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「材料」に関する生徒の意識分析に関する研究

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(1)

「材料」に関する生徒の意識分析に関する研究

大 迫 靖 雄 * ・ 寺 床 勝 也 * *

AnAnalysisofJuniorHighSchoolPupilConsciousnesson,'Materials”

YasuoOHsAKo・andKatuyaTERAToKo。。

(ReceivedOctoberl,1990)

Thepurposeofthisstudyistoclearifyjuniorhighschoolpupilconsciousness

onvaluationofthematerialsusedintechnicaleducationandestablishthe

suitablestudymethodsoftechnicaleducation、Asthesubjecttothestudy,

wechoosewoodenmaterialsoutofmaterialsusedintechnicaleducationand investigateaccordingtothequestionairesonvaluationofwoodenmaterials

forthejuniorhighschoolpupiLTheresultsobtainedaresummarized asfollows:(1)Thescientificknowlageonwoodenmaterialsofjuniorhigh

schoolpupilsisverypoor・Itclarifythepoorknowlageof”materials',on technicaleducation.(2)Pupil'sexperienceontechnicaleducationischanging

withachangeofpupil'slivingcondition,sothatthereisnotenoughpupil,s experienceontechnicaleducation.(3)Thejuniorhighschoolpupilsvaluate ''materials”byonlysensuouscharacteristics,but,aftertheylearn”woodworking',

educationontechnicaleducation,theycanvaluatewoodenmaterialswith bothsensuousandscientificcharacteristic.

は じ め に

筆者らは,子どもの発達段階における認知構造 と,技術科教育との関わりについて一連の研究を 進めている').学校教育の中において,技術科教 育に関連した教育を行う場合,児童,生徒のもつ 意識や知識,それらの背景となる生活体験及び発 達段階に注目して,子どもの実態に即した教育が なされる必要がある2).ところで,現代の子ども を取り巻く環境の急速な変化は,子どもの生活体 験を一変させた3).学校教育においても,それに

ともなう意識,発達段階における認知構造の変容 の実態を捉え,それに対する教育方法を考えてい く必要があろう.本研究では,このような子ども の生活体験と技術科教育との関わりについて考え る一つの方法として,学校教育における技術科教 育の中で重要な位置を占める材料に関する,子ど もの体験と意識について検討し,技術科教育との

、熊本大学教育学部技術教育 .、熊本大学教育学研究科大学院

関連性について考察する.さらに,中等教育前期 の基礎的領域4)を受け持つ「木材加工」教育の主 たる教材である木質材料のもつ教育的意義につい て考察することを試みようとするものである.

わが国の学校教育において,学校施設,設備や 教育課程の中で教材として種々の材料が使われて いる5).例えば,木材を用いた教材には,小学校 の段階では図画工作科創のなかに,そして,中学 校の技術・家庭科4)では木材加工領域がある.し かし,小学校段階では,木材はマニュアル・トレー ニングの一手段として用いられているもので,材 料的特性に注目した教育が行われているとはいえ ない.すなわち,材料の特性に注目した,インダ ストリアル・アーッ的技術科教育として,一般陶 治的教育がなされるのは,中学校技術・家庭科と いえる.ところで,中学校における技術・家庭科 の目指す目標は,実践を通した体験から得られる 知識の定着である.このような目標から,中学校 における技術科教育では,1年生で「木材加工」

教育を行うことにより,一般的な,材料に対する 科学的根拠に裏打ちされた技術的な性能評価の判

- 3 7 -

(2)

断の基礎を養うものであると考えられる.

中学校における技術・家庭科では,加工教育の 中で,材料として木材と金属材料を扱っている‘).

その目的は,技術・家庭科の目標である「家庭生 活や社会生活と技術との関わりについて理解を深 めさせ,生活の充実向上を図る能力と実戦的な態 度の育成」4)を究極目標として取り組まれている.

特に,加工教育は,歴史的には手工教育の流れを くんだ教育で,その教育的意義は,すでに,わが 国の近代教育の初期から認められている7).その

うちでも,木材は日本の歴史的な背景の深さや,

現代の家庭生活においても欠かすことのできない 材料であるとともに,わが国の重要な森林資源で もある.同時に,教育の歴史の中でも,技術科教 育の源流の一つである前述した手工教育において,

種々の理由から,教育的効果をあげるのに最適な 材料として,木材があげられてきた.これらの教 育的意義は,全人教育的観点から,時代の変遷に 関係なく高く評価されるものである.

