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けい酸ソーダ系自硬性鋳型の鋳型壁移動 里 吉 昭 宣*

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(1)

NDC 566.1

けい酸ソーダ系自硬性鋳型の鋳型壁移動

里 吉 昭 宣*

(昭和62年8月21日受付)

On the Mold Wall Movement in the Sodium Silicate Self−curing Mold

Akinori SATOYOSHI*

(Recieved August 21, 1987)

      概     要

 この研究の目的は,鋳物砂に発生する鋳型壁移動の発生機構とその防止策を解明することである。そこで,けい酸ソー ダ系自硬性鋳型に関して,これらの鋳型の鋳型壁移動を発生させると考えられる要因について,その影響を調査する ため高温圧縮試験及び鋳込試験を行った。すなわち,けい酸ソーダの添加量及びモル比,硬化剤の種類,添加剤の種類,

塗型,流動化等の影響と鋳型内部の移動状況について調査した。得られた結果は次のとおりである。

(1)鋳型壁移動量は,けい酸ソーダ量が増すと増大する。

(2)フェロシリコンのような硬化反応時に発熱する硬化剤を使用した鋳型の鋳型壁移動量は小さい。

(3)ピッチ粉のような揮発性炭素質の添加物を加えると,鋳型壁移動量は減少する。

(4)揮発性黒鉛系塗壁をすると,鋳型壁移動量は減少する。

(5>鋳型を流動化すると,鋳型説移動量は増大する。

(6)溶湯/鋳型界面より鋳型内の外方に離れるにつれて,移動量は小さくなる。

(7)以上の結果を検討すると,けい酸ソーダ系自硬性鋳型の鋳型壁移動は,けい酸ソーダゲルの軟化が主因となって   発生することが判明した。

      Synopsis

 The objection of this investigation is to elucidate the mechanism of the movement on the sodium silicate self−

hardening mold. Hot compressive tests and pouring tests were performed to study the influences of the amount and mol ratio of sodium silibate, the kind of additives and curing agents, the use of coat, fluidization by addition of a vessicatory and moisture content on the mold wall movement,

 As the results, the move皿ent of the sodium silicate self−hardening mold increased with increasing sodium sili−

cate content or by the fluidization of mold・ing sand. But the movement of this mold decreased when the exothermic curing agents, the volatile matter as additives or coat were used.

 From these results and the data that the movement toward the outer part in the mold was smaller than that of mold surface, it is supposed that the movement of the sodium silicate self−hardening mold mainly occurs by de−

formation resulting in softening of sodium silicate gel.

1.緒

 筆者は,鋳物砂に発生する鋳型壁移動現象に関して,そ の発生機構と防止策を解明するため,鋳型壁移動に影響を 及ぼすと考えられる種々の要因について,鋳型壁移動発生

* 機械工学科

の過程や傾向を調査している。

 現在までに得られた結果をまとめると次のようになる。

合成砂生型については,溶湯に関して,鋳込温度が高く,

静溶湯圧が大きいと鋳型壁移動は大きくなる。また鋳型に 関して,鋳型の強度・硬度・充てん密度(見かけ密度)・

耐火度等が低い場合や,鋳型が高水分であると鋳型壁移動 は大きいが,鋳型にピッチ粉や石炭粉等の揮発性炭素質を

(2)

津山高専紀要第25号(1987)

添加したり,鋳型を乾燥型にするとか塗型をすることによ り鋳型壁移動は減少する1)2)。とくに;鋳型内水分による 水分凝縮層の形成が,鋳型強度のいっそうの強度低下をも たらし,このことが鋳型壁移動の発生に大きな影響を及ぼ す,言い換えれば,発生主因となっていることが判明して いる2>『6)。セメント鋳型については,鋳型壁移動は,セ メント水和物の高温下における分解による強度低下が原因 となって発生するが,合成砂生型の鋳型壁移動と比較する と,非常に小さいことが判明している7)。

