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市街地再開発事業による商業集積の効率化に関する研究

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市街地再開発事業による商業集積の効率化に関する研究

―市街地再開発事業は商業活性化に繋がっているか―

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU19708 田村 俊和

1.はじめに 1-1.背景

市街地再開発事業は、延焼危険性が高いエリア等における不燃化・

共同化による都市機能の更新を主な目的として事業が行われてきた が、都市のコンパクト化を進める中で商店街の再編・再整備が主要な テーマの一つとなってきている。市街地再開発事業は、権利者や行政、

事業者など様々な関係者との調整が必要であり事業が長期化するこ とが多い。特に権利者の意向は事業推進に大きな影響を与えることと なるため、初期段階から情報収集を積極的に行うこととなる。しかし、

全権利者が事業に同意していることはほとんどないため、情報収集自 体が困難な場合もある。これまで、政府は中心市街地の問題に対して 様々な策を講じているが抜本的な解決には至っていない。商店街等で は各個人が店舗を所有・運営しており、私的な便益によりテナント誘 致・運営が行われているため、地域全体として最適で効率的な商業集 積になっていない可能性がある。

1-2.先行研究

市街地再開発事業等が周辺地域に与える影響に関して考察した研 究は小林ほか(2015)や沼田ほか(2011)などいくつか存在するが事例 研究が中心であり、総括的に捉えて分析を行った研究はほとんど見ら れない。事業期間の研究は小山(2013)や水谷(2012)などが存在するが 用途に着目した研究は少ない。中心市街地活性化施策等については、

箸本(2016)や西郷(2009)などいくつか存在するが、これらも事例研究 や歴史的経緯からの考察が中心の研究が多く、経済学的な理論に基づ いた研究は少ない。本研究では、市街地再開発事業が商業集積に与え る影響という視点から研究を行っている。

1-3.研究の構成

本稿の構成は以下の通りである。第2章では、個人所有店舗の集積 地域における課題を整理するとともに、商業集積に対する市街地再開 発事業による効果を外部性の内部化、正の外部効果の両視点から整理 し仮説を設定する。第3章では、市街地再開発事業を推進する上で発 生する取引費用及び従前・従後に商業用途が含まれる場合に付加され る取引費用について整理し仮説を設定する。第4章では、市街地再開 発事業が商業集積の効率化に与える影響について「総額に与える影 響」、「効率化に与える影響」、「既に衰退したエリアにおける影響」の 3視点より分析を行っている。第5章では、従前・従後の商業用途の 存在が事業期間に与える影響について分析を行っている。第6章では、

特徴的な事例を抽出し、今後の商業再編において重要となるポイント について整理している。第7章では、商業運営の効率化促進及び権利 調整費用低減に関して政策提言を行っている。

2.市街地再開発事業による商業再編の効果 2-1.個人が所有する店舗が集積する地域の課題

各個人が所有している店舗の場合、商業集積地全体の利益を考える インセンティブが乏しく、私的便益によって各店舗を運営することと なる。したがって、同一商店街等において、賃料の高い同業種テナン トの複数出店や空き店舗の増加等が見られることとなり、その結果、

地域全体の価値を低下させることとなる。

2-2.市街地再開発事業による商業店舗の外部性の内部化 市街地再開発事業による商業再編により外部性を内部化できる可 能性がある。事業の中で権利者が商業床の一部若しくは全部を所有し たり商業床を共同で所有したりすることで負の外部性の一部若しく は全部が内部化されることになる。これにより、再開発建物や地域全 体の便益を考慮するインセンティブが創出される。また事業を契機に、

所有している土地や建物の転用がしやすくなることも、外部性の内部 化のもう一つのタイプと考えられる。

2-3.市街地再開発事業の周辺商業地域への正の外部効果 消費者にとっては、各店舗が平面的に拡がっている商店街等はサー チコストが高い商品購入方法の一つと言える。市街地再開発事業を行 うことにより、再開発建物内のサーチコストは低減され、同業種の店 舗が近接する場合には商品の比較も容易になる。また、事業の中で駐 車場や駐輪場が整備されることで、アクセス性が向上する。さらには、