この観点から,本研究では,教育に関係する材 料の一つとして,特に木材に注目して,子どもが 木材についてどのような意識を有しているか,中 等教育前期における技術科教育の基礎として,木 材加工を履修する中学校1年生の段階では,どの 程度の木材に対する知識を有しているか調査する

こととした.

調査及び調査方法 調査対象

熊本市立A中学校第1学年の「木材加工l」領 域の履修者と未履修者,男子生徒70名,女子生徒 63名,計133名を本調査の対象とした.なお,本 校では,l年次において「木材加工l」領域の授 業は男女共学で行われた.また,本報で検討する 材料感の基礎となるべき生徒の体験と密接に関係 するA中学校の建築構造材料については表lに示

調 査 方 法

生徒の材料感を調査するのに必要と考える質問 項目をもりこんだ質問紙法によるアンケート調査 を行った.なお,調査項目は,大きく分類すると,

以下のようになる.

①学校床材料,家具材料に対する生徒の意識

②木材の使用状況に関するもの

③樹種名,木材名の知識調査に関するもの

④ 木 材 の 利 用 に 関 す る も の な ど

なお,本調査を行う前に,質問項目の妥当性を 検討するため,小学校6年生を対象とした調査を 行い,これらの結果とも考慮して質問項目を決定 した.調査は,本調査の主旨を理解した当学校の 技術科教諭によって行った.

表 1 調 査 対 象 校 の 各 施 設 の 材 料

廊下

調査部位 材 料

床腰壁

普通教室

床腰壁天窓 板井枠

コ ン ク リ ー ト コ ン ク リ ー ト コ ン ク リ ー ト 吸音板 ア ル ミ サ ッ シ

- 3 8 -

ビ ニ ー ル タ イ ル

コ ン ク リ ー ト コ ン ク リ ー ト

床壁

校舎:RC造,建築年昭和52年,54年,57年 体育館:鉄骨造,建築年昭和42年

体育館 木質フローリング

有孔合坂

結果及び考察

学校床材料・家具材料に関する生徒の意識 まず,材料の中で,床および家具材料に関する 調査結果を,男女別,「木材加工l」の履修,未履 修別に表2(a),(b)に示す.なお,本項目に 関する学校床材料の選択肢は「木材」,「セメント」,

「プラスチック」とし,家具材料のそれは「木材」,

「スチール」,「その他」とした.

本表から木材を好ましい材料とした生徒の割合 は,全体的に学校床材料では73.7%,家具材料で は82%と高い割合を示した.表2(a)から男女 別にみると木材を好ましいとした割合は,いずれ

も女子が高い結果を示し,特に家具材料としての 木材選択率は92%を示している.このことは,こ れらとの用途に木材が好ましいとする考えは,女 子生徒が,より強いことを示しているといえよう.

また,学校床材料に木材とともに多く使用されて いるセメント,プラスチックの選択割合をみると,

木材に比して比重は低く,これらを合わせても約 25%の割合しかない.同様に,家具材料における

スチール,その他の材料の占める割合は20%程度

(3)

表2生徒が好ましいと回答した材料(%)

(a)男女別

木 材 セ メ ン ト プ ラ ス チ ッ ク ス チ ー ル そ の 他 床 材 料 男 子 6 8 . 6 1 1

女 子 7 9 . 4 1 9.5 計 7 3 . 7 1 9.8

家 具 材 料 男 子 7 2 . 9 24.3 2.9

女 子 9 2 . 1 6.4 4.8

計 8 2 . 0 1 2.3

(b)履修,未履修

木 材 セ メ ン ト プ ラ ス チ ッ ク ス チ ー ル そ の 他 床 材 料 履 修 6 2 . 6 1 1

未 履 修 8 3 . 6 1 6.0 計 7 3 . 7 1 9.8

家 具 材 料 履 修 7 Z 3 1

特 性 視覚的特性

未 履 修 8 6 . 6 1

計 8 2 . 0

表 3 学 校 床 材 料 の 木 材 選 択 理 由 一 覧

あ た た か い , き れ い , や わ ら か い , 味 が あ る , 趣 が あ る 見 た 目 が よ い , 自 然 な 感 じ , 和 風

か つ こ い い *

6.0

1.5 2.3

触覚的特性 あたたかい,やわらかい,肌触り,なじみやすい,歩きやすい

かたい噸蕨噸 聴 覚 特 性

臭覚特性 ストレス関連特性 安全‘性関連特‘性

教育効果関連特性 耐久’性,強度‘性,

吸音性 よ い に お い

親しみやすい,落ち着く,気持ちがよい,安心 転んでも痛くない,吸湿‘性,滑らない,けがしにくい 足によい,安全熟**

掃除しやすいo,小学校は木材が使われていた

丈夫*,腐らない蝋,水に強い噸,燃えない嬢,傷つかない車 無,木材・セメント,、蝋プラスチックo木材と他のいずれかにも出てきた回答

であった.以上の結果から生徒の材料としての木 材の評価は高いことが伺われる.