 しかし,これらの結果のみで種々の鋳型に発生する鋳型 壁移動の発生機構や防止策を論ずるには資料不足であり,

またけい酸ソーダ系自硬性鋳型の鋳型壁移動については詳 細な研究がほとんどない8)ことに着目した。そこで,本研 究は,けい酸ソーダ系自硬性鋳型の鋳型壁移動に関して,

けい酸ソーダの添加量やモル比,添加剤や硬化剤の種類,

塗型,流動化の影響や鋳型内部の移動状況について,高温 圧縮試験と鋳込試験を行って一応の結果を得た。

2.試 験 方 法  2.1試 料 砂

 試料砂は,骨材として島根県産6号けい砂,けい酸ソー ダとしてJIS 1号一3号,硬化剤としてけい酸塩,ダイ カルシュウムシリケート(以後ダイカルと呼ぶ),フェロ

シリコン(以後Fe−Siと呼ぶ)及び炭酸ガスを,添加剤 としてピッチ粉,α(アルファー)でん粉及び木粉をそれ ぞれ使用した。添加剤については,けい酸ソーダ6%,硬 化剤(けい酸塩)3%配合(No.2)を標準とし,この標 準配合についてのみ調査した。また,硬化剤がダイカルの 場合のみについて,非イオン系の発ぼう剤と水を加えて流 動化させた場合の影響を見た。この場合,発ぼう剤及び水 の添加量は,一般に使用されている添加量を考慮して決定 した。Table 1, Table 2及びTable 3にそれぞれ使用けい 砂の粒度分布,化学成分及びけい酸ソーダの物理的性質を 示す。

 試料砂の調製は,つき固め式(配合No.1〜No.11)に ついては,簡易速練機を使用し,けい砂に硬化剤あるいは 硬化剤と添加剤を加えて2minの混砂ののち,けい酸ソー

ダを加えて3min混砂した,炭酸ガスを使用するものにつ いては,けい砂とけい酸ソーダを加えて3mih赤砂後,ガ ス圧約1.3MPaで所定時間通ガスした。流動式(配合 No.12 一 No.16)については遊星式白砂機を使用し,けい 砂に硬化剤を加えて1min混砂ののち,けい酸ソーダ,発

ぼう剤及び水を加えて1min白砂した。これら試料砂の配 合割合と,成型後24hr放置時の性質は, Table 4に示す

とおりである。

Table 1使用けい砂の粒度分布

粒度(メッシュ) 30 40 50 70 100 140 200 270 Pan

島根県響けい砂(%) こん跡 12.3 39.7 30.7 11.6 1.1 3.3 0.3 0.1

Table 2 使用けい砂の化学成分(%)

化 学 成 分 Sio2 春1・0・ Fe203 CaO MgO

島根県産けい砂 95.40 3.16 0.24 0.10 0.06

Tabie 3 使用けい酸ソーダの物理的性質

物理的性質 モ ル 比 比重(20℃) 水分量(%)

JIS1号 2.1 1.62 39.9

JIS2号 2.5 ユ.50 45.4

JIS3号 3.0 1.42 52.8

(3)

けい酸ソーダ系自硬性鋳型の鋳型壁移動  .里 吉

Table 4試料砂の配合と24hr放置後の性質

配      合 性質(24hr放置後)

けい酸ソーダ 硬 化 剤 備 考

配合

mQ.

けい砂

i%) 添加量

i%〉

モル 添加量

i%) 種 類

添加剤その他

圧縮

lPaュさ

見かけ

ァ 度

X/cm3

SSI スラ 塔vヲ%

1 2 3 468 2.5

Q.5 Q.5

333 けい酸塩

ッい酸塩 ッい酸塩

1.46 Q.15 Q.07

1.50 P.53 P.57

88.4 X7.2 X8.1

=一 けい酸

¥ーダ

4 n乙 FD 666 2.1

Q.5 R.0

333 けい酸塩

ッい酸塩 ッい酸塩

2.19 Q.15 P.08

1.54 P.53 P.53

97.1 X7.2 V0.8

二 

モル比

ρU 7 00 島根県産6号けい砂ユ00 666 2.5 Q.5 Q.5

333 けい酸塩

ッい酸塩 ッい酸塩

ピッチ粉 1%

ソでん粉 1%

リ  粉 1%

1.93 O.96 P.03

1.53

k50

P.50 70.4 W6.9 V6.8

添加剤

291011 6666 2.5

Q.5 Q.5 Q.5

 3

@3

@3

i30s)

