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高度化する揚水発電技術の動向

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特集

最近の火力・水力発電技術

高度化する揚水発電技術の動向

TrendsinPump・TurbineandGenerator-MotorTechno10gyforHighHead,

LargeCapacityPumped-StoragePowerPlant

玉造貞一*

高橋容ニ**

/n滋L・ん才 7七〝ヱ〟/∫J/カ7〃イ 1′むJ71JんJ///ノ∫/// (a)最高試験落う引,500mまで可能な実落差・実揚程試験設備 紳 ′も 乞二′奄ふふ

ごま呈

、小′泌義盛磯

 ̄脱退■-′ミ〟涼冬、∨ン′ 〔′欠.ち笹ペ 淘誌.<.漉汝3、γ"-.即-野〟ぷ野攣攣、狩野き㌘7竿器撃済争も・ 一群琴猥 く.㌻壷 (b)300MW, 600「/mln相当の 可変連発電電動機の回転子 モックアップモデル(中部電 力株式会社との共同研究) (c)有限要素法によるランナ 振動モード解析 帝甲甲■ノ頂メ 高度化する揚水発電技術 より高い揚水発電技術の開発のため,さまざまな試験・研究設備を駆使した検証を行っている。

揚水発電は,ピーク電ノJ需要への優れた即応性を

発揮するとともに,電力の大規模貯蔵と電力系統の

経済的連用に役立つことから,その重要性はますま

す高まっている。電力系統規模の噌人に伴い,揚水

発毛所の大容量化も図られる傾向にあり,経済性の

IF-=二をも考慮に入れてポンプ水車の単機容量増大

化,高落差化,および高速化の技術開発,ならびに

発電電動機の高速・大容量化の技術開発が推進され

ている。現在,束京電力株式会社葛野川発電所では,

単機容量400MW,最高有効落差728m,500r/min,

4台の揚水発電所の建設が進められており,日立製

作所は,この1号機ポンプ水車,発電電動機の設計

*[=?二製作所電力事業部技術卜(電気部門) ** 口11二製作所電力事業部

に着手している。

また,1993年12月に関西電力株式会社人河内発電

所4号機400MW可変連接水ヲ芭電システムが運転糊

始し,実運用が始まった。このシステムの才采川によ

り,揚水運転電力の調整が七J能となり,電ノJ系統周

波数を一定に維持するために役立っている。また,

電力優先制御によって人力,出力の高速制御も吋能

なことから,今後の系統安定化機器としての浦川も

検討されている。現在, ̄叶変速システムのいっそう

の高性能化,小型化のため技術開発を推進しつつあ

り,今後の適用拡大が期待されている。

57

(2)

730 日立評論 VOL.了6 No.10(1994-10)

はじめに

電ノJ需要の増加に伴ってオフピーク時の余剰電力を貯

蔵し,ピーク負荷時に優れた追従性を発揮する揚水発電

所の建設も着実に増加し,国内の揚水発電設備容量は現

在約20,000MWとなり,全水力発電設備の50%を超えて いる。 揚水発電所は,1970年代からの大型火力,原子力発電

の開発に伴って大容量化のニーズが高まり,経済性を追

求する目的で高落差化も飛躍的に推し進められた。 198()年代に入ると夜間のAFC(Automatic Frequency C()TltrOl)容量確保のため,揚水運転電力を調整可能にす る新しい技術として,揚水発電設備の可変速化の研究を 問1叶屯力株式会社と共同で始めた。その成果を反映した ′夷∫ ̄l ̄J機の1号機として関所電力株式会社大河内発電所 (以卜,大河内発電所と言う。)400MW可変速揚水発電シ

