• 検索結果がありません。

プロバイダー責任制限関連ガイドラインと緊急避難論

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "プロバイダー責任制限関連ガイドラインと緊急避難論"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2013-EIP-62 No.5 2013/11/21. プロバイダー責任制限関連ガイドラインと緊急避難論 赤岩順二†1 サイバー犯罪におけるプロバイダーの責任制限(責任範囲)を提案する各種ガイドラインにおいて、刑法上の 緊急避難概念が参照されることがある。ネット上自殺告知された事例について、電気通信事業法が規定する通 信の秘密の侵害の罪(電気通信事業法4条1項、その刑罰規定同 179 条)に該当する削除を正当化(違法阻却) する基準と手順を提案するガイドラインなどである。本論文では、緊急避難の法的性質論をあらためて確認し、 プロバイダーの責任分界における緊急避難法理の適用範囲について検討する。. Guidelines for demarcation of ISPs’ criminal responsibility and “Notstand(Necessity)”. JUNJI AKAIWA†1 Japanese ISPs associations proposed guidlines setting standards and procedures for lifting secrecy of communications in internet environment. Some of these guidlines refer “Notstand(Necessity)”, for immunity of criminal responsibility( mainly as violating secrecy of communications, defined in Article 4 of the Telecommunications Business Law (Law No. 86 of December 25, 1984)).In this paper , considering the legal nature of Notstand(Necessity), I examine what extent Notstand(Necessity) is valid in setting standards and procedures for marcations of ISPs’ criminal responsibility.. 1. はじめに サイバー犯罪におけるプロバイダーの責任制限(責任範 囲)を提案する各種ガイドラインにおいて、刑法上の緊急. ウド・コンピューティング」という標語に代表されるよう にどこに所在しているサービスかを意識することなく(国 境という概念も超えて)必要に応じて組み合わされて提供 される形態が広がりをみせていることであるb。. 避難概念が参照されることがある。ネット上自殺告知され. もちろん、 「サイバー空間」のクラウド化、といっても人. た事例について、電気通信事業法が規定する通信の秘密の. 間の生命・身体・自由のすべてがそこのなかに属している. 侵害の罪(電気通信事業法4条1項、その刑罰規定同 179. という意味での空間では未だなく、それを提供するサービ. 条)に該当する削除を正当化(違法阻却)する基準と手順. ス機能もまったく知られていなかった要素技術や組み合わ. を提案するガイドラインなどである。. せが登場しているとはいえない。. 本報告は、緊急避難の法的性質論をあらためて確認し、. したがって、 「サイバー空間」においてなんらかの業務を. プロバイダーの責任分界における緊急避難法理の適用範囲. 実現しようとし、また一定の政策目的を実現しようとする. について検討する。. とき、一方では利用する人間(発信元、受信先)との接点. 2. プロバイダー責任制限法とガイドライン. を意識しつつ、他方では要素技術と提供サービスを組織し. (1) サイバー空間におけるプロバイダーの役割 コンピュータ・ネットワークは、社会のさまざま利用局 面へと浸透し、ひとびとにとって「サイバー空間」(Cyber Space)といっても違和感のない隣接性をもちつつある。現 在(2010 年をまたぐ数年)の動向のひとつは、一方で「ス マートフォン」の利用拡大a、にみられるように常時接続可 能なデバイスを市民ひとりひとりが携帯するようになりそ の日常に様々なコンテンツが届きやすくなっていることと、 他方で「サイバー空間」において提供される機能が「クラ. a MM 総研によれば、2012 年 3 月で契約端末契約数のうち須磨とフォンの 占める割合は 22.5%を占めており、2014 年には半数以上がスマートフォン にかわると予想されており(デジタルコンテンツ協会(編) 『2012 デジタル コンテンツ白書』 (2012)33 頁参照)、出荷台数ベースでは 2013 年度:3,160 万台(76.3%)、2014 年度:3,430 万台(80.3%)と予想されている(MM 総 研「2013.3.28 ニュースリリース」( http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120130328500, 2013 年 6 月 30 日参照)。. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. 提供する組織体であるプロバイダーがサービス提供上の主 体としても他の目的で果たすべき役割にせよ、ますます重 要となっているといえよう(サイバー空間に関わる犯罪に ついても、このようなコンピュータ・ネットワークの環境 変化と変わらない部分への適切な切り分けによって対応し ていくことが求められているからc、プロバイダーの役割と bクラウド・コンピューティング概念については「クラウド環境における違 法ダウンロードについて」『法とコンピュータ No.31』(2013 年 9 月 30 日)83-97 頁に譲りたい。 c [Sieber(田口他訳) ,2012, 381-471]は、 「サイバー犯罪の歴史」について次の ようにまとめている。1960 年代のコンピュータ犯罪に関する最初の議論は 主としてプライバシー侵害に関するものであった。1970 年代にあらゆる産 業部門にコンピュータが一般的になるにつて、焦点は経済犯罪へと移行す る。1980 年代には、知的財産の保護がプログラムにおよんだことにも示さ れるように標準的ソフトウェアパッケージが一般化するとともにその違法 なコピーが問題となりさらに 20 世紀末にいたるまでにあらゆるデジタル・ コンテンツ(特に映画や音楽)にまでそれが拡がっている。そしてコンピ ュータ・ネットワークに接続しているユーザ数の急速な増大によって、1990 年代には違法もしくは有害なコンテンツ(児童ポルノ、嫌悪的言辞、違法 ギャンブルの広告、テロリストのプロパガンダ)も提供されるようになっ. 1.

