比 率)(4)(2.89) (-2.61)
AR2=.984297 SD=92.9071 1)ヽ
V=2.24272
民 間最 終 消 費支 出の変数 を除 けば,い
ず れ の変数 も有意 なパ ラメー タが得 られてい る。 と りわ け,風
呂の普 及率 は1960年
代 か ら70年
代 に増 加 した給 湯 用 エ ネル ギー消 費増大 を説 明 して い る とい え よ う。1ポ
イ ン トの風 呂普 及 率 の増大 は世 帯 当た り68*103 kcalの
エ ネル ギー消費量増 を導 く。また,高
齢 者 の増 大 が こ こで も給 湯用 の エ ネル ギー消 費量 の拡大 要 因 にな って い る。 これ は高齢者 の風 呂好 きを反映 してい る とい うこ とだ ろ うか。逆 に,女
性 の 社 会進 出 は1ポ
イ ン トの増 加 で,66*103 kcalの
減 少 を もた らす。 ④ 厨 房 用 推 計期 間 (1966-1992) 世 帯 当た り原単位=
1216.5 -1407.16*(石
炭 等比率)+85.6505*(世
帯 当た り人数)(1.59)(-1.61) (0.57)
-15.1185*(女
性 有職 者 人 口比率)+ .364434*(一
期 前 原単位)(5)(-2.3o) (2.18)
AR2=.877253 SD=36.0418 DW=2.21415推
計期 間 (1966-1992) 世 帯 当た りの厨 房用 エ ネル ギー消 費量 は1970年
代 央 か ら減 少 傾 向 を辿 っ て い る。厨房用エ ネル ギーは食生 活 と密接 に絡 んで い るが,70年
代央 には食 生 活 はほぼ充実 され ていた とい うこ とになろ う。 それ以降 は,こ
の需要 関数 にお いて も減少要 因のみが変数上 に明示 され た こ とにな る。石炭等比率 を変 数 に用 いたの は,厨
房機 器 の代替 や 大 型化 の代 理 変数 と してで あ る。厨房 用高齢化社 会 と家庭用エネル ギー 111
エネルギー需要関数においては
,高
齢者人口比率が説明変数 として有為では
なかった。
⑤
動力 。その他用
推計期間
(1966-1992)世帯当た り原単位
/家電機器効率指数
=
-16287.7 +2605.97*(LOG(民
間最終消費支出
/世帯
))(-4.58) (2.82)
-472.318*(LOG(電 力価格/CPI))+2556.04*(世 帯当たり人数
)(-2.58) (3.18)
-19.6207*(女
性 有職 者 人 口比 率)+796.631*(高
齢 者 人 口比率 )(6)(-0.68) (11.11)
AR2=.996539 SD=84.9552 DW=1.93583
家庭 用 エ ネル ギー需要 の 中で は,増
勢圧 力の強 い用途 が この分 野 で あ る。 所 得 と高齢 化 が それ を支 えて い るこ とにな る。 しか し,実
際 には所得 変数 の 中 に様 々な要 因が 内包 され て い る と考 え るべ きで あろ う。例 えば,テ
レビやVTR等
の家 電製 品 に設置 され て い るスタ ン ドバ イ ` 。モー ドの電力消費 な ど もこれ らの 内数 で あ る。 この分 野 の エネル ギー源 はすべ て電 力で あ るため, 家庭 用 エ ネル ギー消 費 の電 力化 を着 実 に進 展 させ てい るこ とにな る。 ⑥ 総括 具体的な需要関数 は上で見た とお りであるが,そ
れ らをまとめると次の よ うな る。 第一 には,高
齢化社会は確実に家庭用エネルギー消費 を増大 させ るとい う ことである。本分析 では,社
会 トレン ドの代表 として1)高
齢化お よび 2) 女性の社会進 出に関わる変数 を取 り上 げた。そこでは,高
齢者 人口比率 とい う変数 に得 られたパ ラメータはいずれ も有意で,
しか も絶対値が大 きな もの が多かった。高齢化の変数は暖房,給
湯,冷
房,動
力その他用 といずれの需 要用途 に も増加要因 となっている。 第二 には,女
性の社会進 出は家庭用エネルギー消費量 に対 してはマ イナス に働 く力である。 これは,女
性 の社会進 出にともな う在宅 。家事時間の短縮 と関係 しようが,い
ずれの需要用途 において も負の要因 として効いている。ただ し
,繰
り返 しにな るが,そ
れ はエ ネル ギー を消費す る場所 を家庭 か ら業 務部 門や輸 送 部 門へ 移転 して い る ともい うこ とがで きよう。 第二 には,機
器普 及の要 因 は確 実 にエネル ギー消費量 を増大 させ て きた。 ここで は給湯用 の風 呂 と冷房用の クー ラーのみが その代 理変数 で あった。 そ れ ぞれの用途 にお いて も,こ
れ以外 の適 当な指標 が採 用 で きれば,さ
らにそ の効果 は明確 にな った と考 え られ る。3.3要
因 分 析 上 で推計 した用途 ごとのエネル ギー需要関数 を用いて,こ
れ までのエネル ギー消費変化の要因を分解 してみ よう。計量の手法 は,需
要関数の中に組み 込んだ説明変数の変化実績が左辺のエネルギー需要 をどの ように変化 させ て きたか を計測す ることになる。 また要因分析 の集計 にあたっては,個別の式 を構成 した説明変数 に関 して, 次の ように6つ
の要因に集約 した。それ らは,①
所得要因 (世帯 当た り民間最終消費支出
+器
具普及要因
),②
価格要因
(価格効果
+機
器効率
),③
高齢
化要因
,④
女性の社会進出要因
,⑤
人口 。世帯要因
(世帯当た り人口
,世
帯
数
),⑥
気候要因
(暖房度 日
,冷
房度 日
)で