生産者にとっては集客のための広告宣伝費が低減する。これらは商業 集積の利点となる。

2-4.仮説

市街地再開発事業により、テナントの非効率的な配置等の外部性の 一部が内部化され、地区内の生産性向上に寄与するのではないか。ま た、消費者が店舗を探索するためのサーチコストの低減等や生産者の 集客のための広告宣伝費の低減等がなされ、再開発地区を含む地域全 体に正の効果を与えるのではないか。

3.商業用途が市街地再開発事業の取引費用に与える影響 3-1.市街地再開発事業における取引費用

初期段階では、勉強会等を行い事業の理解を深めるとともに、事業 内容を周知させる必要がある。事業内容は実現可能な計画である必要 があるため、行政等との事前協議を行った上での計画としなければな らない。次の段階では、施設計画や資金計画等を具体化させるととも に、各権利者の従前資産評価を確定させ、事業スケジュールに沿って より具体的な協議に基づく権利調整が必要となる。権利者自身の資産 に係る事柄に関する協議となるため、様々な理由から取引費用が過大 になる可能性がある期間でもある。

3-2.商店街等で実施される市街地再開発事業における取引費用 従前、再開発地区内に商業店舗がある場合には、組合と権利者との 間での情報の非対称性が原因となり補償や移転先協議が難航し、事業 が長期化する可能性がある。特に商店街等においては、権利変換計画 認可以降、解体までの時期に移転先等を確保する必要があるが条件の 良い空き店舗は希少である。組合が、各権利者の意向や移転先の希望 等を完全に知ることが出来れば、それに基づいた各空き店舗への円滑 な移転が可能になるため、各権利者の正確な情報を可能な限り入手し ておくことが重要となる。

従後に商業用途を含む市街地再開発事業を行う場合には、周辺住民 の顧客を奪われるのではないかという懸念と集客効果に対する期待 から、様々な方法で事業の情報を得ようとしたり用途や施設計画等へ の要望が提出されたりすることが考えられる。組合は周辺地域への説 明コストが過大にかかっているものと考えられる。

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3-3.仮説

従前に再開発地区内に商業店舗がある場合には、補償や移転先等に 関して権利者と組合との間で情報の非対称の問題が起こっているの ではないか。また、従後に商業用途を含む事業の場合には、周辺住民 等への説明などにより取引費用を過大になっているのではないか。こ れらが原因となり、事業期間を長期化させているものと考える。

4.市街地再開発事業における外部性に関する実証分析 4-1使用するデータについて

本研究においては、2004 年と 2014 年に経済産業省が実施した商業 統計の結果に基づき作成された 500m メッシュデータ内の小売販売額 及び従業者数のデータを用いた従業者当たり小売販売額を被説明変 数としている。2004 年調査の小売販売額は万円単位、売場面積は㎡単 位であるのに対して、2014 年調査の小売販売額は千万円単位、売場面 積は千㎡単位で公表されている。したがって、500 ㎡未満の売場面積 や詳細な変化を捉えることが出来ないため、従業者当たり小売販売額 を用いている。また、同様に 500 万円未満の小売販売額や詳細な変化 については捉えることが出来ておらず、小売販売額が 500 万円未満の メッシュデータについては推計データから除外している。

説明変数である市街地再開発事業の概要については、公益社団法人 全国市街地再開発協会の日本の都市再開発第7集及び第8集を中心 にデータを構築している。地区によっては全ての情報が記載されてい ない場合があり、除外せざるを得なかった地区もある。また、用途別 延床面積については同協会の「機関誌 市街地再開発」により補足し ている。なお、これら事業概要については、電子データとして整理さ れていないため、各概要について電子化を行った上で実証分析を行っ ている。本研究においては、権利変換方式の第一種事業の内、最も割 合が多い組合施行を対象とし、2004 年商業統計調査から 2014 年商業 統計調査の間に竣工した事業を抽出する。その上で、市街地再開発事 業を含むメッシュデータをトリートメントデータ、その周辺8メッシ ュのデータをコントロールデータとして分析している。なお、メッシ ュ内に再開発地区が複数地区含まれる場合には、面積や権利者数を合 算し、1事業として取り扱うこととする。本研究においては、再開発 地区内の外部性の内部化及び周辺地域への外部効果について、各効果 が合算された効果について推計を行っている。

