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開口からの火災噴出気流流量予測に関する実験的研究

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Academic year: 2021

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(1)

開口からの火災噴出気流流量予測に関する実験的研究

岸 上 昌 史 山 口 純 一

村 岡 宏

Experimental Study on Prediction of the Flow Rate of Buoyant Jet from Opening

Masashi Kishiue Junichi Yamaguchi

Kou Muraoka

Abstract

In this study, we aimed to reduce the temperature of a smoke layer accumulated in an atrium from a fire in

a room facing the atrium. Three techniques were developed: 1) a technique to reduce the enthalpy of the

smoke that flows into the atrium from the fire room, 2) a technique to evaluate the entrainment when a buoyant

jet advances up a corridor toward the atrium, and 3) a technique to evaluate the entrainment when a buoyant jet

rises vertically. These techniques enable the abolition of a fire shutter. In this paper, we summarize the

techniques and present experimental results of the evaluation of the entrainment using the second technique.

概 要 近年の大規模複合建築物では,吹抜とその廻りに開放的な廊下を設け,その廊下に面するように店舗等の居 室を設ける計画が多く見られる。こうした吹抜廻りでは,上階への煙汚染や延焼防止対策として防火シャッタ ーとガラスによる区画化が一般的な手法であるが,吹抜上部に蓄積する煙層温度を十分低減できれば,ガラス のみでの対応が可能になり,防火シャッターを撤廃できる。そこで,本研究では,吹抜上部の煙層温度を低減 させる技術を開発した。本技術は,1)火災区画からの漏煙熱量低減技術,2)開口-庇先端までの希釈評価技術, 3)庇先端以降の希釈評価技術から成る。本報では,これらの技術の概要を示すとともに,2)開口-庇先端までの 希釈評価技術を取り上げ,縮小模型による実験概要と希釈予測式の導出について述べる。

1. はじめに

近年の大規模複合建築物では,吹抜とその廻りに開放 的な廊下を設け,その廊下に面するように店舗等の居室 を設ける計画(Fig. 1 (a))が多く見られる。こうした吹抜に おいては,火災区画の開口から噴出する熱気流(以下,噴 出気流という)が廊下下面(以下,庇という)を水平方向に 移動したのち吹抜内に流入し,上昇過程を経て吹抜上部 に蓄積するため,上階での避難の阻害や上階延焼の要因 となる。 その対策として,Fig. 1 (a)に示すとおり防火シャッタ ーによる区画を形成し,吹抜の孤立を図るとともに十分 な風量の機械排煙又は自然排煙により温度低減を図る手 法(以下,従来手法という)が一般的である。なお,近年 ではシャッターによる区画の閉鎖の作動性を考えて,ガ ラスと防火シャッターの併設が望ましいとされる1) ところで,ガラスの破損温度は100℃程度2)とされてお り,吹抜上部の煙層温度を100℃以下に抑えることができ ればガラスのみでも十分に区画形成が可能と考えられ, Fig. 1 (b)に示すとおり防火シャッターの撤廃が可能とな り,コスト削減や意匠性の向上につながる。 以上を踏まえて,筆者らは吹抜区画の減免を可能にす べく吹抜上部の煙層低減に係わる技術開発(以下,本手法 という)を行った。本報では,その技術の概要を示すとと もに,成果の一つである庇での希釈評価に係わる実験的 研究について述べる。

2. 開発技術の概要

開発技術の概要をTable 1に示す。本研究で開発した項 目は大きく以下の3つに分類できる。 1) 火災区画からの漏煙熱量低減技術 2) 開口-庇先端までの希釈評価技術(水平方向) 3) 庇先端以降の希釈評価技術(鉛直方向) まず,1) 火災区画からの漏煙熱量低減の評価技術につ いて概要を述べる。漏煙熱量は質量流量と温度の積で与 えられる。従来手法では,防火シャッターにより漏煙流 量が非常に小さくなるため,漏煙熱量も小さくなる。一 方,防火シャッターを撤廃する本手法では漏煙流量が増 大するため,漏煙熱量も大きくなる。そこで,火災区画 の排煙ダクトを耐火仕様とし「止まらない排煙」とする。 これにより,漏煙流量が小さくなるだけでなく,区画内 に流入する新鮮空気が増えることにより区画内の煙層温 度が低減される。また,スプリンクラー(以下,SPという) が設置されていれば,SPによる発熱速度低減効果を考慮 することで,さらなる煙層温度低減が期待できる。

