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情報公開制度の解釈作法 ――法人情報の

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(1)

情報公開制度の解釈作法

――法人情報のおそれの解釈をめぐって

前 田 定 孝

はじめに

情報公開法制度とは,国民による行政の民 主主義的統制の手段である。このことは, の法律は,国民主権の理念にのっとり,行政 文書の開示を請求する権利につき定めること 等により,行政機関の保有する情報の一層の 公開を図り,もって政府の有するその諸活動 を国民に説明する責務が全うされるようにす るとともに,国民の的確な理解と批判の下に ある公正で民主的な行政の推進に資すること を目的とするとした同法1条からもうかが われることである。

しかしながら,昨今,この原則を逸脱する と思われる判決が出現した。大阪高判 2012 年 11 月 29 日労判 1065 号5頁である。それ は,大阪労働局管内の労働基準監督署が特定 の疾患に係る労災補償給付の支給請求に対す る手続上の文書である処理経過簿に記載され た企業名を開示請求した事例につき,脳・心 疾患に係る死亡事案で労災認定がされたとい う事実は,それだけで使用者に過失や法令違 反があることを意味しないにもかかわらず,

また,被災労働者の基礎疾患等個別の事情の 影響がありうるにもかかわらず,社会的には,

過労死という否定的言辞で受け止められ,

過酷な労働条件のブラック企業という評

価までされうるものであることが明らかであ ことから,脳・心疾患について労災認定 を受けた労働者が所属していた企業名を公表 することについて多くの企業が危惧する社会 的評価の低下や,業務上の信用毀損について は,単なる抽象的な可能性の域にとどまるも のではなく,蓋然性の域に達しているため,

公開を義務づけられる法人情報に該当しない と判断した。

この判決の論理のとおりであるとすれば,

ブラック企業等の評価を受ける可能性が わずかながらもあるような法人情報は,原則 的に公開されえないことになりかねない。こ の理はおそらく個人情報についても適合す る。かかる解釈は,情報公開制度に適合的な のであろうか。本稿は,この裁判例を中心に,

情報公開制度の意義およびそこで求められる 解釈方法について検討する。なお,本稿にお いては法人情報に主な論点を限定しつつ,個 人情報該当性についても必要な範囲で言及す る。

1.大阪高判 2012 年 11 月 29 日労判 1065 号5頁

事案の概要

本件は,開示請求者が脳・心臓疾患にかか

(2)

る労災補償給付の支給請求について,その処 理状況を把握するために作成している文書で ある処理経過簿(1) のうち,2002 年4月1 から 2009 年3月5日までの分に記載された

①被災者が所属していた事業場名(法人の み),②労災補償給付の支給決定年月日を行 政機関の保有する情報の公開に関する法律

(1999 年法律第 42 号)に基づいて開示請求 したところ,被災者が所属していた事業場名

(法人名のみ)が不開示とされた処分に対す る取消訴訟である。

処分庁である大阪労働局長は,開示請求 にかかる行政文書については,個人に関する 情報であって,当該情報に含まれる氏名,生 年月日その他の記述等により特定の個人を識 別することができる情報又は特定の個人を識 別することはできないが,公にすることによ り,なお個人の権利利益を害するおそれがあ る情報が記載されており,法第5条第1号に 該当し,かつ,同号ただし書きイからハまで のいずれにも該当しないため,当該部分を不 開示とした。本件は,この不開示決定処分 に対する取消訴訟である。

なお,開示請求者が厚生労働大臣に不服審 査請求したところ,脳血管および虚血性心 疾患等の処理経過簿(2007 年度)のうち 澤田工業所㈱スーパー玉出東淀川店 血管および虚血性心疾患等の処理経過簿

(2008 年度)のうち㈱スーパー玉出東淀川 ㈲磯治について,一部開示決定がされ た。しかしながらその余の企業名について は,不開示のままであった。

この点につき,厚生労働大臣の諮問に対し て答申をした情報公開・個人情報保護審査会 第3部会は,2010 年度(行情)答申第 475 号

脳血管疾患等による労災補償給付に係る事 業場名の一部開示決定に関する件において,

(諮問庁によれば)脳・心臓疾患も含め,労 災認定に当たっては,事業主の法令違反や過 失の有無は問わない仕組みとなっており,事 業場名を公表すべきとする法令の規定や慣行 は存在しないこと,(脳血管疾患及び虚血 性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の 認定基準を踏まえて判断したことを踏まえ れば)本件対象文書の事業場名欄の記載

(下記⑵の特定事業場の名称を除く。)を開 示した場合,当該事業場の労働条件が実態よ りも劣悪であるといった認識を生じさせるお それは否定できないことを理由として,上 記2つを除く事業場名(法人名のみ)は不 開示妥当とした(2)

1審大阪地判 2011 年 11 月7日労働判例 1039 号5頁は,処理経過簿に記載されている 事業場名は,開示されたとしても一般人に とっては被災労働者個人を識別することは不 可能であるから,他の情報と照合すること により,特定の個人を識別することができる こととなる情報に当たらず,および,かり に労働災害に対して労災補償給付の支給決定 がされたという事実により当該事業場に一定 の社会的評価の低下が生じたとしても,その ことが直ちに当該事業場が取引先からの信用 を失い,あるいは,求職者から当該事業場へ の就職を敬遠されるような事態を招く蓋然性 が存するものと認めるに足りる的確な証拠は なく,そのようなおそれはあくまでも抽象的 な可能性にすぎないとして,請求を認容した。

