「地域におけるがん患者支援体制の構築 〜地域で支える在宅ホスピスの可能性についての調査・研究〜」
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(2) [ 目次 ] 初めに . . . 1.. 本研究の背景 . 2. 本研究の目的と具体的な取組み. . I. がん患者をとりまく状況 . 1. がん対策. . 2. まちなかカフェ・がん相談室. . 3. 緩和ケア病棟でのインタヴュー. . 4. ガイドブック『がんと診断されたら. がんと向き合うためのノート』作成. II. 患者のナラティブ(語り) . 1. まちなかカフェ・がん相談室での患者のナラティブ(語り) 2. 緩和ケア病棟での患者のナラティブ(語り) 3. その他のがん患者のナラティブ(語り). . III. . 在宅ホスピスをとりまく状況. 1. 終の住処の神話 . 2. がん患者を巡る最近の動き. 3. 在宅医療•介護あんしん 2012 4. 在宅ホスピスの現状 . 5. 在宅ホスピスの課題と展望. . IV. . がん医療の地域連携. 1. 兵庫県のがん医療の状況. . 終わりに 1. 地域で支える在宅ホスピスの可能性について . 2.
(3) 初めに 1. 本 研 究 の 背 景 少子高齢化がすすみ本格的な超高齢社会となった現在、医療現場では病院から在宅 (地域)へ、福祉の現場においては施設から地域(在宅)へという流れの中で、どのよ うな形で地域住民を支えていくかが医療(看護)•福祉(介護)の課題となっている。 そのような中、医療や介護を必要とするがん患者(以下敬称略)は、治療に希望をつな ぎつつ,自らの終末期の過ごし方も念頭にいれて治療に当たらなければならない。しか し、現在のがん医療は、治療が中心となり,本来は疾患の初期から緩和ケアも含めた情 報が主治医から患者に提供され(インフォームドされ)なければならないが、実際は治 療の選択のみが提示されるという傾向にある。したがって,がん患者の中には,治療効 果がなくなった段階ではじめて終末期ケアの問題を突きつけられるといった状況にあ る者も少なくない。がん患者の中には,最後はホスピスで過ごしたいと考える者もいれ ば、できれば自宅で最期を迎えたいと願う者もいる。厚生労働省の「終末期医療に関す る調査 」(1) によれば、国民の約 60%以上が自宅で療養したいと希望しているが、そう したがん患者の希望とは裏腹に、昨今では核家族が増え、家族のあり方も変化している ため、従来のように患者を家族で支えるということが難しくなってきている。また、独 居で身寄りのない患者も増えているという現実もある。さらに、政府の押し進める医療 費削減は、「がん難民」と呼ばれる<行き場のないがん患者>を増やし、その結果、ホ スピスに入れず最期を迎える人や、在宅を自ら希望するのではなく、在宅を余儀なくさ れるという状況をつくっている。 がん対策基本法の成立以来、がん診療拠点病院制度が設けられ、拠点病院の地域連携 室や患者支援センターの役割として,がん患者に対する相談支援および情報提供が掲げ られているが、そうした機関の存在自体を知らないがん患者は予想外に多く、特に施設 外部からの利用率は低い。また地域のがん診療の連携協力体制も十分だとは言い難い状 況である。 本論は、以上のような現状を踏まえ行った実証研究についての報告である。 2. 本 研 究 の 目 的 と 具 体 的 な 取 組 み 本研究の目的は、(1)がん患者の自立と、(2)がん患者の在宅での支援体制の構築の可 能性を調査・研究することにある。 (1) がん患者の自立 1)まちなかカフェ・がん相談室 がん患者の自立とは、がん患者が,お任せでもなく、また押しつけでもなく、自分た ちの望むケアのあり方、終末期のあり方を選択できることである。そのためにはがん患 者への適切な情報提供が必要で,適切な情報提供ががん患者自身のセルフケア能力の向. 3.
(4) 上につながるかどうかを調査した。 具体的な取り組みとしては、患者自身が自らの力で情報を集め、自らの力で医療に臨 むことができる場として、さらに患者同士が情報を交換し合い支え合うことができるよ うな情報の発信場所として「まちなかカフェ・がん相談室」(2) を開いた。患者同士が体 験を共有し、情報交換する場としては、患者会があるが、がん相談室と患者会との違い は専門家による個別の情報提供にある。さらにカフェの場が第三者的(中立的)な情報 提供の場となることである。 2)がん患者のためのガイドブック作成 患者の自立のための取組みの2つ目は,患者自らが、家族や医療•介護従事者とコミ ュニケーションを取りながら、恊働してがん医療に向き合っていくことのできる方法を 探ることである。そのために家族や医療•介護従事者との恊働のあり方やニーズを調 査・研究し、患者と家族、患者と医療•福祉従事者とのコミュニケーションのツールと して、ガイドブック(『がんと診断されたら. がんと向き合うためのノート』、以下ガイ. ドブック)を作成した。 患者のニーズの情報源は、①まちなかカフェ・がん相談室での参加者のナラティブ(語 り)、②緩和ケア病棟に入院中の患者のナラティブ(がん治療の振り返り)③遺族を含 めたがん患者ならびに家族のナラティブなどである。 (2) 地域におけるがん患者支援体制の構築. 地域で支える在宅ホスピスの可能性 . 本研究のいま一つの目標であるケアの恊働は、恊働の領域を、がん患者・家族と医療・ 福祉従事者という個人レベルから、地域での連携・恊働へと展開させ,地域の医療・福 祉機関同士の連携によるがん患者支援体制の可能性について研究することである。 そのため地域で在宅ホスピスケアを行っているある施設の在宅カンファレンスに参 加し、在宅ホスピスにおける問題点や要望を調査し、地域における自発的恊働に基づく 支え合いによる在宅ホスピスの可能性について、さらには地域におけるがん患者支援体 制の構築の可能性について探索した。 . I がん患者をとりまく状況 1. が ん 対 策 平成22年(2010)厚生労働省による人口動態統計(確定数)の概況(3) よれば、約2人に1 人ががんに罹患し、約3人に1人はがんで死亡するといわれている。しかし、その数値 は高齢者の数を入れての話で、高齢者を抜きに考えると、がん罹患者は4人に1人とも 言われている。国立がんセンター「がん情報サービス」(4) によると、がん死亡数は、 男女とも増加し続け、2011年のがん死亡数は、1985年の約2倍、がん死亡数の増加の主 な原因は人口の高齢化と発表している。年齢階級別死亡率の 年次推移(1965年、1985. 4.
(5) 年、2011年の比較) ( 図 1 ) によると、全がんでは男性では40歳代から60歳代の死亡 率は変化が小さく、80歳代以上の死亡率が増加、女性では40歳代から60歳代の死亡率が 減少し、85歳以上の死亡率が増加している。 ( 図 1 ). . 以上から、最近の国のがん対策は、がんサバイバー(がんと診断された時から一生サ バイバーであり続ける為に、診断・治療時、再発監視時、完治後の各々に異なるニーズ とケアを理解し、可能な限り高い質で生きていこうとするがん患者)に焦点が当てられ、 大手保険会社とがん情報に関する包括的な連携協定を締結し、その結果、保険会社は「生 きるための」がん補償を手厚くしている。 またがん対策と罹患率、死亡率推移との関係は、年齢調整罹患率が1985年以降増加、 年齢調整死亡率は1990年代後半から減少している。がん対策推進基本計画では、75歳未 満年齢調整死亡率を10年間で20%減少することを目標とし(2005年92.4 → 2015年73.9/ 人口10万対)、2011年の75歳未満年齢調整死亡率は、2005年からの6年間で10.0%減少 した(92.4 → 83.1/人口10万対)。 平成19(2007)年に施行された「がん対策基本法」に掲げられている①がん予防及び早 期発見の推進や、②がん医療の均てん化の促進に掲げられている専門的な知識及び技能 を有する医師、医療機関の整備等、③研究の推進に掲げられているがんに関する研究の 促進 、研究成果の活用 、医薬品及び医療機器の早期承認に資する治験の促進 、臨床 研究に係る環境整備など積極的治療に関する放射線療法・化学療法の推進や医師の育成 などは向上していると思われるが、がん患者の療養生活の質の維持向上や、がん医療に 関する情報の収集提供体制整備等は、いまだに不十分であることが本研究によりわかっ. 5.