次に,このように木材を好ましい材料として木 材を評価した木材選択の理由について検討する.

まず,回答された選択理由を特性別に表3に示す.

本表は,選択理由(評価内容)を,各特性に分類 して並べたものである.また,特に,木材につい ての特性別選択理由を,床材料と家具材料別,お よび「木材加工l」履修者,未履修者,男女別に 出現件数として図1(a)~(c)に示す.まず,

- 3 9 -

(4)

20

これらの結果から,木材選択の共通にみられた 理由は,出現頻度の高い順から「あたたかみ」,

「やわらかい」が多くを占めており,学校床材料,

家具材料についても「あたたかみ」は最も大きい 理由であった.これらの結果は図1(a),2 (a)においては,視覚的,触覚的の頻度の高さ として示される.また,触覚特‘性と視覚特性の評 価理由は,かなり共通なものが見られる.一般に,

この特性には,共通的なものがあるといわれてお り帥,この点について妥当な回答がなされたとい えよう.その他,以下本表に示すような,感覚特 性に裏付けられた理由の項目が多くみうけられた.

次に,これらの選択理由について詳細に検討す

由で,最も多く出現したのが「あたたかみ(29件)」

で,以下「におい(9件)」,「痛くない(7件)」

であった.その他,「親しみやすい,落ち着く,体 になじむ,木目がよい」といったストレス関連特 性がみられた.また,以上述べた感覚的な特性以 外に,建築材としての物理的特徴である「吸音性」

「吸湿性」に関するものも1件ずつみられ,木材 の材料的な特性と結びつけた回答もみられた.ま た,これらの回答の中に,教育効果関連特性の理 由の中で「小学校の校舎に木材が使われていた」

という回答が4件あり,木材に対する親しみの感 情や慣れに基づいた選択も推定された.また,図 1(b),(c)に示した特性別の回答件数を比較 すると明らかなように,木材を選択した理由は,

視覚,触覚特性が多く,続いて安全性関連特性,

臭覚特性となっている.このような結果から,本 調査の対象とした生徒は,材料選択を,視覚,触 覚的な感覚的手段で行っていることが推定される.

次に,「木材加工l」領域の履修者と未履修者 の材料感を検討するため,両者の材料選択状況を 表2(b)の結果から検討する.本表から,木材 選択の占める割合は,両者で若干の差がみられる.

すなわち「木材加工l」を履修したクラスの木材 選択の割合が下回る傾向にある.その結果,セメ

ント,プラスチックあるいはスチールを選択する 者が増加しているが,木材以外の材料を選択する 理由として,例えば,「木材は水に弱く,腐りやす い(3件)」,「木材は燃えやすい(1件)」といっ た,木材の耐久性あるいは強度特性に関する指摘 がなされ,セメントの選択の基準に,これらの特 性に関連する「強さ」,「硬さ」,「こわれにくさ」

が選択されている.このことは「木材加工l」を 履修したことによる,材料選択の基準が,感覚的 視点のみから,強度的な視点が付加された結果と 考えられる.このことは,換言すれば,生徒の認 知の仕方が変容をきたしてきたことを示したもの といえよう.この傾向は,プラスチックの選択に ついても同様で,耐久性や強度に関する理由が最 も多く,「木材は腐る(2件)」,「セメントはい たみやすい(5件)」などの理由があげられた.

このような傾向は,「木材加工l」の履修におい て,木材の材料的な特性,すなわち,「じょうぶな 構造」8)など学ぶことにより,材料の評価基準が感 覚的なものだけでなく,強度的あるいは物理的特 性と関係づけて考える必要があることを知った結

10 40

録虻環剛

20

視 覚 触 覚 聴 覚 臭 覚 ス ト レ ス 安 全 性 散 青 効 果 感 覚 特 性

視 覚 触 覚 ( b

録辻黙鯛

( c

聴 覚 臭 覚 ス ト レ ス 安 全 性 教 育 効 果 感 覚 特 性

■男子園女子

るため図1(b),(c)に示した学校床材料と家 具材料の木材選択理由をみてみる.