(3)

判示事項

①5条1号(個人識別情報)該当性 個人情報保護法2条1項が,同法の個人 情報の意義について,他の情報と容易に照 合することができ,それにより特定の個人を 識別することができることとなるものを含 む。と規定しているのに対し,情報公開法5 条1号は照合の容易性を要件としておらず,

これは,個人情報保護法が民間企業にも適用 されるため,営業の自由への配慮から個人情 報をある程度限定する必要があるのに対し,

公的部門が保有する情報に関する情報公開法 は,より厳格な個人情報保護を求めたものと 解される

なお,情報公開法の立案過程で発表され 情報公開法要綱案の考え方においても,

具体的事例における個人識別可能性の有無の 判断に当たっては,当該情報の性質及び内容 を考慮する必要があると指摘され,例えば,

一定の集団に属する者に関する情報を開示す ると,当該集団に属する個々の者に不利益を 及ぼす場合があり得る。このような場合は,

情報の性質及び内容に照らし,プライバシー 保護の十全を図る必要性の範囲内において,

個人識別可能性を認めるべき必要があると考 える。とされている

このように,情報公開法が個人情報の保 護に万全を期していることに鑑みれば,特定 範疇の者にとって容易に入手しうる情報も,

情報公開法5条1号にいう他の情報に当 たると解すべきである。情報公開法は何人に も開示請求権を認めており,当該特定範疇の 者が開示請求をする可能性もあり,このよう な特定範躊の者との関係で個人情報が保護さ れなくてもよいとはいえないからである

個人識別性の判断に際しては,対象とな る集団の規模が重要な考慮要素となり,構成 員が少数の場合には,他の情報と照合するこ とによって個人が識別される可能性が高くな ると考えられるところ,このような状況のも とで,事業場名が開示されれば,当該被災労 働者の近親者ばかりでなく,同僚や取引先関 係者も,事業場名と,その保有し,入手しう る情報とを併せ照合することにより,当該被 災労働者個人を識別することができるものと 認められる

処理経過簿中の労働基準監督署名,標準 業種,標準職種,疾患名(認定基準に示され ていない疾患を除く。),支給年月日等の情報 が既に開示されている(原判決前提事実⑴ア,

⑶)ことを考慮すれば,なおさらである。/

したがって,事業場名は,情報公開法5条 1号所定の不開示情報(他の情報と照合する ことにより,特定の個人を識別することがで きることとなるもの)に該当するものという べきである

②5条2号(法人情報)該当性

……不開示により保護される利益と,開 示により保護される利益を比較衡量し,後者 が前者に優越すると認められたときに開示が 義務づけられるものと解されるが,情報公開 法5条1号ただし書ロ,2号ただし書に規定 する情報は,その公開により個人が特定され,

又は法人等の正当な利益を害するおそれがあ ることを前提として,それに優越する法益を 保護するために必要である場合に限り,開示 に伴う不利益を個人や法人等に受忍させた上 で例外的に開示されるものであり,このよう な不利益を受忍させるためには,その開示に

(4)

より人の生命,健康,生活又は財産等の保護 に資することが相当程度具体的に認められる ことを要すると解するのが,ただし書という 条文の構造からみても相当である ア 不開示により保護される利益

(行政機関情報公開法5条1号ただし書ロ について)被災労働者が脳血管疾患及び虚 血性心疾患等を含む病気に罹患したことや,

休業補償給付,療養補償給付を受領し,また その遺族が遺族補償年金を受領したこと等 は,通常被災労働者やその家族にとって,第 三者に知られることを欲しない情報であると 解され,開示された場合の不利益の具体的内 容としては,被災労働者の求職の際に不利に 働くこと,相当額の金銭を受領することから これをめぐり金銭に係る無用な相談を持ちか けられること,同僚等からいわれのない誹謗 中傷を受けること等が考えられる。(さらに 行政機関情報公開法5条2号ただし書につ き)社会的には,脳・心疾患に係る死亡事案 で労災認定がされたという事実だけで,過失 や法令違反等の有無に関し特段の留保を付さ ず過労死あるいはブラック企業とい う否定的評価がされていることからすると,

事業所名を開示することで,社会的評価や,

業務上の信用等が低下し,法人等の正当な利 益が害される蓋然性が認められる イ 開示により保護される利益

被控訴人は,事業場名の開示により,当該 法人等の労働者の生命・身体という優越的利 益が保護されると主張する。しかし,以下の とおり,労災補償保険制度の趣旨及び実情に 照らし,開示により被控訴人主張の利益の保 護に資することが相当程度具体的に認められ るとはいえない。/脳・心疾患について労

災認定がされたとしても,その認定は,当該 事業場の労働時間等の労務管理だけから導き 出されるものではなく,個々の被災労働者の 職場における部署,役職,原因となるべき業 務がされた時期における職場全体及び担当業 務の繁閑,取引先との折衝状況,異常な出来 事の発生,被災労働者本人の基礎疾患その他 様々な要因が複雑に影響するものであり,問 題となる時期及び当該労働者に個別具体的な 要素が強いものであるから,当時,当該被災 労働者にとって過重労働の状態にあったから といって,当時,あるいは現在において他の 労働者にとって過重労働が認められるともい えない。このことに加え,各労働者は自分の 労働時間については認識していると考えられ ることを考慮すれば,事業場名の開示により,

