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金融取り引きのための意思決定支援エキスパートシステム

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Academic year: 2021

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(1)

特集

ビジネス分野におけるAlシステムの構築と実用化

金融取り引きのための

意思決定支援エキスパートシステム

一株式会社富士銀行の債券ディーリング支援システムー

DecisionSupportExpertSystemsforFinanciaけrading

-BondDealingSupportSystemsofTheFujiBank′Ltd・▼

金融機関では,金融取r)引き業務から得られる収益の重要性が増している。

金融取り引きには,複雑な業務知識と熟練者のノウハウとが必要であり,AIシ

ステム化への期待が大きい。そこで,株式会社富士銀行と日立製作所は,共同

で債券ディーリング業務へのAI適用技術について研究を行った。この研究の中

で,市場価格動向の予想を支援するチャートのテクニカル分析支援システムと,

最適な取り引きの決定を支援するオプションの最適取り引き決定支援システム

を開発し,試用・実用化を進めた。

ディーリング業務では,ノウハウが確立されておらず,ノウハウの有効性が

ダイナミックに変化する。単にノウハウを知識ベース化しても,ES(Expert

System)として利用できない。そこで,ノウハウを試行錯誤的に定義し,適用し,

検証する機能を備え,専門家がノウハウのシミュレータとして利用するAIシス

テムとした。このシステムによr),ディーラーは独自の有効なノウハウを研究

すること,およびノウハウに関連する多角的な情報を得て取り引きの意思決定

に役立てることが可能になった。

n

金融機関での初期のAIの適用は相談システムが中心で,相

続相談1),年金相談2)などのES(Expert

System)が開発され

た。これらのESは,営業店で顧客相談に利用され,顧客サー ビス向上に貢献してきた。 一方,金融機関を取り巻く環境は,金利の自由化,業務規 制の緩和,金融の国際化などによって一段と厳しくなり,よ r)直接的に収益向上に関係する業務でのAIシステムの利用が 期待されてきた3)。特に,金融・資本市場での金融取り引き業 務は,複雑な業務知識と経験によって蓄積されるノウハウと を必要とし,利用する計算機システムによって収益が左右さ れると言われている。 株式会社富士銀行と日立製作所は,金融取り引き業務の一 つである債券ディーリング業務について,AI適用技術の共同 研究を行った。ディーラーのニーズが高く,かつ適用範囲の 広い技術を必要とする二つのシステムを開発し,試用・実用 化を進めている。すなわち,チャートのテクニカル分析支援 ∪・D・C・〔d81.32.0る:159.95〕:33る・7る7・3

重見一秀*

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中村喜昭*

的∫ム才α々g∧b々α椚乙`和

安信千津子**

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堀米

明*** 月々∼和仏)γJ椚α才 システムとオプションの最適取り引き決定支援システムであ る。

本稿では,ディーリング業務の概要,AI適用の可能性と開

発した二つのシステムについて述べる。

債券ディーリング業務へのAl適用

2.1債券ディーリング業務 ディーラーは,市場価格の変動に応じて売買を繰r)返し, 売値と買値の価格差によって収益を得る。ディーリング業務 の概要を図1に示す。市場価格の動向を予想し,価格が予想 どおりに動けば収益が得られる取り引き戦略を採用し,戦略 に基づいて個々の売買を決定する。予想と戦略が対象とする 期間は,分単位の短期もあれば1週間程度のものもある。

ディーリングの意思決定のためには,多種多様な情報を利

用する。取l)引きデータはリアルタイムで画面上に数値やチ ャートとして現れる。成立した取り引きのタイミング,価格, *株式会社富士銀行市場営業部 **日立製作所システム開発研究所 ***口立製作所情報システム工場

(2)

日銀総裁が ニュース(リアルタイム)

l

日本円148,90 英ポンド1.7963 関連する市場の動き

l

× ズ X X x O¥○× =・OX O X O XO チャート(リアルタイム) 売り30100.50 買い 100.49 50 経済指標 市況情報 チャート (長期的)

