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通常の学級における「困り感」のある児童への支援

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山形大学大学院教育実践研究科年報第 12 号(2021)

通常の学級における「困り感」のある児童への支援

- 児童の見取りと関わりから -

学習開発分野(20821008)大 江 奈 緒

通常の学級における児童の抱える「困り感」は多岐にわたる。本研究では,その困り感を 発達障害の有無に関わらず,「具体的なイメージがもてない児童」とし,児童の実態を踏ま えながら適切な支援や授業を検討することを目的とした。そのために,まず,困り感のタ イプ分けを行い,整理して明らかになった児童の特性をもとに,児童への効果的な支援の 可能性を検討し,実践に向けての課題を明らかにした。

[キーワード] 困り感,教師の支援,児童の実態,全習法,分習法

1 はじめに (1)問題の所在

文部科学省(2012)の調査から教育上の配慮を要 する児童生徒は,通常の学級に 6.5%の割合で在 席していることがわかった。このことから,全て の教員が特別支援に関する一定の知識や技能を有 することが求められた。また,文部科学省(2017) のガイドラインでは,障害の有無にかかわらず,

全ての児童が互いの違いや個性を認め合う学校・

学級作り,全ての児童等の成長を促進する環境整 備を進められることが,共生する社会の実現に繋 がると述べている。また,文部科学省(2012)では,

教育的ニーズのある児童に対して,自立と社会参 加を見据え,教育的ニーズに最も的確に応える指 導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整備するこ とが重要と述べている。現在,通常の学級には,

学習面や行動面に大きな「困り感」を抱えている 児童生徒が数多く存在する。以上の記述から,発 達障害等の有無にかかわらず,「困り感」を抱く児 童に対して,児童のニーズに適した支援を行うこ とが大切になる。そのため教師は,発達障害を含 む児童が各学級に在籍している可能性があること を前提に,全ての教科等において,一人一人の教 育的ニーズに応じた指導や支援をすることが求め られるのではないかと考える。

(2)先行研究の検討

①「困り感」について

「困り感」という表現は,本来,特別支援教育 の領域で多く使用されており,文部科学省(2007) の報告書で,児童生徒の「困り感」に着目した実 態把握と支援を目指す,という記述があり,「困り

感」という言葉を用いているが,明確な定義まで はしていない。永井(2017)は,「困り感」が扱われ ている研究の整理を行ったが,「困り感」そのもの を対象にした論文は少ないと論じている。また,

「困り感」に関する研究は多数されており,それ らにおいて「児童が課題に取り組むうえで困って しまう状況」という意味で使用される一方,福永 ら(2015)は,「教師が指導するうえで困ってしまう 状況」として使用しており,定義が曖昧なのが現 状である。萩原(2018)は,児童の抱える問題には,

いじめ,貧困,虐待・ネグレクト,発達障害,多 国籍,LGBT など多岐にわたると述べ,様々な困難 を抱える子どもが一人一人異なる多様なニーズを もっており,それぞれのケースに即した支援が必 要であると論じた。筆者は,教職専門実習におい て,発達障害の有無にかかわらず,どのような児 童も様々な場面において自分のカだけでは解決す ることのできない課題に出会う児童を見た。その ため,発達障害児という枠組みの中で児童を見取 るのではなく,学校生活における児童の「困り感」

に着目した支援が必要であることを児童の姿から 学んだ。「困り感」を抱く児童の教育的ニーズに教 師が気付き,それらに応じた支援を行うことが,

今,求められるのではないかと考える。

②全習法・分習法について

全習法,分習法とは,米田ら(2012)によると,

運動学習条件に立脚した分類として,全習法と分 習法があると述べた。全習法は,学習課題全体が 把握できることであり,課題の一部のみを学習す る分習法よりも興味を失うことなく学習ができる。

また,分習法と比べて学習効果が高く,運動学習

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の達成度が早い。一方,分習法は学習した運動の 転移が可能なことから難易度の高い運動に有用と されるが,全習法よりも獲得までに時間を要する。