当該法人等の他の労働者の生命・身体が保護 されるという具体的関連性は認められな 。/被控訴人は,被災労働者と同様な過 重な業務が当該事業所の他の労働者にも課さ れている蓋然性が高いとか,過重な業務が血 管病変等を著しく増悪させ脳・心臓疾患を発 症させる要因となったことが労災認定により 明らかとなった以上,当該過重な業務の背景 には,当該被災労働者についての個別的事情 を超えて,労働環境としての労働条件,労 務管理,業務量,業務の質的負荷という当該 法人等における普遍的な事情が存在する蓋然 性があると主張するが,労災認定に至る上記 プロセスに照らし,採用できない。/被控 訴人は,事業場名を開示することによって,

法人等が社会的監視の下,過重労働等の改善 を促進する契機となるし,当該事業場で現に 業務に従事している労働者や,過去に業務に 従事していた労働者にとっても,自己の労働

(5)

環境を見直す契機となることなどから,労働 者の生命・健康に対する侵害が除去される蓋 然性が認められると主張する。/しかし,

同主張は,当時,又は現在において被災労働 者と同様な過重な業務が当該事業場の他の労 働者にも課されている蓋然性が高いことを前 提とするものであり,過重性が労働者ごと に個別的なものであることに鑑みればそれが 直ちに採用できないことは の説示のとおり である

③5条2号イ非該当性

(行政機関情報公開法5条2号イの趣旨は)

法人等が有する権利利益は,原則として開 示することにより害されるべきではないとい う考えによるもので(乙 25 の 1・2),法人等 の権利・利益は正当なものであればすべて含 まれ,当該法人等の信用や,社会的評価もこ れに該当するものと解される。/また,正 当な利益を害するおそれの有無の判断に関し ては,それぞれの法人等及び情報の性格に応 じて的確に判断されるべきであり,単なる確 率的な可能性ではなく,法的保護に値する蓋 然性が求められる

これらの点について一般に正確に理解さ れているのであれば,事業場名が開示され,

当該事業場について脳・心疾患に係る労災認 定がされた事実が一般に認識されたとして も,それだけで直ちに当該法人等において過 失や法令違反等の違法・不当な行為がされて いたとの評価がされることにはならず,当該 法人等の信用や,社会的評価等の正当な利益 が害される蓋然性はないことになる。/し かしながら,上記各点が一般に正確に理解さ れていないと認められることは以下のとおり

である

(新聞の報道とりわけ被控訴人の弁護士が 原判決後の記者会見において,企業名を見 て,就職先として見直す人もいるだろう。社 会全体で企業の姿勢を監視したいと述べ,

原判決が企業名を開示し,社会的批判を受 けるようにすることで過労死をなくす,とい う強い決意が示されている。と述べている こと,およびヤフーニュースに対する投稿等 があったという事実に照らして)社会的に は,脳・心疾患に係る死亡事案で労災認定が されたという事実だけで,特段の留保を付さ ず過労死あるいはブラック企業とい う評価がされ,上記事実が就職の際にブラッ ク企業を見分ける指標となるとの報道もあ り,当該企業の製品の不買を言明する者もあ ることが認められる。/社会的には,脳・

心疾患に係る死亡事案で労災認定がされたと いう事実だけで,特段の留保を付さず過労 死あるいはブラック企業という否定的 評価をもって,そのような企業への就職を避 けるべきであるとの言説も紹介されているこ と,当該企業の製品の不買を言明する者が存 在する等の事情からすると,脳・心疾患につ いて労災認定を受けた労働者が所属していた 企業名を公表することについて多くの企業が 危惧する社会的評価の低下や,業務上の信用 毀損については,単なる抽象的な可能性の域 にとどまるものではなく,蓋然性の域に達し ているものというべきである

2.情報公開法制度と本件大阪高裁判 決の解釈方法

このように,本件大阪高判 2012 年 11 月 29

(6)

日は,上記の理由で不開示妥当と判断した。

しかし,はじめにでも指摘したように,か かる判断方法が行政の民主主義的統制の手段 のひとつとしての情報公開制度に適合的な法 解釈の作法であるかどうかについては,疑問 がある。

以下ではこのことを吟味する。なお, じめにでも述べたように,論点を限定する ために,本稿における検討対象は主として行 政機関情報公開法5条2号でいう法人情報に 限定するものとし,同1号の個人情報につい ては必要な限りで言及する。

行政機関情報公開法5条2号の組み立て 行政機関情報公開法5条は,次の各号に 掲げる情報(以下不開示情報という。)の いずれかが記録されている場合を例外とし て,開示請求者に対し,当該行政文書を開示 しなければならないとして,行政情報の原則 開示を規定する。同条2号でいう法人情報も そのひとつである。