ある。
各用途についてそれぞれの要因別の寄与度は次の通 りである
(表3-1参
月貫)。 ① 暖房用 暖房用では,1970年
か ら92年
の間に4,923*1010 kcalの
増加 を見たが,所 得要因が+95%の
寄与 を示 し,高
齢化要因は+56%,人
口。世帯要因が+31%
を占めた と推計 された。逆 に,価
格要因,気
候要因がそれぞれ-53%,-17%
となった。 ② 冷房用 冷房用では,同
期間に663*1010 kcalの
増加であった。増加要因は所得要 因で+67%,高
齢化要因+32%,人
口 。世帯要因+11%で
あ り,マ
イナス要 因 としては価格要因が-11%と
なっている。高齢化社会 と家庭用エネルギー 表
3-1
各用途 の要 因集計 表 (1970-1992の 差) 113 用 途 要 因 暖 房 冷 房 10 10kcal 給 湯 厨,,, 動 力他 10^10kcal % ′」ヽ‖ 4.672 -2,591 2,755 0 1,537 -835 94 9 -52 6 56 0 00 31 2 -17 0 443 -74 212 0 73 2 66 8 -112 32 0 00 110 03 6,936 0 3.423 -1,087 733 -268 65.6 00 32 4 -10 3 69 -2 5 0 443 0 -389 979 0 00 27 9 00 24 5 617 00 8,452 -6.102 8,493 -192 -324 0 83 3 -60 1 83 7 -1 9 -3 2 00 20,503 -8,324 14,883 -1,668 2,997 ‐1 100 73 5 -29 8 53 4 -60 10 7 -3 9 5,539 1125 655 98 9 9,737 92 1 1,033 65 2 10.326 101 7 27 290 97 8 残 差 -616 -12 5 11 833 79 552 34 8 -176 -1 7 601 22 実 績 4,923 100 0 663 100 0 10.570 100 0 1,585 100 0 10 150 100 0 27.891 100 0 注)所得+普及 は所 得 要 因 と器 具 普 及 要 因 の 合 計 価 格 十普 及 は価 格 要 因 と機 器 の 効 率 改 善 要 因 の 合 計 ③ 給湯用 同期間の給湯用は
,10,570*1010 kcal増
加 している。要因別の寄与 は,所
得要因が66%,高
齢化要因が32%,人
口。世帯要因が11%と
増加方向を招 き, 女性の社会進出お よび気候要因が順 に-10%,-3%と
減少要因である。 ④ 厨房 厨房用のエネル ギー消費 は同期 間で1,585*1010 kcal増
加 してい る。 人 口・ 世帯要因が+62%,機
器効率の悪化 (大型化)が +28%の
増加用であっ た。女性の社会進 出は-25%の
減少要因である。 ⑤ 動力その他用 動力その他用では,同
期間 に10,150*101°kcalの
エネル ギー量が増加 し たが,所
得お よび高齢化要因がそれぞれ+83%,84%と
大 きな増加要因でっ た。一方,価
格要因が-60%,人
口。世帯要因は-3%,女
性 の社会進 出が一2%と
減少要因になっている。 ⑥ 用途合計1970年
の家庭用エネルギー消費量 は183兆 kcalで
あ り,1992年
のそれは462兆 kcalで
あるか ら,22年
間に 2.5倍,278兆
kcalの
増大 をみた。この増 加量 に対す る各要因の寄与度は,次
の通 りである。 増加要因 としては,所
得要因,高
齢化要因,人
口 。世帯要因があげ られ, 各 々の寄与度 は所得要因+74%,高
齢化要因+53%,人
口 。世帯要因+11%
/′
″―
/″アの方 を
:ξ 増加実績 10^10kcal50000
40000
30000
20000
10000-10000
-20000
10^10kcal30000
20000
10000-10000
-20000
n v隕 ガタ
圏 ス″ ″
r帯
濱 女滋
颯 高謝″
圏 ″帯≠効率
□ 所β≠昔表
実績者
"″蟹
所 ″要因
″
1攣
│四高務 を要因
女を進
│″要因
ど″ス″要
li幻 7点凌要因
暖房 冷房 給湯 厨房 動力他 合計 図3-1
家庭 用 エ ネ ル ギ ー 消 費 の要 因分 析 n V 1970 1975 1980 1985 1990 図3-2
家庭用エネルギー消費の経年的要因分析万げ
1之2だ)Fチ高齢化社会と家庭用工不ルギー
115
の寄与で あった。これ に対 して,減
少要 因 は価格要 因,女
性 の社 会進 出要 因, 気候 要 因が あ り,そ れ らは順 に-30%,-6%,-4%の
寄与 とな って い る(図3-1,図 3-2参
照)。 さ らに,高
齢 化要 因だ け を取 り出 して,用
途 別 の構 成 をみ る と,最
も大 き く寄与 したのが動 力その他用 で あ り,つ
いで給湯,暖
房,冷
房 とい う順 にな る。お わ り に
本稿では,社
会 トレン ドを意識 しなが らマ クロ的な需要関数 を用いて家庭 用エネルギー消費 を分析 して きた。高齢化の影響 は家庭用エネルギー需要増 加の大 きな要因 となっている。本分析では時系列データを用いて行 っている が,上
の ような結論付 けが正 しいか否かは,さ
らに検証が必要であるか もし れない。その際,家
計調査 を用いたクロスセクシ ョン,あ
るいはプールデー タによる分析が有効であろ うと考 えている。その ような研究 は次の課題 とし たい。 参考文献1)井
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