平成21年内閣府世論調査「がん診療について」の調査(16)によると、がんと診断され た場合,一か所の病院で継続して治療を受けたいか,それとも,その時々の症状に応じ た医療機関等に移って治療を受けたいか聞いたところ,①「一か所の病院で継続」とす る者の割合が40.7%(「一か所の病院で継続して治療を受けたい」27.0%+「どちらか といえば,一か所の病院で継続して治療を受けたい」13.7%),②「症状に応じた医療 機関等に移る」とする者の割合が56.9%(「どちらかといえば,症状に応じた医療機関 等に移って治療を受けたい」32.7%+「症状に応じた医療機関等に移って治療を受けた い」24.2%)となっている。
都市規模別に見ると,「一か所の病院で継続」とする者の割合は町村で高くなってい る。性別に見ると,大きな差異は見られない。年齢別に見ると,「一か所の病院で継続」
とする者の割合は 70 歳以上で,「症状に応じた医療機関等に移る」とする者の割合は 40歳代で,それぞれ高くなっている。
以上から、人口密度が低く、人口の割に高齢者の人口比率が高く、医療施設も限られ た中で、長年住み慣れた地域で最期を迎えるという地方型と、神戸のように人口密度が 高く、転勤、引越等で地元の人の割合がそれほど高くなく、医療•介護施設の選択肢も 多く、症状に応じた医療機関が選べる、あるいは逆に、住み慣れた場での療養が必ずし も可能であるとはいえないため、医療機関を選ぶ必要のある都市型とに分かれるのでは ないかと思われる。
1. 兵 庫 県 の が ん 医 療 の 状 況 (17)
(1) がん患者の死亡場所
全国 兵庫県
ホスピス(緩和ケア病棟) 6%
在宅 8% 兵庫県12.3% 2008年度全国1位
9.2% 兵庫県13.1% 2010年度
(2) 兵庫県内「がん医療」情報
・がん患者在宅看取り率 H22年度 13.1% 全国9.2%
H18年度 兵庫県12.3% 全国1位
・緩和ケア研修修了者数 1325人(H20年から23年)
・がん治療認定医数 278人(H20年から23年)
・麻薬を取り扱う薬局数 兵庫県 1585店舗 神戸市 483店舗
・がん疼痛緩和指導管理料届け出医療機関数 246機関
・在宅療養支援診療所 兵庫県 762機関(H24年1月)
神戸市 261機関
・機能強化型在宅療養支援診療所 191機関
・訪問看護ステーション 404箇所(H24年3月)
(3) 兵庫県内のホスピス・緩和ケア病棟
1、神戸アドベンティスト病院(宗教法人セブンスデイアドベンティスト教団)
2、社会保険神戸中央病院(社団法人全国社会保険協会連合会)
3、六甲病院(国家公務員等共済組合連合会)
4、東神戸病院(医療法人神戸健康共和会)
5、立花病院(医療法人尼崎厚生会)
6、公立八鹿病院
7、姫路聖マリア病院(医療法人財団姫路聖マリア会)
8、尼崎医療生協病院(尼崎医療生活協同組合)
9、第二協立病院(医療法人協和会) 10、県立加古川医療センター 11、宝塚市立病院
12、西宮協和マリナホスピタル 13、市立芦屋病院
14、市立川西病院
15、高砂市民病院(2013年7月10日開設)
開設準備中 北播磨総合医療センター 大久保病院
ホスピス認可されていない(内容的には緩和ケア病棟と同じ)
・兵庫県立がんセンター
・林山クリニック 希望の家
(表中 の施設は、差額室料は無料)
(4) 神戸市内のホスピス(緩和ケア病棟)と在宅ホスピス
神戸市内のホスピス(青字)と在宅ホスピスは( 図16) のとおりである。各区にホ スピス(緩和ケア病棟)と複数の在宅ホスピスがあることが望ましい。そのような観点 から神戸市の緩和ケアマップを見ると、神戸の東地区(東灘、灘)は恵まれているが、
西地区には「希望の家」以外に緩和ケア病床がなく、中央~西区のがん患者が東灘(東 神戸病院)と灘(六甲病院)への入院を希望するため、両者は常にベッドが満床で、す べての入院希望者のニーズを満たすことができない。
在宅ホスピス医の数が増え、在宅での療養支援が難しくなった場合の後方支援として 緩和ケア病棟が増え、さらにがん患者の在宅療養を支える介護職の介入と環境整備が求 められる。
( 図 16) 神 戸 市 内 の ホ ス ピ ス ( 緩 和 ケ ア 病 棟 ) と 在 宅 ホ ス ピ ス
八木内科 しんじょう医院
共和会ホームケアクリニック 小林クリニック
六甲病院
関本クリニック
林山クリニック 希望の家
石川リハビリ脳神経外科クリニック 池垣クリニック
新国内科医医院 森本クリニック
神戸アドベン チスト病院 社会保険神戸 中央病院
東神戸病院
ホームケアクリニックこうべ
(5) ホ ス ピ ス 入 院 の 理 由