4-2.市街地再開発事業が商業活性化に与える影響 4-2-1.仮説1

「市街地再開発事業を行うことで、他の地域に比べて商業活動が活 性化され、小売販売額が増加するのではないか。」

市街地再開発事業により居住人口やオフィスワーカー等が増加し、

商業店舗が支払うべき広告宣伝費等及び消費者側のサーチコスト・商 品を比較するための費用等の低減につながる。推計モデル1では、市 街地再開発事業による小売販売額自体の変化に着目して推計を行う。

4-2-2.推計式及び変数の説明

仮説1について、最小二乗法を用いて分析を行う。

推計モデル1:ln(小売販売額変化率)=β0+β1小売販売額過去減少ダミー

+β223 区ダミー+β3駅有メッシュダミー+β4再開発ダミー+β5(再開発ダミ ー×小売販売額過去減少ダミー)+β6(再開発ダミー×最寄駅からの徒歩時間)

+β7(再開発ダミー×商業床効率化ダミー)+β8(再開発ダミー×竣工後経過 月数)+β9(再開発ダミー×竣工後経過月数×商業床効率化ダミー)+β10(再開 発ダミー×主用途商業ダミー)+β11(再開発ダミー×主用途業務ダミー)+β

12(再開発ダミー×主用途住宅ダミー)+β13(再開発ダミー×従後商業床面積大 規模ダミー)+β14(再開発ダミー×従後業務床面積)+β15(再開発ダミー×従 後総戸数)+ε

4-2-3.推計結果及び考察

「小売販売額過去減少ダミー」及び「駅有メッシュダミー」は1%

有意水準でマイナスに有意、「再開発ダミー×従後商業床面積大規模 ダミー」は5%有意水準でプラスに有意、「再開発ダミー×従後総戸 数」は 10%有意水準でマイナスに有意という結果となった。

全国的に人口が減少するとともに、インターネットによるショッピ ングが定着してきている中で、実店舗における商業が衰退するエリア とそうでないエリアに二極化してきており、過去小売販売額が減少し ている、つまり商業が衰退しているエリアにおいては、パイとして商 業活動を活性化させることは困難な状況になってきていると考えら れる。また、駅を含むメッシュの減少傾向は主に地方都市の中心市街 地の衰退を示しているものと考えられる。

従後商業床面積が大規模(10,000 ㎡以上)な事業を含むメッシュに ついては、小売販売額が増加するような地域で大規模商業用途を含む 事業が行われやすいという逆の因果が働き、過大に評価されている可 能性があるが、大規模商業床を含む事業が地域の商業活性化に寄与す る可能性を示唆している。従後総戸数ついては、小売販売額が減少す るような地域では住宅用途に転換するような事業が行われやすいと いう逆の因果関係が働く可能性が考えられる。

4-3.市街地再開発事業による効率化が商業活性化に与える影響 4-3-1.仮説2

「市街地再開発事業により効率的な商業運営が行われることとなり、

単位当り小売販売額が増加するのではないか。」

推計モデル2では、商業運営の効率化に着目する。事業により、再 開発地区内の商業床の効率化等が行われた場合、外部性が内部化され 地域の商業運営が効率化されることで、生産者側の生産効率を改善す ることになる。以上のような仮説の元、従業者当たり小売販売額の変 化率を被説明変数として推計を行う。

4-3-2.推計式及び変数の説明

仮説2について、最小二乗法を用いて分析を行う。

推計モデル2:ln(従業者当たり小売販売額変化率)=β0+β1従業者当たり 小売販売額過去減少ダミー+β223 区ダミー+β3駅有メッシュダミー+β4再 開発ダミー+β5(再開発ダミー×従業者当たり小売販売額過去減少ダミー)+