かかる原則開示の例外にあたる例として,

本節で検討する同条2号の法人情報もこれに 含まれるのであり,同号柱書きは,開示請求 があった際に行政機関の長が,開示請求 に係る行政文書法人その他の団体(国,

独立行政法人等,地方公共団体及び地方独立 行政法人を除く。以下法人等という。)に 関する情報又は事業を営む個人の当該事業に 関する情報であって,次に掲げるもの,すな わちイ公にすることにより,当該法人等又 は当該個人の権利,競争上の地位その他正当 な利益を害するおそれがあるもの,および ロ行政機関の要請を受けて,公にしないと の条件で任意に提供されたものであって,法

人等又は個人における通例として公にしない こととされているものその他の当該条件を付 することが当該情報の性質,当時の状況等に 照らして合理的であると認められるものの いずれかが記録されている場合に開示が 禁止される(3) とする(4)

しかしながら,さらにその例外として,同 号ただし書きによって,人の生命,健康,生 活又は財産を保護するため,公にすることが 必要であると認められる情報が除かれる。

この場合,常に開示が義務付けられること になる(5)。このただし書きは,前述のように 情報公開制度が,行政の民主主義的統制のた めの制度であることに鑑みて設けられた規定 である(6)。この点,行政機関の保有する情報 を原則開示にし,例外的に不開示事由を定め るという構造がとられている点が重要であ り,その不開示情報の該当性の判断如何に よっては,例外の範囲が拡大され,原則と例 外が逆転することにもなりかねない(7) こと に注意されなければならない。

本件の判決も,この趣旨にしたがって判断 されることになる。

大阪高判 2012 年 11 月 29 日の判断方法 大阪高判 2012 年 11 月 29 日は組み立ては,

以下のとおりである。

①行政機関情報公開法5条2号ただし書き イ該当性について

本件大阪高裁判決は,法人等が有する権 利利益は,原則として開示することにより害 されるべきではないという考えに基づいて,

法人等の権利・利益は正当なものであれば すべて含まれ,当該法人等の信用や,社会的

(7)

評価もこれに該当するものと解されるとし,

そこで,正当な利益を害するおそれの有無 の判断に関しては,それぞれの法人等及び情 報の正確に応じて的確に判断されるべきであ り(乙 25 の 1・2),単なる確率的な可能性で はなく,法的保護に値する蓋然性が求められ とし,被控訴人代理人の,企業名を見て,

就職先として見直す人もいるだろう。社会全 体で企業の姿勢を監視したいとする記者会 見等での発言を引用しつつ,それだけで使 用者に過失や法令違反があることを意味しな いにもかかわらず,また,被災労働者の基礎 疾患等個別の事情の影響がありうるにもかか わらず,社会的には,過労死という否定的 言辞で受け止められ,過酷な労働条件のブ ラック企業という評価までされうるもので あることが明らかであり,脳・心疾患につ いて労災認定を受けた労働者が所属していた 企業名を公表することについて多くの企業が 危惧する社会的評価の低下や,業務上の信用 毀損については,単なる抽象的な可能性の域 にとどまるものではなく,蓋然性の域に達し ていると判断した。

②行政機関情報公開法5条2号ただし書き 該当性について

本件大阪高裁判決は,その前段部分で,開 示対象となった企業に対する正当な利益侵害 可能性について,脳・心疾患に係る死亡事案 で労災認定がされたという事実だけで,過失 や法令違反等の有無に関し特段の留保を付さ ず過労死あるいはブラック企業とい う否定的評価がされていることによって 業所名を開示することで,社会的評価や,業 務上の信用等が低下し,法人等の正当な利益

が害される蓋然性が認められるとし,これ に対して開示により保護される他者の私益に つき,事業場名の開示により,当該法人等の 労働者の生命・身体という優越的利益が保護 されるとする被控訴人の主張に対し,開示 により被控訴人主張の利益の保護に資するこ とが相当程度具体的に認められるとはいえな いとした。

そこでは,前半部分における過労死 るいはブラック企業という否定的評価 による社会的評価や,業務上の信用等が低 する蓋然性と,法人等が社会的監視の下,

過重労働等の改善を促進する契機となるし,

当該事業場で現に業務に従事している労働者 や,過去に業務に従事していた労働者にとっ ても,自己の労働環境を見直す契機となるこ となどから,労働者の生命・健康に対する侵 害が除去される蓋然性が認められるとの被 控訴人が主張する公益とを比較衡量して,前 者が優先すると判断された。

③判決の問題点

前述のように本件事案は,⑴行政機関情報 公開法5条に基づく原則開示,⑵例外として の同条2号でいう法人情報がただし書きでい うイまたはロに該当するかどうか,およびそ の場合であっても,⑶人の生命,健康,生 活又は財産を保護するため,公にすることが 必要であると認められる情報についてはそ の他者の私益の保護にかんがみて常に開示 が義務付けられるという手順で処理される。

本件大阪高裁判決は,その判断枠組みにお いて,2号ただし書き該当性における私益に つき法人等の権利・利益は正当なものであ ればすべて含まれ,当該法人等の信用や,社

(8)

会的評価もこれに該当するものと解される としつつ,社会的評価の低下や,業務上の信 用毀損については,単なる抽象的な可能性の 域にとどまるものではなく,蓋然性の域に達 していると断じている。同様に上記ただし 書きイ該当性のさらなる例外としての同号た だし書き該当性につき,被控訴人がいう公益 性の主張を斥けつつ,過労死あるいは ラック企業という否定的評価による社 会的評価や,業務上の信用等が低下する蓋 然性を優先させて,控訴を認容した。

