匚(はこがまえ):匸(かくしがまえ)
著者名(日) 天沼 寧
雑誌名 大妻国文
巻 23
ページ 1‑23
発行年 1992‑03
URL http://id.nii.ac.jp/1114/00001494/
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
匡 (疑ぇ):=(鋒党)
̀ 天 沼 寧
漢和辞典 におけ る取 り扱 い
現行 の漢和辞典 の部首索引に よれば,匡 (はこが まえ)と E(か くしが まえ) とは,似てはい るが 明 らかに異な った形 を してお り,まず 見間違 うような こ と はない。実例をい くつか 掲げてみれば 次の とお りであ る。 (戦 前の辞典 も含 め てある。)
(1) 12D (め に) 0) 161 171 [ こE Ett EE EE EE E匡
匡
説P」l
l:辞典名は次の とお りである。( )内は参照 したその辞典 の発行年月 日。
│)漢和大字典 )新選漢和辞典 〔第五版〕CO 例解学習漢字辞典 〔第四版〕
(明 治41.4.15) (昭 和62. 1.20) (平 成4.1.20)
②掌害鼻調腎 lD °漢言揮義3.20⑫ 峨社小学漢屁鼻蕊10″の
④ 新摯
B2D(。
岩鱚 黄
‐D
⑭ 三省堂小学漢紹揮賃
・
島 瑠 1
(昭 和44. 1.20) (昭 和62.11.27) (平 成2. 3.25)
⑤ 新釈漢和辞典
¶ッ脚 ① 現代漢
顧,「辞ぅ)
0 匡 彗 がえ O
E 饗 耀 肝
⑫ E
︒こ 用に 資け え D
E せ f え α こ かく
﹂ダ ー 22
匡
① 匡だ ム昴
③ E C
︶
③ E E
匡︵はこがまえ︶¨E︵かくしがまえ︶
2:(1)〜(3)は,戦前に発行のもの。(4)〜0は戦後,すなわち,当用漢字字体表 (昭 和24年,内閣告示)の制定以後に発行のものである。
3:(1)〜COlは,成人向け辞典。0〜〔りは児童向け辞典。
4:(1)は辞典の「索引摘要」に掲げてあるものを,縮小複写 したもの,121〜l14は,
いずれも見返 しに掲げてある部首索引を実寸複写 したもの。ページ数等は省略 し た。
5:(1)で は,Eb匡の順に縦に並べてある。0)〜(7),COl,0は,それぞれ,右側か ら左側への順,すなわち,匡が先,Eが後の順序である。なお,こ こには掲げな かったが,(1)以外にもEを先,匡を後の順に掲げてある辞典 もある。
6:(8),(9)は,本文では併合 している。COlも併合 しているが,Eを部首の一つとし て匡の後に立て,「か くしがまえ」とし,「匡に合併」 としてお り,そこに所属さ せてある漢字はない。〔うは索引でも本文でも併合 している。〔りでは,匡だけでE
の形は部首索引にも本文にも掲げていない。
部首 の配列順 か らみ る と,我が 国の漢和辞(字)典 では,そのほ とんどが匡, Eの順 であ るが,逆のE,匡の もの も少数ではあ るが見受け られ る。
匡 とEとを併合 してい るものでは,Eを匡 に吸収 させてい る。 どちらか一つ に して い る ものでは匡を立ててお り,Eには触れていない。匡をEに吸収 させ た り,Eだけ と して い る ものは見当た らない よ うであ る。
『 康熙字典』 では,匡,Eの順 であ り,本文 におけ るそ のそれぞれの形 は,
次 ペ ージの 〔図‑1〕 ,〔 図‑2〕 の とお りであ る。 〔図‑1〕 は匡であ り,この部 に所属す る「 匠」を 含 む部分 を,〔 図‑2〕 はEであ り,「匹」を含 む部分を,
複写 (実 寸)によって掲げた。原本は,同文書局原版 の『康熙字典』で,香港 の中華書局香港分局が,1958(昭和33)年に初版 を出 し,1977(昭和52)年に 重版 した ものであ る。
これに よる と,その本文 におけ る匡の形は,明朝体 の特徴 であ るとはいえ,
そ の第2画は折れを有す る1画ではな く,縦画 と横画 との2画に分かれてい る よ うに見えな くもない。殊 に,Eの同 じ部分 の形 を比較 してみ る となおさらで あ る。ただ し,第1画と第2画との関係位置は,はっき りと異な っている。 ま た,それぞれ の部首 に所 属 させてあ る文字の部首 に相 当する部分 の形 は,それ ぞれ の部で きれいにそろってい る。
ところで,『康熙字典』 の「 総 目」に 掲げてあ る形 は,〔 図‑3〕 に 示 した よ
優⊂ 、
麟 躙 鰊
饉 魃
古 肛 字 借 ル 助 癖 キ 者 切 助 之 用 籠 多 改 正 薬 場 所 奪 スカ
瑯動 妨コ れ凱 μ鳳 任口 軒初 獅牌 爆摯 務れ