まず,学校床材料の選択理由をみると,選択理 図1

I

、 雌 腿 1

録虻卑頬

- 4 0 -

(5)

表4家具材料の木材選択理由一覧

特 性 視覚的特性

触覚的特性 聴覚特性 臭覚特性

あ た た か い , き れ い , や わ ら か い , 自 然 的 , 色 が よ い 見た目がよい,模様がよい,和風,高級感,やさしい か っ こ い い *

あたたかい,やわらかい,肌触り,軽い,使いやすい○

よいにおい,香り

ストレス関連特性 親しみやすい,落ち着く,気持ちがよい,安心,慣れ 安全性関連特性

教育関連特'性 勉強に最適

耐久性,強度性 丈夫○,長持ち,傷つきにくい○,腐らない隼,水に強い噸 安全.,トゲがささらない・

無,木材,・スチール,o木材,スチールのいずれかにも出てくる回答

果によると考えられる.ただ,評価の理由の中に は,生徒の生活体験に基づくものも多く,~それら の理由をみれば,材料のもつ特徴と一致するとは 限られないものもみられ,基礎となるべき知識の 定着は十分とはいえない.

次に,家具材料の木材選択理由をみると,表4 に示すように「あたたかみ(13件)」,以下「使い 心地よい」,「きれい」,「落ち着く」,「やわらかい」

等が続く.ただ,床材料の選択と比較して,スト レス関連特性の理由が目立ち,それに付随して,

視覚的,触覚的な感覚を材料選択の基準としてい る傾向がみられる.一方,安全性に関する理由は,

ほとんどなく,床材料ほど材料選択に安全性を求 める必要を感じていないことを示している.さら に,耐久性,強度特性に関する特性も,「丈夫」,

「長持ち」,「傷がつきにくい」が示されたが,床 材料の選択理由と比較すると少ない.また,教育 効果に関連するものとして,「勉強に最適」と答 えた子どもは1名であった.

これらの結果から,家具材料としての木材選択 理由は,感覚特性に依拠するものであることがデー タから伺われる.また,このことは,家具材料の 木材選択理由の特性を示した図2(a)をみると,

前述の学校床材料に対し,ストレス関連特性が大 きな比重を示していることからも推定できる.

「木材加工l」の履修,未履修の違いでは,図2 (c)に示すように,未履修の生徒が視覚的,触 覚的特性の件数がやや多い傾向である.これに対

し,スチール,その他を選択した者は,全体の15.8

%,2.3%と少なく,その理由は,「軽くて丈夫」,

「燃えない」,「壊れにくい」等で,耐久性,強度 特性に関するものであった.また,表2(b)に 示した履修者と未履修者の材料選択は,履修した

クラスで,スチールを選択した生徒が19.3%と約 9%多いことが示された.その原因について見る と,スチール選択理由に「木材はトゲがささる」,

「木材は燃える」,「木材は構造的に弱い」があげ られ木材の耐久‘性,強度的特性のマイナス面に着 目した観点から,スチールを評価している傾向が みられるものと考えられよう.

以上の結果は,木材の選択理由は,生徒の生活 体験からくる感覚特性に依拠しており,その他の 材料では,耐久性,強度的特性にウェイトをおい て評価基準が示されていることが明らかとなって いる.この傾向は,「木材加工l」を履修した生 徒の場合に顕著にあらわれる.このことは,「木 材加工l」の履修において,例えば,「技術・家 庭科(上)」教科書8)では,木材の物理的性質とし

て,乾燥による膨潤や収縮強度的性質としては,

繊維方向の違いによる強さや板接合強度等にふれ ているなど,材料的な特徴に強度的な視点が教授 された結果,強度的,耐久性についての視点を入 れたことの現れであることが推定された.また,

評価基準が床材料と家具材料で若干異なっており,

床材料がより耐久性,強度的特性が要求されるこ とを示している.すなわち,家具材料より,学校

- 4 1 -

(6)

視 覚 触 覚 駒 覚 臭 覚 ス ト レ ス 安 全 性 教 育 効 果 感 覚 特 性

床材料の選択基準が,より強度的,安全性に比重 をおいたものとなっている.ただ,選択基準の基 礎の中には,必ずしも,正しくないものも含まれ ており,知識の不十分さも伺われた.ところで,