(6) た。その中でも、治療の初期段階からの緩和ケアの実施は、緩和ケアチームをもつ施設 が増えているにもかかわらず実際的にはあまり功を奏してはおらず、ぎりぎりまで積極 的治療を施し、治療の効果がなくなって現実を知るという患者が少なくないように思わ れる。そのネックとなるのは、積極的治療を重視する主治医による患者の抱え込みと主 治医と緩和ケアチームとの力関係が旧態依然であることに拠るものではないかと推測 される。 また、緩和ケアに対する国民の意識が遅れていることにも拠る。平成 21 年 9 月の内 閣府世論調査「がん対策に関する世論調査」(5) によると、国民の緩和ケアのイメージ の第1位は「終末期の患者だけを対象とすると思っていた」で、病院、緩和ケア病棟な どの限られた場所でしか行われないものと思っている人が第3位に続く。痛みなどの身 体症状を対象とすることはある程度広まっている(第5位)が、身体的な痛みだけでな く、精神的な痛みや社会的な痛み、そしてスピリチュアルな痛みまでケアの対象になっ ていることはあまり知られていない。さらに治療と平行して行われていることはあまり 知られておらず、治療が終ってから緩和ケアという認識をもっている人が多いという結 果が、本研究によるインタヴューからも得られた。また、聞いたことはあるが、意味ま で知っている人は少なく、知らなかったという人は第4位であった。 同様の世論調査によると「相談支援センターの認知・利用度」に関しては、「がん 診療連携拠点病院の相談支援センターを利用したことがあるか」を聞いたところ、①「知 っている」とする者の割合が 29.9%(「利用したことがある」2.1%+「利用したこと はないが,よく知っている」5.2%+「利用したことはないが,言葉だけは知っている」 22.6%)、②「知らない」と答えた者の割合が 69.4%となっている。性別に見ると,大 きな差異は見られない。年齢別に見ると,「知っている」と答えた者の割合は 60 歳代 で、「知らない」と答えた者の割合は 20 歳代、30 歳以上でそれぞれ高くなっている。 問題はがん患者への相談支援と情報提供の実情である。がん対策基本法では、患者と その家族の悩みや不安を汲み上げ、患者とその家族にとってより活用しやすい相談支援 体制を実現するために、都道府県に1つと地域に複数がん診療連携拠点病院を設置し、 相談支援窓口を設けた。がん拠点病院の「相談支援センター」は、予防などに関する一 般的な情報や、地域の医療機関や医師などに関する情報の提供、セカンドオピニオンの 提示が可能な医療機関の紹介、病気上の相談などに対応しているとされている。しかし、 現実はほとんどが同施設の患者の退院・転院相談や医師や医療機関の紹介(リストを渡 すだけ)に終わり、外部からの具体的な相談に十分応えるものではない。その最大の原 因はマンパワー不足と、拠点病院のシステムにある。つまり、がん患者は原発と転移と では部位が異なり、診療を受ける科が異なるため主治医が変わり、相談してもたらい回 しとなる。例えば、原発が肺がんの患者は呼吸器内科にかかり、脳に転移した場合は脳 神経外科、肝臓に転移した場合は消化器内科にかかり、いずれも縦割りで連携がなされ ていないため、「今の悩みをどこで聞けばよいのか」という悩みが患者へのインタヴュ. 6.
(7) ーから聞かれた。 また、診察時間も2. 3時間待って2. 3分というのが現状で、患者の言葉を借りる. なら、「まるで教祖様の顔を拝みに行くだけ」という状況である。そこで患者支援窓口 にいくが、疾患に対する悩みは主治医に相談するように言われる。近医を受診しても、 がん専門でない医師からは知りたい情報は得られない。説明を求めても(がんの)専門 病院に行けと言われる。まちなかカフェ・がん相談室を訪ねてくる患者の中には、そう した相談窓口の存在さえ知らない人が多いのに驚かされた。さらに知っていても、「訪 ねても無駄」というあきらめの感情を抱いている人が多かった。 国立がんセンターのホームページ「がん情報サービス」(6) によると、本研究の対象 地域である兵庫県には 24 のがん診療連携拠点病院があり、県が推薦したうえで国が指 定するがん診療連携拠点病院(以下、国指定拠点病院)14 医療機関と、県が指定する 兵庫県指定がん診療連携拠点病院(以下、県指定拠点病院))10 医療機関がある。国 指定拠点病院及び県指定拠点病院は、相互に連携して、がん治療水準の向上に努めると ともに、緩和ケアの充実、在宅医療の支援、がん患者・家族等に対する相談支援、がん に関する各種情報の収集・提供等の機能を備え、地域におけるがん医療の充実を目標と している。兵庫県内のがん連携拠点病院の地図は(図 2 )のとおりである。 2012年5月現在 兵庫県内の癌連携拠点病院. H24年 10月 5日 現 在. 国 指 定 ( 14カ 所 ) 県 指 定 ( 10カ 所 ) 県立がんセンター 西神戸医療センター 神戸医療センター 神鋼病院 神戸大学医学部付属病院 神戸赤十字病院 神戸市立医療センター中央市民病院 . . 県立尼崎病院. 関西労災病院 県立西宮病院 兵庫医科大学病院 西宮市立中央病院 近畿中央病院 市立伊丹病 西脇市立西脇病院 県立加古川医療センター 姫路医療センター 加古川西市民病院 姫路赤十字病院 新日鉄広畑病院 赤穂市民病院 公立豊岡病院 県立柏原病院 県立淡路病院 . 7.
(8) . (図2). 兵庫県立がんセンターの取組みとしては、①市民向けセミナー(がん治療、がん予防)、 ②拠点病院の連携(医療者向け)、③緩和ケア病棟との連携、④在宅医療の支援、⑤相 談支援等がある。 がん診療連携協議会では、がん診療連携拠点病院の機能として求められている、がん 診療上の要件についての4部会とがんの地域連携パスWGを設置し、それぞれ検討会や セミナーを開催して、研修と情報交換を行っている。内容としては外来化学療法、放射 線治療、薬剤師セミナー、がん登録、などがあるが、いずれも医療者を対象とした研修 会である。さらに、がん医療に携わるすべての医師を対象とした緩和ケア研修会も多数 開催されている。医師、看護師、薬剤師ほかの全医療スタッフがチームを組んで、患者 の目線に立った最良のがん医療を行うよう心がけているとのことであるが、見る限りで は、医療者の視点に立ったもので、患者の視点に立った医療とは言い難い。 緩和ケア病棟との連携としては、緩和医療を切れ目なく行うための、病院、診療所、 ホスピス等との連携体制構築、治療の初期からの緩和医療の推進などが行われている。 各地域での連携診療に関しては、「がん相談支援センター」や「地域医療連携室」を通 して、近隣の病院や診療所との連携を密にし、がん患者の回復と社会復帰を支援してい る。協議会を通して地域連携に必要な情報を共有し合い、県内のどこでも、がん患者が 安心して納得のいく治療を受けられるよう努力することが掲げられているが、現段階で は理念的な取組みに終り、患者が今何を求めているかに関しては十分なニーズの把握が なされておらず、現実的な取組みには至っていない。 県立がんセンター(2012 年 6 月 1 日∼7 月 31 日)における相談内容は( 図 3 )の通 りである。また、相談者の内訳は( 図 4 ) の通りである。国の施策もがん登録1 など 1 がん登録とは、がん対策の基礎となるがん医療の実態データーを国が把握するため、各院内のがん患者の診断、治療 内容などのデーター登録の実施を推進し、それらを収集し、分析するための対策。. 8.