けい酸塩

̲イカル

tェロシリコン

Y酸ガス

2.15 Q.55 U.47 P.78

1.53 P.53 P.53 P.53

97.2 X7.8 X9.1 W5.6

二=

硬化剤

嵭゙

2 90 41■ − 1 666 2.5

Q.5 Q.5

333 ダイカル

̲イカル

̲イカル

水1.5%

発ぼう剤0.3%

ュぼう剤0.4%

ュぼう剤0。5%

0.38 O.32 O.26

1.21 P.18 P.15

81.6 V9.6 V9.7

40.7 S7.3 T3.3

発ぼう

ワ 量

2 5 だU1 1 1 666 2.5

Q.5 Q.5

333 ダイカル

̲イカル

̲イカル

水1.5%

?Q.0%

?Q.5%

発ぼう剤

@0.3%

0.38 O.27 O.22

1.21 P.16 P.07

81.6 V0.2 U3.4

40.7 T7.3 U2.5

水分量

SSI(表面安定性) ロータップ法 スランプ率     JIS A 1101

 2. 2高温圧縮試験

 高温圧縮用試験片は,直径28.6mm,高さ50.8mmの形状で,

試料砂を試験片作製用筒内につき固めて,あるいは流し込 んで成型する。流動式試験片作製用言は,長さ400mmの割 型アルミニウム製で,この筒口に試料砂を流し込み,

24hr放置後,1本の筒より7個の試験片を切り出した。

高温圧縮試験の装置及び方法は既報7)のとおりである。

 2.3鋳 込 試 験

 鋳込試験の装置及び方法は既報7)のとおりであるが,今 回は鋳型内部の移動状況を知るた.め,Fig.1に示すように 試験鋳型内(1)に移動量測定用の鋼製端子軸(7)とCA熱電 対を新たに埋め込んだ。鋼製端子軸は,その先端に直径10mm で厚さ1mmのフランジが付けてあり,このフランジ部を溶 湯/鋳型界面から鋳型内へ5mm及び10mmの位置に埋め込 み,それぞれの位置における移動量が測定できるように なっている。また,端子軸には案内を取り付けて砂粒との

摩擦をできるだけ小さくした。測定点における静溶湯圧 は,29.4kPaである。鋳込溶湯は, FC20相当のねずみ

鋳鉄(c:3.340/・,si:1.69%, Mn:o.59%, P:o.G1%, S i O.0396)で,鋳込温度は1400℃とした。

3.試験結果及び考察

 3.1高温圧縮試験結果

 Fig.2は高温圧縮試験結果の一例で,硬化剤の種類を変 えた場合の変形係数と加熱温度の関係を示す。変形係数と       ロ

は,試験片の高温急熱下での荷重と変形量の関係が,負荷 初期においてはほぼ比例していることから,弾性体におけ る縦弾性係数と同様に考えて抗圧力と変形率の比をとった 値である。各温度において,この変形係数の値の大きいほ

ど変形が起こりにくいことを表わしており,とくに高温に おいて,この値の大きい砂は鋳型壁移動を起こしにくい砂 といえる。なお,Fig.2において,800℃より高い温度に

(4)

360 (3)鋳込試片

(4)鋳わく

(5)溶1易/鋳型界面 移動i則定用石英管

(4)(6)差動トランス

(7)鋳型内移動測定用

(1) 鋼製端子軸

(8)PR熱電対

(2) (9)石英保護管

(10)CA熱電対

8 8 50 9

(9)

(8)

5

(6)

oo

(2)

50

25

2Q

5

1

o住Σ

10

5

冥喋ソ氏ダ塁㌔硬化剤  3%

OlO o No■0

o

_o

@謄一一一〇

@ No.11 O一一一一一===0−〇一塵

         津山高専紀要第25号(1987)

   (4)

_1.(1)・(9 奄撃撃 i)(・) 嘉潔繍聯帯

       (6)      に小さいため省略した。Fig.