[吐

予 想 取り引き戦略立案 取り引き決定 (売買操作) 上司・同僚との会話

ディーリングルームの雰囲気

[云竺]

口[]□ 電話による情報交換

取り引き状況 注文 取り引き市場 図lディーリング業務の概要 ディーリングでは,取り引きデータ,ニュース,電話による情報,ディーリングルームの雰囲気など,多種多 様な情報を参考にする。

額,希望の取り引きの価格,額などである。ニュースはリア

ルタイムで画面に現れ,経済指標の発表も含む。その他,電 話による情報,同僚や上司との意見交換や指示,ディーリン グルームの雰囲気なども影響を与える。 2.2 Al適用のアプローチ ディーリング業務にAIを適用するには,さまぎまな問題点 がある。一応,新商品の取り引きを除いては,エキスパート が存在し一般に知られているノウハウもある。しかしそれら は,あいまいさを含み明確に記述しにくく,有効性も不確か である。さらに業務の性格上,収益を確保するためには,一 般のノウハウに差をつける有効なノウハウを必要とする。利 チャートの例

占占㌧軸.

十山叫

1†・ホ

l 上

⊥仰

∩リ

…がト‥線

…川吋.小11.1陰

.1

緑\価咋

影 大陽線 ノウハウの例 大陽線は,上昇が力強いことを示す。 上影線は,陽線では騰勢を割り引〈ニとになり, 陰線では落勢に拍車をかけることになる。 図2 ろうそく足チャートのテクニカル分析例 チャートに繰り 返し現れるパターンを利用して,価格動向を予想する。 用するデータとしては,ニュースや他のディーラーの動向に 関するうわさなど,入力して処理しにくい情報も重要な意味 を持つ。計算機出力はそのまま利用されるのではなく,ディ ーラーが説明しに〈い勘を含めての一最終意思決定を行うのに 参考にされる。 しかし,AIへの期待は大きい。勘をより確かに働かせるた めに,質量ともに充実した情報の提供が望まれている。さら に,勘を排除するシステマティックなディーリングも望まれ ている。

以上の状況を考慮して,ディーリング業務に有用なAIシス

テムは,ディーラーの意思決定に役立つ情報を提供し,ディ

ーリングのノウハウを研究するための機能を持つシステムで

あると考える。つまり,専門家の知識を利用して非専門家が 問題解決を行う従来のESではなく,専門家が自身の知識を研 究し,自身の意思決定の材料を得るためのESであると言える。

チャートのテクニカル分析支援システムの概要

3.1 システムの目的 チャートのテクニカル分析とは,チャートに基づく予想手 法であり,古くから珠式市場などで用いられている4)。チャー トとは,取り引きデータから作られる図やグラフである。「チ

ャート上に類似したパターンが繰り返し現れることが多い。+

という経験則を前提にしており,特定のパターンと,その後

の価格の動きを結び付けるノウハウを利用する。特に,広く

用いられているろうそく足チャートを図2に示す。

現在のディーリングルームでは,リアルタイムでチャート

を表示するシステムが利用されている。ディーラーは,複数

のチャートを注視して,自分でノウハウを適用して予想を組

(3)

み立てている。ルールによって記述されたパターンの発生を 警告テするAIシステムもある5)。 チャートのテクニカル分析支援システム6)は,以【Fの目的で 開発した。 (1)最新のチャートに適合するテクニカル分析のノウハウを, 粘れなく,かつすばやく警告する。 (2)ノウハウによる予想の的中率を評価する。 (3)過去のチャートの中から,チャートが類似している時ノた を検索する【,

(4)ディーラーがより良いノウハウを研究するための機能を

提供する。 3.2 システムの概要 システムの基本部分は,チャートのテクニカル分析のため に開発した知識表現と推論方式である7)。システム構成を図3 にホす。知識ベースはノウハウを記憶する。推論は,チャー トとノウハウを照合して,ノウハウの適合状況を求めること