(9) がん医療にかかわる情報の収集には積極的であるが、がん情報の提供に関しては十分と は言いがたい。同じく、国立がんセンターのホームページ「がん情報サービス」(6) では、 がんに関する様々な情報が掲載されているが、それらはあくまでもインターネットを使 える環境にあることを前提としており、そうした環境にない高齢者にとって入手可能な 情報はかなり制限されている。 (図3). . •. I 一般的ながん治療に関する相談. •. II. 地域の医療従事者・施設の情報. •. III. セカンドオピニオン受けることができる施設の相談. •. IV 患者・家族の療養上の相談談. •. V. •. VI ホスピスケア病院の紹介. •. VII. •. VIII がん関する医療費に関すること. •. IX X. 緩和医療. 在宅移行に関する相談. 社会福祉・介護に関する相談 その他. ( 図 4 ) 相 談 者 の 内 訳 相談件数 427 件のうち他の医療機関の 患者や家族、一般からの相談件数 142 件で、全体の約3割。外来患者・家族 が相談者の約半数を占めており、前年 度から相談者区分の割合変化はみられ ない。 . 各拠点病院の相談件数(2012 年) 施設名. 相談件数. 他の医療機関の患者や家族、一般からの相談 件数 . 県立がんセンター. 427. 142(33%). 神戸医療センター. 193. 23(12%). 神戸大学付属病院. 63. 19(30%). 関西労災病院. 118. 39(33%). 9.
(10) 兵庫医科大学 . 243. 37(15%). 姫路赤十字病院 . 264. 14(5%). 姫路医療センター . 241. 17(7%). 神戸中央市民病院 . 50. 15(30%). . <国立がんセンター がん情報サービス> より . 平成 24 年のがん対策推進計画では「働く世代や 小児へのがん対策の充実」が盛り込 まれ、がん患者の就労支援など比較的若年層の治療中心のがんサバイバーの支援に力点 が置かれている。以上から、治療を目的としないがん患者やがんという疾患をもつ高齢 者に対するフォローアップが手薄であることが、上記の世論調査からも見てとれるし、 がん患者のインタビューやがん相談でもうかがえた。 そのような実情から、受診している施設から独立した第三者機関の相談窓口の必要性 と、がんと診断されたときの手引き書の必要性を感じ、ガイドブックを作成した。 2. ま ち な か カ フ ェ ・ が ん 相 談 室 地域で支える在宅ホスピスケアに関する具体的な取り組みのひとつとして、自立に基 づく在宅ホスピスの可能性を探るため、地域(神戸市灘区)のカフェ(カフェ P/S http://www.cafe-ps.com/)で「まちなかカフェ・がん相談室」を開き,参加者から患 者・家族のニーズや患者のケアに関わる人の問題や悩みを聞いた。 開催は月に1回、いずれの会もがん専門家を招いて相談室を開くが,基本は参加者同 士の情報交換、ピアカウンセリング 2 の場とし、患者の自立、患者同士の共助のあり方 を調査する。必要な場合は専門家によるアドバイスも行うが、相談内容は相談者が必要 な情報入手の方法(たとえば、インフォームド・コンセントやセカンドオピニオンにつ いて)、治療やケアを選択するために必要な医療者とのかかわり方、コミュニケーショ ンのとり方などを主とし、具体的な治療方法に関するアドバイスはしない。むしろ、患 者が自分にとって最良の治療やケアを選択できるようにアドバイスすることを主たる 目的とした。相談室開催のあとは研究者と専門家とで振り返りを行い、当日の問題点を 抽出して検討した。さらに、1年間の相談の結果をもとに、共同研究者と患者・家族の ニーズをまとめ,自立に基づく在宅ホスピスケア実現の可能性を検討した。 開設にあたってはチラシやリーフレットを作成して市内の公共の施設、医療施設の外 来に設置して貰ったが、すべての施設に理解が得られるものではなかった。結果的には 新聞への案内記事の掲載が主な情報源であった。 これまでの活動履歴と検討課題は以下のとおりである。アドバイザーとしてがん専門 の看護師とピアカウンセラーとして患者のウェル・リビングを考える会の会員1名が参. 2 ピアカウンセリングとは、同じ背景を持つ人同志が、対等な立場で時間を対等に分け合って、話しを聞き合う精神的 なサポート。. 10.
(11) 加した。 (1) 活 動 履 歴 回 . 日付 . アドバイザー . 参加者 . 第 1回 . 3月20日(土) がん性疼痛看護認定看護師 . 患者 3名 . 第 2回 . 4月27日(土) 緩和ケア認定看護師 . 患者 3名 . 第 3回 . 5月25日(土) がん性疼痛看護認定看護師 . 患者 3名 . 第 4回 . 6月22日(土) ホームホスピス 看護師 . 患者、家族 5名 . 第 5回 . 7月27日(土) がん性疼痛看護認定看護師 . 患者 3名 . 第 6回 . 8月24日(土) がん性疼痛看護認定看護師 . 患者 3名 . 第 7回 . 9月28日(土) 訪問看護ステーション看護師 . 患者 4名 . 第 8回 . 10 月26名(土) がん化学療法看護認定看護師. 患者、家族 4名 . 第 9回 . 11 月30日(土) がん専門認定看護師 . 患者・家族 6名 . 第10回 . 1月25日(土) がん化学療法看護認定看護師 . 患者 2名 . 助成期間での参加状況は上記のとおりであるが、今後も開催を継続していく予定である。 (2) 検 討 課 題 1) 情報伝達の仕方 がん相談室は、参加者のニーズに応えるものとなり参加者は徐々に増えていったが、 新聞で告示記事を掲載してもらうなど宣伝に努めたが、なかなか情報が行き届かず、宣 伝不足は否めなかった。今後はどのような手段で相談室の存在を知らせていくか、パン フレット作りや告知方法が検討課題となる。また、案内文の内容も検討の余地があり、 ①専門家の資格を明記すること、②安全な場所であること(守秘義務の明記)を明確に することなどが検討された。さらに、③当日参加も可能とするものの、予約制にするか どうかは引き続き検討課題となった。参加を希望していても、当日の体調に左右される こともあるので、「予約なし」で「待つ」という態勢を継続することにした。 2) 参加に際してのルールづくり ①アドバイザーの個人情報に関するルール作り ○ アドバイザーの所属を言うか言わないかは当人に任せるが所属施設の内情はいわない。 ○ アドバイザーに直接連絡があっても特別扱い(個人的な関わり)はしない。 ○ こちらから終了を促さない。「疲れたらいつでも退室が可能なことを伝える」のみ ②参加者のルール作り . 参加者の一人が決めつけによる意見を言われたことから、参加者へのルールを作った。 参加者はそれぞれ病気や環境も異なることから、ルールを記載した用紙を参加者に渡 . 11.