(2) 10  (10) (9)(7)      2において,変形係数は600℃

      を越えると急激に低下し,

      (1)言鵡灸鋳型  .      800℃ではその値は非常に小       (2)セメント鋳型       さいが,その中でもNo.9の       値は比較的大きい。また図示       してはいないが,その他の要       因に関して高温において変形       係数の大きいものをあげる       と, No.1, No.5, No.10,

      No.12等である。

       以上の高温圧縮試験結果を       まとめて,鋳型壁移動が小さ       いと考えられる要因をあげる       と次のとおりである。すなわ       ちっき固め式については,け       い酸ソーダの添加量が少な       く,モル比が大きい場合,硬       化剤がFe−Siの場合,ピッ       チ粉を添加した場合であり、

      流動式の場合については,水       分量や発ぼう剤量が小さい場 ig.1 鋳込試験装置      合である。

       3.2鋳込試験結果

       3.2.1けい酸ソーダ量の影響Fig. 3には,モル比2.5       のけい酸ソーダの添加量を4−8%(No.1〜No.3>と変え       た場合の鋳型壁の移動状況を示す。図中の負の符合.は,鋳       視空間外方への移動を示しており,以後の図においても同       様である。鋳型壁移動量(以後移動量と呼ぶ)は,けい酸       ソーダ量が増すと増大している。けい酸ソーダ量が増すと,

      砂粒を被es ・粘結しているけい酸ソーダゲルの厚さは増       し,強度は上昇する。一方,このゲルは溶湯の熱によって       600℃を越えると軟化するが,軟化による強度の低下はけ       い酸ソーダゲルの層の厚いほど著しい。このけい酸ソーダ       ゲルの軟化に加えて,静溶湯圧やねずみ鋳鉄溶湯の凝固時       の膨張による圧力が作用するから,砂粒はこれらの圧力に

 200 400 600

  加熱温度  ℃

00

ig.2 硬化斉IJの種類を変えた場合の変形係数と加熱温度    の関係

って容易にすべりを起こす。このように考えると,けい ソーダ量が増すと移動量が増すのも当然である。また,

留ソーダ分が鋳型壁移動に影響を及ぼすと考えられる

,その影響はけい酸ソーダ量の影響ほど大きくはないと われる8)。

3.2、2げい酸ソーダのモル比の影響 Fig.4には,けい ソーダ量を6%とし,そのモル比を2.1〜3.0と変えた場

(No.2, No.4及びNo.5)の鋳型壁の移動状況を示す。

(5)

O.2

E O

 一一〇.2

一〇.4

一〇.6

一〇.8

けい酸ソーダ系自硬性鋳型の鋳型壁移動  里 吉

けいソーダ 6拓 a@ル 比   2.5 d化剤   3%

} N。・一幅駁ソーダ佛

@   〜.・2・非職)

!)0 δr仇費.一

@       鈎勘

0      5 10        15        2

一〇,!

EE  −o.

 一〇.5

一〇

一〇.5

        時        閤 ,min Fig.3 鋳型壁移動に及ぼすけい酸ソーダ量の影響

けい酸ソーダ6拓モル比 2.5

d化剤  3%

ll

・篭・塾,

■.3.4.5

o・?ュぞ       

i

o,

EE−O

劇一〇

掻一Q

曖一〇.

