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地方自治体の取り組みが児童虐待防止へ与える影響
政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU17710 長谷川 智久 1.はじめに
児童虐待は大きな社会問題の一つである。平成28年 度中に全国210か所の児童相談所が児童虐待相談とし て対応した児童虐待相談対応件数は、122,578件(速報 値)で、年々増加の一途を辿っており、児童虐待が発生 した際に重症化を防ぐ点と児童虐待を未然に防止する点 が非常に重要である。なお、児童相談所は児童家庭相談 を行う市町村への援助等を行うが、市町村は子育て支援 サービス等を通じ比較的軽微なケースの対応等を行うこ ととされてきた。
本研究では、近畿圏内全市役所へのアンケート調査を 行い、児童福祉施設入所件数を聞きとることで、本当に 虐待を受けたことによる数の把握ができると考えた。そ こで、調査結果より5ヵ年度のパネルデータを作成し、
児童人口あたりの児童虐待相談対応件数および児童福祉 施設入所件数へ地方自治体の取り組み事業等が与える影 響を、変量効果モデルにより実証分析を行った。
2.児童虐待について 2.1 児童虐待の定義
児童虐待とは以下表1のように分類される。
表1 児童虐待について
2.2 児童虐待防止に係る関連制度
児童虐待防止については、平成12年11月に「児童 虐待の防止等に関する法律」(児童虐待防止法)が施行 され、平成16年度に第1回目の改正がなされた。改正 では、第1条に、児童虐待は著しい人権侵害であること が明記され、また、児童虐待の定義として、児童の面前 でのDVに対して、心理的虐待が適応された。平成19 年度に第2回目の改正がなされ、児童の安全確認等のた めの立ち入り調査等の強化等の明確化などが行われた。
平成20年度の児童福祉法の改正では、乳児家庭全戸訪 問事業等の子育て支援事業の法定化及び努力義務化がな
された。また、平成23年度に民法等の一部改正では、
家庭裁判所は、2年を超えない範囲内に限り親権を停止 する期間を定めることとされた。さらに、平成28年度 の児童福祉法等の改正では、妊娠期から子育て期にわた る切れ目ない支援を行う子育て世代包括支援センターの 全国展開等が行われた。
2.3 児童虐待の現状
児童虐待相談対応件数が増加し続け、相次ぐ児童虐待 による死亡事件や重症事例も生じている。児童虐待が深 刻化する前の早期発見・早期対応が必要であるが、児童 相談所および地方自治体での相談体制の不足が生じ、地 方自治体職員の疲弊を引き起こしている。改善には、相 談体制強化が必要であり、職員の質と量にも関わってく る問題でもある。国においては、法改正における相談体 制の強化など明記されているが、地方自治体の現状と整 合した制度の検討が必要となると考えられる。
2.4 児童虐待に対する地方自治体の取組(アンケート 調査の実施)
以下のとおりアンケート調査を実施した。
表2 アンケート調査の概要
2.5 アンケート調査の結果(概要)
主たる相談窓口は、児童福祉主管課が一番多く、つい で福祉事務所(家庭児童相談室)で、主たる相談窓口の 職員の職種は、児童福祉司と同様の資格および教員免許 を持つ者が多く、児童虐待防止マニュアルの整備状況で は、8割以上が保有しており、マニュアル作成元は市町 村が一番多いという結果となった。また、児童虐待防止 の研修実施状況は、8割で行われており、研修の回数は 最も多い回数が3~4回/年で、研修実施主体は他機関 への参加が多いという結果となった。さらに、啓発活動 は住民向けイベントの開催等で実施割合が低い結果とな り、啓発活動(その他)は研修開催等があった。
○調査期間:平成29年11月22日~12月8日
○調査対象:近畿圏内全市役所(111自治体)
○回 答 数:51自治体
○回 答 率:46%
○調査内容:全6問
問1 児童虐待相談対応件数及び児童福祉施設 入所件数(平成24~28年度実績)
問2 取り組み事業について
問3 主たる相談窓口及び職員の配置状況 問4 児童虐待防止マニュアルの整備状況 問5 児童虐待防止のための研修の実施状況 問6 児童虐待防止啓発活動
身体的虐待 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
性的虐待 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
ネグレクト
児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の 同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者として の監護を著しく怠ること。