となる。チャートは,時系列データ(特徴データと呼ぶ。)とし

て表現している。 ノウハウの例を図4に示す。知識表現にルール形式を用い

ている。ルールは,チャートの特定のパターン(if部),パター

ン発生時に警告するメッセージおよび発生後の価格の動きの

予想(then部)を結び付ける。知識表現の特徴を次に示す。

(1)時系列データの名称と相対的な時点とを用いることで, ノウハウを自然に記述できる。

(2)パターンの発生をファジィ集合として検出しており,類

似するパターンの発生も認識できる。 (3)then部でパターンの名称を定義し他のルールで参照する ルールエディタ テ【夕べース 知識ベース 予 想 警告 取り引きデータ 由土 丁十⊥ 管 々ノ ー デ 工 ・刀 ク ー デ 論 任 タ 一 テ 数 榔 告H 予 索 検 評 価 図3 チャートのテクニカル分析支援システムの構成 ユーザーインタフェース管理 ディーラー 時系列の 特徴データに,知識ベース内のノウハウを適用する推論が基本となる。 推論を利用して,予想・警告,予告,検索,評価を行い,ディーラーに 有用な情報を提供する。 No.309チャート:移動平均線 if ブル・オーダー(0) ブル・オーダー(-1) MAa(0)≧ MAb(0)≧ Mac(0)≧ Mad(0)≧ then 予想: メッセージ: MAa(一1) MAb(一1) MAc(-1) MAd(-1) ファジィ(0.03) ファジィ(0.03) ファジィ(0,03) ファジィ(0.03) 0.00-0.10(0.5) ブル・トレンド 注:MAa,MAb,MAc,MAd:平均期間の異なる4本の移動平均線,MAaの 平均期間が最も短いr MAa(0),MAa(-1):0は基準時点,-1は1時点前を示す ≧,ファジィ(0.03):演算子(≧)とパラメータ(0.03)により,ファジィ 集合のメンバシップ関数が定まる._ プル・オーダー:パターン名称の例,別ルールで定義されたものを参照して いるく_ 図4 テクニカル分析のノウハウの表現 パターンを特定する条件 と,パターンの名称,パターン発生後の価格動向の予想,メッセージな どを記述する。

ことで,複雑なパターンも段階的に定義できる。

推論の基本は,チャート上のパターン認識である。つまり, 指定された時点の特徴データと,指定されたルールのif部に記 述されるパターンとの適合度の計算である。 推論結果に基づいてディーラーにさまぎまな情報を提供す

る機能として,図3の予想・警告,・予告,検索,評価を実現

している。 (a)予想・警告は,図5(a),(b)に示す画面を出力する。適 合するノウハウのメッセージを表示することによってパタ ーンの発生を警告し,適合するノウハウの予想を合成する ことによってその後の価格を予想する。 (b)予告では,図5(a)の予告を出力する。将来の価格を仮 定して推論のシミュレーションを行い,将来適合する▼可能

性のあるノウハウと,適合の必要条件となる価格の範囲を

求める。 (C)検索と評価は,過去のデータを利用して過去の時点で 推論のシミュレーションを行う。それぞれ,類似した時点 の検索と,類似時点のその後の価格変動の統計的な評価を 行う。 システムは起動後,データを読み込み,最新時点で推論を 行い,複数チャートから得られる情報の摘要である図5(a)の 総合予想画面を表示する。ユーザーの指定により,同図(b)の チャート別の予想・警告画面,推論時点の変更と再推論結果, ルールエディタ画面,評価画面,検索結果などを表示する。

ユーザーは,対話的にルールを定義し,定義したルールを用

いて予想させたり,チャートを検索したり,さらにルールに よる予想を評価したりできる。

(4)