木材を選択する基準の大きな部分を占める感覚特 性は,一般に,心理的安定と関わりが深いとされ ており,),教育現場における木材の特徴と一致し た結果が示されたといえよう.また,木材の場合,

生理的な特性についても明らかにされつつあり'0),

緊張感を伴わない肌触りの良さが,少年期,青年 前期の成長期にある子供たちが接するのに最適な 材料であることが明らかにされつつある別.これ らの材料の判定の根拠については,より高度な知 識が要求される.しかし,本調査の対象とした生 徒はすでにかなり正当な評価を行っているといえ

木材の使用状況について

木製品製作の有無,製作の状況,使用樹種など,

木製品製作に関連する質問に対する回答結果を表 5及び図3に示す.なお,本質問は,小学校での 製作の状況をみるために,「木材加工l」を履修 した生徒に対しては,中学校で行われた製作でな く,小学校の段階での体験について回答するよう 指示した.本調査は,中学校において,技術・家 庭科の授業を行う基礎資料として,生徒の体験の 実態をみることを目的とした.

表5木製品製作の経験の有無(%)

図 工 室 家 製 作 場 所

■男子圏女子口合計 男 子 女 子 全 体

その他

あ り 9 5 . 7 95.5

( b

な し 4 . 3 4.5

図 3 生 徒 が 木 製 品 を 製 作 し た 場 所

40

O8642

0000Oo

M l i I i

諏杜塞鯛 ま)如厩癖邸坐謀

20

図2 家具材料の木材選択理由の特性別分布

(a)全体(b)男女別

(c)「木材加工l」履修,未履修

視 覚 触 覚 塊 覚 臭 覚 ス ト レ ス 安 全 性 教 育 効 果 感 覚 特 性

図履修圃未履修

L=,

視 覚 触 覚 20

- 4 2 -

録辻環鯛

本図は,95.5%の生徒が木材を使って物を製作 した経験があることを明らかにしている.しかし ながら,その体験の大部分は,小学校の図画工作 における体験である.小学校においては,4年生 でのこぎりの使用がなされており,4~6年の間 に木材を使用した作品の製作を少なくとも数回は 体験しており,この結果は当然といえよう.これ に対し,学校以外や家庭で木工作を体験した割合 は,表5からも明らかなように,全体の18%にす ぎない.そしてその内容は,男子は25%,女子は 10%を示し,男女間に体験の差がある結果を示し ている.これらの結果から,生徒が中学生になる までに学校教育以外で木材を用いて製作を行う機 会は少ないといえる.このように,教育効果を上 げるために必要とされる木材を用いて,小学生が

蘭 覚 臭 覚 ス ト レ ス 安 全 性 教 育 効 果 感 覚 特 性

口男子園女子

10 ( c 30

掻辻環噸 20

(7)

を用い,基本的な材料の扱いが出来るようになる ことを目指している.この場合の材料の「生かし 方」については,創作活動の一環であり,必ずし も材料学的視点を持っているとはいえない.4学 年になると,「彫りやすい材料」を使って,「彫り

と刷りの関係を考え木版画であらわす」となり,

彫りやすさに関する材料的性質に関係した指導は なされておらすも,木lLlの方向,加工の方向など,

板材を削るのに必要な材料と加工法に関する適切 な指導もなされているとは考えられない.また教 材用板材も,主として教材会社が用意した物で,

ときには,表面に青く塗料が塗布され,彫ると木 地が表れ,木版画の仕上がりをイメージ的に捉え るよう配慮された物など,加工の初期段階ですで に木材の性質を不明にしているものなどがみられ る.また,小学校高学年ともなると,「彫りやす い材料の性質を考え,それに適した用具を使い,

見通しを立てて表すこと」図となり,材料の生か し方について工夫するよう指摘されているが,か なり抽象的表現しか示されておらず,「材料の生 かし方」の基礎となる材質等にはふれられていな い.このことは,材料の選択にあたり,「彫りや すい材料」という指摘でも明らかなように,「彫 りやすい」という実態,例えば,樹種名などに関 する指導はなされていない.おそらく,「彫りや すい材料」として,教材会社が提供した板をその

まま使用していると思われる.これは,現在の図 画工作が,その指導目標でも述べられているよう に,鑑賞中心のものであることを明らかにしてい るといえよう.いうまでもなく,木材は樹種によっ てはもちろん,同一樹種のものでも,その性質は 不均質である.それゆえ,使用するにあたっての 使用法を配慮(例えば,乾燥にともなう割れ,反 り)する必要がある.これらの体験を通して,そ の根拠を指導することによって,正しい材料感が 定着する.そして,そのことがいわゆる技術科教 育そのものであるといえよう.