一1

o

Fig. 4

   5 10 15 20

   時      間 ,m)n

鋳型壁移動に及ぼすけい酸ソーダのモル比の影響

l    N。・10(Fe−SD

けい酸ノーダ 6%

c泣qヒ  2.5 d化剤   3%

〜o・・糾・、り

﹁0.2︐

(10 2θ・鞠ノ

〃0

@911r銚隠

5      10         15         20

        時       間 ,mm Fig.5 鋳型壁移動に及ぼす硬化剤種類の影響

この場合,けい酸ソーダのモ ル比はJIS 1号〜3号のモル 比とした。移動量はモル比が 高くなると小さくなる傾向は あるが,あまり大きな差はな い。モル比が大きいというこ とは,けい酸ソ.一ダの成分で

あるNa20に比べてSio2の

割合が大きいことを示してい るが,逆にこれらの成分の量 は減少する。このことは,モ ル比が増すと,生成するけい 酸ソーダゲルの量は減少する ことを意味している。した がって,モル比が大きいと,

軟化による影響が少なく,こ のために移動量はわずかでは あるが,小さくなったといえ る。また,移動量に大きな差 がないということは,残留 ソーダ分の影響は小さいとい うことの裏付けでもあろう。

 3.2.3硬化剤種類の影響 Fig.5には,モル比2.5のけ い酸ソーダ量を6%とし,硬 化剤の種類を変えた場合

(No.2及びNo.9〜No.11)

の鋳型壁の移動状況を示す。

これらの硬化剤の中で,硬化

剤がFe−Siを使用した

No.10のみは,硬化反応時に 発熱するが,その他の場合は 無熱反応である。これらの硬 化反応について代表例を示す

と次のとおりである9)10)11)。

 Na20 ・Sio2・nH20 十

 2CaO   SiO2 一一+ 8CaO   sio, ・ nH,o 十 sio, 十

      NaOH  Na20・mSiO2十nSiO2十  2nH20;±Na20・nSiO2十       mSiO2 十 2nH2  Na20  mSiO2 (mn 十 x)

 H,O 十 CO, . Na,CO3 ・   xH20 十 m(sio2 ・ nH20)

ただし

(6)

津山高専紀要第25号(1987)

O.2

o E E−o.2

噸一〇.4

醸一〇.6

瞳一〇.8

o.

o

EE O 

O

︸  一.劇

一〇.

一〇.

一〇.

1い ソー     。 a@ル ヒヒ  2.5

d化剤  3%

1 〜o・6・・ン拗

ヂ⊥=Σ妬0〜

〜o・8o・7(αで勘)勘♪

o

Fig. 6

  5 10 15

    時       間 ,min 鋳型壁移動に及ぼす添加剤の影響

20

けし酸ソーダ 6%

a@ル 比   2.5

d化剤  3%

栖i蟄

τ         1    2    3    4

亀℃

5

O.2

0

∈E

2

0

一一Z.4

一〇.6

一〇.8

一1.0 o

Fig. 7

   5 10 15

     時       間 ,min けい酸ソーダ系自硬性鋳型の鋳型壁移動に及ぼす 塗型の影響

20

1  (!o

けい酸ソーダ 6%モ ル比  2.5硬化剤  5%

。 . 1        邸0   噸 ノ2「幅駒O   Iむ・13擦。,       0.

      δ零,勤1『灌1二三.

No.9

O

〜o・16・期隔。.

@        5カ・蜘.5肱

O 5      10         15

        時       間 ,min Fig.8 鋳型壁移動に及ぼす流動化の影響

 m:けい酸ソーダのモル比  n:シリカゲルの含水量を    表わす水のモル比  x:炭酸ソーダの結晶水の    モル比

 移動量は,Fe−Siを加えた No.10の場合が最も小さく て,次いでダイカルを加えた No.9,けい酸塩を加えた No.2,炭酸ガスのNo.11の 順に大きくなっている。