(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 責任範囲の検討は重要となっている)。 (2) プロバイダー責任制限法とガイドライン このようなプロバイダーの法的責任分界についてのいわ. Vol.2013-EIP-62 No.5 2013/11/21. このようなプロバイダー責任制限法の枠組みに基づくガ イドラインとは系統がやや異なるガイドラインがある。た とえば、 「インターネット自殺予告事案への対応に関するガ. ば基本法として平成 13 年(2001 年)に成立したのが、特. イドライン」(2005 年 10 月)であるh。. 定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情. は、誰でも容易にアクセスすることが可能な電子掲示板に. 報の開示に関する法律(平成十三年十一月三十日法律第百. 自殺の決行をほのめかす書き込みや他人に対する集団自殺. 三十七号、以下「プロバイダー責任制限法」)であるd。そ. を呼びかける書き込み(自殺予告)の増加があった。. その背景として. の枠組みに基づいて、プロバイダー等の団体、著作権関係. このような書き込みがなされた場合、人命保護の観点か. 団体などを始めとする参加を得た「プロバイダー責任制限. ら緊急に対応する必要があるが、その際、電子掲示板にお. 法ガイドライン等検討協議会」が設立され、実務上の基準. ける自殺予告の書き込みや自殺予告を内容とする電子メー. と手順がガイドライン化されてきているe。. ルに係る発信者情報の取得が必要となるとし、原則として. プロバイダー責任制限法は「情報の流通によって権利の. それが通信の秘密の侵害(電気通信事業法第 4 条、第 179. 侵害があった場合」について「損害賠償責任の制限」及び. 条)に該当することが問題とされているのである(前掲ガ. 「発信者情報の開示を請求する権利」について定めるもの. イドライン 2-3 頁)。もちろん通信の秘密の侵害は、憲法上. である(同法第一条)であり、民事上の権利侵害があるこ. 保障される基本的人権を背景とするものである(毛脳 21. とを前提としている(もちろん「民事責任が認められない. 条 2 項「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、. 事例に刑事責任が認められるのは適当ではないから、この. これを犯してはならない」) 。. 規定は、刑事責任にも基本的にだとうするものと考えられ る」f)。. 殺害予告との対比で自殺予告の特質を論じる。殺害予告 の場合には脅迫罪(刑法 222 条)、威力業務妨害罪(刑法. それゆえ、プロバイダー責任制限法の枠組みを前提とす. 234 条)の犯罪を構成するため、警察からなされる開示要. るガイドラインは、 「プロバイダ責任制限法名誉毀損・プラ. 求は令状に基づくことができるが、自殺予告事案ではその. イバシー関係ガイドライン」 (初版平成 14 年 5 月、第 2 版. ようなことが考えにくいことから緊急避難概念を参照して. 平成 16 年 10 月、第 3 版平成 23 年 9 月)、 「プロバイダー責. ガイドラインを作成したとしている (前掲ガイドライン 7-9. 任制限法著作権関係ガイドライン」 (初版平成 14 年 5 月、. 頁)。. 第 2 版平成 15 年 11 月)、「プロバイダー責任制限法商標権. 具体的な要件として「1.現在の危難の存在」 「2.補充. 関係ガイドライン」 (平成 17 年 7 月)、「プロバイダー責任. 性(やむを得ずにした行為であること)」 「3.法益の権衡」. 制限法発信者情報開示関係ガイドライン」(初版平成 19 年. について自殺予告事例について述べている(前掲ガイドラ. 2 月、第 2 版平成 23 年 9 月)が作成されているg。. イン 11-12 頁)。. (3) 自殺予告事案対応ガイドラインと通信の秘密に対す. (4) 児童ポルノ流通防止に向けたガイドラインをめぐる. る罪. 議論. た。それと同時に民間・政府・軍のサービスに対する、 「サイバーテロリズ ム」 「サイバー戦争」が論じられるようになっている。さらに現在では、情 報技術は、ビジネス・コミュニティだけでなく、多くの人々の私的な日常 生活に重要な役割を果たしており、そこでは伝統的な犯罪(詐欺、違法薬 物の取引等)を援助するツールとなっているという[Sieber(田口他訳) ,2012, 383-5]。ズィーバーは、 「コンピュータ犯罪およびコンピュータ関連犯罪は、 コンピュータ・データに関するあらゆる犯罪を含む」とし、 「サイバー犯罪 は、コンピュータ・ネットワークで行われた犯罪」 「グローバルなサイバー スペースに関連する犯罪を含む」と最終的に2分する(同上邦訳 385-387 頁)。ただしいずれも、コンピュータ・システムとコンピュータ・ネットワ ークの「高度のリスク」の創出、 「コンピュータ・データ」の無形性と監視 し難さ、コンピュータ・ネットワークのグローバルという特徴を反映した 犯罪類型となっているとする[Sieber(田口他訳) ,2012, 387-90]。 d同法の立法当初の解説としては、松本恒雄「違法情報についてのプロバイ ダーの民事責任」ジュリスト 1215 号(2002)113 頁以下、大村真一他「特 定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関す る法律」ジュリスト 1219 号(2002)101 頁以下。その後の展開については、 総務省総合通信基盤局消費者行政課『改訂版 プロバイダー責任制限法』 (2011、第一法規)、堀部政男(監修) 『プロバイダ責任制限法 実務と理論 -施行 10 年の軌跡と展望- (別冊 NBL No.141)』(2012、商事法務)を参照。 e 上掲『改訂版プロバイダー責任制限法』8 頁,94-317 頁。 f 佐伯仁志「プロバイダーの刑事責任」 (前掲) 『プロバイダ責任制限法 実 務と理論』161 頁) 。 g 平成 25 年 4 月に「公職選挙法の一部を改正する法律」が成立し、インタ ーネット等を使って選挙運動を実施することが可能になったが、これに対 する「プロバイダ責任制限法の特例」が『プロバイダ責任制限法名誉毀損・ プライバシー関係ガイドライン別冊「公職の候補者等に係る特例」に関す る対応手引き』がつくられている。. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の 保護等に関する法律(平成十一年五月二十六日法律第五十 二号)」は、 「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の 権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて 児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、 児童買春、 児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行 為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための 措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを 目的とするものである」 (同法第1条)が、その実効性を高 めるために「児童ポルノ排除総合対策」が犯罪対策閣僚会 議決定され(平成 22 年 7 月、第二次平成 25 年 5 月)、その なかで、サイバー空間上の児童ポルノの流通防止に向けた 方策として、通信の秘密や表現の自由に不当な影響を及ぼ さない運用に配慮しつつ、平成 22 年度中に ISP による実効 h 同ガイドラインは(社)電気通信事業者協会・(社)テレコムサービス協 会・(社)日本インターネットプロバイダー協会・(社)日本ケーブルテレ ビ連盟の連名となっている(例えばテレコムサービス協会該当ホームペー ジ http://www.telesa.or.jp/consortium/suicide/pdf/guideline_suicide_051005.pdf 、参照 2013 年 10 月 1 日) 。. 2.