このことを単純化すると,次のようになる。

すなわち,行政機関情報公開法 5 条 1 号でい う個人情報の保護の度合いは,個人情報保護 法の規定ぶりよりも厳格である。このことを 踏まえると,同様の理は 2 号でいう法人情報 に対する保護の度合いも同様に解釈されなけ ればならない。したがって,正当な利益を 害するおそれの判断も,このことを踏まえ てなされなければならない,と。

本件判断は,個人識別情報該当性について 判断した箇所において,その前提として, 人情報保護法が民間企業にも適用されるた め,営業の自由への配慮から個人情報をある 程度限定する必要があるのに対し,公的部門 が保有する情報に関する情報公開法は,より 厳格な個人情報保護を求めたものとしたう えで,情報公開法が個人情報の保護に万全 を期していることに鑑みて,その後の個人 識別情報該当性および法人情報該当性につい て判断したのである。この点,個人情報の保 護に関する法律(2003 年法律第 57 号。以下,

個人情報保護法と省略する)25 条は, 本人又は第三者の生命,身体,財産その他の 権利利益を害するおそれがある場合

当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施 に著しい支障を及ぼすおそれがある場合 および三 他の法令に違反することとなる 場合を除くほか,本人に対し,政令で定め る方法により,遅滞なく,当該保有個人デー タを開示しなければならないとする。

すなわち,本件大阪高裁判決は,民間企業 にも適用される個人情報保護法における開示 を除外する規定に照らして,行政機関情報公 開法の個人識別情報の開示を除外する規定を 個人情報保護法よりもより厳格なものと とらえたうえで,解釈を行っている。さらに しかもその理を法人情報の解釈にまで及ぼし ているのである。

このように見ていくと,法人情報該当性を 判断するに際しての争点は,行政機関情報公 開法によって保障された権利利益と当該情報 が開示されることによる開示対象となった企 業等の営業の自由等への侵害可能性ならびに さらにそれを上回る人の生命,健康,生活 又は財産の保護という他者の私益保護との 比較衡量の妥当性である。

この点,本稿の立場は,第1に個人情報保 護法の規定と行政機関情報公開法の規定とを 対比することが,法解釈をするに際して前提 を誤っているとするものであり,第2に,対 比するとした場合には,行政機関の保有する 個人情報の保護に関する法律(2003 年法律第 58 号。以下,行政機関個人情報保護法と省略 する)であって,そこでかりに個人識別情報 および法人情報の開示を除外する規定がほぼ 同一であったとしても,後述するように,こ の両者の制度の趣旨・目的に照らして解釈さ れなければならないとするものである。そこ で問題は,第1に本件大阪高裁判決の判断枠

(9)

組みが本当に情報公開制度に適合的なものと なっているのかどうかが,第2に,かかる情 報公開法上の公益との関係で,そこで侵害さ れると思料されるおそれが真に本件制度 に適合的に解釈されたのかどうか,という点 に収斂していく。

3.行政機関情報公開法の趣旨と行政 の民主主義的統制

行政の民主主義的統制と情報公開制度 そもそも行政機関情報公開法とは,前述の ように,その1条で国民主権の理念にのっ とり,行政文書の開示を請求する権利につき 定めること等により,行政機関の保有する情 報の一層の公開を図り,もって政府の有する その諸活動を国民に説明する責務が全うされ るようにするとともに,国民の的確な理解と 批判の下にある公正で民主的な行政の推進に 資することを目的とすると規定する。すな わち,情報公開制度とは国民がその主権者と しての地位において,行政を監視するための 制度である(8)。いわゆる知る権利とは,こ のことを別の言葉で表現したのものである。

情報公開制度における開示決定処分とは,許 可または認可のような通常の行政処分のよう な権利保護型の制度とは異なり,その本質に おいて,国民が主権者としての地位において 行政の民主主義的統制を図る制度であって,

その理念に適合的な判断方法がとられなけれ ばならないと考える(9)

この点,野村武司は,情報公開制度におけ る個人情報規定は,原則開示に対する例外と いう位置づけであり,その例外は最小限にと どめられるべきものであるのに対して,

人情報保護制度における個人情報保護規定 は,開示が原則であるため,本人の情報とし ての手掛かりが少しでもあれば開示の対象と して差し支えないと考えられるとする(10) このことは,権利保護型の制度である行政 機関個人情報保護制度における行政客体とし ての私人の権利保護についての論点を示すも のであり,その裏返しとして,情報公開制度 が行政の民主主義的統制のための制度である ことを示しているのである。

このようにみると,行政の適正かつ円滑 な運営と個人の権利利益の保護を対等 の立場で比較衡量するのではなく,個人の 権利利益の保護が第一次的目的であるとい う基本的立場を維持する(11) 行政機関個人 情報保護法と同様の解釈方法は,不開示情報 につき,採用されてはならないと思われる。

この点につき,個人情報保護制度の制定前 の事例ではあるものの,最3小判 2001 年 12 月 18 日民集 55 巻7号 1603 頁は,有益な示 唆を与える。

