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八雲の三男 小泉 清のこと

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熊本大学学術リポジトリ

八雲の三男 小泉 清のこと

著者 金原, 理

雑誌名 東光原 : 熊本大学附属図書館報 = Kumamoto

University Library bulletin

巻 32

ページ 3‑3

発行年 2002‑04

URL http://hdl.handle.net/2298/10349

(2)

東光原:熊本大学附属図書館報 第32号(2002.4)

八雲の三男 小泉 清のこと

金原 理

五高で教鞭を執ったこともある小泉八雲一八雲は 1891年(明治24)11月から3年間、五高で、英語と ラテン語を教えた−は我々日本人にとって馴染み深 い作家だが、彼の三男小泉清が優れた画家であっ たことは意外に知られていない。彼は1962年(昭和 37年)2月21日、62歳でみずから命を絶ったが、そ の死を悼んで「芸術新潮」(1962年4月)、「三彩」

(1973年2月)など、一流の美術誌に追悼の文章が寄 せられたり特集号が組まれたりしているし、またこ の同じ年に刊行された「小泉清画集』(1973年2月、

救龍堂)には、里見勝蔵らの画家以外に、武者小路 実篤、石川淳など、その当時の著名な作家が彼を回 想する文章を載せている。この一事をもってしても、

彼が一時期を画した画家であったことを窺うことが できるだろう。情は1919年(大正8)に東京美術学 校(現在の東京芸術大学)に入学、同期生に岡鹿之 助、1年上級に佐伯祐三、5年上に里見勝蔵がいた。

彼はこの里見に兄事し、絵の手解きを受けている。

里見は数少ないヴラマンク(1876〜1958)−熊本県 立美術館にはヴラマンクのすぐれた風景画が所蔵さ れている−の弟子で、彼には師匠直流のフオーヴイス ム(野獣派)的な原色を荒々しく駆使した奔放な作 品が多い。清は病を得て1921年(大正10年)に美術 学校を退学しているが、そうしたこともあって画家

としてのデビューは遅く、読売新聞社主催の第1回

「新興日本美術展」が1946年(昭和21)に開かれた が、これに里見に勧められて作品を出品したのが最 初であった。出品作品は「向日葵」他3点であったが、

読売賞を受賞、デビューを飾った。その実力を梅原 龍三郎に認められて、1954年二(昭和29年)に国画創 作協会の会員に推挙されている。その−年前には第

2回「日本国際美術展」(毎日新聞主催)に出品して おり、その後は大阪や東京で個展を開いて、精力的 に活動を続けた。彼が里見勝蔵に師事したことは前 に述べた。初期の作品には師匠譲りの原色を自在に 操った奔放な絵も見られるが、じきに清独自のスタ イルを獲得するに至る。それは厚塗りによって画面 し

小泉清「岩と海」(恒文社刊行『小泉j青画集」より)

に重厚感を与え、裸婦の肌もまるで岩肌のようなマ チエール(質感)に仕上げていることである。そし て物と物との境目を大切にして、作品によってはそ の境界線をあざやかなヴァーミリオン(朱)で縁取 りを施しているが、それが極めて効果的で絵の魅力 を引き立たせている。対象は自由にデフォルメされ、

一見荒々しいタッチで画面に筆を叩き付けるように 表現されていながら、靜譲な美しさが伝わって来る。

情には八雲の血が流れていながら絵は非ヨーロッパ 的で、むしろ日本の土の香りが強く感じられる、そ んな作風なのである。彼の画家としてのデビューは 46歳でけっして早くはないし、また働き盛りの62歳 で自ら命を絶っているが寡作ではない。1989年(平 成元年)に恒文社から刊行された「小泉清画集」に は237点が収集されている。清の画集はこの18年に 凝縮されたのだった。

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<付記>年譜の部分に関しては、『小泉清画集』(恒 文社1989年刊)を参考にした。

(きんばらただし文学部教授)

参照

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