″備命︶ 医﹂
魏 ﹈蹴 駆 白舞鏑 柵 瓢 珊 Ⅷ 維 欄 一
C
うに,Eは明 らか に本文 の形 と E
は異なっている。本論 のは じめ に掲げた我が国の各種漢和辞典 の部首索引におけ る匡 とEとの 形 の違 いは,『 康熙字典』 の 総 目に掲げてあ る形 に忠実であ る よ うに思われ る。(ただ し,匡 と こ とを併合 させてあ る辞典 の も
のを除 く。)
以上 の考察 に よって,匡とE
との形 の違 いを,ある程度誇張 して示せば次ペ ージの 〔図‑4〕
の とお りであ る。
我が国 の漢和辞典 では,部首
索 引におけ る匡・Eの形 と,本
文 におけ るそれ とは,おおむね
同 じ形が掲げてあ る ようであ る が,本文 におけ る部首 と しての
「 は こが ま亥」 。「 か くし が ま え」の形 (これ は,部首索引の 形 と 同 じあ ると 認め られ る。)
と,本文 の各漢字 のそれぞれ の 該当部分 の形 とは一致 していな いものが多い。そ の 例 を 〔図―
5〕,〔図‑6〕 に示 す。な お, 発行年の古い辞典では,部首索 引を添えていない辞典 もある。
匡
︵は こが ま え︶
¨E
︵か く がし ま え︶
〔図‑1〕
〔図‑2〕
熙
目
〔図‑3〕 左から3行 日,上段に「匡部」,下段に「E部」 とある。
〔はこがまえ〕
第1画と第2画とはそれ ぞれ
`:戸
の起点で互いに接している。
〔か くしがまえ〕
第2画の起点は,第1画の起 tり明 らかに右寄 りの とこ こ第1画に接 してい る。
を描いてほぼ直 角 に 曲が つてい る。
(後に掲げる表では,この形を「B」型とする。)
〔図‑4〕
九角
̲(後に掲げる表では,この形を「A」型 とする。)
匡︵はこがまえ︶¨E︵かくしがまえ︶
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﹂ 0 当 0 に 回 ヽ 国﹁
﹂
︵洲 準 判
︶ ゝ 肺 Q バ い う現
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﹂昇 調爺 静 油0 囀
︵昇 剛﹁
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○ 十 都 十
〔図‑6〕
掌中漢和新辞典
昭和 元年 初版
説 明 :「 匡」 の部 の13画に「 医」(表外字)が掲げてあるが,そのか まえの形は,親 字では「[」,柱に掲げてある見出 し文字 も 同 じく「E」 であるが,下付き熟語 では「匡」の形である。
説 明 :「E」 の部の「匹・ 塵 0産」の親字のかまえの形は,いずれ も「[」 である が,柱の見出 し文字,及び,熟語の文字では,そのすべてが「匡」である。表外 字 の「腫」 も同 じである。
なお,「医」は,現行の字体 は,この とお りであ り,医院,医者,外科医,名医 な どの 熟語を 形づ くる。 この字 の 旧字体は「讐」であ り,伝統的な 所属部首は
「酉」であ る。 この辞典の「E」 の部に掲げてある「医」 は,現行の「医」 と は,読み も意味 も異なる別字 である。
昭和 24年 に当用漢字字体表が 内閣告示をもって 制定 され,匡に所属す る字 も,Eに所属す る字 も,そのか まえの形は同 じ匡の形 となった。 これに応 じて 我が国の漢和辞典でも,従来の伝統にこだわ らず,どち らの部首に属す る字で あって も,それが 当用漢字表に 掲げ られている字の場合は,同じ匡の 形 とな り,これは 現行の 常用漢字表について も 同 じであ る。 しか し,表外字の 場合 は,伝統的にEの部に属す る字の場合は,やは りEの形を採 っている辞典が多 い。
以下,明治か ら平成 にかけて我が国で編集刊行 された漢和字典28種 (う ち,
成人向け22種,児童 向け6種)につ いて,伝統的 には匡 の部 に所 属す る「 匠」
と,Eの部 に所 属す る「 医・ 区・ 匿・ 匹」 (五十音順)とのか まえの形が具体的 な文字 として,どの ような形 で表 されてい るかを一覧表 の形 に して掲げ る。 な お,この表には,参考 として中国の字典・ 辞典2種を加 え,計30種 とした。 中 国の ものは,『康熙字典』 と,『 辞海 一一 語詞分冊 ―一 』 とであ る。
表 において,辞典 に適宜番号を付 した。1番を『 康 熙字典』 と し,30番 を
『辞海 ―一 語詞分冊 一一 』 とした。2番か ら29番 までは我が国の辞 (字)典で ある。2番か ら8番までが戦前の もので, 9番か ら29番 までが戦後発行 の もの であ る。