樹種名,木材名に関する知識調査

前項で,過去に生徒が製作のため使用した木材 に関する知識が低いことを明らかにした.そこで,

本項では,いわゆる木材の樹種についての知識を みるため,質問項目「あなたの知っている木材の 種類(名前)を書いて下さい(いくつでも)」を 設け,知っている木材の樹種名を自由に書かせた.

その結果を,図5(a),(b)に示す.本図か 加工する機会は,現在では,学校教育に限られよ

うとしている.

次に,製作物を見ると,「テープカッター」,「壁 飾り」が最も多く作られている'1).そしてこれら の作品は,小学校図画工作科の中で扱われた教材 である.一方,学校教育以外で製作したものには,

「犬小屋」,「鳥小屋」等,家庭での日常生活に密 着したものが多く見られた.

次に,使用した木材(樹種名)についての知識 度をみるため,製作に使用した樹種名についての 回答割合を図4に示す.本図から,使用した木材 名を「わからない」と回答した子どもは,全体で 80%,そのうち,男子は,74.6%,女子は85%に

達する.なお,木材を知っている生徒の中には,

「スギ」,「タケ」,「ヒノキ」,「ラワン」と回答して おり,全体的にみても,木材の名称を正確に回答

した生徒は約10%にすぎない.このことは,木材 を物を製作するための一つの材料として,他の材 料と同一単位にみており,個々の材料的特’性,あ

ま)如稲沖亘評蝉蓋

男 子 女 子

■わからない国スギ圏タケロヒノキ■ラヮンロその他

図 4 製 作 に 使 用 し た 樹 種 名 に つ い て の 回 答

るいは,外観的特性等についてはほとんど無関心 であることが推定できる.

以上のことから,小学校図画工作科の中では,

材料としての木材についての指導は,なされてい ない状況であることが明らかであるといえよう.

また,昭和53年改訂の学習指導要領に示された木 材に多少とも関係するとみられる内容をみると,

小学校低学年における製作活動は,身辺材料を用 いることで,その中身は,紙,粘土等であり,木 材に近い竹ひごが扱われる程度で,木材そのもの の使用はみられない.小学校中学年の3学年では,

「身近な扱いやすい材料」を使って,材料の「生 かし方を考えて表すこと」になっており,板切れ

- 4 3 -

(8)

A B C D E F G H 1 」 樹 種 名

ら,知名度の高い樹種名を順にみると,全体では,

スギ,ヒノキ,サクラ,マツ,クスノキ,クヌギ,

イ チ ョ ウ , ケ ヤ キ , ベ ニ ヤ , モ ミ の 順 と な り , ス ギについては82%もの多数の生徒が,少なくとも

Iま,男子では,スギ,ヒノキ,サクラであり,女 子では,スギ,ヒノキ,マツの順である.以上の 点からも,男女を問わず木材の中で最も知名度が 高いのは「スギ」であるといえる.

「木材加工l」の履修,未履修の違いでは,上 に掲げた共通にみられた樹種名を別として,履修 組が,少数意見として,カシ,キリ,クリ,ハゼ,

ブナ,タケ等の,木材材料資源としての有用樹種 をあげたのに対し,未履修組には,カキ,ウメ,

リンゴ,モモといった,材料として使用されるよ り,むしろ,他の用途を主とする果樹等の樹種名 が多く見受けられた.

以上の結果は,「木材加工l」を履修すること によって,「木材」の意味が多少,材料学的な視 点で捉えられるようになったことを表していると いえ,生徒の認知構造を変容させたと思われる.

また,南洋材である「ラワン」の出現頻度は少 なく,男子で5人あげた程度である.この傾向は,

当校において,南洋材の使用がなされていないこ とにも起因し,また,小学校図画工作科,中学校 美術科では「ホウ」,「シナノキ」が使用され南洋 材を実際に使用していないことによると考えられ

る.しかしながら,現在,熱帯林の乱伐による環 境破壊が問題となっている時期であり,これらの 社会的情勢との関連について,生徒の意識の低さ が示されたものといえよう.

木材の利用について

木材の利用認識について検討するため,身近に 存在する木材名を予め提示し,その知識の有無と,

その木材の生活の中における利用について記述さ せた.なお,樹種名は熊本営林局の作成した九州 地区に植生する有用木材の中から14種選んだ.