(2)

本研究では,これらの効果を加味した漏煙熱量予測技術 を開発した。 次に,2) 開口-庇先端までの希釈評価技術について述 べる。Table 1に示すとおり火災区画から噴出した高温の 噴出気流は低温の周囲空気を連行しながら庇に衝突し, 向きを水平方向に変え,庇先端に到達するまでさらに周 囲空気を連行しながら進む。また,その間に壁体への熱 損失も発生する。そのため,庇先端に到達するまでに, 噴出気流のアスペクト比(幅/高さ)は変化し,流量は増大 し,温度は低減されるはずである。しかし,当該箇所で の希釈予測技術はこれまで構築されていない。そこで, 本研究では庇先端にいたるまでの経路での希釈予測技術 を構築すべく,1/3スケールの縮小模型実験を実施した。 3つ目は,3) 庇先端以降の希釈評価技術の高度化であ る。庇先端以降の噴出気流は,徐々に鉛直方向に向きを 変えつつ周囲空気を連行しながら上昇し,煙層に貫入す る。鉛直方向を主流れ方向とした開口噴出気流の流量予 測についてはいくつか検討されている3), 4), 5)。例えば,山 口ら3)は単純開口からの噴出気流の流量予測式を提案し た。しかし,開口の上部には壁があり,一方の連行が抑 制された中での検討であるため,自由空間を対象とする 本研究に当該予測式を用いると連行量を過少評価する可 能性がある。また,噴出元の気流のアスペクト比(幅/厚 さ)によって連行性状が異なる可能性4), 6)が示唆されてい るが,統一的な見解はまだない。よって,これらの課題 を解決すべく縮小模型実験を実施し,庇先端以降の噴出 気流流量予測の高度化を図った。 以上に示す3つの技術を組み合わせて吹抜区画の減免 流量Mp [予測] 流量Ms 温度Ts 幅 Bs 厚さHs [入力条件] 庇先端の噴出形状に よる連行性状の違い Z 煙層温度 100℃以下 耐火ダクト 排煙 排煙 シャッターの撤廃 SP ガラス Fig. 1 吹抜廻りの区画手法 Division Technique of an Atrium

(a)従来手法 (b)本提案手法 吹抜 廊下 店舗 廊下 開口噴流 プルーム 停止 FD 排煙 防火シャッター ガラス Table 1 開発技術の概要 Summary of Developed Technology

技術名称 概要 1) 火災区画からの 漏煙熱量低技術 2) 開口-庇先端ま での希釈評価 技術 (詳細を後述) 3) 庇先端以降の 希釈評価技術 (鉛直方向) 以下の効果による漏煙流量および区画温度低減を 考慮した漏煙熱量噴出予測技術を開発した。 ・『止まらない排煙』による漏煙流量低減効果 ・『止まらない排煙』による新鮮空気流入増大に よる区画温度低減効果 ・SPによる発熱量低減による区画温度低減効果 庇面下での希釈効果を評価し,(1)で与えられる漏 煙情報を基に下記の庇先端情報を予測する。 ・質量流量 Ms ・噴出気流温度 Ts ・噴出気流幅 Bs ・噴出気流厚さ Hs (2)で得られる庇先端情報をもとに,噴出気流の質 量流量Mpを予測する技術について下記項目の影 響を組み込み,精度向上を図る。 ・庇先端部の気流アスペクト比の差異による連行 性状の違い 流量Mop 温度Top 厚さHop SPによる 発熱量低減 止まらない 排煙による 煙層温度低減 [予測] 流量Ms 温度Ts 幅 Bs 厚さHs [予測] 新鮮空気連行 による希釈 流量Mop 温度Top 幅 Bop 厚さHop [入力条件]

(3)