(3) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 性あるブロッキングの自主的導入を促進するとした i。. Vol.2013-EIP-62 No.5 2013/11/21. 権衡のそれぞれについて検討を要するところ、国民の表現. それを踏まえて、ISP の民間団体である児童ポルノ流通. の自由や通信の秘密という重大な人権と「人命に比肩する. 防止協議会が「ブロッキングに関する報告書」(平成 22 年. 侵害」といわれる児童ポルノによる深刻な侵害を受ける児. 3 月)を(以下「流通防止協報告書」j、安心ネットつくり. 童の人権という重大な問題等について結論を出すまでには. 促進協議会が「法的問題検討サブワーキング報告書」 (平成. 至らなかった、としている(同 18-19 頁)。. 22 年 6 月)kを(以下「安心ネット協報告書」)をとりまと. (6) 「安心ネット協報告書」. めた。 (5) 「流通防止協報告書」 「流通防止協報告書」では、ブロッキング手法(http サ イトへの一般的なアクセス、DNS ブロッキングアクセス遮. 「安心ネット協報告書」では、法的問題検討サブワーキ ンググループという性格から、法的問題について中心に議 論している。 第一に、 ブロッキングが通信の秘密にあたるかを検討し、. 断、パケットドロップアクセス遮断、URL フィルタリング. 通信の秘密が、日本国憲法に保障される人権であることを. アクセス遮断、ハイブリッドフィルタリングアクセス遮断). 確認したうえで、電気通信事業法の該当条文の示す要件ご. について、その特質を確認したうえで(同 5-11 頁)、ブロ. とに確認する(同 2-6 頁)。それによれば、 「電気通信事業. ッキングに係る問題点を DNS ブロッキングおよびハイブ. 者の取扱中に係る通信の秘密」に該当するとする。次ぎに、. リッドフィルタリング、パケットドロップ、URL フィルタ. 「侵害行為該当性」としては、①知得②窃要③漏洩の侵害. リングについて整理している(同 12-17 頁)。. の3類型のなかで知得および窃用に該当するとともに、た. 「いずれの技術的方法を選ぶにせよ、通信の未必の侵害. しかに「通信当事者の同意」 があれば侵害とはならないが、. になる」ことから、 「電気通信事業法上の通信の秘密との関. 単に約款に記載しただけでは通常は有効な同意であったと. 係については、ある行為が通信の秘密を侵害する行為に該. はいえないとする。そして、ブロッキングが通信の秘密の. 当するとしても、これが正当行為(刑法 35 条)、正当防衛. 侵害に当たるかについては、当事者の意思に反して行われ. (刑法 36 条)、緊急避難(刑法 37 条)のいずれかにあたる. る場合には、通信の秘密の構成要素等を「知得」し、かつ. 場合には、違法性が阻却される」とし、それぞれについて. 「窃用」 (利用)するものであり、通信の秘密の侵害に該当. 検討するのである(同 17 頁)。. するとする(なお、ISP を通信の一方当事者とみなす見解. 「正当業務」については電気通信事業者の一般的解釈に. について特に検討が加えられ、通信の秘密の保護の趣旨は、. おいては、 「通信をその内容に関知せずそのまま媒介するこ. 物理的な電気電信それ自体の保護ではなく、通信の意味内. と及び安定かつ確実な提供を維持すること」であるとし、. 容を保護することにあるから、物理的な通信過程のみに着. 相当な手段の範囲で後者を目的とする例として、サービス. 目することは一般的に妥当な解釈ではなく、そう介してし. 品質を維持するための帯域制御や、迷惑メール送受信上の. まうと電話やメールなどへの不当な拡大可能性もあり、採. 支障を防止するための OP25B 等があたるとしている(同. 用できないと結論づける)。. 7-8 頁)。. 第二に、そのうえで違法性阻却されるかを検討する。刑. そうして、児童ポルノのブロッキングの「正当業務」に. 法 35 条の法令行為にあたるかについては、憲法 21 条 2 項. よる違法阻却については、a)児童ポルノブロッキングには. への違反の問題の検討が別途必要と留保したうえで、裁判. そのような目的はなく、手段としても相当でない懸念があ. 官の令状に基づいて行われる場合には法令にもとづく正当. る、とする見解と、b)刑法 35 条の解釈として、①目的の必. 行為となるとする(同 6 頁) 。したがって令状に基づかない. 要性、行為の正当性、②手段の正当性が充足されることが. 場合には法令にもとづく正当行為にはならないことになる。. 必要とされるところ、児童ポルノブロッキングについて①. 正当業務行為にあたるかについては、 「正当業務行為」の意. が認められることは明らかであり、②の目的達成のために. 義について確認したあと、現状の運用で正当業務行為性が. 必要な限度の手段にとどまるといえるとする対立する評価. 肯定されているケースとして「課金・料金請求のために通. がくだされている。. 信履歴を利用する行為」 「ISP が通信ヘッダーを知得して経. 緊急避難については、a)被写体とされる子供のプライバ. 路を制御する行為」 「ネットワークの安定的運用のために必. シーが著しく侵害されていることと児童ポルノ送信行為が. 要な措置(OP25B、帯域制御、サイバー攻撃への対処など). そもそも違法であるから刑法 37 条の要件を満たしている. を挙げ、否定されているケースとして「会員の個人情報や. という違憲があったが、b)①現在軒難、②補充性、③法益. 機密情報の流出を防止するために、特定のアプリケーショ. i 内閣府・共生社会政策統括官・青少年育成・児童ポルノ排除総合対策ホ ームページ( http://www8.cao.go.jp/youth/cp-taisaku ) (2013 年 10 月 1 日閲 覧)。 j http://www.iajapan.org/press/pdf/siryou5-20100325.pdf (2013 年 10 月 1 日閲 覧) k http://good-net.jp/usr/imgbox/pdf/20110411182444.pdf (2013 年 10 月 1 日閲 覧). ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. ンの利用を検知・遮断する措置」を挙げている(同 8 頁)。 このような実務上の運用から、利用者である国民全体に通 信役務の円滑な提供という見地から正当・必要と考えられ る措置は正当業務行為と認められていると評価する(同 9 頁)。. 3.