(12) して理解を求めた。内容は、安全な場であること(プライバシーを守る)、他の人の 話は最後まで聴くこと、安易なアドバイスや励まし、比較、評価を控えることなどを 約束とし、入退室は自由であること、アドバーサーは連絡先を教えるなどの個人的な かかわりは持たないことを伝えた。 3) 環境作り カフェに必要なことは、参加者が安心して語り合える場であること、さらに、病状(骨 転移など)に配慮して椅子、クッションなど参加者が患者であることに配慮することで あった。入退室は自由ではあるが、参加者の体調や疲れなどにも配慮して長時間となら ないよう心がけた。 (3) 効 果 ① 参加者は初めは緊張されていたが、帰るときは表情がおだやかで笑顔が見られた。 ② 医療機関や公的機関と利害関係が発生しない場での相談というスタンスを維持し ていくことの大切さを再確認した(がん患者やその家族にとってかけこみ寺として の位置づけとなっている)。 ③ 情報提供が功を奏し、ホスピス面談につなげることができた。 ④ 次の回までに目的を実現すること(旅行に行く等)ができた人もいた。 ⑤ 情報の提供は言うまでもなく、参加後は、参加者の表情が明るくなっていくことが わかり、意義のあることであると実感できた。( http://blog.cafe-ps.com/ ) 当初は年 12 回の予定であったが、参加者ががん患者であることから、盛夏の 8 月と 年末の 12 月は避けて 10 回となった。しかし、1ヶ月という期間は、参加者の病状が大 きく変化する期間でもあり、その間に情報が途切れてしまうこともあった。理想はいつ でも相談したいときに相談できる場を用意しておくことであろう。また今後、カフェの 場所は、できるだけアクセスのよいところを選ぶ必要を感じた。しかし、参加者のニー ズを探ることができ、『がんと診断されたら. がんと向き合うためのノート. 』の作成. につなぐことができた。 3. 緩 和 ケ ア 病 棟 で の イ ン タ ヴ ュ ー がん患者のニーズと課題を探るために、緩和ケア病棟の入院患者ならびにその家族に インタヴューを行った。 (1) 研究対象者の選択 緩和ケア病棟に入院中の患者を対象にインタヴューを行った。研究に際しては、施設 の倫理委員会と管理委員会から承諾を得て行った。研究協力者に対しては、以下を説明 の上、同意を得た。 . 12.
(13) □ 研究の目的 ( ① ) □ 研究の方法( ② ) □ 研究の場所と期間( ③ ) □ 研究への参加が任意であること(研究への参加は任意であり、参加しないことで不利益な対応 を受けないこと。また、いつでも同意を撤回でき、撤回しても何ら不利益を受けないこと。) □ 個人情報の取り扱いについて( ④ ) □ 研究終了後の対応と研究成果の公表について( ⑤ ) □ 問い合わせ先および苦情等の連絡先( ⑥ ) □ その他(希望など) . ①研究の目的 患者自らが、家族や医療•介護従事者と恊働してがん医療を考えていくことのできる 方法を探るため,ガイドガイドフック(『がんと診断されたら のノート. がんと向き合うため . 』)を作成することを目的としていることを説明し、了承を得た。 . ②研究の方法 患者ががんと診断されてから治療やケアを受ける際のニーズを調査するため、緩和ケ ア病棟に入院中の患者、ならびにその家族から,がんと診断されてからこれまでのケ アに関わる体験についてのインタヴューを行った。インタヴューは、これまでの治療 の中で特に困ったことや,必要だと思われる情報入手の方法、治療やケアを選択する 際の医療者とのかかわり方、悩みや問題などについて質問した。 ③研究の場所と期間 患者の入院期間中、緩和ケア病棟で。 ④個人情報の取り扱い . 調査・研究対象者へのアンケートやインタヴューを行う際には十分な倫理的配慮を 行なった。 1)対象者には本研究の目的、方法、具体的な協力内容を明らかにし、協力者か らの同意を得て行なった。 2)自由参加、途中辞退が可能なことを説明した。 3)プライバシーへは十分配慮し、個人が特定されないように匿名とすること、 記録物は流出のないよう厳重に保管することを約束した。 4)得られた情報に対しては、個人情報を十分保護し、慎重に取り扱った。 5)安心して本心を語ることができる環境(場所)で行った。 . ⑤研究終了後の対応と研究成果の公表について 研究成果の報告に関しては、個人、団体が特定されないよう十分配慮し、得られた 情報は一定期間保管し、その後、廃棄することにした。 ⑥実施者の氏名、問い合わせ先および連絡先を明記した用紙を渡した。 . 13.
(14) (2) データー収集と分析 2013 年 3 月. 2014 年 1 月まで個別にインタヴューを行った。本研究で採用する方法. は、数値化可能なデータを用いて分析する量的研究とは異なり、数値化しにくい対象者 の言葉(ナラティブ)に基づいて行う質的研究である。さらに事前に大まかな質問項目 を用意し、その内容によってさらに詳細を質問していく半構造化インタヴューの方法を 採用した。インタヴューに際しては、録音は採らず、本人の同意を得て、発言をその場 で筆記し、記録として残していった。メモをとることがふさわしくないと判断した場合 は、インタヴューのあとで記憶をもとにノートをとった。 インタヴューは以下のプロセスについて行なったが、すべての項目について質問は行 わず、患者の話の流れに沿って必要な項目についてのみ質問することもあった。 1) がんと診断されたとき、2) 治療が開始されてから、3) 緩和ケアを勧められたと き、4)ホスピス(緩和ケア病棟)に入院するまでについて、インフォームド・コンセ ントが患者ならびに家族に適切に行われていたか明らかにし、患者の問題点とニーズを 探った。質問事項は以下のとおりである。 ① 主治医の説明は十分であったか。 ② 説明は理解できたか。 ③ それらは納得のいくものであったか。 ④ 知りたかったこと(主治医に質問したかったこと)は何か。 ⑤ それらについて主治医に説明を求めたか。 ⑥ 自分の希望や思い、それらの拠りどころとなる価値観や人生観を伝えたか。 ⑦ 主治医以外で相談できる医療者はいたか。 ⑧ インフォームド・コンセントに家族は立ち合ったか。 ⑨ インフォームド・コンセントに関する理解は十分か。 ⑩ セカンド・オピニオンは求めたか。 ⑪ セカンド・オピニオンに関する理解は十分か。 ⑫ 主治医の呈示した方針に同意できたか。 ⑬ 合意に至ったか。(患者と家族/患者と医療者/家族同士) ⑭ 対話(コミュニケーション)はできていたか。(患者と家族/患者と医療者 /家族同士) ⑮ 圧力と感じることはあったか。 ⑯. つらかったこと/不安だったこと/耐え難かったことはなかったか。. ⑰ 精神的ケアはなされていたか。 以上を共通項目とし、さらに治療中は、治療をやめたいと思ったことはあったか、治 療を中止して緩和ケアを勧められたときはどのような気持ちだったかを追加し、ホスピ ス入院までについては、ホスピス入院までの経過(転院、在宅など)や、ホスピスにつ. 14.
(15) いての情報はどのようにして得たか、ホスピス入院の相談窓口の対応はどうだったか、 ホスピス以外の選択肢はあったか(在宅,ホームホスピスなど)について尋ねた。 4. ガ イ ド ブ ッ ク 『 が ん と 診 断 さ れ た ら. がんと向き合うためのノート. 』 作 成 . まちなかカフェ・がん相談室における相談内容をもとに、がん患者が医療・ケアを受 ける際の家族や医療・福祉従事者との関わりに関する希望、悩み、問題点(たとえば、 思いのズレ、言葉の行き違いなど)をまとめた。さらに、緩和ケア病棟の患者では、研 究の趣旨に同意が得られた患者を対象にインタヴューを行い、がんと診断されてからの 患者の思いやニーズを探った。 得られた結果から『がんと診断されたら. がんと向き合うためのノート. 』を作成し、. 相談室の参加者に配布するとともに、今後は、医療施設への設置を呼びかけたり、研究 会などで参加者に配布したりする予定である。 . II 患者のナラティブ(語り) がん相談室の参加者と緩和ケア病棟の患者のナラティブ(語り)をテーマごとに 10 項目に分類し、ガイドブックとなる『がんと診断されたら. がんと向き合うためのノー. ト』を作成した。 1. ま ち な か カ フ ェ ・ が ん 相 談 室 で の 患 者 の ナ ラ テ ィ ブ ( 語 り ) 1) いつから緩和ケアを考えるのか まちなかカフェ・がん相談室の参加者は、治療中の人が多く、お互いの境遇を共有し ながらも治療のことや抗がん剤に対する質問が多かった。話をきいていて難しさを感じ たのは、治療中の参加者に緩和ケア(ホスピス)の話をすることがためらわれたという ことである。なぜなら、ホスピス=死に場所という偏見はいまだに根強くあり、さらに 抗がん剤治療=生存への期待が大きいことや、初期に手術ができたら治ると思っている 人が案外と多く、積極的治療に期待を寄せている人が多いからである。そこで、ガイド ブックを作成し、がんと診断されたときから治療も含めどのようなケアがあるのか、療 養のプロセスをチャートで示すとともに、病院での治療以外にさまざまな選択肢がある ことを示すことにした。(☞ ガイドブック I. はじめに). がんに罹ったら、ただ治療のことだけを考えるのではなく、日常生活を支えるための 医療以外のケア(サポート)も必要となる。参加者の中には、病院での治療のことはわ かっていても、緩和ケア外来や在宅ホスピス(往診)のことや、介護保険が利用できる ことなどを知らない人が案外多かった。カフェの参加者にも、必要であれば緩和ケア外 来のあるホスピスや在宅ホスピス医の情報を提供し、住み慣れた地域でできるだけ自宅 で過ごすことができるよう手助けをした。 . 15.