No9とNo.10においては,

鋳型空間内方への移動が現わ れ,とくにNQ.10はその傾 向が著しい。このように,

No、9 P No.10の移動量が小 さく,また,鋳型空間内方へ の移動が現われるのは,

Table 4やFig.2に示したよ うに,24hr放置後の強度や 高温での変形係数が大きいこ とと,砂粒の膨張の影響が現 われたためである。とくに,

No.10において,24hr放置 後の強度が大きいのは,この 鋳型が発熱反応で,しかも脱 水反応であり,耐火度の高い 無水けい酸を生成するからで ある。また,高温での変形係 数が大きいということは,強 度が大きく,変形量が小さい ことを示しており,けい酸 ソーダゲルが軟化しにくいこ とである。No.11において,

24hr放置後の強度や高温で の変形係数が他の鋳型のそれ らとほとんど差がないにもか かわらず,移動量が大きく なったのは,この鋳型の吸湿 性が大きい12)ことと,反応 生成物の相違が原因としか考 えられない。

 3.2.4添加剤の影響 Fig.

6には,標準配合である No.2にピッチ粉,αでん粉 及び木粉をそれぞれ単味で

(7)

けい酸ソー一一一ダ系自硬性鋳型の鋳型壁移動  里 吉

1%添加した場合(No.6 一 No.8)の鋳型壁移動の移動状 況を示す。筆者はすでに,これらの添加剤が合成砂生型の 鋳型壁移動の減少に効果のあることを確認している2)が,

ここではこれらの添加剤のけい酸ソーダ系自硬性鋳型の鋳 型壁移動への効果を見るために使用した。

 移動量は,添加剤なしの場合にくらべてピッチ粉を添加 した場合のみ減少しているが,αでん粉や木粉を添加した 場合には増加している。このようにピッチ粉を添加した場 合,移動量が減少するのは,ピッチ粉が還元性ガスを発生 して溶湯と鋳型の問にガスフィルムを形成することと,

1000℃を越えるとピッチ粉がコークス化して変形係数が上 昇したことが原因であろう。αでん粉や野崎を添加した場 合,移動量が増加するのは,これらの添加剤が燃焼して砂 粒等の膨張のクッション材となるのみであり,むしろ変形 係数を減少させること,またこれらに吸湿性のあることに 起因するものであろう。

 3.2.5塗型の影響 Fig.7には,標準配合のNo.2に揮 発性黒鉛塗型をした場合の鋳型壁の移動状況を示す。一般 的には,塗型には水溶性塗型と揮発性塗型とがあるが,水 溶性塗型はけい酸ソーダゲルに吸湿性のあることから,け い酸ソーダ系自硬性鋳型には適さない。揮発性塗型の場合 には,溶剤として,一般的にはメチルアルコール等が使用 されるが,このアルコールが未反応のけい酸ソーダをゲル 化して固定させる作用があるため,けい酸ソーダ系自硬性 鋳型には適している。このことから,ここでは揮発性塗型 のみについて考えた。

 移動量は,塗型をすると,塗型をしない場合にくらべて 非常に小さ.くなっており,また今までの鋳込試験結果には 見られなかった鋳型空間内方への移動が現われている。こ のように塗型をすると,移動量が減少するのは,前述のよ うにアルコールがけい酸ソーダをゲル化して鋳型表面層の 強度が上昇したことと,塗型掌中の黒鉛の熱伝導率が非常 に小さいため,黒鉛が鋳型に対して断熱材として作用する ため,す.なわち,けい酸ソーダゲルの軟化を遅らせるため である。また,鋳型空間内方へ移動が見られるのは,けい 酸ソーダゲルの軟化が遅れるため,砂粒等の膨張の影響が 大きく現われたものであろう。

 3.2. 6流動化の影響 Fig.8には,硬化剤がダイカルで あるNo.9を,発ぼう剤と水分の添加量をそれぞれ変えて 流動化させた場合の鋳型壁の移動状況を示す。No.12〜