β6(再開発ダミー×最寄駅からの徒歩時間)+β7(再開発ダミー×商業床効率 化ダミー)+β8(再開発ダミー×竣工後経過月数)+β9(再開発ダミー×竣工後 経過月数×商業床効率化ダミー)+β10(再開発ダミー×従後商業床面積)+β

11(再開発ダミー×従後業務床面積)+β12(再開発ダミー×従後総戸数)+β

13(再開発ダミー×従前店舗棟数)+β14(再開発ダミー×従前権利者総数)+ε 4-3-3.推計結果及び考察

「従業者当たり小売販売額過去減少ダミー」は1%有意水準でプラ スに有意、「再開発ダミー×竣工後経過月数」は5%有意水準でマイ ナスに有意、「23 区ダミー」及び「再開発ダミー」、「再開発ダミー×

商業床効率化ダミー×竣工後経過月数」は 10%有意水準でプラスに 有意、「再開発ダミー×商業床効率化ダミー」は 10%有意水準でマイ ナスに有意という結果となった。

従業者当たり小売販売額については、利益の上がらない店舗を閉店 させたり、従業者を適正な人数に減らしたりするなどし、効率化を図 ることが出来ているものと考えられる。特別区の人口は未だ増加傾向 にあり 、人口増加が小売販売額総額の増額に繋がっているとともに、

特別区内には大規模な商業店舗が多く、効率的な運営が行いやすい環 境が既に整備されているとも考えられる。

商業床を効率化している事業では、従業者当たり小売販売額を減少 させる傾向がある。区分所有店舗を所有しても、利益を上げることが 困難だと感じ商業床を共有するなど逆の因果が大きく影響している

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ものと思われる。事業が完了してから時間が経つと従業者当たり小売 販売額が減少するが、商業床を効率化している場合には、事業が完了 してから時間が経過すると増加する傾向があることが示されている。

商業床が効率化された場合には、私的な便益ではなく、商業施設全体 の便益を考慮し、運営が行われることとなり、それが集客力の継続に 繋がるものと考えられる。以上のように、商業床を効率化した事業で は、事業完了後に単位当り小売販売額を増加させる可能性があること から、効率的な商業再編を目的とした事業を行う際には、事業地区内 の商業床の共有床化若しくはデベロッパー等による保留床の一括取 得も考慮し、事業計画を検討すべきである。

表1:推計モデル2の推計結果

4-4.衰退した地域における市街地再開発事業が商業活性化に与え る影響

4-4-1.仮説3

「既に大幅に商業が衰退しているエリアでは、市街地再開発事業を きっかけとした商業再生は困難なのではないか。」

推計モデル3では、既に商業が衰退している地域では、市街地再開 発事業が商業活性化に寄与しない場合があるのではないかという仮 説について検討する。一定以上の商業店舗が地域に既に存在しない場 合には、商業再編が行われても消費者が求める商品を買い揃えること が出来ないためである。以上のような仮設の元、従業者当たり小売販 売額の変化率を被説明変数として、推計を行う。

4-4-2.推計式及び変数の説明

仮説3について、最小二乗法を用いて分析を行う。

推計モデル3:ln(従業者当たり小売販売額変化率)=β0+β1小売販売額過 去大幅減少ダミー+β223 区ダミー+β3駅有メッシュダミー+β4再開発ダミ ー+β5E(再開発ダミー×小売販売額過去大幅減少ダミー)+ε

4-4-3.推計結果及び考察

「小売販売額過去大幅減少ダミー」は1%有意水準でプラスに有意、

「23 区ダミー」は5%有意水準でプラスに有意、「再開発ダミー×小 売販売額過去大幅減少ダミー」は 10%有意水準でマイナスに有意とい う結果となった。

小売販売額が過去大幅に減少している地域の場合、従業者当たり小 売販売額は増加する傾向にある。これは、利益の上がらない店舗にお いて従業員の削減や閉店などが円滑に行われ、効率的な経営が出来て いる店舗が残るためであると思われる。しかし、小売販売額が過去に 大幅に減少している地域において、市街地再開発事業を行うと、従業 者当たり小売販売額は減少する傾向にある。これは、商業用途の視点 から事業が効果的でない地域を示すものと考えられる。事業完了まで