(16) 2) 見捨てられ感の払拭 参加者の中には、積極的治療(抗がん剤や放射線の治療)を主治医に進められたが、 それらを拒むと、「じゃあ、もう通院しても意味がない」と言われた方がおられた。患 者は主治医に見捨てられたら、今後がんによる苦痛が出てきた場合どうしたらよいのか という不安をもつ人が多いので、在宅ホスピスも含め、他にもざまざまは方法があるこ となどの情報提供をする必要がある。この見捨てられ感からくる不安は、医療者が思っ ている以上に患者には強く、抗がん剤を勧められたら断れず、ぎりぎりまで治療を余儀 なくされ、最後は「抗がん剤の効果がなくなった」とホスピスを勧められるというケー スが多かった。「こんなにがんばったのに」という見捨てられ感は、緩和ケア病棟の患 者の声からもうかがい知ることができた。死に対する恐怖も否めないが,それ以上に死 までのプロセスにおける苦痛に対する不安が患者は大きいのである。そこで、これまで のこと、今後のことを整理していくための項目を設けた(☞ II 整理をしていきまし ょう)。自分の病気に対する情報を整理するプロセスは、自分の状況を受け入れるプロ セスでもある。 3) 医療者との対話 よく言われていることであるが、カフェの参加者からも、医療者は画像を見るのでは なく、患者を見て欲しいという声が聞かれた。つまり、病気をみて患者をみない主治医 への不信感が存在する。医療者との対話をどのようにしていくかも、納得のいくケアを受. けるためには必要不可欠である。結局、すべてが思い通りにいかなくても、最後は自分 で選んだのだという思いが大切なのではないか。そこで、ガイドブックに自分の希望す ること、希望しないことを書き込むためのスペースを設けた。 4) インフォームド・コンセント ホスピスの患者へのインタヴューで、予後が3ヶ月と言われたが、思ったより病気が 進行し、心の準備もできないままに今(ホスピス入院)を迎えているという人もいた。 確かに予後がどれくらいかという判断は難しいが、もう少し病状や治療のことも含め情 報の提供が適切になされていたらホスピスでの過ごし方も変わってきたのではないか と思う。自分らしく病気と向きあうためには自分の病気について正確な情報を得ること、 納得のいく選択ができることが必要である。そこで、インフォームド・コンセントとは、 手術時の同意書のようなものとは異なり、患者が医療者の説明を理解し納得した上で患 者が承諾するものであるという説明を加えた。さらに、セカンド・オピニオンを受けた 結果、かえってよくない結果になったことを悔いている患者もいたので、インフォーム ド・コンセントが適切になされているかを確認するための書き込みスペースを作った。 結果はどうあれ、患者本人が十分納得して選択することが重要である。 5) 家族の思い カフェには患者本人ではなく、患者家族も来られた。他の患者の話をきいて自分がな すべきことを考えたいという人である。その参加家族から、家族としてどこまでかかわ. 16.
(17) っていけばよいのかわからない、本人の思いをどこまでわかっているのかも不安という 声が聞かれたので、患者と家族との対話のツールとなる項目をガイドブックに設けた。 決めるのは患者本人であるが、病気と闘っていくためには家族の協力や理解が必要であ り、できるだけ本人と家族をはじめ家族間でも思いのズレを埋めていくことが必要であ るからである。(☞ガイドブック III 治療を受ける時に確認しておくこと) 治療のことばかりに目が向きがちであるが、患者の日常生活を支えるために家族とし て考えておかなければならないこともいろいろとある。治療以外で様々なサポートを受 けるためにはどのような資源があるのか、またどのような準備が必要であるか、患者の 思いに沿えるように、家族としてどのようなサポートができるのか、さらに、家族の精 神的なサポートも必要であることががん相談室から得られた。 6) ピア・カウンセリング まちなかカフェでは、同じがん患者同士のわかちあいの場として患者会の紹介もした が、カフェも患者会と同様、患者同士の情報提供や勉強会だけではなく、同じ仲間(ピ ア)としてお互いの苦しみや不安を分ち合うカウンセリングの場となる。参加者の中に は、不安で押しつぶされそうな人もいて、他の参加者からの言葉に支えられて元気にな って帰っていく人もいた。また参加者の中には、がんという病いをもった先輩として、 同じ患者を支えることが天から与えられたミッションであると語った人もいた。患者で ある(当事者である)という自覚に目覚めていくこともピア・カウンセリングの利点で ある。ただ、「がん相談」ということで参加された方にとっては、相談なのか「わかち あい」なのか漠然としていて、何を話せばよいのか、どのような立場で参加すればよい のかわからなかったという参加者もいた。今後はもう少し会の目的を「相談」を主とし たものなのか、わかちあい(ピア・カウンセリング)を主としたものかを明確にしてい かなければならない。参加者ががんサバイバーであることから考えると、そのニーズは、 やはり「相談」が主流となるべきものだと思われたので、今後は再検討を要する。 7) さまざまな情報 まちなかカフェにおける参加者の声を参考に、ガイドブックでは、治療方法以外のさ まざまなケア(サポート)の情報として「知っておきたいこと」を付け加えた。項目と しては、インフォームド・コンセントやセカンド・オピニオン、ケアの選択の尺度とな る QOL(Quality Of Life)/ 生、あるいは生活の質)について、がん治療や緩和ケア の考え方、鎮静(セデーション)、ホームホスピスも含めホスピス(緩和ケア病棟)に 関する情報や入院するための手続きならびに費用、在宅ホスピス(往診や訪問看護)に かかる費用や在宅ホスピス医、利用できる制度(介護保険)などである。(☞ガイドブ ック V 知っておきたいこと) 8) 迷い 見た目には元気そうだが、肺がんが再発。見た目が特に問題ないので職場でも理解を 得られず、結局迷惑がかかるので退職した。今後、抗がん剤の治療をすべきかどうか迷. 17.