No.14は発ぼう無量を, No.15及びNo.16は,木分量を 変えた場合である。この場合,発ぼう剤は,非イオン系の ものを使用したが,これは砂粒表面が静電気を帯びており,

砂粒への発ぼう剤の吸着を考慮したためである。

 移動量は,発ぼう剤及び水分の添加量が増すと増大して おり,また発ぼう剤の量の相違による移動量の差よりも,

水分量の相違による差のほうが大きい。このように発ぼう 剤や水分の添加量が増すと移動量が増大するのは,Table 4やFig.2に示したように,鋳型の流動性は増すが,充て ん密度(見かけ密度),表面安定性(SSI)及び変形係数が 低下することをあわせ考えると,これらが原因となってい ることは容易に推測できる。発ぼう剤量よりも水分量の方 が移動量に大きな影響を及ぼすのは,水分量の増加によっ て見かけ密度が著しく低下するこ.と,すなわち形成される あわの量が大きくなって砂粒間隙(げき)は増大するから,

けい酸ソーダが軟化した状態の鋳型に静溶湯圧や凝固時の 溶湯の圧力が作用した場合,すべりやすくなるためである。

また,水分量が増すと,鋳型内の残留水分は増加するとと もに,鋳型内には水分凝縮層が形成され,この部分をけい 酸ソーダゲルが吸収して強度が低下することも移動量が増 大する一因と考えてよいだろう。また,流動式鋳型とつき 固め式鋳型の移動状況を比較すると,移動量は流動式の方 が大きいが,移動状況は,注湯直後に鋳型空間内方への移 動が見られることや移動曲線の形状などの点でよく類似し ている。このように,流動式鋳型の方がつき固め式鋳型よ りも移動量が大きくなるのは,前述のように,流動化によ る鋳型の見かけ密度の低下が原因であり,移動状況が類似 するのは,同じ硬化剤を使用しているから当然であろう。

 3.2.7鋳型内部の移動状況 Fig.9には溶湯/鋳型界 面,溶湯/鋳型界面から鋳型内の外方へ5mm及び10mmの位 置の移動量と温度の変化状況の一例を示す。移動量は,溶 湯/鋳型界面から鋳型内のより外方に離れるにつれて小さ

くなっている。また,各位置における温度の変化状況につ いてみると,溶湯/鋳型界面では,注国後,2〜3minで 約1000℃の温度に達し,以後この温.度が約20min続いて いる。溶湯/鋳型界面から鋳型内の外方へ5mm及び10mmの 位置では,注湯後,1〜3minの間に約600℃の温度に達し,

その後緩やかに上昇している。この傾向は,移動量や温度 変化には差があるものの,他の配合においても同じである。

 Fig.9において,移動量と温度の変化状況を比較してみ ると,移動が急激に進行する時期と,そのときの温度との 間には密接な関係があることがわかる。すなわち,鋳型内 の外方へ10mmの位置の移動量と温度の関係を例にとってみ ると,温度が600℃を越えた時点で移動が急激に進行して いる。このことと,Fig.2に示したように,変形係数が600℃

を越えると急激に低下することをあわ冠考えると,けい酸 ソーダ系自硬性鋳型の鋳型壁移動は,けい酸ソーダの軟化 によって発生するといっても過言ではない。

 3.2.8合成砂生型とけい酸ソーダ早期硬性鋳型との移動 状況の比較 Fig.10には,.けい酸ソーダ系自硬性鋳型の 標準配合のNo.2とけい砂にベントナイト6%と水分4%

を加えた合成砂生型(6B4M)の鋳型壁の移動状況を示す。

(8)