(4) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report また課金・経路制御・帯域制御、大量通信対策、. Vol.2013-EIP-62 No.5 2013/11/21. 「現在の危機」の危難の発生原因は制限がないこと. OP25B/IP25B などネットワークの安定的維持運用のための. 現在性とは法益侵害の危険が緊迫していることをいい被. 措置は、通信の秘密を侵害するものの、電気通信事業者の. 害の現在性を意味しないとする最高裁判例(最判昭和 24. 事業の維持・継続に必要ないし有用であり、正当業務行為. 年 8 月 18 日刑集 3 巻 9 号 1465 頁)、行為者の主観的予測で. における被害者の同意以外の根拠による取材活動・弁護活. は足りずその存在は客観的に判断されるとする判例(東京. 動・牧会活動と比較してみても正当業務行為と解する余地. 地判平成 8 年 6 月 26 日判例時報 1578 号 39 頁)紹介して、. はあるとするが、違法有害な通信を監視・遮断することは、. 「現在の危難」について説明している(同 15 頁). 通信の秘密を侵害し、電気通信事業者の事業の維持・継続. この点について報告者がとくに付け加えるべきコメント. に必要ないし有用とは必ずしもいえないと評価する(同9. はない。. 頁)。. (7) 児童ポルノ公然陳列罪の保護法益. 結論としては、ブロッキングについては、 「電気通信役務. 児童ポルノ公然陳列罪の保護法益については、個人的法. の提供とっては必ずしも正当・必要なものではなく、電気. 益と社会的法益の侵害という側面を併せ持つと考える野が. 通信事業者の事業の維持・継続に必要ないし有用な利益を. 相当であるとし、社会的法益の側面とは、児童一般が健全. もたらすものとも言い難い」とし正当業務行為とみること. な性的観念を持てなくなるなど児童の人格の完全かつ調和. は困難としている(同 10-11 頁)(なお、「利用者の保護を. のとれた発展が阻害されないようにすること及び児童を性. 理由として生業業務行為を肯定できないか」については、. 欲の対象としてとらえる風潮を抑止することであるとし、. 現行法ではウェブ上で児童ポルノを閲覧すること自体は違. 個人的法益の側面とは主に当該児童への有害な影響と、そ. 法でないため利用者保護の観点から正当業務行為になるこ. の成長への重大な影響等から保護することであると解して. とは考える余地はない」とする。また「一般的違法性阻却. いる(同 15 頁)。. として正当化できないか」についても検討し、その場合に. この点については、刑法 37 条が「自己又は他人の生命、. は「なお緊急性・補充性」が必要と解されるとしている). 身体、自由又は財産に対する現在の危難」と規定している. (同 11-12 頁)。. こととの関係については再度確認が必要であろう。たしか. 次に正当防衛および緊急避難について検討している(同. にこの規定で列挙された法益は例示にすぎず、名誉や貞操. 13-20 頁)。正当防衛については、ブロッキングは、直接ア. などに対する危難の場合にも許されると解すべきであるが、. ップロードした者に向けられたものではないから防衛行為. それに社会的法益の側面も含まれるかは争いがあるからで. とは言い難いとし、また侵害を個々のユーザのアクセスと. あり、基本的には緊急避難が第三者の正当な法益を侵害す. 捉えれば防衛行為といい得るが、常時監視するという行為. るという性格からは本来的には個人的法益を対象として設. との関係で侵害の急迫性は満たしがたいとして該当市内と. 計された制度であると解すべきと考えるからである。もち. 評価している(同 13 頁)。. ろん、児童の大切な性的自由や人格的法益を侵害するので. 「安心ネット協報告書」は以上の検討から、刑法 35 条、. あるから、児童ポルノ公然陳列罪に該当する行為が緊急避. 刑法 36 条による違法阻却には該当しない又は課題が残る. 難の対象とならないというのではない。. とし、緊急避難による違法阻却について要件を検討し基本. (8) 児童ポルノの公然陳列による「危機」はあるか. 的にそれを採用しているので節を変えて、検討することに する。. 3. プロバイダーと緊急避難論の適用領域 3.1 緊急避難成立要件 緊急避難の成立要件は、緊急避難状況と緊急避難行為と. 児童ポルノの公然陳列による「危機」はあるかについて、 児童ポルノを Web 上誰でも容易に入手しうる事態になっ た状況で、児童の権利に対する法益侵害の蓋然性が客観的 に発生していると認められるとしている。そして成人した 後で流通したとしても同様であるとする(同 16 頁) 成人した時点での法益を侵害すると考えればよいことか. に分けることができようl。この二つの大きな分類のもとで、. ら賛成したい。. 個々の要件については「安心ネット協報告書」の表現に適. (9) 危難に「現在性」はあるか. 合させつつ、それぞれを確認していく。 緊急避難状況 「安心ネット協報告書」は、 「現在の危難」の存在として、 ⅰ「現在の危難」の意義、ⅱ「児童ポルノ公然陳列罪の保. 通信の秘密を常時行う措置については「現在性」を認め ることができないが、児童ポルノについては流通しうる状 態に置かれた以降それが継続している限り現在性を認めう るとしている(17 頁). 護法益」、ⅲ「児童ポルノの公然陳列による「危機」はある. この点については、たしかにそのようにも解す余地があ. か、ⅳ危機に「現在性」はあるか、に分けて論じている。. る。たしかに、たとえばそのコンテンツが発生する時点、 ネットに投入される時点をとらえれば現在性があることは. l 基本的考え方について、報告者「刑法における緊急避難論の再構築」(博 士学位論文(明治大学)2008 年度)で検討した。. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. 間違いない。たとえば自分の子供を家のベランダで水浴び. 4.