を図る技術を開発した。なお,本論文では頁の都合上, 2)開口-庇先端での希釈評価技術構築のための縮小模型 実験を取り上げ,以下に詳細を述べる。

3. 開口-庇先端での希釈評価実験

3.1 予測式を構築すべき庇先端部情報の根拠 Table 1では予測式を構築すべき庇先端部の噴出気流 に係わる情報として,以下の4つを挙げた。 a) 質量流量Ms [kg/s] b) 噴出気流温度Ts [K] c) 噴出気流幅Bs [m] d) 噴出気流厚さHs [m] その根拠について,庇先端以降の噴出気流の流量予測に ついての既往研究3), 4), 5)をもとに述べる。 噴出気流の流量予測については,鉛直プルームの理論 式を用いてモデル化が行われるのが一般的である。例え ば,山口ら3)は,3次元的な連行性状を扱う点火源理論7) をもとに噴出気流の流量予測式として(1)式を提案した。 3 5 5 3 3 1 85 . 4 3 2 072 . 0                    s s s s p Q M H Z Q M (1) ただし,Q CM

T T

s s p s (2) Mp : 噴出気流の質量流量 [kg/s] Qs : 噴出元での噴出熱量 [kW] Z : 開口上端から煙層までの鉛直距離 [m] Cp : 定圧比熱(=1.013) [kJ/(kg・K)] T∞ : 基準温度(=293.15) [K] Harrisonら5)は,山口らより噴出元の気流のアスペクト 比が大きい(細長い)場合を対象として2次元的な連行性 状を扱う線火源理論8)をもとに噴出気流の流量予測式と して(3)式を提案した。 s s s s p Q B H Z M M 0.16 1.56 3 1.34 2 3 2 3 1         (3) どちらの理論を用いるかは噴出元の気流のアスペクト 比によるが,上記に述べたa)~d)の4つの項目があれば対 応できると考えられる。 なお,上記4つの項目は密に関係しており,それらの全 てを独立して予測することは現時点では難しい。そこで, 後述するとおり本報ではc)噴出気流幅Bsを物理的に制限 し,既知とした実験を実施した。この場合,連行を抑制 するため噴出気流流量を小さく見積もることになり煙層 温度を考える場合には安全側となる。 3.2 実験模型 Fig. 2に実験模型の(a)平面図,(b)断面図を示す。実験 装置は内寸で幅1000mm,奥行き1000mm,高さ1000mm であり,壁,天井および床は,厚さ50mmのセラミック ファイバーボードである。室中央にはφ200mmのパンを 設置した。実験装置と外部は幅が変更可能な開口で接続 されており,開口の上には設置高さが変更可能な短辺 900mm,長辺1750mm,厚さ5mmの珪酸カルシウム板(以 下,庇という)を設置した。また,庇下面には噴出気流幅 制御のために厚さ5mmの珪酸カルシウム板(以下,側壁と いう)を庇の直下から火災室床上100mmの範囲まで設置 した。実建物では庇下面に側壁があるケースは考えにく いが,前述のとおり庇先端の気流噴出幅Bsを既知とする ために当該措置を行った。側壁がない場合については今 後検討を行う。 3.3 測定項目 3.3.1 重量減少速度 ロードセルで測定した。 3.3.2 火災室内鉛直温度 Fig. 2 (a)に示す2地点(ツ リーa,b)で火災室天井から25mmに1点,以降100mmピッ チで9点の計10点で,K型熱電対(素線径0.32mm)により測 定した。 3.3.3 開口部鉛直温度分布 Fig. 2 (a)に示す開口部 断面の中心軸(ツリーc)において,開口上端下110mm,以 降70mmピッ チで7点の 計8 点で,K 型熱 電対(素線径 0.32mm)により測定した。 3.3.4 庇先端鉛直温度 Fig. 2 (a)に示す庇先端の噴 流噴出域の中央(Bs /2)と両側壁からそれぞれBs /4,Bs /8 の計3地点(ツリーd, e, f )において,庇下面から10mm間隔 で10点,以降25mm間隔で10点,50mm間隔で5点の計25 点で,K型熱電対(素線径0.32mm)により測定した。 (b)断面図 Fig. 2 実験模型 Experimental Model (a)平面図 1000 1000 900 100 100 B s Bop 〃 Bs /8 Bs /4 1750 15° 火災室 庇 200 :CO2濃度計 :熱電対 :実験変数 A 100 100 火源 側壁 〃 900 側壁 100 1000 600 430 火災室 Zv ツリーa ツリーb ツリーc ツリーf ツリーd ツリーe