また,日本大百科全書によると,「全習法・分習法 とは,学習方法の形式をいうもので,全習法とは,

系列学習において学習課題を一まとめにして反 復・学習する方法である。これに対して,分習法 とは,学習課題を適当な部分に分割して部分単位 で反復・学習する方法のことである。」と述べられ ている。これらをもとに,現行学習指導要領に準 拠した小学校算数(東京書籍)の学習を見ると,単 元の始まりに単元全体の内容を把握できるページ があり,日常生活の経験と照らし合わせながら,

本時に学習する内容を把握することはまさに全習 法といえる。一方で,その後の学習を,段階を踏 んで行うことは,分習法の学びとなる。そのため,

支援の在り方として,これらの方法を組み合わせ た授業を児童の実態を踏まえ,考えていくことが

「困り感」のある児童に必要ではないかと考える。

③「困り感」のある児童に対する支援

萩原(2018)は,児童は様々な困難を抱える子ど もが一人一人異なる多様なニーズをもっており,

それぞれのケースに即した支援が必要であること を踏まえ,集団ではなく個別の対象へアプローチ する必要性を述べた。さらに,一人の児童に着目 することで,個人としての人間理解を深め,個人 を取り巻く様々な要因や背景,他者との相互作用 を知り,それから見立てをもとにしたより具体的 な支援と実践を行う必要性を述べている。

2 研究の目的と方法

先行研究をもとに,本研究では,児童の実態を 踏まえ,「困り感」のある児童のニーズに合った適 切な支援について検討することを目的とする。

そのために,以下の取り組みを行う。はじめに,

「困り感」のある児童をタイプ別に分類し,本研 究における「困り感」のある対象児童を示す。そ して,教職専門実習Ⅰ,Ⅱにおける事例検討を行 い,特定の児童における「困り感」を確認するこ とにより,支援ニーズを把握し,直接的且つ効果 的な支援につなげる。

3 授業実践の検討

(1)本実習における「困り感」のある児童 児童の「困り感」に焦点を当てた検討を行い,

福永ら(2015)をもとに,表 1 の「困り感」のタイ プ分類表を作成した。教職専門実習において,「困 り感」があると考えられる児童 2 名(以下,A 児,

B 児とする)がいた。この A 児,B 児をタイプ分類 表と照らし合わると,表 1 のようになり,共通点 がいくつか見つかった。本研究では,学習面にお ける「話の内容が理解できない」「曖昧な情報が 理解できない」「表現が苦手」という共通事項か ら,「困り感」のある児童のことを「具体的なイメ ージがもてない児童」と定義する。

(2)教職専門実習Ⅰでの実践 ①時期,対象,単元 時期:令和 2(2020)年 9 月

対象:Y 市内の X 小学校 3 年生 30 名 単元:詩を読もう「紙ひこうき」

②本時の概要

授業の導入で,詩の情景を絵で表す活動を行い,

場面の様子を児童がより具体的に捉えられるよう にした。具体的な手順としては,詩が書かれたプ リントを配布し,そのプリントの下部に「ぼく」

(登場人物)になったつもりで,詩の情景を描き,

場面の様子を捉えやすくする。その後,児童が描 いた絵を,実物投影機を用いて全体で共有するこ とで,登場人物である「ぼく」の様子や思い等の イメージをより具体的にする。活動の留意点とし て,詩は作者の思いが短い語句で精選されたもの であり,児童が言葉と主体的に向き合うことによ って,想像力を働かせ,作者の思いに触れること ができるようにする。そして,自分なりに読み取 ったことを他者と比べることで読みを深化させら れるように,一つ一つの言葉から想像し,じっく り考え,児童主体の授業になるようにする。また,

絵を描いてイメージを膨らませることで,低位の 児童にも視覚的な情報が入るように配慮して行う。

③結果

詩の様子を絵で描く活動では,詩を何度も読み 返し,実物投影機を用いて数名の児童の絵を全体 で共有したことで,表現の違いに気づき,絵を描 き直す様子が見られた。A 児は,絵を描くことは 分かっているものの,実際に描くとなると何を描 けばよいのか分からずに,授業に関係ない言葉や 絵を描いている様子が見られた。机間巡視で近づ くと慌てて裏返し,教師(筆者)が離れるとプリン トを出し,何かを描き始めた。しかし,実物投影 機を用いて友達が発表をすると映像に注目し,説

