目 次 一 は じめ に 二
広 大島 阪
控訴 院管 内に おけ る陪 審裁 判
( 一) 広島 控訴 院管 内に おけ る陪 審裁 判 1 年度 別・ 裁判 所別 陪審 公判 一覧 表 2 裁判 所別 陪審 公判 結果 一覧 表
( 二) 大阪 控訴 院管 内に おけ る陪 審裁 判 1 年度 別・ 裁判 所別 陪審 公判 一覧 表 2 裁判 所別 陪審 公判 結果 一覧 表 三 陪 審裁 判に 対す る評 価と その 再検 討
( 一) 陪審 裁判 に対 する 戦後 の評 価
( 二) 陪審 裁判 の無 罪率
( 三) 陪審 裁判 の刑 の量 定 四 陪 審公 判が 少な かっ た原 因
( 一) 制度 上の 原因
( 二) 陪審 裁判 の実 際
( 三) 法曹 三者 の対 応 五 陪 審法 の改 正と 施行 停止
( 一) 弁護 士団 体な どの 動向 1 広島 控訴 院管 内弁 護士 大会
(
)
<
資 料>
我 が 国 で 行 わ れ た 陪 審 裁 判 の 実 像
─
─
広 島 大 阪控 訴 院 管 内 に お け る 陪 審 公 判 を 中 心 と す る 昭 和 初 期 の 資 料 に 基 づ く 実 証 的 検 証
─
─ 広 島
修 道 大 学
「 明 治 期 の 法 と 裁 判 」 研 究 会 増 田
修
四
〇 六 四
〇 六
< 資
料>
修 道 法 学 三 七 巻 一 号 2 大阪 控訴 院管 内弁 護士 大会 3 日本 弁護 士協 会 4 帝国 弁護 士会 5 司法 官全 国弁 護士 会長 合同 協議 会
( 二) 陪審 法の 改正 と施 行停 止
( 三) 戦後 の陪 審法 と裁 判員 裁判 六 お わり に
一 は
じ
め
に
国 民 に 司 法 参 与 の 権 利 が 与 え ら れ
、 画 時 代 的 と い わ れ た 陪 審 法
(大 正一 二年 四月 一七 日法 律第 五〇 号) は
、昭 和 三( 一 九二 八) 年 一
〇 月 一 日 全 面 施 行
(昭 和 三年 七月 二 四日 勅令 第 一六 五号
) さ れ
、 昭 和 一 八
(一 九四 三
) 年 四 月 一 日 施 行 を 停 止
( 昭和 一八 年 三月 三一 日法 律 第八 六 号
) さ れ る ま で の 間
、 一 四 年 六 ヶ 月 に わ た り 実 施 さ れ た
。 し か し
、 陪 審 法 施 行 に あ た っ て 判 事
・ 検 事 を 増 員 す る た め の 指 標 と し て
、 陪 審 の 評 議 に 付 さ れ る 事 件 数 は 一 年 間 に 二
、 三
〇 一 件 と 予 想 し た の に 反 し て
、 施 行 期 間 中 の 陪 審 事 件 受 理 総 件 数 二 五
、 一 九 二 件 中
、 僅 か に 四 八 四 件 が 陪 審 の 評 議 に 付 さ れ た に 過 ぎ ず
、 不 振 を 極 め た
。 そ し て
、 第 二 次 世 界 大 戦 後
、 司 法 制 度 改 革 の 中 で
、 国 民 の 司 法 参 加 が 半 世 紀 に 亘 り 議 論 さ れ て き た
。 そ こ で は
、 大 正 陪 審 法 に は
、 欠 陥 が あ り
、 ま た
、 陪 審 の 評 議 に 付 さ れ た 事 件 が 少 な か っ た 原 因 と な る 問 題 点 も 幾 つ か あ る が
、 陪 審 公 判 は 通 常 公 判 に 比 べ て 無 罪
率 が 格 段 に 高 く
、 被 告 人 の 基 本 的 人 権 を 擁 護 す る 役 割 を 果 た し た と 評 価 し て
、 そ の 欠 陥 や 問 題 点 を 是 正 し 陪 審 法 を 復 活 す べ き で あ る と 主 張 す る 実 務 家
・ 研 究 者 は 少 な く な か っ た
。 と こ ろ が
、 そ の 過 程 で
、 我 が 国 に お い て 行 わ れ た 陪 審 公 判 に 関 す る 個 別 的 基 礎 資 料 を 広 範 囲 か つ 大 量 に 調 査 し て 得 た 実 証 的 成 果 を 踏 ま え て
、 陪 審 制 度 に つ い て 議 論 さ れ た こ と は
、 殆 ど 無 か っ た と い っ て よ い で あ ろ う
。 陪 審 裁 判 に 関 する 基 礎 資 料 で 現 在 残 っ て いる も の は