(4)

3.3.5 代表ゾーンCO2濃度 Fig. 2 (a)に示す開口部, 庇先端の計2地点で測定した。どちらも開口部断面の中心 軸上である。開口部では開口上端から5mm下の地点,火 災室-隣接室開口部では庇下面から5mm下の地点でガス 分析計により測定した。 3.4 実験条件と実験方法 Table 2に示すとおり,火災室開口幅Bop,開口上端から 庇下面までの鉛直距離Zv,庇面下の側壁幅Bsをパラメー タとし,計24条件の実験を行った。なお,Bs=Bop+480mm については既往研究4)を参考に庇先端で必ず噴出気流が Bs全域に充満するように決定した。 実験は,火源(エタノール0.5L)に着火後,自由燃焼さ せた状態で測定を実施した。 3.5 実験結果 3.5.1 重量減少速度 実験結果の一例として,Fig. 3 (a)にBop=Bs=300, Zv=0における重量減少速度の30秒の移 動平均結果を示す。Fig. 3 (a)より,着火開始後300秒から おおむね定常状態であることが分かる。この傾向は全条 件とも同様であった。そこで,本研究では着火開始後600 秒の値を定常状態の値とみなし,以降の検討で用いる。 なお,定常状態の重量減少速度は0.0007kg/s程度であり, エタノールの理論低位発熱量(26.84MW/kg)を乗じれば 理論発熱量は約18kWとなる。 Fig.3 (b)に全条件の理論発熱量Qt について側壁幅Bsご とに示す。なお,本研究ではBop,Bs,Zvによらずおおむ ね一定の値を示すことが分かる。 3.5.2 火災室内鉛直温度および開口温度 Fig. 4 (a) に,Bop = Bs =300, Zv =0条件における火災室2地点および 開口部の鉛直温度を示す。Fig. 4 (a)より,2地点の火災室 内鉛直温度はおおむね同様の傾向を示し,開口部鉛直温 度も床面に近づくにつれ火災室鉛直温度より幾分低い値 を示すが同様の傾向を示す。よって,以降は2地点の火災 室鉛直温度の平均を代表温度として用いて検討を行う。 Fig. 4 (b)にBop =300,Zv =0において,側壁幅Bs =300と Bs =780の場合の火災室内鉛直温度を示す。Fig. 4 (b)より Bs によらず同一の傾向を示すことが分かる。 Fig. 4 (c)に開口部での噴出気流の幅と厚さの関係を示 す。なお,厚さの算出に必要な煙層下端高さは,火災分 野で良く用いられるN%法(N=0.3)9) を用いて算出した。 本実験における開口部での噴出気流幅の範囲は0.3m~ 0.6m,噴出気流厚さの範囲は0.2m~0.29mであり,アス ペクト比(幅/厚さ)はおよそ1~3となる。 Fig. 4 (d)に開口部における噴出気流の平均温度を示し ている。平均温度は開口上端から煙層下端までの平均と した。開口幅Bopが小さくなるにつれ温度が高い傾向が分 かる。本実験ではおよそ200℃から325℃の範囲であった。 3.5.3 庇 先 端 鉛 直 温 度 Fig. 5 (a) に , Bop=600, Bs=1080, Zv =0条件の庇先端鉛直温度を示す。Fig. 5 (a)よ り,庇先端鉛直温度は3地点ともおおむね同様の傾向を示 した。この傾向は全条件で見られた。よって,以下では3 Table 2 実験条件 Experimental Condition 0 0.001 0.002 0.003 100 300 500 700 重量 減少 速度 [k g/ s] 着火からの時間[s] 0 5 10 15 20 25 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 理 論発熱 量 Qt [k W] 側壁幅Bs[m] Bs=Bop Bs=Bop+480 Fig. 3 重量減少速度 Decrease Rate in Weight