心理的虐待
児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶 者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情 にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼす もの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著し い心理的外傷を与える言動を行うこと。
2 3.児童虐待に対する地方自治体の取組についての理論 的考察
そもそも、本当に減らすべきものは児童虐待であるが、
虐待そのものの実態は全てを直接的に観察できるわけで はなく、観察できるのは児童虐待相談対応件数や児童福 祉施設入所件数についてのみである。そのため、本研究 では、まず児童虐待相談対応件数に注目することとする。
地方自治体の虐待防止への投資(取り組み)が増える ことは児童虐待相談対応件数を減らす効果があると考え られる一方、周囲の者の発見や通報を容易にすることか ら、児童虐待相談対応件数を増やす効果があるとも考え られる。この構造を単純な理論モデルで示しておきたい。
虐待の発生数aは、抑止の取り組みeの減少関数とす る。単純化のために、 = 1 − (ただし、0 1 1 1)で あり、eの投資をした場合のコストは = とする。
注目する変数である相談数をnとすると、相談は、ま ず虐待があって、それが周囲の者により行政に対してな されるものであるので、aの増加関数であり、相談支援・
周知の取り組みによる発見・通報確率m(0 1 1 1)の 増加関数でもある。具体的には、= × 、( =1 −
)とする。ただし、mにかかる投資コスト c(m)は人口 密度により異なると考えられる。
人口密度(低、中)の場合は、 = 人口密度(高) の場合は、 =
と仮定する。これは、人口密度(高)の都市の方が、よ り低コストで発見・通報できることを意味する。
ここで、行政が、虐待防止の取り組みeと、相談支援・
周知の取り組みによる発見・通報確率mを同じく0から 1 まで増加させていく(パラメータはeとする)と、相 談件数nは、以下図1のグラフの形状となる。
図1 相談件数と虐待防止の取り組みの関係 上線 = のとき、 = 1 − Ȃ
下線 = のとき、 =1 −
よって、上に凸の形状であること、つまり投資を増や
したときに児童虐待相談対応件数が増える領域(これは、
虐待数が減る効果よりも、より高い確率で相談に至る効 果の方が強いため)がある一方で、ある閾値を越えると、
反対に投資が増えると児童虐待相談対応件数が減る領域 が示された。また、相談支援コストが低い人口密度(高)
( = の地域)では、児童虐待相談対応件数が多く、
グラフの頂点の位置も異なること。そして、同じ投資水 準であっても、人口密度(低、中)( = の地域)で
は、n(e)が増加する領域なのに、こちらのエリアでは減少
する領域に入っているケース(例 e=0.4 くらいのとこ ろ)があることも分かった。
続いて、児童福祉施設入所件数について注目する。人 口密度(高)では、児童虐待相談対応件数が、より低コ ストで発見・通告ができることが示された。そのため、
より重篤になる児童福祉施設入所ケースを、事前に見つ けだすことが可能である。そのため、人口密度(高)で は、未然防止の効果が高くなるため、児童福祉施設入所 件数が少なくなると考えられる。
以上のアンケート調査結果および理論的考察から、以 下の3つの仮説を導きだし、実証分析により検証した。
【仮説1】地方自治体の地域性に応じ、独自の取り組み が児童虐待防止に有効
【仮説2】児童虐待防止に有効な職種の配置
【仮説3】人口密度(高)で、より低コストで児童虐待 を発見・通告できる
4.地方自治体の取り組みが児童虐待へ与える影響につ いての実証分析
4.1 実証分析の方法 4.1.1 分析方法
児童虐待相談対応件数および児童福祉施設入所件数に 影響がある地域性の変数をコントロールする。また、人 口密度の違いについて、取り組み等の効果を検証する。
(1)地域性のコントロール
児童福祉施設入所件数は、各都道府県児童相談所を経 由するため、「都道府県ダミー」を作成。
(2)人口密度
総務省統計局より人口集中地区および準人口集中地区 の数値を用い、人口密度ダミーを作成。
4.1.2 使用するデータ 4.2 推計モデル
調査結果等から表3のとおり説明変数を作成する。
e n
3 表3 説明変数一覧
4.2.1 実証分析1(被説明変数を児童虐待相談対応件 数/児童人口とする変量効果モデル)