日艇替含予想 蹄月3日 姶胤1凪朗有駄1帆82安倣1凪62終駄1阻78 終了 まとこめ 1凪471・1限乃(0.50) 0.31へ′0.01 ローソク足(一本) 1帆621†1C6.粥(0∴娼) 上たノ川棚鬼 ローソク足(用合せ) 拝み合い過程 移払平棚 1凪88††107.帖(0.50) ブル・トレンド,安′亡感のある強気相鵠 禿髄 ストキヤスティック 1(6.49111C6.即(0.50) R.ⅤとⅩがDC l(方.51111C6.防 仙53) 天井延突入 予 帆風凪凪弧 47:完リシク 姐∼l帆79: 枚取微 風凪凪 ・トレン DがDC

匝司

巨垂∃贈与脚日

醐[垂]

1C6.00 ユCb.00 1(札00 1耶.00 +_ + 二二_____ 一「し′一

巨∃

③ (a)総合予想画面 移動平均線 岬月昭 始駄1(応.糾 嵩胤1限8Z 安伯:1弧62 終佑=瓶78 終了 No. まとめ 詔 推論 ↓ ↑ 1(垢.組††107.拡(0.50) プル・トレンド(1.00) 1凪紬††107.防(0.50) プル・トレンド,安心恐のある艶気相場 プル・オーダー(1.00) ベア・オーダー

直垂享]胴a[]淵b[司

媚c[司 姻即[司

[コ 匹三回グラフ甜

郎匝司

1凪00 1拒.00 1C4.00 10ユ.00

く毒さ (b)チャート別予想画面 図5 チャートのテクニカル分析支援システムの出力画面例 総合予想画面(a)は主画面で,総合予 想とチャート別の予想および主な警告を示す。チャート別予想画面(b)は,チャートとノウハウの適合状況(l.00 など),予想および警告を示す。 3.3 適用状況と効果 このシステムは,債券先物の日単位の1年分のデータと5 種類のチャートを用意して,平成2年1月からディーリング

ルームで試用されている。ディーラーは,自分自身でシステ

ムを操作して,所望の情報を得ることができる。さらに,ル

ールエディタを用いて思いついたノウハウを登録し,評価と 検索の情報に基づいてルールを調整している。 試用の結果,次の効果が認められ,このシステムはディー ラーの意思決定に有用であることが実証された。 (1)テクニカル分析の専門家の思考を模擬して,相場観に左 右されない客観的テクニカル分析情報を提供できる。

(2)予想の的中率の評価や過去の類似時点の検索結果など,

ディーリングの意思決定に役立つ情報を提供できる。 (3)ルールのシミュレータとしてディーラーの思考を模擬で き,より良いルールの研究に利用できる。

債券オプションの最適取り引き決定支援システム

の概要

4.1システムの目的 オプションとは,商品を売買する権利のことである8)。売る

(5)

権利(プット)と買う権利(コール)の2種類があり,売買の時

期(行使日),価格(行使価格),売買額の三つのパラメータが

ある。オプションの価値は,これらの種類とパラメータによ って異なる。さらに,対象とする商品の価格変動,時間の経 過などの環境変化によって影響を受ける。

オプションの在庫(ポジション)の管理は,価値が多くの要

因に左右されるため,必然的に複雑となる。オプションディ ーラーは,環境変化に対する自己のポジションの価値の変化 に注意を払わねばならない。また,環境変化を予想し,予想 の下で有利となる目標のポジションを定め,現状のポジショ ンを目標に近づける(ポジションの調整)ために必要となる追 加取り引きの種類と,パラメータを決定しなければならない。 現状のオプション取r)引き支援システムは,オプションの

価値の計算,環境変化に対する価値の変化(感応度)の分析を

支援する。AIを利用した例として,既存の投資戦略(オプショ

ン取r)引きの組み合わせ)の選択を支援するものや,制約論理

言語によって制約条件を満足する取り引きの組み合わせの決 定を行うものがある9)。 オプションの最適取り引き決定支援システムは,オプショ ンディーラーのポジション管理を支援すること,そのために 特に次の二つを支援することを目的として開発した。 (1)ポジションを調整するために追加すべき最適な取り引き の組み合わせの決定を支援する。 (2)環境変化によるポジションの価値(保有するオプションの