(a) Bop=Bs=300, Zv=0条件 (b) 全条件 :Zv=0 :Zv=150 :Zv=300 :Zv=450 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 厚さ Hop [m ] 幅Bop[m] 0 50 100 150 200 250 300 350 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 温度 Top [℃ ] 幅Bop[m] 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 100 200 300 400 床から の高さ [m ] 温度[℃] Bs Bs+480 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 100 200 300 400 床か らの 高さ [m ] 温度[℃] ツリーa ツリーb ツリーc Fig. 4 火災室内鉛直温度 Vertical Temperature in Fire Room (c) 噴出気流の断面形状 (d) 噴出気流の温度 Bop=Bs=300 Bop=300,Bs=780 Bop=Bs=450 Bop=450,Bs=930 Bop=Bs=600 Bop=600,Bs=1080 :Zv=0 :Zv=150 :Zv=300 :Zv=450 (b) Bsによる影響の検討 (a) Bop=Bs=300, Zv=0条件 Bs=Bop Bs=Bop+480 開口高さ 600mm 300m m 450m m 600m m 開口幅 B op 開口上端から庇下面まで の鉛直距離 Zv 側壁幅 Bs 300 450 600 600 600 600 150 300 Zv=0 側壁 庇 450 Zv=150 Zv=300 Zv=450 Bop Zv Bop+480 Zv Bs =Bop Bs =Bop+480

(5)

地点の平均を用いて検討を行うこととする。また,側壁 幅を庇先端での噴出気流幅と読み替えることとする。 Fig. 5(b)に,開口幅Bop=600, Zv =0条件の庇先端鉛直温 度を示す。Fig. 5 (b)より,開口幅Bopが同一であれば噴出 気流幅Bsが広くなるほど煙層温度は低くなる。 Fig. 5 (c)に,庇先端の噴出気流の断面形状を全条件に ついて示す。なお,厚さ算出のための煙層下端算出には N%法(N=0.3)を用いた。煙層厚さは,前述の庇先端噴出 気流幅Bsの他に庇設置高さZvの影響を受け,Zvが大きく なるほど増加する。これは庇衝突までの鉛直方向の巻き 込みの影響と考えられる。 Fig. 5 (d)に,庇先端の噴出気流温度を全条件について 示す。庇先端温度は,噴出気流幅Bsと庇設置高さZvの影 響を受け,BsおよびZvが大きくなるほど小さくなる。 3.5.4 CO2濃度と質量流量 Fig. 6に開口部でのCO2 濃度体積分率および質量流量,Fig. 7に庇先端でのCO2濃 度体積分率および質量流量を全条件について示す。なお, 質量流量は既往研究10)に基づいて重量減少速度および CO2濃度の測定結果より算出した。 Fig. 6より開口部でのCO2濃度はBopが大きくなるほど 小さくなる。質量流量は,Bopが大きくなるほど大きくな る。Fig. 7より庇先端でのCO2濃度はBop,Bs又はZvが大き くなるにつれ小さくなる。質量流量はBop,Bs又はZvが大 きくなるにつれ大きくなる。

4. 庇先端での物理量予測式の構築

以下では,開口部情報を既知として庇先端における各 種情報の予測式を構築する。なお,本実験では噴出気流 幅Bsは既知としているため,予測式は構築しない。 4.1 質量流量Msの予測式 Fig. 8に示すとおり自由空間中の火災プルーム理論に 基づき,モデル化を検討する。 まず,Bs=Bop条件について検討する。当該条件では側 壁により庇先端まで気流幅が変化しない点に着目して, (4)式に示す2次元の連行性状を表す線火源理論式8)を用 いることとし,係数CLを求める。  0 3 2 3 1 3 1 2 Z Z B Q T C g C M op op v p L s             (4) CL : 線火源モデルの巻き込み係数 [-] ρ: 基準密度(=1.2) [kg/m3] g : 重力加速度(=9.8) [m/s2] Qop : 開口からの噴出熱量 [kW] Bop : 開口における噴出気流幅[m] Zv : 開口上端から庇までの鉛直距離 [m] 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0 100 200 300 400 庇下 面か らの 距 離 [m ] 温度[℃] ツリーd ツリーe ツリーf 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0 100 200 300 400 庇下面 からの 距 離 [m ] 温度[℃] Bs=Bop Bs=Bop+480 Bs=Bop Bs=Bop+480 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 厚さ Hs [m ] 幅Bs[m] Bop=Bs=300 Bop=300,Bs=780 Bop=Bs=450 Bop=450,Bs=930 Bop=Bs=600 Bop=600,Bs=1080 :Zv=0 :Zv=150 :Zv=300 :Zv=450 0 50 100 150 200 250 300 350 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 温度 Ts [℃ ] 幅Bs[m] Fig. 5 庇先端鉛直温度 Vertical Temperature at the Tip of Eave (a) Bop=600, Bs=1080, Zv=0条件 (c) 噴出気流の断面形状 (d) 噴出気流温度 (b) Bsによる影響の検討 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 CO 2 濃度 [V ol % ] 幅Bop[m] 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 質量流量 Mop [k g/ s] 幅Bop[m] Fig. 6 開口部でのCO2濃度