その結果を,図6(a),(b)に示す.本図か ら樹種名に対する知識は,前項の結果と等しい傾 向を示した.すなわち,知名度の高い順では,全 体で,スギ(83%),ヒノキ(82%),サクラ,ク

ス ノ キ , ク ヌ ギ , ア カ マ ツ , ケ ヤ キ , モ ミ , ク ロ マッ,ブナ,イスノキ,アカガシ,ツガ,タブ,コ ジイである.この傾向は図に示すように男女とも ほぼ等しい.またこの傾向については,「木材加 工l」の履修,未履修の違いも見られなかった.

なお,イスノキ以下の樹種名については,6%程 度の生徒しか知っていると答えていない.筆者の 一人が,小学校6年生を対象とした調査'3)による

と,樹木の認識度には,地域によって差があるこ

100

000000

08642

ま)如哀坤垂

- 4 4 -

0000O B64Z

ま)如雇坤回

C D E F G H l 」 樹 種 名

画勇子園女子

A B

図 5 樹 種 名 に 対 し て 生 徒 が 知 っ て い る と 回答した割合

(a)全体(b)男女別

A : ス ギ B : ヒ ノ キ C : サ ク ラ D : マ ツ E : ク ス ノ キ F : ク ヌ ギ G : イ チ ョ ウ H : ケ ヤ キ I : ベ ニ ヤ J : モ ミ

名称を認識していることが明らかとなった.また,

これは男女とも共通にみられる傾向であった.

ちなみに,スギ材は,わが国では有数の樹種で,

森林に多くの量が見られる.また,当中学校で,

「木材加工l」において,焼きスギ製品(本立等)

の指導がなされているところから,生徒の身近な 材料であることは明らかである.しかしながら,

「木材加工l」の履修,未履修の両者では特に知 識の違いが見られず,本学校で,スギを使用した

ことによる知名度の増加はみられるとはいえない ことを示している.また,知名度では,「スギ」

に続いて,「ヒノキ」,「サクラ」の順となってい る.上位のスギ,ヒノキは前述した本校の施設,

設備にも使用されるなど,身近に存在しており,

生徒の生活と密接に関係した材料である.

また,自由記載の一番最初に現れてくる木材名

(9)

ヒ ノ キ 3 5 , 5

ヒノキの35.5%で,その内訳は,建築材(柱,床,

壁),家具材(机,イス,ダンス),建具材,器具 材,風呂等と多岐にわたっていた.以下,スギ

(27%)が続き,その内訳も,ヒノキに似た建築 材,家具材,建具材のものであった.次に,モミ の23%が示された.ただ,モミの認識度は,女子 生徒が圧倒的に高く,利用の内訳は,クリスマス

ツリー用樹木としており,木材の利用というより,

鑑賞用樹木としてのものであり,本報の目的であ る,技術科教育的観点から見た認識ではないこと は明らかである.以下,サクラ,クヌギとなって いる.クヌギについては,しいたけのほだ木,昆 虫採集などが示されている.前述した,筆者の一 人が行った調査'3)によっても,山間部のしいたけ 栽培の盛んな地域においては,ほぼ,全生徒が,

「クヌギ」=「ほだ木」と回答するなど,生活に 密着した木材に対する認識度は高い傾向がみられ

とが明らかとなっている.すなわち,スギ,ヒノ

キの認識度にはさほど差は見られないが,山村部 の小学生は,都市部のそれより,多くの樹木名を 認知しており,身近にあり,しかも生活に密着し た木材の認識度が高い傾向がみられる.このこと は,身近に樹木や木材が存在しない場合,木材に 対する関心が薄くなることを示しているともいえ る.本報の目的とは異なるが,自然環境破壊が問 題となっている昨今,樹木や木材に接していない ことは,森林の重要性と保護の必要性などの認識 程度に影響があることが考えられる.従って,こ こで示したような結果は,周囲に存在する樹木に 対しても,現代の子ども達が目を向けることもな

000000

54321

爵糎認匿再

表 6 木 材 の 利 用 認 識 に つ い て

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樹種名認識度(%) 内 訳

G H l 」 K

A B C D E F 樹 種

〈,山の自然を観察する機会も少ないことを示し ているとも受け取れる.