(5) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2013-EIP-62 No.5 2013/11/21. させていたところ、デジタル画像でとられそうになってい. するという手法もより効果的な対策としている。このよう. ることに気づき、それを防止するためカメラめがけてマン. に検挙および削除は、ブロッキングに比べて侵害性が少な. ションの庭部分にいた人間に持っていた洗濯用バケツを投. く、効果の面からみてもより適切な手段であるから、これ. げたところ、まったくそのカメラ撮影に関与していない隣. らの手段をまず検討すべきとしている(同 18 頁) 。. 家のガラスにあたってガラスを壊した、というときは「現. (3) ブロッキングの手法との関係. 在性」があるといえよう。また喫茶店で、ネットにまさに. ブロッキングの個々の手法との関係では、過剰ブロッキ. 投稿しようとしている人のキーボードめがけて読んでいた. ングを避ける手段の選択への配慮が必要だとしている(同. 本を投げたところ、喫茶店のコーヒー茶碗を損傷した、と. 18-9 頁)。. いった場合にも現在性を認めることができる。. (4) 法益の権衡. もちろんあらためて言うまでもなく、ネットにおける権. 質的にみれば、法益の権衡を満たす可能性は十分にある. 利侵害がこの場合には常態的性格を少なくとも併せ持ちう. が、量的観点からは権利侵害の程度も問題となるとしてい. ることから緊急避難の前提とする現在性の認定の点で考慮. る(同 19-20 頁). すべき点があるとしているのであって、そのまま放置して. (5) 考察. よいと述べているのではない。 (10) 考察. ブロッキングと他の手法との比較ということ自体につい ての必要性については異論はない。緊急避難の法文および. 緊急避難は、刑法典上規定された、正当防衛とならんぶ. その法理を参照した一つには、このような侵害手段の比較. 緊急行為の一種と位置づけることができる。緊急行為が犯. が要件上の文言として存在することも挙げられるであろう. 罪不成立事由として位置づけられるのは、他の手段(国家. (犯罪不成立事由のなかで、刑法 35 条には「手法」の比較. や民事手続など)による救済を待っていたのでは暇がない. についての文言はなく、正当防衛については、急迫不正の. 急迫または現在の法益侵害に対して、それぞれの性格に応. 侵害に対する反撃であることから、 「やむを得ず」の内容に. じた要件のもとで自救的行為を自ら(または「他人のため. ついて異なるとすることが通常だからである)。また、緊急. に」)行うことを法制度として認めたものである。そうであ. 避難では、法益の権衡(害の権衡)について条文上述べら. るとすると、 「危難の現在性」が認められる場合はもちろん. れており、その点で参照すべき条文であることは間違いな. ありうるが、それのみを根拠としてガイドライン化(した. いと考える。. がって日常業務として行い得るレベルまで手続化していく. ただし、今回のブロッキングに関する緊急避難行為は、. ことでもあろう)するには課題が多いと考える。あくまで、. 「他人のための」緊急避難にあたることの検討は必要であ. 緊急避難制度のもつ「法理」を参照してガイドライン上参. るように思われる。すなわち、プロバイダーは通信の秘密. 考にするという程度ではないだろうか。. の侵害罪に該当する行為を行うのだが、それを児童ポルノ. 3.2 緊急避難行為. 画像によって侵害される児童のために避難行為を行うとい. 「安心ネット協報告書」はⅰ「止むを得ずにした」の意. う構造になっているということである。自ら自らの法益の. 義、ⅱ他に採るべきより侵害性の少ない手段の有無、ⅲブ. ために行う行為であるか、他人のために行う行為であるか. ロッキングの手法との関係、さらに別項目として法益の権. によって法的評価に変更があるとは限らないが、他人のた. 衡について論じている。. めの緊急行為と自己のための緊急行為をどう立法するかは、. (1) 「やむを得ずにした」の意義. 立法上いくつかの選択肢があるところだからである。. 当該避難行為をする以外に他の方法がなく、かかる行動 出たことが条理上肯定しうる場合を意味するとする最高裁. 4. 緊急避難法の法的性質論とその意義. 判例をあげている(最大判昭和 24 年 5 月 18 日刑集 10 巻. 4.1 緊急避難の法的性質と第三者の対抗行為の刑法的評. 231 頁)。補充性、すなわち他に採るべき侵害性の少ない手. 価m. 段が存在しないことは、この「止むを得ずにした」の内容 をなすと解されているとしている(同 17 頁) 文言上どこの位置づけるかはともかく二つの要件がある. 緊急避難の本質としては、違法阻却一元説・責任阻却一 元説・二分説(二元説)に分けて論じられてきたn。 そして、緊急避難行為に対する第三者の態度の刑法的評価. ことについては異論はない。. については、この緊急避難の本質論と関連させて論じられ. (2) 他にとるべきより侵害性の少ない手段の有無. てきている。すなわち、緊急避難の本質を違法阻却とみれ. この点についえては、ブロッキングをするより他に方法. ば緊急避難行為は正当防衛にいう「不正な侵害」とはなり. はないと言えることが必要となるとしている。そして、ウ. えずそれに対する正当防衛は許されないが、責任阻却とみ. ェブ上に児童ポルノを流通させた者を検挙することは、も っとも侵害性の少ない手段であり、抜本的な対策であると する。また、検挙とは別に流通する児童ポルノ画像を削除. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. m 第三者の対抗行為については、赤岩順二「緊急避難への対抗と毀損忍受 -ヘーゲル緊急権論の再解釈を中心に」 (明治大学社会科学研究所紀要 45/ 2, 195-211)で主題的に論じた。 n 多くの教科書を代表させて、川端博『刑法講義総論』359-362 頁。. 5.