被説明変数を児童虐待相談対応件数/児童人口とする 変量効果モデルを構築する。
(実証分析1の推計式)
児童虐待相談対応件数/児童人口
=α+β1(ファミリーサポートセンター事業ダミー)
+β2(事業(その他)ダミー)+β3(福祉事務所ダミー)
+β4(保健師・助産師・看護師ダミー)
+β5(保育士ダミー)+β6(研修ダミー)
+β7(住民向けイベントの開催ダミー)
+β8(滋賀ダミー)+β9(京都ダミー)
+β10(大阪ダミー)+β11(兵庫ダミー)
+β12(和歌山ダミー)+β13(生活保護人員割合)
+β14(児童人口に占める職員の割合)
+β15(人口密度(低)ダミー)
+β16(人口密度(中)ダミー)
+β17(職員数/児童人口×人口密度(低))
+β18(職員数/児童人口×人口密度(中))+ε
※εは誤差項である 4.2.2 実証分析2(被説明変数を児童福祉施設入所件 数/児童人口とする変量効果モデル)
被説明変数を児童福祉施設入所件数/児童人口とする 変量効果モデルを構築。説明変数は実証分析1と同様。
4.2.3 実証分析3-1(被説明変数を児童福祉施設入 所件数/児童虐待相談対応件数とする変量効果モデル)
被説明変数を児童福祉施設入所件数/児童虐待相談対 応件数とする変量効果モデルを構築する。説明変数は実 証分析1と同様。
4.2.4 実証分析3-2(実証分析3-1に説明変数を 追加)
実証分析3-1に説明変数(住民向けイベントの開催 ダミーと人口密度の交差項)を追加し、変量効果モデル を構築する。
4.3 実証分析の結果と考察 4.3.1 実証分析1の結果
推計結果は表4のとおりである。
表4 実証分析1の推計結果
ファミリーサポートセンター事業を行うと、児童虐待 相談対応件数/児童人口が0.011多くなり(有意水準 1%)、周囲の者が発見・通報する可能性を高くしてい ると考えられる。次に、人口密度(高)では、職員数/
児童数の割合を高くすると、より多くなり(有意水準 1%)、理論的考察と合致する。
4.3.2 実証分析2の結果
推計結果は表5のとおりである。
表5 実証分析2の推計結果
ファミリーサポートセンター事業を行うと、児童福祉 施設入所件数/児童人口は0.0001多く(有意水準
10%)、事業(その他)行うと0.0002多くなり(有意
水準1%)、重症なケースに至るまでに入所件数を増や し、児童を救うことができる。また、事業(その他)
は、地域性に応じた効果を発揮していると考えられる。
次に、人口密度(高)では、職員数/児童数を高くする と、より少なくなることが分かった(有意水準1%)。
名前 内容 出典
ファミリーサポートセンター事業ダミー 市役所の取り組み事業がファミリーサポートセンター事業の場合に「1」、それ以外の場合に「0」をとるダミー変数 事業(その他)ダミー 市役所の取り組み事業が事業(その他)の場合に「1」、それ以外の場合に「0」をとるダミー変数 福祉事務所ダミー 主たる相談窓口が福祉事務所の場合に「1」、それ以外の場合に「0」をとるダミー変数
保健師・助産師・看護師ダミー 主たる相談窓口の職員の職種が「保健師・助産師・看護師」の場合に「1」、それ以外の場合に「0」を取るダミー変数 保育士ダミー 主たる相談窓口の職員の職種が「保育士」の場合に「1」、それ以外の場合に「0」を取るダミー変数 研修ダミー 児童虐待防止のための研修を実施している場合に「1」、それ以外の場合に「0」をとるダミー変数 住民向けイベントの開催ダミー 児童虐待防止啓発活動で住民向けイベントの開催をしている場合に「1」、それ以外の場合に「0」をとるダミー変数 住民向けイベントの開催ダミー×人口密度(低)ダミー 「住民向けイベントの開催ダミー」と「人口密度(低)ダミー」の交差項
住民向けイベントの開催ダミー×人口密度(中)ダミー 「住民向けイベントの開催ダミー」と「人口密度(中)ダミー」の交差項 滋賀ダミー 所在地が滋賀県の場合に「1」、それ以外の場合に「0」をとるダミー変数 京都ダミー 所在地が京都府の場合に「1」、それ以外の場合に「0」をとるダミー変数 大阪ダミー 所在地が大阪府の場合に「1」、それ以外の場合に「0」をとるダミー変数 兵庫ダミー 所在地が兵庫県の場合に「1」、それ以外の場合に「0」をとるダミー変数 和歌山ダミー 所在地が和歌山県の場合に「1」、それ以外の場合に「0」をとるダミー変数
生活保護人員割合 生活保護人員÷各市役所総人口 B C
児童人口に占める職員の割合 主たる相談窓口の職員数÷児童人口(0~19歳) A C