辞典名 の下に̲線 を付 した ものは児童向けの辞典 であ る。
辞典名 の右側 に小 さい字で掲げた 日付 は,その辞典 の奥付 に よる発行年 月 日 であ る。上段の 日付は,原則 としてその辞典 のその版 (改 訂版・ 新版 を含 む。) の初版第1刷の発行年 月 日であ り,下段 の 日付 は筆者が参照 した版 の発行年 月
日であ る。1段だけの ものは初版 第1刷の ものに よった。
戦後 の辞典 では,匡の部に,伝統 的 には所 属 していない「 巨,臣 ,欧 ,殴」 などの字を所属 させた り,参照漢字*と して掲げてい るものがかな り目につ く。
なかで も「 巨」は,最 も多 くの辞典で この よ うな取 り扱 いを してお り,「 臣」が これ に次いでお り,「欧・ 殴」は少 ない。そ こで,この表 では,
中に採 り入れて掲 げておいた。
*「 参照漢字」とは次のようなものである。
匡 は が ま え
E
か くし が ま え
「 巨0臣」 は表 7
(1)漢和辞典において,ある部首 の項に掲げてある字であるが,その辞典におい ては,その部首に所属させていない字であ り,多くは,どの部首に所属するの か判断 しがたい字・ 迷いやすい漢字である。
(2)親字 よ りもやや小ぶ りの字で掲げてあ り,字を包む括孤の形 も異なっている こと力`多い。
(3)字義 0音 訓・ 解字等を添えていない。熟語等 も掲げていない。
14)その辞典における その字の所属部首 (多くは,伝統的な 所属部首)・ 所載ペ ージ等を示 してある。
とい うもので,検索の便を図 って掲げてあるものである。
1番か ら19番 まで の辞 典 は,匡とEとを別 部 首 と して立 て て い る。20番か ら 30番 まで の辞 典 で は匡 とEとを併 合 して い るが,併合 の しか た に次 の4種が あ る。
第 1は,部首索引でも本文でもEと匡とをこの順序で縦に「・ 」を挟みなど して一つの部首 として掲げ,所属漢字 もそのように取 り扱っているもの。表の 見出しでは「 ⑦EO匡」 とした。
第 2は,順序を縦に匡OEとしているもの。表の見出しでは「④匡・[」 と した。
第3は,掲出 の しか たを縦 に「 匡 ⊂
=)」 としてあ るもの。表 の見出 しは「 ② 匡 (E)」 と した。
第4は,部首索引で も本文で も匡だけを掲げてあるが,児童向け辞典の場合 は,匡の呼び名を「 はこがまえ/かくしがまえ」 としているもの と,「はこが まえ」だけの もの とがある。表の見出 しでは「 ○匡」 とした。
匡,Eと もに第2画の方向を変える部分の形に注 目し,直角に折れる匡の形 をA型,直角に曲がるEの形をB型としたも(これについて詳 しくは,4ページ の図解・ 説明を 参照のこと。)なお,『康熙辞典』のEの部の 字のかまえの形 は,前述の とお り明 らかに「A」 ではないが「B」 とも言えないので,表中で は便宜上「a」 としておいた。(詳しくは3ページを参照のこと。)
表の見方は,例えば「 匠 A」 と あれば, 1番か ら19番までの 辞典では,
「 匠」は「 匡」に所属 させてあ り,そのかまえの形は「 匡」であることを示 し てお り,「Eの部」で「 匹 B」 とあれば,「匹」は「E」 に所属させてあ り,
そのか まえの形 は「 E」 であ ることを示 している。9番か ら12番 までの辞典で は「 匹 A」 と あ るが,これは,「 匹」 の字をEの部 に所 属 させてい るが,本
文における具体的 な漢字 のか まえの形 は「 匡」であ ることを示 している。
20番か ら30番 までの辞典では,EとEとを併合 してお り,表外字 の取 り扱 い は辞典 に よって違 いがあ るが,常用 漢字表 に掲 げてあ る字 はすべて匡,すなわ ちA型であ る。
次に「 巨 A」 とあ るのは,その辞典 では「 巨」を「 匡」に所属 させている ことを,「 巨→工」 などとあ るものは,匡の部 に 参照漢字 として「 巨」が掲げ てあるが,「工」 の部 を見 よとしてあ ることを,「 巨→ 」 と してあ るのは,具
体的に所属部首 を示 さずその辞典 の所 収ペ ージ等を記 してあ ることを示す。
表中の「 *1〜*7」 につ いては,表を掲げたあ とに記す。
なお,伝統的 に匡に所属す る字,Eに所 属す る字 は, これ以外 に もあ るが,
表にまとめきれないので,常用漢字表に掲げられている漢字に限ることとし,
他は省略 してあ る。 .