(6) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2013-EIP-62 No.5 2013/11/21. れば「不正な侵害」となりうるから正当防衛が許されると. 緊急避難における第三者の態度の刑法的評価の検討という. いう構図がそれである。. 観点からは、(1)説は正当防衛による対抗が可能だとしかつ. (1) 責任阻却一元説. それは保全法益と毀損法益の差があるばあいにも同様にあ. 「緊急避難行為の不罰理由がもし違法性阻却にあるとすれ. てはまるとし、(2)説は保全法益と毀損法益に一定の差があ. ば、避難行為は元来適法なものとなるから、これに対して. るばあいには事後の賠償をもとに第三者の危難甘受義務を. 正当防衛をすることはできないが、もし、それが責任阻却. 認め、(3)説は正当防衛は許されないものの緊急避難その他. にあるとすれば、これに対して正当防衛の成立する余地が. の回避行為および事後の賠償も認めており、法的性質論と. あることになる」 。さらにこのことは「法益権衡の極限場面. しての一定の選択肢を示していると考える。. にかぎってあてはまることではない。たとえ大きな法益を. 4.2 緊急避難の法的性質と第三者の対抗行為を論じる意. 保護するために小さな法益を犠牲にする場合であっても、. 味. なんらの責任なくして犠牲にされようとする法益が防衛さ. このような緊急避難の法的性質論と第三者の対抗行為の. れないでよいとは思えないからである」 。というのも「自己. 刑法的評価を議論する意味はあるだろうか。報告者はある. の責任または不運によって危難に直面した者を保護するよ. と考えている。2点に分けて確認したい。. りは、なんらの理由なくしてその危難を転嫁されようとす. (1) ISP の連携環境における課題. る第三者をこそ、いっそう厚く保護すべき」だからである o。 (2) 二分説. 日本の利用者に対するサービスを提供するプロバイダー であっても、そのサービスを複合化し様々な他のプロバイ. これに対して、緊急避難の本質を基本的に違法性阻却と. ダーと連携するなどの形態をとっているといえよう。クラ. するたちばから第三者に忍受義務を認める見解が存在する。. ウド・コンピューティングの標語で表される複合的なサー. 「第三者の側のわずかな損害で避難者の命が救われる場合. ビス形態にそれは代表される。. にまで、正当防衛による対抗を認めるのも妥当」ではなく、. そうしてみると、もし、通信の秘密侵害が正当化はされ. 「社会連帯つまり助け合いの要請から、事後の損害賠償を. ないが免責されるだけであり、侵害の違法性は残るとする. 条件として正当防衛権が『買い上げられ』る。完全に適法. とそれに対する対抗行為も正当とみることができる可能性. な緊急避難とは、このように、危難を転嫁される第三者に. を残すことになる。安定的なルールを考える場合には、こ. 「社会連帯」を理由とする危難甘受義務が認められる場合. の場合の犯罪不成立たる法的性質は基本として違法阻却. をいう」とするものである。この見解のばあい第三者が正. (正当である)とする必要ががあるだろう。. 当防衛を行う可能性も一定の条件のもとで(「『二分説』の. (2) ドイツ法 Notstatd と英米法 Necessity. いう『法益同価値』の場合)認めるという広がりをもたせ. 先 に 述べ た 法 的性 質 の2 分 説は 、 ド イツ 法の 法 制 度. た構成を採用しているp。. (Notstand)も参考にしたものである。ドイツ法では、現在、. (3) 違法阻却説. 免責的緊急避難(上記では責任阻却的性質をもつ)と正当. 違法阻却説として第三者のとりうる態度についての広が. 化する緊急避難の 2 条を用意しており、成立要件および法. りを明確にし、第三者の毀損忍受義務を認める必要のない. 的性質を異なるものとしている(上記の理由付けに社会連. ことを明言するものとして以下がある。「緊急避難は「100. 帯を取る部分については必ずしも見解が統一されている訳. の利益が失われようとする場合、50 の利益を犠牲にしても、. ではない。正当化には、法益の性質ないし程度の著しさが. 差し引き 50 の利益が守られるほうが社会全体の観点から. ある場合を法文上求めている。. や有用であるという社会功利主義的観点から違法阻却を認. また英米法における類似概念としての Necessity ににつ. めるもの」であり「緊急避難行為は刑法上正当化される」。. いてもそれが正当防衛(self-defence)と対比したときに、の. 毀損被害者である第三者は「毀損行為を甘受する義務はな. ようにな性格を持つかという観点からは争いがあるときに. いから」、「毀損行為を避けて逃げることは可能」だが「緊. 緊急避難論でいう違法阻却ないし正当化の性質をもつもの. 急避難として正当化される以上、これに対する正当防衛は. として考えられているとはいえない。. 認められない」。さらに一定のばあい緊急避難行為者もしく. (3) 小括. は危難を生じさせた者(民法 720 条 1 項但し書き)に対する 損害賠償請求が可能である(民法 709 条)と付言するq。. 以上から、ガイドライン化にあたってはより手続的な点 を重視し、正当業務ないし法令行為としての性質を備える. 以上によって、緊急避難の本質と第三者の態度の刑法的. べきであろう。そのうえで、緊急避難の法理(の少なくと. 評価に関する学説を網羅しているわけではない r。しかし、. も一部)を参照する意義は大きく損なわれるものではない. o 植松正『再訂刑法概論Ⅰ総論』,1974, 222-223 頁。 p 松宮孝明『刑法総論講義 第三版』,2004 成文堂 q 西田典之『刑法総論』,2006、弘文堂 r 現行日本国刑法典の成立以後の緊急避難の法的性質をめぐる議論の全体 については、赤岩順二「刑法における緊急避難論の再構築」 (2009 年 3 月、. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. が。また違法阻却事由ないし違法減少事由としては被侵害 者の同意という根拠が考えられるので、制度設計において. 博士学位論文(明大))に譲る. 6.