ステムが1993年12月に営業遷幸云を開始し,揚水発電は新

たな時f ̄とに入った。

rl七製作所は,揚水発電所の高落差化,大容量化およ

び多機能化のニーズにこたえるべく新技術の開発に努

め,現在までに累計100台,21,340MWを納入するに至 っている。 ここでは,ますます高落差化,高速化,大容量化およ

び多機能化が求められる揚水発電機器の技術動向につい

て述べる。

ポンプ水車の高落差・高速・大容量化への

取組み

ポンプ水車の出力は落差と流量に比例する。同一「-h力

に対して落差を高くすると流量は少なくて済むのに加 え,ランナ間遠を大きくすることができ水車,発電機は 応速化,小型化が可能となる。また,ダムの高さや水路 などの土木構造物の小型化も可能となることから,発電 所単位出力当たr)の建設費の低減が図れる。同時に,電 力系統規模の増大とともに揚水発電所の大容量化も進め られ,高落差化の技術開発とともに単機出力増大のため の技術開発が行われてきた。

時代とともに高落差化,大容量化が図られ,現在,東

京電力株式会社葛野川発電所向けポンプ水車では最高有

効落差728m,単機最大出力412MWの建設が進められて いる(図1,2参照)。一方,同じ出力,同じ落差でも回 転速度を高くとることによって機械の寸法が小型化で

き,建屋の縮小化や輸送寸法の縮小化が可能となるため,

58 800 700 600 0 0 0 0 0 0 5 4 3 (∈) 棚轢宗仲爬咄 200 100 0 キャヒンクリ 沼原 ビラリーノ (スペイン)

センク雛祭;

フロヒテンツ: (イタリア): タフェル○ (スイス): 大森jr タ 城山 三尾 池原t ●畑薙第一 ム・-・-・・ ハイワッセ(米国) 大平 チャイラ けルカリア) パソナバスタ ケ‥

(詰J誌7J

奥吉野 ● 奥清津 ●奥多々良木 新豊根 喜撰山 ○‥‥・‥・・……■ 蔓本+1l一.⊥..._. 三原● 葛野川 △今市 △広州中国) ■ 俣野川 奥美濃 注: ● (日立製作所納入) A (他社納入) -(日 本) =・…(外 国) 1950 1960 1970 1980 1990 2000 運転開始年 図lポンプ水車最高有効落差の推移 】970年代から落差が500mを超える地点が続々開発され,現在は 700mを超える地点の建設が進められている。 ポンプ7Jく車の高比速度化も着実に進展し,特に高落差領 域では高い比速度が選定される傾向にある(図3参照)。 有効落差が600mを超えるような超高落差ポンプ水中 の実印化技術閉ヲ芭では,基本特性開発はもちろんのこと,

ランナの強度,変動応力,水Ill振動年別生などについて-l一

分な検討が必要となる。このため従来の件能模型試験に

加えて,`夫落差・某揚程校乃り試験装 ̄琵引こより,実機運転

500 0 0 0 0 0 0 4 3 2 (妻r主 只召七唯㈱声卜八芯 0 0

ム ハイワ・ノセ 休回) △I■ 旭薙 大森川 ハスカワンティ休三J Jゝ-・‥・・-・・・・・・・・・ ヘルムス(木劃: 富野.

ラノクーンマンテン㈱丁与Lランシン

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フレンハイム キルホア休副 長野 真多々良木 今市

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●●史′看遠 大平 争●′調 節慧眼 安曇 矢木沢 ●城山 ●三尾 ●稟′看ノ手第二 淫: ● (日立製作所納入)(他社納入) -(日 本) ・…・・(外 国) 1950 1960 1970 1980 1990 2000 運転開始年 図2 ポンプ水車最大出力の推移 大容量化のニーズに伴って単機出力300∼400MWクラスの開発 が主流を占めている。

(3)

高度化する揚水発電技術の動向 731 に州二11する状況下でのランナの変動応力や各部の水J仁脈 軌,ランナと1占1左部カバーとの達成振軌などを測左して いる。これによって零内刀刀根枚数,ランナ刀刀根枚数,ラ ンナおよび_lニカバー, ̄トカバーの形状などがどのような 影響を一与一えるかを確認し,最適な設計を臼才旨すとともに 各種要素技術の再評価,確認試験などを行い信頼件の確 保に努めている。 また,砧落差地よ(では7k帖鉄管や放水路の裡数日主機 に対する共用化が多くなってきており,これら水路系と

