よりクオリテゖの高い凍結用デバスの開発
ー卵巣組織、iPS細胞、ES細胞への応用
鈴木直
聖マリゕンナ医科大学 産婦人科学
医学部合同新技術説明会
2011.11.18
妊孕性
•卵巣
→卵巣機能
原始卵胞 直径115 m 直径90-100 m 一次卵胞 二次卵胞 初期胞状卵胞(0.3-1 mm) 胞状卵胞( 1 mm) 体外発育 体外成熟 体外受精 受精卵凍結 卵子凍結 卵巣皮質凍結 三次元構造を 維持して培養図1.生殖細胞保存のストラテジー
妊孕性
原始卵胞 直径115 m 直径90-100 m 一次卵胞 二次卵胞 初期胞状卵胞(0.3-1 mm) 胞状卵胞( 1 mm) 体外発育 体外成熟 体外受精 受精卵凍結 卵子凍結 卵巣皮質凍結 三次元構造を 維持して培養図1.生殖細胞保存のストラテジー
•卵巣
→卵巣機能
近年、集学的治療の進歩により若年がん患者の生存率は目覚しく向上している。15歳から 19歳までの若年がん患者の罹患率は増加傾向を示している。 米国のNCI:SEERデータ 1975-1995 1975 1995
若年がん患者の生存率と罹患率
化学療法誘発性無月経
化学療法誘発性無月経とは、
「
治療開始から1年以内に生じる、3ヶ月以上の無月経
」
と定義され、稀発月経や無月経また無排卵症を呈しその発症頻度
は20〜100%である。 (Bines J et al. JCO 1996
)
その発生頻度は患者
①年齢
②抗がん剤の種類
③抗がん剤の投与量
High Risk Intermediate Risk シスプラチン カルボプラチン ドキソルビシン エトポシド Low/ no Risk ビンクリスチン ブレオマシン Unknown Risk ジェムシタビン パクリタキセル ドセタキセル リノテカン シクロホスフゔミド メルフゔラン プロカルバジン ニトロソウレゕ ホスフゔミド ブスルフゔン ア ル キ ル 化 剤 抗 生 物 質 白 金 製 剤 ビ ン カ ア ル カ ロ イ ド ゕクチノマシン-D マトマシン-C 代 謝 メソトレキセレート フルオロウラシル
Imai A et al: Reproductive Medicine and Biology 2008:7
化学療法誘発性無月経とQOL
抗癌剤などを用いた治療によって病状が安定した後の若年女性が
ん患者において治療によって引き起こされる
卵巣機能の廃絶
が問題!!
•妊孕性の消失
•閉経の早期発来
•更年期障害
•骨粗鬆症
女性としてのQOL低下!!
がんと生殖医療
若年女性がん患者は、
①がんによる将来の恐怖のみならず、
②若年だからこそ「妊孕性消失」に関する将来の不
安も抱えることとなる。
腫瘍医と生殖医がまずは
がん医療と生殖医療
に対する
認識を深め、その概念を啓発し、精神的サポートも行
うことができる
医療システムの構築
が必要である。
しかし・・・・、何よりも原疾患に対する的確な対処
が重要であり、優先すべきは「がん医療」であること
を忘れてはならない!
Dept. of OB and Gyn. St.Marianna Univ. School of Medicine.
がん・生殖医療科学(Oncofertility)
がん・生殖科学(Oncofertility)
→造語:Oncology(腫瘍学)+Fertility(妊孕性)
2006年にWoodruffらが初めて提唱した概念
がん・生殖医療(Oncofertility Treatment)
聖マリゕンナ医科大学 生殖医療センター
2010年1月〜
Dept. of OB and Gyn. St.Marianna Univ. School of Medicine.