(18) っている参加者もいた。 9) 後悔 もう少し早く気づいて手をうっていればと後悔ばかり。異変に気づいて町医者を受診 したが、問題ないと言われた。医者に「問題ない」と言われたら、そう思うしかない。 どこに相談に行ってよいか分からず、いたずらに時間が過ぎた。具合が悪くなって紹介 された病院に行ったときはすでに遅く、精密検査を受けたときはすでに転移していた。 もっと早く情報を得て、早めの検査を受けておけば良かった、後悔ばかりが残ったと言 われていた患者もいた。 (10) 受容できない がんであるから 100%治らないことは覚悟はしていたが、抗がん剤治療をすれは予後 2年くらいは生きられるといわれたので、あと少しは生きることができると思っていた。 しかし、先日の説明でホスピスを勧められた。まだ1年もたっていないのに、気持ちが ついていかないという人がいた。予後予測は難しく、医療者も分からないが、予後予測 が大きくズレると病状の受け入れが困難となることが多い。予後1年と言われていたの に1ヶ月もしない間にホスピスの面談を勧められた人もおり、「あれよあれよという間 に悪くなった」と言われていた。 この1年でがん相談室を訪れた人で、死亡した人は3名、ホスピスに入院した人は2 名である。リピーターの人もいるが、情報が途切れた人もいた。がんサバイバーとはい え、参加が永遠に続くことはかなわない。 2. 緩和ケア病棟での患者のナラティブ(語り) 病棟の患者はがんカフェの参加者と異なって、すでに治療を終えた人なので、がんと 診断されてからどのようなことが問題であったかを聞くことは難しかった。今更何を言 ったところでしかたがないという思いと、すでに現状を受け入れて生活しているのに、 治療中のことはもう思い出したくないという思いもあるだろう。中にはまだ現状を受容 できていない人もあったので、話を聞く際には細心の注意を要した。 それでもわずかではあるが話をきかせてくれた人がいた。個々のナラティブ(語り) はここでは詳細にはとり挙げないが、まとめると以下のとおりである。また、家族にも 話を聞いた。 (1) ① がんと診断されたとき(本人) 1. 目の前が真っ暗。頭の中は真っ白。. 2. これから片付けをしなければならないことが多いと思った。. 3. 情報を得ておくことが重要である。. 4. 遺言や葬式のことを考えた。. 18.
(19) 5. ホスピスのことはあまり考えなかった。. 6. もっとエビデンスが欲しかった。主治医に何をどう質問してよいかわからなかったし、時 間もなかった。. 7. 病院間の連携がとれておらず、治療の時期を逸した。. 8. 副作用がいやで治療を拒否したが、家族が勧めるので治療を受けた。. (1) ② がんと診断されたとき(家族) 1. 痛みがないこと、安楽だけを祈った。. 2. 患者が何をして欲しいか言わないので分からない。何でも自分で決めて、自分が死んだ後 の息子のことを心配するが、自分の希望は言わない。昔から本心を言わず、建前だけで生 きる人であった。. 3. 病気について説明したが、わかるまでに時間がかかった。. 以上から、患者と家族とのコミュニケーションの必要性も実感し、ガイドブックでは、 医療者との対話だけでなく、家族との対話の項目も設けた。 (2) 治療が開始されてから 1. 唐突に治療中止を告げられ、治療の継続を申し出たが、聞いてはもらえなかった。それで も1年は生かしてもらえたのでそれでいいと思っている。. 2. 治療元の主治医の考えと、セカンドオピニオンとが異なり、結果的には悪い結果となった。 第三者的な相談機関があればよいと思った。. 3 転移にともない受診する科が異なり、これまでの話が通じない。たらい回しにされた挙げ 句、聞きたいことは何も聞けなかった。患者相談室にいっても、治療のことは主治医に聞 くようにとの一点張りで機能していない。総合的に相談できる存在が必要。 4. わずかでも期待しない人間はいない。しかし、大切なことは現実を把握すること、逃げず に受け止めることである。. 5. 患者は急変に弱いので、急変時に対応してくれるところが欲しい。突然相談にいっても門 前払い状態である。. 6. 正解は1つではない。答えが見つからなかったら次の正解を探す作業に入る。大切なこと は、事実を正しく観ること、そして最後は自分で選び、選んだことに責任をもつこと、他 に責任転嫁をしないこと。. 7. 病気になってまでしんどいことはしなくてもいい。その反面、癌にならないとできないこ ともあった。. 8. 痛いのだけは嫌だ、いかに痛みを回避するか必死で考えた。. 9. 分子標的薬は元気な人ほどよく効くときいたので、元気であればよいと思った。. 19.
(20) 10. 食わず嫌いは避けた方は良い。今できることはやってみる。. 11. 自己管理の方法について考え、日常生活の中に取り入れる。. 12. 圧力があったとしても、自分が嫌なことは回避したいという思いはしっかり伝える。 そこから自分のコンセントを引き出す。. インタヴューに答えてくれた人の中には比較的ポジティブに自分の病気と向き合っ. ていた人もいたが、すべての人がそうであるとは限らず、むしろそういう人は少数では ないかと思う。 (3) ① 緩和ケアを勧められたとき 1. 落ち込みすぎると残された時間がもったいない。これも人生のイベントの一つに過ぎない と思うことにした。. 2. もっと早く、治療中に情報が欲しかった。. 3. もう治らないし、よくならないのに何を目標に生きていけばよいかわからない。神を信じ ればよいのか、そのようなこともきくが、それはちょっとピントこない。. 4. 十分な説明がなく治療が打ち切られたので、見捨てられ感が残った。. 5. 所詮、何を言われても、患者は理解できないし、納得もできない。割り切るしかなかった。. 6. 第2の人生だと気持を切り替えた。. (3) ② 情報はどこで入手したか 1. 少なくとも病院でないことは確か。自分で紹介先を調べた。幸い兄の友人が医師であった ので、そこから情報を得た。. 2 インターネット 情報について自分で調べ入手できる人はよいが、高齢者などすべての患者が可能だと. は限らない。だれでもいつでも相談にいける場の必要性と、患者や家族が容易にアクセ スできるデータベースを整備することの必要性を実感した。 (4) 終末期ケアに関して 1. 主治医や家族と話し合いをし、これからの仕事や生活の段取りを重視。最悪を想定してス ケジュール管理をすることが必要だ。. 2. 在宅での療養を考えるとき、どこに相談すればよいか分からなかった。ケア・マネージャ ーはがんに詳しい看護師がいいということも後から知った。. 3. がんのケアに介護保険を申請することを知らなかった。. 4. がん患者で在宅ケアを受ける人は、自立している人が多いので、介護度も低い。リバビリ. 20.
(21) などは介護保険では受けることができない。 5. 楽しみがないわけではない。それなりに楽しみを見いだせばよい。. 以上から、在宅ホスピスの情報や介護保険のこともガイドブック「知っておきたいこ と」に掲載した。 3. そ の 他 の が ん 患 者 の ナ ラ テ ィ ブ ( 語 り ) 納得がいかない . セカンドオピニオン、サードオピニオンをきいたが、納得いかない。 同じ説明。 「よくなる」というから抗がん剤治療を受けたのに、こんな ことになって、最後はホスピスをと言われた。 . 覚悟 . 死ぬのは怖くない。ただ、これからどうなるかわからないのが怖い。 ある程度腹をくくっている。やるべきことは終えているので、若い人 のように何が何でも生きなければならないということはない。 . 主治医のあり方 . 主治医が絶対的な権限をもつ。担当医はいろいろと説明してくれたが、 最終決定は主治医が行い、担当医はそれに従うしかない。 . インタヴューを終えて感じたことは、がん患者も治療中の場合と、治療が終って緩和 ケア( BSC:Best Supportive Care 3)に移った段階とに分かれ、さらに前者は、緩和医療 もある程度射程に入っている患者と、緩和ケアのことは全く考えない、あるいは考えた くないという患者との3つのパターンに分かれた。そのため、その特に治療中の患者や、 治療への期待が大きい患者に対して、ガイドブックの表現に十分な配慮が必要であると 思った。例えば、緩和ケアのことは全く考えていないという患者は、一見ナラティブは ボジティブであるが、その分、治療の限界にぶつかると病いの受容が困難となることも 予測される。 ある患者の事例を挙げてみる。本人の許可を得て、インタビューの内容を以下にまと めた。大腸がんからリンパ節に転移し、手術→人工肛門造設→化学療法→軽快→+7月 人工肛門閉鎖→化学療法→軽快し12月治療終了というプロセスを踏んだ50代女性の 患者の事例である。 彼女は、がんと診断されたときかかりつけ医がすぐに大きい病院へ行くよう手配して くれ、信頼できる友人と受診し、二人で話を聞いた。その時、医師は丁寧にゆっくり説 明してくれたが、最初は何も耳に入ってこなかった。ただ、 「がん=死の時代ではない」 との医師の言葉だけは残った。治療方針の話になった段階で徐々に医者の話が耳に入る 3 ベスト・サポーティブ・ケアの略で、がんに対する積極的な治療は行わず、病状などを和らげる治療に徹すること。 痛みをとったり、QOL(生活の質)を高めたりすることを目的としたケアに徹することを指す言葉。. 21.