(7) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report は併せて検討する必要がある。 ひるがえって考えると、たとえば生命に対する侵害が切. Vol.2013-EIP-62 No.5 2013/11/21. の面について理論的および実務的整理を行うことが求めら れるだろう。. 迫したような状況においては緊急避難規定がそのまま適用. プロバイダーが国境を跨ぎ連携し、ブロッキングが場合. されるべき状況はありうるが、サイバー空間がなお空間と. によっては他国プロバイダーや利用者の権利侵害にもあた. しては比喩的なものであり、われわれの生命身体との密接. るという可能性も大いに考えられるところから、法的性質. 度が高くなっているとはいえなお距離を保ち得ている状況. の問題と連動しうる第三者の対抗行為の法的評価という問. では、その間にあって「より少ない侵害の手段」を選択し. 題は、第三者の対抗行為は別途また独立の要件として考え. ていく技術的な叡知が求められているといえよう。そして、. るという考え方もとれないことはないがそれでは安定的な. 様々な武器等のなかに組み込まれたコンピュータやネット. 運用をもたらすガイドライン化が難しいといえる。このよ. ワークのこと考えると、そのこと自体の理論的検討に取り. うに実務上重要な問題と関連していると考えられる。. 組まなければならない状況になっているのかもしれない。. (3) 残検討課題. 5. おわりに (1) 自殺予告と児童ポルノについてのガイドライン. 第一にプロバイダー責任制限法における諸論点をふまえ た比較検討について課題が残っている。第二に、通信の秘 密侵害罪の法的性質と成立要件についてそもそもの制度趣. 自殺予告については、法益が生命であり生命の危機への. 旨も含めて検討しなければならない。第三に、サイバー攻. 切迫した危険がありうる状況も多く、また自殺関与罪もま. 撃に対する防衛における不要な削除・過剰なブロッキング. た犯罪であることから、自らの関与形態を避けるため、緊. の観点は防衛的緊急避難論の観点から検討すべき余地があ. 急避難法理をより直接に参照する動機と理由があったと考. ると考え別途検討したい。第四に、プロバイダー自体の犯. えられる。とはいえその後の運用実態等を検証し、いった. 罪成立要件(たとえば不作為による成立要件)についても. ん定められたガイドラインの提示する手順をあらためて見. 別途検討したい。. 直し、他のとりうる手段の整備をすすめてみると、緊急避 難法理のもっている緊急行為としての性質は必ずしも現在. 謝辞. の段階としては支えとして必要ないのではないかとも考え. 社会的に喫緊の課題について、基本的原理に遡り検討を加. られる。. え、ガイドラインにまとめられた検討メンバーの皆様に敬. 自殺予告対応ガイドラインの場合には、主として、プロ. 意を表し謝辞としたい。. バイダーが警察からの開示要求に対して情報提供を行う場 合の、通信の秘密侵害罪の不成立要件を満たすためのガイ. 参考文献. ドライン作成が意図されていた。これに対して、 「児童ポル. 1) Ulrich Sieber, “Mastering Complexity in der Global Cyberspace: Harmoization of Computer-Related Criminal Law”, in Milleille Delmas-Marty/Mark Pieth/Ulrich Sieber (ed.), Les chemins de l’harmonisation pénale,2008)(ウルリッヒ・ズィーバー(甲斐克則・ 新谷一朗訳) 「グローバルなサイバースペースにおける複雑性の制 御」(甲斐克則・田口守一編『21 世紀刑法学への挑戦-グローバ ル化情報社会とリスク社会の中で-』 (2012、成文堂)381-471 頁) 2) 総務省総合通信基盤局消費者行政課『改訂版 