この事案は兵庫県公文書の公開等に関する 条例にもとづいて請求者本人の分娩に関する 診療報酬明細書公開を請求した事案である。

そこでは,情報公開制度と個人情報保護制 度の違いにつき,本件条例は,兵庫県におい ていわゆる情報公開制度を採用し,広く県民 等に公文書の公開を請求する権利を認めるこ となどにより,地方自治の本旨に即した県政 の推進と県民生活の向上に寄与することを目 的として制定されたものである(本件条例1 条)。一方,後に制定された個人情報保護条 例は,同県において,いわゆる個人情報保護 制度を採用し,個人情報の開示及び訂正を求 める権利を認めることなどにより,個人の権

(10)

利利益を保護することを目的として制定され たものである(個人情報保護条例1条)とす る。

さらに,上記の二つの制度は,本来,異な る目的を有するものであって,公文書を公開 ないし開示する相手方の範囲も異なり,請求 を拒否すべき場合について配慮すべき事情も 異なるものである。……したがって,広く県 民等に公文書の公開を請求する権利を認める 条例に基づいて公文書の公開を請求する場合 には,本来は,請求者は,県民等の1人とし て所定の要件の下において請求に係る公文書 の公開を受けることができるにとどまり,そ こに記録されている情報が自己の個人情報で あることを理由に,公文書の開示を特別に受 けることができるものではない

すなわち,情報公開制度を通じて本人情報 の開示を請求したとしても,その請求者とは

(特定の主観的権利主体としての住民ではな く)単なる県民等の1人として,扱われ るにすぎないということである。

この判例は,情報公開制度が行政の民主主 義的統制のための制度であり,および地方 自治の本旨に即した県政の推進と県民生活の 向上に寄与するという制度目的に照らして,

その個人情報の開示によって権利侵害を受け る部分を明らかにしつつ,本来個人の権利 利益を保護することを目的とする個人情報 保護制度によってしか開示されえない行政情 報についても,例外的に開示するという論理 構造をとる。

情報公開制度と個人情報保護制度 情報公開制度と個人情報保護制度という2 つの制度の違いに着目したとき,本件大阪高

裁判決は,前述のように個人情報について規 定した5条1項該当性について判断した箇所 において,個人情報保護法2条1項が,同法 の個人情報の意義について,他の情報と容 易に照合することができ,それにより特定の 個人を識別することができることとなるもの を含む。と規定しているのに対し,情報公開 法5条1号は照合の容易性を要件としておら ず,これは,個人情報保護法が民間企業にも 適用されるため,営業の自由への配慮から個 人情報をある程度限定する必要があるのに対 し,公的部門が保有する情報に関する情報公 開法は,より厳格な個人情報保護を求めたも のと解されるとした。

それでは,この個人情報保護法における個 人情報に対する保護と,行政機関情報公開法 でいう個人情報または個人識別情報に対する 保護とはいかなる関係にあるのであろうか。

個人情報保護法はその目的として,1条で 個人情報の適正な取扱いに関し,基本理念 及び政府による基本方針の作成その他の個人 情報の保護に関する施策の基本となる事項を 定め,国及び地方公共団体の責務等を明らか にするとともに,個人情報を取り扱う事業者 の遵守すべき義務等を定めることにより,個 人情報の有用性に配慮しつつ,個人の権利利 益を保護することを目的とするとする。こ の規定で明らかなように,この制度の主眼は,

個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義 務等に置かれている。そして定義規定であ る同法2条3項は,同法でいう個人情報取 扱事業者として,1号から4号で国の機関,

地方公共団体,独立行政法人および地方独立 行政法人を列挙しつつ,さらに同5項でそ の取り扱う個人情報の量及び利用方法からみ

(11)

て個人の権利利益を害するおそれが少ないも のとして政令で定める者を挙げる。すなわ ち民間企業等がこれにあたる。これらのこと を前提に,前述のように当該個人情報につき,

25 条に基づいて個人情報取扱事業者は,本 人から,当該本人が識別される保有個人デー タの開示を求められたときは,本人に対し,

政令で定める方法により,遅滞なく,当該保 有個人データを開示しなければならないと しつつ,同1号でいう本人又は第三者の生 命,身体,財産その他の権利利益を害するお それがある場合とあわせて,同2号により,

当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実 施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合 には,前述のように開示しないことができる とされる。

この規定は,個人情報取扱事業者が民間企 業である場合の,その営業の自由に配慮した 規定である。すなわち,個人情報保護法とは,

民間企業の営業の自由に対する制限との緊張 関係において解釈されるものである。

民間企業である個人情報取扱事業者の営業 の自由を保障するために開示を除外する規定 と比較して,行政機関情報公開制度でいう個 人識別情報と法人情報をより厳格に解するこ とが認められるのであれば,わずかでも個人 識別性を帯びた情報または法人情報の片鱗を 帯びた情報については,行政の民主主義的統 制のための制度である情報公開制度を通じて 開示請求することは,もはや不可能になるも のといわざるをえない。

情報面での国家からの自由と行政 機関個人情報保護制度

これに対して,行政機関については,行政

機関個人情報保護法が,個人情報保護法の特 別法として制定されている。この点,行政が 作成・取得し,保有する情報に個人情報また は法人情報が記載されている場合において,