次に,木材とその樹種別利用についての認識結 果を表6に示す.本結果は,全般的にほとんどの 生徒は樹種と利用の関係を認識していないことを 明らかにしたといえよう.このうち,最も利用認 識数の高かったものは,表6で明らかなように,

建築材(柱,床,壁,学校,家)

家具材(机,イス,ダンス)

建具材,器具材,風呂,風呂桶 建築材(柱,床,家)

家具材(机,イス,ダンス,棚,

本立,小物入れ)

建具材,台,まな板,まき

ク リ ス マ ス ツ リ ー

建築材(柱,壁)

家具材(ダンス,小物入れ)

建具材,版画 建築材(柱,家)

家具材,ほだ木,昆虫採集用樹木

以上のことより,木材を使用する場合,その木 材の性質と利用とのかかわりあいから材料を選択 する技術的な知識は,中学校1年生では不十分で あり,材質特性と使用法との関連性が希薄である といえる.このことは,木材加工教育において,

より教育的効果をあげる方法を考慮する必要があ ることを示しているといえよう.

000000

54321

23.0 17.2 (

b

ス ギ 2 7 . 0

晋鍔闘旺零

モ ミ サ ク ラ

A B C D E F G H 樹 種 名 画男子函女子

図 6 樹 種 の 利 用 に 関 す る 認 識 度

(a)全体(b)男女別

A:ヒノキ,B:スギ,C:モミ,D:サクラ,E:クヌギ F:クスノキ,G:アカマッ,H:イスノキ,I:ケヤキ ル プ ナ K : ク ロ マ ツ

ク ヌ ギ 1 2 . 2

(10)

総 括

中学校段階での,本報で取り上げた材料として の「木材」の選択にあたって,生徒は,木材の材 質に関係する機能性より,むしろ,視覚,触覚等 の感覚特性に重点がおかれることが明らかとなっ た.その結果,生活環境の中に存在する木材材料 に対する生徒の評価は,全般的にかなり正しいこ とを示している.ただ,樹木と材料としての木材 との関連性や,その材質的な知識は乏しい.そし て,その原因が知識を得るべき機会,場所の減少 等,生徒をとりまく環境にあることが推定された.

すなわち,子どもの認識の多くは,子どもの生 活体験の中から確立されるものであり,本報で述 べた子どもの木材に対する「貧弱な認識」は,換 言すると,「生活体験の貧困さ」がもたらすもの であると考えられる.これは,ピアジェのいう日 常生活に根ざした行為としてのシェマが確立され

る過程によって説明することができる2).

ただ,中学校教育で,「木材加工l」を履修す ることで,木材について材料としての認識の向上 がみられた.このような認識の変容は,「木材加 工l」を履修することによって,材料選択におけ る,科学的な視点からの評価が必要なことを認識 されたといえる.すなわち,材料の評価の視点が,

感覚特性によるだけでなく,材料の持つ種々の科 学的な特性と結び付いたことを示し,技術科教育 の教育効果が認められたといえる.

以上の結果から,子どもの生活環境が変化して きた現在,それらの実態を十分に把握して,今後 は,それら生徒の経験と知識を踏まえて,さらに 学習の適時性を考慮した,より教育効果を上げる 技術科教育の方法論を検討する必要があるといえ

よう.

最後に,本研究を遂行するにあたり,種々の便 宜をはかったいただいた,熊本市立三和中学校,

松永建一教諭に深謝いたします.

参 考 文 献

l)大迫靖雄,寺床勝也:児童生徒の生活体験における技術科 教育的要紫について,11本産業技術科教育学会第33回全 国大会講演要旨集,3(1990)

2)波多野完治編:ピアジエの認識心理学,国土社,1986 3)例えば,深谷昌志:孤立する子どもたち(NHKブックス

436),日本放送出版協会,1983 4)中学校学習指導要領,文部省,1989 5)大迫靖雄:教育環境と木材,木材工業,Vol、45,397(1990)

6)小学校学習指導要領,文部省,1989

7)大迫靖雄:技術科教育の基礎としての木材加工教育(1)木 材加工教育の歴史的変遷,熊本大学教育学部付属教育工学 センター紀要,N05,45(1988)

8)鈴木寿雄編集:中学校技術・家庭科(上),開隆堂,1986 9)大迫靖雄:学校における教育環境のあり方,ウッデイエイジ,

36(7),6(1988)

10)’11田正編:木質環境の科学,海青社,1987 11)小学校学稗指導要領凶凹・工作,文部省,1978 12)小学校学習指導要領,文部省,1978

13)大迫靖雄:地域の情況に応じた技術科教育の展開について

(1)「木材加工」領域教材用地元産材に対する認識,日本産 業技術教育学会第32回全国大会講演要旨集,122(1989)

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参照

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