ポンプ水中・との協調確認も重安な検討課題である。この

ため,模当リボンプ水車の一ノ盲全特件を川い,負荷遮断,人 ノJ遮断など,さまぎまなケースについて過権現象シミュ レーションを行っている。

高速・大容量発電電動機

ポンプ水坤の開発と何様,発電電勅械のiたi速・人容畏 化も村長に進められてきた(図4参月号i)。近年の高速・大 糾請北計何では,発電電軌機の技術開発妃通しが単機容 _呈丘状左の長安な要素となりつつある。 rfごi速・人芥呆機になると,トー1転部の構造,強度,振動 や通風冷却特性が重要課題となってくる。高速機の場†ナ, 川串云子はリングリム方式やマッシブロー夕方式,界磁ポ ールの支持にはダイヤモンドテールや袴列Tテール,ダ ブテール ̄方式が適用されている。しかし,大容量化に伴 って強度や振軌に対する要求条件が厳しくなり,また, 輸送寸法が制約されることから,通風冷却や分解・組立・ 保寸も含めたさまざまな条件のもとで構造の名主退化を挫】 る必一安がある。 冷却件能に関しては,瑞速・人容貰化とともに軸ノブ向 鉄心の積み高さが高くなり軸方IhJ風速分布の均・イヒが難 しくなる。そのため,計算機によるシミュレーションお よび水流モデルによる模型試験により,冷却通風端のナ 測,風速分布の最適化が図られている。また近年,通風 ブロワを省略し,ロータリムのダクトによるフアン効果 を利用したリムダクト通風方式が,保守簡素化のため高 速機への適用も図られるようになってきている。

高速・大容量機の新規地点開発に際しては,計算機に

よる基本特性解析,応九

軸系解析はもちろんのこと,

必要に応じて実物大コンポーネントモデルを製作し,実

応力や機能の確認試験を実施することにより,いっそう の信輯性確保に努めている。 1,000 0 0 0 0 0 0 7 RJ 3 (∈) 咄快宗枠順略 0 0 50 ヽ¢ ● ● ● 毎ざ

・、・∫=諾呂-+35ノ、

(+EC4001) ▲ 運転開婚年 注:▲(1970年以前) ◇ ◇ ◇ ◇ ▲▲ ▲▲▲▲ ▲ ◇(197ト1985年) ▲ ●(1986年以降) ○(建設中) 0 50 100 200 水車の比速度.\◆.ヾ(m/kW) 300 400

▲\▼ハ・=二辻ピー,〟=▲\・。×、〃

ノ/1,25 二二で,.\':回転速度(「/mln) ノJ:最大出力(kW) 〃:最高有効落差(m) ん:高速化係数 図3 世界の主なポンプ水車比速度〟5と有効落差の関係 時代とともに高落差地点では比速度帖を高く選定し,高速化さ れるようになってきている。

b

可変速揚水発電システム

吋変速揚水発電システムの品大の特長は,ポンプの帥 入力が卜∫l転速J真の約三乗に比例することを利別し,卜り転

速度を変化させることによって揚水遵掛l・の電軌機人力

を調整し,AFC運転を ̄・Jr能にしたことである。 そのほかに, (1)ポンプ水中の変落莫運転禎域の拡大,部分負荷逆転 詳i域の拡大,効率向上 (2)揚水起幼時,解列時の系統への電力変動の低減,調 印運卒去巾の損失低減 (3)1_‖1転作の慣性エネルギーを利別して高速肋磁制御を 行うことにより,系統との瞬時電力授′受が叶能となって

系統安定度が向__1二

などの特長がある。

日立製作所の可変速揚水発電システムは,当初から電

力調整を目的として開発した電力優先制御を特長とし,

マイクロコンピュータによる高速ディジタル制御によっ

て応答性を高め,さらに系統事故時でも優れた安定性を

発揮するシステムとしている。大河内発電所4号機の運

59

(4)

732 日立評論 VOL.76 No.10(199410) (∪盲\+・<≧主 世G軸増収回・醐牌 000 000 ㈹ ㈹ 000 00 50 00 50 ∞ 3 2 2 1-1 50,000 城山 奥多々良木 沼原 喜子冥山 大平 奥高津 ●南原 フ′レンハイム キルホア ラティングトン 高根第一 三原 俣野ノ 天山 大河内