CO2 Concentration at the Opening

(a) CO2濃度体積分率 (b) 質量流量 Bop=Bs=300 Bop=300,Bs=780 Bop=Bs=450 Bop=450,Bs=930 Bop=Bs=600 Bop=600,Bs=1080 :Zv=0 :Zv=150 :Zv=300 :Zv=450 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 CO 2 濃度 [V ol % ] 幅Bs[m] 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 質量流量 Ms [kg/ s] 幅Bs[m] Fig. 7 庇先端でのCO2濃度

CO2 Concentration at the Tip of Eave

(a) CO2濃度体積分率 (b) 質量流量 Bop=Bs=300 Bop=300,Bs=780 Bop=Bs=450 Bop=450,Bs=930 Bop=Bs=600 Bop=600,Bs=1080 :Zv=0 :Zv=150 :Zv=300 :Zv=450

(6)

Z0 : 仮想線熱源距離 [m] (4)式をスケールに左右されないように(5)式で定義さ れる無次元発熱速度Q*opを用いて無次元化すると(7)式 を得る。 D H B g T C Q Q op op p op op     (5) ただし,Q C M

T T

op op p op (6) Hop : 開口における噴出気流厚さ [m] D : 代表長さ [m] Top : 開口における噴出気流温度 [m]                     D Z Z C D H B Q g M M v L op op op s s 0 3 1 2 7 3 3 1  (7) (7)式において,CLの決定には代表長さDの決定が必要 となる。複数検討したが,D=Bopとして全条件を整理す ると,Fig. 9 (a)に示すとおり1本の回帰直線で表現でき, CL =0.12が得られた。CL =0.12を(7)式に代入して,有次元 下に戻したものを(8)式に示す。

0

3 2 3 1 04 . 0 Q B Z Z Msop op v (8) ただし, 3 2 3 1 0 04 . 0 op op op B Q M Z  (9) 次に,Bs=Bop+ΔB(ΔB=480)条件について検討する。当 該条件では,噴出気流が側壁に衝突するまで両側辺から の巻き込みがあるため,Bs =Bop条件より現象が複雑にな ることが想定されるが,実務上の利便性を考えて(8)式の 拡張によるモデル化を試みる。Bs=Bop条件と同様,(7)式 を用いて検討を行うと,Fig. 9(b)に示すとおりBsごとに一 意のCLが得られた。その結果を基に回帰線を求めると, (10)式が得られた。 3 4 12 . 0         op s L B B C (10) (10)式を踏まえて(8)式を書き換えると,Bs=Bop条件, Bs =Bop+ΔB条件ともに(11)式で表現できる。

0

3 2 3 1 3 4 04 . 0 Q B Z Z B B M op op v op s s          (11) ただし, (12) Fig. 10に,実測値と(11)式で得られる予測値の比較を全 条件について示す。Fig.10より,(11)式による予測値は実 測値とおおむね一致する。 4.2 噴出気流温度Tsの予測式 Fig. 11に示すゾーンの概念にもとづき,庇面下の煙層 に対して質量保存およびエネルギー保存を考えると以下 3 2 3 4 3 1 0 04 . 0 op op s op op B B B Q M Z          1 2 3 4 1 2 3 4 CL /0 .1 2 [ -] Bs /Bop 0 0.2 0.4 0.6 0 1 2 3 4 5 Ms * [-] (Zv +Z0 ) / Bop[-] Fig. 9 係数CLの検討 Derivation of the Coefficient CL