人口密度(低)ダミー 所在地の人口密度が0人/km2~3000人/km2の場合に「1」、それ以外の場合に「0」をとるダミー変数 人口密度(中)ダミー 所在地の人口密度が3000人/km2~5000人/km2の場合に「1」、それ以外の場合に「0」をとるダミー変数 児童人口に占める職員の割合×人口密度(低)ダミー 「主たる相談窓口の職員数÷児童人口(0~19歳)」と「人口密度(低)ダミー」の交差項 児童人口に占める職員の割合×人口密度(中)ダミー 「主たる相談窓口の職員数÷児童人口(0~19歳)」と「人口密度(中)ダミー」の交差項 A アンケート調査
B 各市役所統計
C 住民基本台帳年齢階級別人口等(市区町村別)
D 全国都道府県市区町村別面積調
A C D A
A C D
-
C D 変数名ファミリーサポートセンター事業ダミー 係数0.0108 *** 標準誤差0.0023
事業(その他)ダミー 0.0031 0.0019
福祉事務所ダミー 0.0044 * 0.0024
保健師・助産師・看護師ダミー 0.0021 0.0022
保育士ダミー 0.0044 ** 0.0021
研修ダミー -0.0012 0.0030
住民向けイベントの開催ダミー -0.0003 0.0018
滋賀ダミー 0.0009 0.0053
京都ダミー -0.0085 * 0.0047
大阪ダミー -0.0047 0.0046
兵庫ダミー -0.0141 *** 0.0048
和歌山ダミー -0.0046 0.0054
生活保護人員割合 0.0000 0.0000
児童人口に占める職員の割合 140.0 *** 28.65
人口密度(低)ダミー 0.0326 *** 0.0082
人口密度(中)ダミー 0.0352 *** 0.0109
職員数/児童人口×人口密度(低)ダミー -130.7 *** 28.89 職員数/児童人口×人口密度(中)ダミー -151.9 *** 40.71
定数項 -0.0345 *** 0.0095
観測数 補正決定係数
162 0.3292
***、**、*はそれぞれ有意水準1%、5%、10%を示す
変数名 係数 標準誤差
ファミリーサポートセンター事業ダミー 0.0001 * 0.0001
事業(その他)ダミー 0.0003 *** 0.0001
福祉事務所ダミー 0.0001 0.0001
保健師・助産師・看護師ダミー 0.0001 *** 0.0001
保育士ダミー 0.0001 0.0001
研修ダミー -0.0002 *** 0.0001
住民向けイベントの開催ダミー -0.0001 0.0001
滋賀ダミー 0.0001 0.0001
京都ダミー 0.0000 0.0001
大阪ダミー -0.0001 0.0001
兵庫ダミー 0.0000 0.0001
和歌山ダミー 0.0000 0.0001
生活保護人員割合 0.0000 0.0000
児童人口に占める職員の割合 -15.21 ** 6.401
人口密度(低)ダミー -0.0041 ** 0.0017
人口密度(中)ダミー -0.0042 ** 0.0016
職員数/児童人口×人口密度(低)ダミー 15.28 ** 6.404 職員数/児童人口×人口密度(中)ダミー 15.85 ** 6.300
定数項 0.0041 ** 0.0017
観測数 補正決定係数
106 0.0044
***、**、*はそれぞれ有意水準1%、5%、10%を示す
4 4.3.3 実証分析3-1の結果
推計結果は表6のとおりである。
表6 実証分析3-1の推計結果
人口密度(高)では職員数/児童数を高くすると、児 童福祉施設入所件数/児童虐待相談対応件数は、より少 なくなる(有意水準1%)。
4.3.4 実証分析3-2(実証分析3-1に説明変数を 追加)の結果
推計結果は表7のとおりである。
表7 実証分析3-2の推計結果
人口密度(低、中)では、住民向けイベントを開催に よって、児童福祉施設入所件数/児童虐待相談対応件数 は少なくなり(有意水準1%)、児童虐待防止が浸透 し、未然防止の効果が高いことが示唆される。
4.3.5 実証分析結果のまとめ
地方自治体による児童虐待防止の事業等が有効であれ ば、発見・通報する可能性が高くなり、より重篤なケー スにならず、児童を未然に防いでいると考えられる。ま た、人口密度(高)の場合、職員数/児童数の割合を大 きくすることで、児童虐待相談対応件数を増加させ、児 童福祉施設入所件数を減少させる効果が大きい。なお、
人口密度(低、中)の場合、住民向けイベントの開催を 行うことがより効果的である。
5.まとめ 5.1 政策提言
提言1 地方自治体の取り組みを推進するための補助金 児童虐待から子どもを救うことには正の外部性があ り、国が一括して児童虐待防止の事業を推進することも 考えられるが、事業の取り組み内容には地方自治体間で 差があるため、国主導で事業を推進しても効果があると は限らない。事業(その他)は、地方自治体の地域性に 応じた事業であり、柔軟性のある使い方が求められる。