匡
︵は こが ま
︶え E¨
︵か く し が ま え︶
(中華書局修訂本)
1958 1977
漢和大字典 M.36. 2.22 M.41.4.15
新 訳 漢 和 大 辞 典 M.45. 3.20
T.6.5.30
大字典
T.6.―.―
S.43. 5.30
Aの形 は「 匡」,a
の形 は「 E」 。そ れ ぞれ の正確 な形 は,
3ベージを参照 ぎ 索引では[・匡の順。
本文 では匡・[の順 。
*3
「 検 字 」 の 項 で,
「 匡」の部 において
「 巨→工」,「E」 の 部において「 亡→一, 甚→甘」と してい る。
「 画引索引」に おい て相 互 に重 出 して あ る。
はこがまえ〔匡〕 か くしがまえ〔E〕
漢和新辞海 T.T.
掌中漢和新辞典 S. 1.12.30 S. 2. 1 15
詳解漢和大辞典 S.11. 1.18 S.13.2.11
永字式索引漢和辞典
S.15。 9.15 巨→工
匠A
匠A
匠A
匠A
*1
*2
*2 EA
匡B
EB
匠A
匿A
匿B
匿B
匿A
匹B
匹B
匹B
匹B
漢 字 の配列は部首別 で はな く,字音 によ る五十音順である。
左 に 掲 げ た形 は,
「 全 画 索 引」に掲 げ て あ る字形による。
なお, この辞典には
「 部首索 引」が添 え て ない。
所属部首 が分か りに くい字 は,必要 な部 首 の項 に重出 してあ るが,匡 。こについ ては「 巨」の 1字 だ け で あ る。(本論 の 6ペ ージの図版参照。)
これ は,匡・[の全 部 が見 開 きで収 まっ て い るか らではない で あろ うか。 *4
書名か らも分かるよ うに, この辞書では,
各字の初筆(第1画)
の点画の形 。方向を,
永字八法の筆法をよ りどころとして,全
漢字を4類に分け, それぞれの類を画数 順に配列 してある。
部首については全 く 触れていない。 した が って当然のことな が ら部首索引も添え られていない。左に
現代漢字辞典 S.31.4.1 S.37. 1.10
当用 漢 字 辞 典 (改訂版)
S.32. 3. 1
角 川 漢 和 中 辞 典 S 34. 4. 1 S.36. 1.20
新解漢字辞典 S.38. 1.20 S.42. 1. 1
新字源
S.43. 1. 5 S.44. 1.20
学研 漢 和 大 辞 典 S.53. 6. 1
新 釈 漢 和 辞 典 (新修版)
S.54. 2. 1
新 選 漢 和 辞 典 (第五版)
S.62. 1. 20
漢字源
S.63.11.10
H.3.2.10
巨 卜
﹂
巨A
E‐I
匹A
掲げた形は,本文の 親字の形 による。
表 内字は,教科書体 を使用。
表 内字は,教科書体 を使用。
「匡」の部において,
区,匹→「 E」 と し て い る。学 習漢字の 親 字 は教科書体 を使 用 。
「 匡」の部において, 医→酉 と して お り,
「E」 の部において,
「 医 」 を「 警 」 の 俗 字 と してい る。
匡︵はこがまえ︶¨E︵かくしがまえ︶ 匠A
匠A
匠A
匠A
匠A
匠A
匠A
匠A
A A 区 区
臥 回
医A
医A
医A
医A
ト
医B 区A
区A
区A
区A
区A
区A
匿A
匿A
匿A
匿A
匿A
匿A
匿A
匿A
匹A
匹A
匹A
匹A
匹A
匹A
匹A
匠A 臥 区A 匿A 匹A