の間に計画を修正することは可能だが大幅な修正は難しく、単独・少 人数所有の場合に比べて計画を変更するハードルは高い。したがって、

既に商業が衰退している、若しくは衰退する可能性がある地域におい ては、施設計画や用途別の規模について、精査した上で事業を推進す る必要があるとともに、別の方法による商業集積の効率化も併せて検 討すべきである。

5.市街地再開発事業における商業用途の取引費用に関する実証分析 5-1.使用するデータについて

第4章と同様、

(公社)全国市街地再開発協会が発行する『日本

の都市再開発』第7集及び第8集のデータを中心に用いる。被説 明変数は、権利調整期間である準備組合設立から権利変換計画認 可までの期間とし、市街地再開発事業の各地区の事業概要を説明 変数としている。

5-2.市街地再開発事業における商業用途が事業期間に与える影響 5-2-1.仮説

「市街地再開発事業において従前・従後の商業用途は、権利調整費 用を増大させることとなるため、事業を長期化させるのではないか。」 市街地再開発事業による商業再編が有効であるとすれば、可能な限 り遅延なく事業を円滑に推進すべきである。しかし、従前に商業店舗 が存在している若しくは従後に商業用途が含まれる場合には、取引費 用が過大になるとともに、情報の非対称性の問題から円滑な事業推進 が行えなくなる可能性がある。そこで従前従後の商業用途の存在が事 業期間に与える影響について推計を行う。

5-2-2.推計式及び変数の説明

仮説について、最小二乗法を用いて分析を行う。

推計モデル4:準備組合設立から権利変換計画認可までの期間=β0+β1

23

区ダミー+β2小売販売額変化率+β3共有床ダミー+β4商業床

500

㎡以上ダ ミー+β5主要用途商業ダミー+β6主要用途住宅ダミー+β7主要用途業務ダ ミー+β8主要用途公益施設ダミー+β9従前店舗棟数+β10従前権利者総数+

β11従前権利者の残留率+β12従後地区面積+β13従後延床面積+β14容積率上 昇率+ε

5-2-3.推計結果及び考察

「従後延床面積」及び「容積率上昇率」は1%有意水準でプラスに 有意、「小売販売額変化率」及び「主用途商業ダミー」、「主用途住宅ダ ミー」、「従前店舗棟数」は5%有意水準でプラスに有意、「商業床 500