(a)Bs=Bop条件 (b)Bs=Bop+ΔB条件 Bop=300,Bs=780 Bop=450,Bs=930 Bop=600,Bs=1080 3 4         op s B B Bop=Bs=300 Bop=Bs=450 Bop=Bs=600 :Zv=0 :Zv=150 :Zv=300 :Zv=450 1 0.12 Fig. 10 質量流量Msの実測値と予測値の比較 Comparison between Predicted Value and Experimental Value of Mass Flow Rate Ms

Bop=Bs=300 Bop=300,Bs=780 Bop=Bs=450 Bop=450,Bs=930 Bop=Bs=600 Bop=600,Bs=1080 :Zv=0 :Zv=150 :Zv=300 :Zv=450 0 0.03 0.06 0.09 0.12 0.15 0 0.03 0.06 0.09 0.12 0.15 予測値 (( 11) 式 )[ kg/ s] 実測値[kg/s] Mop Ms ΔM Hop Top Ts B s Bop Zv Ls Fig. 11 庇先端における噴出気流温度のモデル化の概念 Modeling of Temperature at the Tip of Eave

Top Zv Z0 Hop Mop Ms 基準温度T∞ 基準密度ρ∞ Mop Ms Fig. 8 庇先端における質量流量のモデル化の概念 Modeling of Mass Flow Rate at the Tip of Eave

(7)

の式が得られる。 s op M M M   (13) ΔM : 巻き込み量[kg/s]

0    C MTCMT hAT TT M Cp opop p p s s s (14) ただし,ABs

ZvLs

2Hop

ZvLs

(15) h : 総合熱伝達率[kW/(m2K)] A : 庇との伝熱面積[m2] (13)(14)式を整理すると,以下の関係を得る。 hA M C Q T T s p op s  (16) Fig. 12に,実測値と(16)式による予測値の比較を全条件 について示す。なお,総合熱伝達率hは既往研究11)をもと に0.015kW/(m2K)とした。Fig. 12より,(16)式による予 測値は測定値とおおむね一致する。 4.3 噴出気流厚さHsの予測式 密度流の概念12)にもとづき,Fig. 13に示すとおり水平 方向に進行する煙の速度Vsは煙層密度と基準密度の差に 起因すると考え,煙層密度として4.2に示した噴出気流の 平均温度Ts(密度ρs)を用いれば,質量流量Msと噴出気流厚 さHsの関係として(17)式が得られる。

3 2            g B M H s s s s s    (17) (17)式において,本研究で測定した煙層平均密度ρsおよ び質量流量Msを代入して噴出気流厚さHsとの関係を全 条件について検討した結果,(18)式に示すとおり単純な 係数を乗じれば,Fig. 14に示とおり全条件とも実験値と 予測値がおおむね合う結果が得られた。

3 2 64 . 0            g B M H s s s s s    (18) 4.4 噴出気流幅Bsについての対応 本実験ではBsを既知としたが,前述のとおり実施の建 物ではBsの予測が必要となる。Bsの予測は今後の検討課 題であるが,例えば庇が開口上端に設置された場合の噴 出気流厚さBsを検討した既往研究4)を援用すれば,(19)式 よりBsを算定できる。なお,Lsは庇長さ(Fig. 11参照)であ る。  tan 2 s op s B L B   (19) ただし, 5 1 9 . 37           op op H B  (20) θ : 噴出気流の広がり角度[°] 本研究の対象とする庇が開口上端より上に設置された 場合には,開口上端に設置された場合よりさらにBsが大 きくなることが想定され,(19)式を用いればBsを小さく 評価するため,安全側の評価となる。 4.5 算定手順 Fig. 15に算定フローを示す。まず,入力条件を整理し Bop=Bs=300 Bop=300,Bs=780 Bop=Bs=450 Bop=450,Bs=930 Bop=Bs=600 Bop=600,Bs=1080 :Zv=0 :Zv=150 :Zv=300 :Zv=450 Fig. 12 噴出気流温度Tsの実測値と予測値の比較

Comparison between Predicted Value and Experimental Value of Temperature Ts

Bop=Bs=300 Bop=300,Bs=780 Bop=Bs=450 Bop=450,Bs=930 Bop=Bs=600 Bop=600,Bs=1080 :Zv=0 :Zv=150 :Zv=300 :Zv=450 Fig. 13 庇先端における噴出気流厚さのモデル化の概念