価値の合計)と感応度の分析を支援する。

4.2 システムの概要 このシステムは,前記二つの目的を達成するため,それぞ

れ最適取r)引き決定のための一連の機能とポジション分析の

機能とを提供する。システム梼成を図6にホす。二つの機能 はポジション管理を支援するために,有機的につながってい る。ディーラーは,ポジション分析により,調整の目標を定

める。最適取r)引き決定のための機能を利用して追加取り引

きを求め,追加取り引き実行後のポジション分析を行し-,追 加取り引きの妥当性について吟味する。 ポジション分析の例を図7(a)に示す。環境変数に対するポ ジションの価値の変化をグラフで表示している。グラフの横 軸に環境変数,縦軸に価値または感応度,分析対象のポジシ ョンとして現状,追加取り引きだけ,追加敬一)引き実行後(現 状と追加取r)引きの合計)が指定でき,校数のグラフを組み合 わせた表示が可能である。ディーラーは,ポジションの価値 を多角的に把握できる。

図6の最適取り引き決定のための一連の機能では,まず調

整目標を設定し,設定された目標の下での最適取り引きを二 段階で探索する10)。調整目標設定で,ポジションの感応度に対 して,それぞれ変化させたい方向を指定する。取r)引き戦略

選択で,ノウハウを利用して,調整目標を満足する可能性の

オプション取り引きデータ ポジション ポジション ポジション 「 l 1 l l l l l l l l l l l l l l l l l データ 管王里 分析 l 調整目標 三Jtr+-1 昌又疋 知識ベース 最適性分析 適取り引き決定 ための機能 「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ l l l調整目標 l l l l

ど霊長引き戟略

l l l l

;取り引き戦略

++

lパラメータ l最適化 l + __.__ ____ ________+ 追加取り引き 修正 ユきヨ ユーザーインタフェース管理 ディーラー 図6 オプションの最適取り引き決定支援システムの構成 ポジションデータを分析し,調整目標を設定し,取り引き戦略を選択 し,取り引きパラメータを決定し,調整後のポジションを確認する。取 り引き戦略選択にノウハウを利用する。

ある取り引き戟略(オフ0ション取r)引きの組み合わせとパラメ

ータ間の制約条件)を選択する。パラメータ最適化で,取り引

き戦略の範囲内で,取り引きパラメータを最適化する。 取り引き戦略選択で利用するノウハウの例を図8にホす。 ノウハウはルール形式で表現している。ルールは,取り引き

戦略(then部)と,取り引き戦略の感応度の定性的情報(if部)

を持つ。推論では,調整目標とノウハウのif部を照合して,ポ ジションを調整目標に近づけるのに役立つ取り引き戦略を選 択する。 最適性分析の例を先の図7(b)に示す。ある取r)引き戦略に ついて,未定の取り引きパラメータの値と調整目標の達成具 合との関係をグラフで表示する。ディーラーは,適切なパラ メータの傾向を直観的に把握できるとともに,よr)良いノウ ハウを学ぶことができる。 システムの標準的な利用手順は,現状のポジションの分析, 調整目標の設定,取り引き戦略の選択・最適件の分析,取り 引きパラメータの最適化,追加取り引き実行後のポジション の確認となる。途中を省略したり,途中から実行したり,後 戻r)したりすることも可能なので,試行錯誤的に利用して臼 分の納得する取り引きを決定することができる。 4.3 適用状況 このシステムは,平成2年7月から現物債券のオプション 取り引きの支援に試用している。ポジション分析と最適性分 析を中心に利用している。今後,分析結果を反映させて,ノ ウハウの調整を進める。

(6)