在宅での看取りを希望していても、予想外の状況が生じたり、処置内容によっては在 宅支援が困難になることもある。そのようなときは最後の砦として緩和ケア病棟でのフ ォローが必至であろう。もちろん、様々な理由で在宅では不安であるという理由から、
最初からホスピスを希望する患者や家族も多い。以下は神戸市内のYクリニックでの 2001年10月~2012年9月における死亡者数996名(自宅469名、ホスピス368名他)中、ホ スピス入院の主な理由は( 表 5 ) のとおりである。
(表 5) ホ ス ピ ス 入 院 の 理 由(18)
1、最期はホスピスと決めていた 20
2、治療目的(尿閉、胸水、ポート留置、透析など) 24 3、予想外の状況
・介護の限界 171 ・混乱・譫妄 23
・呼吸困難著明 50 ・意識レベル低下 21 ・激痛 40 ・感染症 16
・全身倦怠著明 15 ・自力排泄困難 14
・腸閉塞 4 ・不安 4
・悪液質著明 5 ・出血 6
在宅ホスピスを行うにあたって、緩和ケア病棟の支援以外に紹介元病院・ホスピス・
訪問看護師・ケアマネージャー・施設や専門外の診療所との連携が必要となる。
(6) 施設での看取り
神戸市施設(314施設)に対する2013年10月神戸市医師会アンケート結果は以下の通り である。(19)
○ 終末期、看取りの緊急時対応での困難感
• 医師と連絡がつかない
• 医師が24時間対応してくれない
• 看取り後医師が到着するまでの間、介護士だけでの対応困難、エンジェルケアの問題
• 看取りが近づいた時の家族の気持ちの変化に対する対応
• 医療機器(在宅酸素、吸引)を使いにくい環境
• 看取りに対する職員の不安が強い
○ 麻薬の使用 あり 23% なし 59% ・ 夜間の麻薬使用の可否 可能7% 不可66%
・ 自宅以外の療養場所での麻薬の管理
(厚生労働省;医療用麻薬適正使用ガイダンスより抜粋)
①医療用麻薬の保管、管理にあたり金庫を用いる必要がない。
②居室でない部屋で施設職員が他の薬剤と同じく一括管理できる。
③どこで保管、管理しても速やかにレスキュードーズを服用できるような環境づくりが
できるよう指導する。
④患者と施設職員に用法や誤用の際の連絡方法などを伝えておく。
⑤使用済みあるいは不要な麻薬の回収、廃棄についても施設職員に伝えておく。
解決策としては、ヘルパーに情報が伝わらないことに対しては「介護ノート」などを 作って医療者と介護者とで情報を共有することが必要である。特に、看取りが近づいた ときは、ヘルパーと看護師が10分申し送りなどをし、ヘルパーと看護師との連携を深め ることが重要である。状況が変わっているときなど主治医と連絡をとりたいと思っても、
管理者を通じてしか主治医と連絡がとれないケースがあったというヘルパーもいた。そ のためには主治医も含め、月1回の情報交換の場を整備することが必要である。地域包 括とはいえ、ひとつの地域に1つの病院、診療所、往診医、看護ステーション、介護ス テーションしかない地方と異なって、神戸のように多数の医療•介護施設を有している 都会の場合、医療•介護や多職種の連携、顔の見える関係づくりといったところで、理 念としてはこれまでも上がっているが、実現に向けた対策は未だになされていないとい うのが現実である。さらに在宅ホスピスには看取りも含めた24時間介護のできる介護職 の介入が必須であるが、それらも必要性は声に上がっているが、介護職のマンパワー不 足、時間不足が解消されない限りは、実現は難しい。実際に現場に赴くヘルパーにきち んと報酬が反映されない限りは問題は解決されないだろう。お金だけが重要なのではな く、ホスピスを支えるためにはそれなりの理念とモチベーションが必要であるが、それ らを個人にのみ求めていてもバーンアウトにつながるだけである。「こんなに大変な仕 事で時給がこれくらいなら、コンビニでバイトをした方がまし」というような言葉が出 ないような対策を考えて行かなければならないだろう。問題は、それらの<拠点>とな るのはどこかということである。
前章で、厚生労働省は「 在宅医療•介護あんしん 2012」において、在宅医療を担う医 療機関の役割分担や連携の要となる地域包括ケア体制として、市町村に地域包括支援セ ンターを設置することを挙げ、公募により全国 105 カ所の在宅医療連携拠点事業所が選 出され、兵庫県では、2カ所(北区の医療法人社団まほし会と西区のみどり病院)が同 事業を展開している。
がん患者の在宅療養を支えるためには、在宅ホスピスの充実やホームホスピスの増加 はいうまでもないが、在宅ホスピスを支える看護、介護に加え、在宅が困難になったと きの後方支援としてホスピス(緩和ケア病棟)の存在は欠かすことはできない。