、( 1
)陪 審 公 判 始 末 簿
・第 一 審 刑 事 公 判 始 末 簿
、( 2
)予 審 終 結 決 定 書
、( 3
) 陪 審 説 示 集
、( 4
)陪 審 問 書 集
、( 5
)刑 事 判 決 書
、( 6
)当 時 の 新 聞
・ 雑 誌 に 掲 載 さ れ た 記 事
・ 論 文 な ど で あ る
。 そ こ で
、 筆 者 は
、
『 広 島 修 道 大 学「 明 治 期 の 法 と 裁 判
」研 究 会
』の メ ン バ ー の 協 力 を 得 て
、 広 島 控 訴 院 管 内 の 各 地 方 裁 判 所 に お け る 陪 審 裁 判 の 実 際 に 関 す る 当 時 の 資 料 を 調 査
・ 収 集 し 順 次 発 表 し て き た
。 次 い で
、 公 益 財 団 法 人 日 弁 連 法 務 研 究 財 団 の 研 究 助 成 を 受 け て
、 大 阪 控 訴 院 管 内 に お け る 陪 審 裁 判 の 実 際 に 関 す る 資 料 も 調 査
・ 収 集 し
、 電 磁 フ ァ イ ル 化 も 終 っ た
。 そ れ ら の 陪 審 裁 判 に 関 す る 資 料 を 調 査 す る 過 程 で
、 陪 審 公 判 は 総 べ て の 事 件 が 公 訴 事 実 を 否 認 し て い る も の で あ る が
、 そ の 否 認 の 内 容 は 無 罪 を 主 張 す る だ け で な く
、 公 訴 事 実 を 否 認 し て 縮 小 認 定 を 求 め る 事 件( 例え ば、 殺人 では なく 傷害 致死 であ ると 争う も) 多 数 あ り
、 当 時 の 判 検 事 の 立 場 か ら 観 る と
、 通 常 公 判 で あ れ ば 公 訴 事
(
) 四
〇 五 四
〇 五
我 が 国 で 行 わ れ た 陪 審 裁 判 の 実 像
実 の 通 り 認 定 さ れ る よ う な 事 件
( 注、 予審 で自 白し て公 判に 付さ れ た 事 件) が
、陪 審 公 判で は 無 罪や 公 訴 事 実 より も軽 い 罪 に縮 小 認 定 さ れ る こ とが 多 発 し
、被 告 人の 主 張 容 認 率( 無罪 率+ 縮 小認 定率 は) 三 三
% 乃 至 四 三
% に 達 し て い る こ と が 判 明 し て き た
。 こ の よ う な 視 点 か ら
、 本 稿 は
、 広 島 控 訴 院 管 内 お よ び 大 阪 控 訴 院 管 内 の 各 地 方 裁 判 所 に お い て 行 わ れ た 陪 審 公 判 を 中 心 と す る 当 時 の 資 料 に 基 づ い て
、
① 陪 審 公 判 の 実 際 と 実 像 は
、 ど の よ う な も の で あ っ た か
、
② 陪 審 裁 判 は
、 そ の 無 罪 率 が 当 時 の 通 常 裁 判 の 無 罪 率 よ り も 格 段 に 高 い の で
、 人 権 擁 護 の 役 割 を 果 た し た と 評 価 で き る か
、
③ 陪 審 公 判 の 量 刑 は
、 通 常 公 判 に 比 べ て 峻 厳 で あ る と 主 張 さ れ て い る が
、 実 際 は ど う か
、
④ 陪 審 公 判 が 極 め て 少 な か っ た 原 因 は ど こ に あ っ た か
、
⑤ 法 曹 三 者 は
、 陪 審 裁 判 に 対 し て
、 ど の よ う に 対 応 し た か
、 に つ い て 実 証 的 に 検 証 す る も の で あ る
。
( 注1
) 岡原 昌男
「陪 審法 ノ 停止 ニ関 スル 法 律に 就て
」(
『 法曹 会雑 誌』 第 巻 第4 号、 一九 四 三年 四月
)に 収録 され た
「年 度別 法定 請求 陪21 審 事 件受 理総 件数 表」 に よる と、 陪審 事件 受理 総 件数 二五
、一 九二 件( 法 定陪 審二 五、
〇九 七 件、 請求 陪審 四三 件、 特 別法 犯五 二件
)中
、陪 審の 評 議に 付し た総 件 数は 四八 四件
(法 定陪 審 四四 八件
、請 求 陪審 一二 件
、陪 審の 更 新二 四件
)で ある
。そ して
、更 新 二 四 件は
、再 陪審 にお い て有 罪一 七 件、 無罪 六件
、公 訴棄 却 一件 で ある