プロバイダー責 任制限法』(2011、第一法規) 3) 堀部政男(監修)『プロバイダ責任制限法 実務と理論 -施行 10 年の軌跡と展望- (別冊 NBL No.141)』(2012、商事法務) 4) 「インターネット自殺予告事案への対応に関するガイドライン」 (2005 年 10 月)(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/others/gaido.pdf, 2013 年 10 月 1 日閲覧) 5) 児童ポルノ流通防止協議会「ブロッキングに関する報告書」 (平 成 22 年 3 月)(http://www.iajapan.org/press/pdf/siryou5-20100325.pdf , 2013 年 10 月 1 日閲覧) 6) 安心ネットつくり促進協議会「法的問題検討サブワーキング報 告書」(平成 22 年 6 月) (http://good-net.jp/usr/imgbox/pdf/20110411182444.pdf, 2013 年 10 月 1 日閲覧) 7) 川端博『刑法講義総論』(2013, 第 3 版,成文堂) 8) 植松正『再訂刑法概論Ⅰ総論』(1974、勁草書房) 9) 松宮孝明『刑法総論講義 第三版』(2004 成文堂) 10) 西田典之『刑法総論』(2006、弘文堂) 11) 平野龍一『刑法総論Ⅰ』(1972,有斐閣) 12) 赤岩順二「緊急避難への対抗と毀損忍受-ヘーゲル緊急権論 の再解釈を中心に」(明治大学社会科学研究所紀要 45/ 2, 195-211). ノ排除総合対策」のなか検討さればガイドラインでは手法 として「ブロッキング」を手段とする点で通信の秘密とよ り直接に関連しているといえよう。 児童ポルノ排除総合対策を契機として作成されたガイド ラインでは、緊急避難の法理が詳細に検討されているが、 「危難の現在性」、すなわち緊急行為による犯罪不成立事由 という性質として、 ガイドラインとしての性質からみると、 法理の参照はともかくとして根拠とはなりえないように思 われる。 (2) 緊急避難の法的性質論の意義 緊急避難の法的性質については、違法阻却一元論以外の 学説も根強く、それには、相応の根拠があると思われる(違 法阻却説をとる平野龍一博士の「これはかなり割り切った 『社会的な考え方』」(同『刑法総論Ⅰ』,1972, pp.229-30) という表現もそのことを示している考える) 。 比較法的にみて相応するドイツ法の Notstand、英米法の Necessity についても正当防衛(Notwehre、self-defence)との 比較において違法阻却性(正当化性)については性質が異 なる部分が認められる。ISP の国際連携などでガイドライ ンを論じる場合に、より手続的な面を検討し正当業務行為. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. 7.

(8)

参照

関連したドキュメント

るにもかかわらず、行政立法のレベルで同一の行為をその適用対象とする

社責任の追及事例において,問題となった違法行為に対する各被告取締役の寄

第三世界諸国は︑その対応が東西いずれかの側に二分される︒東側と同様に︑アテネ事件とベイルート事件の関連

るとする︒しかし︑フランクやゴルトシュミットにより主張された当初︑責任はその構成要素として︑行為者の結果

Donaustauf,ZiegenrOck,Remscheid

「緊急時 のメンタルヘルスと心理社会的支援 に関する、機関間常設委員会 レファレンス・グループ(IASC

分野 特許関連 商標関連 意匠関連 その他知財関連 エンフォースメント 政府関連 出典 サイト BBC ※公的機関による発表 YES NO リンク

 東京スカイツリーも五重塔と同じように制震システムとして「心柱制震」が 採用された。 「心柱」 は内部に二つの避難階段をもつ直径 8m の円筒状で,