表2:推計モデル4の推計結果

ln(従業者当たり小売販売額変化率) 係数 標準誤差 有意性

従業者当たり小売販売額過去減少ダミー 0.3425691 0.0616244 ***

23区ダミー 0.1242707 0.0675768 *

駅有メッシュダミー -0.0785692 0.0674558

再開発ダミー 0.7201796 0.3887992 *

再開発ダミー×従業者当たり小売販売額過去減少ダミー -0.1533098 0.1794328

再開発ダミー×最寄駅からの徒歩時間 0.0074788 0.0241093

再開発ダミー×商業床効率化ダミー -0.8175101 0.4844340 *

再開発ダミー×竣工後経過月数 -0.0088718 0.0042212 **

再開発ダミー×商業床効率化ダミー×竣工後経過月数 0.0106002 0.0063204 *

再開発ダミー×従後商業床面積 0.0000012 0.0000077

再開発ダミー×従後業務床面積 -0.0000022 0.0000045

再開発ダミー×従後総戸数 -0.0002652 0.0004778

再開発ダミー×従前店舗棟数 -0.0032266 0.0057054

再開発ダミー×従前権利者総数 0.0019797 0.0017595

定数項 -0.1151787 0.0523237 **

***,**,*はそれぞれ有意水準 1%,5%,10%を示す

***,**,*はそれぞれ有意水準 1%,5%,10%を示す

権利調整期間 係数 標準誤差 有意性

23区ダミー -32.1325100 19.4923300

小売販売額変化率 0.0351452 0.0136947 **

共有床ダミー -2.3251980 15.3729700

商業床500㎡以上ダミー 41.2912000 22.4290900 *

主要用途商業ダミー 61.1068500 28.4337200 **

主要用途住宅ダミー 49.5111100 23.3769900 **

主要用途業務ダミー -14.5194000 32.2623900

主要用途公益施設ダミー -8.4949800 36.3673800

従前店舗棟数 1.0449470 0.4776028 **

従前権利者総数 -0.2595941 0.1751919

従前権利者の残留率 -24.1395000 34.6766100

従後地区面積 -0.0026485 0.0014847 *

従後延床面積 0.0012132 0.0003300 ***

容積率上昇率 0.0080226 0.0021909 ***

定数項 13.5065500 30.3794200

(4)

4

㎡以上ダミー」は 10%有意水準でプラスに有意、「従後地区面積」は 10%有意水準でマイナスに有意という結果となった。

小売販売額が増加傾向にある、つまり商業が活性化している地域に おいては、取引費用が増大する可能性がある。自身の従前資産価値が 増加している可能性や従前の商業店舗が賑わっている可能性があり、

補償協議が難航することや反対権利者が多くなる可能性が考えられ る。一定規模以上の商業床が計画される場合や主用途が商業の場合に は、周辺地域からの期待や懸念が高まるため、取引費用が増大すると 思われる。従前店舗棟数が増加すると事業期間を長期化させる傾向が あるのは、補償や移転先等の協議の際に情報の非対称性が発生してい るためであると考えられる。

延床面積及び容積率の上昇率も事業期間に影響する。これらは、景 観や日影の観点から負の外部性を増大させる可能性があり周辺地域 との協議・調整に時間がかかるためと思われる。また、規模が大きく なることで施設計画や行政との協議のための取引費用が増大するこ とも影響しているものと考える。以上より、従前・従後の商業用途が 情報の非対称性の問題や過大な取引費用に繋がり、事業期間を長期化 させる可能性があることが示された。

6.効率的な商業運営に関する事例分析

6-1.事例1 長野駅前A-3地区第一種市街地再開発事業 再開発建物の全床が保留床となっており、その全てを地権者法人

「(株)末広町ビルディング」が取得し、一括で賃貸運営を実施。地権 者法人が、最も効率的なテナント配置を考え、賃料収入を得ているも のと考えられ、収入に応じた地代を土地所有者に支払う仕組み。

6-2.事例2 牧志・安里地区第一種市街地再開発事業

再開発建物内の商業施設を権利者及び参加組合員が共有し、デベロ ッパーが一括で賃借・運営することで効率的な商業運営を実現。区分 所有建物とは違い、テナントの非効率的な配置等の外部性の内部化が 図られている事例。

6-3.事例3 高松丸亀町商店街A街区第一種市街地再開発事業 定期借地権を設定し、権利者中心に出資したまちづくり会社「高松 丸亀町壱番街(株)」が商業床の一部を取得し、一部を賃借し、一括で 商業施設を運営。マネジメントは「高松丸亀町まちづくり(株)」が実 施。収入から管理費等を差し引いた残額を権利者が受け取る仕組みで あり、リスクを負う人たちにより組織構成されていることが特徴。

6-4.事例4 滋賀県長浜市 黒壁スクエア

(株)黒壁は地元企業主導の元、設立されたまちづくり会社であり、

不動産の所有と利用の分離により効率的なテナント運営を実施。コン セプトやテーマを明確にするとともに、地域のニーズを把握している まちづくり会社に利用権を集約することで地域にとって最適なテナ ント誘致を実現。