(22) ようになり、ストマを造り化学療法を受けることは、理解できた。その上で、医師に治 療を受けるべきなのかと質問すると、医師は「僕の家族なら、勧めます」とはっきり答 えてくれたので、医師の方針に従うことになった。ストマのことはわからないと伝える と、看護師が丁寧に説明し、抗がん剤で髪の毛が抜けないかと聞くと、医師が丁寧に飲 み薬、点滴等の手段から、副作用についても説明してくれ、「髪の毛は抜けませんよ」 と話してくれたので納得し、安心して治療を受けようと思えた。友人も一緒に、何度も 何度も同じ質問をし、納得いくまで説明を受けることができた。以上から、インフォー ムド・コンセントは十分にできたものと思われる。抗がん剤治療中も、日々起こる身体 の変化、しびれや吐き気等や髪の毛の心配に対し質問すると丁寧に答えてくれたので、 主治医の治療に納得し十分信頼していた。 ただ、まだまだこれからすることがあるし、今までつらい思いをしてきてこれからの 人生を楽しもうと思っている矢先の病気であることを医師に伝え、主治医や看護師に不 安をぶつけるとそのたびに解消してくれたので、不安なく前向きに治療に専念できた。 セカンド・オピニオンに関しては、友人、息子ともにインターネット等で色々調べ、 勧められたが、自分をはじめ家族、友人も主治医の治療方針に同意できたので、それに 従うことでセカンド・オピニオンの予約はしたものの、直前にキャンセルしたという経 緯がある。毎回相談できる幼なじみの友人が同席し、彼女を支えたことは大きい。友人 以外にも彼女は、遠方に住む息子に相談し、納得いくまで話をしたようだ。 つらかったことについて尋ねると、毎日、息子や友人が支えてくれて何もつらくなく、 治ることばかり考え、治療をやめたいと思ったことは全くなかった。だから生きること しか考えておらず、終末期ケアに関しては「全く考えていない」とインタヴューに答え てくれた。 緩和ケア外来に通院しているもうひとりの患者も、主治医を信頼している、相談でき る人が身近にいる、前向きに生きることだけを考えているという点では、ほぼ似たよう な事例である。ただ、がんは、生存率という点では個々に異なるが、永遠に治療が続く (サバイブできる)疾患ではないので、緩和ケアが全く射程にないということは、ポジ ティブシンキングとして手放しで喜べないというのが、正直な感想である。 患者が抱えている様々な問題に対して医療者が提供できる技術・知識・支援能力は極 めて限られている。このような患者の多岐にわたる問題の重要性に気づき、疾病ごとに、 患者の疾病体験を語ってもらい、その「語り」を収集・分析して、インターネット上に 公開すると いう試みが、英国である。日本でも 2006 年から DIPEx-Japan(7) の立ち上げ が始まった。患者にとって頼りになるのは「医療者からの説明」と「体験者からの情報」 といえる。それ故に、まちなかカフェ・がん相談室の必要性を痛感した。 . 22.
(23) III 在宅ホスピスをとりまく状況 つい. 1.. 終の住処の神話. 各地に緩和ケア病棟(ホスピス)ができ、人々がその存在を知るようになった 1998 年. 2000 年ごろは、最期を迎えたい場の選択肢として自宅かホスピスかが問われてい. た。しかし、昨今では、2012 年ホスピス入院規定の見直しも相まって、緩和ケア病棟 は緩和医療の場であって終末期を過ごす緩和ケアの場所たりえなくなったという状況 が生じ始めている。つまり、2012 年 4 月保険点数改定からは「ホスピスもゆっくりで きない」という状況が生まれている。 ホスピスに対する認知が少しづつ増え、その認識も「死に場所」から「死までを生き る場所」であることがようやく浸透し始めた10年であったが、入院を希望する患者の数 に対して施設の数が追いつかず、入院待ちする患者数の増加等を踏まえ、外来、在宅緩 和ケアの充実と併せて、在宅への円滑な移行を促進するため、2012年4月、緩和ケア病 棟の入院基本料の評価体系の見直しが行われ、それまでは入院費一律1日につき3,780 点だったが、現在は以下のとおり入院日数によって費用が異なることになった。 ホスピス入院にかかる費用 1割負担 (月額上限 44,400 円) 30日以内 4,800円/日 31日以上60日以内 4,300円/日 61日以上 3,300円/日 3割負担 (月額上限 80,100 円 +総医療費の1%) 30日以内 14,400円/日 31日以上60日以内 12,900円/日 61日以上 9,900円/日 . 30 日以内の入院であれば 4791 点(+1011)、31 日以上 60 日以内であれば、4291 点(+511) ということになり、長期になるほど診療報酬が低くなる。つまり、ホスピスも急性期病 院と同様、在院日数が長くなるにつれて施設は負荷をかかえることになり、相談・面談 の段階でがんという疾患をもちつつも介護が主流となるがん患者の受け入れを控える という状況を生み出している。その結果、最期までの時間を自分らしく生きぬくという ホスピスの理念は神話となりつつあり、ホスピス病棟は緩和<ケア>の場ではなく、緩 和<医療>の場となりつつある。 そこでどのような現象が見られるようになったかといえば、治療の必要のなくなった、 あるいは積極的治療を拒否したがん患者は、治療中心の急性期病棟から退院、あるいは. 23.
(24) 転院を迫られ、がん難民となってしまうという現状である。治療元の患者支援センター や地域連携の相談窓口からの紹介で転院を受け入れてもらうことができればよいが、在 宅を余儀なくされた患者は、場合によってはがんの痛みや苦痛の中で過ごさなければな らないということもある。「場合によっては」ということは、麻薬の使えない在宅医や 疼痛コントロールが十分でない在宅医による往診が行われる場合などが考えられる。患 者遺族からのインタヴューでは、往診や訪問看護を受けてはいたが、「痛い痛いといっ て死んでいった」という声もきかれた。つまり、住み慣れた自宅で最期を迎えるという ものではなく、転院先と同様、自宅がホスピス入院までの待機先となり、待機期間中に 亡くなるというケースが増えている。在宅でのケアで、社会資源を十分利用できないま ま家族にその負担がかかったという声もあった。 ホスピスは患者一人に対する看護師の数も多く、また、リハビリテーションをはじめ 多職種のスタッフやボランティアがかかわるため、療養環境は一般病棟と比べ恵まれて いる。療養期間が長くなり、症状が落ち着いたがん患者は、社会的資源の公平性から一 度退院ということになっても、一度入ったホスピスから退院を勧めることは難しい。 「最 期の場であるとの決意で入院したのに、まさかホスピスを出されるとは思わなかった、 それは天国から地獄に舞い戻ることを意味する」という声は、介護療養型病棟に転院の 決まった患者の言葉である。ホスピスとしても、限られたベッド数を緩和医療が必要な 患者に配分しなければならないという苦肉の選択である。現状では、緩和ケア病棟は 2013年11月1日現在全国で295施設( 図 5 ) と増えたが、緩和ケアが必要な人すべてに 病床が行き渡るには総病床数(5880床)、1施設平均20床足らずという現状ではとても 数が追いつかない。 (図 5) 緩 和 ケ ア 病 棟 届 出 施 設 数 と 施 設 累 計 (8) . . . また緩和ケア施設加算を申請して緩和ケア病棟を開設する施設は増えているが、緩和医 療の技術が伴わず、緩和ケア病棟から別の緩和ケア病棟(ホスピス)への転院相談があ. 24.