行政に対する民主主義的統制の見地から国 民・住民に対して開示する制度が行政機関情 報公開制度であるとすれば,そこに記載され た個人情報や法人情報が他者に漏洩すること に起因する当該個人または法人の権利侵害を 抑止すべく,行政機関の情報作成・取得,保 有,および利用等に対して,個人の権利保護 型の規律をかけているのは,行政機関個人情 報保護法制度である。少なくともそこでは,

民間企業にも適用される個人情報保護法の趣 旨がそのまま適用されるものではない(12)

本件判決は,民間企業の営業の自由を保護 法益とした権利保護型の制度である個人情報 保護法における規定ぶりと比較して,行政の 民主主義的統制のための制度である行政機関 情報公開法制度における個人識別情報または 法人情報の取扱いについて,より厳格な解釈 を示したものであると解さざるをえない。

それでは,裁判所が対比した法律が行政機 関個人情報保護法であるとしたら,どのよう なことになるのであろうか。少なくとも条文 において,行政機関情報公開法5条1号およ び2号と,行政機関個人情報保護法 14 条2 号および3号とは,ほぼ同一の規定ぶりであ る。とくに,行政機関個人情報保護法 14 条 1号は,開示請求者自身の生命,健康,生活 又は財産を害するおそれがある情報について の規定である。それは,私人が国家に先行し て営む事業活動に対して国家権力が報告徴収 または調査を通じて取得する個人識別情報お よび法人情報についてのものである(13)。そこ

(12)

では,申請またはいわゆる行政調査活動を通 じて行政庁が私人から情報を徴収する場合 は,当該情報が,その利用にあたって必要か つ最少限度の合理的な範囲であることが要請 される。同時に,そこで徴収された情報を行 政行為等の行政活動の根拠とする場合に,当 該権限行使が,誤った事実等にもとづくもの とならないことを担保するものでもある。い いかえれば,そこで当該情報の主体である個 人および法人には,誤った情報を根拠に行 政権限行使を受けることからの自由とでも いうべき人権が措定される。

かかる行政機関個人情報保護制度における 権利保護型の法解釈と,行政機関情報公開法 における民主主義的制度型の法解釈は,同一 のものとして論じられえないものである(14) このように考えると,本件大阪高裁判決を 書いた大阪高裁の裁判官には,かかる行政が 保有する個人情報や法人情報に対する規律に 適用される法律についての不理解があると思 われるのである。本件大阪高裁の判断は,民 主主義的統制のための制度である行政機関情 報公開法の解釈を,行政機関の保有する個人 情報保護に関する法律の解釈方法に即して 行った点に,結論に影響を与える法令解釈上 の誤りがある。

なお,念のために付言すると,行政機関情 報公開法4条に規定する開示請求および,同 法9条所定の開示決定処分といった手続は,

いわゆる行政行為の形式をとっている。それ は行政行為である以上はいわゆる権利保護型 の制度がとられているものの,それはいわば 擬制されたものであるということができ (15)。このことは,何人も開示請求をする ことができるとした同法3条において認める

ことができる。

行政の民主主義的統制の制度であるという 情報公開制度のかかる趣旨は,本法5条2号 所定の不開示について判断するに際して,重 視されなければならない。この点,藤田宙靖 判事は,一般的に言えば,一定の情報を公開 したとしてもこういった不都合が生じるおそ れはおよそ存在しない,といいきれるケース というのは,むしろ少ないのであって,情報 を公開すると言うことは,常にこういった危 険と背中合わせであることを意識しなければ ならない。情報公開制度とは,そうであるに も関わらず,これを国民に公開することの方 がより重要であるとの判断に立って設けられ る制度なのである。従って,これらの条文で いうおそれとは,一般的抽象的なおそれ であるのでは足りず,具体的にそういった危 険が生じる可能性が強いということであると 解さなければならないとする(16)

4.法人情報該当性を判断するに際し ての過去の裁判例の動向

上記のことを受けて,過去の法人情報に関 する裁判例も同様の判断方法を採用してい る。そこでは,上記行政機関の保有する情 報を原則開示にし,例外的に不開示事由を定 めるという構造が,過去の裁判例において,

いかなる方法論を通じて意識されてきたのか が論点となる。それは,本号ただし書きイ にすることにより,当該法人等又は当該個人 の権利,競争上の地位その他正当な利益を害 するおそれがあるものという場合のおそ れをいかに判断するのかに収れんする。

それらは,法人等が有する権利利益は,原

(13)

則として開示することにより害されるべきで はないという考えによるもので,法人等の権 利・利益は正当なものであればすべて含まれ,

当該法人等の信用や,社会的評価もこれに該 当するものと解されるとした本件大阪高裁 判決とは大きく異なって,第1に,情報公開 制度を,国民がその主権者としての地位にお いて,行政を監視するための制度として適切 に意識したうえで,当該情報の不開示が当該 行政活動に対する国民の監視の主旨を没却せ しめないか否かの視点にてらして,第2に,

本来は原則的に開示の対象となるはずの行政 文書を開示することによって特定の国民に対 して個別的および具体的な損害を与えること が,下記のように具体的かつ客観的に存在す る場合に,そこに国家からの自由の行政 情報公開版(情報公開からの自由)が存在 するものとして,その権利侵害を法的に保護 すべく開示の対象外とする,とする解釈作法 がとられることになる。