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山形大学大学院教育実践研究科年報第 12 号(2021)

表 1 「困り感」のタイプ分類表

明を聞いていた。そして,何を描けばよいのかを 視覚的に理解したことで,自分のプリントに絵を 描く様子が見られた。

(3)教職専門実習Ⅱでの実践 ①時期,対象,単元 時期:令和 2(2020)年 11 月

対象:Y 市内の z 小学校 2 年生 32 名 題材名:「はさみのあーと」

②本時の概要

白画用紙を自由に切ったり並べたりしながらで きる形を見つけ,黒い紙に貼り付け作品を完成さ せる。本時の流れは「切る→並べる→貼る→付け 足す」の四段階で進め,児童の中で,「これを作り たい」と初めから構想をもって作るのではなく,

自由に切って生まれた形から表現を膨らませても らうため,完成図を提示せずに活動に取り組ませ る。それぞれの工程の始めには教師の実演を見せ ると同時に,オノマトペ等,言葉による手がかり を持たせながら提示する。自分の作品を遠くから 見たり,友達の作品を参考にしたりしながら白と 黒で自分の世界を創り上げるようにする。活動の

留意点としては,異なる大きさの白画用紙を使用 することで,ハサミの動きが変化し,色々な形を 表現できるようにする。白画用紙は児童が好きな 大きさを選択できるように,教室の前方に置く。

③結果

本時の展開部は,四段階で構成したが,全体の 流れを児童に提示せずに,「今何をするのか」とい う指示のみ提示した。また,活動において,「自由 に〇〇していいよ」という指示を出した。B 児は,

切ること自体は分かるが,どのように切ればよい か分からず周りを見渡し,中々活動に入れない様 子が見られた。途中,タブレットを用いて,活動 の様子を映像で提示すると,様々な切り方や並べ 方をしている友達の様子から,具体的なイメージ をもち,活動に参加することができた。

4 考察

筆者による授業実践の結果を踏まえ「困り感」

のある児童への支援について考察する。教職専門 実習の結果から,A 児と B 児の共通点が見られ,

それは,視覚的なイメージや具体物によって言葉

聞き取りが苦手

聞き取りが苦手

話の内容が理解できない 〇 〇 話の内容が理解できない 〇 〇

指示が入らない 指示が入らない

会話が成立しない 会話が成立しない

妙に大人びた言葉遣い 妙に大人びた言葉遣い

自分の思いが話せない 自分の思いが話せない

文字や文章が書けない 文字や文章が書けない

言葉で伝えられない 〇 〇 言葉で伝えられない

言葉が出てこない 言葉が出てこない

落ち着きがない

落ち着きがない

衝動性がある 衝動性がある

曖昧な情報が理解できない 〇 〇 曖昧な情報が理解できない 〇 〇

すぐに行動できない すぐに行動できない

表現が苦手 〇 〇 表現が苦手

離席が多い 離席が多い

運動が苦手 運動が苦手

強いこだわりがある 強いこだわりがある

立ち歩きが多い 立ち歩きが多い

特定のことに熱中する 特定のことに熱中する 〇 〇

急な変更に対応できない 急な変更に対応できない

すぐに手を出す すぐに手を出す

集団に入れない

集団に入れない

対人関係がとりにくい 対人関係がとりにくい

ルールが守れない ルールが守れない

忘れ物が多い 忘れ物が多い

発表ができない 発表ができない

整理整頓が苦手 整理整頓が苦手

視線が合わない 視線が合わない

切り替えが難しい

切り替えが難しい

気持ちのコントロールができない 気持ちのコントロールができない

すぐにキレる すぐにキレる

見通しが立たないと不安 見通しが立たないと不安

思い通りにいかないとパニック 思い通りにいかないとパニック

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の意味を理解していることである。自由に取り組 むことに対して A 児,B 児のように基本的且つ丁 寧な指導や支援を必要とする児童も存在する。さ らに,授業の実践では,分習法から全習法の順番 で授業を行う場面が多く,「困り感」のある児童に かかわらず,授業への見通しがもてないまま活動 を行っていた。全体像を一連の流れを通して理解 したうえで,一人一人の苦手な所やつまずきに戻 り,それらに対するアプローチを分習法であるス モールステップの考えから取り組ませることで,