ル化,計算機を活用した情報処理のネットワーク化など

の技術革新をもたらし,監視制御装置の機能向上,信頼 草野川 性向上を実現させている。揚水発電所の選別高度化に伴

い,きめ細かな運転情報を迅速かつ的確に,わかりやす

奥青草第二 奥矢作第二

注:●(昌芸警賃芸諾布)

1965 197019751g80198519901995 2000 2005 運転開始年 図4 発電電動機の高速・大容量化の推移 ポンプ水車と同様,発電電動棟の高速・大容量化も着実に開発 が進められてきた。 車云により,有効電力指令に対する電力応答,AFCなどの

性能がきわめて優れていることが実証され,新しい役割

を担う揚水発電所として,今後の発展が期待できる貴重 な成果が得られた。 可変速揚水発電は,系統の周波数調整機能に加え,有 効電九

無効電ノJの急速応答性と系統事故時の動揺に対

する優れた安定性を浦用し,電力系続の運f引こさまざま

な貢献が期待できると思われる。今後の適用拡大のため,

吋変速発電電動機の高速化,大容量化の技術開発も重安

な課題である。中部電力株式会社との共同研究により, 回転子のパインドガ式に新素材を適用するなど,高速化

対応技術の開発を行い,300MW,600r/min相当の可変

連発電電動機の実物人外径のlロl転了一モデルによる試験を 実施して,実機適用への見通しを得ている。 さらに,大容量パワーエレクトロニクス素子の開発,  ̄吋変速システムの高機能化・簡素化・小型化のための技 術開発を推進し,高信頼性の確保と経済性の追求を目指 している。

B

監視制御システム

近年のディジタル技術の進展は,制御装置のデイジタ く提供する機能が重要になってきている。 このため,監視制御装置はマンマシン機能の充実を阿 り,CRTやフラットディスプレイなどを採用した運転し やすいマンマシンシステムを実現している。また,運 転,保三才業務の支援には機器の状態監視・異常子細シス テム,計算機の高度な情報処理能力を活用した故障診断, 復IFl支援システムなどの活用を推進している。 へ彼のシステムでは中央給電所∼制御所間を含めたよ

り広範l瑚なネットワーク化による情報連係の強化と,監

視制御情報,設備保守情報など多様な情報の一元化や整

理解析手法の確立,異常予知診断,保守点検の計両支援

などのし、つそうの機能充実が担lられるであろう。

8

おわりに

揚水発電所の経済性向上のため,高落差化,高速化お よび人容量化とともに,多機能化のための ̄叶変速揚水発 電システムの通用拡大へ向けての技術開発が求められつ つある。また,落差が800mを超えるような計画に対して

は,二段ポンプ水車の性能開発,試設計を実施し,その

実機製作の見通しも得ており実現が行たれる。さらに, 海水を利鞘した電源開発株式会社沖縄粘水揚水パイロッ トプラントの建設が進められつつあり,長年の研究成果 を反映したポンプ水車も一部据付けが開始されており, 将米の揚水発電の立地拡大のため,その成果が期待され ている。

近年,電気の消費軌l占Jの変化に伴って冬季最人需要が

増加し,揚水機器の運転頻度の増加,オーバホール期間 の確保難など保守上の新しい問題も出てきており,ま た,時代とともに熟練技術者の確保も難しくなってきて

いる。これらの社会環境の変化も考慮に入れ,経済性,

信頼性の追求とともに運転,保守のしやすい揚水発電機 器の開発に向けていっそうの努力が求められている。 参考文献 1)千葉,外:水力発電機器の技術動向,日立評論,70,8, 779∼783(昭63-8) 2)漢,外:可変速水力発電システムの開発,電気学会誌,107 60 巻,3号(昭62) 3)藤木,外:落差7qOm・容量4()()MW級超高落差ポンプ水 車ランナ,日東評論,73,11,1083∼1088(平3-11)

参照

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