①情報公開制度に適合的な判断の枠組み 下級審段階ではあるが,東京地判 1994 年 11 月 15 日判時 1510 号 27 頁は,法人等に関 する情報であって,開示することにより,当 該法人等の競争上又は事業運営上の地位そ の他社会的な地位が損なわれると認められる ものを開示しないことができると規定 した東京都公文書の開示に関する条例は,

東京都が保有する情報を都民に公開し,都民 と都政との信頼関係を強化して,地方自治の 本旨に即した都政を推進することを目的とし て制定されたものであり(条例一条),条例九 条で例外的に非開示とされるものを除いて は,原則として開示請求権者に対して公文書

を開示することとし,開示手続に携わる実施 機関は,条例の解釈及び運用に当たって都民 の開示請求権を十分尊重すべきこととしてい る(条例三条)ことや,九条三号の規定が なわれると認められると定めていることな どからすると,公文書非開示の要件となる右 競争上又は事業運営上の地位その他社会的 な地位が損なわれると認められるものとの 規定は,当該情報が開示されることにより,

法人等の事業活動等に何らかの不利益が生じ るおそれがあるというだけでは足りず,その 有している競争上等の地位が当該情報の開示 によって具体的に侵害されることが客観的に 明白な場合を意味するものと解するのが相当 であるとの判断枠組みを示した。

同様に,大阪地判 1998 年3月 12 日判時 1664 号 50 頁は,大阪府知事に対し,内申書,

予定価格調書および入札参加資格者審査調書 の公開を請求した件につき,本件条例によ れば,公開請求された文書が本件条例二条一 項の公文書に該当する以上,被告はこれを原 則として公開すべきであって,本件条例八条 及び九条所定の各非公開事由があることは,

実施機関である被告においてこれを具体的に 主張して説明し,立証すべきとした。

さらに東京地判 2008 年 11 月 27 日裁判所 ウェブサイトも,そもそも法は,国民主権の 理念にのっとり,政府の諸活動を国民に説明 する責務が全うされるようにすることを目的 とする(法1条参照)ものであることから,

行政文書は原則開示とする(法5条参照)も のの,他方で,法人その他の団体や事業を営 む個人の当該事業に関する権利利益を適切に 保護する必要があることから,情報を開示す ることの利益と開示しないことの利益とを衡

(14)

量した上で,事業者の各種権利や公正な競争 関係における地位,さらにはノウハウや信用 等の法人の運営上の正当な利益を害するよう な情報は,開示しない情報としたものである。

そして,このような権利や利益を害するお それがあるかどうかについては,単なる確 率的な可能性ではなく法的保護に値する蓋然 性が必要であると解すべきであるとの判断 基準を立てている

その後東京地判 2009 年5月 21 日情報公 開・個人情報保護関係答申・判決データベー スも,正当な利益を害するおそれがある とは,情報公開法が国民主権の理念から行政 文書について公開を原則としていること(同 法1条,5条柱書)からすれば,単に行政機 関の主観においてその利益が害されるおそれ があると判断されるだけではなく,法人等の 正当な利益が害されるという相当の蓋然性が 客観的に認められることが必要であるという べきであるとした。

さらに甲府地判 2011 年7月5日裁判所 ウェブサイトは,(法人情報に関する規定に つき)同号が,地方公共団体ないし地方独立 行政法人の行う事務又は事業の適正な遂行の 確保と行政文書の開示の要請との調整を趣旨 としていることに鑑みて判断した。

このように,裁判例の流れは,その表現こ そさまざまではあるものの,いずれも公文書 または行政文書を原則開示するとする情報公 開制度の趣旨を前提に行政文書の開示の要 請との調整をしようとしている。

②おそれの判断方法

そしてこの趣旨を受けて,東京地判 1994 年 11 月 15 日は,開示が求められている情

報が開示されることにより,当該法人等の競 争上等の地位が具体的に侵害されると認めら れるかどうかは,当該情報の内容によっても 当然に異なるものであり(例えば,当該情報 が事業活動上の機密事項や生産技術上の秘密 に属する内容であるならば,通常,これが開 示されることにより競争上等の地位が具体的 に侵害されることが客観的に明白であろ う。),その判断は,当該情報の内容・性質を 始めとして,法人等の事業内容,当該情報が 事業活動等においてどのような意味を有して いるか等の諸般の事情を総合して判断すべき ものであるといわなければならないと判断 し,前段において情報公開制度の民主主義的 な性格・目的を前提として,例外的に非開示 とされるものを除いては,原則として開示請 求権者に対して公文書を開示することを前 提に,具体的に侵害されることが客観的に 明白な場合であることを要請した。

同様に,大阪地判 1998 年3月 12 日は, れらの情報を公開すると,その内容いかんに よっては,それが各建設業者の経営状態や工 事施工能力等の重要な評価であるとされ,各 建設業者の事業等の活動に影響を与えること も考えられるという場合に,経営状況分析 機関が秘密として保持しなければならない情 報があるか否か,ならびに公正な競争秩 序の維持の観点および,広く一般の住民の 知り得るところとされるべき情報であると いえるか否かに照らして判断した。

そして最3小判 2001 年 11 月 27 日判タ 1081 号 171 頁は,学校法人の経理文書の開示 請求が認められた事案において,……単に 当該情報が通常知られたくないというだ けでは足りず,当該情報が開示されることに

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