津山高専紀要第25号(1987)

o

崔一〇・2

緑・.4

一〇.6

掻一〇.8

一1.0

∈∈

けし暇ソーダ 6%副国  5%

a@ル比   2.5 ュぼう剤   o,3%

リ   分  1.5%

り加瑚参勤 蛎のi%

⁝11

1 藩湯/鋳型界面顕  1

鞠/鯨駒動

5mm温展

1     1  =晒

o

Fig. 9

o

一〇.5

一1.0

一1.5  0

1400 1200

1000 .0

800

  5 10 15 20

   時        間 ,min

流動砂の溶湯/鋳型界面及び鋳型内部の移動と温 度の変形状況

600   唄 40e 200

Fig. 10

5時  10

間 , min けい酸ソーダ系自硬性鋳型と合成砂生型の鋳型壁 移動の発生過程の比較

これらの二つの鋳型の移動状況を比較してみると,けい酸 ソーダ系自硬性鋳型の移動が,注湯後から緩やかに進行し ているのに対して,合成自生型のそれは,注湯後に急激に 進行していることがわかる。注湯後に溶湯が鋳型壁に衝突 する圧力は,本研究の場合には,単純計算で求めると約

15

68.6kPaとなり,合成砂生型 の強度は,けい酸ソーダ系自 硬性鋳型のそれが約19MPa

と大きいのに対し,49.IK:Pa と低く,鋳型強度よりも溶湯 の鋳型への衝突のほうがはる かに大きい。一方,鋳型表面 直下には,鋳型内の水分によ り非常にぜい弱な水分凝i以北 が形成されるが,この層には ねずみ鋳鉄溶湯の凝固過程時 の黒鉛の晶出に伴なって,筆

者の研究によれば,2MPa

以上の膨張圧力が鋳型壁に作 用している。このような理由 のために合成砂州型の場合,

注湯後,急激に移動が進行し ているといえる。しかし,け い酸ソーダ系自硬性鋳型の場 合には,鋳型の強度が大きい ことと,けい酸ソーダゲルの 軟化が鋳型の温度上昇ととも に進行するため,移動の進行 も緩やかになったものと考え られる。

4.結 冒一R口 △冊

 けい酸ソーダ系自硬性鋳型 の鋳型壁移動に関して,けい 酸ソーダの添加量及びモル 比,添加剤及び硬化剤の種類 をそれぞれ変えた試験片及び 試験鋳型,あるいは流動化さ せた試験片及び試験鋳型を作 製し,高温圧縮試験及び鋳込 試験を行った結果,次のこと が判明した。すなわち,けい 酸ソーダ三筆硬性鋳型の鋳型 壁移動は

 1)けい酸ソーダの添加量   が増すと増大する。

2)硬化反応時に発熱する硬化剤を使用すると小さい 3)ピッチ粉のような揮発性炭素質の添加剤を加えると

減少する。

4)揮発性黒鉛系の塗型をすると減少する。

5)鋳型を流動化すると増大する。

(9)

けい酸ソーダ系自硬性鋳型の鋳型壁移動  里 吉

 6)溶湯/鋳型界面から鋳型内の外方へ離れるにつれて   減少する。

また,試験結果を検討した結果

 7)けい酸ソーダ系自硬性鋳型の鋳型壁移動は,けい酸   ソーダゲルの軟化が主因となって発生し,その発生機   構は水分凝i縮層の影響が小さいことを除けば合成砂生   型の場合と基本的には同じである。

1)片島,重松,里吉:鋳物,44(1972),5,416 2)片島,重松,里吉:鋳物,45(1973),11,945 3)片島,重松,里吉:鋳物,47(1975),7,492 4)片島,松浦:鋳物,47(1975),4,260

5) L. 1. Toriello, J, F. Wallace: Trans. of AFS, 64   (1956), 512

6) C. T. Marek, A. R. Kesker: Modern Casting, 2   (1968), 99

7)里吉:津山工業高等専門学校紀要,第24号(1986),

  57

8)清野他:鋳物,43(1971),10,861

9)日本鋳物協会編:自硬性鋳型,「竜門,けい酸ソーダー   スラグ系自硬性鋳型」(1967)

10)高柳他:鋳物,40(1968),1,3 11)西山:鋳物,34(1962),8,591 12)橋本:金属材料,6(1966),8

参照

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