100.0 80.00 型60.00 H∃ 40.00 20.00 0.000

ヽ、

ヽヽ 現状 追加取り引きだけ 追加取り引き実行後

/

/

/

/

■一一■′

イ「

′′

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ノ■ ′■ ノ■ ノ■ 一 84.00 86.00 88.00 対象商品価格 (a)ポジション分析 90.00 92.00 9.000 8.000 7.000 0 0 0 0 0 0 6 5 鮮皿樹霜 4.000 3.000 2.000 1.000  ̄■ ̄■ ̄ 90.0 ■●■・-27,8  ̄-69.3 ■ 7.0 ---48,5 行使価格2 / 一一 ̄ ̄、・-\ ■---、

ゝ、

85.50 86.00 86-50 87.00 87.50 88,00 88.50 8g.00 行傭価格1 (b)最適性分析 図7 オプションの最適取り引き決定支援システムの例 ポジション分析(a)払追加取り引きによるポジションの価値の 変化を把捉することができる。最適性分析(b)では,取り引きパラメータ(行使価格lと行使価格2)が調整日標の達成へ及ぼす影 響を読み取ることができる。 No.2Name:ストラドルの買い if 「(+),0(-),K(+) then 取り引き1売買:買い 種類:コール 行使価格:S-0.5,S十0.5 行使期日:1,180 売買額:5,20 取り引き2 売買:買い 種類:プット 行使価格:S-0.5,S十0.5 行使期日:1,180 売買額:5,20 制約条件:売買額(取り引き1)=売買額(取り引き2) 注:l ̄1(+)〔感応度「を上昇(+)させる.〕 Il,0,K(感応度の例),S(対象商品の現在価格) 図8 ポジション取り引き戦略選択のノウハウの表現 価値と感 応度の変化を示す定性的情報と,取り引き戦略を構成する取り引きの組 み合わせを記述する。

8

以上,ディーリング業務へのAIの適用について述べた。ノ ウハウを,あいまいさを許容するルールによって記述し,ル

ールを試行錯誤的に定義,通用,検証するAIシステムが有効

であることを示した。ディーラーは,AIシステムを利用して, ノウハウの検証と意思決定とに役立つ情報を得ることができ る。具体的な適用例として,債券先物チャートのテクニカル 分析支援システムと,オプションの最適取り引き決定支援シ ステムについて述べた。 本来ESは,専門家の知識を非専門家が利用し,問題解決に 役立てるというシステムであった。ディーリング業務はノウ

ハウが確立されておらず,ノウハウの有効性がダイナミック

に変化するのでESに適さない。本稿では,このような状況で

は,ESは専門家の思考を支援するツール,特に思考のシミュ

レータとして使えることを示した。人間の思考を支援するツ ールとしてのESの利用は,今後増加すると考える。 参考文献 1)中村,外:相続相談エキスパートシステム,日立評論,70,11, 1150∼1155(昭63-11) 2)坂本,外:年金相談エキスノ、←-トンステム,日立評論,70,11, 1156∼1159(昭63-11) 3) 坂本,外:新金融商品開発支援システム「天才くん+の開発, 日立評論,72,11,1147-1150(平2-11) 4)合宝:株式相場のテクニカル分析 ファンドマネジャーの眼, 日本経済新聞社(昭60)

5)D.Leinweber:Knowledge-Based Systems for Financial Applications,IEEE Expert,Vol.3,No.3,pp.18∼

31(1988)

6)C.Yasunobu,et al∴A Knowledge-Based Technical

AnalysisSystemforFinancialDecision-Making,Proc.of

Pacific RimInternationalConference on

ArtificialInte11i-gence'90(1990) 7)丸岡,外:複数時系列データのパターン認識型推論方式の提 案,情報処理学会第41回全国大会,2-35∼2-36(平2-9) 8)大村,外:オフDションの理論と応用,東洋経済新聞社(昭63) 9)C,Lassez,etal.:ConstraintLogicProgrammingandOp-tionTrading,IEEEExpert,Vol.2,No.3,pp.42∼50(1987) 10)伊能,外:オプション取引向けポジション管理支援システムに おける取引最適化方式の提案,情報処理学会第41回全国大会, 2-39∼2-40(平2-9)

参照

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