聖マリゕンナ医科大学におけるがん・生殖医療
診療内容:
①がん治療による医源性の不妊患者における妊孕性温存
②がんが合併している患者に対する不妊治療
の2本柱
がん・生殖医療(OncofertilityTreatment)
聖マリゕンナ医科大学 生殖医療センター•2004年にDonnezらは、
25歳のホジキン病患者(IV期)
から、化学療法施行前に
腹腔鏡下に左卵巣から一部皮質を摘出し凍結保存し、
初回治療から6年経過した完全
寛解後、
融解された卵巣組織を卵巣の血管近傍の腹膜と右卵管采近傍の腹膜に自家
移植した[Donnez J et al: Human Reprod Update 2006]。
•移植後約半年で採血上排卵を有するホルモン動態を示すようになり、
移植11ヶ月後
に自然妊娠が成立しヒトで初めて生児獲得に成功した。
←同所性自家移植
•現在、欧州を中心に卵巣組織凍結(緩慢凍結法)・自家移植が行われており、本技
術によって14名の生児が得られている。
•欧州においては卵巣組織凍結(緩慢凍結法)・自家移植は新しい技術ではあるが、
既に臨床応用されるべき一般的な技術の一つであると認識されている。
•しかし、本技術による生児獲得率の向上に向けて解決すべきあるいは改良
すべき問題は依然山積している。
ヒトにおける卵巣組織凍結と自家移植の現状
1) 適応疾患(癌細胞の再移入の問題)
2) 移植部位(同所性vs異所性)
3) 組織片の大きさ(卵巣組織細切片vs卵巣全体)
4) 凍結方法(緩慢vsガラス化)
• 細胞を構成する分子の熱エネルギーを奪い、運動エネルギーを限りなくゼ
ロにすることにより、細胞の時間を停止できる。一方で細胞を氷点下に曝
すことは細胞内外に氷晶形成を促し、細胞膜、細胞内小器官を物理的に破
壊し、細胞を死滅させる。
• この場合、細胞の停止した時計は再び時を刻むことはない。この止まった
時計に再び時を刻ませるためには細胞内外での氷晶形成による障害を防ぐ
必要がある。
• 氷晶形成には細胞内外の自由水が関与しており、これを阻害する化学物質
が耐凍剤として使用されるようになった。
• 耐凍剤は細胞膜を透過し、水分子と置換される細胞膜透過型耐凍剤と、細
胞膜を透過できず細胞外に存在する細胞膜非透過型の耐凍剤とに大別され
る。
• さらに、この細胞膜非透過型の耐凍剤は細胞外の浸透圧を上昇させ、細胞
内自由水の細胞外への移行(脱水)を促進する比較的分子量の小さな単糖
類、二糖類と高分子物質とに分類されている。
凍結保存方法
• 現在、標準的な卵巣組織凍結方法は、
緩慢凍結法
となっており、14名の生
児が得られている(Donnez J, Dolmans MM. Preservation of fertility in
females with haematological malignancy. British J of Haematol 154:
175-184, 2011 )。
問題点 : コストが高い。機械を置くスペースが必要。操作が煩雑である。
卵巣組織凍結法
0.3 degree/min 20ºC -20ºC -40ºC 0ºC新たな凍結方法→
ガラス化法
細胞外液が氷結しない急速(ガラス化)凍結の場合は、細胞透過性耐凍剤の割合を大幅に増や し、水あたりの細胞膜透過型耐凍剤の浸透圧が高くなる。耐凍剤を組み合わせて、細胞内外の氷 晶形成を防ぎ、細胞への物理低障害を回避する。一方で、高濃度の耐凍剤への暴露による化学的 障害の軽減も考慮する必要がある。有利な点
不利な点
#間質と血管へのダメージが少ない
#これまでに、生児獲得の報告がない
#短時間
#技術習得に時間がかかる
#特別な器械を必要としない
#耐凍剤の濃度や浸透圧
#臨床応用可能である
#技術の迅速性が問われる
#卵の優れた成長が期待できる
#未熟な技術によって組織への
毒性が増す
ガラス化法の特徴
クラオサポート
10 x 10 x 1-2mm
卵巣組織の大きさ
1 x 1 x 1mm
クラオトップ
ストロー
カニクイザルを用いた卵巣組織凍結保存
および異所性自家移植に関する研究
液体窒素
1.超急速ガラス化凍結法
2.急速ガラス化凍結法
液体窒素
0.3 degree/min 20ºC -20ºC -40ºC 0ºC 卵巣組織片 Seeding -7 C1.5 M PrOH and 0.1 M sucrose 5.64 M Ethylene glycol + 5% (w/v) PVP + 0.5 M sucrose 1 degree/min 卵巣組織片(約1 mm3)
超急速ガラス化凍結法、急速ガラス化凍結法、緩慢凍結法
により凍結した卵巣組織内の前胞状卵胞の形態の比較
3.緩慢凍結法
5.64 M Ethylene glycol + 5% (w/v) PVP + 0.5 M sucroseIVFなんばクリニック(森本義晴医師、橋本周博士)との共同開発