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あれも見たい!これも撮りたい!~私の昆虫撮影記~(その3 空飛ぶハサミムシ)

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Academic year: 2021

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植 物 防 疫  第69 巻 第 1 号 (2015 年) ― 74 ― 74 昆虫というと,どんな種類やグループを思い浮かべる だろうか。まずチョウやトンボ等飛翔する昆虫を思い浮 かべる人も少なくないと思う。これらのグループに限ら ず,ハエや,カ,ハチ等実に多くの昆虫たちが飛ぶこと ができる。昆虫類で一番大きなグループであるコウチュ ウも,硬い鞘バネの下には膜状の翅をもっているので, 飛翔可能である。飛翔により空中を移動できるというこ とは,活動範囲をまさに飛躍的に広げることができる し,天敵である鳥やトカゲ等の攻撃から逃れられる。こ うして翅をもつ昆虫たちが,現在地球上で繁栄している。 しかし昆虫の中には,獲得した翅を進化の途中で失っ たグループも存在する。例えばノミの仲間は,すばらし い跳躍力と引き替えに翅を失ったので,翅をもたない昆 虫の代表例といえるだろう。このほかにも植物の枝や葉 に擬態することで,逃げるより動かない選択をしたナナ フシのグループの多くは,翅が小型化もしくは失ってい る。またバッタやコウチュウの仲間でも,棲んでいる場 所やどんな生活をしているかによって,翅が退化した種 類が数多く見られる。一方でチョウは全種が飛翔できる が,チョウと同じグループに属するガのなかには,翅を 失ったものもいる。例えば秋から厳冬期に出現するフユ シャク類は,メスの翅が退化している。天敵の活動時期 から逃れるために,厳冬期のそれも夜間に活動するフユ シャクの仲間は,熱が逃げないように翅を退化させたと 説明されるが,実際に観察してみると,翅がない種や短 い翅をもつ種等,その形態は様々である。しかしこんな 寒い中で生殖する道を選んだ彼らを見ていると(図―1), 進化の不思議さを感じてしまう。 さて昆虫には飛べないグループもいることは,特に驚 くことではないかもしれないが,飛べないと思っていた グループに,飛べる種がいるのを知ったのは衝撃的であ った。それは北海道の十勝地方に出かけたときだった。 そこで私は尾部に大きなハサミをもったハサミムシを見 つけた。でもそのハサミは物を挟めるような形態ではな く,太い尾肢のように見えたので印象に残った。あちら こちらに見られたので,写真を撮ろうとヨモギの葉にい た個体をファインダー越しに覗いていると,せわしなく していた個体が,葉の上でじっとしていたと思ったら, いきなり白い翅が広がり(図―2),すぐにたたまれた。 そしてほかの葉に移ってまた翅を広げ,今度は飛んでい ってしまった。まさかの飛翔に本当に驚いたが,「ハサ ミ」の形態から,この虫はコウチュウのハネカクシの仲 間なのだと思い直し,手持ちの図鑑で調べたが種名はわ からなかった。その後大学に戻り詳しい甲虫図鑑を調べ ても載っておらず途方に暮れたが,もしかしてハサミム シ?と図鑑を開くと,そこにその昆虫がいた…エゾハサ ミムシだった。太い尾肢に見えたものは,やはり「ハサ ミ」だったのだ。まさかハサミムシに飛翔できる種がい るとは思いもよらなかった。あのとき現地でハサミムシ が飛んだと認識していたら,もっと思い入れの違う写真 が撮影できたかもしれない。 私は「ハサミムシは飛べない」と決めつけていたが, 実際には飛翔可能な種もいたわけで,本当にびっくりし た。そして昆虫は本当に奥が深いと感心するとともに, 思い込みをしていた自分を戒めた。ほかの昆虫にもそん な「意外な」種がいるのだろうか…。頭を柔らかくして 観察しないと…。

エッセイ

あれも見たい!これも撮りたい!

∼私の昆虫撮影記∼

(その 3 空飛ぶハサミムシ)

野村 昌史

(のむら まさし)

千葉大学大学院 准教授

図−1 ウスバフユシャク交尾(左がメス) 図−2 翅を広げたエゾハサミムシ

参照

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