児童の特性に応じた支援が行えると考えられる。

また,スモールステップの考えから,スポーツ や運動場面において「アナロゴン」が使われる。

動きの発生や構造から似た「類似の動き例」のこ とであり,渡辺ら(2009)によると,アナロゴンは 主運動の下位教材として用いられることが多く,

成功体験が得やすい。さらに,基礎になる力や感 覚を身につけるための学習が重要な意味を持つこ とから,意図的に経験させることが大切とされて いる。これらを踏まえると,他教科における下位 教材とは,基礎的な知識を養うことのできる,既 習事項と考えられる。例えば,かけ算を学ぶ際,

1 つのまとまりがいくつ分あるのかという,たし 算の概念をもとに学習が進められていく。このよ うな学習は体育に限らず,教科におけるアナロゴ ン的視点を持った指導の必要性が考えられる。さ らに,これらの下位教材や既習事項は,一人一人 の特性や個性,発達の段階に応じて変化するもの であるため,児童が自分に合ったやり方を見つけ られるような手立てから,児童の実態に合わせた 支援を行うことへの検討の余地がある。

5 おわりに

本研究では,「困り感」のタイプ分けから教職専 門実習の対象児童及び,授業の事例検討より,「困 り感」のある児童を「具体的なイメージがもてな い児童」とし,支援の在り方を示した。しかし,

本研究で検討した支援を必要とする児童への指導 の在り方が学習にどのような影響を及ぼすのか検 証できていないため,次年度の実習で実践を行っ ていく必要がある。そのため,先行研究の検討と 授業実践の 2 つの観点から,具体的なイメージが もてない児童を重視した支援の在り方として全習 法と分習法の効果について明らかにしていきたい。

引用文献

萩原万葉(2018)「小学校における困り感を持った 児童への心理教育的援助サービスの検討」『静 岡大学大学院教育実践高度化専攻成果報告書抄 録集』,第 8 巻,109-114.

福永徹,古井克憲(2015)「小学校通常の学級担任 における発達障害及びその傾向のある児童の 教育に対する「困り感」と校内支援体制に対す る評価」『和歌山大学教育学部教育実践総合セ ンター紀要』,第 25 巻,27-31.

文部科学省(2007)「都道府県・市区町村・学校の 取組,北区特別支援教育巡回指導員による支援」 文部科学省(2012)「共生社会の形成に向けたイン

クルーシブ教育システム構築のための特別支援 教育の推進(報告)

文部科学省(2012)「通常の学級に在籍する発達障 害の可能性のある特別な教育的支援を必要とす る児童生徒に関する調査」

文部科学省(2017)「発達障害を含む障害のある幼 児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドラ イン」

日本大百科全書,https://kotobank.jp/word/

%E5%85%A8%E7%BF%92%E6%B3%95%E3%83%BB%E5%88

%86%E7%BF%92%E6%B3%95-1555936( 最 終 閲 覧 日 2021 年 1 月 26 日)

渡辺聡,黒後洋,大森亮平(2009)「できる喜びを 味わえる授業づくりをめざして-器械運動につ ながる基礎体力・基礎感覚の育成-」『宇都宮 大学教育学部教育実践総合センター紀要』,第 32 号,255-260.

米田浩久・鈴木敏明(2014)「全集法と異なる二種 の分集法での運動学習効果に検討-単位時間軌 跡長による評価-」『理学療法科学』,理学療法 科学学会,第 5 号,809-813.

Supports for Children with Difficulties in Regular Classes : Through the Perception and Relationship with Children

Nao OE

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参照

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