提言2 職員の配置の見直し
人口密度(高)は職員を増やす必要性がある。ただ し、保健師・助産師・看護師および保育士の職種を増や すか、適切な職種の配置をすべきであるが、それが困難 な場合は、部署間の適切な配置換えをすべきである。
提言3 啓発活動の推進
啓発活動の推進方策として2点挙げたい。
1点目は、虐待してしまう者へのアプローチであり、
事業(その他)で、母親(父親)学級で啓発活動を開催 すべきである。児童虐待は密室で行われるため、虐待し ている者に直接届く施策を考える必要がある。
2点目は、周囲の者へのアプローチである。人口密度
(低、中)では、啓発活動(住民向けイベントの開催)
を推進する。それには、直接児童虐待を減らす効果と周 辺住民への効果があると考えられる。
5.2 今後の研究課題
本研究では、児童虐待相談対応件数を増加させるため 職員を配置すべきとしているが、職員の配置が児童虐待 相談対応件数を増加させる逆の因果関係が懸念される。
ヒアリングより逆の因果関係がないと考えられるが、今 後より厳密な研究が必要であると考える。
また、虐待種別について、地方自治体の取り組みで効 果のあるものの聞き取りを行ったが、一概に特定の取り 組みによる効果があるということを結論付けることはで きず、ヒアリングでも同様の結果となった。
さらに、今回は児童虐待に関する主な相談窓口の取り 組み等に着目しており、児童虐待の未然防止の観点に立 つと、妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援の広 い分析が必要で、同様の分析を児童虐待に携わる、多く の関係機関に対して、包括的に検証を行う必要となる点 について考慮していない。よって、本研究による考察 は、あくまでも地方自治体の主たる担当窓口による事業 等の効果のみから考えた分析であること付しておく。
変数名 係数 標準誤差
ファミリーサポートセンター事業ダミー 0.0153 0.0352
事業(その他)ダミー 0.1280 *** 0.0398
福祉事務所ダミー 0.0084 0.0233
保健師・助産師・看護師ダミー -0.0114 0.0221
保育士ダミー -0.0454 * 0.0256
研修ダミー 0.0101 0.0263
住民向けイベントの開催ダミー 0.0688 *** 0.0254
滋賀ダミー -0.0334 0.0477
京都ダミー -0.0236 0.0455
大阪ダミー 0.0005 0.0407
兵庫ダミー 0.0732 * 0.0424
和歌山ダミー 0.0185 0.0416
生活保護人員割合 0.0000 0.0000
児童人口に占める職員の割合 -14256 *** 2641
人口密度(低)ダミー -3.692 *** 0.6834
人口密度(中)ダミー -3.869 *** 0.6649
職員数/児童人口×人口密度(低)ダミー 14207 *** 2643 職員数/児童人口×人口密度(中)ダミー 14757 *** 2599
定数項 3.700 *** 0.6926
観測数 補正決定係数
105 0.1070
***、**、*はそれぞれ有意水準1%、5%、10%を示す
変数名 係数 標準誤差
ファミリーサポートセンター事業ダミー 0.0256 0.0304
事業(その他)ダミー 0.0428 0.0441
福祉事務所ダミー -0.0086 0.0211
保健師・助産師・看護師ダミー 0.0064 0.0215
保育士ダミー 0.0028 0.0237
研修ダミー -0.0361 0.0241
住民向けイベントの開催ダミー 0.4062 *** 0.0681
住民向けイベントの開催ダミー×人口密度(低)ダミー -0.4333 *** 0.0772 住民向けイベントの開催ダミー×人口密度(中)ダミー -0.4174 *** 0.1010
滋賀ダミー 0.0254 *** 0.0422
京都ダミー 0.0231 *** 0.0421
大阪ダミー 0.0059 0.0355
兵庫ダミー 0.0542 0.0374
和歌山ダミー 0.0062 0.0357
生活保護人員割合 0.0000 0.0000
児童人口に占める職員の割合 -20066 2526
人口密度(低)ダミー -4.9738 ** 0.6372
人口密度(中)ダミー -5.0067 *** 0.6078
職員数/児童人口×人口密度(低)ダミー 20036 *** 2531 職員数/児童人口×人口密度(中)ダミー 20190 *** 2455
定数項 4.9968 *** 0.6455
観測数 補正決定係数
105 0.1683
***、**、*はそれぞれ有意水準1%、5%、10%を示す