Modeling of Thickness at the Tip of Eave Ms Ts Hs

s s s s s gH P V          速度Vs Fig. 14 噴出気流厚さHsの実測値と予測値の比較

Comparison between Predicted Value and Experimental Value of Thickness Hs

0 50 100 150 200 250 300 0 50 100 150 200 250 300 予測値 (( 16) 式に よる )[ ℃ ] 実測値[℃] 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 予測 値 (( 18) 式に よ る )[m ] 実測値[m]

(8)

たのち,(19)式で庇先端での噴出気流幅Bsを算出する。 次に,得られたBsを用いて(11)式より庇先端部での質量 流量Msを算出する。そして,BsとMsを用いて(16)式より 噴出気流温度Tsを算定する。最後に,BsとMsとTsを用い て(18)式より噴出気流厚さHsを算出する。以上の方法に より,火災室の開口情報から庇先端部の各情報を全て予 測することができる。

5. まとめ

吹抜廻りに開放的な廊下が設置された建物計画を対象 として,防火シャッターの撤廃を図るべく,吹抜上部の 煙層温度100℃以下を達成するための開発技術の概要を 示した。開発技術は,主に(1)吹抜への漏煙熱量低減技術, (2)廊下下面での希釈評価技術,(3)廊下端部以降の希釈評 価技術の高度化である。 本報では,特に(2)廊下下面での希釈評価技術について 取り上げた。縮小模型を用いた実験によりこれまで構築 されていなかった区画の開口情報から庇先端での質量流 量,噴出気流温度,噴出気流厚さをそれぞれ予測する式 を提案した。また,提案式と実測値を比較し,おおむね 一致することを示した。

謝辞

実験に係わる事項は,東京理科大学理工学部大宮教授 との共同研究により実施されました。ここに記して謝意 を示します。 参考文献 1) 日本建築センター:新・建築防災計画指針-建築物 の防火・避難計画の解説書, pp. 111, 1996.11 2) 上出和幹, 他:火災加熱を受ける窓ガラスの破損予 測手法, 日本建築学会学術講演梗概集学術講演梗概 集, A-2, 防火, pp. 241-242, 1998.7 3) 山口純一,他:開口噴出気流の巻き込み性状に関す る研究,日本建築学会計画系論文集, Vol. 511, pp. 1-8, 1998.9 4) 大宮喜文,他:庇面下の拡散を考慮した開口噴出気 流流量算定式,日本建築学会環境系論文集,Vol. 721, pp. 263-271, 2016.3

5) R. Harrison et al.:Characterization of balcony spill plume entrainment using physical scale modelling, Fire Safety Science, pp. 727-738, 2008.9

6) N. Rajaratnam:Developments in water science, pp. 267-294, 1976

7) Zukoski Edward E. et al.:Entrainment in fire plumes. Fire safety journal Vol. 3, pp. 107-121, 1981

8) Lee Shao-Lin et al.:A study of natural convection above a line fire, Journal of Fluid Mechanics Vol. 11, pp. 353-368, 1961

9) L. Y. Cooper et al.:An Experimental study of upper hot layer stratification in full-scale multiroom fire scenarios, Journal of heat transfer, vol. 104, pp. 741-749, 1982.11 10) 岸上昌史,他:区画火災におけるガス分析計を用い た流量測定法に関する検討 エタノール火源の場合, 日本建築学会学術講演梗概集学術講演梗概集, 防火, pp. 357-358, 2016.8 11) 田中哮義:改訂版建築火災安全工学入門,pp. 198, 2002 12) 松下敬幸,他:進行方向に細長い空間の水平天井面 における火災時の煙先端部位置の近似解析解,日本 建築学会環境系論文集, Vol. 703, pp. 739-744, 2014.9 Fig. 15 算定フロー Calculation Flow START (入力条件の整理) 庇先端の気流幅Bsの算出[(19)式] 庇先端の質量流量Msの算出[(11)式] 庇先端の噴出気流温度Tsの算出[(16)式] 庇先端の噴出気流厚さHsの算出[(18)式] END

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