。無 罪は
、四 八 四件 中八 一 件( 無罪 率一 六・ 七 四%
)で ある
。
(
) 四
〇 四 四
〇 四
「 年 度 別 法 定 請 求 陪 審 事 件 受 理 総 件 数 表
」(
△ 印 は 陪 審 を 更 新 し た 件 数 外 数 で あ る
) 区 分 年 度 昭和 三年
(自 一〇 月 至 一二 月) 同四 年 同五 年 同六 年 同七 年 同八 年 同九 年
法定 請求 陪審 事件 受理 件数 法 定・ 請求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求
刑 法 犯 三〇 九 六 一、 四二 八 一 七 一、 六九 九 三 一、 九八 一 五 二、 二七
〇 三 二、 一二 六 二 二、 二六 九 二
特別 法犯 六
二 五 五 四 四
陪審 の評 議に 付し た総 件数 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求
二八
△三 一 三三
△三 六 七 五 六
△六 三 四 一
△八 六 三 一
△四 一 二 一 四 二
< 資
料>
修 道 法 学 三 七 巻 一 号
( 注2
) 司法 書記 官大 原 昇「 陪審 法の 実施 準 備に 就て
」(
『 法曹 会雑 誌』 第 7巻 第 号、 一九 二 九年 一〇 月) は、 陪審 法 の実 施に 当た り
、 10 判 事・ 検事 の増 員を 必 要と した ので
、陪 審事 件 が凡 そ何 件ほ ど あ る か調 査し て、 二、 三
〇一 件( 注、 一年 間の 陪 審事 件数
)と い う 予 想数 を 算出 した とい う。 その 算出 方法 は、 次の 通 りで ある
。「 之 は、 大 正七 年よ り同 九年 迄 の三 年間 の予 審 事件 の平 均数 を調 べ
、 それ が四
、一
〇八 件と いふ こと にな っ たの で、 其の 中 より 法 定陪 審 事 件に 該当 する も の一
、三 七一 件を 控除 し
、其 の残 件数 の内 よ り 更 に陪 審を 請求 せ ざる 件数 を三 割と 推 定し て之 を控 除 し、 依て 得 た る一
、九 一六 件 を、 一応 請求 陪審 件 数と 推定 し、 右 法定
・請 求 陪 審件 数合 計 三、 二八 七件 中猶 辞退 若 は請 求の 取下 又 は自 白す る も の三 割 あり と推 定し
、結 局法 定 陪審 件数 九五 九 件、 請求 陪審 件 数 一、 三四 二 件、 合計 陪審 事件 総数 二
、三
〇一 件と 推定 する こ と に なっ たの であ る
。即 ち、 陪審 事件 は予 審 事件 の五 割強 に当 る も の とい ふ見 込み でか ゝっ たの であ る。
」 とい う。 そし て最 終的 に、 判 事一
〇四 人、 検事 四六 人、 裁判 所書 記一 五〇 人増 員さ れた
。
( 注3
) 広島 控訴 院管 内に お ける 陪審 裁判 は、
『 広島 修道 大学
「明 治期 の 法 と裁 判」 研 究会
』( 以 下、
「研 究会
」と い う) の調 査・ 研究 課 題 の 一つ であ る。 増田 修( 広島 弁護 士会 所属 弁護 士) が中 心と なり
、 同 会を 構成 す るメ ンバ ーの うち 次 の者 が、 共同 して 調 査・ 研究 を 行 った
。加 藤 高広 島修 道大 学 名誉 教授
(民 法、 初 代「 研究 会」 会 長
)、 紺 谷 浩司 広島 大学 名 誉教 授( 民事 訴訟 法
)、 矢 野達 雄 広島 修
(
) 四
〇 三 四
〇 三 同一
〇年 同一 一年 同一 二年 同一 三年 同一 四年 同一 五年 同一 六年 同一 七年 計
法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求
二、
〇八 三 二、
〇四 三 一、 九一 七 一、 七三 二 一 一、 四二 四 一、 二三 五 一、 二二 九 一、 三五 二 四 二 五、
〇九 七 四 三
三 五 六 一 二 二 五 七
二
法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求 法 定 請 求
一七
△一 一六
△三 一三
△二 四
△三 一 四 一
△一 一 四 四八
△ 二四 一二