6-5.事例5 徳島県神山町 神山プロジェクト

中山間過疎地域においてNPO法人グリーンバレーが進める事業の内 の一つである「ワーク・イン・レジデンス」は、多くの資金や人の投 入が難しい中で、町にとって将来必要な用途や働き手を限定して店舗 を誘致する仕組み。商業活性化のみならず移住者を促進することが重 要な目的となっており、他にも様々な事業を推進。

7.まとめ 7-1.政策提言

7-1-1.商業運営の効率化促進に関する方策

商業運営の効率化が図られている地区に関する情報を行政が整理 し発信することで、課題を抱える地区が容易に必要な情報にアクセス

できるようにすべきである。また、商業運営の効率化等を目的に事業 を行う場合には、可能な限り所有権と利用権を分離するなどして商業 運営を一括で行う必要があるため、事業の初期段階における行政から 組合への助言等により、権利者組織組成等の可能性を必ず検討する仕 組みにすべきである。より詳細な正の外部効果の分析を進めた上で、

商業運営の効率化による正の外部効果に着目した補助金の導入も考 えられる。

一方で、既に商業が衰退しているような地域等においては事業導入 について慎重な検討が必要であり、他の方策を合わせて商業運営効率 化の方法を考えるべきである。最後に、再開発地区内だけでなく、周 辺商業店舗等も含めた運営効率化の促進を進めるために、地域一体で 協議する場を行政中心にコーディネートすべきである。地域一体とな った商業再編についてはより効果的であるため、別途補助制度の導入 や組織組成への行政の支援制度が必要になると思われる。

7-1-2.権利調整費用低減に関する方策

従前店舗棟数が事業期間を有意に長期化させていることから、組合 と権利者の間で情報の非対称性の問題が発生している可能性がある ため、それを解消するために初期段階から調査業務等に活用できる補 助制度の導入を検討すべきであり、それが困難な場合には、行政主導 による初期段階からの情報収集を検討すべきである。次に、周辺住民 との取引費用低減のために段階ごとに施行者が発信すべき情報に関 する指針を策定すべきである。また、商店街等においては、周辺の商 業店舗等に関する情報も重要となるため、初期段階から行政を中心と した情報の蓄積を図り、周辺商業店舗の意向や状況を把握すべきであ る。そして、蓄積した権利者等の情報を即時的に共有するためのデー タ共有プラットフォームを行政が作成し、各地区で活用できるように することで、情報の非対称性をより解消することが可能となる。

7-2.おわりに

本研究では、外部性の内部化及び外部効果を合算した形で推計を行 っている。今後外部性に基づく政策を検討するにあたっては、市街地 再開発事業による正の外部効果の詳細な検討を行う必要があり、事業 地区内外の小売販売額や売場面積等に基づく分析をよりサンプル数 を増やした形で行うべきである。現状、政府が収集した行政データの 内、公表データは限られている。本来、政策立案にあたっては客観的 なデータ分析に基づく検証が必要であるため、個人情報の保護は重視 しながらも必要なデータについて研究者の利用を促進すべきである。

また、市街地再開発事業においては、将来の建替えが大きな問題と なっている。都市機能の高度化や防災性の向上、商業の活性化など 様々な観点から効果的な事業になり得るものの、再々開発を見据えた 場合には課題となる部分も存在し、それが負の外部性を創出すること に繋がる可能性もある。今後は市街地再開発事業の前後だけでなく、

再々開発時の影響を踏まえた上で研究を進めなければならず、時代に 即した新たな仕組みを検討する必要がある。その際には、商業だけで なく住宅や業務など様々な用途に関する外部効果の検証が必要であ る。この点については、本研究では言及できておらず、今後の課題と 言える。

主な参考文献、参考資料

・小林寛・浅見泰司(2015)「中心市街地での再開発事業による地価改善効果の 時空間的波及に関する実証分析-高松丸亀町商店街における一連の再開発事 業を事例として-」,都市計画論文集,50-2,pp.239-245

・西郷真理子(2009)「地方都市の中心市街地再生とその持続を実現するマネジ メントのあり方」,地域開発,543 号,pp.17-21

・金本良嗣・藤原徹(2016)『都市経済学(第2版)』東洋経済新報社

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