(25) るのも事実である。そのような中誕生した画期的な取組みがホームホスピス運動である。 兵庫県では行政も支援し始めているが、1施設5名. 6名が限度で、緩和ケア病棟と同. 様、終末期のがん患者の数には追いつかない状況である。終末期を終生期という言葉に 変えたところで、内実が生きることを考えられるような環境でなければ、結果は同じで ある。 入院費の点数が変わりホスピスは緩和医療の場(短期症状コントロールの場)となり、 その結果長期に渡るがん患者や、介護が中心となる主に高齢のがん患者の居場所がなく なっていく。今や、ホスピスや住み慣れた自宅は、終の住処ではなくなっている。 もちろん、すべてのがん患者が最後はホスピスで過ごしたいと考えている人ばかりでは ない。厚生労働省健康局がん対策健康増進課の終末期医療に関する調査(9) によると、 平成 10 年、平成 15 年、平成 20 年の「終末期の療養場所に関する希望」は、自宅で最 期まで療養したいと答えた人は 10%前後であるのに対して、自宅で療養して、必要に なればそれまでの医療機関に入院したいと答えた人が 20%前後、自宅で療養して必要 になれば緩和ケア病棟に入院したいと答えた人は 30%弱である。つまり、自宅で療養 したいと思ってはいるが、最期は医療施設を希望する人が半数近くはいる。 また平成 22 年度がん対策評価・分析事業の「希望する療養場所について」(10) による と、「痛みを伴う末期状態(余命が半年以下)の場合、療養場所は自宅(63%)が最も 多く、希望する看取りの場は、自宅での療養を希望した人のうち 47%が緩和ケア病棟 を、32%が今まで通った病院を希望している。緩和ケア病棟は緩和医療専門であるため がんに拠る痛みや苦痛の緩和に対する期待が大きいが、今まで通った病院を希望した人 は、自宅と合わせて住み慣れた環境での療養を希望していることが予想される。 2014 年 4 月 21 日のシンポジウム(11) における参加者 93 名のうち 77 名のアンケート結 果によると、最期の場所として希望するのは、1位が自宅、2位がホスピス(ホームホ スピスも含む)であった。ホームホスピスが「自宅」のカテゴリーに入れば自宅希望の 割合はさらに増える。アンケート結果は( 図 6 ) のとおりである。全国6施設のうち5 施設が兵庫県にあるということから、兵庫県ではホームホスピスの認知度が高くなって いる。 図6 終末期を過ごしたい場所 その他 . 9 18. ホームホスピス ホスピス . 14 36. 自宅 . . . . 25.
(26) その他と答えた人は以下のとおりである。 ○ そのときにならないとわからない。 6名 独居になっていたらホスピス。臨機応変 ○ 自宅がいいが、家族に迷惑をかけるのでわからない。できるだけ自宅で過ご して、自宅で過ごすのが無理になったらホスピスか、自宅の環境に近いホー ムホスピスかシェアハウスを希望する。 ○ 悩んでいる、迷っている。 2名 2. が ん 患 者 を 巡 る 最 近 の 動 き (12) . 2006 年 4 月 1、40歳以上の末期がん患者も2号被保険者となり、介護保険が適応されるこ とになった。(ただし、訪問看護は医療保険で、適応は進行がんのみ) 2、介護保険が「予防給付」「介護給付」に分かれ、ケアの流れが中断すること がある→主治医意見書の内容で大きく左右する。 3、在宅療養支援診療所届出制度が始まり、契約の上訪問看護ステーション及び 診療所から 24 時間体制でのケア・治療を受けることが可能となった 2008 年 4 月 有料老人ホーム・ケアハウス・グループホーム・特別養護老人ホームなどに 訪問した場合も、在宅患者訪問診療料・特定施設入居時等医学総合管理料・ 在宅末期医療総合診療料が請求可能となった 2008 年 5 月 アメリカンファミリー生命保険会社に次いで、プルデンシャル生命保険会社、 明治安田生命も在宅ホスピスケアに入院給付金を支払うことになった 2010 年 4 月 厚生労働省から「末期がん患者への介護保険のスピーディーな対応」の通達 があった。 2012 年 4 月 機能強化型在宅療養支援診療所届け出開始(ティーム医療の強化) 医師 3 名以上、または 3 か所以上で連携 年間 2 名以上の看取り、5 回以上の往診、月 1 回の定期カンファレンス 週刊朝日 2013 年 8 月 9 日号に届け出診療所掲載 進行がん患者の介護保険の認定に関しては、手続きに時間がかかり、申請の手続き時 には自立している患者が、申請がおりたときには急速に進行していて間に合わないこと や、保険に見合うケアが受けられないといった状況にある。そこで、2009 年、特定非. 26.
(27) 営利法人姫路市介護サービス第三者評価機構から、介護保険のスピーティーな対応に対 する提言(13) がなされた。提言の内容は( 表 1 ) のとおりである。 (表 1 ) 認 定 調 査 に 関 す る 提 言 提言1 . 「がん末期の利用者等の急を要する認定調査」については「至急扱いに関するガイド ライン」を策定し、要件を満たす要介護認定の申請に対しては特段の計らいを持って 至急に認定調査を実施する。 . 提言2 . 「がん末期」の疾病を有する要介護認定の申請者については、介護サービスが利用で きるよう要介護1. 提言3 . 5の認定とする。 . 「がん末期」の疾病を有する要介護認定の申請者については、主治医意見書に急激な 状態の悪化が予想され、6ヶ月以内に介護の手間が大幅に増大することが示されてい ることを条件に、特段の計らいを持って訪問調査時点の「コンピューター判定(一次 判定)」の結果より重度な認定の必要性について配慮する。 . 提言4 . 「福祉用具貸与例外申請制度」を申請時にさかのぼって適用し、かつ必要書類の作成 は要介護度の認定の決定後を可とする。 . 提言5 . 「がん末期」の疾病を有する要介護認定の申請者の主治医意見書が、申請者の状態像 を正しく反映するよう必要な処置を講じられ、もって認定審査会において適正な認定 が下されるよう配慮する。 . 提言6 . 「がん末期」の疾病を有する要介護認定の申請者が必要に応じて介護保険が利用でき るよう、要介護認定の申請を速やかに支援するよう関係者に勧奨する。 . がん専門の医師とそうでない医師とでは主治医意見書の内容に差があり、がん患者の おかれている深刻さが伝わらないことも多々ある。しかし、担当のケアマネが窓口でが ん患者である旨を伝えることで、午前中申請したら午後に申請がおりたケースもあるが 、 こうしたケースは極稀であると考えるべきであろう。 住み慣れた自宅で、できることなら家族に囲まれて最期を迎えたいというがん患者の 希望とは裏腹に、昨今では核家族が増え、家族のあり方も変化しているため、介護保険 などの社会的資源の利用は必須である。長年介護施設に勤務する職員によると、家庭で 一人の介護を支えるマンパワーは3名、つまり主たる介護者以外に2名の協力者が必要 であるとのことである。その2名が家族以外であっても介護は可能であるが、介護者不 在の家庭が多く、従来のように患者を家族で支えるということが難しくなってきている。 そして、主たる介護者不在の独居で身寄りのない患者も増えているという現実もある。 がん患者の場合、高齢者介護とは異なり、ケアにがんという疾患が加わるため、がん患 者のケアのできる、そしてがん患者の看取りのできる介護者が必要となる。 がん患者の場合は、生活面のケアに加えて、がん特有の痛みや苦痛が伴うために、介 護者にとっては精神的負担が強く、できればがん患者は避けたいという傾向にある。あ. 27.
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